名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/21(日) 20:49:37 ID:+rcymJwd<> 1レス(4096byte・60行)以内でおはなしを作りましょう。
投下時には名前欄に作品名を入れてください。
二次創作は禁止。オリジナルのみです。

関連スレ
【こういうの】創作文章発表【なくね?】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220129521/

【気軽に】職人がSSを書いてみる【短編】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1219996415/

【即興】3行で創作発表スレ【熟考】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1219864629/ <>1レス以内でおはなしを作るスレ 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/21(日) 20:57:58 ID:+rcymJwd<> 1レス以内限定のスレがなかったので作りました。
作るほうも読むほうも、暇つぶしには1レスが丁度いいと思います。
過疎板なんでまったりいきましょう。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/21(日) 21:06:40 ID:uqhSW3Ow<> 短編スレでやりゃええやん、過疎気味なんだし。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/21(日) 21:35:47 ID:RNcyfYk0<> 誰かお題だしてくれ。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/21(日) 21:47:32 ID:EMujP10h<> 記憶喪失の青年が、様々な人と触れ合いながら世界を旅し、失われた自分の記憶を取り戻す話 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/21(日) 21:52:09 ID:RNcyfYk0<> 把握。えらく具体的なお題だな。星みたいな感じで落とすかn <> 記憶喪失の青年が世界を旅し記憶を取り戻す話 <>sage<>2008/09/22(月) 14:34:44 ID:n3Rx0NLJ<> 若者が目を覚ました場所はスラムの裏路地だった。
彼はこの風景に見覚えがなかった。それどころか自分の名前さえ知らなかった。
しかし一つだけ確かな知識があった。
(私の記憶は世界中を歩き回ることで戻るだろう)

若者は労働と物乞いを繰り返し、世界中を歩き回った。
その旅は決して楽なものではなかった。彼の身なりや容姿のみすぼらしさ
もあり、人々は彼を冷たい目で見た。
野宿して起きてみれば、荷物がなくなる。汗水を流して稼いだ金で、少し
いい宿に泊まると、ナイフを持った男に脅されてあり金を全て奪われる。
こんなことが日常茶飯事だった。
「儲け話があるから」と言われてついて行けば詐欺にあった。一晩愛を暖
めた女は、財布とともに消えてしまった。世界は彼にとって冷た過ぎた。
ある時などは、チンピラ集団に絡まれて、川に流され死にそうになった。

それでも若者は歩き続けた。
5年の後、彼はスラムに戻ってきた。
裏路地に入ろうとしたところで、黒人の子供に出会った。少年は腹から血
を流していた。
「助けてくれ」と呻く少年を、若者は手当をしてやった。話を聞くと少年
は親から捨てられたらしい。生きるためにスラムのチンピラ集団に入った
が、死体の始末やスリなどをやらされ、兄貴分には殴られ、最後には抗争
の囮として捨てられ、今に至るそうだ。

若者は少年に語り始めた。
「神様がいるなら、こんな酷い世界は消してしまうべきだと思わないか? 
人々は騙し合い、他人から奪うことを少しも疑わず、暴力を振るうことを
躊躇わない。」
その事実こそが、若者が自らの記憶を消してまでも確かめたかったことだっ
た。自分の目で、耳で、体で、彼は世界の酷さを知った。そして今こそ決
断の時だと思った。
しかし少年はキョトンとした戸惑いを浮かべ、こう返した。
「世界が消えたら、僕は死んでしまいます」
「こんな世界に生きていても仕方ないと思わないのかい?」
「おじさんは生きたいと思わないの?」
質問に質問で返された若者の頭には、ある記憶が蘇った。チンピラに川に
流されたとき、彼は確かに《生きたい》と強く願った。どれだけ冷たい世
界でも、人は生きたいと願うことを若者は知っていた。

若者には何が正しいのか分からなくなった。人は幸せになれなくても生き
たいと願ってしまう。人間という生物がどれだけ醜いとしても、それを消
す必要が、意味が、どこにあるのか。全く分からなくなった。

彼は少年にさよならを告げて、裏路地へと消えてしまった。
<> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/22(月) 18:06:47 ID:YwNt+oHM<> おもしろかった <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/22(月) 19:35:35 ID:GnBVSAqe<> 見事な1スレ完結
拍手 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/22(月) 21:28:37 ID:SJuIqUpq<> そうかこういう感じでいくのか <> 名無しさん@お腹いっぱい。<><>2008/09/23(火) 01:58:52 ID:aew568wO<> 次のお題お願いします。


>>8-9
感想ありがとう <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/23(火) 03:07:56 ID:hJz83gGP<> 頭空っぽだが運だけが超絶最高のおバカ芸能人が地球を救うハートフルストーリー <> 名無しさん@お腹いっぱい。<><>2008/09/23(火) 21:10:57 ID:zBCSbxXQ<> 適当に思い浮かんだのを

少年は夢を持っていた。
それは空を自由に飛びたい、と。
ある日少年が川で遊んでいると老人が声をかけた「ぼん、楽しいか?」と。
少年は言った「楽しいよ、でも空を飛べたらもっと楽しい!」
それを聞くとは老人「よし、ほな儂が翼をやろ」と言うと少年はとても喜びました。
次の日、少年は老人に貰った翼で空を駆け巡りました。
次の日、次の日とだんだん翼にも慣れ始めた頃に少年は「もっと高くへ飛ぼう」と思い、実行しました。
雲の上に行くと素晴らしい光景が、少年は心を踊らせました。
次第に辺りは暗くなり、家に帰ろうと降下しました。
すると雲の上と違い、下界は真っ暗、松明の明かりが僅かに見えるだけ。
少年は翼があるから大丈夫と思い、急降下しました。
が、案の定暗さで感覚が分からず地面に落下。あっけなく死んでしまいました。
それを見た老人は「力を過信し、力に溺れるとこういう風になるんか」と言い、少年の翼を自分に付け始めました。

ーそれは遠い昔の話だそうなー <> 名無しさん@お腹いっぱい。<><>2008/09/23(火) 21:22:36 ID:I47BRWmf<> 【失敗】「ハンバーガーを食べると陰茎が大きくなる」自由研究をした小5男児、サイズが変わらないとマクドナルドに抗議

http://food8.2ch.net/test/read.cgi/bread/1220056298/
<> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/23(火) 21:40:29 ID:Mk5GoWDs<> パン板から乙です^^ <> 名無しさん@お腹いっぱい。<><>2008/09/24(水) 13:39:19 ID:ZeNTZHEE<> なかなかいいネタが思い浮かばない。
ありきたりなものなら何個かあるんだがなぁ……。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/24(水) 17:42:05 ID:ssUmYaMX<> お題
『魔法使いに憧れる少年が、魔法使いである事に疲れてしまった魔法使いと出会う話』 <> 幸せは不幸<>sage<>2008/09/25(木) 01:15:26 ID:luSQktU7<>  どうして僕はこんなに惨めなんだろう。
 おじさんは僕を馬鹿だとののしる。おばさんは僕を使えないとたたく。
 学校に行ってないのだから読み書きができないのは当たり前だ。
 大人でも重いものを何個も、それも一時間以内に運んでおけと言われてもできないのは当たり前だ。
 僕のせいじゃない。僕が悪いんじゃない。不幸なのは……僕のせいじゃない。
 あるとき、テレビの中で指を鳴らすだけで魔法の力でなんでも思いどおりにできてしまう魔法使いを見た。
 掃除中だったのに手が止まっていたのを義理の姉さんと弟にチクられて、おじさんおばさんに思いきり殴られたけど。
 それでも僕は、そのときから痛いのと怖いのに泣いておびえるだけの生活をやめた。
 なぐられてもののしられても、いつか魔法を使って仕返ししてやると思うだけで今までよりもとても心が楽だった。

 ──現実を知ってしまうまでは。

 義理の家族が楽しそうに夕食を食べている中、いつものように僕は凍ってしまいそうな水で食器を洗っていた。
 テレビの中では僕の尊敬する魔法使いが、その素敵な魔法で苦しいひとびとを助けているところだった。
 手はかじかんで凍傷になってしまいそうだったけれど、魔法の力でこれはお湯なんだと思い、胸の中はぽかぽかだった。
 そのとき、ふいにおばさんが言った。
「作り話とはいえ、これだけご都合主義っていうのもどうなのかしら」
 それを聞いた瞬間、僕の頭の中は真っ白になった。
 え……? 今、作り話って……え……えっ……?
「このアニメが、魔法が作り話なんてうそですよね……!? ねえまた僕にいじわるするためのうそなんでしょう……!?」
「あぁ? んだこのクソガキがぁッ!」
 勝手に口を開くだけでも殴打ものなのに、つい出てしまった本音に激昂したおじさんが僕の頭をたたきつける。
「もしかしてアニメを実話だとか思っちゃったの? これだから頭の悪いクソガキは……」
「うそじゃない……おまえらなんて……ぅ、っく……魔法で……魔法で地獄に送ってやる……」
 その一言でキレた全員に僕は死ぬんじゃないかと思うほどなぐられ、そして寒空の中に薄着一枚で放り出された。
 動けないまま、しばらくして雨が降り出した。涙が流れる。
 痛いからじゃない。見捨てられたことが悲しいんじゃない。なによりも魔法使いを否定されたのが悔しかった。

 あれからどれくらい経っただろう。僕はまだ生きていた。凍死しそうな夜を幾度も越えて、食べるものもなく飢えに苦しみ……。
 もう数日もしないうちに僕は死ぬだろう。でも、こんな腐りきった世界でこれ以上生きても無意味だと、数日の間に知った。
 これでよかったんだ。これで……。
「あの……良かったらこれ、食べますか?」
 いつの間にか目の前にはおにぎりを差し出す、汚いボロ布をまとった老人が立っていた。
 いらない。そう言いたかった。でも僕の本能は理性をはじき飛ばし、奪い取るようにして食べていた。
 涙がこぼれる。なんでおにぎりを食べているだけで泣かなくちゃいけないのか。でも涙と嗚咽が止まらなかった。
 まるで今まで必死に抑えていたものがせきを切ったかのように。老人は微笑みながら僕のとなりに座る。

「もう……人生は諦めましたか」
 落ち着いた頃、ふと老人が口を開いた。
「私もね、もう疲れてしまったのですよ。今まで人々を幸せにしようと頑張ってきましたが……結局みな不幸になっていく」
「なんで幸せにして不幸になるの……?」
「ある男は大金を手に入れましたが、人間不信に陥り、最後は自殺してしまいました。
 ある女は世の男性を自分の虜にしましたが、嫉妬した女性たちに滅多刺しにされてしまいました。
 誰かが幸せになれば誰かが不幸になる。それがこの世界の真理のようです。それにようやく気付いたとき……私は疲れました」
「むずかしくて……よくわかんない。でも……おじさんは、不幸な僕を幸せにできるってこと……?」
 老人はどこか失望したみたいな顔を一瞬だけしたあと、「ええ、できますよ」と弱々しく微笑む。
 だから僕は言った。
「じゃあ、僕をおなかいっぱいにして、あったかくして──いたくないように死なせて。きっと、それが今の僕のいちばんのしあわせ」
 老人は驚いた顔をし、けれどまた微笑んで頷いた。
 直後、僕はごちそうを食べたかのような満腹感と暖炉のそばにいるようなあたたかさの中で、気持ちのいいまどろみに落ちていった。
「……幸せそうな顔ですね。でも、そんなあなたを見て私は今どんな気持ちだと思いますか……?」 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/25(木) 01:20:08 ID:luSQktU7<> 微妙にお題に沿ってないような感じでスマン
てか一レスに収めるために削りまくったから支離滅裂でさらにスマン… <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/25(木) 01:56:23 ID:80F6WaLu<> いや、見事に作ってあると思う
1レスだが名も無い少年に感情移入しますた
なんか、胸にきた <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/25(木) 02:28:32 ID:PXeOyj8q<> うん、おもしろかった
俺も作ってみたくなったよ <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/25(木) 15:05:19 ID:icVudmEV<> うまく感想書けないけどこれはいいSS
いや本当にぐっとくるねこの話 <> 魔法使いと正義<>sage<>2008/09/25(木) 19:04:02 ID:PXeOyj8q<> あるところに、年老いた魔法使いが住んでいた。
魔法で庭に水を撒く事が彼の日課だった。
彼の庭には、大きくて美しい野菜がたくさん生っていた。
ある日、いつものように庭に水を撒いていると、少年が話しかけてきた。
「ねえねえ、おじさんは魔法使いなの?」
老人は少し驚いた様な顔をしたが、すぐに笑顔で答えた。
「ああ、そうだよ。」
「すごいや!僕も少しだけど魔法を使えるんだ。見て。」
少年はそう言うと、手に持っていた石を少しだけ宙に浮かべた。
「僕は大きくなったら魔法使いになりたいんだ。
 けど、杖や本は高くて僕のお小遣いじゃなかなか買えないんだ。
 だからおじさん、僕に魔法を教えて!お礼はするから!お願い!」
「…坊やはどうして魔法使いになりたいんだい?」
「かっこいいから!それに魔法が使えると便利だし。」
「…そうか、分かった。坊やに魔法を教えてあげよう。ただし条件が二つある。」
「本当に!? 何でもするよ!」
「一つ目は野菜の収穫を手伝うこと。二つ目は魔法は正しい事だけにしか使わない事。」
「うん、分かった!約束するよ!」

それから少年は毎日老人の家に通い、少年の魔法は見る見る上達した。
老人は物知りだったので、少年は魔法以外にもたくさんの事を老人に教わった。
ある日、少年が傷だらけでやって来たので、老人は何があったのか尋ねた。
「…今日クラスメイトのAと喧嘩したんだ。カブトとクワガタのどっちが強いかで。
 初めは冗談だったんだけど、だんだんエスカレートして殴り合いになったんだ。
 僕弱いからやられっぱなしだった。悔しいから魔法を使って反撃しようと思ったんだ。
 だけど、本当はどっちが強いかなんて知らないから、僕が正しいのかどうか分からなかった。
 だから僕は魔法を使わなかった。ボコボコにされちゃったけどね。」
老人は、魔法で少年の傷を癒しながら言った。
「カブトとクワガタのどちらが強いかは私も分からない。けど、君の行動は正しいと確信しているよ。」

老人が他界した後も、少年は魔法の勉強を続けた。
彼はやがて国が認める優秀な魔法使いに選ばれ、国の補助を受けながら魔法の研究に励んだ。
そして、これまでの魔法の常識を覆すような新しい概念を発見した。
その発見は医療や農業に利用され、国は豊かになった。
しかし、兵器や犯罪にも利用されてしまい、その発見のせいで悲しむ人もたくさん居た。

彼は苦悩した。
そして彼は魔法の研究をやめ、田舎に庭付きの小さな家といろんなジャンルの本をたくさん買った。
彼は庭で野菜を育てながら、本を読み正義について考えた。
ある日、彼がいつものように庭に水を撒いていると、少年が話しかけてきた。
「ねえねえ、おじさんは魔法使いなの?」 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/25(木) 19:05:15 ID:PXeOyj8q<> 影響されて自分も書いてみた。
どうも中途半端な気がしてならないけど許してくれ <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/26(金) 02:03:05 ID:MGanQVrV<> こうして受け継がれていくのだな
童話的なシメ方がいい <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/26(金) 03:39:42 ID:UP1MFqwk<> なんか惜しい <> 名無しさん@お腹いっぱい。<><>2008/09/26(金) 03:43:15 ID:wXNbjliE<> 少年は言った「お兄さんなんの仕事してるの?」
私はその夜樹海に出かけた。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<><>2008/09/28(日) 10:14:39 ID:F9ir+w8K<>  まだ初秋とはいえ、真っ暗な真夜中のビルの屋上にはとりとめもない肌寒さが敷き詰め
られ、九月だというのに冬を感じさせた。
 喫煙室のない我が社はただでさえ愛煙家の肩身を狭く押し込めていたのに、引責辞任で、
愛煙家だった社長の首が嫌煙家にすげ変わり、益々喫煙者は煙たがられた。
 馬鹿と煙はなんとやら、というが──皮肉なものだ。馬鹿かつ愛煙家の俺が追いやられ
て迫害されて、唯一残された喫煙場所の屋上から身を投げようというのだから。
 ふと鉄柵を見ると、煙草の炎と、癖の強い匂い。ジタンだ。少し迷ったが、俺は声をかけた。
 なんでこんな時間に居るんだ、加藤。
「ああ、先輩。……残業っスよ」
 加藤は左手に持ったビール缶に灰を落し、手摺に寄り掛かったまま、丸い顔に朗らかな
笑みを湛えて俺に向けた。酒好きしそうなビール腹を拵えて居るくせに、加藤は全然酒に
弱い。今だってなんだか呂律があやしい。
「実は僕、仕事うまく行かないし、死にたいんです。30なのにまだヒラだし、童貞だし」
 酒によった加藤はすぐ弱音をはく。俺は加藤のそんな処が、それこそ、死ぬほど嫌いだった。
 どうせ死ぬならもういいか。そう思った俺は、加藤に是非死ぬよう、熱っぽく語った。
 俺、お前のそういうウジウジしたとこ大っ嫌いなんだ。クソみたいな匂いの煙草を吸っ
てるところも汗っかきでいつも酸っぱい匂いがするところも口が臭いところも仕事ができ
ないところも。ほんと、お前が生きている価値は、少なくともこの会社に於いて1ミリも
ない。早く死んだ方がいい。
 始め絶望的な顔をしていた加藤は、やがて憑物が落ちた様な顔になり、
「最後に先輩と話せて良かったです。最後の最後に、他人の本音を聞けた」
 加藤は灰皿にしていたビールを一口飲んで顔をしかめた。
「……忘れてた。ははは、最後までコレの良さは分かりませんでした」
 加藤は手摺の向こうに消えた。

──哀れなるかなイカルスが、何人もきてはおっこちる。

 昔読んだ梶井基次郎を思いだし、やっと我に帰った俺は手摺の向こうをのぞきみる。
 遥か下方の、加藤だった容れ物の背中に、くっきりと縦のストライプ。寄り掛かってい
た手摺の塗料だろう。
 なんだか無性におかしくなって、俺はげらげら笑った。懐に忍ばせていた遺書に、胸ポ
ケットに挿してあったボールペンで二重線引いて消す。辞表と書きなぐって、また笑った。
 童貞で三十になると魔法使いになるんだっけ。まさしくお前は魔法使いだよ、加藤。お
前は俺を助けてくれた。
 いつの間にか、冬のような九月の寒さは、一月のような清々しさに満ちていた。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>age<>2008/09/30(火) 04:15:43 ID:iRGu05Gx<> 感想なしか…キビシー <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/30(火) 15:54:42 ID:KiqndT/2<> 病んでると思った <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/30(火) 17:49:59 ID:tovScqTT<> これは1レスに収めない方がいい話になったかもな
これだけだとブラックジョークにもなれない <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/30(火) 19:50:28 ID:eUorPpbE<> スパロボやりながらテスト勉強してたらSS書く暇がなかった。
やっとテストも終わり、スパロボも一週目終わるので、お題の提供よろしく。

>>29
黒すぎw <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/30(火) 20:47:12 ID:rWL6Kepp<> お題:
日々世界の平和を乱す正義と戦いながら普段は時給750円のらくがき清掃員のバイトを週6日8時間勤務でこなす魔王のお話 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/30(火) 22:40:37 ID:EwfakEVY<> お題:
勇者が事故で死んでしまい困った仲間達に
勇者と瓜二つだからという理由で勇者の代役にさせられた
家出中の魔王の息子のお話 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/30(火) 23:02:05 ID:iRGu05Gx<> 「あと2か月頑張ったら、正規雇用するよう頼んでやるよ」
「ま、マジっすか!?」
 清掃会社の社名が刺繍されたツナギを来た男が二人、見慣れない機械を片手に、商店の
シャッター前に居る。
「マジマジ。お前、かなり仕事頑張ってるし」
 先輩らしい髭面の男が、手慣れた手つきで機械のノズルを繋いで行く。
「ーっ!ありがとうございます!!あ、俺やりますよ!」
 サラサラの長髪をポニーテールにしたバイトくんが、装置の準備を引き継ぐ。
「おう、頼むわ」
 髭面は車に戻ってゆく。
(やった……!正社員フラグじゃん……!)
 バイトくんは人好きのする懐っこい顔でニコニコしながら牡蠣殻粉末入り塗料洗剤をシ
ャッターに吹き付け始める。
 この商店は少し前に出来たデパートに人を取られ、典型的なシャッター街への道を進ん
でいた。それが災いして、閉まったシャッターは、人が減る所に逆に集まるアウトロー気
取りの絶好のキャンバスと化していた。
 仕事があるのはありがたいが、次々増える落書きに、消すほうを担う立場としてそれな
りに心を痛めていた。
 何をするかわからないチカゴロのワカモノに対抗できるのは、今のところ警察でも法律
でもなく、昔から居る義理堅いヤクザ屋さんだけだ。
 鼻歌混じりに仕事をするバイトくんは、視界の端に、原色の全身タイツの一団をみつける。
「ここが奴等の本拠地だ」とブルーが冷静に言う。
「“仁侠組”か…如何にも昔気質の堅物っぽいぜ!」とレッドが熱血っぽく叫ぶ。
「やんちゃな若者をイテコマスなんて、893さん失格だわ」とピンクがアニメ声でキー
キー。
「そんなことよりカレーが食いた──ぐわぁ」
 イエローとグリーンが何か言う前に、清掃会社ご自慢の高水圧洗浄器が火(水だが)を吹いた。
「お前ら、何もんだか知らねーけど勘違いしてんじゃねーか?そこの組員さんはいっつも
馬鹿を追い払ってくれてんだ」
 ポニーテールの清掃員は、容赦なく全身タイツ目掛けて水を放射する。
「ぐおお、せ、正義はこれしきで挫けはせんz──」
 ──ドバババ!
 レッドが、話終わる前に顔面に水を受け、のけ反る。
「“テメー勝手な正義”と“秩序立った必要悪”なら、必要悪のほうが一億万倍、理に叶
ってるっつーの」
 彼はこの日以来、原色タイツの戦隊ヒーローから魔王呼ばわりされるようになったという。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/30(火) 23:05:11 ID:iRGu05Gx<> 險ュ螳夂エー縺九☆縺弱※雕剰・イ縺吶k蜀縺ォ螳ケ驥乗擂縺。縺セ縺繧薙□縺忤
繧ゅ≧縺。繧縺繝上シ繝峨Ν荳九£縺ヲ縺代l <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/09/30(火) 23:07:17 ID:iRGu05Gx<> 設定細かすぎて踏襲する内に容量来ちまうんだぜW
もうちょいハードル下げてけれ
そして文字化けスマソ <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/10/01(水) 00:32:08 ID:qoLIOsI6<> お題で書いてみたけどちょっとまとまりきらん <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/10/01(水) 03:30:44 ID:iKsrnp4N<> 魔王呼ばわりされるバイトかw
いかにも勘違いばっかしてそうだなーその正義の味方

>>36
どうした <> 馬鹿な芸能人と疲れた魔法使い<>sage<>2008/10/17(金) 14:47:17 ID:YLOj2Bcx<>  あるところに馬鹿な芸能人がいた。彼はまだ少年と呼ばれる歳にもかかわらず、一発ネタで人気
を博し、一躍時の人となった。が、しばらくすると燃え尽きた線香花火のように、トップスター街道
からポトリと落ちた。それもそのはず、彼の笑いのセンスは最低最悪だったのだ。
 彼はそれでも諦めなかった。地方を巡業し、新たに考えたネタを披露し続けた。しかし客席から
聞こえる声は「寒ぅ〜」とか、「滑りまくりじゃん!」とか、まぁ、そういうネガティブなものばかりであ
った。
 彼が《相対性理論》と出会ったのは、そんな時だった。すっかり御縁が切れてしまったテレビを見
ていると、ある学者がアインシュタインの言葉を引用していた。
『熱いストーブの上に一分間手を載せてみてください。まるで一時間ぐらいに感じられるでしょう。と
ころがかわいい女の子と一緒に一時間座っていても、一分間ぐらいにしか感じられない。それが
相対性というものです』
 彼は馬鹿だったのでこの言葉の意味がわからなかった。そこで実際にストーブの上に手をあて
てみた。「熱ッ!!」思わず悲鳴をあげてしまうが、我慢して一分間耐えた。しかし、そのとき彼は気づ
いてしまった。一緒に座ってくれるかわいい女の子の友達など、今となってはひとりも居ないこと
に。
 ただ彼は運だけは良く、偶然にも相対性の本質を理解することができた。ストーブで熱された手
で何を触っても「熱さ」を感じないと気づいたのだ。

 あるところに魔法使いがいた。彼はこの世界に飽き飽きしていた。彼の元へは毎日のように私利
私欲をみたすため、たくさんの人が訪れていたのだ。馬鹿な芸能人が魔法使いの元を訪ね、「自
分のギャグを人々が『寒い』と感じないよう世界を冷やしてくれ」と頼んだとき、魔法使いは、魔がさ
してしまった。『いつか見た小説で悪魔がやっていたように、こいつの願いを叶えることにより、世
界を滅ぼしてしまおう』、と。
 魔法使いは全魔力を賭けて、全身全霊で世界を冷やした。しかし気温はほとんど下がらなかっ
た。それもその筈、ちょうどその頃、地球の反対側では、二酸化炭素の増加によりメタンハイドレー
トの融解温度まで海水温が上がり、大気にメタンガスが充満し、温暖化が一気に進行していたか
らだ。
 結局、彼の魔法と、地球温暖化は相殺しあい、世界は何も変わらなかった。
 魔法使いは、自分が世界を救ってしまったことをテレビのニュースを見て知った。
 そして、彼は勘違いしてしまった。『世界を救うために嘘をつくとは、この芸能人はなんて素晴らし
い少年だ!!』、と。そこで魔法使いは馬鹿な芸能人に、耳が大きくなる魔法を教えてやることにし
た。
 馬鹿な芸能人はその後、耳が大きくなる魔法で人気者になり、お茶の間に復活した。が、彼の笑
いのセンスは最低最悪のままだったとさ。
<> 代役ヒーローと750円の魔王<>sage<>2008/10/17(金) 14:49:11 ID:YLOj2Bcx<>
 頑固親父と喧嘩して家を飛び出したはいいが、行くあてのなかった青年はらくがき清掃員の道
を選ぶことにした。そんな彼に転機が訪れたのは、3ヶ月ほど前のことである。

 それは予定調和であるべくして、あるはずだった。しかしバナナの皮はそれを許さなかった。
 5ヶ月前に、先代のレッドが敵の怪人に放った一撃必殺のキックは、怪人がバナナの皮に滑った
ことにより標的を失い、屋上からの飛び降り自殺に変質。ヒーローたちはリーダーを失うことになっ
てしまった。彼らは困惑した。リーダーがいなくては世界の平和が乱れてしまう、この国の平穏が
保てない、と。
 途方に暮れていたヒーローたちの1人が青年を発見したのはまったくの偶然だった。イエローが
いつものように[レッドがいない現状をどうするか会議]の帰りに新宿のガードレール下を通ったと
き、ある清掃員を見かけた。その男の顔を見たとき、イエローは「世界はまだ正義を見捨てていな
い」と強く感じた。その顔が先代レッドそっくりだったのだ。
 かくして青年は年俸2000万円でヒーローたちに雇われることとなった。彼はヒーローとして働くこ
とで、この活動が壮大な《やらせ》であると知った。
 「大衆はヒーローを求めている」よく聞くフレーズだがまったくその通りである。レッドが不在であ
った2ヶ月間は、小学生の不登校率が7point増え、育児放棄が多発し、日経平均株価も7850円
まで下落した。それが、青年がレッドになった途端、株価は17070円まで回復し、治安やモラルも
元の水準に戻ってしまった。
 青年はヒーローになってからも、週1のペースでらくがき清掃員の仕事を続けていた。彼の中の
罪の意識がそうさせたのである。ヒーローが活躍するたびに怪人たちの命が失われる。そしてそ
の怪人たちは、国を想う有志たちと多重債務者によって構成されている。社会の安定のためとは
いえ、彼は人を殺すことが正しいと割り切れるほど大人ではなかった。

 ただ、最近になって、清掃員を続ける理由がもう1つできた。
 青年がいつものように清掃現場に向かうと、1人の中年男性がいた。彼は自給750円、週休1
日、実労8時間、そんな過酷な条件で現場に派遣されてきた。その男こそヒーローたちの宿敵で
あり、青年があの日家を飛び出す原因でもあった。
 休憩時間になると、中年男性は無言で青年にブラックの缶コーヒーを渡してきた。
 青年は立場上もう実家に帰ることなどできない。だからといって、父にあの日のことを謝るのも何
か筋違いな気がした。そういうわけで、彼はコーヒーを一気に飲み干すと、休憩もそこそこに、「魔
王氏ね」だとか「ヒーロー万歳!!」などと描かれたらくがきを消しはじめるのだ。
<> 代役ヒーローと750円の魔王<><>2008/10/17(金) 14:54:43 ID:YLOj2Bcx<> >>40>>12>>17
>>41>>33>>34

ところで月刊創作発表グランプリスレに参加したいので、
「秋」「十」「誕生(ハッピーバースデイ)」「新・初」などのキーワードを絡めて、
いつものようにお題を出してくれないか?

できれば2、3個お題が欲しい。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/10/17(金) 15:16:04 ID:qjJM/C91<> じゃあ10歳で死ぬと医者につげられて超絶甘やかされて育った少女が
11歳の誕生日(誕生日は秋)を迎える話 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/10/17(金) 17:39:16 ID:jXsZdcc8<> 季節は秋、10人の新人アイドルが1人の少年の誕生日を祝う為に集まった話 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/10/17(金) 18:00:32 ID:rkTYmz1+<> >>40-41

おもしろかったよ <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/10/18(土) 03:34:06 ID:bVy4gDbL<> お題を出してくれってあなた、そのキーワードがお題でしょうが <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/10/18(土) 04:10:50 ID:kroSvBxJ<> 具体的なお題というか、他人のアイディアで書くことに嵌ってしまったんだ。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/10/18(土) 06:28:33 ID:+6LXbosP<> 逆にプロットと設定だけ考えて力尽きるやつはごろごろいるんだから
そういうやつと組むとおもしろそうだな <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/10/18(土) 11:24:56 ID:zA0+D13I<> お前さんは貴重な人材だ
是非そのままの君でいてくれ
後は同じ思考に至れる輩を増殖させれば、設定書き共が救済されるぞ <> 名無しさん@お腹いっぱい。<><>2008/10/21(火) 04:48:02 ID:DYFQq1vq<> >>43
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1222782546/194/
せっかくいいお題をもらったのに、冗長なだけで盛り上がりに欠ける話になってしまった……。
こういう系統の話を書くのは好きなんだが、なかなかうまくいかないなぁ……。

>>44
今回はこちらのお題を使わなかったけど、そのうちこのお題でも書かせてもらう予定です。
いいネタが浮かばないからもう少し後になると思うけど。



というわけで、次のお題をください。 <> ◆S4kd5lZr8I <>sage<>2008/10/24(金) 09:10:29 ID:H+04cFdE<> ごめんね
お題提出ではないしここのお題とも関係ないのだけど、
1レスでお話ができたので投下しにきました <>
◆S4kd5lZr8I <>sage<>2008/10/24(金) 09:10:50 ID:H+04cFdE<>    おじいさんの数字


 おじいさんの肩から少し下、二の腕のあたりには<1247>という数字が書かれていた。
 右だけじゃなく、左側にもその数字だ。しわくちゃなおじいさんの肌で、数字だけが変
に滑らかで、鮮やかな黒で印刷をした背番号をユニフォームにアイロンづけしたみたいに
綺麗だった。
 たまにお風呂に入れてもらうと、僕はいつもその数字に目が釘づけで、しまいには指で
なぞって遊んだりするもんだから叱られた。しつこく訊いたけれど、おじいさんはいつも
なんにも言わなかった。

 私はね、千二百四十七番目だったんだよ。
 今日、やっとおじいさんが教えてくれた。ここで、一度っきりしか言わない。だから忘
れないでおくれ。この数字が奇数だったという理由だけで助かったんだ。お前のおかあさ
んが生まれ、お前も生まれてくることができたんだ。

 寒くて唇が痛かった。僕は歯が鳴るのをおさえながら、偶数だとなんなの? と訊いた。
偶数のひとたちはね、とおじいさんは聞き取りにくい声で呟いた。偶数のひとたちは、こ
の下に埋まっているんだ。長く長く吐いたおじいさんの息が白く凍っていった。

 僕とおじいさんとは、昔の大きなお墓の前にいる。お墓と僕が言ったのはそれが大きな、
教会の伽藍よりも大きな御影石の「いしぶみ」だったからで、でも本当はお墓ではないら
しい。記念碑なんだという。おかしなことに銘文はかすれて読めない。形はお墓そのもの
だし、おじいさんの言うとおり下に誰か埋まってるんならお墓でいいだろうに。

 空は冬らしく澄んで晴れ渡り、きのう僕が美術の時間に三本の原色クレヨンだけででっ
ち上げた、題して『果てしなき蒼海』の金属めいた青よりもなお青い。
 その叫びたくなるような青を、そびえる御影石の黒がざっくりと切り取っている。太陽
を背にした御影石は、僕たちに悪魔めいた大きな影を落とす。
 まばらな苔の生えただけ、そしてそれも枯れてしまっていて灰色の地面は、冷ややかな
影のなかで霜に凍りついている。

 遠くでピストルの音が鳴り響き、おじいさんは僕を引き倒して地面に倒れ伏した。物凄
い力だった。

 僕は腕が痛いやと言い、あれはたぶん干し魚に来た鳥を追う空砲の音だからとおじいさ
んに教えてあげた。立ち上がりぎわに砂利が口に入って、唾を吐いた。服をはたいて、そ
れからおじいさんの服もはたいた。
 震えている。顔色もひどい。蒼褪めるっていうのはこんな顔色のことをいうのか?
 僕は、こんなおじいさんは絶えて見たことがない。

 胸の隠しから僕はタバコを取り出し、おじいさんに一服つけてやった。おじいさんは前
線の兵隊のような馴れた仕種で吸い込んで、それからひどく咳き込む。僕も一本咥えて火
をつけるのを見て、待てよ、お前まだ小学生だったよな、と唸る。でも僕は咳き込まない
よ、と言うとおじいさんはがしゃかしゃと笑った。
 ゴロワーズかよ。笑い終わっておじいさんが呟いた。へぇえぇ。そんな感じのため息を
つくのが聞こえた。

 僕はおじいさんのほうは見ずに二本目をつけた。
 両切り紙巻の煙はいがらっぽくてだめだ、目にくる。においだってひどい、畑の肥やし
みたいだ。途中で折って捨てた。僕はそんなに愛煙家ってわけじゃない。 <>
◆S4kd5lZr8I <>sage<>2008/10/24(金) 09:18:10 ID:H+04cFdE<> いじょ。

>>29の人のと、自分の>>52とを見ててお題がおもいついたので、>>50の人にお題
「タバコ」でいっぱつお願いします。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<>sage<>2008/10/26(日) 04:15:38 ID:uH3IK8gg<> >>52
孫の年齢が設定と地の文で乖離してるとおもた
小学生なら美術じゃなくて図工のはずだし、でもクレヨン使ってたり難しい題名つけてたりするし。まぁ異国だからそこはいいのかも知れないけど。
問題は、最初少年ぽいのに、最後に向かうにつれて語彙が大人びてしまってること。
タバコが出てきて「お前小学生だったよな」はおじいさんがボケてしまっていることの暗示かと一瞬思った。
おじいさんの暗い過去と孫との交流の暖かさみたいのが対照的で面白い。
28読んでくれてありがとう <>
◆S4kd5lZr8I <>sage<>2008/10/28(火) 04:39:29 ID:IWTwAlQG<> >>54
おお、感想・指摘ありがとうございます。
図工→美術はまったく天然に取り違えしてた……。
孫はアンファンテリブル的なキャラ付けにしてみたつもりでしたが、
いささかちぐはぐだったみたいです。お恥ずかしい。 <> 名無しさん@お腹いっぱい。<><>2008/10/30(木) 07:40:20 ID:/yhCKWqs<> ザラキ <> 『歌の果て』
◆16Rf2BBdUE <>sage<>2008/11/18(火) 11:15:17 ID:9kkgyE/G<> 遭難した船の甲板で、黒人の男が死にかけている。
他の船員たちはすでに倒れ、その体は干し肉のようにひからびはじめている。
刺すような日差しの下で、男は朦朧と海の向こうを眺める。
大きな目をした男だった。まばたきを忘れると、すぐにまぶたが目の玉にはりつこうとする。そのたびに男は気力をふりしぼってまばたきをする。
いつしか目尻には血の涙がこびりついていた。赤いひびの入った大きな目玉に、空のかなたがうつろな青を映し続ける。
ざあん……
ひときわ大きく、波の音が響いた。
男は目を剥いた。乾いた喉からああ、と声が漏れた。
いつからそこにいたのだろう。なぜここにいるのだろう。
甲板の上に、怪物の顔が突き出されていた。
黄色とオレンジのきめ細かい鱗に覆われた、岩トカゲのような、猛禽のような、とがった造形の顔は、今にも甲板を食い破りそうに見える。
硬そうな鼻面から吹き出される冷え冷えとした吐息が、甲板に転がったままの船員の死体を紙筒のようにごろごろと動かす。
怪物は、男を見た。
意外なくらいにつぶらでおだやかな目は、黒いビーズのようにきらきらと輝いている。
男はもうまばたきをしない。開けたままの目いっぱいに、怪物の黄色い姿を映す。
男は立ち上がった。立ち上がって、怪物に飛び付いた。
怪物が長い長い吠え声をあげた。海が震えた。男も震えた。腹の奥から沸き上がる熱い力に、力強く震えた。
男は旅をした。怪物と共に海を越えた。さまざまな船を見て、さまざまな人と会い、話を聞き、歌を聴いた。
旅をしながら、男は歌を歌った。聴いたばかりの歌、故郷の歌、舟歌、とにかく、何でも、何度でも――


船の上に、歌が響く。
『そして男の旅は終わり』
太陽の照りつける甲板、何もいないべたなぎの海、船員たちのひからびた死体。
何も変わらない船の隅で、黒人の男が死にかけている。
見開いたままの大きな目にこびりついた赤い涙の跡が、一筋だけこぼれた涙にぐにゃりと歪んで流れ落ちる。
『怪物の夢も流れて終わる』
旅が終わる。
夢が終わる。
男たちの死体を乗せて、いもしない怪物に優しく見守られて、船はべたなぎの海を滑る。滑り続ける。 <>
◆16Rf2BBdUE <>sage<>2008/11/18(火) 11:16:41 ID:9kkgyE/G<> お題無視でごめんなさい。なんとなく短いのを書きたくなったので書いてみました。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/11/18(火) 11:20:38 ID:Fi/GHKtG<> 末期の夢…か
悲しいな <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/11/18(火) 19:33:21 ID:sGmjDv6I<> >>57
物悲しくて、いい読後感があるね
ガンバのEDみたいw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/11/18(火) 22:56:49 ID:lQpjnsiT<> じっくり読んじゃった。
「べたなぎ」っていう表現初めて見た。ちょっと賢くなった気分だ、ありがとう <>
◆16Rf2BBdUE <>sage<>2008/11/20(木) 17:19:33 ID:Q1y9MdXw<> 連続投下失礼します。
>>50さんではありませんが、>>53さんの「タバコ」で一本書いてみました。
やや不愉快な性表現を含むため、苦手な方は読み飛ばしてください。
最後になりますが、最後まで目を通された上に感想まで下さったかたがた、たいへんありがとうございました。 <> 「煙の町」
◆16Rf2BBdUE <>age<>2008/11/20(木) 17:20:38 ID:Q1y9MdXw<> ハリネズミのような煙突で武装した、キューポラの影ばかりが長く濃い町に、アルハの乗る汽車は止まった。
アルハを雇った工場は、疲れた顔の女たちに、一日にその人数の五十倍ぶんだけのスカーフを作らせるためのもので、光の乏しい屋根の下にはいつも、染料のひどい臭いが立ちこめていた。
アルハは、自分に割り当てられた椅子に腰掛けた。椅子の背もたれには赤茶けた色で《HELP》と書かれていた。
きっと彼女は助からなかったのだろう。だからアルハの席が空いた。ここは、そういう町だ。
「よお、新入りちゃん」
隣の織り機の前に座る女が、しわがれた声で馴々しく話し掛けてくる。
アルハは顔を上げた。南のほうの血が混じった、エキゾチックな顔立ちの少女だった。小さな顔はなめらかに丸く、唇は小さくて柔らかく、艶やかな黒髪はうなじのあたりでくくられてぴんと跳ねていた。
「お近付きのしるしだ。一本おやりよ」
ぼろぼろの紙で巻かれた紙巻きたばこが一本、作業机の上にごろりと転がされる。
「……タバコは、やらないのかい?」
手を出す気配のないアルハを、女は怪訝そうに見た。
「ガンジャ」
織り機に手を添えながら、アルハは囁くように言う。
「毎日一本、毎日二本、毎日三本。気が付かないうちに増えていって、そのたびにあなたはお金持ちになる」
アルハは澄み切ったアーモンド型の目に、転がる紙巻き――乾燥大麻の詰まったそれをちらりと映した。中年女は鼻面に凶悪な皺を寄せ、ふん、と心底つまらなさそうに吐き捨てる。
「カンのいいガキだね」
アルハはにこりとも笑わずに、手元へ視線を落とした。

