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三題噺

1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 14:26:29 ID:1MmgdYHz
お題募集と作品発表、どっちもおkよ

2 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 16:13:53 ID:h6RWRtZ/


3 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 16:15:08 ID:VlBPq7yZ


4 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 16:53:59 ID:D+vg79as


5 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 17:41:43 ID:+fWjiFVO
酒、岩、祭りで三題噺か

6 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 20:31:40 ID:kJKTqZS3
あ、そういうことか

7 名前:酒、岩、祭り:2008/08/28(木) 23:06:28 ID:nRdUm5kV
 その日、猿のトコトコは猿酒の名手である老猿ヂルに、祭りに供える酒を
教えてもらいに道を歩いていた。
 暖かい春の日差しが野原に満ち溢れ、タンポポの黄色い花がどこまでも
咲いていた。どこからかひばりの声も聞こえてくる。
 トコトコは空を見上げた。白い雲が流れ、優しい風が頬をなでていく。
 ヂルは最近、体の調子がよくないらしいとは猿村の者たちは言っていた。
子供がなく独り身のヂルは、どんなに美味い酒を造る技があっても
それを伝えるすべがない。
 だからトコトコがヂルに酒造りを教えて欲しいと願い出たとき、ヂルは
手を叩いて喜び、そして、すぐに心配そうな顔になったという。
『酒造りの修行は、住み込みでないと無理だよ。その小僧は、おっかさんに
何ヶ月も会わなくて平気なのかね』
 トコトコはヂルにはまだ会った事がない。トコトコの住んでいる村からは
この野原を越えて岩だらけの山をのぼらなければ、ヂルの酒蔵には
たどり着けないからだ。
 トコトコは、その話をヂルを紹介してくれた猿から聞いて少し寂しくなったけれど
これも修行のため、祭りのためと決心することにした。
 野原にはタンポポの無数の花が風に揺れている。
 帰る頃にはここにはどんな花が揺れているのだろうと思いながら
この若い猿は野原を歩いて行くのだった。

8 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/28(木) 23:18:30 ID:D+vg79as
石がいつの間にかランクアップされてるw

9 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 08:38:08 ID:poydlSPo
創作文芸板に既にスレがあるね

 怪談文藝【三題噺スレッド】八百文字
 http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1160311130/l50
 △ 三題噺をしよう ▲
 http://love6.2ch.net/test/read.cgi/bun/1120571339/l50

この板的には二次創作(パロ)の御題とかもOKでいいのかな?
その場合は【パロディジャンル名】の注釈はいるだろうけども…




10 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 18:23:50 ID:9Vi0JSbR
いいんじゃね?

11 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 19:59:15 ID:ywkNr0h2
とりあえずお題


12 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/29(金) 20:32:40 ID:7K9RKg2R
>>9じゃないとこの板で書く必要性もなさそうだしね

というわけでお題 「稲穂」

活性化するといいなぁ

13 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/30(土) 07:15:56 ID:LcVFUxle


14 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/05(金) 20:41:00 ID:p1wowoV6
【お知らせ】♭♯♪ 第九回モエリーナ祭 〜歌〜 ♪♯♭【告知】

♪開催期間 2008/10/12(sun)00:00 - 2008/10/21(tue)23:59

♪企画趣旨 テーマに関連した男女カプ作品をみんなで楽しむ

♪募集要項 今回のテーマは「歌」
 テーマの扱い方やとらえ方などは全て描き手さんの自由です
 その他基本的なルールは開催地である投下スレのルールに従ってください。
 投下は男女カプ作品(女体化・夢・捏造女主は除く)に限ります。
 テーマと上記禁止事項にふれない作品であればお一人様何点でも投下できます、
 作品形式の制限は一切ありません、絵・文・漫画などご自由にどうぞ。
 投下にはアップローダもご活用ください。

♪参加方法 祭の開催期間中にスレにテーマに沿った作品を投下してください
 スレルールを守っていればURL張り付けや直接張り付けなど投下方法は問いません
 今回のトリップは「#歌」となります、名前欄の最後に#歌と記入してください
 トリップの#は半角ですのでお間違えの無いように。

♪モエリーナ祭開催地 小ネタ・SS投下スレ@男女板
 http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/danzyo/1118422048/l50
 携帯版
 http://same.u.la/test/r.so/yy10.kakiko.com/danzyo/1118422048/l10

♪ 関連URL
 男女同人板@アップローダー 祭のバナーもこちら
 http://www9.uploader.jp/home/danzyoup/
 (テキスト、画像、音楽、動画などのアップが可能)
 男女同人お絵描き掲示板
 http://heavenbody.s40.xrea.com/cgi-bin/bbsnote/
 投下スレにリクエストするスレ 祭へのリクやお題投下はこちら
 http://yy10.kakiko.com/test/read.cgi/danzyo/1138455242/

15 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 20:25:36 ID:1ZT3M1lf
ヨーグルトでこのスレの存在知って来ますた
誰かいる?

16 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 21:05:23 ID:1ZT3M1lf
すんません、すぐ消えますんで……

17 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 21:07:25 ID:SM2bfZJd
消えんでいいぞー

18 名前:>>11-13:2008/09/07(日) 22:54:05 ID:U461xfdC
男「は、は、ハクシッ!」

女「どうした、風邪か?」

男「んにゃ、花粉症みたいなもんだ、埃が舞ってたら
  鼻がむずむずするだろ、あれ」

女「しかし、今は秋だぞ花粉が舞ってるわけでもないし……」

男「稲に花がさくだろ、ああいうのだ」

女「なるほど、狼の毛とかか」

男「なんでそうなるんだ、狼なんかいるわけないだろ」

女「いるよ」

狼「ワンッ!」

男「うおおおぉぉぉおおぉ!なんでいるんだ!?」

女「段ボールに入って捨てられてたから拾ってきた」

男「そんな危険なやつを拾ってくるんじゃない!捨てるやつもあれだが……」

女「いいじゃないか、こんなに可愛いんだから、ほれほれ」

男「うわっち!こっち近づけるな!やめろ!いや、やめてください頼むからあああぁぁぁああぁぁ!!!11」

19 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 22:55:09 ID:U461xfdC
一向に進まないからとりあえずネタ消化&age

20 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 23:43:25 ID:jqpZ0rtV
花、稲穂、狼で書いてみたので投下。

21 名前:花・稲穂・狼、その1:2008/09/07(日) 23:47:52 ID:jqpZ0rtV
 山間の小さな農村。収穫期を迎え、人々はたわわに実った稲穂を忙しそうに刈り取っている。
 そこへ若者が通りかかり、農民の一人に声を掛ける。
「失礼、私は旅の薬売りです。この村の庄屋様のご息女が病だと伺い、診察に参りました」
「ああ、ご苦労なこって、庄屋様のお屋敷ならこの道の先だよ」
 ぶっきらぼうに農夫が答える。
「実は長旅で喉が乾いております、すみませんが水を一杯いただけませんか」
 しょうがないなという風に、農夫は若者を井戸に案内し、水を汲み差し出す。
 若者は容器に顔を近付け、ピチャピチャと音を立てながら舌で水を舐める。
「あんた、まるで犬じゃのう」
 農夫が笑う。若者は、慌てて礼を言い立ち去る。
(いかんいかん、つい癖が出てしまった)
 若者は人間ではない。長い年月を経て、人に化け、人語を解する術を覚えた狼が彼の正体であった。
 美しいと評判の庄屋の娘を食らうため、薬売りに化けてこの村にやって来たのである。

22 名前:花・稲穂・狼、その2:2008/09/07(日) 23:52:37 ID:jqpZ0rtV
 庄屋の家で、若者は歓迎された。何の病かは知らぬが適当に薬を見繕う。
 庄屋が礼を言う。隣に座る娘は噂に違わぬ美しさ、解語の花とはこのことか。
「お力になれて何よりです。ところでぶしつけな願いなのですが、今宵一晩こちらに泊めて頂けませんか」
 庄屋は快く了承する。若者は、娘の柔肌にその牙を突き立てる瞬間を夢想し、思わず舌なめずりをする。
「ただ、一つお約束を。娘の部屋は離れにありますが、今宵は絶対に近づいてはなりませんぞ」

 先程は下心が見透かされたのかと思いドキリとしたが、若者の欲望は止むはずもない。
 夜が更け家人が寝静まった頃を見計らい、満月の月明かりの下、娘のいる離れへと向かう。
 扉は頑丈で、しっかりと施錠されており、開けるのは一苦労だった。
(流石は庄屋の一人娘、一筋縄ではいかん。しかし外側から鍵を掛けるとは、親の愛とは言え尋常ではないな)
 何とか錠をこじ開け、ゆっくり扉を開く。暗くてよく見えないが、部屋の中央に布団が敷かれているようだ。
(さて、では頂くとしようか)
 ゴクリと喉を鳴らしながら若者が近付く。
 ゆっくりと布団を剥ぎとる……

23 名前:花・稲穂・狼、その3:2008/09/07(日) 23:54:30 ID:jqpZ0rtV
 その瞬間、黒い影が布団から飛び出し、ものすごい力で若者を組み伏せた。
「なんだこれは」
 突然のことに驚く若者、騒ぎを聞きつけ庄屋がやって来た。
「ああ、何ということだ」
 目の前の光景を見て、庄屋は青ざめる。
「娘の病とはケモノ憑きなのです、満月の晩になると狼の姿になり人を襲うので、こうして厳重に閉じ込めてお
いたのに……」
「何ということだ……」
 若者は急いで変化を解き、狼に戻ろうとするが間に合わない。
 次の瞬間、狼と化した娘の鋭い牙が、若者の首筋にズブリと音を立てて突き刺さった。

