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一回戦 第二試合 桃色 VS フェアリー・テール

作者 ◆KazZxBP5Rc
さて、話に移る前に、まずは分かりきった事項の確認から始めたいと思う。

問一、ここは何をする場所か?
――第二回創発キャラトーナメントバトルである。
問二、今は何の時間か?
――一回戦第二試合の試合中である。

これが正しい答えのはずである。のだが……。

「では、今の大日本帝国にはニンジャはいないのですね。」
「何百年前の話ですか~。そもそも日本が大日本帝国なんて名乗ってたのも何十年も昔ですよ。」
「そうですか。ジェネレーションギャップというものを実感してしまいます。」
「あ、でもでも。女侍さんなら桃の友達にいますし、ここでも別の方を見かけましたよ?」
選手であるはずの桃色とフェアリー・テールの間には和やかな雰囲気が流れていた。
なぜかというと……ここはアンテナさんが実況してくれる。
「えー……っと、お二方、妖精さんたちがどこからか用意してきたティーセットを手に、紅茶をたしなんでおります。」
闘技場のど真ん中でティータイム。
あまりの場違いな光景に野次を飛ばす者、これも何かの作戦かと疑う者、考えるのを諦めて美少女二人の姿を目やカメラに焼き付ける者など、観客席の反応は様々だった。
いずれにせよ、試合を滞りなく進行させることを責務とする者――つまり審判――であるよし子にとっては、この事態は看過できない。
生まれ持ったツッコミスキルが火を噴く。
「お前らちゃんと戦えーっ!」
無駄に気合いの入ったツッコミに、フェアリー・テールはしかしちっとも焦らずに答える。
「そう言われましても、大英帝国の淑女たる私としましては午後のティータイムは欠かせません。」
「試合前にやれよーっ!」
間髪を入れずまたツッコミ。
だが、よし子がどんなに急かそうとも彼女たちは慌てることは無かった。
残りの紅茶を飲み干したフェアリー・テールは、やれやれといった顔で重い腰を上げた。
「戦時中でもないのに戦いを欲する。人間とは愚かな生き物です。」
「あら、始めるんですか?」
こうして、三十分ほどを団らんに費やした戦いが、ようやく本当の意味で始まった。

対峙するふたり。
制服にロングヘアというところは共通しているが、ある部分のサイズは対照的である。
はっきりどことは述べないが、体の中心よりやや上の部分ことだ。
大きいほうの桃色はおどおどしながらへっぴり腰のファイティングポーズをとる。
対するフェアリー・テール(小さいほう)は直立した姿勢のままだ。
「フェアリー・テール選手、構えをとりませんね。」
「彼女は魔法使いだからね。」
アンテナさんの疑問に、解説の柏木が簡潔に答える。
もう一度フェアリー・テールに目を向けてみれば、ティーセットを片付け終えた妖精たちが彼女の周りを取り囲んでいた。
「悲しいですが私は妖精さんに命令しなければなりません。ええ悲しいですとも。」
彼女は指揮官よろしくビシッと人差し指を桃色に向けて伸ばした。
「ぼくたちまたこきつかわれるですー?」
「かなしいけどこれがうんめい。」
「どうせならはげしくちろう。」
「いてこましたれー。」
合図を受けた妖精たちが、取り囲む人物を標的の桃色に変え……火花が散った。
「きゃあっ!」
それなりに派手な攻撃だった。
しかし、桃色が受けた傷は大したものではない。
「手加減しすぎたようですね。悲しいかな、私は人を殺すために鍛えられたので、威力の調整は難しいのです。」
フェアリー・テールは第二次世界大戦中のイギリスにおける魔法兵である。
彼女の世界では魔法を扱える学生が兵士として戦場へ駆り出されているのだ。
桃色のダメージが小さいことを知った彼女は、指をパチンと鳴らした。
すると、第二撃、第三撃、と妖精の攻撃が桃色を襲う。
桃色は何かをささやきながら自分の体を抱きしめ必死に耐えていた。

「桃ーっ!」
観客席からひとりの色男が叫んだ。余談だが、色男のくせに名前は色無しである。
それを皮切りに、主に男の声が観客席から続々と上がる。
「もうやめてやれよ!」
「鬼畜女!」
「貧乳!」
フェアリー・テールを責める声もあれば、対抗する声もまたあった。
「勝負なんだから当たり前だろ!」
「貧乳こそ正義!」
「そうだそうだ!」
突然の会場の盛り上がりにフェアリー・テールは圧倒されてしまった。
男共の溢るる下心を目の当たりにして恐怖を感じた彼女は、この試合をさっさと終わらせる方向に出た。
「これ以上傷つけるのは忍びないですが、妖精さん、ヤってしまいましょう。」
三度目の合図を妖精たちに送る。
「それと、私の胸はまだ発展途上国です!」