*****

アルハの丸かった頬が灰色にそげ落ち、見る影もなくぱさついた黒髪が背中まで伸びたころに、売人の女は死んだ。中毒者のひとりに、裁ち鋏で喉を突かれたのだ。
噴き出した血は、つごう4枚のスカーフを駄目にした。工場の責任者は嘆いて呪いの言葉を吐き、アルハの足を腹立ち紛れに蹴飛ばして去っていった。

*****

アルハの黒く輝くアーモンド型の瞳が陰り、曇り、目やにをこびりつかせるようになったころに、アルハは裏路地の一角で犯された。
痛みに呻くアルハの体を容赦なく突き上げ、ゆすりながら、男は濁った紫煙を鼻から吹く。
男が葉巻を口から離し、アルハの腿に近付ける。丸い火傷が、青痣の上に焼き付けられた。悲鳴を上げるアルハの顔を、男は蕩けきった瞳で見つめる。
「嫌な町だぜ、なあ……」
工場街の裏路地に、男はまさしく安煙草の煙のように、薄っぺらい、胸を悪くしそうな声を吐き出した。
「本当に、嫌な町だよ」
べとつく地面が、背中を汚す。アルハの大きな目から、涙がこぼれた。汚れた涙は浅黒い頬を伝い、醜い町へ染み込んでいく。

*****

誰のものとも知れないまま、子供は生まれた。
腹の大きい女を、工場は嫌った。アルハは毎夜のように客をとり、口をしのいだ。
白豚の尻のような肉厚の腹をゆらめく明かりに晒しながらパイプをふかす客を、アルハはよどんだ目にぼんやりと映す。
「何だ」
視線に気付いたらしく、客は分厚く膨れた唇からパイプを離して、アルハの冬の若木のようなさみしい裸身を見下ろした。
「体に悪いからやめろと言いたいのか?」
がっはっは、と白々しく、客は笑う。
「いいか悪いかと、やめられるかどうかは、別なんだなあ」
うつろな目でしばらく暗闇を眺め、アルハは静かに寝返りを打った。
「……」
小さく動かした唇を、客がめざとくとらえる。
「何か言ったか?」
アルハは体を丸め、胎児のように膝を抱えた。腿に残る深い火傷のあとに指を添わせ、そよ風のような声で繰り返す。
「……人生みたい」
くだらんことを言う女だ。客は歪んだ声とともに煙の塊を吐き出して、アルハの上にのしかかった。
アルハは静かに呼吸する。泥のような闇を、煙のような時間を肺に流し込んで、静かに目を閉じる。
煙草のにおいが濃くなると、古い火傷がずきんと痛んだ。


了 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/11/23(日) 01:02:50 ID:WOjCaV3i<> 町の雰囲気でてるなぁ。
淀んだ空気感が凄いです。
人生ってこういうものか。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/11/23(日) 01:07:35 ID:a5n7oBnl<> 無常観がいいよね
アルハ…凄くかわいい子だったのに… <> 53<>sage<>2008/11/23(日) 01:23:17 ID:SRccU4KO<> >>63
読んだ、読みました
お題がすばらしく活かされてます、いい小品にしていただいてありがとう
アルハが聡明なのが一層物悲しいね <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/11/23(日) 16:14:59 ID:R4BSoIS5<> 試しにやってみようか。
お題カマーン。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/11/23(日) 16:31:42 ID:sqhe80FS<> 「手紙」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/11/26(水) 20:52:41 ID:4Ea8KKnO<>  文(ふみ)――手紙の事だ――の力は偉大だと、そう祖父はよく俺に
語っていた。祖母との付き合い始めたのも、祖父が書いた一枚のラブレター、
恋文がそもそもの始まりだったという。
 まぶたを閉じれば、お前も好きな女が出来たら恋文の一つでも
送ってみろと、笑いながら言っていた祖父の顔が浮かんでくる。
まあ、別に今も元気で田舎で畑仕事をしているのだが。
 そしてまぶたを開けば……目の前にあるのは真っ白な便箋だ。
「難しいよ、じっちゃん……」
 文章を書くという事。それが、今を生きる現代っ子である俺のような
人間にとって、どれだけ労力を要する作業であるか、祖父はきっと
知らないに違いない。離れていても、電話やメールの短文で十分
家族や他人との意志疎通は図れるのだから、いざきっちりとした
手紙を書こうと思うと、それだけで一大作業となる。そういった習慣が
一切無いに等しいのだから、最近の若者――俺含む――には。
 俺は天井を見上げて、祖父の言っていた事を思い出そうと試みた。
 確か、自分がどうやって恋文を書いたか、祖父は教えてくれたはず。
「好いた女子(おなご)を思い浮かべる……か」
 俺が気になっているのは、隣のクラスの竹野湖美樹(こみき)だ。
 同じ陸上部の男子と女子で、時たま話をする間柄だったのだが、
とあるきっかけでその笑顔に惹かれるようになった。
 ポニーテールに太い眉、凛々しさすら漂わせる目元は、むしろ
女子の方に人気の出そうな造形だと言えるが、笑って目元が緩むと
凄く女の子らしいかわいい笑顔になるのだ。
 その事に気づいて以来、無意識に彼女の事を目で追ってしまう。
 好き、なのかどうかは、まだ……正直言って、わからない。彼女の
ことを意識し始めてからも、部活の合間の業務連絡ついでの雑談は、
ごくごく普通に交わしている。でも、それが前より随分と楽しく感じる。
 ……これって、やっぱり好きなのかな、竹野の事。
 だから、一度、部活の合間の業務連絡ついでの雑談ではなく、休みに
時間を取って話でもしようかと思い立ち、でもそんな事いきなり切り出したら
変な奴だと思われそうで、でもこんな気持ちをこのまま抱えていたら、
もやもやしたまますっきりしないし……などと考えていたら、気がついた
時には文具店の前に立ち、気がついたら真新しい便箋を購入していた。
「……俺、思ったよりお祖父ちゃんっこだったんだなぁ」
 祖父の言葉をもう一度思い起こす。好きな女の事を想え、という。
「想い、浮かんできた言葉を、そのまま書き連ねるのじゃ……だったっけ」
 俺は、真っ白な便箋に、思い浮かんだまま言葉を連ねた。
 笑顔がかわいいと思っている事。もっとその笑顔を見せて欲しいな
と思っている事。最近は、他愛の無い事でも、話ができて嬉しいと思って
いる事。もっともっと、色んな話をしたいと思っている事――
「……そして、書き連ねたら読み返してみい……」
 そうすれば、色々なことがわかるのだと、そう祖父は言っていた。
 わかったのは、俺の頭が沸いているという事だった。
 予想以上の恥ずかしさに、俺は悶絶した。これはヤバイ。ヤバすぎる。
 ……祖父にはきっと文才があったのだろう。真似した所でどうにかできるか
どうかはわからない。ならば……俺は、俺のやり方で行くか。

 後日、祖父に会った時に『手紙って難しいよ』と伝えた所、にっかりと
笑って『だが好いた女子との仲は上手くいったんじゃろ?』と、そう返された。
確かに、俺の拙い告白に竹野は応えてくれて、俺と竹野は今付き合っている。
「ああ、うん……だけど……」
「文(ふみ)で伝えたわけじゃなかろう? なかなか、女子の心に響く文なぞ、
 書けるもんじゃないからのう。じゃが、手紙を一度は書いた。違うかの?
 文は、相手にばかり送るものではない。自分に送るものでもあるんじゃよ。
 ワシの時もそうじゃった。祖母さんへの想いが、文でもって固まったから、
 想いを告げて、そして祖母さんは答えてくれたんじゃ」
 ……なるほど。確かに、手紙を書こうと思い、書いている内に、俺の気持ちは
固まっていった。竹野の事を好きだという、それまではっきりしなかった気持ちは。
「文は送る事に意義があるんじゃない、書く事に意義があるんじゃ……なんてのう。
 とかく、文の力は偉大なんじゃよ。わかったか、勇治!」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/11/26(水) 20:56:48 ID:4Ea8KKnO<> 「手紙」で書いてみました。
正直、1レスは短いっすね。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/11/26(水) 20:56:52 ID:oyNOZRc+<> 文を書いて思いを確認する…か、いい言葉だな
しかしじいちゃんも手紙送ってないのかw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/12/07(日) 23:05:04 ID:PKpMnH6Q<> >>69
いい話だな <> 創る名無しに見る名無し<><>2008/12/12(金) 19:53:08 ID:n5Qe5ka5<> よし、お題カマーン! <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/12/12(金) 20:47:28 ID:ZFNsyL/k<> 「テスト」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/12/15(月) 17:43:43 ID:YjvaSlUJ<> 「……もうそろそろ一年か」
 俺と美咲が結婚して一年目の記念日が、そろそろやってくる。
「なあに?」
「いや、なに……そろそろ一年だな、と思ってな」
 結婚というゴールに辿り着くまで、色々と紆余曲折あった。その末に
辿り着いたこのゴールは、ひどく心安らぐ、幸せなものだった。
 彼女は……美咲も、同じように感じてくれているだろうか?
「一年と言えば……あなたを、ちょっとテストしたいと思いまーす」
 笑顔を浮かべ、彼女はそんな事を訊いてくる。
 彼女の笑顔は、いつも不安になりそうな、曇ってしまいそうな俺の心を
晴らしてくれる。彼女もまた、幸せなのだと。そう、俺にも信じさせてくれる。
「今日も一年目の記念日なんだけど……さて、何の記念日でしょう?」
「……今日、が?」
 記念日……? ………………何の? 俺は迂闊にも首を捻った。
「覚えて、ないの?」
 美咲の頬が見る間に膨れていく。笑顔が消え、怒り顔になった彼女に、俺は慄く。
 ヤバイ。何の日だ? 今日が一年目? 一体……うわ、さっぱり出てこない。
拙い。このままだと拙すぎる。彼女を怒らせると、一週間は天岩戸の向こうに
雲隠れだ。その間の生活は如何とする? そう、如何ともしがたい。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。今思い出すから」
「……ふ……ふふっ、そんな変な顔して考え込まなくても大丈夫よ、あなた」
「え?」
「思い出せないのも無理は無いわ。……あなた、あの時必死だったし、ね」
 あの時……あ! そうだ。思い出した。今日は……俺が、美咲と、彼女の姉、
咲乃のどちらかを選べと二人に請われ、彼女の方を選んだ日……それから、一年だ。
「……今、私、幸せなの」
 どこか済まなそうな顔で、彼女は言う。誰に済まなそうなのかと言えば、
答えは決まっている。彼女の姉――咲乃にだ。
「でも、姉さんはどうなのかしら、って……時々だけどね、どうしても、思っちゃうの」
「……美咲」
 彼女は、優しい。別に姉と仲が悪かったわけでもなく、俺に選ばれなかった
としても、その時は喜んで姉を祝福しようと、そう思っていた――そんな風に、
俺に話してくれた。そして、それは彼女の姉も同じだった。咲乃は、俺達を、
自分を選ばなかった俺と、選ばれた妹を、心の底から祝福してくれた。
「……どうしてるんだろうな、咲乃」

「お姉さん、あんまり飲みすぎはダメだよ」
 私はおでん屋台で一杯やっていた。妹になら彼を任せられると思う反面、
どうしても自分を選んでくれなかった寂しさが募り募って一年間……まさか、
一年ずっと引きずっちゃうとは……とほほ。というわけで、今日は自棄酒なのだ。
「横、失礼しますよ……えっと、ちょっと、貴方をテストさせてもらっていいですか?」
 唐突に、隣に座った男がそんな事を言い始めた。私に……だよね?
「んあ? なによ、テストって……まあいいですよー、どんとこーい」
 よくわからないまま、私は隣の男に頷いて見せた。
 そして、その時、男の顔を始めて見た
「では問題です。僕は、誰でしょう?」
「……え? えぇ!?」
 そこにいたのは……あの人だった。今は、美咲の隣にいるはずの。
「正嗣(まさつぐ)……なんでここにっ!?」
「残念、それは兄貴です。僕は、弟の正広でした」
 ……確かに、よく見れば、あの人とは少し違う。けど、よく似てる。
「というわけで、間違えた罰ゲームとして……その、えっと、ですね……
 僕と、お付き合いしていただけないかなぁ、と」
「え……え? 弟君? 正広君!? なんで? なんで!?」
 突然の……告白? だよね? 彼の弟君が、私に……?
「ずっと……見てました。兄貴を追っかけてるのも、兄貴の事、吹っ切ろうとして……
 でも、できないでいた所も。僕……その、手助けをしたいんです。貴方が
 ……ずっと、好き、だった、から」
 一年目の、悲しみ八割嬉しさ二割の記念日。
 酔っ払った私の前に、まだ飲んでないのに、真っ赤な顔した王子様が現れた。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/12/15(月) 17:44:56 ID:YjvaSlUJ<> またしても微妙にプロローグっ!?
だが反省は……しますよ、うん。

「テスト」で書いてみました。
やっぱり、1レスは短いっすね。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/12/17(水) 00:39:24 ID:L7pmXCgq<> おー、きれいに納まってる
いい終わり方だ
お題の使い方もうまいなあ
バランス的に、前半ちょっと切り詰めたほうがよかったかも? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2008/12/17(水) 23:48:57 ID:hK4X06so<> なんだかまだ続いても良い感じに見えるw
でもすっきりしてる。
よく似た兄弟か双子かな? <>
[―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/01/12(月) 21:56:32 ID:C0I4CfZH<> 1レスは結構な幅があって奥が深い
結構な量のSSがこれに当てはまりそうだし <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/01/12(月) 22:01:09 ID:hxl6Dgcb<> 頑張れば60行4KBまでいけるわけだしね
1行でも60行でも1レスは1レス

そういえば投下するスレがないスレに13行だったかなんかの
行数固定の作品がいくつか投下されてたけど、あれ面白かった <> 鮒<>sage<>2009/01/19(月) 00:00:17 ID:YpSSGA1o<>  失業から一週間目、実家に戻って近所を散歩していた。
 またあの東京に戻る日が来るかどうかはわからない。あの人だらけの都市で暮らした十年間は、他人と出会おうと思えばどこでも出会えたように思う。
 故郷の風景は変わらない。人は減ったかもしれない。車がなければ買い物にも不自由する。
 あの子の実家も変わらない。ただ中は変わっただろう。あの子は結婚し、もう少し交通に都合が良い場所に引っ越した。記憶が間違ってなければ、今年二歳になる子供がいるはずだ。
 創成川に沿って、並木が延々と続く。子供の頃には、この散歩道が延々と続くと思っていた。実際に果てがある事を知った時、世界の狭さに少しだけ窮屈な憶いをした事を覚えている。あれは小学生の始めの方だったろうか。幼稚園のときだったかもしれない。
 老人が釣りをしている。
 何か僕が言葉をかければ、老人は答えてくれるかもしれない。
 答えてくれないかもしれない。答えてくれたところで、僕と老人の間にはなんの関連性もないように思えた。
 一度ぼろぼろになった他人との関係性を、もう一度編み上げる気力はまだ沸き起こらない。
 突風が木枯らしを舞わせた。振り向いた老人が僕に気付く。
 老人は何かを言いたそうに口を開いてから、何も言わずに川面に視線を戻す。
 僕は煙草を銜えて、火をつけずに散歩道を歩き始めた。

 悪い事さえしなければ、ヒーローに助けてもらえると思っていた少年時代。
 過ちをおかしても、真摯に謝罪すれば許されるものだと思っていた先月までの僕。
 僕の人としての浅さは、何も変わっちゃいないらしい。

 老人が糸を足らす川下に、煙草を放り込んだ。
「にいちゃん」
 老人が僕を呼びかけた。
「ポイ捨ては良くねえな」
「すみません」
「いいんだ。生きてりゃ良くねえ事だって必要さな」
 真意を掴めない言葉が返って来たので、僕は沈黙した。
「元気出しなよ」

 僕は礼の言葉を返して、その場を後にした。
「飛び込むのは、やめよう」
 僕は確かめるようにそう言葉に出してから、橋の上で、最後の煙草を携帯灰皿に押し込んだ。

 了

- - -
※重複スレと気付かずに「1レスだけの掌握小説を書いてみて欲しい 」に
 投下した内容です。あちらはスルーお願いします。
<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/01/19(月) 00:12:33 ID:1ju5eupG<> おお、雰囲気出てますねぇ。
今後、彼はどうなってしまうのか気になる。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/01/19(月) 00:18:34 ID:YpSSGA1o<> 飛び込むはフィクションとしても俺自身の話だったりするます( <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/01/19(月) 00:20:37 ID:1ju5eupG<> >>83
おおw
今後の彼に幸せがありますように <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/02/14(土) 04:53:55 ID:AacZQknQ<>    ゆば

 そいつは、突如として私の全存在を否定した!

「へえ、ゆばちゃんっていうの。ていうか湯葉だよね。悪いけどあれ、マズくない?
 冷たくってベロベロで。味とかないしさ。包み揚げとか超個性ないんですけど!
 ライスペーパーでいいじゃんよって感じ?
 ――それにしても。『ゆば』とか、流石にねーわ。悪魔ちゃんとかああいうあれだよね」

 おまけに。ふん、と鼻まで鳴らす。なにこの人。なんなのこの人!?

 目の前の女。
 ダークスーツというかリクルートスーツに身を包み、
 どうせ染め直したんだろうけど長めの黒髪を肩から背中に垂らして。
 私と同じこの時間に、就活学生の制服みたいなものを恥ずかしげもなく着て。
 こんな薄暗い店で飲んでいる。

 いや、しょうもないリクルートスーツなのは私も同じだけど、さておく。
 問題はこの女だ。

 まあそこそこ美人かもしれないけど、長髪で毛先をレイヤーにしてるのはしょぼいし、
 枝毛だって目立ってる。スーツも折れてるし。疲れたカラスみたいに残念な感じ。
 ショート目にして清楚な私のほうが三倍は面接受けがいいはず!

 アイラシングルモルトとか頼んでるのもキザで気に入らない。こっちは芋焼酎ですよ。
 でもこういうお店でもね、今時は焼酎とか全然おかしくないんだから。

 まあ、それはともかく。
 ちょっと話が弾んだからって名刺渡したのが、そもそもの間違い。

「由葉だから! 自由の由に葉っぱで、ゆ・ば。でしょ。
 それに、いいですか、食べ物の湯葉をバカにしちゃいけないんだからね。
 アメリカでだってもちろん大人気さ。ヘルシーフード、Y・U・B・Aってね!」

「なにそのKONISHIKIみたいなの」
 女はあくまで傲慢に私を見下す。
「ていうかヘルシーって。牛丼はライスが野菜だからヘルシーだとかいう連中でしょ?
 ぷふっ。……ああ、失礼。ちょっと失笑を禁じ得ないわー♪」
 スマートぶって足を組み、からからと笑う手元ではシングルモルトが涼しい氷の音をたてる。

 む、むかつく……。ようし、いいだろう。

「私がなんで由葉って名づけられたか、教えてあげる。私の魂を、心して聞けっ」

 そして私は語り始めた。この私の名と湯葉にまつわる物語。
 父と母の記憶、たくさんの出会いと別れの物語を。
 せせら笑っていた女の表情が次第に角を落とし、口角を引き結び。
 やがてその目尻にはなんか水っぽいものが。女は何度もハンカチで鼻水をかんだ。

 小一時間語り終えて、私は言った。
「――まあ、嘘なんだけどね」
「死ね!」
「ところであんたの名刺は? なんて名前なのさ」
 訊くと、女はさっと顔をそむけた。ほほう。

 ――教訓。自分がされて嫌なことを、人にしないようにしましょう。おしまい。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/02/14(土) 05:22:55 ID:MXbvi4f4<> 文章のテンポがいいなー
小一時間続いた創作湯葉の由来話の中身が気になるw

あとアイラシングルモルト女の名前 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/02/14(土) 07:29:45 ID:AacZQknQ<>
  聖バレンタインデーの虐殺

 ――人の不幸は蜜の味。あれって、実際にそういうもんだと確かめられたらしい。
 誰かさんが不幸になったとするでしょ。そうすると私はハッピーになるという寸法。

「そういうことらしいよ、ねえノリノリ?」
「その名であたしを呼ぶな!」
「ノのつく人?」
「………」
「やだぁノンちゃん。怒るとシワになるよー♪」

 はい。最新の大脳生理学的知見をもとに、私がにこやかに語りかけてるこの相手。
 フルネームを山本紀子という。
 別に出生届で笑いを取りに行ったとかではなく、お母さんが再婚したとかで。
 気がついたら彼女の苗字は山本だったそうな。先に気づけよ、みたいな。

 多感な時期を山本紀子として過ごしてきた彼女。
 上から読んでも山本紀子、下からよ……読めねーよっ! ていうかそれ山本山じゃん!!
 というツッコミはさておき、語呂がいいんでしょうね。
 よくそう言っていぢめられたんだとか。

 ハハッ、かわいそうに。おっと笑っちゃいけない。

 まぁ。そこんところいくと、実は私にも出生のヒミツがある。
 私の名前、白井由葉。
 知り合ったときというか、名乗った瞬間に紀子に笑い飛ばされた名前なのだけど、
 それは別の話として。由葉は“ゆば”と読むんです。
 私の大好きなママはね、“ゆうは”とつけたのだけれど。
 しょうもない親父が届出のときに酔っ払っていて、ゆばとか書きやがったんです。
 ああ、私って不幸。悲劇の主人公!
 でもまあ、山本海苔にはちょっと負ける。負けるんですってば。
 というわけで、同病相憐れむ私たちはうやむやのうちに仲良くなったんだけどね。

 さてそこで格差社会。冒頭の私=ハッピー、ノンちゃん=不幸、という構図なのですよ。

「まあまあ、今日は私がおごるからさ。――マスター! 彼女ヴァレンタイン12年、おかわりね♪」
「くっ……!」
 私の言葉に、美人さんなノンちゃんの顔が屈辱にゆがむのである。

 そう、ヴァレンタイン。
 乙女の告白とかいうちゃんちゃらおかしいテーマで、小中高と私たちを搾取し続けたあの。

 学生ともなればさすがに甘酸っぱい告白とかではありえないけど、男は気にするわけで。
 つき合ってくうえでの潤滑油的なあれです。めんどいよね。でもまあ求められれば悪い気はしない。
 それが目前に迫って、街はもう大変なチョコレート色。
 ついこないだ男と別れた彼女に、痛手を与え続けてるってわけ。ハハッ。っていけない私ったら。

「だからね、まぁ私はハッピーなんだけど」
 手元のカルーアミルクを持ち上げてみせる。あんたの初フラれた記念に乾杯。
「そうよね、持てない者は持てる者を羨むもの。別にあたしはいつだって男なんか」
「うるさい! よーし飲むぞ、今夜はー!!」

 あれ。もしやこの幸せ、幻想なのかしら? などと疑問に思ってはだめ。
 だめなんだったら。

 おわり。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/02/14(土) 07:30:13 ID:AacZQknQ<> どうも、続きも書いてしまったので投下しました>< <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/02/14(土) 07:31:40 ID:MXbvi4f4<> のりちゃんwww名前判明www
最初あんだけいがみあってたくせに仲良しになってやがるw

この2人いいキャラしてるなー <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/02/14(土) 23:16:17 ID:I+d6v3A1<> 久々にきてるー!
ゆばにのりこ。いい名前じゃないかw <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/03/14(土) 21:13:04 ID:mKS+Ip2K<> だいぶ下にさがっちゃてるのでageますね <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/03/14(土) 22:24:44 ID:a0InH7vy<> よっしゃお題カマーン! <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/03/14(土) 22:25:07 ID:a0InH7vy<> また鳥付け忘れた・・・ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/14(土) 22:29:09 ID:3hvJXPLd<> 御題…「携帯」で <> ◆91wbDksrrE <>sage<>2009/03/14(土) 23:26:22 ID:a0InH7vy<>  世の中は便利に満ちている。その最たる物の一つが、そう――携帯。
 人通りの中で耳を澄ませば、どこかの誰かが、ここにはいないどこか
の誰かと話をしているのが、必ず聞こえる。今はそういう時代だ。だが――
「なあ、なんで桜は携帯持たんの?」
 ――そうした時代の流れに反した道を歩む人間は、いつの時代にも
必ず存在している。例えばそう、今を生きる私のように。
 男と肩を並べて歩いているというのに、私の顔は特にほころぶわけでも
無く、無愛想極まりない。隣に歩いている男に問題があるわけではない。
問題があるとすれば、私の性格の方にこそあるだろう。
「必要ない」
 我ながらぶっきらぼうな声だと思うが、別に怒っているわけではない。
隣を歩く竜介も、そこの所はわかっている。私の声にも、無愛想な顔
にも、そのにへらっと笑みの形に歪んだ顔は一向に曇ることは無い。
「ま、確かに桜は友達少ないもんなあ」
 うそ臭い関西弁で喋る男――境(さかい)竜介の言葉は、一聞すると
辛辣かもしれないが、何の事は無い、ただの事実なのだから、私は特に
気にする事も無く、こくりと頷いた。
「うむ。少ないが、その分皆信頼できる友だ。問題は特に無い」
「……まあ、桜の方はそうかもしらんわなぁ」
 竜介の笑みの形が、苦笑いのそれに変わる。
「でも、周りの人間には問題やないか?」
「その程度の事を問題と思う人間を、私は信用も信頼もしない。相手に
 してもそうだ。現に、 皆私と親しくしてくれている。お前とてそうだろう?」
「……ああっと、確かに、携帯持つ持たないで桜のええトコが消えて
 無くなってまうわけやないんやけど……そうやなくてな?」
「ではどういう問題があるのだ?」
「……俺、もっと桜の声聞きたいんよ」
「私の声を?」
「そや。お前の声、いつでも聞けるようになったら、素敵やな、思てな?」
「……それで、私に携帯を持って欲しい、と?」
「そそ。あかんかなあ? 携帯持つ人って、やっぱぁ友達とかとの繋がり
 をずっと持っときたい思うてるんちゃうかな? 俺も、桜との繋がり、
 ずっといつでも持っときたい思うんやけど……」
 なるほど、と思わないわけではない。確かに、いつでも声を聞けると
いう事は、いつでも繋がる事ができるという事は、それはそれで便利で
あるし、素敵な事なのではないかと私も思わないではない。それは確かだ。
 だが、と、私は思う。
「竜介。手を出せ」
「え? 手ぇて……あ」
 私は竜介の手を取り、ぎゅっとその少しザラザラした感触を、自分の掌
の中に包み込んだ。
「……私は、ずっと繋がっていたいとは思わない。ずっと繋がっていては、
 こうして逢った時に繋いだ手の感触が、特別な物にならないではないか」
「……桜、ほとんど手とか繋いでくれへんかったやん、今まで」
「その点は反省する。これからは、お前と逢う度、お前と手を繋ぎ、お前との
 繋がりを確かめるようにしよう……それでは、駄目か?」
「……何か、俺、えらいドキドキしてんやけど」
「……奇遇だな。私もだ」
「ま、お前のそういう古風で頑な所も、俺好きやからね」
「お前くらいだ。私のこういう所も含めて受け止めてくれる男は」
「ま、俺変な奴やし」
「違いない」
 竜介は大きく口を開けて、私は唇を小さく歪めて、二人一緒に笑う。
「ま、そういう事ならしゃーないわ。今後とも、境竜介をごひいきにして
 くれるんやったら、しゃーないから我慢したる」
 竜介が手にギュッと力を込めると、その温かさが掌を介して私の心に
まで伝わってくるようだった。
「呆れられないように、精一杯ひいきさせてもらうとも」
 この、特別な温かさを、特別な繋がりをずっと持っていられるならば――
 今後も私には携帯という文明の利器は、必要ないだろう。 <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/03/14(土) 23:26:43 ID:a0InH7vy<> 終わり。

ここまで投下です。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/15(日) 00:00:20 ID:5DfqDTl6<> おおおおーい桃色空間……まぶしっ。
単に携帯持ちたくない桜ちゃんに男がうまくごまかされた感じがしないでもないがw

GJした <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/16(月) 03:08:13 ID:BP+CUwnA<> ラブラブだー <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/17(火) 11:23:26 ID:3AAZSTFM<> ほんと、いつのまにか携帯持たないとどうもならん世の中になったやね
紐付きはいやでござる <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/19(木) 13:47:54 ID:LCSmAn8I<> >>95
ラブラブハッピーにはよわい(*´д`)


携帯、俺も持ちたくなかったなー
大学進学するまで頑なに拒否してたよ
「よく知りもしない連中に行動を束縛されるのが嫌すぎる」
とか言ってw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/19(木) 14:43:08 ID:nBNBGZyU<> なんというラブラブ展開(`□´)ウワァァァァン <>
◆91wbDksrrE <><>2009/03/26(木) 18:08:28 ID:iNpQeZnx<> カムヒア、お題ターン3! <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/27(金) 04:33:37 ID:mpgONYFb<> お題「逆転」で <> ◆91wbDksrrE <>sage<>2009/03/27(金) 18:59:22 ID:0Rf47xx2<>  勝利の為には、これ以上ミスは許されなかった。ただでさえ実力に
差があるのだから、ミスをすれば勝ち目は無い……そんな事はわかり
きっていた事だった。……そのはずだった。
「……っ!?」
 その瞬間、声は出なかった。目の前にある光景が、スローモーション
のように流れていく。一度はグラブに納めたはずの白球が、俺の目の
前でこぼれ落ちていく。ポトリと地面に白球が落ちたその瞬間、一気に
時間の流れが戻ってきて、ワーッという大きな歓声が球場に響く。
 だが、戻ってきた時間の流れの中で、自分だけが取り残されている
かのように、俺は倒れこみ、みじろぎ一つできないまま、呆然とフェンス
の方へ転がっていく白球を見つめていた。
「おい、何やってんだ!?」
 バックアップに駆け込んでくるライトの佐竹の声が、自分に向けられた
ものだと気づくのにすら、数秒の時間が必要だった。
「……あ」
 何とか立ち上がり、転々とする白球を追いかけようと踏み出した足が、
自分のものではないかのようにもつれ、俺は再び大地に這った。
「……っぁ……くぅ……」
 無様だ。情けない。なんで捕れなかった。こんなミスをするなんて。
 様々な思いと、それを自分にぶつけてくる人々の姿が頭に浮かび、
目の前が次第にぼやけていく。
 泣いている場合なんかじゃない、早く立ち上がって球を追わなければ、
まだ試合は続いているんだから、さあ早く。早く。早く。
「……ぁ」
 だが、俺は立ち上がれなかった。そして、立ち上がる必要も、無くなった。
佐竹が球に追いつき、もう既に三塁を蹴っているランナーを、それでも
何とかしようと、全力で中継に入ったセカンドへ向けて球を投げる。
 ぼやけた視界でその姿を見ながら……俺は叫んだ。
「あぁぁぁぁぁあああああ!!」
 これで、逆転だ。一点差で勝っていたのに、三点取られて、逆に二点の
差をつけられた事になる。回は九回。後攻の俺達に残された攻撃は、
後一回。だが、その一回でもう一度逆転する力は……俺達には無い。
もう、なにもかもが――
「終わってねえぞ!」
 ――内心の声に反応するかのように、ライトが叫んだ。俺に向かって。
「なんで泣いてんだよ! 終わりのつもりかよ、これで!」
「……佐竹」
 佐竹は、本気で怒っていた。いつも温厚で、野球やってる奴にしては珍しく
声を荒らげた事すらない、皆のまとめ役としていつも笑顔で皆の間を取り
持っていた佐竹が、今、本気で、怒りに顔を歪めていた。
「ミスって、泣いて、それで終わりか! お前の野球、それで終わりで
 いいのかよ! 俺はよくねえ! 諦めねえからな、俺は! だから」
 佐竹の怒りは、俺のミスにではなく……俺の諦めに対してのものだと、
その時ようやく俺は気づいた。気づいた時には、俺は立ち上がっていた。
「だから、お前も諦めるなよ、友井……」
 立ち上がって、涙を拭い、俺は佐竹に背を向けた。
「友井!」
「……早く守備位置に戻れよ。まだ、相手の攻撃終わってねえぞ」
「言われるまでもねえっての! 気合入れて守れよ!」
「おうよ!」
 そうだ。まだ終わっていない。終わりかもしれないが、それはもう終わり
だという気持ちが、そう思わせているだけだ。何があるかは……まだ、
わからない。
「しまっていくぞー!」
 ここから――逆転だ。
 できないなんて、誰が決めた? 決めたのは俺だ。ミスって、泣いて、
凹んで、叫んで……そんなよわっちい俺が決めた通りに世界が動く
わけが無い……そう思えば、気は楽になった。覚悟も出来た。
「ここで切って……それで、逆転するぞーっ!」
 俺の叫びが、奇跡の始まりだった――            終わり <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/03/27(金) 19:00:03 ID:0Rf47xx2<> ここまで投下です。

カムバック青春! <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/27(金) 19:18:53 ID:mpgONYFb<> さっそく投下乙なんだよ
正攻法できたのー
逆転に次ぐ逆転、見てるほうも心臓に悪いw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/27(金) 19:25:34 ID:0Rf47xx2<> どうでもいい話だが、うちの地元は今日負けたorz <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/27(金) 20:29:44 ID:0Rf47xx2<> ぬお、ここに誤爆してたか・・・誤爆しようと思ったのにorz <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/28(土) 05:25:04 ID:MdGAH4X1<> 夜のコンビニ。
その店先で携帯を弄っていた少女の前に、一匹の猫が立つ。
「お、にゃんこだ」
おいでおいで。アナタのお名前なんてぇの。
少女は携帯を閉じて、夜を濃縮したみたいな黒い猫に語りかけた。
【私は猫である】
少女は猫からの返事を期待したわけでは無かったが、猫はテレパシーみたいな能力で返事をした。
【名前はまだ──これからも、無い】
【私を“個”たらしめる識別の符丁などは必要を生ぜず、貴女を、
“個”を包括する“全”の意思に基づいて導いたならば、即ち私は識別に値する“個”では無くなる】
猫がしゃべっている事態もかくや、話の内容にさっぱり着いて行けず、少女は手を握って猫の鼻先に近付けた。
普通の猫ならフンフンと手の匂いを嗅ぐのだけど、黒猫はチラと目線を落とすだけだった。
【私は貴女をお誘いするためにこうして語りかけているのです。どうかご同行願いたい】
少女はちょっと考えてこう言った。
「やだ」
言いながら、少女は猫の雌雄を確認しようと手を伸ばした。
が、鋭い猫パンチに一蹴されあえなく撤退。
少女は手をさすりながら続ける。
「見知らぬしゃべる猫について行って不思議な事に遭う、なんてありがちだもん」
少女は猫から顔をそむけた。
タスポ付きの自販機をなんとなく見る。
「村上春樹も漆原友紀も、ジブリだって、少女漫画でだって、そんな設定、ある」
【……ついてきてくれないのですか?】
「ありがちは、嫌」
【きっと貴女にも有益な事がありますよ】
「嫌。ありがちだし」
【ふむ】
猫は困ったように尻尾をくねらす。
「……そだ、逆転の発想だ。にゃんこ、あんたを連れて帰る」
少女は有無をいわさず猫を抱き上げた。
【私は貴女について来てもらいたいのですが】
「ダメ。そうしたらあんた、個じゃなくなっちゃうんでしょ」
【そのとおりですが】
「なら、ダメ。気が向いたら、行ってあげる」
【ふむ】
猫は一応の納得をしたのか、大人しく少女に抱えられた。
「我が家に住むなら名前が要るよね。なんにする?シキベツノフチョー」
【そちらの好きに決めてくれて構いません】
「そっか。じゃあ……逆転、とか。でもギャクってなんか音がギスギスしてヤだな」
【読みを変えてみたらどうですか】
「読みを変える?逆転……サカコロ!あは、可愛いよソレ。あんた、今日からサカコロ」
【わかりました。私はサカコロ】
「うんうん、堅い口振りとあいまってなおさら可愛い。ところで」
【なんですか?】
「女の子なんだねー。ぐはっ」
猫パンチが少女の顎先をとらえた。

終 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/28(土) 10:44:09 ID:wSYJq1UE<> 可愛いなw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/28(土) 14:04:25 ID:ZvEGs5EE<> >>109
ぬこ好きにはたまらねええええええ
GJ!GJ!!!
シキベツノフチョーwwww何か受けたwww <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/29(日) 13:55:30 ID:sBSxb0Vi<> サカコロwww <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/30(月) 15:59:10 ID:FbKSsABi<> ぐはっwぬこパンチ利いたw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/03/31(火) 03:02:55 ID:bRyg0Bwi<> お、猫の評判よろしいですね

次のお題キャモーン <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/03/31(火) 14:51:29 ID:lUVs8Om6<> お題「コンビニ」 <> コンビニ
◆16Rf2BBdUE <><>2009/04/06(月) 05:47:03 ID:sJwDGDUv<> 「我々はすでに、地獄にいるのだ」
 三年間のひきこもり生活を経て久々に会った従兄の第一声は、それだった。
 浮かべ掛けていた愛想笑いも、喉のあたりまで出てきていた気遣いの言葉も一気に凍って砕け散るのを、私は生々しく感じた。
 無精ひげによれよれのネルシャツの、ベンゾウさんが年をくってだらしなくなったような外見の30男は、にぎりしめた拳を振り回して力説する。
「まあ聞きたまえ。根拠はいくつもある!」
 自分を激励する。もう15にもなったんだから、愛想笑いの一つや二つできないと……。
 従兄の勤める会社が倒産したのは五年前。シイタケ栽培の会社がゲーム開発なんぞに手を出すからで、どんなシロウト目に見ても当然の結果だったという。
 それでもなんだかんだで勤め先を見つけ、糊口をしのいでいたのが三年前まで。運悪くそのあたりでオンラインゲームの魅力とやらを根っこから理解してしまい、三連無断欠勤が決定したあたりであえなく仕事場の椅子を放り出されたのだ。
 女王の王冠が手に入るイベントだったらしい。3日間パソコンに張り付いた程度で手に入るのなら安いものだったという。
「そもそも欲望とは苦しみなのだ。ブッダもキリストもダザイオサムもそう言っている」
 押し黙ったまま隣を歩く私の様子になど、この男がこだわるはずもない。
「だというのに今の社会は何だ?! 資本主義だ自由競争だなどと言って欲望をあおり、欲望を利用し、欲望に埋もれることでしかたちゆかない社会ではないか。欲望から解き放たれるのが理想郷であるならば――」
 高々と拳を掲げて言いかけて、従兄ははたと口をつぐんだ。
腹が立つほど綺麗な姿勢で「右向け右」をして、横合いにあるコンビニへすうっと消えていく。
「? 寄り道するの?」
 親戚の寄り合いのための買い出しの途中なのだ。あまり余分な時間はかけられない。
「うむ。今週の某誌某作品がネ申展開だというのでな。地獄で神に会うのだ」
 ああ、こいつ殺したい。そんな思いにしみじみと駆られているうちに従兄はさっさとコンビニに入り、表紙にやたらと巨大な目をした少女の絵と妙に丸っこい「ぷりん」というロゴを載せた、得体のしれない雑誌を手にとった。