−− 了 −−

24 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/07(日) 23:56:58 ID:jqpZ0rtV
以上、乱筆乱文失礼。

25 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 00:01:21 ID:bP+POV8b
お題三つくだちい

26 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 00:02:28 ID:nM0kAbGD
ポスト

27 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 00:11:42 ID:D2q3lZsS


28 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 00:19:06 ID:fStzOKaR
悪夢

29 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 00:23:32 ID:bP+POV8b
いいだろう……

30 名前:ポスト 左 悪夢:2008/09/08(月) 02:09:15 ID:48pNp28L
 永田町の悪夢といわれた国会議員の集団食中毒事件から、もう三年が経とうとしていた。
 事件発生当初こそマスコミは連日のようにこの惨劇を報じたが、結果的に死亡者が一人もでず、原因も政治家を狙ったテロではなく、弁当を調理した仕出店の衛生管理の問題とわかったことから次第に下火となり、やがて忘れ去られていった。

 しかし、この事件をどうしても忘れることのできない男がいた。左幹雄。東京都選出の衆議院議員、齢四十八にして当選五回のベテラン議員であり、次期総裁にもっとも近いと噂されていた。
「おはようございます、ヒダリー」
 その日、衆議院正玄関の階段で待構えていたのは南都新聞の女性記者、朝岡あずさだった。
「おはよう」
 無愛想に返事する。が、彼女は幹雄のそんな態度に臆するふうもない。
 二人の出会いは半年前、政治部の新人記者としてあいさつ回りに訪れた朝岡に、幹雄は冗談で「わたしのことはヒダリーと呼んでくれ」と言ったところ、彼女はそれを真に受け、毎度毎度「ヒダリー!」と馴れ馴れしく呼びかけだしたのだった。
「ヒダリー、組閣ポストをめぐって鍋本幹事長との確執が噂されていますが?」
 いいか、おれの次女と同い年のおまえに気安くあだ名で呼ばれる筋合いはねぇんだよ! わかったか、このクソアマ!
 と、喉元まででかかった言葉を飲み込んだのは、いつもとはちがう匂いに気づいたからだ。
「香水を変えたのか?」
 立ち止まった幹雄が思わず口をすべらす。
「あら、ヒダリー。わたしが香水かえたの、気づいてくれたんですね」
 あずさは笑みを浮かべ、手にしたICレコーダーのスイッチを切った。
「このまえ銀座のデパートで奥さまといっしょに買い物されていたとき、こっそり買ってらしたでしょ、この香水。どなたへのプレゼントだったんですか?」
 小声でそう言うと、どういうわけかレコーダーを落とした。
「やだ、わたしったら。どうしようもないドジなんだから。レコーダー落としちゃった……。ヒダリー、それ、とってくれませんか? このハイヒール買ったばかりで慣れてなくて、うまく屈めないんです」
 視線を上から下に落とす。見慣れたはずのスーツが、妙に艶めかしい。レコーダーはちょうどあずさの両脚の間に落ちていた。
「ねぇ、ヒダリー、お・ね・が・い」
 あずさは幹雄の肩に手を置くと、彼の耳もとでささやいた。
 この日はなにもかも違っていた。幹雄は場所も構わず女の足元へとしゃがみ込み、

(省略されました。事件の真相を知るには大家さん大家さん、家賃はもうちょっと待ってくださいと書き込んでください)

31 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 07:33:22 ID:1t4CZUM/
左が厳しいなw

32 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 08:26:46 ID:mQG0QGzb
おお、マジでこのスレが動いてる
花・稲穂・狼は和風な感じで書きやすそうだな
さすがにポスト・左・悪夢は思いつかん

33 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 11:01:55 ID:qyax7Seq
俺も書いてみようかな。
ジャンル、字数や形式は自由でいいの?

34 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 13:16:22 ID:3VT04YJ+
いいんじゃないんでしょうか?まだまだスレは始まったばかり。

お題「お笑い芸人」

35 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 13:22:19 ID:fStzOKaR


36 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 13:27:01 ID:XuliQu1/
金鍔

37 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 20:43:54 ID:1t4CZUM/
お笑い芸人・嵐・金鍔

いったいどんな話だよっ!

38 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:08:08 ID:J9/gabLk
きんつばって
おやつのほうでいいのかな

39 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/08(月) 21:53:52 ID:XuliQu1/
おやつの方です

40 名前:お笑い芸人・嵐・金鍔:2008/09/09(火) 02:32:15 ID:ktzgumK4
「えー、机の上に金鍔と市松人形がありました」
「それで? それで?」
二人の女が舞台の上に立っています。彼女たちの間には一つの机があり、門松と苺大福が乗っていました。とてもシュールです。
「嵐が吹きました」
「それから? それから?」
彼女たちの表情は全く変わりません。それどころか口を動かしている気配さえありません。
「すると金鍔だけ飛ばされてしまったのです」
「飛んだ。飛んだ。」
つっこみやくの女はそう言って、テーブルクロスを勢いよく引き抜きました。結果、苺大福は机の上に残りましたが、門松は落ち、床に衝突して大きな音をたてました。
「机の上には市松人形だけが残りました。」
「のこったよ。のこったよ。」
ボケ役の女はそう言って苺大福を持ち上げました。
「あなたはこの市松人形を食べることできる?」
「無理だよ! 無理だよ!」
ボケ役の女は次に床から門松を持ち上げました。
「あなたはこの金鍔を食べることができる?」
「できるよ! できるよ!」
それを聞いてボケ役の女は、明らかに彼女の頭部より大きい門松を、つっこみ役の女の口に突っ込みました。
「さて、これで机の上には市松人形だけが残りました」
「残った。残った。」
つっこみ役の女はとても生きているようには見えません。でも声は続いていました。
「机の上には市松人形だけが残ったのです」
「それで? それで?」
しばらくして、舞台の奥から市松人形が出てきました。

「えー、机の上に苺大福と金鍔がありました」
「それで? それで?」
いつのまにか私は舞台の上に立っていました。

-了-

41 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 06:30:00 ID:c8Od7lLO
面白そうなんでお題出してみる
「刺身」

42 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 06:34:38 ID:TqOdVpwZ
「四大文明」

43 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 11:27:23 ID:bTtjvNlh
「ひつじ」

44 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/09(火) 13:08:23 ID:UXrjvhdy
「刺身」
「四大文明」
「ひつじ」

うーん、ひとつ上の御題に比べれば書けないこともなさそう

45 名前:刺身・四大文明・羊 1/2:2008/09/10(水) 23:52:19 ID:Y67KPHjj
 美食家の友人に食事に招かれ、私は彼の家を訪ねた。
「やあ、ようこそ。今日は珍しい羊の刺身が手に入ったから、一緒に味わおうと思ってね」
 そう言うと彼は、嬉しそうに私を招き入れた。
「君の奥さんがうらやましいな、毎日おいしい料理を食べられるんだろ」
 そんなことないよと謙遜しつつも、彼は得意そうに語り出す。
「生食ってのはとても高度な文化なんだよ。素材そのものの質と鮮度、そして調理の技術が要求されるからね」
 彼の話は続く。
「十分な栄養、運動と休息を与え、何より愛情を注いで育てないといい食材にはならないのさ」
「へー、そりゃ楽しみだ。だが世界中の食材を食べ尽くした君でも、まだ珍しいと思うものがあるのかい」
 すると彼は急に真面目な顔になる。
「うん、実を言うとね、僕は人間を食べてみたいんだ。世界四大文明の一つ、中国では昔
から人肉を食べる風習があってだね……」
 彼は熱の籠もった目でじっと私を見つめる。
「君……まさか僕を……や、やめてくれ!」

46 名前:刺身・四大文明・羊 2/2:2008/09/10(水) 23:54:20 ID:Y67KPHjj
 その表情に恐怖を感じ後ずさりすると、彼はぷっと吹き出した。
「いやだなあ、冗談だよ冗談。君にそんなことする訳ないじゃないか」
「何だよ、たちが悪いな」
 ほっと胸をなで下ろす。
「用意するから少し待っててくれよ」
 彼は冷蔵庫から生肉の固まりを取り出し、切り分け始めた。
「そういえば、奥さんは元気かい?」
「最近は仕事も辞めてのんびりしてるよ。スポーツジムとエステに通い詰めさ」
 彼の妻は一回りも年下の健康的な美人。おしどり夫婦で、彼は惜しみない愛情を注いでいた。
「彼女、今日はいないのかい?」
「ああ、ちょっとね……」
 私の前に、真っ赤な刺身が差し出された。

47 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/10(水) 23:56:51 ID:Nqwfvcb1
ガクガク(((( ;゚Д゚))))ブルブル

48 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 00:01:45 ID:yS6wW6dK
食わせる気かよwww

49 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 02:15:32 ID:CQyw2I/K
ずいぶんとレベルが低いな
というわけで、お題


毒米

50 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 02:21:37 ID:v9gXKqGk
ならば書いてみろ、ってことで

リンゴ

51 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 02:29:34 ID:CQyw2I/K
もう一個待ち

52 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 02:31:05 ID:gbjLVaq4
>>49みたいな煽りは気にするな、どんどん書き米
「出刃包丁」

53 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 02:32:46 ID:gbjLVaq4
>>49
お、本気で書くのか。

54 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 02:58:36 ID:CQyw2I/K
今から10年前。
忘れもしない、2008年9月。
かつて東方の地に、”美しき国―ZIPANG―”と呼ばれる島国があった。
その地では、一部の官僚たちが私腹を肥やすため、国民に対して主食であるコメに毒物を入れて
食わせるという行為が、ごく日常的に行われていたのだった。

毒の名は、アフラトキシン。
10億分の1グラムの摂取で確実にガンを引き起こす、最悪の毒である。
国民は、「米を食べよう!」という政府のPRにまんまと騙され、もりもりと米を食らい続けた。
・・・当然の如く、人々は次々とガンになって死亡した。

それから、10年がたった今。
かつてZIPANGと呼ばれたこの島に、生きている人間は誰もいない。
ただ一人、この僕をのぞいて・・・。

何故、周囲のものたちが次第にガンに侵され、
激しい咳と吐血と全身を襲う激痛にさいなまされるという地獄の中で
僕だけが生き延びることができたのか?