しかし、起こるはずの爆発の音は聞こえてこなかった。
それもそのはずで、妖精たちはそもそも攻撃の手を止めてしまっていたのだ。
「どうしたことでしょう! 妖精さんたちがフェアリー・テール選手を見つめたまま動きません!」
「どうしたんですか、見つめられても何も出ませんよ?」
アンテナさんとフェアリー・テールの声が被る。
聞かれて、妖精たちが答える。
「こっちのむすめいとやさしき。」
「われらじゆうをえるためにたたかわん。」
「はんきをひるがえすー。」
次の瞬間、悲鳴が上がった。
「きゃあっ!」
アンテナさんは驚いた顔で実況を続ける。
「なんと! 妖精さんたちは、なぜかフェアリー・テール選手を攻撃してどこかへと消えてしまいました!」
「こっ、これはっ!」
「知ってるのか柏木っ!」
ノリの良いふたりである。
「間違いない! 桃色選手のスキル“誰とでも仲良くなる”が発動したんだっ!」
「な、なんだってーっ!」
つくづくノリの良いふたりである。
「フェアリー・テール選手の魔法は妖精を媒介とした間接魔法だからね。妖精さえ手懐けてしまえば無効化できる。」
「と、いうことは?」
「桃色選手はおそらく妖精に『あなたたちはフェアリー・テール選手に縛られてる』みたいなことでも吹き込んだのだろう。」
「だそうです!」
アンテナさんはさも自分の手柄のように満足げな顔をした。

実況解説コンビが漫才のような解説を繰り広げている間に、フェアリー・テールは服の汚れを払いながら立ち上がっていた。
「楽しい気分が無くなってしまったので、妖精さんがどこかへ行ってしまいました。」
「お前さっき悲しいとか散々言ってなかったかーっ!?」
審判の仕事とは関係無いのに、よし子は反射的にツッコんでしまう。ツッコマーの悲しい性だ。
「ツッコマーって何だーっ!」
あらあら、地の文にまで手を出しちゃって。よし子は本当にはしたないわねぇ。
とか何とか言ってるうちに、フィアリー・テールはファイティングポーズをとっていた。
「純情可憐な乙女で魔法兵な私ですが、徒手格闘の訓練も受けているのです。ええ、学校のカリキュラムなので仕方ありません。」
一気に間合いを詰める。
そしてパンチを連打。キックはしません。スカートですもの。
仕方なくと言ってるだけあって、見る人が見れば雑な感じがひしひしと伝わってくる。
しかし、完全に素人である桃色にとっては捌き切るので手一杯だ。
桃色が体を動かすたびに、たわわに実ったふたつの果実が右へ左へ揺れる。
「きょーにゅーう! きょーにゅーう!」
突然誰かが叫び始めた。その声に他の声が重なってゆく。
「きょーにゅーう! きょーにゅーう! きょーにゅーう!」
反対サイドも負けてはいられなかった。
「ひーんにゅう! ひーんにゅう! ひーんにゅう!」
こうして、二種類の重低音によって会場はヒートアップしてゆく。
いや、たまに甲高い声も混じったりしていた。
「ひーんにゅう! ひーんにゅう!」
「ハル姉ぇ……。」

ジリ貧状態だった桃色が、ついに強打をもらってしまった。
みぞおちにキツーい一撃。
後ずさり、よろめく桃色。
追撃は来なかった。フェアリー・テールは肩を落としてこの時間を回復に専念していた。
「無駄な動きが多いからね。不意を突かれた妖精の攻撃も効いているだろうし。」
と柏木が説明する。
反撃するなら今だ。桃色は痛みをこらえて駆け出し、そして、
「あっ!」
つまずいた。

どすっと大きな音を立てて地面が土煙を上げた。
見ると、仰向けに倒れたフェアリー・テールとそれにまたがる桃色の姿があった。
「ああ! きみがその乙女との愛を選ぶのなら、ぼくに止める術は無い!」
観客席で何やら勘違いしているのは、フェアリー・テールのルームメイトである自称“百合の騎士”ビターだ。
「思いがけないハプニング! 桃色選手、絶好のチャンスです!」
「立っているときなら衝撃を後ろへ受け流せるけど、地面を挟んで攻撃されるとモロだからね。」
しばらくの間、ふたりはそのままの体勢でお互いを見つめ合っていた。
それこそビターの勘違いが勘違いじゃないのではと疑問を覚えはじめる頃、突然桃色が笑った。
「いいこと思いついた!」
桃色はまずフェアリー・テールの腕を押さえつけた。
それから、そのまま自分の体を相手の体の上に倒してゆく。
豊満なバストはフェアリー・テールの顔を挟み込む位置に。
そして桃色は、腕を押さえていた手を離すと、自分の胸を横から掴み、
「それっ!」
「へっ? ……ぃや――――――――っ!」
こねこねと、フェアリー・テールに刺激を与えるように揉み始めた。
まさかの淫行に、観客席は騒然だ。
「うらやま……けしからん!」
「おいそこ代われ!」
「おっぱい! おっぱい!」
中には、鶏の顔をしたクリーチャーが、
「今度こそアウトだろ! 規制しろ! 規制!」
と叫んでいたり、この試合の勝者と対戦する予定のプリン妖精が、
「んふふ、スウィートだねぇ。」
と微笑んでいたりした。
結局、最初は脱出しようともがいてた手足が、徐々に元気を失い、大の字に放り出されたところで、
「勝負あり――っ!」
審判・よし子の声が会場に響いた。

おっぱい地獄により敗れたフェアリー・テール選手は、試合後のインタビューでこう語る。
「私、ただでさえ男性恐怖症なのに、その上女性恐怖症まで患ったらどうやって生きていけばいいんでしょう。本当に。泣いてしまいそうです。」

【一回戦第二試合 勝者 桃色】

支援絵1

作者 >>882おにいさんだよ ◆iUS45DEX5.
http://loda.jp/mitemite/?id=1717.jpg

支援絵2

作者 パチン描き ◆bEv7xU6A7Q
http://vippic.mine.nu/up/img/vp25890.jpg

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