 しきりに忍び笑いを漏らしながらたっぷり三十分ほど24ページ程度のマンガを堪能して、従兄はようやくその雑誌を棚に戻した。
「行こうよ」
 私はたぶん少しばかり、半泣きだったんじゃないかと思う。
「行こうか。おお、ところで地獄の話だったな」
 断じて違う。言いきる代わりに私は曖昧な笑みを浮かべた。
「ちょ、ちょっとガム買ってくるから待ってて」
「それには及ぶまい。共に行こう」
 共に来るなバカ! と怒鳴りたいのをこらえてきびすを返し、私はガムの棚へ向かう。その背後をカルガモの赤ちゃんのようについてきながら、従兄はやたらに声を張り上げた。
「経済とはつまるところ罪悪のなす一形態であり――」
 梅ガムを乱暴に引っ掴んで、レジへ向かう。
 コンビニのお姉さんがあいまいな笑みを浮かべたまま、気まずげにバーコードを読み取った。
「繰り返すが、欲しがる心を持ってはならない――」
「105円です」
 必要以上に声をひそめて、お姉さんがレシートをくれた。私は意味もなく頭を下げ、従兄をうながし、小走りに店を出ようとして。
「あ、ちょっと」
 お姉さんの柔らかい声に、ぎくんと立ち止まった。
 お姉さんの笑みは崩れていない。その視線はちょっと申し訳なくなるくらい真っ直ぐに、従兄の方を見ていた。
 立ち止まった私たちに微笑みかけて、レジ棚の下から何かを引っ張り出す。
「先月の『月刊ぷりん』の付録、返品不可で……下敷きが余ってしまっているのですけど」
 さっきの表紙とそんなに変わらない雰囲気の絵をでかでかと載せた下敷きが、そっと差し出される。
「よろしければ、そちらのお客様に……」
 ぶばあ! という音が、横合いから聞こえた。
 従兄が風を切りながら、頭を180度下げる音だった。

「我々は今、理想郷にいるのだ」
 帰り道。
 下敷きを汗ばんだ手で握り締めたまま、従兄は力説し続ける。
「何かを欲するということは、それを愛することにほかならない」
 苛立ちは収まらないけど少しだけ、口角が緩んでしまうのを、認めないわけにはいかなかった。
「つまりこの世界は、愛であふれているのだ!」
「……そっかー」
 妙に白々しく頷いて、私はにやりと片頬を歪ませた。
「つまり、欲しくなっちゃったんだねえ?」
 下敷きのことでは、無論ない。
 コンビニからスーパーへ続く道に、暑苦しい演説が、照れ隠しの長ゼリフが、また長々と吐き出され始めた。
<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/06(月) 11:17:28 ID:szF5LY88<> オチがちょっと分かりにくいけど、従兄弟のキャラは良いなw
<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/06(月) 21:48:49 ID:pNOtpXtV<> お姉さんにイエスフォーリンラブなわけか? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/06(月) 22:08:04 ID:c1mS2CUR<> >シイタケ栽培の会社がゲーム開発なんぞに手を出すから
だめだ、この下りは何度読んでも笑うw
オチが明白ではないおかげか、後味がとてもふくよかに感じます <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/09(木) 07:53:38 ID:6AlH0bfq<> 次のお題ください <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/09(木) 08:01:56 ID:bs58TJEe<> 人狼 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/09(木) 09:29:27 ID:aEoJfaUJ<> >「つまり、欲しくなっちゃったんだねえ?」

このセリフにエロス(もちろんタナトスの対義語的な意味で)を感じないでなんとする <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/04/09(木) 16:15:16 ID:Xn4z75Fl<>  “虎”(ティーゲル)という二つ名をもって恐れられる彼には、ある
一つの悩みがあった。今日もまた、彼は苦悩しながら戦場を駆ける。
「っ!」
 呼気と共に身体を投げ出せば、一瞬前まで立っていた場所を
弾丸の連打が穿つ。投げ出す為に伸ばした身体を一気に縮め、
前方回転の動作で受身を取り、弾丸が飛んできた方角へ向けて、
視線を向けず、銃口だけを向けてトリガーを引く。その結果を、
う、とも、お、とも聞こえる呻きで確認し、受身を取った勢いのまま
立ち上がって、彼は再び駆け出した。
「……多いな」
 敵は多数で、自分は一人。そんな近現代の戦いにおいては
絶対的に不利な状況においても、彼は何ら動揺する事は無く、
ただ敵が多いという事実だけを確認しながら足を動かし、駆け続ける。
「貴様……"虎"かっ!?」
 彼の前に立った男が、彼をその二つ名で呼ぶ。
「……俺は」
 向けられた銃口は、しかしその口から弾丸を吐き出す前に、彼の
爪先で宙を見上げる。
「なっ!?」
 ありえない速度だった。いかに弾を無差別に撒き散らすマシンガンに
よる攻撃であろうとも、引き金を引くよりも早く動けば、理論上弾丸を
回避する事は可能だ。あくまで弾は銃口から撒かれるものであり、
そのきっかけとなるのは引き金を引く動作だ。
 その動作よりも早く、銃口を明後日の方向に向かせてしまえば、
あるいは銃口の向いた先から身体を逃してしまえば、雨のように
降り注ぐ弾丸を喰らうことは無い。彼が先の攻撃を避けたのは
後者の動きであり、今目の前に立つ男の攻撃をさせなかったのは
前者の動きだ。
 理論上では、確かにその通りだ。だが、人間の速度ではそれは
不可能である事も、また理論上の正答だ。
 そう……人間の速度では。
 にも関わらず、彼はどうして弾丸に穿たれる事も無く、多によって
囲まれる事も何ら厭う事無く、ただひたすら戦場を駆ける事を可能
としているのか。自然と導き出される答えは、一つ。
 その答えは、彼の口から放たれた。
 右手に握られた銃から放たれる、弾丸と共に。
「俺は“人狼”(ヴェアヴォルフ)……“虎”じゃねえ!」
 戦場において“虎”とあだ名され、誰からも恐れられる彼の身体には、
人外の存在――人狼の血が、色濃く受け継がれていた。彼の人間を
軽く越えた反射速度や膂力は、その血の賜物である。
 人狼とは、誇り高き種族であり、自らが狼に列する存在であるという
事を誇り、それを穢される事を最も嫌う、そういった種族だ。それは
彼も変わらない。誇りなど何の足しにもならない戦場においてすら、
彼はそれを失わず、数多くの功を為し、味方からは畏怖と信頼を
受け、敵には恐怖と絶望を与える戦士として生きてきた。
 だが――
「……“虎”っつった奴は残らず殺す……覚えとけ!」
 最早事切れた男に向けてそう告げる彼の顔には、憤りが表れていた。
 ――彼の二つ名として与えられたのは、“虎”の一文字であった。
 人狼という種族にあり、その誇りを失わずにいた彼にとって、その
一文字でもって自らが呼び称される事は、我慢のできない事だった。
「誰だよ俺にこんな二つ名つけたやつぁ!?」
 戦場に、叫びが虚しく散る。応える声は、当然ながらない。応える
のは、ただ彼を穿とうと狙う弾丸のみ。その全てをかわしながら、
彼は今日も戦場を駆け、駆けながら撃ち、さらに名を高め、そして
苦悩を深くしていく。
 いつの日か、彼が“虎”という二つ名から逃れる事ができるのか
どうか――それは彼自身にも、そして誰にもわからない事だった。

 終わり <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/04/09(木) 16:15:25 ID:Xn4z75Fl<> ここまで投下です。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/09(木) 16:28:16 ID:osa04sGb<> 乙!
今回はちとパンチが弱い気が
お題人狼は難しいか… <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/09(木) 17:01:22 ID:z8vkl7bH<> なかなか読ませる文章ですた
虎って呼び名を嫌う理由をもう少し語ってもらいたかったかもかも <> 人狼
◆16Rf2BBdUE <><>2009/04/10(金) 01:22:51 ID:cm3OpebR<>  小学三年生の秋の、ある日の記憶。
 気が付いたら、近所の川の中にいた。
 足がつくかつかないかぎりぎりの深さだ。
 服も髪も、冷たい水にびっしょりと濡れていた。まるで丸洗いしたかのように。
 くしゃみをしながら慌てて陸に上がり、家に帰った。
 隣の家の茜ちゃんの死体が見つかったのは次の朝だった。
 失血死だ。犬のものに似た噛み傷が、全身にあったらしい。


 大学一年生の夏の、ある日の記憶。
 由希子の部屋で童貞を卒業した。ことが済むと、疲れ果てて泥のように眠った。
 由希子はその日から行方をくらまし、四日後に首から上だけがゴミ捨て場から発見された。
 首から下を見たのは多分、俺が最後だったんだろう。


 30の春、いま俺は病院にいる。
 お見合い結婚で結ばれた妻が入院している、小さな産科医院だ。
 産着に包まれた小さな小さな生き物が、俺に優しく手渡される。
 元気な女の子ですよ、と看護婦が愛想よく言う。
 丸く腫れたまぶたの下の目が、ぐるりと動いて俺を探す。
 そのいとおしい体重に、健気な体温に、俺はくらくらしながらつぶやく。
「かわいい……ですね」
 不吉な鼓動が、記憶の壁の向こうで鳴り響く。
 思い出してはいけないことを、思い出させる言葉。
 絞りだすように、口にしてしまう。
「食べてしまいたいくらい……」
 ぞわぞわと毛が逆立つ。
 得体の知れない活力が沸き上がる。
 ――俺の歯が牙に、皮膚が毛皮に、愛が食欲に変わってしまうまで、きっと、もう、あと10秒もかからない。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/10(金) 02:38:13 ID:NvHQTO8+<> 締めがすっきりしててとてもGJな味わいですた <> 携帯
◆4c4pP9RpKE <>sage<>2009/04/10(金) 04:18:34 ID:9sCyIKCv<>  深き森の梢に息を潜める者が居た。それは狼の頭を持つ者──人狼だった。
 全身を覆う渇き切った蓑傘のような毛並は疲弊を如実にあらわし、身体から放たれる悪
臭は汚れもさることながら、自らの血の染みが腐り、鉄と土を半ば混ぜた臭いを放ってい
た。鼻先は乾いてひび割れ、その眼は獣の鋭さよりも、怯えに満ちた浮浪者のような鈍さ
ばかりが目立った。
 狩人に撃たれ、教会に追われた。
 見つかれば撃たれ、捕まれば火に炙られる。
 恐れられ、忌み嫌われ、人にも、狼にもなれず。
 いっそ生まれた途端に殺してくれればよかったのに。人狼がそう思うこともしばしばあ
った。だがしかし人狼が今生きているのは、優しい母や厳しい父に育てられた、子供の頃
の溢れるばかりの幸せな日々を捨て切れないからであった。
 普通の人間であった両親から何故自分のような獣が生まれたのか、人狼は深く思い悩ん
だが、答えは見出だしようもなかった。
 父が死に母が死に、匿ってくれるあての無くなった人狼が、教会に見つかるのはそう時
間のかかることでは無かった。
 猟師に撃たれた腕の傷が酷く痛んだ。
 人狼は灰色の貌を歪めながら、ほとんど出てこない唾を舌に乗せて、傷を舐めた。熱さ
と腫れの酷いのを思い知って、痛みに堪えながら牙を立てた。血とたくさんの膿が、始め
勢いよく、後は圧迫に従ってぐずぐずと傷から漏れた。
 もう、死んでしまうかもしれない。そんな風に人狼は思ったが、山深い梢の先に、一件
の山小屋があるのを見とめた。
(……人は生きるためならなんでもやる。自分も、たとえ半分だろうと、人間なんだ)
 人狼は山小屋を襲う決意を固め、窓から見つからないよう、四つん這いになって小屋に
にじり寄った。その時の人狼の眼光は、奇しくも肉食の鋭さを宿して居た。
 山小屋のぐるり一周を嗅ぎ廻り、どうも中に居るのは一人らしいことを、人狼は嗅ぎ当
てた。扉を開けようとするも、裏から閂が掛かって居たらしく、がたり、と音を起てて、
木製の扉はかたくなに沈黙したままだった。
「どなたかしら。赤頭巾かい」
 不意に扉の向こうから声がした。人狼はどうしようかと逡巡したが、声を出せば閂の開
かないだろうことを思い、返事の代わりに扉を叩いた。
「おや、やっぱり赤頭巾かい。おばあさんに声くらい聞かせておくれ」
 小屋の中からの声に混じり、閂の外す音が響いた。扉が開いた瞬間、人狼は精一杯獣ぶ
った雄叫びをあげた。
 ぐるおぉわおぉぉおおんん!
 しかし、人狼の声を聞いても、小屋の主らしきおばあさんは眉ひとつ動かさなかった。
「あら、赤頭巾ではなかったのね。間違えてごめんなさい、そう怒らないで」
 おばあさんは微笑み、人狼の顔や毛並を見た。しかしそれらを見た後も、そう驚いたり
はしなかった。眼鏡も杖も無しにしゃんと背を伸ばして歩いて居る様を見ると、目が悪く
て人狼の姿を認識できて居ない、というわけでも無さそうだった。
「ぼ、僕が怖くないのか!」
 と、人狼は牙を剥いて叫んだ。
 おばあさんは微笑んだまま、
「ええ、人間のほうが、余程おそろしいもの」
といった。
 人狼が呆気にとられていると、ぐうう、と人狼の腹が空腹を訴えた。おばあさんはそれ
を聞き、声を出して笑った。
「此処にはお金はないけど、お料理ならあるわ。今、孫がパンを持って来てくれるから、
私の料理と、孫のパンを一緒にたべましょう。その前に」
 おばあさんは言葉を切り、タオルと水桶を人狼に渡した。
「身体を清めたほうがいいわ。怪我もしているようだし」
 人狼の、第二の家族との出会いはこうして始まった。
 そののち人狼とおばあさんの孫娘は結ばれることとなるが、それはまた別の機会に。

終 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/10(金) 04:21:21 ID:9sCyIKCv<> 動物ネタ好きです。
前投下との間隔短くてすいません。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/10(金) 07:07:57 ID:GVsZVH2s<> 乙!
ここは意表を突いておばあさんと結ばれて欲しかったw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/10(金) 08:53:25 ID:mEpNib2G<> >>128
GJ!!こういうの好きだなぁ
怖いけど面白い

>>129
GJ!良いおばあさんで狼さんよかったねー <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/04/10(金) 09:43:47 ID:6uZHsRNf<> お題下さい <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/04/10(金) 10:08:05 ID:+GA0oosV<> 超能力 <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/04/10(金) 10:23:50 ID:6uZHsRNf<> OK把握 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/10(金) 17:04:13 ID:9sCyIKCv<> よく考えたらこういうところで簡単にお題創作やるからS1廃れちゃったのかもね <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/10(金) 18:34:32 ID:dAG8mGSu<> >>127
おお、コクのあるお話ですな。実にいい感じ。

>>129
幸せな赤ずきんですな。これもいい感じ。

>>136
S-1は、何となくだが敷居の高さを感じる部分が
あったから、結局一回も参加してないんだよなぁ。

実際はそんな事無いだろうってのも何となくわかるんだが、
そういうイメージが出来てしまうとなかなか拭えないw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/10(金) 19:47:35 ID:pkxXOnl+<> 気軽に落としちゃえばいいのに
おれなんて2分で書いたらくがき(マジで素人のらくがき)落としたりしたお <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/10(金) 19:50:33 ID:dAG8mGSu<> またそのうちねー。

さて、閑話休題。

お題:超能力

です。 <> 超能力
◆Wj5TiW8RtM <>sage<>2009/04/12(日) 01:09:37 ID:DU8U5hZC<> 超能力少女は空を飛びたいと言ってきた。
「へぇ、空」
「はい。空」
この自称超能力少女にとり憑かれたのは高校二年の春。
ほんの三日前に、僕に向かってそう言い出した。
迷惑な美術部の後輩である。
「で、どう飛ぶんだ?背中に翼でも生やすのか?」
「失礼な。小野々木先輩は女の子の気持ちが分かってないです」
急に頬を膨らませて怒り出す。
別に超能力が使えるっていう女の子の気持ちが分かりたくも無いわけでもないが。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、彼女は勢いよく喋りだす。
「つまりですね、念動力――サイコキネシスで自分の体を飛ばすか、瞬間移動――テレポートで空中に移動するわけですよ」
「へぇ」
めんどくさいし、聞きたくない。
第一、俺は高文連に出さなければいけない絵のデッサンが残っている。
だったら――
「おい、文乃。ここの窓辺に立って、目を瞑ってろ」
「え……はい」
いぶかしんで、彼女はそこに立つ。
目を瞑ったのを確認してから、俺は静かに窓を開ける。
「両手を広げて」
「?」
言われたとおりに両手を広げる。
俺は心の奥のほうで念じる。

――動けと。

「わっ!」
急に風が吹いて、桜の花びらが部屋の中まで降ってくる。
文乃は呆然として目をパチクリとさせた。
「な。空飛んでる気になったか?」
俺は文乃に聞く。
「……こんなの、ただの春一番じゃないですか」
むっつりとした顔で彼女は答えた。
「……でも、綺麗でした」
俺は笑った。

それはある高校の、ただ一日の春の風景。
                    〜fin.〜 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/12(日) 01:11:09 ID:DU8U5hZC<> ちょっと書いてみました。
お題くれた方、読んでくれた方感謝w <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/04/12(日) 05:58:31 ID:uyNFHyaP<> 甘ずっべえぜ!
<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/12(日) 12:20:19 ID:CSdkZbZ0<> 好きだなぁ、こういうのw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/15(水) 01:49:15 ID:WZMLb9KO<> 何か爽やかですねぇGJ! <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/16(木) 03:32:12 ID:zbjPJC0E<> 角刈り頭に捩じり鉢巻き、ニッカポッカに地下足袋。
超能力植木職人、真緑 繁(まみどり しげる)である。
その男は、上空5000メートルの高さから眼下に拡がる大砂漠を睨み付けていた。
「む、無理です!砂嵐が激し過ぎて降下できません!」
ヘリの操縦士が暴れる操縦桿を握りながら弱音を吐く。
真緑は事も無げにこう言った。
「ならばよい!門扉を開らけいぃ!」
真緑はパラシュートなど付けていない。
「落下傘降下なんて不可能ですよ!」
操縦士はパラシュートを渡さないし、扉も開けなかった。
「うぬは儂を見縊って居るな!?ならば自力で開けるのみ!!ぬぅぅぅあああぁぁぁ!!!」
真緑はニッカポッカのポケットから種を取り出し、
潰さんばかりに握り込んでから、大砂漠に「ぽいっ」と投げ落とした。
「しばし、待たれい」
真緑がそう言う間にも、砂漠では明らかに以上が起こっていた。
物凄く太くて長い蔓が、捩じり合い絡み合い差さえあって立ち上がり、
ヘリを目指してズルズルと伸び上がっていたのだ。
それは調度、真緑の落とした種が着地した地点から伸びて居た。
「ちょっ、まっ……!」
──ガゴン!
操縦士はヘリごと逃げようとするも、異音とともにヘリは一切動かなくなった。
蔓に空中で縫い止められてしまったのだ。
「では、仕事をしてくるぞ」
真緑がそういうと、ヘリの扉が金属を引き千切る甲高い音と共に、外側から蔓の一本にむしり取られた。
真緑は蔓の上を風の様に走りくだり、大砂漠の砂塵吹き荒れる荒野におりたった。
「真緑の力思い知れい!!うおおおお!超・濃・緑!!!!」
一瞬の出来ごとだった。
砂漠の砂を押し退けて、サボテンが、草が、木が、大木が、生えた。
生えた。
生えた。
育ち、枯れ、腐り、そしてまた生えた。
大深度の養分を吸い上げて腐れ、またそれを養分に植物が育つ。
まるで植物のみが早回しの映像のように、誕生と死と次なる糧となる輪廻を繰り返す。
そうして大砂漠がアマゾンのような密林へと変身したのち、真緑はがっくりとうなだれた。
「……生やし過ぎた」
真緑は植木職人である。
ただボウボウに生えたまくってる状態の原野はあまり好きでは無いのだ。
ちなみにこの30年後、地球は真緑の超濃緑パワーで緑が溢れ過ぎ、酸素の過剰供給で火事が頻発して滅んだ。

終 <> 携帯
◆4c4pP9RpKE <>sage<>2009/04/16(木) 03:37:08 ID:zbjPJC0E<> おやすみなさい…… <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/16(木) 10:07:22 ID:i7xWFm+8<> ちょwwwwwwwwおまwwwwwwwww地www球wwwwwオワタwwwww <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/16(木) 12:10:05 ID:ywe8iaUg<> ちょwwちなみにで滅んだww <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/16(木) 20:20:36 ID:phjkGDiW<> ちなむなwwwww <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/17(金) 01:54:32 ID:r9HTKf3u<> なんちゅーカオスwww <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/17(金) 03:27:51 ID:ls8lsFIo<> 殺した。
僕を。
忙しさで。
忙殺って奴だ。
謀殺、としてもよいような、計画的な忙殺だ。
疲労は限界を超えると自覚が無くなると言う。
ランナーズ・ハイ。
ワーカ・ホリック。
過労死?
望むところだ。
何かしていないと、思いだす。
僕を殺していることを。
現在進行形の謀殺は、忙殺の自覚を、謀殺するため。
歯車は自覚してはいけない。
歯車は忙殺されて磨滅する運命にある。
歯車は自覚してはいけない。
磨滅する運命を。
ハグルマハジカクシテハイケナイ。
ふと、見回す。
スーツとデスク。
山積みの吸い殻。
林立の健康ドリンク。
締切り間近の企画書。
書きかけのワード。
最小化されたアイチューン。
耳とパソコンを繋ぐヘッドホン。
大好きなポップス。
朝4時を指すアナログ時計。
窓。
残業の朝焼け。
ビルの谷間。
ああ! なんて……綺麗なんだ。
感嘆符の、朝日。
「はは」
思わず、笑ってしまう。
冗談みたいに、綺麗で、清々しい。
窓を開け放った。
朝の風。
油に塗れた髪、ぬるぬるする脇、汗臭い身体。
全部、浄化された気がした。
全部、報われた気がした。
会社の鍵を締め、銭湯へ。
風呂からあがったら。
予備のスーツを着たら。
会社に戻ったら。
また、今日が始まる。
ランナーズ・ハイ。
ワーカ・ホリック。
望むところだ。

歯車も、悪くない。

終 <> 携帯
◆4c4pP9RpKE <>sage<>2009/04/17(金) 03:29:52 ID:ls8lsFIo<> 残業の朝焼けってなんか憬れます。
つらそうだけど。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/18(土) 03:25:37 ID:r3jfKu20<> 刺青の昇龍も雄々しい、サラシを巻いたヤクザが居る。
ヤクザの前にはルーレットがあり、それを見ながらヤクザは呟いた。
「るぅじゅ・のわぁる」
ヤクザの不器用な発音を聞いて、近くに居たバーテンダー然とした男が吹き出す。
オールバックの金髪に青い瞳。外人である。
「あ?何笑ってんだゴルァ?テメーぶっ殺すぞクラァ!」
外人はヤクザの怒声に肩をすくめた。やれやれだぜって感じだ。
外人はルーレットの近くに無造作に置かれた畳みに土足で上がり、
サイコロをカップに投げ入れてこう言った。
「ハン、カ?チュウ、カ?」
今度はヤクザの笑う番だった。
「ぎゃはっ!お前だって喋れてねぇじゃねーか!ひゃっはっはっ!」
「OH!HAHAHAHA!」
照れ隠しにか、外人も快活に笑って。

──ガチャリ

マグナムを引き抜いた。
後、銃声銃声銃声。
ヤクザはルーレット台を蹴飛して返し、弾丸を遮る。
台の影に滑り込んだ時、すでにヤクザの右手は痺れていた。
一発もらってしまったのだ。
外人の足音が、何ごとかを喧々と叫びながらヤクザの隠れる台に近付いてゆく。
殺してやる、といった内容を口汚く叫んでいる外人と対照的に、ヤクザは至って静かだった。
ヤクザはサラシに仕込んでいた合匕口を出し、柄を咥え、鞘を左手で掴んだ。
限界まで腰を落とし、身体をグッと丸める。
極道流合匕口抜刀術“剣牙虎の構え”である。

外人が台の裏を覗いた瞬間、ヤクザの合匕口が閃いた。
爆発的な跳躍と共に鞘から抜き打たれる反動を加え、喰らい付く猛獣の如く咥えた合匕口で切りかかる。
正しく剣牙虎と呼ぶに相応しい妙技だった。

──ガキュ!
──バギン!

合匕口とマグナムが交錯し、片や半ばから折れ、片や弾丸を装填する弾倉に刃が突き立ち、
その両者が両者ともに用を成さなくなってしまった。
外人とヤクザは睨み合う。
そして同時に、
「はぁ」「ハァ」
と声を揃えて溜め息をついた。
外人はマグナムを放り、ヤクザは合匕口の柄を吐き捨てる。
極道とマフィアの異文化交流、博打フェスティバル2009の開催は間近である。
ヤクザと外人は互いにルーレットと半丁博打を教え合うのだった。 <> 携帯
◆4c4pP9RpKE <>sage<>2009/04/18(土) 03:26:47 ID:r3jfKu20<> 眠い <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/18(土) 03:53:38 ID:pi8+s6cw<> 絶妙にほのぼのしてるなww
主催者は何を思って開催したんだそんなのw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/18(土) 09:44:17 ID:LYOU/2+S<> 乱れた息遣いとともに歩幅の短い足音が細い路地を駆けていく。
こけそうになりながら、それでも追いつかれまいと必死に体勢を立て直し、無我夢中で震える足を突き動かす。
どこに向かっているのか。そんなことわからない。でも逃げなきゃ確実に殺される。
目の前で殺された両親や兄弟たちのように。
そう、断末魔をあげながら引き裂かれ、ぐちゃぐちゃに食われ、果てはあいつらの仲間になって生きた人間を襲うようになる。
そんなのいやだ……!
ぼろぼろと流れる涙が頬を伝い、雫となって背後へと消えていく。息をするたび触れ合う歯が、がちがちとうるさい音を立てた。
もうどこまで走ったかわからない。体力はすでに限界に近かった。
連中は歩いてしか追ってこなかったし、だからこれだけ走れば完全にまいたはず。
走るのをやめ、壁に手をつきながら恐る恐る振り向く。
「…………はぁっ」
想像どおり、背後についてくる化け物たちはいないようだった。
安堵した瞬間ひざが急激に笑い出し、立っていられなくなって思わずその場にへたり込む。
サウナに入ったかのような暑苦しさが全身を包み、のどはがらがら、すごい量の汗が噴出し、体中ベトベトで気持ち悪かった。
恐怖か疲労か悲しみか、手も足もどこもかしこも笑ってしまいそうなほど震えている。
ここでうずくまって声を枯らして泣き果ててしまいたい。
でも、きっとここに留まっていては化け物たちに追いつかれてしまうに違いない。せめてどこかに隠れなければ。
壁に両手をつき、爆笑中の足をゆっくりと立たせる。
走る気力はもうない。それどころか転んでしまわないよう歩くだけでも精一杯だった。亀のような歩みで少し先に見える窓に向かう。
お願い……開いてて……。
神様でも仏様でも閻魔様でもいい。願いを叶えてくれれば誰でもかまわない。祈りながらやっとのことで窓の前までたどり着き──。
破裂音。
目の前の窓ガラスが突然粉々に砕け散る。反射的に防いだものの、破片は容赦なく肉を切り裂く。だがそれだけでは終わらなかった。
低い唸り声の重奏、それと同時に窓の向こうから伸びる何本もの変色した腕の群れ。
それらは瞬時に髪や腕をつかみ上げ、窓の中へと引きずり込んだ。
「ああああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」
おぞ気立つような恐ろしい悲鳴を上げるが、そんなものは目の前の化け物には通用はずもなく。
化け物の群れは大口を開け、今まさに新鮮な肉にかぶりつ、爆発音が響いた。
肉片と血しぶきが雨となって降り注ぐ。鼓膜が破れそうな音に思わず耳をふさぎ、同時に押さえていた力が消えていることに気づいた。
その合間にも爆発は二、三度続き、そのたびに肉片が飛んでくる。
爆発音がするほうへと目を向けると、見知らぬ中年親父が細長い銃で化け物たちを撃ちまくっているところだった。
視線に気づいた親父は余裕の笑みを浮かべ、
「五秒待ってな、キュートガール」
そう言って中にいた最後の化け物の頭を吹き飛ばした。
「さてっと」
銃を下ろし、親父は呆然としている少女のもとへと歩いていく。だがその瞬間、少女の目が見開かれる。
「おじさん、うし──」
ごり。
少女が叫び終わるよりも早く、親父は振り向くこともしないまま背後から襲いかかろうとしていた化け物の口の中に銃口を突っ込んでいた。
振り向き、おどけるように眉を上下させてみせる。
爆発音。最後の化け物の頭は潰れたトマトのようにぐちゃぐちゃに吹っ飛んだ。
「さ、もう安心だ」

割れた窓をふさぎ、そこに背を預けた親父は反対側の壁にうずくまり泣きじゃくっている少女を見据える。
「怖かったね……。でもおじさんが安全な場所に連れてってあげるから心配しないで」
「……おじさん……いいひと……?」
「もちろんさ。こう見えても、おじさんは今までずっとゾンビと戦ってきたんだよ。色んな次元で……永遠とも思えるほど……戦い続けてきた」
「……じげん……?」
「ああ、いや、気にしないで。ともかく、おじさんが来たからにはもう大丈夫だからね。君を絶対に救ってみせる。だからもう泣かないで」
「……うんっ」
親父の優しくフランクな口調に、少女はようやく少しだけ笑顔を見せる。
「よし、そうと決まったらこんなところとはおさらばだ。外に」
刹那、窓をふさいでいた木の板を破り、何十本もの腕が中へと伸びた。「な、うぐッ」油断していた親父は抵抗する間もなく全身を絡めとられる。
情けない声を上げながら窓の外へと引きずり出されていった親父は断末魔の悲鳴を上げた。そしてもう二度と親父の声が聞こえることはなかった。
「…………」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/18(土) 22:20:38 ID:aKO+oyPd<> そんなぁ、救いがねぇΣ(゚Д゚)ガーン <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/20(月) 00:04:11 ID:iABWM07I<> お、親父ぃぃぃぃぃ!!!! <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/27(月) 01:45:50 ID:/TOq7wYo<> 1レス長いんだなここ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/27(月) 15:02:17 ID:pBDlcML5<> だいたい文字数で二千文字、行数で六十行までおkです。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/27(月) 15:38:03 ID:ZycwdkzF<> 他板で書いてたときは千文字、三十行以内だったな
さすがに創作特化だから狭い制限にビクビクせずに書けて良いね <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/27(月) 15:41:31 ID:pBDlcML5<> 千文字、三十行でやると、俺は多分書けなくなると思うw

創発板の設定、ばんざーい!

でも一度縛り付きでやってみるのもいいかもな。
何事も鍛錬鍛錬。 <> スレ潰し患者A<>sage<>2009/04/28(火) 23:49:41 ID:qOv7dmOQ<> 遊撃

かみばなし

ある日、少年は、天使達に向かって言いました。
「僕は生きているのがつらい。だから死のうと思う。
でも、僕が死ぬと、きっと人類は滅亡し、太陽は輝きを失い、
地球は自転することをやめてしまうでしょう。
だから、僕が、もう少しだけでも幸福になれるように
協力してくれないでしょうか?」と。

天使達は、笑いながら言いました。
「生きたい者だけが生きれば良い。死にたい者は死ねばよろしい。
おまえごときの命運など、この星には何の関わりもない。
幸福になりたければ、努力をせよ。出来なければ、
生きているだけの価値も無い。助ける価値も無い」と。

少年は何も言わず去って行きました。

ある日、神様が地上にやってきました。

神様のもとに少年がやって来て、言いました。
「今日で、死のうと思います。今まで頑張って生きてきましたが、
もうこれ以上頑張ることに意味を見いだすことができなくなりました。
ご期待に添えなくて、申し訳ありません。」と。

神様は言いました。
「あなたが死ぬと、大勢の者が悲しみ、苦しむことになるでしょう。
どうかもう少しだけ、生きてはもらえないでしょうか。」と。

少年は言いました。
「僕はもう生きる気力はありません。天使達が望むような優秀な者や、
人々が尊敬する素晴らしい人に期待をなさってください。
無才で愚かな私には到底耐えられません」と。

神様は言いました。
「あなたが死ねば、全てが意味をなさなくなると言ったはずです。
この世界における歴史上の努力と苦しみのすべてが無駄になるのです。
私は、時を待たず、意味を失った全てを破壊するでしょう。そして再び世界を
作ります。そこでは、あなたのような少年が再び苦しみを背負うのです。

その者の成長のためなら、100万の天使と1000万の悪魔を送り込み、
100億の人類を作り出すでしょう。あらゆるものを作っては壊し、
如何なる非道も躊躇無く行わせるでしょう。
私が諦める日はきません。その者が次代を継ぐ日までは。」

少年は言いました。
「私には荷が重すぎます。よりふさわしいものはいくらでもいるでしょう。」

天使達が現れ、少年に言いました。
「さっさと持ち場に戻れ。好物の一つくらいなら用意してやるから」と。

神様は天使達に言いました。
「必要なものを与え、不要なものは排除しなさい」と。

<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/28(火) 23:54:34 ID:+mk4LTUy<> これはぐっとくる雰囲気ですのう。
良い意味で中二病的な突っ走り方というか。
結末の不明瞭さと神様の説得内容が何を意味するか想像すると色々楽しめますな

会話部分、字下げした方が読みやすいかも。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/29(水) 02:32:46 ID:duL3Tp9Q<> 正直、この人に中二病って言うのは狙ってやったとしか思えないんだが……
ハルト四コマだろ? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/29(水) 02:44:43 ID:SEXeJAWL<> 流れがよくわからん
IDとかで追える物なんか <>
◆91wbDksrrE <><>2009/04/29(水) 18:52:04 ID:YEBTsN8e<> カムヒア、お題ターン3!

赤いボタンを〜知ってるか〜い♪(違 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/29(水) 18:55:23 ID:e/gMGglm<> お題:熱い <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/29(水) 19:01:44 ID:X+jixZ4Y<> お題:体が火照って切ない夜 <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/04/29(水) 19:29:58 ID:YEBTsN8e<> 「ふぅ……」
 夜空を見上げれば、そこには満点の星空……なんて事がありえない
のは、この街に住んでもう十数年、とっくに理解している。
 それでも、私はこの時間、夜気に身体を晒すのを日課にしていた。
 昼間と比べて、夜になると寒気を感じるくらい涼しくなるこの季節。風呂
上りで火照った身体には、その冷たさが心地いいのだけれど、何となく
見上げた空には、お月様がぼんやりと輝いているだけで、星の光は一つ
として見えない。もっとも明るいはずの金星も、北天の頂にあるはずの
北極星も、誰でも知ってるオリオン座の三ツ星も、何も見えない。
 街が明るいのはいいことなのだろう。そこに沢山の人がいて、ちゃんと
生きているという証なのだから、悪い事ではないはずだ。なのに、どうして――
「――どうして、見えないとわかってのに、見たいと思ってるのかな」
 呟きは夜の空に散って消える。
 街の明かりにかき消される星の明かり。それを見たいという望みを最初に
抱いたのは、いつの事だったろうか。
 星が見たければ山の方に行けばいい、と人は言う。でも、それは違う。
それは、この街で見る星ではなく、その山奥で見る星だ。
 私が見たいのは、この星の見えない街で、それでも見える星――
「……まったく」
 自嘲が笑みとなって顔に浮かぶ。
 自分でも、よくわからないこだわりだ。何をそんなに拘るのか。何故そんな
にもこの街で、このベランダから星が見たいと思うのか。
「……変な奴だよね」
 見えたからと言って何かが変わるわけでもあるまいのに。そもそも、
そんな風に星が見える事が、この街であるはずが無い。
 ……あるはずが無い?
「あれ? ……あれれ?」
 じゃあ、どうして……どうして私は……
「覚えてる……このベランダから見た、満天の星空……?」
 記憶の糸を、取りとめも無い思考と呟きがたぐりよせ、私の脳裏には、
その全天を覆うあの如く広がる星空が浮かびあがっていた。
 今まで、夜空を見上げながら何となく感じていたぼんやりとした物が、
すーっと晴れていくように感じた。
 その光景を思い出した時、私は一つの答えを得た。どうして自分が
星の無い空を見上げ、その空に星を望んだか、の。
 もう一度、その光景を見たかったからだ。
「……いつ、見たのかな?」
 記憶には、星の輝きしかない。それがいつ見た物か、どうやって見た
ものかは、思い出すきっかけすらも見当たらなかった。
「……なんで、覚えてるのかな?」
 問う声に答えがあろうはずが無い。星はこの空にはおらず、月は霞の
向こうに隠れてぼんやりと輝きが見えるだけだ。明るい街の中を歩く
人々は、その月のようにぼんやりとしか見えず、私の呟くような問いかけに
気づく事は無いのだから、応える声が生まれるはずが無い。
 でも、私の身体は、冷たい夜気に晒されているにも関わらず、その内
から熱を生み始めた。興奮している、という自覚が伴うと、その熱は
一気に体中に広がっていく。
「……見れる、って事だよね?」
 忘れていたその光景を、私は二度と忘れまいと心に決めた。
 忘れずにいれば、いつかもう一度あの光景を――街を眼下に見下ろして、
星々が輝くあの不思議で美しい光景を、もう一度見られるだろうから。
 今までは思い出す為に見ていた。これからは、もう一度見る度に見る事に
なる。一歩、進んだという事なのだと、そう私は考えた。
「……へへ」
 身体は興奮で上気して、心は興奮で熱くなり、私の顔には自然と
笑みが浮かんでいた。自嘲ではない笑みが。

 ――それから数ヵ月後、日本を未曾有の大地震が襲った夜、私は
願ってやまなかった星空との再会を得る事になる――
                                      終わり <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/04/29(水) 19:30:10 ID:YEBTsN8e<> ここまで投下です。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/04/30(木) 11:21:54 ID:Kiz8repZ<> 悪戯狸は婆様を石臼で打ちすえ、殺してしまいました。
そうしてから薪割用の鉈でブツ切りにし、包丁で角斬りにし、味噌で煮込みました。
婆様の腹を裂き、肝のシチュウも作りました。
腸の中身を絞り捨て、柔らかそうな肉を選ってソウセエジも作りました。
乳房の脂肪を刻んで混ぜた、肉汁たっぷりの自信作です。
残の骨も金槌で砕き、婆様の骨のスウプも作りました。
ですが、いかんせん健康的な野菜中心の食事を婆様が心掛けていたためか、少し臭みがあります。
欧州肉に付物のグラス臭です。
狸は悩んだ挙句、食材を猟りに行きました。
世界には数多の珍味、妙味、絶味が在ると聞きます。
百花繚乱の食材も、料理人の腕次第で、生まれる料理は千変万化。
狸は真の料理を求めて何時終えるとも知れぬ食の求道に歩み出したのです。
二十余年ののち、狸は己が寿命を知り、その料理の業の全てをお爺さんの息子に伝えました。
(お爺さんは婆様が居なくなってすぐにウサ耳の似合うバニーガールと再婚しました。これはその人との息子です)
まだ25の再婚相手は、お爺さんにメロメロでした。
「夜伽の技が円熟の域に達してるんです……その、ほんと、凄いんです……!」
とは再婚相手のバニーガールの弁ですが、意味はよく分かりません。
婆様の霊魂は天界に登りました。
天界では失業率の増加が著しく、発表された八分二厘(はちぶにりん)の統計より、実感ではその二倍も失業者が溢れていました。
天界では見た目の齢を自分の好きなものに変えられるため、婆様は売女になりました。
幾多もの役人と夜伽を繰返し、清濁も白濁も合わせのみまくりまくりました。
そうして得た役人同士の弱み辛みを駆使し、婆様は新参でありながら高級官僚にまで登り詰めました。
婆様は天界の失業率を改善する妙案を次々に考案し、天界の女公明と表されるようになりました。
めでたしめでたし。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/05/01(金) 21:53:22 ID:MkByHLlm<> >>163
本当に神はこんなことを繰り返してきたのか
それともこれはすべて少年の妄想なのか
なんか深い意味がありそな話やね

