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ガンダム総合スレ「第88独立宇宙戦団:2」

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第88独立宇宙戦団:2



150 :第88独立宇宙戦団連邦軍部隊:2:2011/02/24(木) 01:16:14.93 ID:wEebb8Ia

北米カリフォルニア州に本社を持つ一大軍産複合企業、アナハイムエレクトロニクス社に所属する新造
宇宙ドック艦ダマスカスローズ…、巨大な薔薇の花弁を想起させるその船体に新型モビルスーツが続々
搬入されていく。

先月新設されたばかりの実験評価チーム”テスター=ゼロ”は、新型機とそのバックアップシステム群を
担当する”ガンホーク”…、そして、最終ロットのマラサイと、支援のハイザックカスタムを使用する
仮想敵役(アグレッサー)兼護衛部隊の”セブンガンナーズ”で構成され、エウーゴとの蜜月の解消が
噂されるアナハイム社が、独自に高額のギャラで腕利きたちを、各所より引き抜き編成したものである。

更に、その噂を耳聡く聞きつけた連邦宇宙軍の要請により、様々な特例措置を重ね、彼らもまた
第88独立宇宙戦団に編入され、戦力として期待されることになった。

「ようやくアクシズ戦役も一段落ついたのに、あんな戦争屋どもに入れ込まなければ、エマリー君も
あたら若い命を散らさずに済んだろうにね…、本当に惜しいことをしたものだ」

テスター=ゼロチームの統括責任者として就任したばかりのフォレスター=ゲイツ常務の真剣味の籠らぬ
言葉に、エゥーゴへの出向を解かれ、チーフメカニックに昇格したミリィ=チルダーが心の中で毒づいた。

(良く言うわ、貴方が本当に惜しかったのは、ラビアンローズそのものでしょうに…)

ラビアンローズは同型ドック艦のネームシップであり、UC0080年代初頭に就航し、昨年のアクシズ
戦役で大破の憂き目に遭うまで、その高い搭載能力や工作能力で様々な新型実験機のプラットフォームと
して活用され続けた。

二番艦であるこのダマスカスローズを新たに調達するには、確かに少なからぬ予算がかかったであろうが、
むしろ、あれだけの苛烈な戦闘の最中、非武装かつ鈍重なドック艦にろくな護衛も付けられなかった事を
責められるべきだろう。

(エマリー艦長代理もあの子たち同様、戦争を早く終わらせるための努力を惜しまなかった…、なのに!!)

確かに、揃いも揃って強烈で奔放すぎる性格には些か辟易しないこともなかったが、それだけは身近で彼らを
見てきた者の全てが認めている。

それに引き換えエゥーゴの専任技術士官であるメッチャー=ムチャらは、ガンダムや新型SFSメガライダー
艦載ハイメガ粒子砲等の新兵器を並べ立てれば、それだけで戦争に勝てると本気で信じこんでいた節があり、
もはや、己が技術力の過信を通り越して、無能無責任の域に達していた。

「混乱を極めた先の紛争で、多彩な高級試作機を最後まで整備運用し続けた実績は高く評価しているつもりだ。
ミリィくん、これからもよろしく頼むよ」

(………)

一応、フォレスターなりに部下の心中を汲んでの発言であろう…、だが、追憶から現実に引き戻されたミリィは
何の感銘も受けることなく、黙礼して応接室を辞そうとした時、卓上の船内ビジフォンのコール音が響いた。

「私だ…、ふむ、そうか…」

鷹揚な口調で応対したフォレスターがミリィを呼び止めた。

「軍より派遣された査察官殿がようやく到着したそうだ…、ミリィくん、すまんが相手を務めてくれ」

「解りました、では…」

好意を持てそうもない上司に付き合う義務から、とりあえず解放されたミリィは無表情で退出した。


アナハイム社の隆盛を体現するかのような巨大ドック船の広大なエアロックの中、連邦宇宙軍より派遣された
マゼラン級戦艦トライトンの連絡艇が吸い込まれていく。

いかに現状で宇宙に投入出来得る戦力が不足しているとはいえ、先のグリプス戦役の影で暗躍してきた月面及び
コロニー軍需産業連合の主であるアナハイム社の…、それも実験部隊の手まで借りるなぞ、軍首脳部にとっては、
実に苦々しい選択であろう。