それは、こういうことだ。

僕は目の前の木に向かって跳躍すると、真っ赤に熟れた果実をもぎとり華麗も着地した。
そう、りんごだ。
エデンの園で神がアダムとイブにけっしてその実を食すなかれと忠告した
この禁断の果実が、僕の命を10年の間、生きながらえさせた正体。

僕はりんごを太陽に向けて放り投げると、出刃包丁でもって自らのノドを切り裂いた。
飽きたのだ、もうりんごには。

そういえば、カインが追放された地はエデンの東・・・・不毛なるノドの地だった。
その地こそ、日本ではないか。
日の丸、万歳。

55 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 03:14:59 ID:YpJDQa3z
「デジカメ」

56 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 03:16:09 ID:gbjLVaq4
取りあえずリーダーの使い方くらいは覚えた方がいいぜ……

↓お題「灰皿」

57 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 03:17:33 ID:CQyw2I/K
ふぅ

「ためいき」

58 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 03:24:14 ID:CQyw2I/K
というかデジカメ、灰皿、ためいきて・・・
もっと特徴のあるお題出せや

59 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 04:12:27 ID:yS6wW6dK
>>54
なんでエデンの東に命の木があるんだよwwwwww
あれが林檎とかwww
何かとあちこち面白いなwいや、話がじゃないよw


60 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 04:18:59 ID:MOhgauKZ
特徴のあるお題ってのもなかなか難しいと思うけどね。
とりあえず書いて見たので投下。

61 名前:デジカメ・灰皿・溜め息:2008/09/11(木) 04:20:00 ID:MOhgauKZ
デジカメのメモリに残された、家族の写真。
これは父が亡くなった日に撮られた、家族全員が写る最後の一枚だ。
私は父と過ごした、この日の記憶を覚えていない。
あの日、久しぶりに帰省した私を、父と母が嬉しそうに出迎えてくれた所までは覚えている。
しかし、その後両親と何を話して、どう過ごしたのか、私の記憶からすっかり抜け落ちている。
母は混乱する私を気づかって、気丈にも一人で、葬儀の準備から進行までの全てを請け負った。

日々は慌ただしく過ぎ行き、すべてが終わった今、母と私は父の仏壇を前に座り込んでいる。
何もする気が起きなかった。それは母も同じ気持ちなのだろう。
ふと、私は家族の思い出が収められたデジカメを手にとり、メモリを見返す。
もはや戻らない日々の記憶を思い返しながら、メモリを一つ一つ見返していく。
すぐに父の亡くなった日に撮られた、家族が共に写った最後の一枚に行き着いた。
これが最後か。目頭を拭い、デジカメを離そうとしたところで、まだ先があることに気付く。
不可解に思いながら、撮った覚えのない最後の一枚を画面に表示する。

灰皿を父に向けて振り上げる、鬼の姿があった。
いや、鬼ではない。これは、この一枚は……

ふぅ。

かたまる私の背後で、仏壇を前に座り込む母の漏らした溜め息が、嫌に大きく、私の耳に響いた。

62 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 04:26:31 ID:yS6wW6dK
殺したのかw
冷静に写真を撮ってる母を想像した
テラシュール

63 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 06:08:40 ID:v9gXKqGk
二人目、三人目が空気を読めば書きやすいお題になることもあると思うけど。

64 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 22:00:11 ID:gbjLVaq4
既出のお題に答えるのはアリ?
個人的には、その方が書き手も投下しやすいし、同じお題でも色んな人の作品が読めて面白いと思うんだが。

65 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/11(木) 22:57:09 ID:MOhgauKZ
ぜんぜんアリだと思うよ。
人少ないし、ちょっとは活性化するといいなぁ。

66 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 08:36:18 ID:0Kh3Ssan
なんか結末が怖いのが続いてるなぁ
お題
「夜明け」

67 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 12:06:17 ID:3hn7ATgT
「姫」

68 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 12:15:33 ID:6IsKywY9
「人工肛門」

69 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 12:19:10 ID:qNynNha8
凄いのが出来そうだ……

70 名前:夜明け・姫・人工肛門1/2:2008/09/12(金) 13:53:11 ID:pmRkoVu/
とある国に、とても一人のお姫様がいた。そのお姫様はとても我侭な性格で、家来に度々迷惑を掛けた
そんな日、彼女を妬んだ家来の一人が、国で一番悪い魔女に、自分の財産を受け渡す代わりに、姫を酷い目に合わせてくれと頼んだ
魔女はその家来の以来に喜々として乗ると、城に乗り込み、お姫様に呪いを掛けたのであった

次の日、姫様は起床すると自分の視界が真っ暗な事に気づいた。まさか私は誘拐されたのか? それとも……
ふっと、自分の意思とは関係無しにどこかに連れて行かれる事に気づいた姫様は必死に抗った
が、次の瞬間、姫様の顔を何度も何度も鈍い感触が走った。と、その感覚が途切れると同時にいきなり息が詰まる
このままでは窒息死してしまう! 姫様がそう危機感を抱くと、数秒して息苦しさから解放された

ほっとした姫様は、ふっと目の前の鏡に移った自分の姿に思わず目が飛び出そうになった
私…お尻になってる! 誰かも知らない尻に!
姫様は死にたくなって堪らない。カエルや鳥等の動物に変化するならともかく、人間の尻になるなんて……

71 名前:夜明け・姫・人工肛門2/2:2008/09/12(金) 14:25:08 ID:pmRkoVu/
絶望しきった姫の視界をまたも暗闇が覆った。一体何処に連れて行かれるのか
姫は恐怖と混乱と疲弊で、考える事はあっても最早抗う気力は無かった
しかしふっと、気を集中させると外の声が聞こえる事に気づいた。姫様は集中する

「まったく……姫様は何処に行かれたのだ。迷惑ばかり掛けて」
「やれやれ、少しはおしとやかになって欲しいのだが……」
え……姫様は聞き覚えのある声を耳にした。自分が散々こき使っている家来の声だ
どうやら自分は、家来の誰かの尻に変身してしまったらしい。その事実に姫様はさらに落胆する

その後も家来達の苦言は続き、精神的に姫様は凹んだ。自分が今まで家来の本音に向き合った事など立場上無かったからだ
だが、家来の一人の一言に、姫様はハッとした
「しかし……あんな性格でも、国を担うお姫様である事には変わりない」
「そうだな、我々もしっかりしなければいかん」

家来達が持ち場へと戻り、沈黙が流れる中、姫様は心で泣いた
あれほど自分が我侭ほうだい出来るのも、家来達の優秀な働きのお陰なのだと知ったからだ
どうにかして、人間に戻りたい。そして今度こそ、清楚で真面目なお姫様としてやり直そう
姫様は色々考えた結果、こんな事が出来るのは北東に住む国で一番悪い魔女だと確信した

考えたらもう悩まない。姫様は全力で力を振り絞り、自分が変身した尻の持ち主を引っ張り出した
その家来はトイレ中だったが、姫様の馬鹿力のせいで下半身を露出したまま、お城を飛び出した
夕日をバックに、下半身丸出しの男が北東の一番悪い魔女宅へと疾走する


72 名前:夜明け・姫・人工肛門:2008/09/12(金) 14:45:51 ID:pmRkoVu/
ごめん、2レスじゃ収まんないや
つか人工肛門ってこんな解釈じゃないよね、ごめん

途中で村人に変態として追い掛け回されたり、通りがかりの女性騎士に切り殺されかけたりもした
だがどうにか、一番悪い魔女宅にたどり着いた。一日中疾走した為、もうすぐ夜が明けそうだ
すると、しがわれた声が姫様の耳に聞こえた
「おやおや……今度は何の呪いの依頼だい?」

呪……い? 姫様は無い首を傾げた。呪いとは何ぞや……?
すると魔女の返答に、若い男が返答した
「い、いや、俺も分からないんだ。なんか気づいたら城から無我夢中で……」
「ズボンも履かないで逃げて来たのかい……ほっほっほ、自業自得じゃな」

姫様は男と魔女の会話がどういう意味か理解し得ない。だが次の男の発言に仰天した
「それより俺が依頼した、あの馬鹿姫を何に変化させたんだ? カエルか? 蛇か?」
「ほっほっほ……それはな、お前さんのお尻じゃよ!」

「な、何だと!」
同時に姫様は激しい怒りが沸いていた。魔女もさる事ながら、尻に変化させたこの男が心から憎い
だが尻である以前に身動きも取れない自分では殴る事はおろか罵倒さえも言えない
すると魔女は青年にこう返答した
「もうすぐ夜が明ける……お前は一生、その馬鹿姫と生死を共にするのじゃ! 持つつ持たれつつな!」

「ざけんなババァ! 上手い事言ったつもりか!」
男はその場にあった上手い具合に尖った石を、魔女の頭頂部へとぶつけた
魔女はぐええと典型的なうめき声を上げると、男を見下げていたベランダから転落した

「くくく……夜明けが空けた瞬間……お前と馬鹿姫は……」
魔女は意味有りげににやりと笑うと、そう言って力尽きた
もうすぐ夜が明ける


73 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 14:47:24 ID:6IsKywY9
ノリノリのところ悪いが、あんまスレの趣旨わかってなさそうだな