>>170
これはいい雰囲気の話…と思ったらオチがw
まさかこんなオチがくるとは予想外だった

>>172
めでたしめでたし・・・なのか?
なんかあらすじ感が強すぎるお無理に1レスにまとめないほうがいい気がするお <> 創る名無しに見る名無し<>age<>2009/05/28(木) 05:08:07 ID:mOZ7ytMI<> 死にたいと考えるなんてのは今ではごく当たり前だろう。
僕も例に漏れず死にたい症候群だった。
死にたい。
消えたい。
消してほしい。
ピリオドのドットひとつ自分でプロットできない他力本願の僕は、あるとき変わってしまった。
それは死に際の祖父さんを看取ったときからだ。
祖父さんは末期癌の末期の末期で、痛みで錯乱していた。
「いたい。いたい」
祖父さんは一族郎党雁首揃えての衆人環視を一身に受けて悶えていた。
「ああ。あっちは富山やねぇ。次は金澤かねぇ。」
祖父さんは冷や汗をかきながらうわ言を呟く。
霞んだ視力に窓から射す陽光が富山の大空襲に見えているらしい。
近所の家の二階から富山が夜に燃える様を見ていた。
元気だった頃、祖父さんが一番よく話していた戦争のエピソードだ。
「おっそろしいもんやねぇ。売薬のじっちゃん、生きとるかねぇ。」
祖父さんの顔は真っ青である。
でも、その表情は何処か恍惚として見える。
病室にいる誰もが、ただただ口を噤んで祖父さんを見つめる。
「すごいがに燃えとるねぇ。綺麗やねぇ。」
祖父さんの目が、窓の光を受けて、テラテラと光る。
「綺麗や。綺麗やぁ。」
祖父さんは錯乱の混濁で過去に跳び、じっと富山を見つめていた。
その目はまるで一番欲しい玩具をウインドウ越しに見つめる子供みたいで。
今から死に逝く者の諦観なんて微塵も感じさせない、純粋な輝きに満ちていた。
「明日かねぇ。こっちは、明日かねぇ。」


しばらくして、祖父さんが死んだ。
その場の誰も認識せず、ずっと60年前の金澤から富山を眺めて死んでいった。
なんだかわからないけど、僕は祖父さんの死に方に、
とんでもない希望というか、今まで味わった事のない憬れを感じた。
自分でピリオドを撃つ?
誰かにトドメをさしてもらう?
御免こうむるね。
そう思える自分が居た。
僕は大学を休学しバイトをやめて旅に出た。
きっと、止まったら死ぬ。
だから動き続ける。
祖父さんが見た富山を、僕も見つけるために。


終 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/05/28(木) 16:49:30 ID:ecVRIpfW<> 決意、ですなぁ。
何かかっこいいぞ。 <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/06/07(日) 13:08:29 ID:zKzTGb+9<> あるところに、信心深き女がいた。やがて彼女は身ごもり、ある冬の暮れに
出産間近となった。
教会のひと部屋で、出産に備えた夜。一人になった女に白き狼が訪れた。
彼女はそれが、神の使いであることをすぐに悟った。
「信心深き、わが主の子よ。その深さゆえにそなたの子には神の祝福がもたらされん。
その祝福に何を望むか?」
女は手を合わせひざをつき、うつむいたまま言った。
「誰からも、愛される子でありますように。ああ、わが神よ。感謝いたします。」
「そなたの願いは叶うであろう。だが、ひとつ覚えておかれよ。
夜が明けるまで、部屋の扉を決して開けてはならない。なぜなら、同じように悪魔の使いが
訪れ、お前の種から最も大切なものを、奪っていくであろうからだ。」
女は感謝と共に狼を見送り、部屋の戸を閉めた。
しばらくして、教会の助産婦が真夜中に部屋の戸を叩いた。
「薬湯でございます。」
女はしずかに「いまはよく眠れそうですの、どうか一人にしておいてくださいませ。」と言った。
つぎに、牧師が訪れこう言った。
「おかわりございませんか?どうか、あなたのご出産のための祈りを、私にささげさせてくれませぬ
か?」
女はしばらく考えて、「ありがとうございます。牧師様。では、明日の朝、共に子の健やかな出産を
祈っていただけますか?」と言った。
そうしてしばらくたつと、空が薄っすらと白みを帯び始め、青々としてきた。女は夜明けの近さを
確信しほっと一息ついた。
その時、どたどたと聞き覚えのある足音が、部屋に近づいてきた。うっすらと匂いも感じられるよう
だ。女はまさかと思いながらも、足音に耳を凝らすと、どうやら間違いない。
「ああ、神様!!」と女は叫び。いてもたってもいられなくなり。自ら扉を開いてしまった。
扉を開けると、そこには何もいなかった。女は落胆し、再び部屋の中に戻ると、開け放たれた窓辺に
漆黒に輝く狼が座っていた。狼は女をじっとにらみつけて言った。
「神の祝福を受けた女よ。汝の子はその祝福のとおり、誰からも愛されるであろう。
だが、その子が誰かを愛することは決してない。我がその子の愛する心を奪ったからだ。」
そして、朝日が昇る前に、窓辺からすうっと消えた。
部屋に差し込む陽光の中で、女は自らの罪を悔い、泣いた。

やがてしばらくたち、女は少年を産んだ。端正整い、見目麗しい少年は、誰からも愛され、すくすく
と育った。多くの国から、多くのものが送られ、少年の家はたちまち大きくなった。
幾多の友人に、家族。その誰もが幸せそうな顔で、少年を褒め称え、また歓迎した。
また、少年は勉学にも優れ。医療に携わり、多くのヒトを救った。そしてまた多くのヒトが感謝と共
に少年を愛した。
だが、少年の気分は優れなかった。自分を愛する人たちは皆幸せそうな顔をするというのに、なぜ幸
せなのか少年には理解できなかったからだ。
やがて、少年は大人になり、妻を娶り、子をなした。妻も子も少年を深く愛していたが、少年はそれ
らを愛することが出来なかった。なんとか、その感情の源泉を手にいれようと、愛したふりを見よう
見真似で続けたが、どうしても理解できない。
やがて少年は、自分には人を愛するという感情が存在しないということに気づいた。それは少年をひ
どく悲しませた。

そして、少年にも死が訪れる時が来た。誰もが、死にゆく少年に悲しみと愛情と
感謝をささげた。
その晩、独りになると、白き狼が訪れた。
母親と同じく、少年にはそれが神の使いだということはすぐに分かった。
「信心深き者の息子よ。汝の生は神によって祝福される。なんじ、死の間際に何を望むか。」
白き狼は少し悲しそうな顔をしていた。
少年はしばらく黙っていたが、こう言った。

「もし許されるなら。ただ、人を愛する心を私にください。
誰かを愛することに勝る喜びなど、この世にありはしないのですから。」

「汝の望みは叶えられた。」
次の日の夜明け、少年は多くの人に看取られ、静かに息を引き取った。
ただ、その顔はどこまでも安らかだったという。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/06/07(日) 20:44:08 ID:C3tbT9gi<> う、美しい・・・ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/06/07(日) 22:24:28 ID:G/t9QVrz<> 1レスでここまで感動させられるとは
すんばらしい <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/06/09(火) 11:09:40 ID:6hfGxEhV<> >>176
序盤の1人ずつ追い返す下りが面白かった
完成度高くていいね! <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/06/11(木) 15:12:00 ID:WpIkGOYc<>  何をする為に生きるのか。そんな問いを想う事は誰にだってあるだろう。
 だが、それは想うだけだ。多くの人が、それを想うだけで終わる。なぜならば、
何をする為にという意味の追求が為されなくとも、人は生きているし、生きて
いかなければならないのだから。想った事は、想っただけで終わり、答えは
出ないままただ人は生き続け、生きる事が終わる頃になって、今度は過去形
として、何の為に生きたのかと、そんな風に想い――まあ、大概の人は笑みを
浮かべ、終わる。意味があったかはわからないが、だがそれでも、生きていて
良かったという満足の笑みを浮かべ。
 何の為に生きるのか。それはつまり、現在を生きる意味の確認と、未来を
生きる意味の探求としての問いであり、答えを出せない事が定まっていると
言っても差し支えのない、そんな意地悪な問いだ。意味が確認できてしまえば、
意味を探し出せてしまえば、いつかその意味は解消されてしまう。解消されて、
意味を失って――そうしたら、人はどうなる?
 何の為に生きるのか。それが答えの出ない問いでなければならないのは、
人が生き続ける為の必然だと言える。
 死ぬ時に過去形として想い、やはりわからないまま逝くのは、過去が思い出と
なっているからだ。思い出であるから、わからない事にすら満足ができる。
しかし、思い出としてならわかるというのならば、思い出となる前に理解を
得る事もできてしまうが故に、やはり思い出となった過去を想うことでも、
答えを出す事はできない。
 何の為に生きるのか。それは、そういう種類の問いだ。
 だが、ごく稀に。ごく稀にではあるが、その問いに答えを出せてしまう人間が
存在する。その人間の――稀であり、絶対数自体が少ない為、この言葉を
用いるのは不適切かもしれないが――大部分は、意味を見出し、解消し、
その上で死ぬ。あるいは、死んだようになってしまう。死人と等しくなってしまう。
意味を失えば、生きる事は……生き続ける事はできないからだ。
 だが、さらにごく稀に。稀の中の稀にではあるが、そうして意味を失い、残す
定めは死のみとなった人間が、そうなって尚生き続ける例がある。
 そんな珍しい人間の一人が――僕だ。
「……で?」
 彼女は僕の独白に、半ば呆れたような視線を向けてきた。おかしな話だ。
ここはもっとこう、熱っぽい視線が返ってくる予定だったんだが……。
「その奇特なお方が、私に何の用なのかしら?」
 それは、その……だね、ちょっと待って、いきなりそう性急に答えを求められても……。
「なんかさー、貴方ってホントこういう時回りくどすぎ。一言ではっきり言えば
 それで十分なのに、なんでそれができないのかなー」
 でも、それじゃあ僕のこの想いを君に伝えるには不十分で、だからこうして
百の言葉を費やして余す所無く君にこの想いを伝えようと……。
「はぁぁぁぁぁぁあぁぁあ……」
 彼女はため息をついた。深く。……僕は何か間違っているのだろうか?
「ノーベル賞獲った科学者様が、色恋の事になるとこんなに子供なんて、
 ホント、天は二物を与えないのねー……」
 な、何が言いたいんだよ君は!
「私は貴方が好きって事。結婚したいとも思ってるわ。貴方みたいな人、
 放っておいたら大変な事になっちゃう。私みたいなしっかり者が、ちゃんと
 保護しておいてあげないとね」
 ……へ?
「貴方は? さっきの長い前振り、要するに私に逢って、研究が完成したせいで
 失った生きる意味をもう一度見つけた、とか、大抵そんな所でしょ?」
 ……そ、そうですけど……。
「じゃあ、はっきり言って。私の事、好きなの?」
 ……はい、好きです。
「結婚、したいと思ってる?」
 ……はい、ぜひお願いします。
「じゃあ、ここ、サインして判子押してね。帰りがけに役所に提出しときましょ」
 え、えぇぇぇええええぇ!? なんでそんなもの用意して……。
「善は急げ、って事。とにかく……これから私といっぱい思い出作ってもらって、
 貴方が逝く時には『お前の為に生きられてよかった』って言わせてあげる。
 覚悟しておいてね」
 ……こうして、ノーベル賞を獲った研究者である僕は、彼女の尻に敷かれる事が決定したのだった。 終わり <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/06/11(木) 15:12:43 ID:WpIkGOYc<> ここまで投下です。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/06/11(木) 21:43:41 ID:Acaz2Dur<> なんとなく書き始めたあげくキャラ萌えで逃げたな
そういうのは読む人にも伝わるぞ <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/06/16(火) 00:39:50 ID:Bt2Bpdym<> 【面白そうな設定を考えて満足するスレ】
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12513/


VIPで月初めに一回だけスレが立ちます。
多くの人々の参加をお待ちしています。

したらばは、避難所みたいなものです。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/06/22(月) 18:55:59 ID:YNUXMlxn<> 色々あって大変な時期だけど、ちょっと書いてみようかな <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/06/23(火) 02:57:38 ID:uaIDLXTU<> 梅雨の鬱陶しさを楽しめるならば、あなたは幸せだ。
そんな言葉を誰かが言っていたような気がするから、きっと俺は幸せだ。
ジメジメするなら図書館へ行こう。
書を捨てよ、街へ出よう?
漫画のキャラクタに葬儀を行うほどのロマンチシズムは、今生いっぱい持ち合わせがございません。
図書館に行った事が無い人は損している。
勉強してる学生や、絵本をさがす小さな子供、六法抱えた法学者。
図書館は夢があふれている。
満ちて溢れて、本になって充満してる。
誰も彼もの夢が、持ってる本の表紙になって、溢れてる。
まだ見ぬ知識を吸収して、本を抱えた彼らは、自己を夢の姿へ、目的の姿へ変えて行く。
知的メタモルフォーゼ。
なあんだ、結局俺もロマンチストじゃあないか。
子供の無垢を讃えながら、青年の苦悩を蔑むのは、狭量な視点だ。
地下室の自問自答も、街で鬱屈するラスコーリニコフも、フョードルの遍歴も、微笑ましいじゃないか。
賢しいお延も、卑しい小林も、拙い津田も、皆悩んでいるじゃないか。
カフカもゲーテも村上春樹も、みんな悩んでいるじゃないか。
悩んで、しかも、それを楽しんでるじゃないか。
俺は、図書館で本を借りてから、街を散歩しようと決めた。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/06/25(木) 16:00:26 ID:7VhuIvZR<> >>185
お、これはリズムのある良い文章
明るくてポジティブだし、こういうのは声に出して読みたくなるね <> 街紹介<>sage<>2009/07/16(木) 03:35:20 ID:QbRJ51fE<> 尾張町から旧金沢大跡地へ向かって歩くと、大手堀に突き当たる。
金沢城を囲む堀りの一部だったものだが、緑の水が年柄年中たたえられており、
夏場は湿気が多過ぎて近寄りがたい。
池の中心あたりに湖水の濾過用らしき金網の取水口があるが、
藻が大量に付着していて御世辞にも機能を果たしている様には見えない。
緑の水中から辛うじて透けて見える金網の上には誰が投げ込んだのか二十センチくらいの石が積まれている。
そしてその上に、しばしば亀が甲羅干しをしている。
小学校の頃に放した亀かも知れない。
春には桜並木となる大手堀沿いだが、夏にはなんともしょぼくれた並木道である。
つい最近サンクスが出来たが百メートルも行けばローソンもある。
だが大手堀の横にある白鳥路に住んでいるのか、1メートルくらいの青大将もしばしば現れる。
金沢は戦火を逃れたせいか変に緑が残っているので、蛇によく遭う。
白鳥路についてだが、白鳥よりも烏が異常に多い。
夜には白鳥路に生い茂る樹々のアーチを烏が埋め尽くし、カァカァと鳴いて通るものを怖がらせる。
白鳥路はわけのわからん全裸のブロンズ像が多数設置されているので、
子供を連れて歩くと妙に扇情的な像を如何に見せないか悩むことが出来る。
白鳥路を通るならば是非とも真冬に、しかも沢山雪が降った時に通ってもらいたい。
金沢三文豪のブロンズ像が大量の雪を被ってまるで白いアフロヘアーになっているはずだ。
七月辺りは蛍の放流も行われていた気がする。
見る所なんて兼六園くらいしかないが、まぁ暇なら来て見るといい。
ナカタヤスタカの母校やサルゲッチュ、ICO、ワンダと巨像の監督の母校金市工なんかがみれたりする。
金工大まで行けばワタルとかのライターである広井王子とかも客員講師で来てたりする。
片町のオタクビルに入ればゴス服もアニメイトも801同人もある。
オタクビル内には県工、遊学、東あたりの学生も多いので、それぞれの制服を見比べて楽しんだりも出来る。
東の制服が変わったのはブルセラから流れた制服がAVで使用されたからだとの噂があるが、
真相は闇の中。
男性成人向け同人をお探しなら駅近くのマンモスでも探して見るとよい。
まぁなんていうか、意外とオタク文化が発達している地域である。
以上。 <>
◆91wbDksrrE <><>2009/07/20(月) 22:52:45 ID:z9tDmYHe<>  台風の夜というのは、思いのほか静かだ。
 風がびゅうびゅうと吹き、家々の隙間をごうと唸る音の最中に身を置いて、何故にそんな事を
思えるかと言えば、それは私が人間を嫌いだからに他ならない。
 トタン屋根を叩く雨の音も、ごろごろと遠くで鳴る雷の音も、それらは全て自然の奏でる激しい
和音(ハーモニー)で、不協和音などありえない。人為によってもたらされる不協和音(それ)と違い、
私の中に不快感を生む事のない心地よい音であり、そんな音にだけ包まれる事ができる
こんな夜を、故に私は静かだと、そう思うのだ。
 そんな、音に満ちた静けさの中を、私は前傾姿勢をとりながら歩く。雨に濡れるがまま、
風に吹かれるがまま、それでも歩く。行き先は特に決めず、日常にはありえない、あるはずの
ない街の中を。
 自然、私は笑みを浮かべていた。一体自分は何をしているのだろうという呆れの笑みが半ば。
もう半分は、そのあまりの心地よさによってもたらされたものだ。
 今、私は一人だ。一人でこの大自然の和音の中に身を置き、音鳴る静けさを享受している。
誰も彼も、台風という自然の猛威が接近する事を知り、家の中へと閉じこもり、道を歩く者は
私以外誰もいない。いるはずが――
「おや、恭子君」
 ――いた。ありえるはずのない街の中に、いるはずのない人間が、いた。
 黒い合羽に身を包み、柔らかい笑みを浮かべ、そこに立っていた。
「こんな所にいたのか」
 彼の口から紡がれる不協和音が、私の笑みをかき消していく。
 音鳴る静けさに満ちていた街を、彼の言葉という不協和音が崩していく。
 私は、彼を無視して歩みを進めようとした。彼がいなくなれば、崩れた街も元の静けさを
取り戻してくれるだろうと、そんな淡い希望を込めた歩みを進めようとして――
「……っ」
 ――突然吹き付けてきた突風にバランスを崩した。よろめき、こけそうになった私は、だが
しかし、地面に這う事はなかった。
「おっと」
 彼の腕が、私の身体を易々と支えたからだ。
「危ないよ」
 彼の腕の中で、私は身を固くした。彼に捕らえられてしまえば、もう逃げる事はできない。
否応無く、あの不協和音に満ちた世界へと――我が家という、偽りの安息の地へと、私は
連れ戻されてしまうだろう。
「さ、帰ろう?」
 彼のその言葉に、私は首を横に振った。何度も振った。彼の腕の中で、何度も、何度も。
「……帰りたく、ないの?」
「いや……いやぁ……いや……ぁ……」
 彼の紡ぐ不協和音に、私も不協和音でもって応え、何度も、何度も首を横に振った。
「そっか」
 そんな私の瞳からこぼれるものに、果たして彼は気づいたのだろうか。
 彼は、合羽を脱ぎ始めた。
「……え?」
 驚く私の身体を、合羽を脱ぎ捨て、一瞬でずぶ濡れになった彼の身体が包み込む。
「しばらく、こうしてよっか」
 そう言ったきり、彼は不協和音を紡ぐのを止めた。
 雨に打たれる部分の冷たさと、彼と触れ合う部分の温かさと、その違いに私は戸惑い、
身を再び固くする。彼はそれを感じ取ったのだろう。少しでも温かさを伝えようとするかの
ように、強く、だが優しく、私の身体少しでも多く包み込もうと、腕に力を込めてきた。
「……ん」
 冷たさが、温かさによってかき消されていく。
 不協和音を発しなくなった彼からは、心の音だけが伝わってくる。それは、自然が奏でる
激しい和音と共鳴し、私の心に安らぎを、私の顔に笑みをもたらしてくれる。
 ずっと、ずっとこうしていたいと、彼の心の音だけを聞いていたいと、そう、私は思った。
 ――そして――どれくらいの時が経っただろうか。
「おや、雨小ぶりになったね」
 気づけば、雨はほとんどやんでいた。風も弱まり、最早その激しい和音は聞こうとしなければ
聞けない程に小さくなっていた。――日常の、そこにある街が戻ってきたのだ。
「さて、早く帰ってシャワー浴びよう、恭子君。風邪ひいちゃうしね、僕も」
 彼が変わらぬ柔和な笑みを浮かべて紡ぐ、その不協和音に、何故か私の心は乱される事はなく――
「……うん」
 ――頷き、歩き始めた。笑みを浮かべ、ゆっくりと、だが、確実に――彼と、共に。 <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/07/20(月) 22:53:01 ID:z9tDmYHe<> 終わり

ここまで投下です。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/07/20(月) 23:23:33 ID:lAEl6iz9<> ううん、よく分からなかった <> A案<>sage<>2009/07/21(火) 03:47:50 ID:r8uGdcaD<>  カニューレが生い茂る病室に、天使が眠っていた。幼い子供の無垢な寝顔は正に天使だ
った。
 医者は悲しげぶった沈痛な表情を浮かべて時計を読み上げる。
 人の死など慣れて居るくせにポーズしてみせるいじらしさが無償に苛立った。

「22日2時39分、御臨終です」
「御両親様、再三説明致しました通り、脳死は人の死です。あなた方のご子息は法的に死
にました。彼のカラースもカルマもゴーストも、脳細胞の致命的欠損によって雨散霧消し
ました。臓器移植法の類推適用説に基きまして、彼の脳を除去し、身体をドナーに提供す
る事を裁判所命令によって求められます。あなた方は彼の治療費を借り入れる際に彼の身
体を抵当に入れてドナーの組合から融資を受けて居ますから、これを拒絶する権利はあり
ません。同意書にサインし拇印を捺印してください。大丈夫です、安心してください、彼
は死んでしまいましたが彼の身体は他の誰かの脳を移植され、ドナーの脳と共に生きて行
きます」
 医者は淡々とインフォームドコンセントだかクオリティオブライフだかの啓発に貢献す
るように説明をこなした。説明の際にも廊下を行き交う看護師に急かされて、眠って居る
ように死んでいる子供よりもゾンビらしい顔に疲労の汚泥の沈着を隠しきれない様子で半
ば自棄糞の様相で闇雲に口を動かしていた。
 何故お前がゾンビみたいな面をしてる?
 息子に死を宣告されたのは“俺”なんだぞ?
「彼の身体に新しい脳が定着し、10歳程度になったら、また病院から連絡致します。彼の
身体は別の人の物になりますが、彼の身体の遺伝子はあなた方にも権利がありますからね。
彼の生殖機能が成熟した頃に彼の精子を病院で保存致しますから、もしあなた方がお孫さ
んを欲しいと思ったら、インターネットで代理母を雇い、卵子バンクから好みの方の卵子
提供を受け、病院に連絡してください。遺伝子治療と基本能力に関わる塩基配列を500パー
トまで操作できますので、自然交配よりもずっとハイスペックなデザイナーチルドレンが
生まれますよ」


 医者は引きつけを起こしたような左右非対称の歪んだ作り笑顔を俺に見せて病室を出て
いった。明日生命維持装置を外すとかで、これが最後の別れとなるらしい。
 俺が窓の外を眺めている間じゅう、妻はさめざめと泣いていた。
 やがて妻は泣き疲れて眠ってしまった。
 最後の別れが出来て良かった。
 医者が席を外してくれて良かった。
 病室が6階で良かった。
 息子を常世に縛り付けるカニューレの戒めを引き千切る。
 5歳なのに3歳の体重しかない天使を抱く。
 窓を開ける。
『──お前を置いて行ったりしない』
 《カッコーの巣の上で》のラストシーンがフラッシュバックした。


 俺は天使と共に、空へ……



終 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/07/21(火) 03:57:56 ID:r8uGdcaD<> 間違えた……
生命維持装置外してしまったら移植できねぇ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/07/22(水) 22:31:05 ID:uv0MSsrw<> 時計の短針が11を指した。
本日の天気は曇り。梅雨明けの発表があったにもかかわらず、
いまにも泣き出しそうな空模様だった。
私はハンドルを握って溜息をついた。
繰り返されるルーチンワークと無理な命令。
できるはずがない。にげたい。やめたい。
身体の力が、抜けていく。
まるで握ったハンドルから精気が吸い取られているようだった。
幾度目かの溜息をつく。
まだ今日という日は半分も終わってないというのに。
こんなことがいつまで続く?
どうしてこんなことをしなくちゃならない?
どうして生きてる? なんのため?
うまれて、生きて、何も残さずに消えていく。
そんなことに何の意味がある?
「ああ、もう……」
とにかく、行かなきゃ。進まなきゃ。
なんとか身を起こしエンジンに点火しようとキーに手を伸ばす。
そのとき、窓の外の景色が妙に薄暗いことに気付いた。
太陽が雲に隠されてできる暗さではない。
ああ、これが。
そういえば今日だった。
人々は気付いていないのか、だれひとりとして天を見上げる者はおらず、
薄暗い通りを水槽のなかの魚のように行き交っていた。
ただ、私ひとりだけが薄暗い天の下で呼吸をしているようだった。
そうして外を眺めていると、先ほどまでの焦燥感が、
ぽうんと空に放り投げられたように散っていった。
私や車やビルや森や、なんやかんやを載せたこの星が、
休むことなくぐるぐる回ってこの日が巡って来たのだ。
来る日も、来る日も、ぐるぐる、ぐるぐる……
ラジオのスイッチをひねる。
ちょうどニュースでこの現象のことが報じられていた。
”……トカラ列島では雲が広がり、残念ながら観測は適わず
  それでも観測ツアーに参加した人々は興奮した様子で暗闇の中、
    次はイースター島へ行くぞと、声を上げていました。
      日本で次回観測ができるのは26年後とのことです……”

ラジオのアナウンスが耳に残った。
”26年後とのことです……”
26年後。
何故だかふいに涙がこぼれそうになった。
その時には私は何をしているだろう。
その時に今、車の中でひとり、こうしていたことを思い出すだろうか。
そうして、そんなこともあったと笑うことができるだろうか。
気がつくと通りはいつもの明るさに戻っていた。
夢から覚めたみたいだった。
さようなら。
きっとまた、26年後に。薄暗がりの中で。

<>
◆77r3yrtC9I <><>2009/07/25(土) 18:02:02 ID:om1BlTCS<> 「ピーターパンシンドローム」

「父さんはシャボン玉が好きだったんだ。
水で薄めた洗剤をストローに含ませる、そして割れない様に優しくふーってする、沢山のシャボン玉が生まれる、でも三秒もすると割れる、だから割れる前にもう一度優しくふー。
そうして視界いっぱいにシャボン玉が満ちてるのが好きだったんだ。シャボン玉越しに見る世界が好きだったんだ。そのうち一人じゃ物足りなくなって友達もさそってさ、シャボン玉越しにみんなで見つめ合うだ。素敵だろ?」
父が年甲斐もなく目をシャボン玉みたいに輝かせて語っていた。父のそんな所は好きなのでこちらも目を虹色にしてふんふんと頷きながら聞きつつ、
よし、今日はみんなを誘ってシャボン玉をしようと決めた。

ショートカットとロングと茶髪に、
日時、今日。
場所、いつもの場所。
装備品、シャボン玉液とストロー。
レクリエーション内容、シャボン玉戦争を開始する!
と、連絡して開催の運びとなった。

最初は戸惑っていたショーロン茶だったけれどすぐに一緒に楽しんでくれた。
虹色越しに見るあいつらはみんなキラキラ光って綺麗だった。何気ない風景も綺麗だった。シャボン玉に包まれて見る世界は全て輝いて見えた。
シャボン玉戦争が終わって、皆昂揚した顔で、
明日は何をしようか、流行りのアレはどうだろう、文化祭に向けてバンドでも組んじゃおうか、とか話している私たちの目は間違いなくシャボン玉色だった。


それから時間が過ぎた。
みんな別々の夢をもった。
離れ離れになった。
会う回数が減った。
大人になってしまった

あいつらを時々思い出してこんな事を思う。
あいつらは夢を叶えたかな。まだシャボン玉色の瞳をしてるのかな。割れてしまってないかな。割れてしまったなら、もう一度、優しくふーってすればいいんだよ。あの時にみたいに。
<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/07/25(土) 22:11:48 ID:ge/swKzt<> >>193
あー、なんか自分が26歳だから余計にかもしれないが、こう、倦怠感というか、
不思議な感覚に襲われた。

>>194
儚いけど、それだけじゃない感じがしていいね。 <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/09/09(水) 15:10:23 ID:snqG9WdS<> もう9月か <>
◆91wbDksrrE <>ウラトさんに脅されてage<>2009/09/09(水) 21:43:17 ID:fhclDy+c<>  電車に揺られながらふと外の景色を見れば、街中を歩く人の中に
長袖が混じり始めていた。
 そうか。私はその光景に改めて思った。もう九月なのだな。
 九月という月に思う所がある人は多い――のではないかと思う。
 何故かといえば、私自身が九月という季節に思う所があるからだ。
 九月という季節。
 そう、九月は一個の季節ではないかと、そう私は考えている。秋と
いうには暑い日も多く、夏というには朝夕の爽やかな涼しさはそぐわず。
一応、暦の上では秋に違いないのではないか、などという論理的な指摘
など知った事ではない。九月は一個の季節なのだ。少なくとも、私の中では。
 そんな季節を、私は思う。夏と冬という暑さと寒さではっきりと縁取られた
季節に挟まれた秋。その秋と夏との間に挟まれた九月という季節の、
その半端さ、曖昧さ、そういった物を、私は思わずにいられない。
 思えば思うほど、私はまるでそれが自分そのもののようだと、そう
感じられてならない。九月という季節は、即ち私なのだ、と。
 であれば、どうだろうか? 私は夏や冬にならなくても構わないのか?
それどころか、秋にすらなれないかもしれないのに、それで構わない
のだろうか? 半端で、曖昧な、そんな自分で構わないのか?
 愚問だ。私の頬が小さく歪む。
 私は私であり、そうそう変わるものではない。変えられるものではない。
構わなかろうが構おうが、すぐに私が九月でなくなれるわけではないのだ。
私は九月のまま、冬に焦がれるかもしれない。夏に惹かれるかもしれない。
いつかは、それらも越え、春へと変わっていくのかもしれない。
 だが、それはまだ先の事だろう。今はまだ、この半端な、曖昧な自分に
鞭打ち、何とか冬や夏についていくしかない。春は目指すべき目標かも
しれないが、それ以上ではない。今の所は、まだ。
 街中を歩く人の姿は、既に遥か彼方へと過ぎ去り、最早見えない。
 九月という季節が終わった事を私が実感するには、街路に半袖の人間が
いなくなり、代わりに赤と黄色の彩りが溢れた時になる事だろう。
 その時、私は一体どうなっているだろうか。
 最早九月である事を辞め、秋へと進み、さらに冬へと至ろうとしている
だろうか。それとも、流れに逆らい夏を身につけ、春へと着実に近づいて
いるだろうか。
 私にはわからない。何せ未来の事だ。さっぱり皆目見当が付かない。
 だが――
「だが……面白い」
 口端を歪めながら、私は瞼を閉じた。
 どこか遠く、蝉の泣き声が聞こえたような気がした――

                                      終わり <>
◆91wbDksrrE <>ウラトさんに脅されてage<>2009/09/09(水) 21:43:38 ID:fhclDy+c<> ここまで投下です。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/09/10(木) 21:39:10 ID:YD44Qu51<> うーん何ともコメントしにくい・・・
しかし投下乙 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/09/25(金) 12:54:33 ID:M/FiyBzd<> 保守派 <>
◆91wbDksrrE <>ウラトさんに脅されてage<>2009/10/05(月) 20:47:58 ID:42S+x/fp<> お題くれくれ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/10/05(月) 20:51:35 ID:gQNKV+hA<> 雲の泉 <> ◆91wbDksrrE <>ウラトさんに脅されてage<>2009/10/05(月) 22:11:09 ID:42S+x/fp<>  それは不思議な光景だった。
「……」
 山登りをし始め、それが趣味となってからもう何年になるだろうか。
 海のように眼下に広がる雲を、そこから突き出た山頂から眺めた
事は幾度もある。
 地上から眺めれば灰色のそれも、遥か山頂から見下ろせば、光り
輝く純白で、私はその美しさに幾度もため息にも似た吐息を漏らした
ものだった。だが、今目の前に広がる光景に、私は吐息を漏らすのも
忘れ、ただただ言葉をなくし、息を飲んでいた。それは、今まで何度と
なく登った山において、一度たりとて見たことが無い、不思議で稀有な
光景だった。
 その日の空は晴れ渡って雲ひとつ無く、頂上まで至ったとしてもあの
純白の雲は見られないだろうなと、登り始める時、私はそう思っていた。
だから、、随分と空気も薄くなり、吐く息も白くなり始めた頃にそれを
見つけた瞬間、私は驚きすら得た。
 頂上から見下ろす、遥か彼方まで広がる雲の姿を海と例えるのならば、
それはさながら雲の泉だった。四角く切り取られるように出来上がった、
四方を崖に囲まれた空間に、真っ白な雲が湧き出るように存在していたのだ。
 風が巻いているのか、それとも別の理由があるのか、本当に、泉に湧き
出る水のように、雲が常に動き、その空間を満たしていた。
 遥か彼方まで続く、一見して動きが見えない雲の海とは違い、その雲の
泉は限られた空間に限られた、だが動きのわかる形で存在していて――
故にこそ、海とは違う美しさを私に感じさせてくれた。
 何故そうなっているのか。それは自然現象に疎い私にはよくわからなかった
が、その光景が美しいという事は、それくらいはわかる。
「……面白い、もの、だな……」
 弾む息は、酸素の薄さ故だろうか。それとも、この珍しい、不思議な光景を
目にした興奮故だろうか。まあ、そんなのはどっちでもいい事だ。酸素が薄い
のも、目の前の光景に興奮しているのも、どちらも事実なのだから。
 しかし……カメラを持たない主義を事ほど後悔した事は今まで無い。この光景
を、ひょっとしたらもう二度と見られないかもしれない光景を、記録に残す事が
できないとは。まったくもって残念という以外ない。
 だから、私はせめてこの光景を記憶にくらいは残そうと、目を皿のようにして
見つめた。見つめる最中も、雲の泉はこんこんと湧き出て、その姿を変えていく。
 どれくらいの時間が経っただろうか。気づけば、太陽の角度が随分と傾き始めて
いた。時間を忘れる程、私はその光景に注視していたという事か。
 残念な事だが、山頂付近の山小屋に、日が暮れるまでには到着しなければならない。
 私は名残を惜しみながら、その場を後にした。
「……さようなら、雲の泉よ」
 もう見られないかもしれない……いや、恐らくはもう見られないだろう、雲の
泉に別れの言葉を投げかけると、彼は――彼女は――それに応えるかのように、
一際大きく湧き上がった。それが彼の――彼女の――別れの挨拶だったのだろう。
 まったく……こんな不思議な、そして美しい光景が見られるのだから、これだから
山登りは止められない。
 これからも、私は登り続けるのだろう。きっと。ずっと。

                                 終わり <>
◆91wbDksrrE <>ウラトさんに脅されてage<>2009/10/05(月) 22:11:45 ID:42S+x/fp<> ここまで投下です。

うぅ、自分の文章力の無さがよくわかります・・・。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/10/06(火) 00:02:54 ID:oqySsEFT<> お題をおくれ <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/10/06(火) 00:27:25 ID:Ka5Hn2y+<> お題 殺人 <> 創る名無しに見る名無し<>age<>2009/10/06(火) 07:35:00 ID:7u5mKBwP<> もっと明るいお題を <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/10/06(火) 10:24:29 ID:Vdza5tBG<> お題 当選 <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/11/01(日) 20:19:47 ID:HTQDz56e<> もう11月か <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/11/01(日) 20:25:06 ID:w0MtZ+MZ<> お題クレクレ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/01(日) 22:03:57 ID:dfSG+8Ec<> ブルーベリー <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/11/02(月) 00:02:05 ID:ZBjbsNfX<> 「酸っぱいんだな。ブルーベリーって」
「当たり前でしょう? まさかジャムみたいな味がすると思った?」
その頃、僕はちょうど目が悪くなってきた頃で、眼鏡をかける必要があるかないかの境目を間もなく超え
ようとしていた。目をいたわってやるべきだったのだろうが、当時の僕には健康のために生活を犠牲にする
なんて考えられなくて、すぐにもっと安易な方法に飛びついた。
ブルーベリーだ。
巷ではブルーベリーのナントカという成分が目にいいと信じられていて、その真偽の程は知らないけれど、
とにかくそれは僕にとってとても魅力的だった。
そして僕は、料理好きの彼女に頼んでブルーベリーを分けてもらった。
癪なことだけど、僕は確かにジャムみたいな味を想像していた。ブルーベリーなんてジャムでしか知らな
かったのだ。
図星をつかれてムッとしている僕を見て、彼女はただニヤニヤと笑っていた。
もう十年も前の話だ。

今日、スーパーでたまたまブルーベリーを見つけて、何だか懐かしくなってつい買ってきてしまった。
テーブルの上に放り出して置いてみたら、誰もいない家の中で、なぜだか独り恥ずかしい気持ちになった。
 ちょっと眼鏡を押し上げる。これは照れを隠す時の僕の癖だ。
ブルーベリーを一粒掴んで口に含む。
それはやっぱり酸っぱかった。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/02(月) 01:07:22 ID:JaxfuAja<> 想像させるなーw

甘酸っぱくなくて、単に酸っぱいだけだった・・・って事か。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/02(月) 01:42:39 ID:knL+2wLg<> 「言い忘れてたんだけど、今日の学芸会の劇で、血のりが要るんだけど」
そう言った、息子の一言が原因だった。

私は、常に頼られる母親になるべく努めてきた。
どんなわがままも、どんな難問も、愛と知恵で乗り切り、
息子の一番愛する人になることこそ、私の使命であり夢であったのだ。

今回の問題は簡単だ。単に赤い液体があればいいのだ。
ケチャップ・・・は切らしたっけ。
トマト・・・は昨日パスタにしたんだっけ。
イチゴ・・・は夫が嫌いなのよね。
「じゃぁ、しょうがない。おなじベリーなんだから」と、それを袋に詰め込んで息子に渡したのがいけなかった。

毒りんごを食べた白雪姫が青い血を吐いたらどうなるか、私はまだ見たことが無い・・・ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/02(月) 02:04:24 ID:JaxfuAja<> 白雪姫異星人説とか聞いた事無いから!w
これがかぐや姫ならまだイケたんだろうなw

っていうか、どじっ子なお母さんだな。気づけよw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/02(月) 02:08:49 ID:ZBjbsNfX<> お前の血は何色だ! <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/02(月) 06:56:16 ID:jSBatxjB<> >212
ジャムとかソースの味を期待して生ブルーベリー食べて
悶絶した俺が通りますよ
>213
母ちゃん、色盲診断受けてくれw

<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/03(火) 03:51:44 ID:WkTB0kmE<> 高いケーキにのってるブルーベリーって酸っぱくないんだぜ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/03(火) 11:17:15 ID:23JVmEYl<> お題カモーン <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/03(火) 12:05:09 ID:mocqipG6<> 海賊 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/03(火) 12:05:21 ID:qxN9Q2cr<> 甘納豆 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/03(火) 12:33:47 ID:23JVmEYl<> 私は関西の生まれなんですが、妻が関東で、しかも水戸の出身なんですわ。
せやから、言わんでもわかるように、あの豆が腐ったもんが好きでな、
私にも朝から晩まで食え食え言うてくるんですわ。
お前は、チョコボールかいな! って感じですわ。

で、あまりにその臭いのひどいもんを無視していたらですな、
妻が泣きよるんですわ。
「ここまで価値観が違うだなんて、もう我慢できない! 納豆を食べてくれなかったら別れる!」
って、そないなことで別れてたら、関東にはアベックがおらへんようになるやろ!