査察官が乗ってきた予備役を解かれたばかりのマゼラン級、そして随伴の火力強化型サラミス改2隻は、そのまま
非武装の民間船の護衛に就く手筈になっている…、だが、もし何らかの不穏な動きが察知された場合、その主砲は
即座に当のダマスカスローズに向けられることになっていた。

(しかし、時代遅れの象徴である戦艦主砲を鼻先に突き付け、それで脅しをかけているつもりとはな…)

フォレスターは、なおも地球に張り付いたまま宇宙を御せると信じ込んでいる連邦政府や軍の高官達の思考の
硬直ぶりをせせら笑った。

(今更、査察官なぞと…、猫に鈴をつけるつもりだろうが、飼主がこうも目端が利かなくては意味がなかろう)

実際に、ガンホークやセブンガンナーズの最新鋭モビルスーツ隊が造反を起こした場合、一体何秒耐えられる
ものか…、ましてや本命のアクシズの精鋭達が相手なら、建前である護衛任務すら全う出来ず、瞬く間に撃破
されるのがオチであろう。モビルスーツと連繋をとれぬ旧式艦など、今や張り子の虎同然の存在でしかない。

一方、アナハイム社も、UC0083年に勃発したデラーズの乱で旧ジオン軍に加担したことが発覚して以来
戦後の軍備再編計画の主流から外されるなど、保守派の強権発動に散々煮え湯を飲まされてきた。

彼らに反攻するエゥーゴに出資することで抵抗を続けてきたものの、月面へのコロニー落としやアポロ作戦等
不当な都市占拠、果てはG3ガスやグリプスⅡのコロニーレーザー砲による恫喝など、幾度も危機的状況に
見舞われている。

…だが、地球至上主義の権化たるティターンズも既に無く、また、同じ宇宙移民ながら常にその動向に危険を
孕んでいたアクシズ軍も、連邦軍同様に内乱抗争を引き起した挙句、その戦力を大きく擦り減らしていた。

そして、あの度し難いまでに選民思想に凝り固まった連中の生き残りは、今や傭兵として、幾ばくかの金や
自由と引き換えに己が魂を売り渡し、惨めにも自分たちの膝下に屈している。

(いかに数多の星の果てまで辿り着こうとも…、所詮、人間はその宿業からは逃れられんということか…)

フォレスターの感慨なぞさして独創的とも言えまい…。彼の目の前には、まず重要な懸案事項が山積していた。

連邦軍の制式主力機として売り込み損ねたシュトルムディアスや最終ロットのネモなど、役割を終えたいわゆる
第2世代機群は近日中にエゥーゴに全て引渡しが完了する…、これで戦争屋に対する義理は果たしたはずである。

また、あの中庸にすぎるGMⅢに代わる新しい統合汎用機候補については、プロトタイプモデルがつい先日に
ロールアウトしたと連絡が入っていた。

既に様々な障害は解消され、グリプス戦役時の軍の各工廠や企業間のモビルスーツ開発競争も沈静化している。
巧く立ち回ればアナハイムは、これから理想的なビジネスモデルを構築し宇宙社会に遍く展開出来るはずである。

(紛争を制御する力、それこそが新しい秩序となろう、…そして、我が社にはそれを成し遂げる能力がある!!)

無論、火種を保持し続けるリスクは負わねばならない…、が、いざとなれば圧倒的な能力を持つ高性能機の部隊で
捩じ伏せればそれで良い。…こと軍事に関しては、”量は質に転化しない”という原則は、宇宙世紀である現在も
生きており、その切り札をより多く所有するものが時代を支配することができる。