もうちょい短くまとめてくれ
お題を使って短編を書くスレじゃないんだ、お題を上手く使ってオチを落とすのが目的
さすがに、なげ〜〜よ

74 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 14:48:43 ID:pmRkoVu/
うん、ごめん。落ちは考えてないんだ(´・ω・`)
やっぱりその場かぎりで話を作っちゃいけないよね
じゃ、次のお題は「月」で

75 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 14:49:07 ID:6IsKywY9
オチなしかいww

76 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 14:53:46 ID:pmRkoVu/
>>73
ごめんなさいorzもう一度スレを読み直してみます
落ちもつけてなくてごめんなさい

77 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:01:59 ID:6IsKywY9
>>76
いや、気にするなw

つーことで、お題2品目


「焼き土下座」

78 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:12:49 ID:G8Vkvzqg
「トライアスロン」

79 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:14:09 ID:t0fwbrSb
「夢」

80 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 15:19:50 ID:t0fwbrSb
ごめん
>>79は無かったってことで…

>>76はがんばったと思うよ。怖いことにならなくてよかった
>>77はカイジスレへ行けよw三題噺にしてはお題が怖すぎるだろ

81 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 16:05:06 ID:hzBhSpaV
人工肛門とか焼き土下座とか、出すお題がマニアック過ぎるわww

82 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 17:15:24 ID:G3WaYmVw
なんかgdgdなんで改めて
「台風」

83 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 17:30:08 ID:an64t/gw
「理性」

84 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 17:31:10 ID:hzBhSpaV
かなりアレな内容だけど、月・焼き土下座・トライアスロンで書いたので、一応投下してみる。

85 名前:月・焼き土下座・トライアスロン:2008/09/12(金) 17:32:07 ID:hzBhSpaV
 競技に勝つ為なら命も掛ける。
 これは比喩などではない。一流のアスリートにとって、備えてしかるべき資質の一つだ。
 しかし、その男は勝利を得れば得るほどに、自身の中で虚しさが募るのを感じていた。
 違う。この競技も違う。この競技もまた、オレの求めるものではない。
 様々な競技を渡り歩き、ひたすら勝利を重ねるも、心の渇きが癒えることはない。
 自然、求める競技の内容もまた、より過酷なものになっていった。

 今日もまた一つの競技を終えて、男は空を見上げた。
 星空に囲まれた海岸。月はただ天に座す。
 あらゆる競技の中で、最も過酷と評されるトライアスロンもまた、男の渇きを癒すことはできなかった。
 月明かりに照らされた海岸。男は仰向けに寝ころがり、一人夜空を見上げていた。
「くくくっ……お疲れのようですな」
「……誰だ?」
 咄嗟に上体を起こす。闇の向こうから、僅かの間も置かずに答えが返る。
「失礼。少し驚かせてしまったようですね」
 闇にまぎれるようにして、黒スーツの男が立っていた。
「先程の勝利、見事でしたよ。しかし、あの競技もまた、あなた様の渇きを癒すことはできなかったようだ」
 称賛に続けて、黒スーツはさも残念でならないといった様子で、かぶりを振って見せた。
 こちらの内面を読み取ったようなことを言う。顔を顰める男に、黒スーツは笑いかける。
「ですがご安心ください。私はそんなあなた様の渇きを癒すような、最高の競技を紹介することができる」
「最高の競技……だと?」
「ええ。体力。知力。精神力。あらゆる要素が複雑に絡み合い、勝利を掴む為に必要となる、至高の競技です」
 興味がわきましたら、こちらに御連絡下さい。一枚の名刺を残し、男は去った

 あまりにも怪しい誘いだった。
 こんな名刺、破り捨てて家に帰るのが当然の反応だろう。
 しかし、男はどうしても破り捨てる気になれなかった。
 脳裏を過るのは、かつて耳にしたことがある、冗談のような一つの噂話。
 裏の世界において、公然と賭けの対象として開催される、裏競技の存在。
 おそらく、あの黒スーツは件の裏競技に関わる人間だろう。
「面白い」
 男は不敵に笑うと、名刺に視線を落とす。
「いいだろう。極めてやるよ。この裏競技」
 名刺に、その競技の名は記されていた。
「オレは──焼き土下座の神になる!」

 後に『灼熱のマゾヒスト』の名を世界に轟かせることになる、伝説のアスリートが、ここに誕生した。

86 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 17:39:19 ID:EBiJnjaq
>>84,85
灼熱のマゾヒスト! 駄目だコレ、ツボに入ったwww
焼き土下座の神が何か分からないが、イイヨイイヨ
乙ですたー

次の御題は「夢」「台風」「理性」で良いのか?
>>80>>79を否定してるから、もう一つ御題出すのか

87 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/12(金) 18:03:32 ID:Z92OF5CF
「台風」「理性」「かなりアレ」でいいんじゃね?

88 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 15:43:37 ID:VjLRjziA
再び過疎ったな。職人はおらんものか。

89 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 17:22:21 ID:dSRcuCJU
見てるだけの俺ならいるぜ!

90 名前:台風・理性・かなりアレ1/3:2008/09/13(土) 20:06:58 ID:ws1M/ng0
「私、台風おじさんなんですよ」
 男は真面目な顔で語り始めた。
「台風の現地リポートをするあのお仕事ですか?」
「いえ、晴れ男とか雨女ってよく言うでしょう? 私の場合は台風を呼んでしまうんですよ」
「それは大変ですな」
 何を馬鹿なと思ったが、そんなことはおくびにも出さない。長年バーテンダーとして働
いてきた私は、この手の変わった客への対応には慣れている。
 店内には彼と私の二人だけ。外では今まさに台風が暴れており、そのせいで客足は遠の
いている。
「では、この台風もあなたが呼んだのですか?」
「ええ、ご迷惑おかけして申し訳ない。台風の時期はなるべく各地を転々とし、一カ所に
被害が集中しないようにしているのですが」
 なかなか面白い、ここは適当に合わせてみる。
「では、いっそのこと海外旅行にでも行かれてみては? 台風もまさか外国までは追って
こないでしょう」
「なるほど……それは名案かもしれませんな」
 冗談で言ったのだが、彼は私のアイディアに感心したようだ。
 ウイスキーを三杯ほど飲み干すと、彼は金を払い出ていった。
「変な客だったな」
 掃除をしようと客席を見ると、男はバッグを忘れていた。男を追いかけようと店の外に
出るが、すでに姿はない。
 嵐は止んでいた。

91 名前:台風・理性・かなりアレ2/3:2008/09/13(土) 20:09:32 ID:ws1M/ng0
 そのうち受け取りに来るだろうと思い、バッグは預かっておくことにした。
 しばらくして忘れかけた頃、テレビのニュースを観ていた私はアッと驚いた。
「続いてのニュースです。ミャンマーで突如発生したサイクロンにより、日本人男性一名
が行方不明となり……」
 映し出された顔写真は彼のものだった。数日後、彼の死亡が確認される。
「まさか、彼は本当に“台風おじさん”だったのか? もしかすると、私があんな提案を
したせいで命を……」
 何となく罪悪感を覚える。
 そのとき、彼のバッグのことを思い出した。開けて中を見てみると、身元が分かるものも
いくつか入っていた。家はここからそう遠くない。
 罪滅ぼしの気持ちもあって、私は家族の元にバッグを届けることにした。

 郊外の一軒家を訪ねると、一人の男性がドアを開けた。彼の弟で、ここで二人で暮らし
ていたそうだ。事情を話すと快く迎え入れてくれた。
「わざわざご親切にありがとうございます」
「いえ、とんでもない」
 見渡すと、室内はかなり荒れている。
「恥ずかしい話ですが、兄が亡くなってからこの体たらくでして」

92 名前:台風・理性・かなりアレ3/3:2008/09/13(土) 20:12:30 ID:ws1M/ng0
 聞けば弟の方は、結婚もせず定職にも就かず、それどころかまともに外に出ることすら
ないというのだ。引きこもりというやつだろう。
「それはいけませんな。お兄さんが亡くなったのだから、あなたも一人立ちしなくては」
「私にできるのでしょうか……」
「もちろんですよ、私でよければ職探しの手伝いくらいはしますよ。そうだ、よかったら
今からお兄さんの墓参りに行きませんか?」
 彼は渋っていたが、半ば強引に連れ出した。彼を社会復帰させることでお兄さんに対す
るはなむけとしよう。私はそんなことを考えていた。
 地図を見て菩提寺へと向かう。途中、弟は不安そうにあたりを見回している。久方ぶり
の外出なのだろうから無理もない。
 しかし、天候が変わり辺りに暗雲が立ちこめてくると、彼は理性を失ったかのように叫
び震えだした。
「ああ! やはり僕には外出なんて無理だったんだ」
「一体どうしたというんです?」
 尋常ではない怯え方に、私もさすがに不安になる。その気持ちを代弁するかのように、
空は黒さを増し、ゴロゴロと低い唸り声を上げ始める。
「実は僕はカミナリ親父なんです。僕が外に出ると必ず……」
 その刹那、空から降り注いだ光で私の視界は真っ白になり……

93 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 20:23:04 ID:ws1M/ng0
お題出しとく
↓「観覧車」

94 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 20:29:49 ID:R4wnUlmq
「エンゲルス係数」

>>90
台風おじさんという発想と、オトし方にセンスの良さを感じた
文体もすてき

95 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 20:32:02 ID:lBYKN4TD
理性とかなりアレはどこ?
という気はするが、まとまりは上手いね