まぁ、そこはいいツッコミをしつつも、妻は本気らしいんですわ。
そこで友人に相談したら、ごっつういいアイディア出してくれはったんですわ。

次の日にな、妻の目の前で甘納豆食ってやったんや。
・・・それのせいで、今では独身ですわ。まぁ、関東の女は、あまくないっちゅうわけですな。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/04(水) 09:26:30 ID:SwBzPKtI<> ちょいちょい上手い事言ってくるオッサンに良い意味でイラっとするw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/04(水) 23:17:32 ID:s3kZOGhj<> 上手い事は言ったが、上手くはいかなかった、とw <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/11/08(日) 03:00:42 ID:6aeUv1wb<> オッサンのキャラが強烈すぎて目立ってないが、納豆食わないからって離婚する妻も相当アレだぞw <>
◆91wbDksrrE <><>2009/11/13(金) 21:13:27 ID:mDsZldDc<> お題くれくれ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/13(金) 21:31:53 ID:m1UqqoMp<> 大陸間弾道弾 <> ◆91wbDksrrE <><>2009/11/13(金) 22:15:14 ID:mDsZldDc<> ICBM把握。 <> ◆91wbDksrrE <><>2009/11/13(金) 22:48:41 ID:mDsZldDc<>  大陸間弾道弾。大雑把に言うと、大陸をまたぐ射程を持った弾道ミサイル
の事で、主として核弾頭を搭載し、遠距離核攻撃による抑止力を発揮させる
為に用いられ、その性質上、実際に兵器としての用を為す形で使用される
事は、まず無い。あってはならない、とも言える。
 軍事的知識には乏しいので、色々と間違いはあるかもしれない知識では
あるが、その知っている限りの知識から連想する大陸間弾道弾のイメージ
は、ここで思い浮かぶものは、それは、籠の中の鳥だった。飛ぶ為に、飛べ
るように創られたのに、それが叶わないという意味で。

 物言わぬ鋼鉄の体に、もしも心というものがあるならば、大陸間弾道弾は
一体何を思っているだろうか。飛びたいと、そう思っているのだろうか。
 籠の中の鳥は、いついつ出やる。夜明けの晩に――彼は飛び立とうと、
あるいは決心したりするのだろうか。
 だが、もしも心というものが、大陸間弾道弾にあるのならば――その心に、
人にあるような、良心と呼ぶべきものが存在するならば、大陸間弾道弾は
自ら飛ぶ事をあきらめるのではないだろうか。大陸間弾道弾が飛ぶという
事は、それは即ち、人類の滅亡を意味する事になるのだから。
 それを知って尚、大陸間弾道弾は――心ある大陸間弾道弾は、飛びたい
と、そう思うだろうか? そうは思えない。心ある大陸間弾道弾ならば、自ら
の思いを自制し、飛ぶ事を諦めるに違いない。
 結局、心があって、飛びたいと思っていても、彼は飛べないのだ。
 結局、心がなくて、飛びたいと思っていなくても、彼は飛べないのだ。

 であれば、と私は思う。
 大陸間弾道弾には、心があってくれた方がいいのではないか、と。
 彼が、自ら飛ばないでいてくれるから、私達は滅びずに済んでいる、と。
 私達が、人間が、彼を飛ばさせないから滅びない。そんなものは、人間
の思い上がりだと――そう考えていた方が、いいのではないか、と。
 もしもにもしもを重ねたもしもの話。
 気まぐれで大陸間弾道弾が飛び立ってしまったら、それだけで人は滅びる。
 世界のどんな紛争や、どんな政治力や、どんな独裁者や、どんな人間が
そうさせようとしてするわけではなく、ただ、只管、大陸間弾道弾個人の
気まぐれで、人が滅びたという結果になった方が――なんだかユカイだろう?

 もちろん、それは空想だ。想像だ。妄想だ。
 世界は今現在滅びていないし、これからも滅びないだろう。
 大陸間弾道弾に意志など無いし、自律行動で飛び立つ事も無いだろう。
 これは妄想だ。
 だがしかし、空想であり、想像であり、妄想であるからこそ、思う事ができる。
想う事ができる。人は。
 物言わぬ鋼鉄の体を。
 絵姿にしかそれを見る事が叶わない、大陸間弾道弾という存在を。
 善でも悪でもなく、ただ創られ、ただそこにあるはずの、彼を。

 この益体の無い話はこれにて終わり。
 結局、私はこれからも、大陸間弾道弾とは縁の無い生活を送るのだろう。
思う事も忘れ、想う事も忘れ、私にとっての世界が滅びる、その日まで。
 その滅びすらも、彼とは縁が無いだろう――きっと。

                                     終わり <>
◆91wbDksrrE <><>2009/11/13(金) 22:49:10 ID:mDsZldDc<> ここまで投下です。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/16(月) 21:53:29 ID:XOcdk0b4<> お題カモーン <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/16(月) 22:35:36 ID:90HeMnpG<> クリスマス・キャロル <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/16(月) 22:53:19 ID:XOcdk0b4<> 強欲な金貸しスクルージは絶望していた。
クリスマスの日に彼のもとに来た三人の精霊により、過去・現在のクリスマスを見せられ、
そして未来の精霊により、小さく荒れ果てた墓に刻まれた自分の名前を見たからだ。

そんな彼に、友人の幽霊はやさしく言った。
『・・・スクルージよ、今のおまえさんだと、こんな惨めな結末の人生を送ることになる・・・』
「マーレイよ・・・嫌だ。ワシはもっと立派な墓に埋葬されたい・・・」
『・・・今のままではダメだ。だが・・・心を入れ替えれば未来は変えられるぞ。スクルージ』
「ああ、分かったよ・・・分かったよマーレイ」
そして、にかっと笑って言った。

「墓がワシの財産で買えないほど高いとは思わなかった。全員の金利をもう10%上げることにするわい」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/17(火) 21:55:01 ID:OttAsvlt<> とある土曜日の事。最近流行の喫茶店へ友人と行った。
友人は「一人で行くのは恥ずかしい」と言いながら、秋葉原のホームに降りる。
ぼくは友人の後を追いながら、混沌とする電脳街に飛び込む。右手にメイドさん、左手に魔法少女。
バスガイドさんだったら、案内するのに恥ずかしくなるであろう路地を歩く。
しばらく歩くと、華やかな看板も減り、メイドさんも魔法少女も姿を消していた。
「ここだよ、ここ」
友人ははやる気持ちを抑えながら、目的地の扉を開く。

「おいーっす!」
店の主らしき中年男性のだみ声が響く。友人は負けじと「おいーっす!」と返すが、
「声が小さい!おいーっす!」と主から返されてしまった。
よく見ると、主は喫茶店なのにはっぴを身にまとい、足元はデッキシューズという身なり。
おまけに首からはカラオケのようなマイクをぶら下げているではないか。
「もう一度、おいーっす」と叫ぼうとした瞬間、店内の照明が消える。先客たちもざわつき始め、ぼくは一抹の不安に包まれる。
しかし、彼らはこの状況を楽しんでいるよう、と言うか興奮していたのであった。
「運がいいな。きょうは『伝説の再来』イベントの日だよ」
と、友人は心底嬉しそうだった。店の主が懐中電灯を持って、自分の顔に光を当てていた。

しばらくすると、灯は元に戻り何事もなく店は営業を始めた。
中年の垂れ目のウェイターの案内で席に着くと、彼はぎこちなく注文をとる。
「えっと、紅茶をひとつお願いします」
「あんだって?」
「紅茶をひとつ」
「あんだって??」
わざとらしく耳を近づけた垂れ目のウェイターは、店の主にメガホンで叩かれながら奥に引っ込まされた。
あっけに取られるぼくをよそに、友人は腹を抱えていた。店の主は厚い唇を震えさせていた。

先ほどの垂れ目のウェイターが注文の飲み物を運ぶ途中、彼の背後に怪しい影が忍び寄る。
どうしたことか、マンガのようなオバケの格好をした店員が、彼の後を付けているのである。
それに気付いた客たちは、その状況を「待ってました!」と、言うように騒ぎ出し、いっせいに声を彼に送る。
「シムラ!後ろ!後ろ!」
しかし、その声援空しく彼は全く気付かないのであった。

注文を待つ間、先客が店を出ようとしていた。すると、店員全員が集合しいっせいに同じ踊りを始めていた。
「ババンババンバンバン!」
「お釣り忘れるなよ!」
「ババンババンバンバン!」
「宿題やれよ!」
「ババンババンバンバン!」
「また来いよ!」
店員の甲高い声を背に彼らは、土曜日の夜を迎えていた。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/17(火) 22:00:59 ID:tyCxZ3DC<> >>233
わかってねえええええw

>>234
地味にいい企画かもしれないと思ってしまったw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/17(火) 23:04:12 ID:Gu4BMTUo<> >>233
映画も来るし、タイムリーなネタだ。おもろかったw

>>234
あの一体感が今、蘇る……! ちょっと行ってみたい喫茶店だなw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/17(火) 23:30:47 ID:3DOJAV2g<> お題キボンヌ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/18(水) 20:03:25 ID:IgCC+UV3<> 赤 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/21(土) 00:32:32 ID:oOTiMemC<> こりゃまたシンプルなw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/23(月) 17:24:46 ID:mu7rMH3o<> 誰のためでもない法案を通すことで有名な、主民党が、また迷惑な法案を通過させた。
それは、「人種差別を誘発する単語の使用禁止法」というものだった。

そのせいで、人は「あの色」を呼ぶことができなくなった。
―それは、昔の日本では侮蔑用語だとされていたからだ。
それにより、人々は「あの色」を使えなくなった。
―なぜなら、その色を呼んでしまったら、逮捕されてしまうからだ。

それから60年。
子供たちは虹を六色と言うようになった。
「橙、黄色、緑、青、藍、紫。ねぇ、お爺さん。昔の虹は七色だったって本当?」
「ああ、60年前には、もう一つの色があったんだ。」
「信じられない! だって虹は六色じゃない! 何で消えてしまったの?」
老人には、答えられなかった。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/23(月) 17:28:13 ID:mu7rMH3o<> 赤ってだけだとムズイね('A`)
練習になるけど('A`) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/23(月) 17:54:44 ID:ooa+qHrV<> コレ国旗は何色なのさwwwwwwwwwww <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/23(月) 18:13:08 ID:mu7rMH3o<> 何色なんだろうね?('A`)
そして、何より、血の色はどう表現するのかという疑問がつきまとったが、華麗にスルーした('A`) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/24(火) 00:52:39 ID:Qbsq8S70<> お題を下さいな <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/24(火) 01:54:37 ID:mB1HTgcu<> ダガー <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/24(火) 23:35:32 ID:Qbsq8S70<> 最近、近所に切り裂き魔が出没しているらしい
そのせいで、今日もニュースは引っ切り無しに切り裂き魔の情報を流し続けている。

「・・・犯人は、20代の男性と思われます。・・・」
「・・・凶器は、鋭利な刃物による刺殺。長さ15cmほどのダガーナイフだと思われます。・・・」
ふーん。犯人はダガーナイフを持つ若い男なんだ。

「・・・現在はまだ、目撃情報がありません。・・・」
「・・・犯行声明は無く、被害者についても共通点が無い為、無差別殺人と思われています。・・・」
「・・・警察が行方を追っていますが、現在有力な手がかりが見つかっていません。・・・・」
うへぇ、まだ犯人分かってないんだ。どうすんだよ、コレ。

「・・・皆さんも外出されるときは、用心して、襲われないようにしてください。」
おいおい、これから出かけるってのに、どうすんだよ。
本当に警察って頼りにならないな。

ため息をついて、玄関で靴を履いた。
「仕方ない。用心して出かけるか。・・・まったく、警察はしっかりしてくれよな。」
そう言って、僕は血まみれのダガーナイフを握り締めた。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/24(火) 23:38:35 ID:Qbsq8S70<> うん、ひねれてない。
広がりも意外性もない。これダメだorz <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/25(水) 00:08:59 ID:PcOPeszD<> 何か「通り魔が出ると話題になっている街に住んでいる、
五回通り魔に襲われ、五回ともカッターナイフで撃退した男」を思い出したw

最後の辺りをもう少しぼかした感じにするといいかもね。
血まみれの、と書いてしまうと、自覚が無いのは
なんでだ?となってしまう。そういう異常者だ、という事を
伝えたいのだとしても、それならそれで言葉が足りていないと思うしね。

<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/26(木) 00:59:11 ID:jH27D9gk<> ( ゚д゚)カモーン <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/26(木) 01:42:45 ID:8a+o0REY<> 緑茶 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/27(金) 02:16:52 ID:w71wLB/X<> お茶を飲みながら、妻がこう言った。

「ねぇ、あなた、知ってます? 紅茶とウーロン茶と緑茶って、同じものだって。」
「同じって?」
「茶葉が同じで、醗酵の度合いが違うんですって。完全に醗酵させると紅茶に、程よく醗酵させるとウーロン茶に、醗酵させないと緑茶になるらしいわ。」
「・・・それで?」

妻は茶を啜った。

「つまり、醗酵食品は、醗酵させない状態でもおいしいのよ。そして、それによって新しい食品が生まれるわけね。」
「・・・うん、それで?」
「納豆は大豆を完全に醗酵させたものよね。じゃぁ、醗酵させなければ、お茶みたいにすっきりしたおいしいものができると思ったのよ。」

失敗した生煮えの大豆料理を前にして、妻はこう弁明してくれた。 <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/11/28(土) 05:09:43 ID:3GDmyU8Z<> 失敗してもこれだけ堂々と言い訳ができれば大したもんだなw <> その2<>sage<>2009/11/28(土) 15:21:35 ID:jBxp5HeR<> お茶を飲みながら、妻がこう言った。

「ねぇ、あなた、知ってます? アメリカでは緑茶に砂糖を入れるって。」
「・・・ああ、知ってるよ。」
「前に安売り輸入店で見つけて、驚いたわ。」
「・・・先月、君に何も知らされずに飲まされて、思わずふき出したよ。」

妻は茶を啜った。

「考えてみれば、紅茶に砂糖を入れるのだから、緑茶に砂糖を入れてもおかしくないわよね。」
「・・・そうだね。」
「固定概念はいけないわ。砂糖をかけないものに、砂糖をかける。発見のためには必要な行為なのよ。」

砂糖のかかった焼き鳥を前にして、故意なのか間違いなのかが判断できなくなってしまった。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 15:26:47 ID:jBxp5HeR<> >>252
最近思ったんだが、このスレには、SS書く俺と、御題と感想をくれるあなたの二人しかいないんじゃないか・・・? <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/11/28(土) 20:20:50 ID:3GDmyU8Z<> 絶対ただの間違いだwww

>>254
お題とか感想は俺以外のもあるから、他に数人はいるよ
あと、多分ROMがいっぱいいる
でも、過疎スレでそういう風に思う気持ちはすごく分かるw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 21:25:47 ID:XsgWzVrs<> >>254
俺もいるよー。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 21:35:52 ID:jBxp5HeR<> 過疎スレだと不安になるもんだね
少なくとも、俺の中の「このスレの住人」は三人になりましたw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 21:36:36 ID:XsgWzVrs<> 三人いたら三十人いると思え、と世の中では言うぜw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 21:43:17 ID:jBxp5HeR<> >>258
お! それ御題に貰った <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 21:45:58 ID:3GDmyU8Z<> しまった、やりすぎたと思っても時既に勢いksk中です
諦めてスレの発展を喜びましょう <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 21:47:35 ID:XsgWzVrs<> そういえば言い忘れてたが、奥さん可愛いw
凄いマジな顔でこういう事言ってんだろうなと思ったら萌えたw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 21:56:40 ID:pV/TxbCO<> かわいくてもメシマズだぞww <> その3<>sage<>2009/11/28(土) 21:58:23 ID:jBxp5HeR<> 夕食時、お茶を飲みながら、妻がこう言った。

「世界には、いろいろな食材があるものね。」
「・・・ああ」

俺も、バリバリと揚げ物を食べながら曖昧に答えた。

「ネズミやヘビなど、日本では食材とならないものまで、食べる地域はあるの。」
「・・・そうだね。」
「毒が無ければ食べられるし、昆虫なんかは甘いらしいわね。食べられないと決め付けるのは、良くないことだわ。」
「・・・そうか。」

バリバリと、硬い殻の揚げ物を食べながら言った。

「話は変わるけど、最近のってすごいのね。」
「・・・何がだい?」
「台所で、すごい沢山とれたの。」

俺は、『殻剥きが足りない、失敗したエビフライの言い訳なんだ』と思い込もうとした。
・・・しかし、どうしても、もう一つの可能性が捨てきれない。 <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/11/28(土) 22:01:35 ID:3GDmyU8Z<> ちょwwwww <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 22:07:18 ID:XsgWzVrs<> いやー! ゆすしてー!www <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 22:08:17 ID:pV/TxbCO<> うわぁああああ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 22:17:43 ID:jBxp5HeR<> (大丈夫、まだメシマズ路線から外れていないはずだ・・・) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/28(土) 22:19:39 ID:XsgWzVrs<> メシが(味的意味で)不味いから、メシが(存在的意味で)拙いに
なってる可能性が生じてるじゃねーかよっ!w <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/29(日) 04:05:07 ID:SJOc7N0v<> お・・・奥さん・・・・・
死にはしないだろうけどっ・・・死にはしないだろうけどっ・・・!; <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/11/30(月) 22:40:12 ID:IUEB1Q1y<> お題クレクレ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/11/30(月) 23:50:31 ID:1zi32E7t<> ククレカレー <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/12/01(火) 01:02:48 ID:x9x0IPBv<> 「またレトルトカレー?」
彼女は実に不満げな顔でこちらを見た。
 自分は一切、家事をしないくせに、出されたものには文句を言う。一番腹立たしいタイプの人間
だ。
「しょうがないだろ? 僕も仕事とかで疲れてるんだ。食事の準備でちょっとくらい手を抜いたっ
ていいじゃないか」
彼女は僕の言葉に返事をすることもなく、黙ってカレーを食べ始めた。
どっと疲れが出てきた。働きすぎたからではない。きっと、彼女との生活に疲れてしまったのだ
ろう。
しばらく経ってからのことだ。彼女がポツリと言葉を漏らした。
「まあ、でも、ククレカレーの味は悪くないっていうか、むしろおいしいと思うから、いつも作っ
てくれてることは感謝して――」
「やれやれ、こんなククレカレーをうまいと言っているようじゃあ、本当に感謝しているか怪しい
もんだな」
彼女の言葉を遮るようにして、先程まで二人しかいなかったはずの部屋に別の声が響く。
 ハッとして顔を上げると、そこには貧相なサラリーマン風の男が立っていた。
「だ、誰だお前は! 人の家に勝手に入ってきたりして――」
「ククレカレーはただ熱を通せば同じ味になるというわけではない。最適なご飯と組み合わせて初
めて、その味を最大限に引き出すことができるんだ。ここにククレカレー専用のご飯を用意した。
俺が厳選した米を使っている」
そう言って、男はご飯にククレカレーをかける。
彼女は差し出されたそれを恐る恐る口にする。その瞬間、彼女の表情が変わった。
「おいしい! これに比べたらさっきのククレカレーはカスだわ!」
彼女の恍惚とした顔を男がさも当然といった風に眺めていたその時、またしても聞き覚えのない
声が聞こえた。
「ふっ……未熟者め!」
驚いて振り返ると、そこには厳つい顔をした和服の男が立っている。
「海原雄山!」
貧相な男が敵意を込めて叫ぶ。
「貴様はレトルトカレーのことを何もわかっていない」
そう言い放つ和服の男の手には、ククレカレーではなくボンカレーが握られていた。



完 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/01(火) 01:08:47 ID:x9x0IPBv<> あ、二次創作禁止だった
上のはなしで <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/01(火) 01:30:50 ID:fiilg95U<> まあいいんじゃないかw
というか、ツンデレな彼女がせっかくデレたのに、
台無しじゃないかおいしんぼの二人www <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/01(火) 19:40:20 ID:x9x0IPBv<> リベンジでもう一本お題クレクレ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/01(火) 20:14:27 ID:fiilg95U<> アベンジャー <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/01(火) 20:19:39 ID:x9x0IPBv<> ごめん
兵器とかはよく分からないんだ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/01(火) 20:25:16 ID:fiilg95U<> 兵器名じゃなくて、復讐者の意味の方で。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/01(火) 20:28:04 ID:x9x0IPBv<> おk把握 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/03(木) 23:35:30 ID:LDjNWj7f<> 漏れもお題欲しい <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/04(金) 00:00:18 ID:LDjNWj7f<> >投下時には名前欄に作品名を入れてください。

    /\___/ヽ   ヽ
   /    ::::::::::::::::\ つ
  . |  ,,-‐‐   ‐‐-、 .:::| わ
  |  、_(o)_,:  _(o)_, :::|ぁぁ
.   |    ::<      .::|あぁ
   \  /( [三] )ヽ ::/ああ
   /`ー‐--‐‐―´\ぁあ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/04(金) 02:39:52 ID:ORmn2oGP<> 名前欄にタイトルは長編だとレス抽出に便利だけど、このスレは一レス以内だからそんなリアクションすることでもないと思うぞw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/05(土) 10:46:00 ID:42cmMlH+<> マジメな板は、ルール守らないとえらいことになるからと・・・

それはそうとしてお題が欲しいな <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/05(土) 15:44:39 ID:ywD+Cld1<> 永久機関 <> 永久機関<>sage<>2009/12/05(土) 23:17:24 ID:42cmMlH+<> 「こちらは特許庁ですか?」
東京特許許可局で働いている、受付の私に声をかけたのは、髭の長い老人だった。
「・・・すいません、特許申請をしたいのですが・・・」
それを受け、私はいつもの通り、興味の無い声で申請書を渡した。
「はい、分かりました。こちらの申請用紙に記入をお願いいたします。」

平日の午後、申請者はこの老人しかいなかった。
・・・退屈だったので、特に意味も無く、老人が書類に記入しているところを眺めていたが、
書かれている内容が奇抜なため、つい、声をかけてしまった。
「・・・おじいさん」
「・・・? はい、なんですか?」
「申請内容って、それなんですか?」
「ええ、そうですよ。画期的でしょう。」
そこには、綺麗な文字でこう書かれていた。

   『永久機関』

「・・・いるんですよね。どこどこのエジソンを自称する人が、永久機関を持ち込むの。」
「ええ!? じゃぁ、既に申請が通ってしまっているんですか? なんてこった・・・」
落ち込む老人を見て、噴き出してしまった。
「プッ・・・ あ、いや、失礼。違いますよ、過去にも申請はありましたが、どれもニセモノだったんですよ。」
「ああ、なんだ。てっきり、先を越されたと思った。」
「あなたのは、”本物”なんですか?」
「もちろんですよ。外部からのエネルギーが一切無いのに運動を続ける機関です。」
「でもね、おじいさん。それが不可能なのは、科学的に証明されているんですよ?」
「しかし、本当にそうなんですよ。まぁ、申請書を見てから判断してください。では、頼みましたよ。」
私が止める間も無く、老人は立ち去ってしまった。

ふう、とため息をつきながら、その資料を見てみた。
・・・そして、私は納得させられてしまった。

『・・・ビックバンを起点とし、零次元の中に三次元を発生させる。
それはビックバンの膨張により拡大を行うが、その拡大を止める障害・摩擦が無い為、無限時間・無限時間の膨張を行う。
これこそ、エネルギー保存の法則に縛られない、唯一の永久機関である。』

宇宙・・・か。
住所も氏名も書いていなかったので、悪質ないたずらとして処理されたが、
ロマンチストの同僚は、「もしかして、その老人は神様なんじゃないか」と言ったりしている。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/05(土) 23:18:59 ID:42cmMlH+<> ×特許庁
○特許局

  (>'A`)> ウワアァァァァァ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 00:04:23 ID:ywD+Cld1<> 安心しろ、気付いてなかったからw

しかし、宇宙という永久機関の内部にいながら、
決して造ることのできない永久機関の実現を夢見る人間はまるで…… <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 00:18:03 ID:WhiScXNs<> いまさら、もう一箇所誤字見つけた (>'A`)>
気づかれてないみたいだから、もう言わない('A`) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 00:22:00 ID:WhiScXNs<> お題プリーズ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 01:47:20 ID:AxNSDeI3<> ワンコイン <> ワンコイン<>sage<>2009/12/06(日) 02:08:38 ID:WhiScXNs<> 税金が高い。

いつの時代でも税金は高いものだが、減税をメインに押し出すことで与党となった、民衆党にとっては死活問題だった。
「・・・代表。やはり、どう試算しても、減税はできません。むしろ、10兆円の増税をしないといけないことになりました。」
「・・・ギリギリまで削ってもダメか?」
「はい、連崩議員により、無駄をすべてを排除して、この結果です。」
「・・・困った。『税金はワンコインで払える額にする』という公約が果たせなくなってしまう。」
「困りましたね。覚えやすいキャッチフレーズでしたから、マスコミが大々的に報じました。いまさら無かったことにはできません。」
「なんとか、500円で収まる額に減税できないだろうか?」
「・・・無理です。これ以上減らすと、国交問題に発展するか、社会保障が崩壊してしまいます。」

二人は頭を捻った・・・
いつものように、人民党のデマだというネガキャンにするか・・・
しかし、それでは支持率が墜落してしまう・・・
「! そうだ、代表! こうすればいいんですよ!」

次の日の政府からの公式放送に、国民は唖然とさせられたのだった。
『・・・今日から100万円硬貨が発行されることになりました。税金は、安心してワンコインでお支払い下さい・・・』 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 02:18:42 ID:WhiScXNs<> オチが読まれた悪寒・・・ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 04:33:16 ID:F9FJYV+/<> 民臭党ならやりかねん <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 13:05:41 ID:WhiScXNs<> お題プリーズ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 15:40:38 ID:Zv+ibgGs<> おっぱい <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 15:51:55 ID:WhiScXNs<> それは板的にいかんのでは? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 16:05:32 ID:Zv+ibgGs<> エロくなければおk <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 18:08:48 ID:WhiScXNs<> ブラなら逃げ道もあろうに、そのものをエロ無しとは・・・
無茶振りワロタ('A`) <> おっぱい<>sage<>2009/12/06(日) 18:40:56 ID:WhiScXNs<> 「・・・ああ、『おっぱい』か・・・」
広告会社に勤務する山崎は、無茶な注文に悩んでいた。
彼の仕事は、首都高から見える目立つビルに、C社の壁面広告を作成するというものだったのだが、
ビルのオーナーとの調整が難航していたのだ。

問題は、3日前、広告の許可のためにオーナーと交渉を行った時に起こった。
「オーナーさん。広告には、テレビで放送している、こういう図柄にしようと思うのですが。」
「・・・いや、そんな普通の広告なんてツマラン。」
「お気に召しませんか、では、シンプルな商品名だけの・・・」
「ダメだ。そんな、どこかに貼ってあるようなありきたりの広告だなんて・・・」

断り続ける彼を見て、私は理解した。
水色の背広にピンクのネクタイのいでたちから推測するに、
このビルのオーナーは、どうやらかなり風変わりな、目たちがり屋のようだったのだ。

「・・・! そうだ。どうせなら、エロでいこう。」
「は?」
「おっぱいだよ、おっぱい。ビルの壁面に裸の美女! この構図は素晴らしい」
「ちょっと待ってください・・・」
奇抜なビルのイメージが思いついたオーナーは、目をキラキラさせて力説した。
「いや、これは広告としても悪くないと思うぞ。男は皆おっぱい好きだ。ドライバーは皆釘付けになる!」
「はぁ・・・」
「この『おっぱい』ビルを、マスコミは取材しに来るだろう! このビルと、製品のことは報道されまくるぞ! 皆が幸せになる!!」
「・・・しかし・・・」
「おっぱいだ! この図案でなければ、広告は許可できない!! おっぱいで図案を作ってきたまえ!!」
ミーティングは、それで打ち切られてしまった。

・・・あの場でオーナーには言えなかったが、野外広告には、一定の規制があるのだ。
裸の女性などやろうものなら、会社の免状を取り上げられてしまうだろう。
しかし、あの調子では、裸以外の図案では許可してもらえそうにない。
・・・困った。

悩んでいる自分のところに、部下の高橋クンがやってきた。
「どうしたんですか? 山崎さん。悩んでいるみたいですけど。」
「いや、首都高広告の件で、ビルオーナーから無茶を言われてね。」
掻い摘んで事情を話すと、高橋クンは、少し考えてこう言った。
「・・・可能かもしれませんよ、それ。」
「本当かね? どんな抜け道が?」

高橋クンが教えてくれた案は、意表を突くものだった。
しかし、それでオーナーを説得してみたところ、驚いた顔をしたが、
「約束は、約束だな」
そう呟いて、しぶしぶ許可をしてくれたのだった。

・・・こうして、C社製のチーズを持った、豊かなおっぱいのホルスタイン牛が、壁面に描かれることになった。
このビルは、オーナーのもくろみ通り、「おっぱいビル」の愛称で親しまれることになるのだった。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 18:46:13 ID:WhiScXNs<> 山崎「お互い、鬼注文は大変ですね」
('A`)「ほんとうですね。」
('A`)「これ・・・セーフですよね?」
山崎「・・・多分。しかし・・・『おっぱい』を私に言わせるとは思いませんでした・・・」
('A`)「すいません、出だしで主題を掴ませるためには必要だったので・・・」
山崎「これ絶対、高橋クンに聞かれてますよ?」
('A`)「いいじゃないですか。おっぱい上司。」
山崎「・・・最悪だ・・・」 <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/12/06(日) 18:56:38 ID:Zv+ibgGs<> ホルスタインのおっぱいか

うっ……ふぅ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 19:04:42 ID:WhiScXNs<> ('A`)「アウトぉぉぉ!!!!!!」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 19:47:56 ID:WhiScXNs<> お題を下さい
セーフな奴で・・・ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 20:05:03 ID:9j8MAwIC<> ふともも <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 20:07:36 ID:WhiScXNs<> ('A`)おっぱいよりはセーフ・・・
('A`)・・・・
('A`)・・・・
('A`)・・・・ <> ふともも<>sage<>2009/12/06(日) 20:33:46 ID:WhiScXNs<> 「ただいま。」
「お帰りなさい、あなた。」
残業を終えて、遅い時間に家に帰ると、ドアの中から肉のいい匂いが漂ってきた。

「今日は、ローストチキンにしてみたの。」
「ほぉ、それはおいしそうだね。」
食卓に湯気を立てるローストチキンは、とてもおいしそうだった。

食卓について、ふと思う。
これは、買ってきたものだろうか? それとも、作ったものなんだろうか?
・・・確か、ローストチキンは、鳥ももを調味液につけこんで焼くだけらしいから、
妻でも失敗をしなかったのかもしれない。

「さぁ、温かいうちに、いただきましょうか。」
「・・・ああ、いただきます。」
置かれているナイフとフォークを使わず、手で持って齧り付こうとしたとき、妻が何か気になったらしく、こう言った。

「『鳥もも』って、人間で言えば、ふとももなのよね。」
「・・・そうだね。」
「他人のふとももに、夫がしゃぶりつくのは・・・ 妻としてはどうしていいのかしら・・・」
「・・・ふとももと言っても、鳥ももだよ。他人のふとももには入らないだろう?」
「そう・・・ 鳥よね。あくまで・・・鳥・・・鳥・・・」
ナイフとフォークを持つ妻の手が、小刻みに震えだした。

「ゴホン。」
咳払いをして、ナイフとフォークでローストチキンを食べ始めた。
・・・それどころではなかったので、味は覚えていない。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 20:39:22 ID:WhiScXNs<> ('A`)あやうくクリスマスにするところだった
('A`)まだ早い・・・まだ・・・ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 22:48:31 ID:WhiScXNs<> エロ関係無いお題を下さい <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 22:49:02 ID:9j8MAwIC<> 谷間 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/06(日) 22:56:04 ID:WhiScXNs<> ('A`)この絶妙なスレスレ感は何なんだ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/07(月) 00:12:21 ID:GwthjiBh<> 次はしりが来ると思ったのにw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/07(月) 00:13:45 ID:GwthjiBh<> しかし、どれも面白いね。GJ
特におっぱいは、広告作成者の苦悩が、そのまま書き手の
苦悩のように感じられて良かったw

メシマズ妻はシリーズ化ですか?w <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/07(月) 00:15:56 ID:PcEdPrlC<> 書き手をうまくくすぐるようなお題にしたかったんだ
そう、絶妙なスレスレ感

エロ関係ないといえば全くない
だがどうしてもそういう意味のほうを日常的に使っている……最高じゃないか!!!! <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/07(月) 00:18:58 ID:PcEdPrlC<> リロってなかったかなしさ
俺もメシマズシリーズ好きw <> 谷間<>sage<>2009/12/07(月) 00:43:05 ID:Rjzbifyk<> 南アルプスの東部に、つり橋のかけられた、名前の付けられていない深い谷がある。
その谷の上で、東京から来た刑事、山田は、難しい顔をして地元警官と話をしていた。

「・・・該者は、東京のC社課長、大川遼一。たしか、捜索依頼が出されていたんですよね?」
警官に聞かれ、山田は書類を開いた。
「ええ。登山が趣味で、3ヶ月前に単独で南アルプスへ登山に出たまま消息不明。家族からは、捜索依頼が出されていました。」
「それが、こんなところに3ヶ月もいたとは・・・」
「いえ、まだ分かりませんよ。自殺や事故ならそれもあるでしょうが、他殺なら別のところで殺され、最近遺棄された可能性もあります。」
「・・・確かに、可能性は分かりませんね。しかし、それはそれでひどいですね。この高さを投げ捨てるなんて。」

二人がいるつり橋から、死体が発見された谷底までは、7〜8mはあるだろうか。
周囲は切り立った崖になっており、ザイルを使いクライミングしないと降りることも昇ることもできない構造になっていた。
「自殺か事故なら、転落死。他殺なら、他の外傷が見つかるでしょう。とりあえず、近くの山小屋で検死を待ちましょう。」

歩いて10分ほど離れた山小屋で待っていた、二人に寄せられた報告に、彼等は驚きで声を荒げた。
「『腐敗は進行しているが、外傷は無し。簡易検査では、骨等の損傷は確認できない。転落した可能性は無し』だって?」
「『周囲の外壁にザイルを打ち込んだ形跡は無い。被害者が現場に到達するルートは不明』とか、ありえん!」
「『腐敗の進行度合いから、2〜3ヶ月前に死亡したと見られる』か・・・ あ、そういえば。」
山田は、あることを思い出し、警察官に聞いた。
「第一発見者は誰なんですか?」
「それは・・・私です。」
警官の後ろから、声が聞こえたので、山田がそちらを見ると、いかにも山の男という髭男が立っていた。
「この山小屋の管理者をしてます、落合と言います。」

「落合さん。あなたが発見したときのことを教えてください。」
「はい。先週、お客様から、つり橋の下にキャップが落ちてるみたいだという話を聞きました。
誰も下に降りれないところなので、風で飛ばされたのだと思って気にしていませんでした。
しかし、ある日たまたま用事でそこを通ったら、キャップの下に、人の顔が見えたんです。それで、慌てて通報しました。」
「ふーむ。それだと、先週ごろに遺棄されたんでしょうか?」
「そう考えられますね。」
警官の声に、山田は曖昧に頷いた。

・・・謎だ。
死体へ損傷をつけずに、谷底へ遺棄する方法があるのか。
犯人がいるとするなら、3ヶ月近く遺棄するのを待った理由は何なのか・・・
警官と、あらゆる可能性を検討したが、「ヘリコプターで捨てる」とか、「見つかっていない洞窟で降りられる」など、現実的でない仮説しか出てこなかった。

3時間後、半分諦めた二人は、休憩にすることにした。
山小屋の管理者から渡されたコーヒーをすすりながら、山田が何気なく周囲を見回すと、壁面に何枚も写真が飾られているのに気づいた。
(気づく余裕も無かったか)と自嘲しながら写真を見ていく・・・
・・・夏の山頂、秋の夕日、冬の山頂、春の沢、冬の歩道・・・・ ん? おや、これは・・・ どこかで?
「すいません・・・すいません、落合さん、ちょっと・・・」
「はい、なんですか? 刑事さん?」
「この写真。この歩道に何か見覚えがあるんですが、これって何ですか?」
「ああ、このつり橋ですか。これは、今回の現場の冬の写真ですよ。」
「え? 歩道じゃなくてつり橋? だって、写真には、下の谷がありませんよ?」
「ええ、そうです。真冬には、谷は雪で埋まってしまうんですよ。昔はそれを知らずに渡ろうとする人がいたらしいので、それを防ぐために目立つ吊橋を作ったらしいですね。」
「 そ  れ  だ !!!」
山田は大声を張り上げた。

山田の仮説を検証するために、現場の再検証が行われた。
すると、つり橋の中ほどに、該者のアイゼンと一致する傷が見つかったのだった。
「どういうことですか?」
事態が飲み込めない警官が、山田に聞いてきた。
「これは事故死ですよ。該者は疲労による衰弱により、凍死した。ただし、谷は雪で埋まっていたので、該者はつり橋から転落ではなく、ただ踏み外して横たわりました。」
山田は一息入れた。
「そして、3ヶ月。雪は解けていきますが、死体はうまい具合に雪に隠されていたのでしょう。自然のエレベーターで、谷底までゆっくりと運ばれていったわけです。」
全員が感嘆の声を上げた。こうして、謎が一つ氷解したのだった。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/07(月) 00:45:55 ID:GwthjiBh<> おお、なるほどぉ。 <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/12/07(月) 00:49:22 ID:p1txVj1o<> これすごいな
このネタで長編のミステリー一本書けたんじゃないか? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/07(月) 00:55:16 ID:PcEdPrlC<> 感心した… <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/07(月) 00:58:09 ID:Rjzbifyk<> ('A`)ふーんだ。胸の谷間だなんて、書いてなかったもーん!
('A`)・・・と書き終わったら、感想が! どうもです。

>>311-312
ヽ('∀`)ノ面白いって言ってもらえるのは嬉しいです
('A`)そして、おっぱいの苦悩が伝わったのなら、何よりです。
('A`)なんでこんな御題を・・・ スレが削除されたらどうするつもりなんだ・・・
('A`)そして、尻が来たら本当にどうしようか・・・
('A`)メシマズは使いやすいので、シリーズ化というか、ちょくちょく使うんではと思います
('A`)それと、メシマズと呼んでますが、妻の飯がまずいかは確定してません。シュールとアンニュイの中間?な話を目指しています。

>>313-314
('A`)スレスレだったので、安全な方に落ちました
('A`)でもまさかの事件物になるとは、自分も思いませんでした
('A`)御題のおかげですね

>>316-318
ヽ('∀`)ノ誉められた。わーい
('A`)このネタ、思いつきだけど、もしかして何かのゲームかで使われたんじゃないかって気がします
('A`)思い出せませんが・・・ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/07(月) 01:04:24 ID:GwthjiBh<> リアル誤爆したw

このトリック(というか自然現象)を使ったミステリーは、
確かどっかであったと思う。でも、全然頭に無かったから
意表を突かれたよw

<> ゴッドノート<>sage<>2009/12/08(火) 23:37:20 ID:itkaC94c<> 「ゴッドノート?」
「ああ、そうだ」

なんの変哲もない民家の、なんの変哲もない一室。そこには一人の少年と、一人の天使がいた。

「神様の野郎が、今になって何年か前の漫画にはまっちゃってさ。対抗して作っちゃったのよ。
 で、実際に下界の人間に使わせてサンプルデータ取って来いって。
 でもかなりデンジャラスな代物だからさ。変なやつに渡して悪用されたやばいじゃん?
 だから、人畜無害そうな君に使ってもらおうかと」
「悪かったな、人畜無害そうで」

天使の発言に、少年は顔をしかめる。

「で、これの使い方は?」
「まず誰かの名前を書く。とりあえず、自分の名前を書いてみろ」
「よし」

言われたとおりに、自分の名前を書き込む少年。
すると名前の下に、自動的に彼のプロフィールが浮き出てきた。
生年月日や身長・体重、家族構成はもとより、細かい好き嫌いまで網羅されている。

「うおっ! すごいなこれ!」
「そうやって出てきたプロフィールを、書き換えたり消したりするんだ。
 そうすると、その改変が現実になる。
 たとえば君のプロフィールに『野球が上手い』と書き込めば、実際に野球が上手くなるわけだ。
 人間に関わるありとあらゆる情報を変更できる。それがこのゴッドノートなんだ。
 どうだ、大量殺人よりよっぽど手っ取り早く、新世界の神になれるとは思わないか?」
「たしかに、それが事実ならね」
「試してみればいいさ」
「よし、それじゃあまあ無難なところから……」

少年はノートに記された自分のプロフィールに、消しゴムをかけ始める。
ところがその直後、少年の姿は忽然と消えてしまった。

「ええ!?」

予想外の展開に、思わず驚きをあらわにする天使。だが残されたノートを見て、その表情はすぐさま納得のものへと変わる。
ノートに浮かんだ少年のプロフィールは、「身長 160cm」の「16」の部分に消しゴムがかけられていたのだ。