…その象徴が、かのガンダムであり、ニュータイプ専用機をはじめとする様々なハイエンド機群である…と。

結局、フォレスター自身も他の愚者同様、最強という名の幻想より、一歩も抜け出ることが出来なかったのである。


「ダマスカスローズ所属運用実験チーム、”ガンホーク”主任メカニックのミリィ=チルダーです」

「ショウ=オハラだ…、よろしく頼む」

眼前のサングラスに濃い頬髯といった、絵に書いたように胡散くさい男の風体にミリィは内心げんなりした。

「早速だが、先ほど搬入したモビルスーツ、見せてもらせるかな?」

「はい、では、こちらへ…」

無重力ブロックを手慣れた様子でミリィについてくる査察官は、軍の…、それも宇宙艦の搭乗勤務経験者である
ことは間違いなかった。

「おお、これが…」

悠然と並び立つ3機の新型モデルや支援システムらしいメカを見上げ、心なしか男の声が弾んだようだった。

「はい、ガンホークが今回試験を担当するする新鋭機です…、かってのエゥーゴの旗機Zガンダムの量産試験型で
私達は”リファイン=ガンダム=ゼータ”、略してリガズィと呼んでいます」

「あのZガンダムの量産モデルがもう作られていたとは…、しかし、君、これは変形機能は持っているのかい?」

一目でプロトタイプ=リガズィがZ最大の特徴である変形機能をオミットされていることを見抜いた男の眼力に
内心驚きを隠せないミリィ。

「え、ええ…、Zに限らずTMS、即ち可変モビルスーツの量産化でネックになるのは、やはり複雑な生産工程や
高価な構造材やフレームを必要とする変形機能で、用途を限定することで高騰するコストを抑えようという試みで」

「でもね、戦況に応じて臨機応変に形状を変えられるのがTMSの強みじゃないか…、仮にもフラッグシップ機を
務めたZを原型にしてこれじゃ、少しばかり高級な量産モデルという形で落ち着くだけじゃないのかな?」

妙に口調が軽くなった査察官に面喰らいながら、ミリィは手元のコンソールを操作し支援メカの情報を呼び出した。

「これは、Z計画の変形試験モデルになったメタスか…?、でも、僕が知っているものとはだいぶ形が違うね」

(へ…?、い、今、ボクって言った?…、何なの、この人!!)

厳つく整えた容貌はどうも見せかけのようだ…、確かに数多の実戦を潜り抜けたような凄みは感じるが、同時に
好奇心の強い、まるで玩具好きの男児じみた稚気も同時に持ち合わせているように見える。

「腕は…、このサイズじゃAMBAC機動は使えないな、多分、火器保持や作業用のマニュピレータってところか。
反面、脚部は可動範囲が相当とれる…、これじゃまるっきりモビルアーマーだな、…あれ、この形状は?、なんか
どこかで、似たようなものを見たような気が…」

(ええーっ、な、なんでそんなこと知ってるのよ、この人、…まさか!?)

「これは、すごいな、機首部から上半身の一部まで切り離せるようになってる、そうか、これをリガズィ自身が保持
してハイ=メガランチャーとして使えるのか…、頭部がこんな扁平な形なのは、半収納され照準装置を兼ねるんだな。
残りの部位は、折り畳まれてリガズィの上半身に合体して追加装甲になり、脚部は…、うん、両肩から左右に展開して
大推力スラスターポッドになるのか…、へえ、ニコイチの合体仕様とは、また思い切った発想だねえ」

延々とした長講釈の果てに、ニコイチなどという極めて趣味的な隠語まで飛び出し、唖然とするばかりのミリィ。
元々歪つな体躯を持つメタスを、さらに押し縮めた感じの支援機のデータを見ただけで、担当メカニックの説明を
一切必要とせず、ショウと名乗った査察官は、その能力をほぼ完全に看破してしまった。

(ま、間違いない、…この人、只者じゃない!!)


ミリィの推察通り、ここまでの観察眼や洞察力を持つ人材が、半ば官僚的に堕した後方から体裁を整えるためだけに
寄越した無能者であるはずがなかった。

「次はBWS=バックウェポンシステム案か、ああ、初代RX-78の支援装備GアーマーのAパーツだけを機首部に
見立てて、スペースファイターの体裁を持たせるようなものか…、この翼みたいな部位にはパイロンが付いて、作戦に
応じて増槽式のプロペラントタンクやFASTパック、ミサイルポッドや大口径ガンポッド、外装ブースターが装備
できるようになってるんだな…、なるほど、確かに大気圏再突入みたいな大掛かりな作戦はもう無いかも知れないから
これはこれで一つの選択って奴か…」