「バキューム・カー」

96 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 20:47:27 ID:ws1M/ng0
>>95
ああ悪い、「かなりアレ」→「かなり荒れ……」と勝手に変換してた。

97 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 01:57:00 ID:6KwRQEF4
観覧車・エンゲルス係数・バキューム・カー……なんという下ネタフラグ。

98 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 09:09:50 ID:2HcOYI39
子「かーちゃんかーちゃん」

母「どうしたんだい?」

子「ウチのエンゲルス係数っていくつ?」

母「なんだい、藪から棒に」

子「家庭科の宿題なんだ、聞いてこいってさ」

母「しょうがないね、あまり大きな声では言いたくないんだけど……ゴニョゴニョ」

子「え! そんな高いんだ……」

母「なに言ってんだい、あんたがバキュームカーみたいな食欲してるからでしょうが」

子「ダンプカーみたいなかーちゃんに言われたかないや」

母「失礼な子だねえ。かーちゃんにだって女なんだよ、乗り物に例えるならもっとメルヘ
ンチックなものにしなよ。メリーゴーランドとか観覧車とかさ」

子「……鏡見てものを言おうぜ、かーちゃん」

母「やかましい」

子「ならかーちゃんは、馬車ってとこかな」

母「ふむふむ、なかなかいいね」

子「父ちゃんはまるで馬車馬だもんね」

99 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 09:12:30 ID:2HcOYI39
↓木賃宿

100 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 21:35:02 ID:cgH51ccy
>>90
確かにこれは良作。雷親父が家にいても、家に雷が落ちないのはナゼ?という疑問は残るが、総合的に見ていみじき作品だと思ふ


101 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 21:36:50 ID:cgH51ccy
っていうか天野遠子並にカオスなお題出すんだな……

102 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/19(金) 21:45:20 ID:535ainUG
じゃあ天野遠子のお題で書いてみるか……。

103 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/20(土) 00:29:56 ID:WyWbgvYj
先輩は妖怪なんですね、わかります。↓「妖怪」

104 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/20(土) 18:58:48 ID:LTCYfUzS
う〜んと甘いのを書いてね

105 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 03:05:20 ID:uqhSW3Ow
↓「マネーロンダリング」

106 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 08:20:01 ID:xheJoCn6
木賃宿、妖怪、マネーロンダリング。

電波を受信しました。

107 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 14:07:12 ID:ijDt2b32
発信をお待ちしております

108 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 00:02:33 ID:4Kip+NQi
長めになっちゃいました。ネタスレなのに、すいません。

109 名前:木賃宿・妖怪・マネーロンダリング:2008/09/23(火) 00:11:02 ID:4Kip+NQi
日が沈みかけた夕方、とくに何をするでもなく、俺は部屋でぼんやりとテレビを見て時間を無為に過ごしていた。
ここはネットで見つけた木賃宿。山あいの田舎にあるところだ。信じられないくらい格安の宿だった。
だがその分、部屋は狭い上に障子も壁も薄汚く汚れている。テレビなんかもう何年前の物なのかわからない。
俺は何をやっているんだろう……。テレビの音声は耳に届いているが何も感じられない。
楽しいと思えない。だがチャンネルを変える気にもならない。
それも全て、この目の前にあるトランクケースのせいだ。
この中にあるものが俺の心を空っぽにしたんだ。なぜ俺は、こんな仕事に手を出さざる負えなくなってしまったんだろう。


110 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 00:12:32 ID:4Kip+NQi
思えばバカな人生を送ってきたものだ。
ネオン街の女、パチンコ、麻雀……。これらに溺れた俺はあっという間に借金を重ねてしまった。
借金が借金を呼び、気がつけば3000万の負債を抱えていた。とても俺個人で返せる額ではない。
俺の経済力では高額な利子を払うことすらできやしなかった。


そして俺は迷いに迷ったあげく麻薬組織に入った。上の命令に従って、麻薬取引の一端を担うだけでいい。
莫大な報酬を貰うことができる上に、楽な仕事だという話だった。
実際その通り。初仕事であるにも関わらず俺の仕事はあっけないほど簡単に終わった。
あとは、この大金の入ったバカでかいトランクケースを明日、隣街まで運べばいいだけ。
マネーロンダリングは別の人間がやってくれる。これで俺は報酬として数百万貰えるのだ。


だが良心の呵責がないわけではない。俺はテレビを消して立ち上がると、夕日が沈みかけている山の端を眺めた。
茜色に染まった景色が心に染み入る。これで俺は完全に犯罪者になったのだ。
ふぅーっと溜め息ひとつついて、俺は上着をはおった。夕飯までに時間はある。
このへんはのどかな田舎街で、懐かしい気分にさせられる。散歩でもして気分を変えよう。

111 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 00:13:45 ID:4Kip+NQi
大金の入ったトランクケースが多少気掛かりだったがトランクにも部屋にも鍵は掛けてあるし
宿泊客は俺以外にいない。何が入ってるかなど誰にもわからないだろうし盗まれる心配はないだろう。


「おじさん、どこ行くの?」
廊下に出ると、小さな女の子が声をかけてきた。さっきも見掛けたが、どうやら宿の子供らしい。
「ちょっと散歩にね……」
「やめた方がいいよ。昼から夜に変わるこの時間はね、妖怪が出るの」
「妖怪……?」
「そう妖怪!怖いんだよ、やめた方がいいよ」
真面目な顔で女の子は言った。このあたりにそんな伝説でもあるんだろうか。
「そうか、それは恐ろしいな。じゃあ、外の風を浴びたらすぐ帰ってくるよ」
「絶対だよ。出歩いたりなんかしたら妖怪に襲われちゃうからね」
「わかった、忠告ありがとな」
俺は女の子の頭の上にポンと手をのせた。女の子の真剣で、不安気な眼差しがまだ俺に向けられている。
俺はバイバイと手を降ると玄関に向かって歩き出した。

112 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 00:15:50 ID:4Kip+NQi
外は割と寒かった。気温が低いというのもあるのだろうが、吹きつける風が余計に寒さを感じさせる。
「妖怪か……。本当にいるなら見てみたいもんだな」俺はポケットに手を入れたまま呟き、茜色に染まった田舎道を歩き出した。


歩き始めて10分くらい経っただろうか。俺は宿の裏手にある小高い山の中を歩いていた。
山、とは言っても神社の境内に続く道だ。入り口のところにそう書いてあった。
夕闇が迫る時間帯になった上に、伸び放題になっている木々がうっそうと茂っていて、辺りは大分暗くなっていた。
足下もよく見えなければ道もよく見えない。周囲の景色が闇に呑まれていくように見える。
帰ろうか、という気持ちになった。夕飯もそろそろだろうし、トランクケースが気にならないでもない。
でも俺は歩みを止めるようなことはしなかった。神社の前で手を合わせたかった。
神を信じるほどの敬虔な心は持ち合わせていなかったが、麻薬取引に手を出してしまったという背徳感があったからなのだろう。


間もなく、俺は狭い敷地にある境内についた。当然のことながら人影はない。所々が欠けた狛犬が忘れ去られたように鎮座していた。
開けた場所になっているので多少明るく感じたがそれでもやはり暗い。早く用を済ませて帰ろう。
そう思った俺は急ぎ足で、簡素な造りの古めかしい社殿に向かった。

113 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 00:17:08 ID:4Kip+NQi
「珍しい。こんな時間に、ここを訪れる人がいるなんて」
ふいに背後から女の声がした。心臓がビクッと跳ね、反射的に振り返った。
そこには、妖艶な笑みを浮かべた若い女が立っていた。
薄暗くてもわかるほどの真っ白なワンピース。腰まで伸びる真っ直ぐで艶やかな黒い髪。
明らかに場違いなその様に対して、俺の本能が警告を発していた。危険だ、と。
だが蛇に睨まれた蛙のように足が動かない。なぜだ。
俺の目の前にいるのは、いかつい顔をした巨体の男ではない。
美しい顔をした小柄な娘なのに……。
「何で化け物をみたような顔をしてるのよ。失礼ね」
女は怒ったような口調で言った。それから薄く笑い、長い髪をかきあげた。
「あんた……何者だ?こんな時間にこんな所で何してる?」
俺はそう問掛けた。得体の知れない恐怖に、体が小刻に揺れる。
「それを聞きたいのは、こっちも同じよ。ここはあなたみたいなイイ男が来ても、面白いモノなんてなーんにもないと思うけどな」
女は少女のような無邪気な笑顔を浮かべながら、じりじりと歩み寄ってきた。
「やめろ……来るな」
「なんで?」
俺の顔を見上げるようにしながら女は言った。
「綺麗な顔ね」
「な……?」
「綺麗な顔。私の好みのタイプだわ」
女は両手で、俺の頬を優しく包みこんだ。細い指から伝わる冷たさに、顔がこわばる。
「な、なにを……」
脂汗が背中をつたって滴り落ちた。
「ふふ……あなたからは何をもらおうかな……」
次の瞬間、糸がぷつりと切れるように、俺の意識は闇に閉ざされた。


114 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 00:18:46 ID:4Kip+NQi
途中で切ってすいません。続きは明日投下します。まだ未完ですが明日には書き終わるはずなんで。

(ケータイです。読みにくかったらごめんなさい)

115 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 02:13:21 ID:aew568wO
ケータイでよく頑張ったね。
残りも頑張って書いてくれ。

116 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/23(火) 21:47:22 ID:EFHOuYCe


117 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 00:19:35 ID:eDc7Qyau
>>114
期待age

>>100
『雨男』が家にいても連日雨が降るわけじゃない、ってのと同じ理屈じゃね?