「身長が0cmになったんじゃ……。そりゃ消えるよな……」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/08(火) 23:38:24 ID:itkaC94c<> 微妙に二次創作になるような気もするが、どうなんだろうこれ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/08(火) 23:48:40 ID:3zbrq2M0<> なんというですの <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/09(水) 00:15:17 ID:YvhcIZ0Z<> 原作キャラでてないから、二次創作にはならないんじゃないかな? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/09(水) 19:01:02 ID:tbDj+4x+<> 神様がおおばつぐみに負けじと考えて作ったんだろうw

しかし、消してしまうとその時点ですぐに発動してしまうという事は、
使い方も考慮しなければならないな・・・意外と考えると面白く
できるかもしれない。 <> 鏡<>sage<>2009/12/12(土) 23:13:05 ID:KaoZ+D75<> 私は小学校の教師をしている、35を過ぎた独身女です。
つらい職業だって言うけれど、この間、ちょっといい事があったんですよ。

私が担任をしている由美子ちゃんのお母さんから、夜7時頃に電話がありました。
「先生、先生、助けてください!」
「どうしたんですか? 由美子ちゃんのお母さん」
「娘が、娘が・・・」
「由美子ちゃんが、どうしたんですか?」
「娘が、不良になってしまったみたいなんです!」

お母さんの悲痛な声に、私は慌てた。
35歳まで先生をしているとはいえ、親からこんな相談をされたのは始めてだったからです。
「わ、わかりました。とりあえず、家に伺いますから」
「早くしてください! 先生!」
そして、私は愛車の自転車で、由美子ちゃんの家へと向かった。

そこで私が見たものは、悲惨な現場だった。
家の玄関に置いてある全身鏡には、ダイニングのものと思われる木製のイスにより割られ、足元に鏡が散乱していた。
そして、鏡をイスで割ったと思われる由美子ちゃんは泣きじゃくり、
お母さんが半分ヒステリックになった状態で、問いだしているのだった。

「由美子ちゃんのお母さん、落ち着いてください・・・」
とりあえず、私はお母さんを落ち着かせることにした。
「先生! 来てくれて有難うございます!! 私、どうしていいのか分からなくて!」
「由美子ちゃんに怪我はありませんか?」
「え・・・? あ、はい、怪我は無いみたいです。」
かなり動揺しているようだ。しかし、小学生の娘がこんな暴力を起こせば、誰だって動揺してしまうだろう。

「由美子ちゃん、こんばんわ。先生です。」
「・・・ウウウ・・・・先生? なんで・・・ヒック・・・先生が家に?」
「お母さんが、先生に由美子ちゃんとお話して欲しいって呼んでくれたのよ。」
「・・・私、悪くないもん。」
「そうだね。由美子ちゃんは悪くないよね。」
私は、頭の中で対処のための知識をフル動員させた。
・・・いまさらだけど、土曜を休みにしたいからと、幼児心理学の授業を受けなかったことを後悔した。

でも、なぜ由美子ちゃんは、こんなことをしたんだろう?
母親を恨んでるのだろうか? それとも、ストレスだろうか?
まさか、虐待!?
いろいろな可能性が頭に浮かんだが、それを一旦抑えて、理由を聞くことにした。
「・・・それで、由美子ちゃん。なんで鏡さんを割ったのか、教えてくれるかな?」
「・・・ずっと働き続けて、大変だったから」
え? どういうことだろう?
「あのね、先生。聞いてくれる?」
由美子ちゃんは、おそるおそる言った。
「お父さんも、お母さんも、一日も休み無く鏡さんにお仕事させるの。
鏡さんは、文句も言わないで、一年中働いているけど、私、かわいそうだと思って。
鏡さんにお休みしてもらうために、鏡さんの入り口を閉ざしたの。」

一瞬唖然とした。それはお母さんも同じだったようだ。
その後、二人して笑いだしてしまった。
そうか、由美子ちゃんは、鏡の中の像は、誰かが働いているんだと思っていたんだ。
よかった。彼女は優しい由美子ちゃんのままだ。

平謝りの母親には、むしろ彼女の優しさに触れられて良かったと伝え、私は学校に戻ることにした。
『子供の心は、まだまだ純粋で、優しさに溢れているぞ!!』
私は、そう、日本中の人々に伝えたいと思った。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/12(土) 23:17:40 ID:KaoZ+D75<> 銭湯の鏡を見て思いついたセルフ御題
エンデ先生、メルヒェンが書けないです・・・ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/12(土) 23:18:57 ID:Ji2y42Gu<> 面白いな。

こういう子供の、大人から見たら異質な純粋さって、
否定されがちなのが悲しいよね。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/13(日) 00:06:46 ID:WvwSNCiO<> 感想感謝です
賢くなることが、純粋さを捨てることになるのは悲しいですね

作家としては大人と子供の両方の視点を持たないといけないので、
「子供の純粋さ」を読み取ってもらえたらなら、成功だと思います <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/12/14(月) 00:00:15 ID:ZAJtw3lp<> あべこべ世界の話とか読みたいのです。お題でいいですか? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/14(月) 00:26:23 ID:wTLkc3OY<> 御題もらっていいですか。

これって、ジャンル不定でいいんですよね? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/14(月) 00:34:17 ID:Due9J0x9<> 今日初めてここきたけど
良作多くて驚いた <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/14(月) 00:35:29 ID:Due9J0x9<> お題:幽霊 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/14(月) 00:38:38 ID:OgO0/MG2<> >>330
自発的お題なら、こっちのスレの方がいいかも。

【リクエスト】こんな物語が読みたい!【受付】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1232987628/

まあ、ここでも書いてくれる人はいるかもしれないけどね。
あと、向こうに書く場合は、もう少し「あべこべ世界とはなんぞや」
という部分を追記した方がいいと思う。 <> あべこべ世界<>sage<>2009/12/14(月) 01:01:54 ID:wTLkc3OY<> 2030年の東京・・・
2000年より、幾分キレイでコンパクトになったが、あまり変わらない町並み・・・
しかし、一点だけあまりにも変わりすぎたものがあった。

コーヒーショップで会話を愉しんでいるのは、赤毛の犬と、黒毛の猫。
トラックを運転しながら鼻歌を歌っているのは、どう見ても猪。
人間に紐をつけて歩いているのは、着飾った虎の女性。
そう、ここは何故か、人と獣が入れ替わった世界だったのだ・・・

・・・話は2020年代にさかのぼる。
脳科学は、クローン脳の作成と、並列コンピューティングによる計算により、99.8%の分野を解析することができるに到った。
その応用として生まれたのが、ペットに人語を話させるビジネスである。
すでに、2000年代に「ガウミケーション」「ミャウミケーション」のような擬似的会話装置が流行ったことがあったが、
それを本格化し、ペットに人と会話をさせる手術を施すという内容だった。
当時の脳科学であれば、動物の脳構造も解析済み・・・
動物の口の構造上、不可能な発声も一部あったが、手術はペット愛好家の間で爆発的に広がったのだった。

そのような変化を、利権団体が目を付けないはずが無かった。
「言葉をしゃべる以上、人格がある。彼等に人権を!!」
どう考えて無茶な要求に、世界中の国々が示した反応は、皆同じだった。
「何を言っている。人間は神に選ばれた種族だ。それ以外と同じ扱いをするなど、狂っているとしか思えない。」
そう、それが当たり前だ。しかし、なぜか日本だけは違ったのだった。
「その通りだ! 彼等には人権がある! 日本は動物の人権・・・いや、動権? ・・・をとにかく守りますよ!」

唖然とする世界の国を無視し、エスカレートする権利団体の声を、日本政府は無条件で受け入れていった。
「動物に居住する権利を!」
「・・・もちろんだ、人権があるなら住む権利もある」
「動物に労働する権利を!」
「・・・もちろんだ、人権があるなら働く権利もある」
「動物に選挙権を!」
「・・・もちろんだ、人権があるなら選挙権もある」
「動物を議会に!」
「・・・もちろんだ、選挙権があるなら、参政権もある」
そして、このころから、利権団体の動物の比率が多くなり、要求の方向性が変わってきたのだ。
「人間は、動物を従属・奴隷・家畜として扱った罪がある。罪を償え!」
「・・・もちろんだ、賠償金を出そう。」
「動物が人間に従属していたのだから、その逆も認めるべきだ」
「・・・もちろんだ、動物が人間を飼うことも認めよう」
「むしろ人間は危険だ。野生種以外は、動物が管理するべきだ」

このころになると、日本政府は事態に焦り始めた。
しかし、時既に遅し。議員の50%以上は動物で占められている・・・
つまり、人間が反対しても、もはや従属化を止める手段が無かったのだ。
日本は、動物のモノとなった。
人間は野生種を除き、すべて国外に逃げたか、動物のペットとなった。
今まで人間がやっていた全ては、頭の良く体格のいい、動物がこなすことになった、あべこべの世界へと変貌したのであった。

「・・・しかし、これで良かったのかね?」
先ほどのコーヒーショップで、犬が猫に聞いた。
「良かったんじゃないかな? 獣でいた時代に比べれば、豊かで楽しい時代になったと思うよ。」
スープのようなものを飲みながら、猫がそう答えた。
「しかし、俺は時々思うんだ。」
「何をだい?」
「環境問題や経済問題で行き詰った人間のツケを、僕たちが払わされているんじゃないかって。」
「そうかもしれないね。」
「人間は、明日の食事の心配をせずにヌクヌク寝ながら過ごしている。
動物は、人間が起こした問題を解決するのに10年以上苦労している。
・・・幸せになったのは、動物なんだろうか? それとも人間なんだろうか?」

猫には・・・ そして、誰も・・・ その問いに答えられる者はいなかった。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/14(月) 01:02:58 ID:wTLkc3OY<> >>334
書いちゃったよ('A`) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/14(月) 01:05:53 ID:Due9J0x9<> ごめん、お題がシンプルすぎたかも
お題:オニギリの具
でもいい <> おにぎりの具<><>2009/12/14(月) 03:06:17 ID:v4QWzWGl<> 「おにぎりの具ってさ」
 彼女はなんとも退屈そうな表情でそう切り出した。
 公園にある小さなテーブルを挟んで、僕と、その恋人である彼女は向かい合っている。
 その手には、「紀州梅」と書かれた、コンビニのおにぎりが握られていた。
 お互い忙しい合間を縫っての再会だったが、予想外の空気の重さ、そして話題に戸惑っていた。
「コンビニとかだと、袋にこんな風に具が書いてあるじゃん。
これってさ、何気なくスルーしてるけど、凄いことだと思うんだよね」
 海苔とビニールを鳴らしながら、彼女の指が、スルスルと包装を剥いていく。
「だってほら、これは梅だろうがツナマヨだろうが、結局中身って分からないわけでしょ?
それを、おにぎりは皆こうして自己主張して分かりやすくしてある。これって凄い助かるよね」
 一瞬だけ指に力を入れて、「紀州梅」のシールを破ったのが傍目にもわかった。
「自分の作ったおにぎりはそうはいかないもの。不恰好で不揃いで。
その違いを意識すれば分かるかもしれないけれど、シャッフルでもされたらもうお手上げだわ」
「……そうだね」
「あなたの相槌はいつも『そうだね』ばっかり」
「……」
 何も言い返すことが出来ず、僕は黙って俯くしかない。
 剥き終わった包装を、彼女は自分の鞄の中に突っ込んだ。手元には、おにぎりが一つと、
静けさが少し。
 しばらく間を置いて、彼女は僕に尋ねた。
「ね、このおにぎりの具は何か分かる?」
「……紀州梅?」
「なんで紀州梅だって言えるの?」
「だ、だって書いてあったし」
 つい、声が震えてしまった。しかし彼女は微笑む。
「そうよね、おにぎりに『紀州梅』ってわざわざ書いてあったものね。だから分かって当然」
 彼女はゆっくりとテーブルにおにぎりを置いた。磯臭い三角形が、テーブルの上に直立する。
「じゃあ、こんな風に何も書いていなかったら?」
「……わからないんじゃないかな」
「そうね、じゃあどうすればいいと思う?」
「えっ……」
「本当に鈍いのね、あなたって」
 どういうことだい。そう尋ねようと思った瞬間。

 彼女の指が、海苔を突き破って目の前に現れた。

 実際は彼女がおにぎりを指で貫いただけなのに、一瞬、乱暴な行為に猛烈な寒気を感じてしまう。
 そしてその指に押し出されるように、赤い梅干が一粒、転げ落ちる。梅は机の上を軽く転がって、
そのまま下へ落ちていった。
「具を掻き出すしかないのよ」
 ぼそりとした呟きに、動く事も出来ず身を竦ませてしまう。対照的に、彼女はゆっくりと立ち上がった。
 そして、僕の耳元に顔を寄せる。
「おにぎりの具は、おにぎりにしか分からないの。あなたはどうかしら?」
「どう……って」
「まだ分からない? 私はね、あなたの気持ちをハッキリして欲しいの」
 分かっていた。本当は、分かっていたのだ。
 あのおにぎりはきっと僕で、あの梅は――。
「――浮気、しているんでしょう?」
 その言葉に僕の頭は真っ白になり、口からは一言、
「……ごめん」
 どうしようもない一言が零れ落ちた。
「そう」
 彼女も一言呟いて、顔を離す。
「――今まで楽しかったわ、さよなら」
 そっけなく一言、それだけ言うと、彼女はその場を立ち去った。
 後には穴が開いたおにぎりと僕がとり残された。
 足元を見ると、無残に踏み潰された梅が、血の跡のように地面に広がっていた。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/14(月) 03:09:39 ID:DGgEZe5R<> 彼女怖いよ
ある意味、刃物振り回したりするよりよほど怖いよ <> 創る名無しに見る名無し<><>2009/12/14(月) 15:10:22 ID:HBMIxQVq<> 彼氏の梅干しも貫通するかと思った
描写が怖くてステキ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/14(月) 19:45:18 ID:Due9J0x9<> >>335
良いオチだ!

>>338
こええっ
「オニギリの具」からこんな話になるんだw
上手いね

お題:コレクター <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/15(火) 11:12:35 ID:7OUHIH5m<> 指切り組長、というタイトルを思いついたが1行で完結していた <> 幽霊<>sage<>2009/12/16(水) 18:38:03 ID:/3omroiI<> >>333
呼びました?

.∞⌒△^ヽうーらー
i`レノノリ)) めーしーやー
|ノヘノ゚ヮハ
ノノノ^yヽ
"ヽ_ノ==lノ"
  ヽノ"
  (
   )
  (
   )



…そのまんまでごめんなさい…。
   ,∞^△^∞
   iノノノハ))i
   |ハiヮiハ|
   ノハ/"y"]ノ
   ""( 人 ノ
.    ヽノ
     ( フ
.     )ヨ
     ( フ
.     )ヨ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/16(水) 19:45:28 ID:5TEislTl<> かわいいからOK! <> コレクター<><>2009/12/23(水) 11:49:59 ID:INbc4+bN<>
目には見えないけれどそれには単位がある。

「・・・寒いねぇ今日は、とくに」
「手、繋ごうか?」
「腕組みたい」
「わかった」

注ぐ 沈む 浮く 汲む

液体なのだろうか?
それとも固体?気体?
然れどもちゃんと単位はあって

「もうすぐ雪が降るかな?」
「まだじゃないか?そこまで寒くないだろ」
「えー・・・」
「・・・ほら、これもつけとけ」
「いいの?」
「うん」
「えへへ・・・ありがとー」

手を繋ぐ

一緒に出かける

プレゼントをあげる

優しくする

キスをする

抱きしめる

その度に
確かに君の心は少しずつ奪われていって

あとどれ位あるのだろう?
ゼロになるまで集めていこう、これからも

「・・・なぁ」
「んー?」
「結婚しようか、春にでも」
「・・・うん」

ほら、集まったよ 君の心 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/23(水) 12:26:22 ID:INbc4+bN<> コレクター・・・とは少し違うような(^ω^;・・・
何か、穏やかな話が書きたかったんだ・・・しかし恋愛モノ書くのは心底恥ずかしいっ(ノ∀`*)ヤンッ
いろんな表現があるのは日本語の醍醐味ですね!
お粗末さまでしたm(_ _)m <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/23(水) 17:05:41 ID:Hp73l6Vh<> なんかいい <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/23(水) 22:57:42 ID:JgFBhlvl<> うむ、良い
最後の一言が特に <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/23(水) 23:07:24 ID:OPztw5nA<> なんか歌になりそうだな。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/26(土) 10:56:15 ID:6S5ZaOKK<> お題:神経質 <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/12/28(月) 22:56:34 ID:+O9Ofcu6<>  イライライライライラ。
 私は今苛立っている。間違いなく苛立っている。
 お腹の真ん中辺りに何だか軽く痛みを感じるし、こめかみの辺りも
少し痛い。頭痛がする。足の裏でパタパタと地面を叩いてみたり、机
を指でトントンと叩いてみたり、そういった動作が無意識に出て止まらない。
 確実に、私は苛立っていると言えるだろう。それは間違いない。
 では、いったい私は何に苛立っているのだろう? 考えても、その
原因に心当たりが無い。その事がまた私を苛立たせる。私の苛立ちを
増していく。
 イライライライライラ。
 まったく、どうして私はこんなにも苛立たなければならないのか!
 世の中の理不尽さに、ますますますますイライラが募っていく――


「……主任、なんであんなイライラなさってるんですか?」
「ああ、お前新人だから知らないか。あれは、あの人の癖みたいなもんだ」
「癖?」
「鶏が先か卵が先かって事さ。イライラが先か、それにイライラするのが先か」
「は、はぁ……」
「イライラする事に苛立って、どんどんイライラ募らせて、最後は俺達に
 爆発させるんだから、困ったもんだ。お前も主任がああなってたら
 近づかない方がいいぜ」
「………………」
「ま、しばらく近づかないでおけば、適当な誰かが被害こうむるだけで
 ……っておい! おまえ……あーあ、やめとけばいいのに」


「あの、主任?」
「……何かしら?」
「どうしてそんなにイライラなさってるんですか?」
「……イライラしてる? 私が?」
「はい。何か理由があるんでしたら、お聞かせ願えないかなぁ、って。
 話したら少しは楽になるっていいますし……僕なんかでよかったら、
 ですけど」
「……何にイライラしてるのか、さっぱりわからない事にイライラしてるんだけど」
「わからない? 理由が、ですか?」
「そうよ? 悪いかしら? わかったら向こう言って仕事してくれないかしら。
 特に貴方に聞いてもらう話は……」
「それって……イライラする必要、無いんじゃないですか?」
「……はぁ?」
「だって、どうしてイライラしなきゃいけないのかわからないんでしょ?
 だったら、イライラする必要自体無いって事なんじゃないかなぁ、って」
「………………」
「……あ、ご、ごめんなさい。変な事言いましたね、僕」
「そうよね」
「え?」
「その通りだわ! あー、何かもう目から鱗だわっ! 凄いスッキリしちゃった!」
「……あ、その……お力になれたようで、よかったです」
「うん、ありがとう! お礼に今日のお昼、御馳走してあげる」
「そ、そんなつもりじゃあ……」
「いいのいいの! さあ、もうすぐ昼休みだから行くわよ!」


「……なんだありゃ」
「まあいいんじゃないか。丸く収まったようだし、これで俺達が当り散ら
 される事もなくなりそうだしな」
「いたのか」
「ああ、避難してた」
「しかしまあ……なんでも、気の持ちようって事なんだろうな……」
「そうだな……」 <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2009/12/28(月) 22:57:19 ID:+O9Ofcu6<> おわり

ここまで投下です。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/29(火) 21:48:53 ID:g87eQTbh<> なんだこりゃ
あっさり解決したな…w <> 神経質<>sage<>2009/12/31(木) 00:02:09 ID:Pq2EFdJN<>  夕食に招かれた友人の部屋で、彼は絶句した。
 四畳半の床にはゴミが所狭しと散りばめられ、ビールの空き缶が角を占拠し、本棚からはサーファーがはだしで逃げ出すビッグウェーブが起きている。炬燵テーブルが部屋の中央に据えられているが、炬燵布団は黄色く変色していた。
 四隅には得体の知れない人形らしきものが鎮座している。部屋に漂うお香らしき匂いもあいまって、何がしかを呼び寄せられそうな雰囲気を醸し出していた。
 何だこれは。彼が瞬時に部屋を間違えましたと回れ右しかけたのも無理からぬことである。
「君はもっと神経質だと記憶していたが」
「ああ。その認識で相違ない」
 彼は普段の友人の行動を思い返した。大学ノートの一行ごとの字数をきりきりそろえようとし、大学構内の横断歩道を白黒同数で歩こうとし、教授の髪の分け目をきっちり真ん中分けにしたほどの神経質大魔神である。
 であるからして、友人宅にて立ち居振る舞いをうるさく言われることは想像できても、魔界に飛ばされることは予知できなかったのである。

 友人が夕食の買出しに出て数分、彼は人形に見守られながら思案にふけり、やがて玄関を出た。
 更に数十分後、彼は再度魔界の門をくぐった。手にはドラッグストアから仕入れた掃除セットをぶら下げて。
 そう、彼は逃げ出したわけではなかったのだ。
 思うに友人は、部屋の整理にかけては人並みに――というには頭一つ分飛びぬけている気がするが――モノグサなのだ。一人幻滅するのは勝手だが、馬鹿にするわけにはいかない。
 ここは普段世話になっている恩義に報いて俺が部屋を磨きに磨きぬいてやろう。彼は決意した。

 それから更に数十分後、部屋は見違えるほど綺麗になり、友人が部屋を間違えましたと回れ右するほど光り輝いていた。
「ああ、うん、ありがとう」
 ゴミも人形もなくなってスッキリした部屋を見回した友人は、頬をかきながら言った。彼はその様子に拍子抜けした。

 その後、夕食をご馳走になった彼は帰路に着いた。……のだが忘れ物に気付いて引き返した。
 友人は鍵をかけない。買出しのときにそれは確認済みだ。彼は扉を開けた。
 そして絶句する。
「……やあ」
 友人は声を上げた。ゴミ袋のゴミを撒き散らした体勢で。
「……何をしているんだ」
 友人は何事か考える顔だったが、やがて観念した様子で口を開いた。
「……こうしないと、イライラするんだ」
 部屋の角にはビールの空缶がうずたかく積み上げられ、本棚からはビッグウェーブがおき、部屋の四隅には人形が悠然と構えている。
 お香のきつい匂いが彼の鼻をくすぐった。
 彼は溜息をついた。
「なるほど、君は、神経質のようだ」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2009/12/31(木) 09:33:20 ID:vG7ncwRD<> オチは読めたけど面白かった <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2010/01/01(金) 00:23:04 ID:cFwPG5bn<> 「んー! んー!」
「おやおや、どうしたんだい月さん」
「やあ、星さん。こんばんわ」
「そんなに頬をふくらませて、何か腹の立つ事でもあったのかい?」
「ああ、これは違うんだ。星さんは知らなかったっけ」
「うん、知らないね。ちょっと教えてくれないかい?」
「うん、構わないよ。教えてあげる」
「じゃあ教えてもらおうか」
「こうするとね、僕を見た人が喜んでくれるんだ」
「怒ってる君を見て? それはまた一体全体どうしてだい?」
「うーん、それはちょっとわからない」
「わからないのかい? わからないのにそうするのかい?」
「うん、そうだよ。わからないけどするんだよ」
「へえ。月さん、あなたも変わってるね」
「そうかな? 僕は変わっているのかな?」
「うんうん、十分変わっているよ」
「僕はそうは思わないけど」
「私はそうと思うけれど」
「まあいいや」
「まあいいか」
「でも、喜んでくれるからやるんだよ」
「それならそれで、いいんじゃないかい」
「うん、それでいいと思うよ」
「でも、そんなに頑張って、疲れるだろう?」
「うーん、確かに。疲れてしぼんじゃう時もあるんだ」
「程々にした方がいいんじゃないかい?」
「でも、まん丸になった方が、喜んでくれる人は多いから」
「それであなたは頑張るのかい?」
「だから僕は頑張るんだよ」
「なるほどね。なるほどそうか」
「わかってもらえたかな?」
「ああ、うん、わかったよ。だったら僕も頑張ろう」
「君は何を頑張るの?」
「あなたがつかれた時に、私は頑張るとしようかな」
「僕がしぼんだその時に、君が頑張ってくれるのかな?」
「そうだよ、そうさ。代わりばんこで頑張ろう」
「うん、わかった。、わかったよ。僕の代わりは頼んだよ」

 空に輝く月と星の間に、そんな会話があったかどうかはわかりませんけれど――

 今日は満月。月の頑張る当番です。月の輝きに包まれて、ひっそり星が休む時です。
 一生懸命膨らんで、いろんな人に喜んでもらおうと頑張る月の姿が、一番綺麗に輝く時。
 さあ、空を見上げてみてみましょう。
 雲がいじわるしなければ、そこに丸い丸いお月様が、きっといるはずです――

                                                終わり <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2010/01/01(金) 00:23:39 ID:cFwPG5bn<> ここまで投下です。

あけましておめでとうございます。
月が綺麗ですよ。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/02(土) 11:38:14 ID:/gjyFGgK<> おめでとうございます
今年も面白いお話書いてね(俺はかかない)
月は今日見ますw

次のお題「どんでん返し」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/03(日) 00:02:55 ID:xtvLB2Lh<> あけましておめでとう!
童話風の語り口で心がほんわかする話だ <> 指切り船長<>sage<>2010/01/06(水) 01:56:18 ID:AtziK04v<> 焼け焦げた木片が散乱する浜辺で、少年は一つのビンを見つけた。
中に入っているものを見て、全てを察して泣いた。
ビンを抱きかかえて、一生果たされない約束を思い、永遠の別れの悲しみに打ちのめされ、声をあげて泣いた・・・


話は2ヶ月前に遡る。
小さな港町は、町にやってきた海賊の噂で持ちきりだった。
「おい、聞いたか!? あの、”指切り船長”キャプテン=ロビンが今、港に来てるって本当か!?」
「ああ、本当だ。俺は海賊船を見たぜ。どうやら、食料と水の補給をしたくて、町に大金を払ったらしいな」
「どうすんだよ! 俺たち危ないんじゃないか!?」
「慌てんな。海軍に連絡しない代わりに、町で一切の騒ぎを起こさないって約束をしたらしい。船員も船から一歩も出ないで、物資の搬入だけするってことらしいぜ。」
「ああ、町長は賢いな! それなら、俺たちも安全だな。」
「変わりに、海賊船には近づくなって、議会からお触れが出てるらしいな。」
「へっ、そんな酔狂な奴いるかよ! ”指切り船長”に嘘を見抜かれたら、その時点で指がスパッだぜ!? 近づきたくもねぇ」
「は、お前は奥さんに愛人のことで嘘つきまくりだからな。会いたくないわけだ。」
「馬鹿! そんなことを言うな! あいつに聞かれたらどうするんだ・・・・」

そう、町は安全に大金をせしめるため、「船から降りないことを条件に、物資の搬入だけ行う」という取引を行ったのだ。
人によっては「海賊と約束」ということに違和感を覚えるかもしれないが、それはかの有名なキャプテン=ロビンを知らないからだろう。
彼は海賊だが約束を守ることに病的な執着を持っていて、それがどんな小さな約束でも、破った相手の指をナイフでちょんぎってしまうのだった。
だから、人々は、彼は海賊だが約束を守ることを知っていた。そのために、町は海賊と取引ができたのである。

「ふぁーあ、暇だぜ。この船に近づく馬鹿なんていねーっつーの。まったく、せっかくの陸なのに、ねーちゃんのおっぱいがモミモミできないとは・・・ 意味ねーぜ」
船の甲板で、見張りが悪態をついた。
「ジェシカちゃん、カリブの端っこで何してるんだろう・・・」
「・・・すいません、おじさん」
「チューしたいな。ジェシカちゃんのちっちゃいお口にチュッチュー・・・」
「おじさん! おじさんってば!」
「うわっ!!!」

見張りは飛び上がって驚いた。船員であっても、船長の命令・・・つまり約束に違反することは、”指切り”にあってしまうのだ。
「き、キャプテン! しっかり見張ってました! い、異常はまったく絶対しっかりちゃっかりありません!!」
「・・・おじさん、驚かせちゃった?」
「へ?」
見張りは、怒鳴られる気配が無いので、辺りを見回した。すると、そこには、小さな少年がちょこんと立っていたのだった。
「おじさん、あのね? ・・・ぼ、僕を・・・仲間にしてくれませんか?」

「・・・で、お前はノコノコと俺のところまで連れてきたのか?」
「へぇ。前に、キャプテンは、『入船を希望する奴がいたら、誰だろうと連れて来い』と言いました。」
「バカヤロウ!!」
「ひっ!」
「それは戦える奴の話だ。こんな子供を船に乗せて何をさせるってんだ! 足手まといになるだけだろ!」
「・・・す、すいません!」
少年は、見張りをどなりつける大男、”指切り船長”キャプテン=ロビンに対して、体を震わせて反論した。
「・・・あ、足手まといなんか、なりません!」
「あ?」
「・・・僕は・・・せ、戦士です! 戦えます! だから連れて行ってください!!!」
その瞬間、少年の体は宙を飛んだ。
壁に激突し、頬に痛みを感じることで、自分が殴られたことをようやく理解できた。
「話にならねぇ。帰ってママのおっぱいでも吸ってろ!」
「・・・いません」
「なんだと?」
「母はいません。海軍になった父に捨てられて・・・ 死にました。」
「・・・ちっ、敵討ちでもしたいってことか」
「はい! 僕はもう戦えます! 父を、海軍を倒さないといけないんです!」
少年の熱意に、キャプテンは考えさせられた。それは同情なのか、憎しみに動かされた少年の素質を見抜いたのかは、誰にも分からなかったが・・・
「・・・ふぅー、分かったよ。だが、今じゃねぇ。5年後またこの町に来る。それまでは、ずっと体を鍛えろ。俺と戦える強さになったら乗せてやる。」
「本当!? キャプテン!」
「ああ、約束だ。約束を破った奴ぁ、指を切り落とす!」
船長が高々と宣言した。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/06(水) 01:57:45 ID:AtziK04v<> >>342がずっとひっかかってましたので、組長じゃないですが吐き出しました。
すっきりした(*´∀`) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/06(水) 19:22:42 ID:sd0DTQaf<> 続きは!? 続きはまだなの!? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/06(水) 21:58:55 ID:AtziK04v<> 少年の話はこれで終わりですが、船長の話があるかもしれません
でも、このスレ的に「続編」っていいもんなの? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/06(水) 22:24:45 ID:j1JgeWyj<> 確かに続きが見たい <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/01/06(水) 22:34:02 ID:25iNfLp2<> >>363
スレ移ればいいんじゃね? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/06(水) 22:35:36 ID:j1JgeWyj<> たまには2レスでもいいじゃない <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/06(水) 22:52:50 ID:sd0DTQaf<> >>363
困った時は総合スレ

一次創作総合
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220023797/

ただまあ、明確に文章が繋がってるとかでなければ、
ちょこちょここのスレに投下するのは構わんと思うよ。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/06(水) 23:51:37 ID:AtziK04v<> >>367
誘導ありがとう(*´∀`)
船長の話を書いてきました。

2話目で終えるつもりでしたが、続きがあるような話になってしまいました。
まぁ、向うは縛り無いから、仮に続いてもいいよね。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/07(木) 09:51:12 ID:yuy19JaJ<> いいと思うよー。
こっちでもGJ。 <> どんでん返し<>sage<>2010/01/07(木) 21:40:21 ID:IZ4I/gIs<>  どんでん返しを造りたい。
 あんたの隣人がそんな申し出をしてきたとき、あんたはどうする?
 よく考えるまでもなく、あんたは断るだろう。
 当然のことだ。わざわざ自分の住処に風穴開ける馬鹿はいない。
 百歩譲って開けたとしよう。次にあんたはその隣人と共同生活しなきゃならない。村全体で一つの家族なんぞという平和ボケははるか昔、よく知りもしない隣人と住居をともにしようなんざ馬鹿か酔狂のすることだ。
 だから断る。誰だってそうする、俺だってそうする。
 ……あんたは何でこんな質問をされたかそろそろ気になっているころだろう。
 まあ簡単だ。俺が今現在そんな状況にあるからだ。
 なんて答えたかって?
 そりゃもちろん――
「ぜひ造りましょう」
 ああ、分かってる。馬鹿なことを言ったことぐらいは。
 だが、俺を笑うのはちょっと待ってもらおう。
「ありがとうございます」
 一言で言おう。天使が舞い降りた。
 もう一度言おう。二階建てオンボロアパートの一角に天使がご降臨なされた。
 頭を下げてからふんわりと微笑んだ彼女を、俺は視線で火が点きかねないほど凝視した。
 ああ、お父様お母様何ということでしょう。俺の部屋の隣には天使様が住んでらっしゃいましたよ。
 彼女の美貌を言い表わすには言葉が追いつかない。加えて俺の頭は天元突破の真っ最中だ。
 ただそれら満々たる美の中で強いてあげるとするならば、その流れるような黒髪だ。それがひときわ俺の目をひいた。
 優しく輝くキューティクル。清らかな川を思わせる綺麗なストレート。天使の輪だってばっちりだ。俺が天使と比喩したのも分かっていただけると思う。

 チャイムの音に遅寝からたたき起こされ、
「どんでん返しを造りたいんです」
 微笑み同様春の日向のような口調で彼女は言った。
 余りに甘美な声だったので俺の顔はさぞかし緩んでいたことだろう。
 どんでん返しを造れば彼女に貸しを作れるとか、嬉し恥ずかし桃色共同生活が待っているとか。色々考えるべきことはあったのだろうが、俺はほぼ反射で了承した。
「でも何故どんでん返しを?」
 どこかやんごとなき雰囲気を漂わせる――何故こんなボロアパートにいるのか謎だ――彼女は、その質問に表情を曇らせた。
「父が亡くなったのは丁度一年ほど前でございます」
 それはお気の毒だがはて、それがどんでん返しとどうつながるというのだろう。
「父はよく私を忍者寺に連れて行ってくれました」
 伊賀にでも住んでいたのだろうか。
「よく父は言っていました。こんなどんでん返しが自宅にあったらさぞや愉快だろう、と」
「だから?」
「父の思い出にどんでん返しを造りたいのです。しかしこの一室だけがあてがわれるこの質素なアパート、私一人ではどんでん返しは成りません。ですからどうか、どうかご協力を……」
 ちょっと論理が飛躍している気もしたが、俺は知らずもらい泣きしていた。
 いいでしょう、俺なんかでよければいくらでも。
 さて早速俺達はそれぞれの部屋に戻り、ハンマーを用意した。
 彼女の父親にも聞こえるように両側から盛大にぶち抜く。
 彼女の要望だ。どうやら彼女、見かけによらず少々ねじがトんでいる。だが、それを指摘する甲斐性は俺にはなかった。
「せーので行きますよ!」
 壁の向こうに聞こえるよう叫んだ。
 返事を確認し、
「せーの!」

「こんなにもろいとは知りませんでした」
 夏の強い日差しの中、彼女はゆったり微笑んだ。
 このアパートは築六十年。俺の親父と同年代。壁があることでかろうじて天井は支えられていたようだ。
 結果、
「はあ」
 室内にいながら青空を仰ぎながら俺は生返事することとなった。
 夏の日差しはようやく天頂を過ぎ、これから午後が始まろうとしているところだった。
「綺麗な青空ですねえ」

おわり <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/08(金) 22:22:32 ID:Y2+GRWw4<> 天然お姉さんは好きですか?

