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「食事」、「150年後」、「地球儀」②

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konta

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「食事」、「150年後」、「≪地球儀≫」②




507 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 22:05:39 ID:x23D8i2b
「好きだ、実紗乃!」
 俺の全身全霊を込めた、それは告白だった。
「そうか。私は好きじゃないが」
 そして、その告白は見事に当たって、そして砕かれた。
 もう、これ以上無いくらい、粉みじんに。
「用はそれだけか? これから友人と食事なので、失礼する」
 そう言って、彼女は――古寺舞(こでまい)実紗乃は、去っていった。
 颯爽と、凛とした容姿そのままに。風に髪をなびかせながら。
 ――固まった俺を残したまま。
「………………」
 そして、固まること小一時間。
「どうだったの、祐司?」
 背後から聞こえてきた声に、俺はようやく溶けた。溶けすぎて
そのままへたり込むくらい溶けた。どろっと。
「その様子だと、聞くまでも無いみたいね、あはは」
「笑うなよ、映奈……そもそも、お前がしろって言ったんだろ、告白……」
 声の主の名は岬映奈。いわゆる腐れ縁という奴で、何かとつるんでいる
女だ。今回のこの全身全霊を込めた告白も「うだうだ考えないで、当たって砕けろよ!」
という彼女の後押しによって実行したものだった。まあ、結果、見事に当たって
砕けたわけだが。
「まあ、予想はしてたけど。実紗乃ちゃんはあんたにゃ高嶺の花なのよ」
「そりゃまあ……そうだけどさぁ」
 確かに、彼女は校内美少女ランキング問答無用の第1位で、その立ち居振る舞いは
大和撫子を地で行き、性格的には竹を割ったようなさっぱり系で、男からは無論、
女子にも大勢のファンがいると言うのだから。
 そりゃもう、俺のような特に何のとりえも無い男には、高嶺の花と言う以外無い。
高嶺っていうか、チョモランマとかそういうレベルだよなぁ……。
「ま、見事に玉砕したわけだし、そろそろ身の程ってもんを知った方がいいんじゃない?」
「うるさいっ! ……俺は諦めない! 諦めないぞっ!」
「……そ、そう? まあ、根気があるのはあんたのいい所だけどさ、
 別に、その、実紗乃ちゃんみたいに凄い美少女じゃなくても、それなりの、
 あんたに合った女の子が身近にもっといると思うんだけどなぁ……」
「そんな娘いるっけ?」
「……ああ、そう。そっか。そうだよね。いないよね、うん。あーごめん、いないわ、あはは」
「だから笑うなっ! ……とにかく、俺はもっと自分を磨いて、いつか彼女をゲットするっ!」
「……まあ、程ほどに頑張んなさいよ。程ほどにね」
「だらっしゃぁあああああああ!!」
 俺は、何故か呆れたように苦笑いを浮かべる映奈を傍らに、大声で叫びながら拳を突き上げた。

 ――150年後。
「……なんて言うかさ、馬鹿の信念岩をも通す?」
「馬鹿と言うな。大天才だぞ、俺は」
「まあ、そっか。そうだよね。天才だ。天才だよ祐司は。あーはいはい」
 150年の歳月も、俺達の姿を変える事は無い。
 なんやかんやとあった結果、俺は老化を止め、人を永遠に生かす薬を
開発する事に成功していた。薬を飲むと生殖能力が無くなってしまうという
副作用こそあったが、世界の多くの人がこの薬を飲み、今や人は老いに
怯えず生きる事が可能となった。
 そして、150年の歳月も、俺の想いを変える事は無い。
「よし、じゃあ、今月分の告白行ってくる!」
 そう。俺は未だに彼女を……古寺舞実紗乃を思い続けていた。
 俺の作った薬を彼女もまた飲んでいて、不老を手に入れていたのだ。
 そして、俺は性懲りも無く、彼女に告白をし続けていた。この百五十年間ずっと。
 そして、やはり相も変わらず玉砕し続けていた。
「……ホント、何とかと天才って紙一重よね」
「ん? 何か言ったか?」
 呟く声に振り返ると、寂しそうな、悲しそうな、だが面白そうな、愉快そうな、そんな複雑な
顔で笑う映奈がそこにいた。
「なんでもないわよ、馬鹿っ!」




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