118 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 00:23:09 ID:eDc7Qyau
ageてなかった……

119 名前:木賃宿・妖怪・マネーロンダリング:2008/09/24(水) 05:57:15 ID:GxZ1zxqV
続きいきます

120 名前:木賃宿・妖怪・マネーロンダリング:2008/09/24(水) 05:58:26 ID:GxZ1zxqV
朦朧とした意識の中、俺は手足を縛られたまま、固い床の上に寝かされているのに気がついた。
腹筋に力を込め上体を起こそうとしたが、後ろ手に縛られているせいで、うまく身を起こせない。
そのせいで周囲を見渡すことが難しい。それでも、ここがどこなのかは瞬時にわかった。
洞窟の中だ。熊の寝床よりは遥かに大きいのだろうが、八畳間程度のこぢんまりとした空間。
外の気配をまるで感じとることができず、出口へと続いているらしい一本の道は、先が暗くてまるで見えない。
「あら、起きちゃった?」
その通路の先からコツコツと、ゆっくりと近づいてくる足音が聞こえ、次第に闇の中に女の輪郭が浮かびあがってきた。

「気に入ってくれたかしら?ここは私の寝室なのよ」
さっきの女だ。吸い込まれそうになるほどの透明な瞳で、俺を見下ろしている。
「俺をどうするつもりなんだ……?」
「あら、そんな敵意のこもった目で私を見ないでよ。私はあなたを気に入っているっていうのに」
「冗談言うなよ。人をこんなところに連れこんでおいて……」
「仕方ないじゃない。ここじゃないと、私の力は使えないんだもん」

121 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 05:59:36 ID:GxZ1zxqV
「力……?」
俺は弱々しく呟いた。
「そう。私の"盗み"の力。私はね、自分が生まれたこの場所なら、力を使って目の前の人間のモノを何でも盗み出すことができるの」
「へーそうか。で、俺からは何を盗むつもりなんだ?生憎だが財布には小銭しか入ってないぜ」
「うーん、そうだな……。まだ決めてないんだけどね……」
女はそう言って微笑みながら俺のそばに腰を下ろした。そして、考え込むような仕草を見せながら独り言のように呟いた。
「あなたのトランクケースの中に入ってるお金にしようかな」
全身を衝撃が貫き、寒感が走った。なぜ知ってるんだ……?!誰にも見られてはいないはずなのに。
「麻薬取引、うまくいってよかったわね」
「……あんた、何者だ?」
俺の虚ろな声が、洞窟内に響きわたった。
「私?私は神よ。里には私のことを"妖怪"だなんて失礼なことを言う人もいるけどね」
「神か……」
まんざら冗談にも聞こえない。一種独特な雰囲気を醸し出しているし、何より金のことを知っているのだ。
「神のくせに人様の金を盗もうってか……」
「ふふ、人にだって良い人と悪い人がいるように、神にだって善良な神とそうでないのがいるものよ」
一拍置いてから、女は笑いを含んだ声で言った。
「ちなみに私は後者かな」

122 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 06:00:50 ID:GxZ1zxqV
「悪い神様ってわけか……」
「でも極悪非道ってわけじゃないのよ。今までもたくさん盗んできたけど、ただ盗むんじゃなくて、代わりのモノをちゃんとあげるようにしてるんだから」

俺は言葉を失ってしまった。どうも頭が状況についていかなくなってきた。しかし、女は構わず言葉を続ける。
「例えば、この顔を盗んだときは私の顔を代わりにあげたの。
この顔ほど綺麗ではなかったけど、醜いわけでもなかったし、今も不自由なく暮らせてるはずよ」
「顔まで盗めるのか……」
「ついでに言うと、この声も貰いものなの。透き通るような透明な声でしょう?」
軽く鼻唄を口ずさむと、女はいたずらっぽく口元に笑みを浮かべた。
「あなたからは何を盗もうかな。いくらでも盗めるわけではなくてね
 一度に盗める数は決まってるのよ。だからいっつも迷っちゃうのよね。」
俺は全身が脱力していた。それが精神的にまいっているせいなのか、女に何かされたせいなのかはわからない。
確かなのは抵抗が無駄だということくらい。何しろ相手は神なのだから。

仔猫を撫でるような仕草で、女は俺の頭を撫ですさると、ゆっくりと立ち上がった。
「もう少し眠っててね。何を貰うのか決めるのにもう少し時間がかかりそうだから。
大丈夫、何を盗んだとしても代わりのモノはちゃんとあげるわ」

そして俺の意識は、再び暗い奈落の底へと落ちていった。

123 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 06:01:57 ID:GxZ1zxqV
悪夢から逃れるように、俺は勢いよく跳ね起きた。

視界に飛込んできたのは、布団をかぶった自分の下半身と見慣れない、古い和室。
そうだ。俺は昨夜、宿に泊まったのだ。そして……。

少しずつ記憶が蘇ってくる。古ぼけた境内。謎の女。穴蔵のような洞窟。
だがその全てが遠い過去の記憶のように、曖昧で霧がかっている。
夢だったのか……。よかった……。心底安堵した俺は、布団から抜け出すと窓を開け、朝の爽やかな風を浴びた。
気持ちがいい。あとはトランクを持って山を下り、隣町まで行くだけ。
……トランク。俺の脳裏に思い出したくない言葉がよぎった。

『あなたのトランクケースに入ってるお金にしようかな』

やめてくれ。冗談だろ?あれは夢だったんだ。ただの悪夢さ……。そう思いながらもガタガタと体が震えだし、止まらない。
俺は部屋の隅に置かれた真っ黒なトランクケースのもとへ歩み寄った。
心臓が音をたてて鳴っている。俺は震える手でトランクケースの取っ手を握り締めた。
ひと呼吸おいてから、手に力を込めた。頼む……、そう思いながら……。


124 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 06:03:26 ID:GxZ1zxqV
重い……。トランクケースは重かった。大金を中にぎっしり詰めたときに感じたのと同じ重み。
ふっ、と体の力が抜けるのを感じた。そうだ、やはりあれは夢だったんだ。だいたい、いくら神と言えども
遠く離れた場所にある金を盗めるはずがないじゃないか。
俺は今まで真剣に心配していた自分を鼻で笑った。

さて、出発するか。俺はトランクをとりあえず畳の上に置いた。
汚れた金は早くマネーロンダリングに回したほうがいい。
でも、隣町まで運ぶ前に念のために中を確認しておくか……。
軽い気持ちだった。軽い気持ちでトランクを開けたのだ。
中を見た瞬間、全身の血の気が失せ、視界がぐにゃりと歪んだ。

トランクケースの中に入っていたのは小石と木の葉。万札の代わりに、それがぎっしりと詰まっていた。
再び女の声が蘇る……。

『ただ盗むんじゃなくて、代わりのモノをちゃんとあげるようにしてるんだから』

これか……この葉っぱと石が札束の代わりか……。全身を包んだのは、怒りよりも、絶望に似た感情だった。
何しろ、これで人生が終わったのだ。俺は組織の大切な金を失ってしまった。
幹部に何て謝ればいい?「神様に盗まれちゃいました、ゴメンナサイ」とでも言うか。
だめだ、殺される。いや、どんなふうに謝ったところで殺されるだろう。


125 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 06:04:32 ID:GxZ1zxqV
俺はくすんだ色の天井を仰いで大きな笑い声をあげた。
逃げたって無駄だろう。麻薬組織と借金取の集団に終われて逃げ切れるはずがない。
俺は空っぽの心のまま机の上のケータイを広いあげた。正直に話そう。何をしても無駄なのだ。
それならせめて、最後くらいは正直に生きよう。
俺は覚悟を決めて携帯電話の電話帳を開いた。

……ない。どこにも組織に通じる番号はなかった。続いて俺はリダイヤルをしようと試みた。
しかし、やはり番号は消えていた。俺が組織と通じていたという形跡は何もなかった。
どういうことだ……まさかあの女は組織の電話番号を「盗んだ」というのか?

俺は車に乗り込んだ。とにかくトランクを運ぶ予定だったはずの所へ行ってみよう。
そうすれば、何が起こったのかわかるはずなのだから。
キーを差し込み、エンジンをかける。俺はシートベルトを締めることも忘れてアクセルに足をかけようとした。

126 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 06:07:50 ID:GxZ1zxqV
そのとき、助手席に一枚の封筒が置かれていることに気がついた。全く見覚えのない、宛名書きのない茶色の封筒。
俺は気になって、封を切り、中を見た。


「色々と悩みましたが、あなたからは以下の物を盗ませてもらいました」

昨日見た女の秀麗な顔が頭に浮かんだ。盗んだのは、金だろ?そう思いながら文字を下へと追って行く。

「あなたの"仕事"」

俺は、はっとして目が覚めるような感覚を覚えた。
そういうことか……。あいつは俺の金を運ぶという仕事そのものを奪ったわけだ。
それならば電話番号が消えていたわけもわかる。あいつは俺と麻薬組織の関わりを絶たせたわけだ。
俺はくつくつ、と笑った。さすがは神様。人を正しい道へと導いたわけだな。
だが、これで、俺は組織から報酬を受け取る機会を失った。まともな仕事に就いているわけでもないのに
あの莫大な借金を返さねばならない……。悪事から手を引けたことに、ある種の安心感を覚えていた。しかし、この後、俺はどうすればいいのか……。
完全に意識が手紙の外へ行っていたことに、はっとして、再び視線を手紙に落とす。

「それから、もうひとつ」
なんだ、いったい?もう俺にとって盗ませて困るものはない。何を盗まれていたとしてもショックは受けまい。

127 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 06:10:30 ID:GxZ1zxqV
「あなたの借金」