大好物です! <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/09(土) 14:46:11 ID:LRUw8t0q<> >>369
規制で書けませんでしたが、感想ありがとう
楽しんでもらえて何よりです <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/11(月) 13:51:04 ID:AA51RRPC<> 御題を下さい <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/11(月) 20:03:01 ID:arW6KgRK<> ボクシング <> ボクシング<>sage<>2010/01/11(月) 21:15:37 ID:AA51RRPC<> 古代ローマ。
栄華を誇った文明は退廃を生み、人々は退屈によりモラルを無くしていった時代だった・・・

「兄貴、商売相手との権利がもめたんだって?」
薄暗いコロシアムの一室に、一人の身なりの裕福な若者が入ってきた。
「そして、その決着を、奴隷同志の拳闘で決めようだなんて、よく決心したな。」
そこには、若者より金持ちに見える、きらびやかな金属をまとった太めの男が座っていた。
「ああ、よく来てくれたな、弟よ。もう、噂になってるのか。」
「酒場ではもちきりだよ。策士の兄貴が、純粋な勝負をするだなんて、何か裏があるのかってな。」
「何を言ってるんだ、俺はいつでも、正々堂々としているさ。策士だなんて、俺に負けた奴のでまかせだ。」

二人は部屋を出て、決闘が行われるコロシアム中央へと廊下を進んだ。
「・・・それに、今回は奴隷の命のために、相手をギブアップさせたときだけ勝利とし、殺してしまった場合は負けとするって聞いたが。」
「ああ、その通りだ。」
「いっちゃなんだが・・・以前の兄貴じゃぁ、考えられなかった。」
「おいおい、お前もかよ。」
「兄貴は、奴隷一人の命より金貨一枚の方が貴重だと言っていたはずだ。」
「・・・そんなこと言ったかな?」
「ああ。だから、心配になってな。何かあったんじゃないかって。」
「俺はいつだって、モラルを重んじて来たさ。さて、コロシアムについたぞ。」

コロシアムには商売相手と立会人、そして相手の闘士が待っていて、後は自分の闘士が登場するのを待つばかりとなっていた。
「そうそう、弟よ。ルールの確認だが、ギブアップはどうやればいいか知っていたか?」
そのセリフに、弟は馬鹿にされたと思って、語気を荒げた。
「馬鹿にするなよ、兄貴! 『人差し指を天に上げる』だろ? 子供でも知ってるぞ!」
「ふっふっふ、ご名答。さぁ、俺の選手が入場だ。」

入場した選手を見て、弟は驚きの声を上げ、相手は嵌められたことを呪った。
・・・その闘士の両手には、人差し指が無かったのだ。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/11(月) 21:17:05 ID:AA51RRPC<> 頭の中で、「明日のジョー」と「幕の内一歩」が邪魔してアイディアが浮かびませんでした>< <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/11(月) 21:19:30 ID:arW6KgRK<> いやいや、面白かったよw
まさに外道!
GJでしたー <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/13(水) 01:07:45 ID:UpLTOpew<> うまいな!
よくできてると思う <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/13(水) 23:41:18 ID:66AvB/s7<> >>377,>>378
楽しんでもらえて何よりでした(*´∀`)
次の御題が欲しいです(屮゚Д゚)屮カモーン <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/14(木) 14:59:49 ID:jTvLJa+H<> つ「お題:家紋」

( ´w`)<ナンチテ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/14(木) 22:51:41 ID:LVXtohAW<> これは難しい・・・
どういう話にしよう(´・ω・) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/14(木) 23:43:22 ID:jTvLJa+H<> 難しくて思いつかないようなら

つ「お題:かま」

でもおk

( ´w`)<カマーん! ナンチテ <> 家紋<>sage<>2010/01/16(土) 01:36:48 ID:5logeeTL<> メディアの情報が氾濫する昨今、企業は新しい広告形態を模索していた。
それは加熱し、今まで広告を貼り付けない場所にところかまわず企業ロゴを貼り付ける、「広告戦争」にまで発展していた。

「・・・それで、例のプランはどうなった?」
「はい、企業ロゴを日常生活で目にするようにする、『広告戦争』対策ですね。」
ある企業の会議室で、太めの男と、眼鏡の若者が、プロジェクターに映し出された資料に向かっていた。

「身近な商品、例えば食器や衣服に企業ロゴをつけるアイディアは、大手飲料メーカーが実施済みです。」
「ああ、それは知っているよ。家もC社のロゴのもので溢れている。」
「車の外装にロゴをつけ、走る看板にする件は、外食産業が実施済みです。」
「2年前は単色の車だけしかなかったが、今ではロゴの無い車を見つける方が難しいな。」
「家の外装にロゴをつけるのは競争が過激になりすぎて、法律で禁止されました。」
「ウチの家も危うく、妻によってスナック菓子のパッケージにされるところだった。」
「・・・つまり、もうロゴがつけいる隙がないのです。」
「・・・ああ、分かった。」
太めの男はため息をついた。何か、他の企業に負けないアイディアは無いものだろうか。何か身近で、他の企業が気づいていないような広告場所は・・・

「・・・あ、そういえば。」
「どうした、何か浮かんだか?」
「あ、すいません。たわいも無い話を思い出して。」
「いや、どうせ、打ち合わせても何も浮かばないんだ。休憩にしよう。それで、何かあったのか?」
太めの男はタバコを出しながら、気分転換に話を振ってみた。
「この間、実家に帰りまして、一家総出で掃除をしていたんですよ。そしたら、祖母の着物が出てきまして。」
「ほう。」
「それを見た娘が、『こんなところにも企業ロゴがあるんだ』って言ってたんですよ。」
「お婆さんの着物は古いもんだろ? そんな昔から広告戦争はあったのか?」
「いえ、それがですね、うちの家紋が亀甲文なんで、醤油メーカーのロゴと間違えたみたいなんです。」
ハハハと笑い話にした眼鏡の男に対して、太めの男が大声を上げた。
「それだっ!!」
「えっ!? 何ですか? 何か変なことを言いましたか?」
「いや、それだ! 家紋だよ! 身近で、ロゴになって、どの企業も進出していない広告!」
「えっと、どういうことでしょうか?」
「つまりだ、一家の家紋の変わりに、特定の企業ロゴを使うように契約してもらうんだ。目に触れる機会も多いだろうし、一族のシンボルである家紋の変わりなら、帰属意識も生まれるだろう。これはすばらしいぞ!」
「はぁ、なるほど・・・ 確かに家紋の広告化なんて、どこの企業も気づいていないでしょう。盲点でしたね。」
眼鏡の男は、自分の世間話が生み出した効果に、嬉しくもあり、戸惑いも抱いていた。
「さっそく、その先で検討をしてくれ! これは流行るぞ!」
太めの男は、舞い込むであろう広告収入を夢見て、ほくそえむのだった。

それから1ヶ月・・・
会議室では、眼鏡の男が意気消沈しながら報告をしていた。
「・・・残念ですが、このプランはダメです。」
「なぜだね? 盲点だった広告プランだ。希望する企業は多いだろう?」
「それがですね、実験して分かったのですが・・・」

眼鏡の男は、さっそく市場調査を行った。
モニターとして100人を選び、半月程、その家の家紋を企業ロゴに置き換えてもらったのだ。
そして、アンケートを記入してもらったところ、驚くことに、ほとんどのモニターが企業ロゴに悪い印象を抱いているのが分かったのだ。

「なぜだ? ほとんどのモニターが悪い印象を抱くだなんて?」
「その原因を調べたんですが、どうやら、広告対象に、家紋を選んだのが悪かったようです。」
「どういうことだ?」

近代となり、人々が家紋を見る機会はずいぶん減った。
それこそ、結婚式と葬式、墓ぐらいだろう。
そして、めったに開かれない結婚式に比べれば、葬式と墓を目にする機会は多い。
こんな状況では、人々は親しい人の死を、その企業のロゴと結び付けてしまうのも無理は無かった。

「・・・そんな状況に陥れば、その企業のロゴを、二度と見たくないと思うでしょう。不快な思いをさせるなど、広告としては失敗です。」
二人は落胆したが、その原因は、自分たちのアイディアがダメになったことだけでは無かったようだ。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/16(土) 01:38:43 ID:5logeeTL<> 難しかった(´・ω・)
「水戸黄門の印籠の家紋」ネタと、どっちを使おうか悩みましたが、ちょっとだけメッセージ性があった(?)ので、こっちにしました

「かま」の御題ももらおうかな <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/16(土) 21:57:32 ID:KCOmus2s<> おお、面白かったw
確かに家紋とか見かけないよね。っていうかうちの家紋とかわかんねえw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/17(日) 21:02:37 ID:6lXi9pJy<> 感想どうも
そういわれると、自分も家紋知らないや(;-ω-)
「カマ」は、なぜかオクラのせいでロシアがヤバイ(?)話になってしまったので、ちょっと考え直します <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/17(日) 21:07:48 ID:3zL/4bgT<> オクラのせいでロシアがヤバイ・・・?
あの粘り気が何かやらかしたのか・・・? <> カマ<>sage<>2010/01/18(月) 22:50:04 ID:uNmfIYUs<> ある村に、長年を庭師として過ごした男がいた。
彼は歳をとり、煩った心臓の病のせいで、今では死を待つだけの日々を過ごしていた。
「ワシは、庭師として誇れる人生を過ごしてきた。しかし・・・」
自室のベットの上で、深いため息をついた。
彼には一人の息子がいたが、どうしようも無い男で、ことあるごとに父親に暴力を振るっては飲み代をせびるようなロクデナシだったのだ。
「ワシが死んだら、息子が誰に迷惑をかけるのかと思うと、辛くてしょうがない。いっそのこと、二人で自殺しようか・・・」

その頃、酒場では息子が悪友と、庭師のお金で酒盛りをしているところだった。
「はっはっは! ジジイの金で飲む酒はうめぇな!」
「おお。いい親父じゃねぇか。でも、お前飲みすぎじゃねぇか? 熟れたリンゴみたいな顔になってんぞ?」
「あ? そんなん気にすんなって! じゃんじゃん飲もうぜ!」

「はぁ・・・どうしたもんか」
「・・・ずいぶんと、お困りのようですね。」
一人しかいないはずの部屋で、突然誰かから声をかけられた。
驚いて見渡すと、部屋の隅に、ローブを被った人がうずくまっていたのだった。
「ど、泥棒!?」
「泥棒と言われれば、近いかもしれません。もっとも、私が盗むのは金じゃないんですがね。」
ローブの男は、懐から大きな鎌を取り出し、庭師の元へと近づいてきた。
窓からの月明かりに照らされて、男の姿がはっきり見えると、庭師は驚きの余り悲鳴を挙げた。
「ひっ! し、死神!?」
「はい、その通り。死神でございます。」
ローブの男は被っていたフードをおろし、頭蓋骨の頭を見せながら、わざとらしいお辞儀をした。
「ワシは・・・今日死ぬのか? それで迎えに来たのか!?」
「御名答。あなたの心臓は、もう限界。今晩月が一番上に昇るころに、ピタッと停止いたします。」
非情な死神の宣言・・・
他の人だったら、気絶をするか、逃げ出すところだろう。
「そうか・・・ やっと終わるのか。」
「おや、意外ですな。暴れたり逃げたりするのが普通なんですが、むしろ安心したように見えますが。」
「いや、ワシは長く生きすぎたと思っておった。ようやく死ねると思えると嬉しくてな。」
「辛い人生でしたんですなぁ。まぁ、私には関係ない話ですがね。」
そういって、死神はベットの端に座り込んだ。
「時間はしばらくありますので、月が昇るまで、待たせてもらいますよ。」

それから、月が一番上に昇るまで、二人は黙ったまま過ごした。
・・・長い沈黙に耐えかね、庭師はふと話を振ってみた。
「・・・お前さん、聞きたいことがあるんだがいいかね?」
「答えられることなら、何なりとどうぞ。」
「死神は皆、鎌を持っているが、なんで鎌なんだね? 病人に止めを刺すなら、剣でも斧でも良いだろう?」
「ああ、たまに聞かれる方がいますよ。それはですね・・・」
そういいながら、死神は庭師の首元に鎌の刃を向けた。
「生者の魂は神や悪魔の糧となるものなんですよ。私たちは、その果実を刈り取る『収穫者』なのです。」
「・・・ああ、なるほどな。ワシ等は育てられているわけか。」
人間が只の収穫物と聞いて、庭師は少し悲しくなった。
「・・・だが、あんた一つ間違えてるよ。」
「ほう、そんなことを言われたのは初めてだ。私は何を間違えているっていうんだね?」
「確かに鎌は実ったリンゴのような収穫物を刈るものだが、病人や老体・・つまり不要な枯れ枝を刈るのはハサミだ。選定する相手に合わせた道具を使わないなんて、庭師じゃぁ三流のやることだ。」
「ほう・・・」
頭が髑髏のため表情が分からないが、庭師の言葉に感心したらしい。しきりに首を振り、その言葉をかみ締めた。
「400年役目を果たしてきたが、そんなことを考えたことも無かった。一流の庭師に鎌を振るうのは、大変失礼なことをした、出直してくるとしよう。」
そう言い残すと、死神はどこかに消えていってしまった。

月が下り始めるころ、自分の命が助かったことを知った。しかし、それは彼に失望をもたらしたようだった。
「・・・ふぅ、生き残った? それでどうするというのだ? 息子に暴力を振るわれる日々が来るのであれば意味が無いだろう!」

自分の不幸を嘆く彼の元に、翌日息子の友人が怒鳴り込んできた。
「おい! 大変だ! あんたの息子が飲みすぎて死んじまった! の、飲んでたら、突然、頭をがくっとテーブルに突っ伏して、死んじまったよ!!」
「そ、そう! まるで、まるでな!」
あせる息子の友人の一言で、庭師は全てを悟った。
「まるで、実った果実が、鎌で枝からスパーンと切り落とされたみたいな感じだったんだ!!」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/18(月) 22:53:00 ID:BIy/dwra<> おお、こいつは面白い。
何か腑に落ちた感じがしたw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/18(月) 22:56:10 ID:oP/ao/oz<> 正しいイメージとしては麦と葡萄だな <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/18(月) 22:59:22 ID:uNmfIYUs<> オクラは忘れてください。ボツネタにしました
今回は、ちょっと民話っぽい感じになりました

話が長いので、短くすることが課題なんですが、今はちょっと無理っぽい?
次は30行くらいを目指したいです(?)

御題(屮゚Д゚)屮カモーン <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/18(月) 23:03:33 ID:BIy/dwra<> つ「するめいか」

あたりめウマー <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/18(月) 23:06:24 ID:uNmfIYUs<> おお、感想どうもです!

>>389
庭師理論に納得してもらえてホッとしました
(ここがすっきりしないと、話が成立しないので)

>>390
鎌とハサミのイメージが、麦と葡萄ってことですね。
息子がビールばっか飲んでて、親父がワイン農家だと、比較がはっきりしたのかな?
説得シーンのセリフがうまく浮かばないけど・・・(´〜`;)

>>392
「するめいか」頂きました
頑張ってみます(`・ω・´) <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/01/27(水) 17:05:34 ID:uiNfWM9k<> 上げ <> するめいか<>sage<>2010/01/28(木) 00:17:30 ID:PXl3ByG0<> 「日本語ハ難シイデスネ。レッドシグナルBARデノ注文ハ、通ジナクテ困リマス」
赤提灯の店で、向かいの席に座っているアメリカ人がそう呟いた。
彼はエリックと言い、僕と同じ大学院の研究室に在籍している学生である。僕の良い飲み友達だ。

「英語ノ名前ノモノナラ、イイノデスガ、アクセントガ難シイ日本語ノ注文ハ大抵伝ワリマセン。」
「そうかい? 君の日本語なら問題無いと思うんだけど。」
「例エバ… ソウ、コレデスネ。」
彼が指差した「おしながき」は、どこの飲み屋にもある普通の品だった。
「へー、これ伝わらないんだ。試しに言ってみてよ。」
彼はその名前を読んだが、確かにアクセントがおかしく、車のブランドみたいなものにしか聞こえなかった。
「それだと伝えるのは難しいね。…そうだエリック、面白い話をしてあげるよ。実は、このメニューは日本人に良く知られた英語の愛称があって、その名前でも通じるんだ。」
「Oh? 本当にデスカ? 是非教エテ下サイ。」
「いいよ。その経緯から話してあげるよ…」

…昔、ペリーが日本に開国を迫ったときの話だ。
彼等は、まず浦賀にやってきたと言われているが、実は偵察のために千葉沿岸にやってきていたんだ。

夜のうちに沖に停泊し、斥候をボートに乗せて陸に進ませた。
乗組員は屈強な海の男なので、手漕ぎボートはすごいスピードで進んでいく。
ところがだ。陸の明かりが見えるくらいに近づくと、ボートはなぜか減速を始めた。
男達が懸命にオールを漕いでも、水はゼリーのような不気味な手応えを返すばかりで、ボートは全然進まない。
そのうち夜が明け、彼等を発見した村人が呼び寄せた役人の一団に、男達は取り押さえられてしまい、沖の船は慌てて逃げ出すしかなかったんだ。

後で分かったんだが、海の中に、「この生き物」 の大群がいて、ボートが進むのを邪魔していたんだそうだ。
ペリーの部下達は怒りを込めて、その生き物を「slow maker」と呼んだんだけど、この話が日本中に広まり、英語の愛称として定着したのさ。

「…本当デスカ? ソンナ話、聞イタコトガ無イデスヨ?」
「まぁ、いいから英語の愛称で注文してご覧。そうそう、ちょっとゆっくり言った方がいいね。」
「OK、本当カドウカ、試シテミマショウカ。…ヘイ、店員。orderシマスヨ。」
やってきた店員に、彼はゆっくりとその名前を呼んだ。
「すろぅめいかー」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 00:20:01 ID:ULe8WIdb<> なんというガセビアwww
民明書房に載せましょう!w <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 00:21:07 ID:PXl3ByG0<> 規制解けないと思ってたら、携帯の方が先に解除とは…
qwerty携帯といっても、入力は辛いよママン('A`) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 00:23:05 ID:ULe8WIdb<> うわ、そりゃ大変だ。
まあ、腱鞘炎(?)にならないようになー。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 00:27:45 ID:PXl3ByG0<> 感想どうもです

腱鞘炎にならない、やさしいお題を下さいΨ(゚Д゚)Ψカモーン <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 00:31:05 ID:ULe8WIdb<> つ「足つぼマッサージ」 <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/01/28(木) 01:24:36 ID:wQKhLi6D<> >>395
適当なこと教えんなwww <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 11:27:57 ID:hIcy5bJB<> ちょwwダジャレーwww <> 足つぼマッサージ<>sage<>2010/01/28(木) 21:03:44 ID:PXl3ByG0<> 大学時代の友人グループで、同窓会を開くことになった時の話です。
私と、携帯依存症のKと、ミュージシャンのNの三人で幹事をすることになったので、会場の下見をすることになりました。

「Nは遅れて来るって。もう少ししたら、Kの携帯に連絡するって言っていたわ。」
「そう、分かったわ。」
私はコートをイスにかけ、席に座りながらKに伝えた。
Kを見ると、Kは後ろの壁にコートをかけて、バックの中の携帯をいじりながら席に着いたのだった。

やってきた店員に軽めの食事とワインを頼む。
そのあと、料理とNが届くまでの間、Kと雑談しながら時間を潰すことにした。
「どう? この店、なかなかいい雰囲気じゃない?」
「そうね、悪くは無いわ。」
Kは、まだバックの中の携帯をポチポチといじりながら答えた。
「本当にあなたって依存症よね。指を動かさないで話すことってできないの?」
「え!? …私、依存症…かしら? でも、やめられないのよ。」
そう言う彼女は、顔を上げずバックの中とにらめっこしたまま答えた。
彼女に、操作をやめさせることを諦めた私は、別の話をすることにした。

「そういえば、あなたって足うらマッサージのバイトをやってたわよね?」
「そうよ。マッサージと銭湯と臨時看護師もしてるわ。」
「え? なんでそんなに掛け持ちしてるの?」
「いいじゃない。必要なんだから。」
「まぁ、お金は必要よね。」
Kが一瞬笑ったように見えたが、気のせいだと思う。
「それでね。私の弟の彼女も足うらマッサージのバイトをしてるんだけど、怖い話を聞いたんだって。」
「ふーん、どんな?」
一瞬、Kの動きが止まったので、シメシメと聞いた話を披露することにした。

ある夏の夜のことだ。
その日、なぜか客が全く来なかったので、店員は暇を持て余していた。
そのため、店長は一人のバイトを残し、自分も含めて全員を帰らせることにしたのだった。
…ふと、ひとりきりのバイトがベットを見ると、いつの間にか客が寝そべっていて、足だけがシーツから出ていたのだという。
「お…お客様?」
バイトが聞くと、ベットの足がクイッと動き、マッサージを要求した。
気味が悪いが仕方無しに、バイトがマッサージを始めた。
すると、ベットの人がうめき声を挙げるのだ。
「…痛い…痛い…」
「あ、すいません! 痛かったですか?」
間違ったツボを刺激したと思ってバイトが手を離すと、手の中にあった足が「ぽろっ」とベットから転げ落ちてしまった!
「痛い!! 足が痛い!! 足足足足!!」
この世のものと思えない絶叫に驚き、バイトの子は気絶してしまったのだという。

「まぁ、こんな話らしいわ。でも、なんで足つぼマッサージに幽霊が出るんだか? 変な話よね。」
「ふふっ、変な話。いったい誰が見たっていうのよ…」
一笑したKの後ろの壁から、Nの到着を告げる着信音が鳴り響いた。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 21:09:50 ID:PXl3ByG0<> 絶妙な角度でついてくる、あなたのお題のセンスが大好きです

副お題として、「意味がわかると怖いコピペ」を意識してみました。
ホラーは表現苦手かも(´・ω・) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 21:20:06 ID:ULe8WIdb<> うわお、これは怖い。
一瞬「……あれ、オチは?」ってなった次の瞬間ゾクッときた。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 21:37:14 ID:PXl3ByG0<> 感想ありがとう
ラストはオチを語らないで、読み手の違和感に任せました
(意味が分かると〜ってこういう手法でしたよね?)
ゾクっとして貰えたなら、成功ですね(`・ω・´) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 21:44:44 ID:maRGnEVk<> ごめん完璧には理解できなかった… (´・ω・`)
Kが何触ってるのか気になるー
でも乙です <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 21:51:33 ID:YTklbKYJ<> 俺も判らなかったな…

ただ不気味というか何と言うか、違和感ってのは感じたよ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 21:55:59 ID:PXl3ByG0<> >>407,408
描写不足があったらすいません
「後から考えると全部分かる」にするべきだったのかもしれないですね
(含みを持たせるつもりで、ぼやかせすぎた?) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 21:56:28 ID:wQKhLi6D<> 俺も理解できてる自信がないな <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 22:01:58 ID:ULe8WIdb<> ああ、俺も一つの意味でしかわかってなかったな、今見たら。
んで改めてゾッとしつつ、ツッコミ入れたくなったw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 22:28:14 ID:PXl3ByG0<> うーん、次に書くときは、構成から改善してみます(;-Д-)

分かりやすい話が書けるお題を下さいЩЩ(゚Д゚)カモーン <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 22:29:14 ID:ULe8WIdb<> 褒められたので出しにくいw

今回は誰か違う人よろー <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 22:31:50 ID:D2C+Ti0o<> 香合わせ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 22:34:01 ID:ULe8WIdb<> ttp://www.tabiken.com/history/doc/G/G018C100.HTM

ほうほう・・・。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 22:37:04 ID:wQKhLi6D<> 源氏物語で光源氏が褒められてたあれか <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 22:42:04 ID:PXl3ByG0<> 雅なお題キター
「香合わせ」頂きました

さて、どういう話にしようかな? <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2010/01/28(木) 23:11:48 ID:ULe8WIdb<> 「香合わせ、って……知ってるかしら?」
 彼女は笑顔だった。
 どうしようもないくらいに笑顔で――故に僕には、どうしようも、無かった。
「私の家が、なんちゃって名家だったのは……そりゃまあ無論、知ってるわよね。
 何せ私を嫁に貰う為に、隔日で通い詰めたくらいなんですから」
 そう。彼女の実家は、いわゆる名家だった。彼女はなんちゃっての、エセ名家
だと言って憚らないが、それは僕との馴れ初めにおける、実家との確執が原因
の、単なる悪口であって、真実では無い。
「雅な遊びなんてのも、幼少期はやった事があるの。蹴鞠とかやった事ある
 幼稚園児は、多分そうそういないんじゃないかしら」
 蹴鞠は男の遊びだ……と口をはさむ余裕は、僕にはなかった。
「で、その中に――香合わせもあった、というわけ」
 香合わせ……貝合わせの親戚か何かだろうか。
 その名前から、おそらくは何かの香りをペアリングする遊びだろう事は
窺い知れる。……つまり、彼女は何を言いたいのだろうか?
「そういう遊びをしてたから、私……匂いには、敏感なのよね……」
 !? ……そうか……つまり、そういう事か。
 それで彼女は笑顔なのだ。どうしようもなく、どうしようもない笑顔なのだ。
 僕は全てを悟った。
「あなたの服からした匂い……これは、B社の香水。それも、割と若者向け
 の種類……あの社の香水は、主婦層や独身女性に人気があるものよ……
 水商売の女性は、匂いが薄めだからつけないわ……その匂いが、この服
 からするという事――これは、つまり――」
 さながら名探偵のように、推理を披露する彼女。
 だが、僕は彼女が確信した核心を口にする前に、ある事を行った。
「ごめんなさい!」
 土下座したのだ。
「つい出来心ででも一回だけでちゃんとさよなら言ってきたしそれも僕が本当
 に大好きなのは君だけだと今更言っても信じてもらえないかもしれないけど
 本当だからというのが理由なんだよ本当だ!」
「………………」
 彼女はキョトンとしている。無理も無い。自分が問い詰めていたと思ったら
怒涛の勢いで謝られていたのだ。何が起こったのかわからないのも無理は無い。
「……本当に、ごめん。もう、浮気はしない」
「……あなた」
 見つめ合う、二人と二人。
 裏切るような事をした僕を、彼女はうるんだ瞳で見つめていた。
 何か……いい雰囲気?
「あなた?」
「なんだい?」
 僕は笑顔で顔をあげた。
「そんな謝罪で浮気された方が許せると思ってんのかこんの糞ボケがぁあああ!!!」
 その顔面を、彼女の腰の入ったロシアンフックが打ち抜いたのは、次の瞬間
だった――ひでぶ。

 結局、当面の小遣い無しと、来月のボーナス――本来、僕が自分用のパソ
コンを買う予定だったものだ――で春物のコートを買う事で、今回の件は
水に流してくれるという事になった。
 ――まあ……この程度で許してくれるなら、御の字かもしれない。
 何しろ、僕が彼女のキモチを裏切ったのは、事実なんだから。
 あの謝罪の言葉に、嘘偽りは含まれていなかったにしても、その事実は残る。
「……あなた? 今日は遅くなるの?」
「あ、うん。先に寝てていいよ」
「わかったわ……あ、忘れ物よ」
「え? 何か忘れてたっけ?」
「……もう、絶対浮気しちゃ、ダメよ?」
 彼女の唇が、囁きと共に、そっと僕の頬――まだ少し腫れている――に触れた。
 ……もう、過ちは繰り返さない。
 そう心に誓いながら、僕は玄関で手を振る彼女に手を振り返し、歩き始めた。
                                                  終 <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2010/01/28(木) 23:12:36 ID:ULe8WIdb<> ここまで投下です。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 23:13:45 ID:D2C+Ti0o<> 香合わせあんまり関係ねえw
でもつっこんだら負けな気がするw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 23:22:24 ID:PXl3ByG0<> 投下乙です
梅干しの次はついに頭から突き出しか? とwktkしてたらパンチでよかったw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 23:24:19 ID:ULe8WIdb<> あれ書いた人とは違う人だからね。
言われてみると、アレとの類似性が無いでもないなw

香合わせ関係あるverは思いつかなかったw許してw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 23:29:06 ID:PXl3ByG0<> あ、違う人なんですね、すいません。
文体と書き方の癖で、同じ人だと思ってました。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 23:30:02 ID:D2C+Ti0o<> 文体違うぞw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 23:35:14 ID:ULe8WIdb<> メシマズ嫁のファンなので、あれにはドキドキしたから、
よく覚えてましたw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/28(木) 23:39:57 ID:PXl3ByG0<> 改めて見たら本当に違うね
インパクト強かったから、記憶がかわってるのかも? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/29(金) 01:14:18 ID:U8Wna8na<> 呼ばれた気がした
折角なのでお題おくんなまし <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/29(金) 01:32:15 ID:QaISFhtt<> モーツァルト <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/29(金) 03:09:04 ID:U8Wna8na<> >>428
思いつかなかったから明日か明後日にでも投下するわ
ありがとう <> 香あわせ<>sage<>2010/01/30(土) 15:10:36 ID:GaDMxiZ2<> 女も30を過ぎると、誰でも結婚を焦るものだ。
それは、OL勤務の私、中山も例外ではない。

マスコミの作った流行に乗せられるのは、ちょっと気に入らないが、男を捕まえるために、私はいろんなことをやっている。
ダイエット、料理、水泳、着物、書道…
そんな中で、ちょっと変わっていると自慢できるものが、「香道」だ。
人によっては、「香あそび」「香合わせ」と言えば分かる人がいるかもしれない。
まぁ、簡単に言えば、ワインの銘柄当てを、お香でやるようなものだ。

通い初めてから3ヶ月が経ち、今では20種類くらいの匂いを当てられるようになった。
香道にも段があり、分かりやすい匂いから始めて、だんだん難しい匂いを学ぶ仕組みになっている。
そして、昇段試験があり、それに合格できれば、次の段に進めるというわけだ。

今日、その昇段試験がやってきた。
「では、山中さん。昇段試験を始めます。」
「はい、武田師範。お願いいたします。」
しかし、私の心は重い。
なぜかというと、この武田師範は、受験者を困らせる変なお題を出すことで有名だったからだ。

「今日は、3つの香を利き、そのうち2つ以上当てられたら、合格となります。」
「はい。分かりました。」
すでに、私の前には3つの炉があり、香による細い煙をあげていた。
これらには、特に順番が無いので、左の香炉から利くことにした。
「左は分かります。桔梗です。」
「中央は、杉ですね。」
そして、右だが、私は困ってしまった。
「右は、何でしょう? すごい刺激臭です。」
思わず咳込んでしまった。
「右の炉が何か、分かりませんか?」
「師範、この匂いは分かりません。まだ、教わっていないと思います。」
「習っていない匂いは分からない。…本当ですか?」
「当たり前じゃないですか。」
「そうですか。では、炉の蓋を開けて、中をご覧なさい。」
香自体を見たところで、何の香かが分かるはずないのに、何を言っているんだろう?
そんな不満を持った私は、右の香炉に入っていた、見慣れた物体に驚きの声を上げた。
「これは…蚊取り線香!?」
「そうです。この匂い、知っていたはずでしょう?」
「そりゃぁ、この匂いは知ってますよ! でも、香道の試験に蚊取り線香だなんて、当てられるわけないじゃないですか!」
余りに非常識な出題に、思わず声を荒げてしまった。
「そうですね、確かに非常識です。でも…」
師範は静かに言った。
「香道は、キャリアのためにやる匂い当てゲームではありません。日常の匂いに気を配り、豊かな香りの世界に遊ぶものです。学ぶ時間以外、鼻を塞ぐのでは、香道を学ぶ意味がありませんよ。」
どうやら、師範は私のことを見抜いていたようだ。
「2問正解につき、合格です。これからも、精進してくださいね。」
「有難うございました。」

翌日、漠然とした疑問を感じながら、私はOLに戻っていた。
通り過ぎていく同僚をぼんやり見ていると、ふと、私はあることに気づいた。
「あれ? 小林君、香水つけてるんだ。」
「お、山中さん気づいてくれた? 結構経つんだけど、誰も気づいてくれなかったんだよね。」
「私も今まで気づかなかったけど、いい匂いよね。」
「ありがとう。そういう細かいところに気付く人ってさ、なんかいいよね。豊かな人生送ってるんだなぁって感じがするよ。」

その一言で、私は救われたような気がした。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/30(土) 15:12:43 ID:GaDMxiZ2<> 裏お題「ちょっといい話」

念のためですが、フィクションですので。実体との違いへのツッコミは御容赦を(;´Д`) <> たけのこ<>sage<>2010/01/30(土) 22:22:19 ID:GaDMxiZ2<> 里山で農業をやっている親戚に、家族一同が食事会に誘われたときの話だ。
春のちょうど良い時期なので、竹林でタケノコを使った料理を、その場で調理して食べることになった。

「いいですね、こういうの。東京じゃ、こんな贅沢できないですよ。」
「そうかね。気に入ってくれて安心したよ。」
私は、茹でたてのタケノコのやわらかさを味わいながら、本心を伝えた。
答える叔父も、日本酒と刺身タケノコの旨さに上機嫌になっているようだ。

「竹林って、手入れとか大変なんじゃないですか?」
「そうだなぁ、生えすぎて大変になるときはあるな。だから、間引きしたり、タケノコのうちに急いで採ったりしているんだ。」
「へぇ。タケノコって成長早いって聞きますし、大変ですね。」
「ああ、2ヶ月で20メートルくらいになる奴もあるくらいだからな。」
「それは凄い! じゃぁ、竹の上がどうなってるかは、下からじゃ分からないですね。」
「まぁ、どこまで行っても竹の葉しか無いだろうがな。だが、大変なのは、竹の育成だけじゃない。」
叔父はそういうと、足元に落ちていた片方だけの女物の靴を拾い上げた。
「こういうゴミを、あたりかまわず捨てていく輩がいるんだ。」
「それは酷い。…そういえば、この竹林は囲いが無いから入りたい放題ですよね。柵とかは、作らないんですか?」
「一時は考えたんだが、竹林が広すぎてな、とてもじゃないが、周囲全部を覆う柵は作れないんだよ。」
叔父は、どうしようもないと言った感じで、肩を竦めた。
「まぁ、たいしたもんを捨てる奴なんかいないから、手間にならんからいいけどな。」
叔父は軽く笑うと、日本酒を煽った。

しばらく、そんな楽しい時間を過ごしていると、私達の方に、数人の男達が近づいて来るのが見えた。
「すいません、ちょっとお時間よろしいですか? 警察です。」
全員がいぶかしげな顔で、制服に身を包んだ彼等の来訪を見守った。

「警察が、ウチに何か用ですか?」
「この写真の人物に見覚えが無いかを、近所の方々に見てもらっているんですよ。」
叔父が問いただすと、一人の警官が、鞄から一枚の写真を取り出した。
その写真には、若くて美人だが、どこか影のある女性が写っていたのだった。
写真を見せられ、思わず親戚一同は、違いに顔を見合わせたが、誰もこの写真の女性を知らなかったようだ。
「いえ、分からないですね。この人がどうかしたんですか?」
「この人は東京から来た人なんですが、ちょうど2ヶ月くらい前から、行方不明なんですよ。もし、何か思い出したら、警察まで連絡下さい。」
叔父が返した写真を受け取ると、警官は一礼をして帰って行った。

「なんだか怖いねぇ。」
「日も落ちてきたし、帰ろうか。」
親戚一同は、見えない恐怖に追われるように、そそくさと帰り支度を始めたのだった。

私は、突然何かに気付き、思わず頭上を見上げた。
…しかし、もちろん頭上には、うっそうと茂る竹以外には何も無かった。
だが、それは余りに高い竹が、私が知らなくていい「何か」を、隠してくれていただけなのかもしれない。そんな思いが、頭から離れなかった。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/30(土) 22:23:40 ID:GaDMxiZ2<> 「ちょっと怖い話」リベンジ。
今度は、分かりやすい話のはず…? <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/30(土) 22:32:32 ID:Nid6cs/C<> そのうち降ってくるな <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 01:13:40 ID:nBNlJlOo<> お題プリーズЩЩ(゚Д゚) <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 05:17:35 ID:5aWP+wX/<> >>431
確かにちょっといい話w

>>433
うわぉ、イマジネーション・・・
普通下だけど、上でイメージさせるとは、やるなぁ。

>>435
つ「アンダーグラウンド」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 08:51:52 ID:nBNlJlOo<> 感想どうもです。
確かに上は珍しいかもしれないですね。発想はタケノコのおかげかな

アンダーグラウンド了解です <> アンダーグラウンド<>sage<>2010/01/31(日) 12:27:16 ID:iJwtVanh<> 検索サイトのGeegelが、アジアから撤退したことが、全ての予兆だったのかもしれない。

民々党が衆議院・参議院の与党となり、この国の立法が、完全に沢田五郎という一個人に掌握されてしまった。
権力を得た彼を止めることができず、常識人の抑制を聞かぬまま、「他民族共栄情報規制法」という法律が成立された。
それは、あらゆるアジア大国に不都合な情報を、第二の警察が傍受・抑制できる、危険な法律だったのだ。
日本は、報道機関から自由が奪われた、閉ざされた国となった。

それから3年が経ち、小学校の情報教育の時間で、翔は先生の話をぼんやりと聞いていた。
「・・・インターネットには、アジアの平和を乱す間違った情報が沢山あります。『中央アジア検索サイト』から許可されたサイト以外は、絶対にアクセスしてはいけません。」
先生は、その意味を良く分からないまま、教科書に書いてあることを、生徒全員に伝えた。
でも、翔は父がコンピュータエンジニアであったため、規制法のことも知っていたし、この法律が何を意味するかも理解していた。

「ちょっと、逆らってやろうかな。」
イタズラっぽい笑顔を浮かべて、自分のコンピュータ端末のキーボードを叩いた。
小学校の教師のセキュリティリテラシーなど、たかがしている。
翔は、父親譲りの知識を駆使し、セキュリティの管理者パスワードを数パターン試すと、管理者権限を乗っ取ってしまった。
そして、アクセスログを取らない様に設定してから、退屈な授業をそっちのけで、yahaaやCMMなどの海外ニュースサイトや、海外サーバにある日本語掲示板「123ちゃんねる」などの、「危険な」サイトの巡回を始めた。

そんな翔がやっていることに気づいた隣の子が、翔に聞いてきた。
「ねぇ、そんなサイト、中央アジア検索サイトから見れないけど、どうやって見るの?」
「見たいのかい? 怒られるよ?」
本当は見てもらいたいことを抑えて、翔は聞いてみた。
「うん。見てみたい。だって、アジア検索は、嘘くさいんだもん。」
翔は、その一言に安堵しながら、隣の子の端末のセキュリティを解除した。
そして、父に聞いていた、伝統的な一言を彼にささやいた。

「Welcome to Underground」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 12:30:20 ID:iJwtVanh<> PC規制解除キタワー.*:.。.:*・゚(n'∀')η゚・*:.。.:*!!
小さい画面で推敲しなくていいのは、ホント助かる <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 14:15:18 ID:5aWP+wX/<> アングラは人の手によって広がり、広げられる、と・・・。
何気に深い話のような気がする。

たぶん123チャンネルには

【検閲w】中アジ検に許可されないサイト その142【無意味w】

みたいなスレが立って、
「おいおい、こんなのまでフィルタリングしてるよwww」
とかやってるに違いないw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 14:40:13 ID:iJwtVanh<> フィクションとして書いてたけど、来年には成立してそうで怖い('A`)
jpの政治家と新聞社サイト以外、全部禁止されてそうな気がします <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 14:44:57 ID:5aWP+wX/<> まあ、たぶん穴だらけでしょうからそんなに心配はいらないかも。
ぶっちゃけ、設備投資とかもろもろの理由で、法律でそれらが禁止されても、
完全なフィルタリングが施行されることは、ほぼ永久的に無いんじゃないですかねぇ。
実際問題、アレなナニとかもアレでアレですし。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 14:53:37 ID:iJwtVanh<> 現実のソコもナニだから、いいんでしょうけどねぇ・・・
翔君はそこまで頑張らなくても大丈夫な日本になってるんだろうかな?

