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「全自動洗濯機」、「世界の中心」、「落ちない汚れ」

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shoyu

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「全自動洗濯機」、「世界の中心」、「落ちない汚れ」


157 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/10/12(日) 01:59:42 ID:tEAndWeE [1/3]

「『全自動洗濯機』、起動準備完了!」
「洗剤、柔軟剤、漂白剤、全て問題ありません!」
オペレーターの声が艦橋に響く。
「いよいよか」
慌しく飛び交う指示を聞き流しながら、私は思わず呟いた。
「まさか、ここまで時間がかかるとはな――」


 光に勝る移動方の発見は、人類の居住地を爆発的に増やす結果となった。
すでに円熟した技術と呼ばれていたテラ・フォーミングにより、銀河中には
居住可能惑星がどんどん増えていった。21世紀には既に懸念されていた
人口問題、環境問題、資源の枯渇といった問題は既に過去のものとなり、
人類には薔薇色の未来が約束されたかに見えた。
『落ちない汚れ』が世界の中心に現れるまでは。


 『落ちない汚れ』が初めて確認されたのは、第五十三次テラフォーミング計画が
終了した数ヵ月後の事であった。事件は銀河の中心の定期観測から戻った無人衛星が、
真っ黒に汚染された事からはじまる。当初は観測を妨害する何者かの仕業と思われた。
既に妨害派と見られる団体のリスト化が完了し、あとは分析結果から犯人を絞り込むだけ
となったが、発表された結果は、誰もが驚く内容であった。
汚染原因となった物質は、現在の科学では存在が不可能であるはずの物質であり、
汚染された衛星、および調査に当たった分析機関は消失。その後、汚染物質は完全消滅――

 かつて無い混乱が人類を襲った。原因不明の汚染事件は日に日に増え、
惑星単位での消失事件も発生するようになった。それまで築き上げてきた科学では
存在自体が証明不可能な物質を、いつしか人類は『落ちない汚れ』と呼ぶようになった。
万事休すと思われたその状況は、ある一人の男によって救われる事となる。
大手家電メーカーの全自動洗濯機部門にに勤める新米設計者。それが彼の肩書きであった。

「艦長姿も板に付いて来たじゃない」
物思いに耽っていた私に声をかけて来たのは、先輩でもあり副長でもある女性だった。
こんな緊迫した状況でも、私をからかいたくてしょうがないのか、あるいは私の緊張を
解そうとしてくれているのか、彼女は言葉を続けた。
「あの落ちこぼれ設計者が、今や作戦指揮官だもんねぇ」
「先輩のおかげですよ。もっとも、落ちこぼれなのは今も変わりませんが」
緊張を悟られまいと、軽口をたたいてみる。以前の私なら、彼女と話すだけで泡を食っていた
ものだが、随分と成長したものだ。こちらからも何か言い返してやろうと思ったが、
台詞とは裏腹に憂いに満ちた彼女の瞳がそれを思いとどまらせた。
「やっぱり、自分で乗るの? 『全自動洗濯機』に……」
ちらりと彼女が見やった先には、モニターに映る『全自動洗濯機』があった。
『落ちない汚れ』に対する唯一の対策手段であり、私が設計した『商品』であり、今から
私が乗り込む機体でもあった。
「設計者ですからね。自分で試してみないと、やっぱり」
「そっか……。ちょっとだけ、ごめん……」
そう言うと、彼女は後ろから私に抱きついてきた。驚いて振り向こうとする私を更に強く
抱きしめながら、彼女が続ける。
「約束して。必ず、生きて帰ってくるって。絶対、消えないって……!」
咽び泣く彼女を優しく振りほどき、私は彼女に向き直った。言うべき言葉はただ一つ。
「行って来ます」
「行ってらっしゃい」
泣きながらも、笑顔で敬礼する先輩の姿を深く心に刻み込み、私は艦橋を後にした。

158 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/10/12(日) 02:03:09 ID:tEAndWeE [2/3]
うん、難易度高すぎるわこれ
てか「世界の中心」に絡めようとしたら、
今まで書いたことも無いSFモノに……

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