俺は言葉を失った。そして、しばし呆然とした後、ようやく我に帰った。
借金が盗まれた……?それは借金取りから自由になったということか。
あの女は俺のことを気に入ったと言っていた。どうやら冗談ではなかったらしい。
「悪い神様どころか……俺にとっては女神様じゃないか……」
俺はひとりごちた。では、代わりにもらったものは何だ?
「まぁ、何でもいいか……」
男はアクセルを踏み、車を発進させた。今なら何だってできる気がする。
田んぼの脇の畦道を、太陽が明るく照らしていた。
代わりにもらったもの……それはひょっとしたら、燦然と輝く"未来"なのかもしれない。

128 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 06:33:04 ID:GxZ1zxqV
「ふふふ……」
洞窟内に女の笑い声が木霊していた。暗い穴蔵の中で女は腰かけ、一人の男の頭を撫でている。
「あなたは今、どうしてるのかな……」
うっとりとした恍惚の表情を浮かべながら、膝の上に置かれた虚ろな男の顔をのぞきこむ。
「あなたは永遠に私のものよ……。嬉しい?」
魂の抜け殻となったような男は当然、返事はしない。ぐったりと女の膝にもたれかかったままだ。

「あなたからは色々もらっちゃな……何でかしら。いつもは数の制限があるのに今回はなかったの……だからね……」
女は口元を緩め、宝物を数えあげるように静かに語り始めた。
「あなたの仕事でしょ、それに借金。ふふ、盗んだことをあなたに教えたのはここまで」
女は、その細く美しい指で、男の頬を優しくつついた。
「あとはね……あなたの命。だってあなたが欲しくなったんだもの。仕方ないじゃない。でもね、大丈夫……」
女は目を細め、再び男の頭をゆっくりと撫で始めた。
「あなたの記憶も盗んでおいたわ。命を盗まれたこと……つまり、死んだことなんて覚えていない。だから、あなたの亡霊は生き続けるはずよ」
女は歌うような口調で言った。
「本物のあなたは……永遠に私のもの……」
言い終えると、静寂が洞窟内を包んだ。しっとりと湿った土壁の中は、幸せな空気で満ちていた。

129 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 06:34:54 ID:GxZ1zxqV
以上で終わりです〜

130 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 22:07:58 ID:E1aBxRcR
お題をくれー

131 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 22:08:53 ID:fZUcMX86
お題

「BLOGを1年続けて、コメント零」


132 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 22:23:19 ID:eDc7Qyau
「ゴルゴ13」

133 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 22:34:37 ID:GxZ1zxqV
トイレ

134 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 23:36:55 ID:FprkbnQM
 スナイパーという仕事はかなり神経を使う。仕事柄、
クライアントと友達以上の関係になる事はまずないし、
元々友達も少ない。一人でこなす仕事なので、もちろん
同僚はいない。昨日あった面白いことも、クライアントの
愚痴も、趣味の話も、一切する事はない。というか出来ない。
 
 その日は仕事が早く片付き、家でのんびりネットを見ていた。
そろそろやめようかと思っていた時、あるサイトgが目に留まった。
そこは、とあるスナイパーのblogだった。スナイパーのくせに
ネットで自分から情報配信など……と思って見たが、彼が
スナイパーである事以外は一切、そのblogから窺い知る事は出来なかった。
書かれているのはたわいも無い日常や、その日思ったこと。
載せられている写真は道端で撮ったらしい何気ない風景。
そんなblogに、かなりの数の人がコメントを残していた。
 
 気が付いたら私はgoogleで『blogの始め方』を調べていた。
それほど難しくはないが、なにせプライベートの時間が少ない。
デザインやレイアウトに散々凝った挙句、記念すべき第一投の
文案に一週間を費やし、一ヵ月後、blogは無事開設の日を迎えた。
しかし、紹介できる友達もいないし、クライアントに紹介する訳にもいかない。
そのうち人も増えるさと、毎日欠かさずblogを更新し続けた。
疲れて食事すら面倒な時も、パソコンを立ち上げて、一行だけでも更新は行った。
逆に休日など、丸一日blogの更新に時間を費やした時もあった。
 
 blogを開設してから、もうすぐ一年が経とうとしていた。仕事の合間には、
トイレに入って、携帯からblogのコメントをチェックする。昨日書いた記事へ
飛び、『コメント』と書かれた右隣の括弧内の数字をチェックする。
開設以来、この括弧内に0以外の文字が記載されたのを見たことがない。
スナイパーのブログという事で、二番煎じを指摘するコメントくらいは来だろうと
思ったが、それすらなかった。ため息とともに、自分の投下した文面を見直す。
今日は3箇所も誤字を見つけてしまった。帰ったら真っ先に修正しなければ。

 ふと時計を見る。そろそろ次の仕事だ。
袖で涙を拭い携帯を閉じると、私は次のクライアントの所へ急いだ。

135 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 23:39:55 ID:NLSUy8sz
普通に面白かった
寝ようとか思ってたのに思わず読んじゃったぜ

136 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 23:49:57 ID:CL1q0u67
>>134
お題のハードル高かったのに投下が早いな
寂しがり屋なゴルゴがかわいいw


つお題「アンドロイド」

137 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/24(水) 23:56:26 ID:eDc7Qyau
上手いなw
じゃあ「打ち首」

138 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 00:02:33 ID:E1aBxRcR
前のお題で書いたけど全然オチがきれいじゃなくてワロタ
お前らすげー


139 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 00:58:23 ID:IUcR4KPm
そろそろ 十 題 噺 でもやらないか

140 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 01:10:58 ID:WIsOZY4Q
あんまり多すぎても消化に追われて面白くないと思う。
まあやりたいなら止めはしないが

141 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 01:22:18 ID:25MC0CC/
実際やったことがあるけど、正直お題を使うことだけで精一杯で、構成もクソもない電波
な文章にしかならんかったわ。

142 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 15:00:41 ID:icVudmEV
それでいいと思うんだよね
その中でキラっと光るものができるかもしれない、それが三題噺

143 名前: [―{}@{}@{}-] 名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 18:53:18 ID:JFCnsW6O
今出てるのは「アンドロイド」と「打ち首」か
じゃあもう一題は「身代わり」で

144 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 22:51:44 ID:XQ7RjNg+
期待

145 名前:アンドロイド、打ち首、身代わり:2008/09/25(木) 23:17:10 ID:Q+WlG/h4
オレ名は田中。
趣味はアンドロイドの生首集めだ。
部屋にはすでに、100体以上の愛らしいアンドロイドの頭部が
アニメヲタクの部屋を彩るフィギュアよろしく、四方に鎮座ましましている。
う〜〜〜ん、壮観。
めぼしいアンドロイドを見つけ、背後をストーキングし、隙をみてチェーンソーで首を頂く。
まさに、生の充足を味わえる、最高の瞬間だ。
思わず、射精してしまう事も一度や二度ではない。
いや、下品な話になったな。

話を戻そう、趣味の話だったな。
そう、あれは最初に頂いたアンドロイドの件についてだ。
その事を書きたくて、今日はPCを起動した。

……あの日、30年ぶりに娑婆に出てきたオレは世界が一変しているのを目の当たりにした。
地球温暖化にまるで都市はサウナ風呂、植物は熱帯性の木々にすりかわり、少子化の余波をうけ街の人口は激減していた。
人間様に変わり、街中を我がもの顔で闊歩していたのはアンドロイドと呼ばれる連中だった。
こいつらは、人間の形をし、人間の声で話、人間同様の性格を持ち、一目ではわからないほど人間社会に溶け込んでいる。
今や、マクドの店員の無料スマイルはアンドロイドのオハコであり、その笑顔は掛け値なしの100%スマイル。
始めてみたときは、思わず吹き出してしまったほど、完全無欠の笑顔だ。
なるほど、こいつらは良くできている。

マクドでダブルビッグバーガーをたいらげたオレは、その足で大手ホームショッピングに向かった。
そして、こぶりのよく手になじむチェーンソーを手にとると、狩りを開始したのだった。

(つづく)

146 名前:アンドロイド、打ち首、身代わり:2008/09/25(木) 23:35:22 ID:Q+WlG/h4
「てやあああああああああああッ!!!」

オレはまず、近場にあったペコちゃん人形の練習替わりに打ち首の刑に処した。
コロンカランボトと転がっていく、ペコちゃん(ただし頭部のみ)。
なんともいえぬ、開放感が心中を駆け巡る。
これぞ、自らの使命だった。

今初めて、オレは生きる目的を見出したのだ。

地べたに転がり、虚ろな笑顔を天にむけるペコちゃんをあとにすると、オレはA駅に向かった。
駅はガラガラだった。
というか、どこもかしこも人はほとんどいないのだった。
地球温暖化と、それが引き起こした各種の大規模災害で地球の人口は30年前の1/10になっていた。
日本は、島国でありその害はさらに酷かった。
ましてや、少子化の影響もあり、ほとんどゴーストタウンだった。

電車に乗ると、若いカップルが一目も気にせずSEXにいそしんでいた。
その隣の車両では、男女の嬌声もまるで気にするようすもなく、一人の少女が座り本を読んでいた。

さっそく、獲物を見つけたのだ。

147 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 00:33:07 ID:uTZrRlj5
ん? これでおしまいか?

148 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/28(日) 10:29:34 ID:fsZhxtGl
獲物発見で終わり?
続きがよみたいよー

149 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/03(金) 23:17:19 ID:89n59HWB
お題を下さいお代官

150 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 00:06:05 ID:BX6fY1xW
全自動洗濯機

151 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/04(土) 12:57:54 ID:RC4FDtkm
世界の中心

152 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 14:33:55 ID:UeKtaNvw
落ちない汚れ

153 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 07:06:12 ID:kjD+CWDP
全自動洗濯機、世界の中心、落ちない汚れか。

154 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 08:01:58 ID:Al1+pqMV
南極まで行って地球の地軸上でスピンするアイスフィギュア選手の漫画思い出したよ、吉田戦車の

155 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 15:43:03 ID:4F8DC99Y
>>151
遠子先輩!
>>152-153
空気読めよタコ!