ホノボノとできる御題をください(屮゜Д゜)屮 カモーン <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 14:56:35 ID:5aWP+wX/<> つ「ゴマフアザラシ」 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 16:08:55 ID:iJwtVanh<> 御題どうも
温暖化に絡めたい気持ちをグッとおさえて、ホノボノを目指します <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/01/31(日) 16:09:50 ID:5aWP+wX/<> 絡めちゃらめぇw

頑張ってねー。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/01(月) 21:32:55 ID:xWiMl3jh<> なぜか暗い話ができてしまった('A`)
普通の話が難しい・・・ <> ゴマフアザラシ<>sage<>2010/02/02(火) 00:12:12 ID:yolTkJ+f<> 「ただいま!」
学校から帰ってきた、小学生になる娘の声が、今日は一段と大きいようだ。
「おかえり、梨花。何かいいことでもあったのか?」
漫画の原稿のベタ塗りをやめ、私は廊下に顔を出した。
「ただいま、お父さん。見てみて、かわいいでしょう!」
そういって娘は、扉から顔だけ出している私に向かい、白い毛玉を差し出した。
良く見ると、それは真っ白なアザラシのぬいぐるみのようだ。
「ああ、かわいいね。これ、どうしたんだい・・・」
いつの間に買ったのかと、聞こうとした時だ。

「キュー!」
「うわっ! 動いた!」
突然そのぬいぐるみが身動きをし、鳴き声を上げたので、
思わず私は声をあげ、後ろに飛びのいてしまった。
「はははっ! お父さん驚いてる。」
「これ、ぬいぐるみじゃ・・・ないのか?」
「違うよ。これ、ロボットなんだ。」
「ろ、ロボット?」
つぶらな瞳で私を見つめるアザラシを見据えて、間の抜けた声で娘に問いかけた。

「…それでね、美樹ちゃんの家に遊びに行ったら、この子がいてね。すっごいかわいかったんだ。」
夕食時、妻と私に、アザラシが家にやってきた経緯を嬉しそうに話してくれた。
「自分で歩いたり、自分から甘えたりする、すごい子なんだよ。」
「へー、最近のオモチャは賢いんだね。」
「そうだよ! でね、いいなぁって美樹ちゃんに言ったらね、しばらく貸してくれるって言ってくれたんだよ。」
「それは良かったわね。大事に扱って、壊さないように返すのよ?」
友人との仲を心配し、妻が心配そうに言った。
「うん。東京じゃ一個しかないって言ってたから、大切にするんだ。」
娘は、うれしそうに答えた。

我が家に風変わりな家族が増えてから、2日後のことである。
帰ってきた娘に、私は申し訳なさそうに、娘に真っ黒なシミだらけになったアザラシを差し出した。
「これ・・・どうしたの!? アザラシが真っ黒!」
「すまない。書斎の扉を開けっ放しにしていたら、いつの間にか入ってきていて、インクをひっくり返したみたいなんだ。」
「そんな・・・汚れ、おちないの?」
「これでも、インク落としでキレイにした方だよ。でも、インクが強すぎて、完全な白には戻らないみたいなんだ。」
アザラシを受け取り、娘は泣き出してしまった。
「どうしよう! 美樹ちゃんに返せないよ! 絶対怒るよ!」
娘の話では、東京では一つしかないというオモチャだ。替えを用意するわけにも行かないだろう。

どうしたものかと、二人で困っていたら、パートから帰ってきた妻が、不思議そうに声をかけてきた。
「ただいまー。早く食事の用意をするわね。・・・あら? どうしたの、二人で困った顔して?」
娘が黙ってアザラシを見せると、妻はすべてを把握したらしかった。
「ああ! これは・・・ それで、二人で困った顔をしていたのね。」
「そうなの。お母さん、どうしたらいいの?」
「そうねぇ・・・」
妻は、いいアイディアが無いかと考え出した。
「そうだわ。ねぇ、あなた。インターネットっていうので、調べて欲しいものがあるの。」
何かをひらめいたらしい妻に促され、事情が分からないままに、私はネット検索を行った。
私が検索したページに気を良くした妻は、娘に何かを告げ、明日アザラシを返してくるようにと伝えたのだった。

「ただいま!」
次の日、娘が元気な声で帰ってきた。
「お母さんの言うとおりに返したら、美樹ちゃん納得してくれたよ!」
「本当かい! いったい、何を言って返したんだ!?」
一人事情が分からない私は、娘と妻に説明を求めた。
すると、にやっと笑った娘が、こう答えた。
「返すときに、こう言ったんだ。『すごいロボットだね。本物のアザラシみたいに、大人の毛色に変化したよ!』って。」
私は納得した。検索したページが、ゴマフアザラシのwikipediaだったのは、そういうことだったのか。
インクまみれになったアザラシは、確かに成体のアザラシに見えなくもなかったのだ。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/02(火) 00:15:02 ID:yolTkJ+f<> ホノボノ話デキタ-(゚∀゚)-!
このジャンル、オチが難しくて書くの難しいorz <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/02(火) 18:48:46 ID:lqxrSduI<> ええ話や・・・ええ話か?
まあいいや、ほのぼのはするからw

でも、ゴマフアザラシの成体を見てがっかりする子供も多いらしいね。
ゴマちゃん的なイメージで考える人が多いから。

でも、ロボットだと考えると確かにすげえ機能だと納得してしまいそうだw <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/02/02(火) 19:52:02 ID:HZQdbdpX<> キュー!かわいいよキュー! <> aholizm<>sage<>2010/02/03(水) 22:00:13 ID:Dr2HoKBz<>  客の来ない南の島の鄙びたラブホのエレベーターにヤモリが2匹張り付いていた。一匹はオスで一匹はメス。
足を進めては、しばらく動かず、体勢を変えたかと思うとまた戻し、なにやら
そんなことを延々と2匹で繰り返している。それは夜中中続いた。
飽きもせず、よく彼女も見ていたものだが、求愛活動というのは人間に限らず、下等
動物ですら面白いものなのだ。セリフにしてしまえば、「さして」「いやよ」
「いやいやよもすきのうち」とかそんなものかもしれないが、下等動物であっても
一つ屋根の下、交尾のある夜はとても空気が濃厚になるものだそうだ。
 そんな濃厚な空気のなか、一つの結論が持ち上がったらしい。とうとうヤモリ達は
3日間の夜の攻防を終えて、交尾に成功したのだ。!「キューキュー」と声をかすかに上げて
いたという。 彼女は屋外に出ると満点の星が輝いていて、若干空気が澄んで身が軽くなったと
言っていた。あれからあの2匹のことは知らないらしい。ただのヤモリだから。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/04(木) 17:10:34 ID:63rcPjYn<> お題『今日は新聞の日』 <>
◆91wbDksrrE <><>2010/02/04(木) 17:57:29 ID:33nhp3d4<>  今日は、新聞の日らしい。
 だが新聞という媒体が、その機能を失ったに等しい状態になってから、もう何年になるだろうか。
「……さむ」
 マフラーに手袋。四枚重ねの厚着という完全防備も、寒さは容赦なく貫き通して行く。
 しんしんと降る雪に、心身は深深と冷え切っていく。なんて駄洒落るくらいの余裕は、まあ一応
あるのだけれど、余計に寒さが増したような気がするのは気のせいか。いやまあ、気のせい
なのだけれど。それでも、ちょっとした後悔が心を苛む。
 一事が万事、私の人生はこんな感じだ。ちょっとした後悔をいつまでもくよくよと抱え込んで
しまう。そもそも、こんな事をしているという事、それ自体も後悔の種の一つだったり。
 自慢の愛車で、暗闇に沈んだ街路を駆ける。そんな耳障りのいい言葉で飾ってみると、
凄くカッコいい事をしているように聞こえるかもしれないけど……その実、乗っているのは自転車
で、駆けているのはご町内だ。自慢の愛車、三万円で買ったスポーツタイプ寄りのクロスバイク
の前には、車体に似合わない前籠がつけられ、そこには無数の紙束が入っている。
 ようは、それを配って回るのだ。その紙束を。最早、意味を見出そうとする人間にしか意味が
無くなってしまった、過去の遺産とも呼べる物を。
 新聞配達。
 最早、その機能を失ったに等しい状態になった、新聞という情報伝達媒体を、それでも求める
奇特な人々に届ける、奇特な仕事。そんな仕事を、後悔しながらも黙々とこなし、辞めようと
する事はできない私は、奇特というよりは危篤なのかもしれないけれど、それでも既得の
権益――バイト代が高い――を考えると、辞められない。それに――
「あ……おはようございます。今日も寒いですね」
 声を掛けられた。まだご町内は暗闇に包まれ、時折響く犬の鳴き声や、どこか遠くから聞こえる
車の音を除いては、静寂に包まれている。そこに、その声は、大きくならないようにと、ご近所に少し
でも迷惑をかけまいと配慮された小さな声は、それでも確かに響いた。私の耳には、確かに。
 見れば、そこにいつものように彼は立っていた。いや、寒いのはあんたの方だろ、と思わず
突っ込みを入れたくなる、着流し? 袴? ……まあ、とにかく、書生さんという言葉がしっくり
くるような和装に身を包んでいるのも、これもまたいつも通りだ。流石に上半身には肩掛けを
羽織っているが、下半身――変な意味ではない――はむき出しで、見ているこちらの方が寒くなる。
 ――寒くなる、はずなのだ。本来。
「……おはよう、ございます」
 いつもの事だ。この人が、新聞を待ちかねて、ちょうど届くだろう時間になると、外に出て
待っているという事は。そして、届ける人間――つまり、今現在は私だ――に挨拶をし、そこで
新聞を受け取って、いそいそと住居へと戻っていくという事は。
 いつもの事なのに……そして、そうしたいとは思っていないのに……どうしても、私が彼の挨拶
に返す挨拶は、ぶっきらぼうなものになってしまう。二度や三度ではない。両手に余る回数、彼と
挨拶を交わしているというのに。
 その理由は、わかっている。
 この頬が、寒さに反発して染まるそれとは違う、内側から湧き出してくる熱さで赤くなっているのが、
その理由だ。
 私は、彼の事を、多分……そう、多分としか言えないのだけれど……多分、好きなのだと、そう思う。
 それは、初めてここに新聞を届けに来たその時、彼の笑顔に心を掴まれて以来、ずっとだ。
 ――だから――だから、この仕事を、やめたくない。
 彼とこうして会話を交わせる機会は……勇気の無い私には、この時間しかないのだから。
 ただ、おはようという言葉を交わすだけでも、それだけでも、その瞬間は私にとってはかけがえの
無い時間で、それだけで十分で、だから……失いたくなくて……。
「……どうかしましたか? 僕の顔に何かついてます?」
「あ……! い、いえ……そ、そ、そんな事はっ!」
「ふふふ……面白い人ですね」
 どうやら、気づかない内に彼の顔を凝視してしまっていたらしい。その上、面白い人だなんて
言われてしまった……ああ、恥ずかしい……後悔の種が、また一つ増えてしまった……。
「では、お仕事頑張ってくださいね」
「はい!」
 ……まあ、でも……この後悔の種は、そんなに悪い種ではないのかもしれない。彼に、どのような
形であれ、"私"を見てもらえたんだから。
「……」
 彼の姿が、家の中へと消える。それを見送ると、私は再び愛車にまたがった。
「が、頑張ります!」
 寒さは、もう気にならなかった。

 終わり <>
◆91wbDksrrE <><>2010/02/04(木) 17:58:04 ID:33nhp3d4<> ここまで投下です。 <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/02/04(木) 19:59:59 ID:BuEMrgGH<> ボタンを押すとお礼画面にSSが出ます。ギロ夏スキーさん以外にもオススメ。面白いなと思ったら気軽に 応援の拍手をしてネ!07.8.3更新
一言メッセージも送れます。長文メッセはメルフォで♪
http://takkun-mama.cocolog-nifty.com/diary/ <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/02/06(土) 21:15:38 ID:pC3///ma<> >>454
最初主人公は男だと思ってたから首かしげたw 女の子だよね?w
あれもこれもがんばれと言いたくなるねぇ。 <>
◆91wbDksrrE <>sage<>2010/02/06(土) 21:56:32 ID:MwVdEzPf<> おうふっ!?
確かに口調はあんまり女の子っぽくないから
わからないですね!? もちろん女の子です。
BLに興味はありませんw ・・・アリマセンヨ? <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/02/06(土) 22:32:52 ID:FIWZ1tTq<> ダジャレー好きだなw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/06(土) 22:47:09 ID:O2GEm2io<> >>454
いいっすね! 日本語ならではの音を合わせたダブル(トリプル?)ミーニングもイイ!

たしかに新聞はもはや役割を終えた感がある
少なくとも紙媒体の必然性はない気がする
でも、好きだけど!


こういう情景、大好きです
早くこういうのをサラッと書けるようになりたいな
<> 創る名無しに見る名無し<><>2010/02/10(水) 14:28:03 ID:/UGuukgI<> とある小さな国に一人の少女がいた。
少女には背中に大きな痣があった。
それは生まれた時は目立たないものだったが少女が成長するにつれくっきりと見える様になっていった。
その模様があまりに不気味であったため、人々は少女を不吉だと忌み嫌うようになった。
不幸を呼ぶ子供と決めつけられた少女は森の奥深くにある古びた城の牢屋に閉じ込められた。
誰も止める者はいなかった。両親さえも少女を見放してしまっていた。
城には一人の番兵がいた。
番兵は少女と話す事を禁じられていた。しかし毎日を孤独に過ごす少女が段々と不憫に思えて
きてある日とうとう話しかけた。
「ここは窓もなく外の様子が全く分かりません。もしよろしければ教えて頂けませんか?」
少女の願いを聴き、番兵は国で起こっていることや流行り物のことなど色々少女に教えてあげた。
少女は時に驚き、時に笑いながら番兵の話に耳を傾けていた。
それから番兵は毎日少女の下で外の話をしてあげるようになった。
ある時番兵は「いま国は作物が獲れず皆食べ物を欲しています。」と話した。
すると少女は「ではわたしは作物が獲れるよう祈ります。」と跪き、祈りを捧げた。
少しして国はまた作物が獲れるようになった。
またある時番兵は「いま国は流行病で沢山の人が死んでいます。」と話した。
すると少女は「ではわたしは病が収まるようよう祈ります。」と跪き、祈りを捧げた。
少しして流行病はおさまった。
少女は国で何か不幸がある度に祈りを捧げた。
不思議な事に少女が祈るとやがて不幸はおさまるのだった。

月日は経ち少女はもう16歳になっていた。
ある夜番兵は少女の下へ行き予てから考えていた事を話し始めた。
「国の人々は皆、不幸が起こるのはあなたのせいだと言っています。しかし私はそうは思いません。
あなたは国に不幸がある度に懸命に祈りを捧げてきました。あなたの様な尊い人をこんな所に
閉じ込めておくのはもう耐えられません。私は明日国王の下へ発ち、
これまでの事を話してあなたがここを出してもらえるよう直訴致します。」
いつも番兵の話に相槌を打つ少女がこの時は何も言わなかった。
翌朝番兵は国王の下に出発する前に少女に挨拶をしに行った。
しかし牢屋の中からは何も聞こえなかった。おかしいと感じた番兵は牢を開け中に入った。
少女は自ら命を絶っていた。傍らには番兵宛てに今までの感謝の手紙が認められていた。
少女は気付いていた。番兵が自分との会話を禁じられていたこと、そしてもし国王に直訴などすれば
彼の身はただでは済まないだろうことを。
手紙の最後には「私は誰も恨んではいません」と書かれていた。
番兵は一言少女が死んだと伝えた。
誰も悲しむ者はいなかった。
ただ一人番兵だけが少女の墓の前で静かに涙を流していた。
<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/10(水) 23:35:16 ID:z4Ogho7e<> ステキな話ですね
読み手が「少女が幸運と不幸のどちらをもたらしたか」を選ぶことで、物語が変わるのが面白い <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/10(水) 23:47:35 ID:ZqLl2+AE<> 悲しいけれど、とても美しい話と思いました

これは、寓話……? なにかを暗喩しているようだけど
自分にはそれを読み解く頭が無かった…… <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/02/11(木) 00:17:15 ID:cjQX5Xv3<> >>462
>>463
ありがとうございます。
実際読み返してみると結構不自然なところがあったりして、もっと練ってから
書き込めばよかったとも思いましたが好評を頂けて嬉しく思います。
また何か思いついたら書きたいと思いますのでその時は恐縮ながらまたお付き合い下さい。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/11(木) 07:14:12 ID:3dgv4xjD<> すげえいい話だと思ったよー。
最期まで綺麗な心のままでいられる、そんな少女だったから、
祈りが天に届いたんだろうなぁ。

・・・裏を勘ぐった考えもでないではないけどねw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/11(木) 12:38:08 ID:BUcv2xiU<> 御題カモーン <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/11(木) 13:15:03 ID:Dwyyu4Xo<> つ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1260372352/63 <> 規制解除<>sage<>2010/02/11(木) 14:07:29 ID:BUcv2xiU<> 地方の有名な劇場での話。
「入場規制を解除致しました! 是非とも皆様お越しくださいませ!」
入り口で呼び子が声を張り上げるが、通りを過ぎる人々は感心を示さず通り過ぎていく。
中には、「ざまぁみろ!」と罵声をあびせる者もいるくらいだ。
そんな状況を見たオーナーは、過去に下した、自分の安易な決断を後悔した。

・・・話は3ヶ月前に遡る。
美人で有名な役者が舞台に上がると、決まって迷惑な客が表れるのだ。
彼は、臭い香水をつけ、役者のダンスに合わせて踊り出し、その役者の芸名を高々と呼びやるため、客も舞台関係者も迷惑していた。

「・・・あいつ、また来てますよ。摘み出しましょうよ。」
係員が舞台裏で、オーナーに小さな声で呟いた。
「そうしたいところだが、窃盗や暴行と違い、罪状が無い場合は、それもしづらいんだ。」
「何故ですか?」
「例えば、声を上げるからダメだと言っても、それがダメな理由が『他の客に迷惑だから』だと、『本当に他の客に迷惑なのか』を調べたり、ダメな基準を決めたり、全ての客が納得する理由を考えないといけないんだよ。」
「でも、映画館は携帯を禁止して、鳴らしたら強制退出できますよね。ああいう感じではダメなんですか?」
「あれは、条例のおかげなんだ。劇場は映画館とは違うんだよ。」

二人は困ってしまった。なんとか、アイツが入って来れない策は無いだろうかと頭を捻った。
しばらく考え込むと、係員がポンと手を打って、オーナーに伝えた。
「あ! ねぇ、オーナー。要は根拠があればいいんですよね。」
「ああ、そうだが。アイツを追い出す根拠なんて作れるのか?」
「例えば、『役者が全員花を持って、匂いを楽しんでもらうステージのため、香水を付けられている人は入場禁止』としたりと、演目に合わせた理由を作るのはどうですか?」
「それなら確かに納得できる。うん、いい考えだな! よし、それで行って見ようか!」

さっそく「花を持った舞台」を公演したところ、結果は大成功。
迷惑な客は、延々と入り口で喚いていたが、「花の匂いを阻害するので、香水をつけられている御客様は入場できません」の一言で、見事に突っぱねることができたのだ。
後は簡単である。迷惑な客が入場できない、「明確な理由」の規制を考え続けるだけである。
「・・・舞台で作る料理の匂いも楽しんでもらうので、香水をつけた御客様は入場できません。」
「・・・今回は動物が舞台に上がりますので、動かれる御客様は入場できません。」
「・・・申し訳有りませんが、トーキー風演出のため、声を上げられる御客様はご遠慮ください。」

再度の入場規制に、迷惑な客も諦めたようで、最近は姿を見せなくなった。
「いやぁ! 素晴らしい成果だ! これで安心して御客様も楽しめるだろう。」
「・・・あのぉ、言いにくいんですが、私のアイディアは失敗したようです。」
係員が言いにくそうにオーナーに、悪い知らせをもたらせた。
「ん? 何が失敗したのだね? あいつはここ数回の公演に表れていないじゃないか。」
「見て頂くのが早いと思います。今、公演中の客席を見てください。」
不思議がるオーナーが客席を覗くと、今までほぼ満員だった客席は、10%にも満たないくらいガラガラになっていた。
「な・・・なんだこれは!?」
「それがですね、迷惑な客を追い返すためのルールに該当する御客様もいらっしゃったのですが、そういう方も追い返すことになります。」
「まぁ、そうだな。」
「特に、香水をつけられた方を追い返すのなら、女性の大半を追い返すことになり、そういう方は気分を悪くして、二度と来てくれなくなります。」
オーナーははっとした。一人の客を追い出すルールが、どれだけ多くの客に該当するかを想像していなかったのだ。

「オーナー、規制を辞めましょう。今からでも、来なくなった客を取り戻すべきです。」
「ああ、そうだな。このままでは潰れてしまう! 一刻も早く規制を解除するんだ!」
しかし、全員薄々と分かっていた。
一度失った信用は取り戻せない。おそらく、この劇場は潰れるだろう。

今日も呼び子の虚しい宣伝が、重い雲の下、響いていた。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/11(木) 19:50:40 ID:3dgv4xjD<> あるあるw
ただまあ、だからって客だったら何でもありってするのは
違うんで、難しいところだよねぇ。 <> 郵便配達の少年のはなし<><>2010/02/11(木) 23:52:57 ID:5GQ/XLaZ<> 少年は郵便配達をしていた。
長らく続いた大きな戦争がようやく終わり、少年の国は復興を始めていた。
かつての技術の多くが失われた中、通信技術もその例外ではなく人々の連絡手段の要は郵便だった。
決して楽な仕事ではなかった。
険しく危険な道のりを越え、遠くの村や町まで郵便を届けなければならなかった。
得られるお金は僅かばかり。それでも少年はこの仕事が好きだった。
手紙を受け取った時の人々の笑顔、自分が人と人とを繋いでいるのだと言う使命感。
孤児の少年にとって郵便配達は自らの存在理由でもあった。

ある日配達から戻った少年に悲しい知らせがあった。
同じ郵便配達をしている少女が死んだのだった。
少女は配達に向かう途中で熱を出して倒れた。連日の辛い配達と栄養不足で弱った体が流感に
やられたのだった。少女は倒れたその日の夜に息を引き取った。
少年が配達のために数日留守にしている間の事だった。
少年と少女は同い年で二人共孤児。配達員の中でも一番若い二人はそれこそ実の兄妹の様に
とても仲が良かった。周囲に冷やかされることもしばしばだったがお互い悪い気はしていなかった。
その少女が死んでしまったのだった。
しかし、少年を気遣う周囲をよそに、彼は涙一つ見せずこう言った。
「彼女が届ける分だった郵便は僕が配達してきます。」
皆止めようとしたが少年は構わず出発した。

配達を終えたばかりで少年はとても疲れているはずだった。だが彼は辛い素振りなど微塵も
見せずにいつもと何ら変わらぬ様子で配達をこなしていった。

遠くの町に居る家族や友人からの手紙、受け取って笑顔を見せる人。少年も笑顔を返した。

不幸の知らせに涙を流す人。少年は心から弔いの言葉を掛け、静かに立ち去った。

冷たい風と地面を覆う雪。
体力を奪われ、息を切らせながらも少年は森を越え山を越え配達を続けた。

最後の配達がようやく終わった。
出発してから三日三晩、ほとんど休むことはなく、少年は疲れ切っていた。
帰ろうと歩き出した時、足に力が入らず少年はその場に座り込んだ。
上着の下に隠れていたペンダントが飛び出した。
その昔、少女とお揃いで作った大切なペンダントだった。
少年はペンダントを手に取って見つめた。
途端に今まで堪えていたものが溢れてきた。

少年の目から涙がぽろぽろと零れていた。止めようとしても止まらなかった。

もう少女の笑顔を見ることは出来ない。話すことも触れることも。

全ては少年の居ぬ間に終わってしまった。最後の言葉を掛けることも叶わなかった。
少年はうずくまり、いつまでも震えていた。


戻ってきた後も、少年は人前では決して涙を流す事無く郵便配達の仕事を続けた。
皆彼を強い子だと言った。しかし彼はきっと強いわけではなかった。

次の年のある日、少年は配達に出たきり帰って来なかった。
配達はきちんと終わらせてあった。人々は彼を探したが、見つからなかった。
少年は二度と戻ることはなかった。
少女が死んだ時と同じ、冷たい雪の降る季節のことだった。

<> 創る名無しに見る名無し<><>2010/02/12(金) 21:35:38 ID:7eH8p17p<> 切ない話ですね。
ああ、涙腺が…… <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/02/12(金) 22:07:28 ID:3GFTZpD2<> 子供って、辛いことがあっても伝え方がわからないばかりに限界まで溜め込むことがあるよな
大人の方は、子供が何も言わないから平気だと思い込む <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/12(金) 22:52:27 ID:pTB1SEp8<> 水曜日に続いて、また悲しくも美しい物語……

一見、救いが無い悲劇のように見えてしまう(自分の読み方が浅いんだな)
けれど、読み終わった後あれこれ考えていると……
受け入れられるようになる(これはこれで良かったんだな、みたいな)
不思議な読後感があって、いいなと思いました <> 470<><>2010/02/13(土) 11:33:49 ID:m0NiQWDd<> どうもです。
この話の世界設定は「ポストマン」という米国映画からヒントをもらいました。
結局あまり上手く絡められませんでしたけど・・・
お話作るのって難しい・・・


<> 忘却の川<><>2010/02/13(土) 17:17:37 ID:m0NiQWDd<> その青年は全てを忘れ去りたかった。
とても辛い記憶があった。
それはどれだけ時が経とうとも青年を常に縛り付け、彼が前に進むことを妨げた。
だから青年はここまでやって来た。

目の前を流れるは忘却の川。
青年はひと思いに飛び込んだ。

川の流れに身を任せ、青年は静かに目を閉じる。
自分の中の数多の記憶が川の水へと溶けて行くのがわかった。やがて青年の意識は途絶えた。

気がつけば青年はどこへともなく歩いていた。
青年は全ての記憶を忘れていた。
自分の名も、身分も、自分がなぜここに居るのか、どこへ向かおうとしているのか、
何一つわからぬままに、彼は歩き続けた。

辿り着いた小さな町で青年は木こりの仕事に身を置いた。
全てを忘れた青年にとって毎日がとても新鮮だった。
一から様々な事を経験し、様々な事を学んだ。
人々と語り合い、笑い、時に喜び、時に怒りに震え、時に悲しみに涙した。
それは例えようの無い充実した日々だった。

ある日青年が森で仕事をしていると花を摘みに来た一人の女性と出会った。
美しい女性だった。彼女を一目見た瞬間、青年は今まで感じたことの無い感覚を持った。
それから青年は仕事の合間を縫っては女性を探し、話し掛ける様になった。
自分の持った感覚が一体何なのか知りたかった。それには兎に角彼女に会わなければと思った。
いつも純粋な瞳をした青年に、女性も惹かれていった。
日が経つごとに二人はまた長く、また長く互いの時間を共有し合うようになっていった。
ある時青年は勇気を出して女性に尋ねた。「あなたと初めて会った時からずっと消えないこの感覚、
もし知っているのなら教えて欲しい」と。
女性はしばらく黙っていたが、やがて真っ直ぐ青年と向き合い口を開いた。
「わたしもずっとあなたと同じ感覚を持ち続けています。それは、恋と言うものです。」
青年と女性は結ばれた。
幸せな毎日だった。青年は女性をとても大切にした。女性もまた深い愛情でそれに応えた。
二人で色々な場所へ行った。色々な話をした。沢山の思い出が二人の心に刻まれた。

だが別れは突然訪れた。女性が流行病に倒れ、死んでしまった。
青年は冷たくなった女性の傍らで泣いた。声が枯れる程に大声をあげて泣き続けた。
しかし青年の悲しみは消えることはなかった。
人々は青年を慰め、手を差し伸べたが塞ぎ込んだ彼はそれを拒み続けた。やがて皆、離れて行った。
孤独となった青年。何もする気が起きなかった。
全てが新鮮だった昔の日々が途端に無意味なものに思えてきた。
女性との幸せな思い出。今の青年にとって唯一つの拠り所。
しかし同時にそれは青年の心を縛り苦しめる鎖だった。

とある噂を耳にした。浸かれば全ての記憶を忘れることが出来る川があると言う。
青年は一つの決心をして、町を出た。
僅かな手掛かりを頼りに青年はその川を探した。幾日、幾月の時が過ぎて行った。
そしてついに青年は川に辿り着いた。

川の水に己を映し、青年はしばし考えた。
多くの経験、皆と笑い合った日々、そして最愛の人―――楽しく、美しい記憶も沢山あった。
それら全てを忘れてしまうのが果たして正しい事なのか。
しかし今自分を支配する巨大な悲しみの記憶。このままでは前へは進めない。
青年の決意は固かった。

目の前を流れるは忘却の川。
青年はひと思いに飛び込んだ。
<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/13(土) 18:56:18 ID:H44BoW/L<> エンデの「鏡の中の鏡」っぽさを感じました
シュールさと寓話性がいいですね。
こういう話が書ける技術が欲しいなぁ <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/02/13(土) 21:00:20 ID:m0NiQWDd<> >>476
ギリシア神話に登場する忘却の川レーテーをちょっとネタにして書いてみた話です。
もっとも自分ギリシア神話には詳しくないので用いたのは記憶を無くす力があるって
部分だけです。
<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/14(日) 03:03:55 ID:H57fH7yb<> 面白くて深い物語だと思う
行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。という方丈記の有名な文を連想する
人間の喜びや苦しみもいつだって似たようなものだけど、青年のループがいつかは報われるそんな結末を祈りたい <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/14(日) 11:52:56 ID:XIzgiKkw<> 「ひとは、忘れることで生きていける」ってのは誰の言葉だったかな?

忘れなければ生きていけないほどの深い悲しみもあれば、
その思い出があるだけで生きていけるほど、美しく強い思い出もある

青年には、「忘れない」、悲しみも受け容れる生き方もあったのでは……と思ってしまう。

浅はかな読み手の勝手な考えだけど
<> 創る名無しに見る名無し<><>2010/02/14(日) 14:37:45 ID:HS7cOkps<> 少年はクラスに一人は居る、「孤独な奴」だった。
気弱で人と接するのが苦手だった。初めの方こそ彼に声を掛ける者も居たが、仲間の中に
上手く溶け込むことができず、いつもおどおどして少年は浮いていた。その内誰も相手にしなくなった。
家と学校をただ往復するだけの毎日だった。
唯一の楽しみは物語を書くことだった。ファンタジーの世界を舞台にした胸躍る冒険譚、スペースオペラ
もどきやエブリデイ・マジックもの。少年は自分をそれらの主人公に当てはめては空想に耽っていた。
自分に自信が持てず、いつも己の安住の地に閉じ籠もり、外に目を向ける事を拒んでいた。

ある日の帰り道、少年は奇妙な少女に出会った。
その少女は何かを探すように道端をうろうろしては、不意に立ち止り考え込むように唸っていた。
少年は無視して通り過ぎようとしたが、少女に呼び止められてしまった。
背は低いが少年と同い年くらいだった。
少女は探し物をしているから手伝ってほしいと言った。
何を探しているのか尋ねると少女は「天使の羽根」だと答え、勝手に説明し出した。

―――この世には目には見えないけれど人間を見守る天使が存在していて、天使は時々背中に生えた
翼から羽根を落とす。その羽根を拾った者には幸せが訪れると言う―――

この年頃にはよくある他愛も無い妄想だった。
だが少年は少女を手伝うことにした。
別に彼女の話を間に受けた訳ではなかった。そういう話はあくまで物語の中だけでの事だとわきまえていた。
ただちょっと少女に興味を持っただけだった。
少女は呆れるほど真剣に天使の羽根を探していた。少年も指示された場所を探すものの、当然ながら
天使の羽根など見つかりはしなかった。傍から見れば実に滑稽な様だった。
結局二人は日が暮れるまでありもしない天使の羽根を探した。
別れ際少女は「また明日ね」と言って学校近くの公園を待ち合わせ場所に指定した。

それから少年は少女の「天使の羽根探し」に付き合うようになった。
少年は何故か少女にはおどおどせずに接することが出来た。少女は自由奔放に少年を振り回したが、
そんな彼女の態度はむしろ彼には心地が良く、自然なままの自分で居られた。
徐々に少年は少女との関わりを楽しむようになっていった。
そしていつしか少女と同じくらい真剣に天使の羽根を探すようになった。
勿論それが存在しないものだと言う事は理解していた。ただ、一度でも何かに本当に真剣になってみたかった。
例え無意味な行為だとしても、その先には何か得られるものがあるはずだと信じた。
一方の少女はいくら探しても天使の羽根が見つからない事に落ち込んでいた。
少年は何とか少女を元気付けてあげようと考え、一つ自分に出来る事をひらめいた。

放課後、いつもの公園で待っていた少女に、少年は一冊のノートを手渡した。それには少年が少女の為に
作った物語が書かれていた。一人の少女が天使の羽根を探し、やがてそれを見つけて幸せを得る話だった。
自分の作った物語を誰かに読んでもらうのはこれが初めてだった。
少女は瞳を輝かせ夢中で物語を読んでいた。読み終えた後、少女は少年に「ありがとう」とお礼を言った。
満面の笑顔だった。
少年はその時ようやく、自分が少女を好きになっている事に気が付いた。

ふと足元を見ると、真っ白な羽根が一枚落ちていた。
少女はその羽根を拾い上げると、少年の前にかざした。

「見つけたよ」
「見つかったね」

きっと、ただの鳥の羽根だった。二人ともわかっていた。
少女は羽根を空へと放った。
羽根は風に乗ってどこへともなく飛んで行った。
二人は静かにそれを眺めていた。
得られるものは確かにあった。
手はしっかりと繋がれていた。
<> 480<><>2010/02/14(日) 15:03:24 ID:HS7cOkps<> 題名「天使の羽根」で
すんません。忘れてた・・・ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/14(日) 18:02:11 ID:dOZPj2qa<> うわ、何この清々しさ。
さくっと読めるし、面白いよ。 <> 狙撃手の少年<><>2010/02/16(火) 23:43:01 ID:sa/aR+Ow<> 毎日指示された場所で待機して通りかかった敵兵を撃ち殺す。
それが少年の任務だった。
少年は若くして既に優秀な狙撃手だった。
多くの敵兵を射殺した少年には勲章が贈られ、街に出れば人々は皆英雄と彼を称えた。一方で敵兵からは
「死神の子」と呼ばれ恐れられた。

放たれる銃弾、スコープの向こうで倒れる兵士達。
何処か現実味を欠いた光景。しかし紛れもなく少年がやっていることだった。

なぜこんな事をしているのだろう?

彼は自分が何のために戦っているのか知らなかった。
「お前が考えるべき事はなぜ殺すかではなくどうやって殺すかだ。」
上官に尋ねても返ってくる答えはいつも同じだった。
少年の周りに居る大人達は皆、彼が自分の意思を持つことをことごとく妨げた。
大人達が少年に求めていたのは彼が命令のみに忠実な兵士であることだった。
少年もまた大人達の要求に応えようとしてきた。言われた事さえきちんと実行していれば大人達は少年を褒めて大事にしてくれた。
これでいいのだと少年は自分に言い聞かせてきた。
それに、家族の居ない少年には他に居場所がなかった。

しかし、街で自分と同年代の子供達を見かけるとなぜか少年の心はざわざわと波立った。
彼らは戦いの事など欠片ほども知らず平和に日常を過ごしていた。
かたや自分は敵影を探して引き金と引く毎日だった。
関係無いと思っていても気が付けば少年の目はいつも彼らの姿を追っていた。
英雄と呼ばれようが死神と呼ばれようが少年の心には何も響かなかった。
どれだけ過酷な経験をしていたとしても少年はやはりまだ子供だった。

ある非番の日、少年はよく行く本屋に顔を出した。そこの店主の女性は少年を英雄とも死神とも呼ばなかった。
女性は少年の表情で何かを察したのか、どうしたのと尋ねた。
少年はぽつりぽつりと自分の心情を話し始めた。およそまとまりがなかったが、後から後から言葉が口を突いて出てきた。
全部聴いた後、女性は少年に一言「大切なのは君の意思。」だと告げた。
少年は女性にお礼を言うと本屋を跡にした。

幼い頃から死んだ父親に銃の扱いの手解きを受けた少年は瞬く間にその才能を開花させた。
やがて軍に入隊して今の任務をこなすようになった。
確かに狙撃手は少年の天職に違い無かった。
だが少年の意思はどこにも介在していなかった。
いつも誰かに言われてやってきた事ばかりだった。少年も考えるのをやめて身を任せてきた。
本当はずっと前から分かっていた事だった。
少年はもうこんなことはしていたくなかった。

ある日少年は右腕に負傷して戻ってきた。任務中に撃たれたのだと彼は話した。
右腕は完全にはだめにならなかったがかつての様に銃を扱うことは出来ないだろうと医者は言った。
少年は軍の除隊を申し出た。
並の兵士と同等になってしまった少年になどもう用は無かった。軍は勲章と僅かの金を渡して少年を追い出した。
それは少年が初めて自分の意思で「行動した」結果だった。

少年はあの本屋に行って、店主の女性に軍をやめたと話した。

「君が望むならここに居ていいよ。」

女性はそれだけ言うと優しく微笑み、少年の髪を撫でた。

軍をやめた少年に街の人は皆親切にしてくれた。おっかなびっくりだったが同年代の子達とも徐々に付き合うようになった。
相変わらず大して意味の無い争いは続いていた。これで良かったのだろうかと時々心が揺れることもあった。
だが全体的には平和で幸せな毎日だった。
少年はようやく「少年」になることができたのだった。
<> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/16(火) 23:46:47 ID:hchHJdEJ<> 心がホッとする話

乙です <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/02/17(水) 20:18:15 ID:D4F8GVZF<> なんか、最後に「良かったなぁ」って素直に思える話だな。 <> ゴモラ<>sage<>2010/03/24(水) 12:26:24 ID:8tF9oTbm<> 『アホだった』

 遠い未来のある日、とある一人の科学者が謎の「宇宙意思」を発見した!
宇宙意思はどうやら宇宙が始まった頃から存在している事が証明された!!
そして、この、宇宙意思こそが宇宙創造の神ではないのか?と一部の科学者
達の間で噂され始めた…
パニックを避ける為に公表は先延ばしにされたが、長い会議の結果、一人の
科学者が宇宙意思とコンタクトを取る事に決められた。

宇宙意思「…どうも…」
科学者「…あっ、ど、どうも…ハジメマシテ!私はニンゲンです」
宇宙意思「…ニンゲンさん…まあ…そんなに緊張せんと楽にしといて下さいよ」
科学者「あの、出来れば…我々ニンゲンの代表である私とお話させてもらってもかまいませんか?」
宇宙意思「ええ、ヒマですしね…何でも聞いて下さい、こちとら全知全能ですきん」
科学者「あなたは神ですか?神ならば教えて欲しい!我々はどこから来て…どこに…」
宇宙意思「パス!」
科学者「…すいません、私が何か失礼を?」
宇宙意思「いや…そない大問題あんまり簡単にワイが答えを言ってしまっては…その…アレやろ?」
科学者「………ええ…はい、分かりますそうですね、もっともです、すいませんでした…」
宇宙意思「じゃあもっと簡単なんで…」
科学者「では、アインシュタインの方程式は正しいのでしょうか?」
宇宙意思「は?」
科学者「例えば、その…特殊相対性理論は正しいのでしょうか?」
宇宙意思「…ブツブツ」
科学者「はい?」
宇宙意思「いや…タイムマシンとかの話だろ?今あんたらの星でタイムマシンが発明されて凄い騒いでるよな…」
科学者「ええ!ご存知でしたか!さすが宇宙意思さんですね!どうやって知ったのです?超能力か何かですか?」
宇宙意思「……別に…ええやん…そんな事…」
科学者「…そうなんですよね、発明したのはいいんですが、使ってもいいものか我々は迷っていまして…」
宇宙意思「…タイムパラドックス問題?」
科学者「そうなんです!どうしたらいいでしょうか?使っても大丈夫ですか?パラドックスは起こりますか?」
宇宙意思「……起こらん方がええか?」
科学者「……と、言いますと?」
宇宙意思「…どうしょーか、まだ、考えてへんねん…どーしたらええと思う?」
科学者「……」
宇宙意思「…」
科学者「……(んな、アホな!)」 <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/03/24(水) 12:30:17 ID:8zFk6+MF<> 宇宙意思適当だなあww <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/03/24(水) 14:14:33 ID:8tF9oTbm<> ぷるんぷるん

ぷるんぷるんぷるんぷるん

ぶるんぶるんぶるん

ぷるぷるぷるぷるんぷるん

ぶるんぶるん

ぷるううううううううう <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/03/24(水) 22:42:34 ID:3yD9Hpik<> このノリで宇宙を制御されるのは嫌すぎるw <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/04/12(月) 02:10:07 ID:4McOeshD<> 『雨男』

雨男、雨女って、よく聞くでしょう。
私も良く知人からは雨男なんて呼ばれてました。
実際、自分でもそう思ってたんですが。

まぁ聞いてください。小さな頃から運動が苦手で、特にマラソンなんかは死にたくなる程嫌いでした。

学生時代は運動会やマラソン大会なんかはほとんど雨で中止になりましたよ。
喜ばれもしましたが、気合いの入った教師なんかは雨天決行するものだから、辛かったなぁ。

今ではプログラマーなんかやってるものだから、運動する機会なんてありませんでして。
学生時代に、もっと運動しとけば良かったなんて、今じゃ後悔してますよ。

他にも、受験や就職面接の時なんかも酷い雨になりました。

一番、天気が荒れたのは結婚式前日でしたな。

いやあ、本当に雨男だったら良かったのに。


おや、ラジオがようやく入ったみたいだ。

『昨夜未明、東京を襲った地震ですが、現在も余震が続いており、危険な状況が続いております。
周辺地域の皆様は、指定の避難所に避難し、自治体の指示を受けてください。
繰り返しお知らせします……』

おかげで納期は伸びましたけどね。

今はこの瓦礫の下からどう抜け出すかが、重要です。 <> 創る名無しに見る名無し<><>2010/04/12(月) 12:28:47 ID:QO0fDM/c<> のんきだなおいw
いやあうん、好きな文だ <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/04/12(月) 17:31:24 ID:/fqGnrNn<> のんき杉ワロタ <> お題:>>43<>sage<>2010/04/13(火) 00:27:26 ID:WWDBvGfg<> 「わたしは生まれてこなければ良かったのかな、先生」
どう答えたらよいものか迷った。それが彼女に伝わったらしい。
「……そっか」
彼女のささやきが、低めのトーンで吐き出された。
僕は後悔した。しかし慰めを言ったところでその言葉に重みはなかっただろうとも思う。

彼女は十歳で死ぬと医者に告げられた。彼女のご両親は深く悲しんだそうだが、どうにもならなかった。流行のセカンドオピニオンとかで

さまざまな医者を頼ったらしいが、みんなそろって首を振った。
せめて。とご両親は思ったそうだ。「せめてこの子が笑って逝けるようにしよう」と。

「ほしいものなら何でも手に入ったよ」

ご両親は彼女の欲求を満たすために手段を選ばなかった。たちまち彼女の部屋はぬいぐるみとおもちゃで埋まったし、テーブルは彼女の好

物で一杯になった(彼女が現在ぽっちゃり気味なのはここら辺に由来する)。洋服だってより取り見取りだった。

「やりたいことも全部やったかなあ」

生まれてからずっと病院にいる彼女が望めることというのはひどく限られたものだったが。

彼女は生まれながらにしてその命の可能性に枷をはめられていた。
彼女が進められる時間は短かった。
彼女は一瞬の閃光だった。
……はずだったのだが。

「なんで生き延びちゃうかなあ……」
彼女はベッドに腰掛けながらぼんやりとつぶやく。天井を見上げていて、表情はよく見えない。
なんで、といわれてもそれが現実なのだから仕方がない。今日は彼女の十一歳の誕生日。来ないはずの誕生日。外には秋の肌寒い風が吹い

ている。
彼女のご両親は来ていない。仕事で忙しいからだ。ご両親は休日返上で働いている。彼女の望みをかなえるのに使った借金を返すそのため

に。
「でも知らないじゃんか、借金までしていたなんて」
そのことは彼女自身には秘密だった。余計なことは知らせずに逝かせるつもりだったらしい。
彼女は生き延びた。そして知ってしまったのだった。
「あーあ、死んじゃえばよかった。それか生まれてこなきゃ……」

長年地下深くに閉じ込められていた囚人というのは。
もしそこから出られることになっても、そこから出るのを恐れるらしい。
彼(もしくは彼女)は外の世界に大きく取り残されているのを悟っているのだろう。
目の前の少女がそうだとは言わないが、なんとなくそんな話を思い出した。

僕はグラスを持ち上げる。ハッピーバースデイ。
「……」
彼女は何も言わなかったが、僕はかまわず歌いだした。ハッピーバースデイトゥユー。
たとえ彼女が望まなくとも、これは紛れもなく奇跡であって医者の僕にはそれをたたえる義務があった。
そして彼女には今日を生きる義務がある。

ハッピーバースデイディア――


終わり



使われなかったお題を探して練習に使おうという計画を思いついた。実行中。 <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/04/13(火) 21:12:13 ID:yxqHDhfu<> 良い話だね。いい話ではないかもしれないがw <> 創る名無しに見る名無し<>sage<>2010/05/13(木) 02:44:13 ID:X+agxlu7<> これ絶対お互いにめちゃくちゃ気まずくなるよなぁ
ある種の予定調和ってたとえいい方にでも裏切られると困るもんだ <>