心底楽しそうな笑みを、むさ苦しい髭を蓄えた口元に浮かべるショウ…、その底も正体も見えない男にいつしかミリィは
漠然とした不安と同時に、妙な親近感を禁じ得なくなっていた。

「なるほど合点がいったよ…、でも、これじゃいざという時、BWSは放棄しないといけないじゃないか?」

「それは状況次第ですが…、そうですね、アイディアのひとつに両肩部からワイヤーで接続したまま分離して、本体の
前面に移動、胸部で固定と同時に両腕で保持し、そのまま簡易ハイ=メガランチャーとして使用する方法があります」

「そうか、でも、それは少し取り回しが悪くないかな…、まあ、編隊の編成にも拠るだろうけど」

「BWSには小型ながら高性能ジェネレータが内蔵されていますし、出来れば安全に回収したいところなんですが…」

しかし、実際のモビルスーツ戦闘、特に近接戦では手持ち武器どころか四肢もろとも損壊するケースが非常に多く、そう
理想通りにはいくものではない。

構造がシンプルになった分、機体剛性や部品の信頼性は向上しており、単純なスペックならオリジナルのZにも匹敵する
機体であろうが、そのポテンシャルを十全に発揮するためには、支援メカも含め、かなりの量産化推進が必要となる。

「それにしても…、ずいぶん詳しいんですのね、ショウさん、これじゃあ私の仕事がなくなっちゃいますね」

「え?…、あ、ああ…、これはその…、そうだ、つ、妻の影響でね!!」

「奥様は…?、失礼ですがメーカーか軍工廠関係にお勤めの方で?」

「い、いえ、そんな…、単なるマニアだよ、…そう、モビルスーツマニアって人種で、それもかなり濃くて重症な…」

「まあ…、うふふ、ぜひ一度お会いしたいものですね、なんだか話が合いそうで…」

何やら誤魔化したのは明白だが、ひとまずミリィは査察官ショウ=オハラに関する警戒心を幾分緩めることにした。


「じゃあ最後は…、これは、SFS(サブフライトシステム)、要するにゲタか…、それにしてもやけに大きいが」

ここに来て妙に凡庸なアイディアを提示されたショウに、サングラスの上からはっきり判るほど訝しげな表情が浮かぶ。
敏感なミリィは、その様を見逃さなかった。

「下部のこれは、まさかハイメガ粒子砲の砲口か?…、それに妙に大きなサイズの降着装置だな、これじゃまるで…」

かってアクシズ戦役で、地上に降下したアーガマで運用されたメガライダーという特殊兵器が在った…。基本的に
標準型モビルスーツの搭載能力と強力な火力支援システムを兼ね備え、その有用性は認められたものの、量産化に
至ってない。

「まるで…、何ですの?」

「AMBACのための可動肢…、うん、やっぱりそうだ、展開すればかなりの質量移動と姿勢制御が可能になる…。
でもなんで、こんなものが?」

本来のSFSはモビルスーツを戦場に運ぶための、低コストで運用できる支援機に過ぎず、自在に交換の効く消耗品に
近い存在である。…ここまで妙に奢った装備を持たせる必要がいったいどこにあるのか?

「中央にモビルスーツを伏せるのは当然として、この両脇にあるのは…、起立して、何かの支持架になるみたいだが?」

ショウはそこから推測される機能、そして、先刻の合体機のアイディアから、唐突に記憶の奥底からある存在を思い出し
慄然とした。

(これは、GP計画の技術転用じゃないか!!…、アナハイムもなんて大胆な……、いいや、待て!!)

かって存在し、喪われたロストナンバーズ=GPシリーズ…、忌まわしい過去の記憶とともに封印された昏き真実。

(…だけど、これは違う!!)

ティターンズという重い頸木より逃れた、アナハイムエレクトロニクスという名の現代の伏魔殿(パンデモニウム)が、
この好機を、単に過去の遺物をなぞるような戯事で済ませるはずがなかった。

(これもまたダミーだ!!…、間違いない、本命はきっと別にある!!)





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