156 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 15:50:54 ID:4F8DC99Y
>>150
遠子先輩!
>>151-152
空気(ry

に訂正する

157 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 01:59:42 ID:tEAndWeE
「『全自動洗濯機』、起動準備完了!」
「洗剤、柔軟剤、漂白剤、全て問題ありません!」
オペレーターの声が艦橋に響く。
「いよいよか」
慌しく飛び交う指示を聞き流しながら、私は思わず呟いた。
「まさか、ここまで時間がかかるとはな――」


 光に勝る移動方の発見は、人類の居住地を爆発的に増やす結果となった。
すでに円熟した技術と呼ばれていたテラ・フォーミングにより、銀河中には
居住可能惑星がどんどん増えていった。21世紀には既に懸念されていた
人口問題、環境問題、資源の枯渇といった問題は既に過去のものとなり、
人類には薔薇色の未来が約束されたかに見えた。
『落ちない汚れ』が世界の中心に現れるまでは。


 『落ちない汚れ』が初めて確認されたのは、第五十三次テラフォーミング計画が
終了した数ヵ月後の事であった。事件は銀河の中心の定期観測から戻った無人衛星が、
真っ黒に汚染された事からはじまる。当初は観測を妨害する何者かの仕業と思われた。
既に妨害派と見られる団体のリスト化が完了し、あとは分析結果から犯人を絞り込むだけ
となったが、発表された結果は、誰もが驚く内容であった。
汚染原因となった物質は、現在の科学では存在が不可能であるはずの物質であり、
汚染された衛星、および調査に当たった分析機関は消失。その後、汚染物質は完全消滅――

 かつて無い混乱が人類を襲った。原因不明の汚染事件は日に日に増え、
惑星単位での消失事件も発生するようになった。それまで築き上げてきた科学では
存在自体が証明不可能な物質を、いつしか人類は『落ちない汚れ』と呼ぶようになった。
万事休すと思われたその状況は、ある一人の男によって救われる事となる。
大手家電メーカーの全自動洗濯機部門にに勤める新米設計者。それが彼の肩書きであった。

「艦長姿も板に付いて来たじゃない」
物思いに耽っていた私に声をかけて来たのは、先輩でもあり副長でもある女性だった。
こんな緊迫した状況でも、私をからかいたくてしょうがないのか、あるいは私の緊張を
解そうとしてくれているのか、彼女は言葉を続けた。
「あの落ちこぼれ設計者が、今や作戦指揮官だもんねぇ」
「先輩のおかげですよ。もっとも、落ちこぼれなのは今も変わりませんが」
緊張を悟られまいと、軽口をたたいてみる。以前の私なら、彼女と話すだけで泡を食っていた
ものだが、随分と成長したものだ。こちらからも何か言い返してやろうと思ったが、
台詞とは裏腹に憂いに満ちた彼女の瞳がそれを思いとどまらせた。
「やっぱり、自分で乗るの? 『全自動洗濯機』に……」
ちらりと彼女が見やった先には、モニターに映る『全自動洗濯機』があった。
『落ちない汚れ』に対する唯一の対策手段であり、私が設計した『商品』であり、今から
私が乗り込む機体でもあった。
「設計者ですからね。自分で試してみないと、やっぱり」
「そっか……。ちょっとだけ、ごめん……」
そう言うと、彼女は後ろから私に抱きついてきた。驚いて振り向こうとする私を更に強く
抱きしめながら、彼女が続ける。
「約束して。必ず、生きて帰ってくるって。絶対、消えないって……!」
咽び泣く彼女を優しく振りほどき、私は彼女に向き直った。言うべき言葉はただ一つ。
「行って来ます」
「行ってらっしゃい」
泣きながらも、笑顔で敬礼する先輩の姿を深く心に刻み込み、私は艦橋を後にした。

158 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 02:03:09 ID:tEAndWeE
うん、難易度高すぎるわこれ
てか「世界の中心」に絡めようとしたら、
今まで書いたことも無いSFモノに……

159 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 02:15:00 ID:yAv5ZzLX
すげぇw
このお題で書きこなせるとは

160 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 03:06:13 ID:b2uUQXVn
めちゃくちゃ面白いよ。そしてうまい。
長編で読みたい。
「先輩……落ちましたよ、汚れ」
なんて壊れた通信機に向かって言うんだろ?
その後、宇宙空間を漂う一人の人間を発見するんだろ?
手の中には『あの時』のネジとボルトが……、とかだろ?
読みたいわー。ハードカバーでも買う。

161 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 10:26:22 ID:3WjW+SbU
やばい。感嘆した。レベルが違いすぎる

162 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 12:48:00 ID:QGfNaIB/
なんだ、人いるのかここ
そういうことなら、メンドイと書かなかった構想があるのだが
一つ文章に起こしてみるかな

と思ったが、投下人欲しさに異常なほど持ち上げるのがやりにくすぎだなこのスレ

163 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 13:03:02 ID:u5XftUoq
つーか、書きたいものありきだとスレの趣旨にそぐわないんじゃね

で、だれかおだいをくらはい

164 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 13:05:25 ID:QGfNaIB/
>>150->>152の題でね

じゃ、とりあえずお題でも出すか


「ロサンゼルス移送」

165 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 18:29:36 ID:FO1ZrcM7
「最後の晩餐」

166 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 18:43:58 ID:yAv5ZzLX
鉄道

167 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 18:46:44 ID:y4wfTu3y
そこは「夜行列車」とかにした方が、かきやすくまた面白くなるんだけどね

168 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 18:50:36 ID:yAv5ZzLX
いや俺もそれ思い浮かんだけど
ちょい広めに取ってみるかなと思ってさ

169 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 18:59:29 ID:y4wfTu3y
言いわけは辞めておけ、見苦しい

170 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 19:06:24 ID:1M5Zuohr
>>167-169
バカがw 「夜行列車」にした方が面白くなるという絶対的な確証はあるのか?
あるというなら、その根拠を論理的に述べよ

>>168
簡単に他人の意見に流されるなよw

171 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 19:08:03 ID:y4wfTu3y
ふう、さっそく、IDを変えてこられたようだ
忙しい方だ

もっと大らかにな

172 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 19:09:27 ID:tEAndWeE
書きにくいお題でどうかくかが面白いと思うとです

173 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 19:16:07 ID:u5XftUoq
そんなにハードルを上g(ry

174 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 19:17:53 ID:y4wfTu3y
ハードル?
高みへの階段の間違いだろう

175 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 19:20:15 ID:y4wfTu3y
もっとも、確かに階段をまたぎ越えることができぬ者にとっては、
ハードルでしかなかったな(苦笑)

176 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/12(日) 20:16:59 ID:1M5Zuohr
>>171
おいおい逃げんのか?w まぁそうだろうな〜お前は俺に論破されるのが怖いんだ
確かにお前の論理構成能力じゃ俺に勝ち目ないもんなw

177 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 00:22:24 ID:ixeUVXeZ
最初にお題にケチを付けた奴が悪い。
責任とってお題を消化しろ。

178 名前: ◆bb1hgZO.RI :2008/10/13(月) 23:42:17 ID:zgyGonTo
投下します。ごめんなさい

179 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 23:44:17 ID:zgyGonTo
いつもは一日のうちで最もくつろげるはずの我が家での時間。
しかも今日は明美がわざわざ来て料理を作ってくれたのだ。
気分が晴れないわけがない……はずなのに、今日は暗い気持ちで心が塞がっていた。
「これが最後の晩餐だな……」
「何言ってんのよ―。別に殺されるわけじゃないじゃない」
「でも、あっちは職場のほとんどのやつがネイティブだぜ?おまけにチーフが鬼らしい。死んでもおかしくはねぇな」
俺はネクタイを緩め、ビールをぐいっと流し込んだ。冷たさが喉を刺激する。
「でも、ロスで仕事なんてかっこいいじゃん。選ばれたんだから、胸張りなさいよ―」
「選ばれたっていうか……ロスに強制的に移送されるっていう表現の方が近いかも」
「だめよ、そんなネガティブに物事を考えちゃ。活躍のチャンスって捉えなきゃ、ね?」
明美が晴れやかな笑顔で俺の肩に手をのせ、顔をのぞきこむ。
幾度となく、俺はこの笑顔に癒されてきた。でも俺がロスから帰ってきたとき
この笑顔が俺に向けられることはないだろう。ロスでの勤務は3年。
俺達の距離が自然と遠ざかっていくには十分すぎるくらいの時間だろう。
明美ははっきり言って可愛い。ほっといても自然と男は寄って来る。中には心惹かれることもあるだろう。
そしたら……きっとその後は……。

そう、明美と俺が二人でテーブルを囲む晩餐はこれが最後になるに違いないのだ。
「ねぇ、明日は空港まで電車で行くんでしょ?何時発?」
明美がにこやかに聞いてきた。
「えっと7:20のやつには乗らないとまずいな」
「そっかー、じゃあ今日はあんまり遅くまで起きてられないね」
寂しげな口調ではない。いつも通りの口調。明美は寂しくないのだろうか。
明日からは一緒にいられないと言うのに。ひょっとしたら、関係を自然消滅させる良い機会だと思っている?
バカな。そう思いながらも、その考えを捨て去ることができない。
俺はビールの缶を握り締め再び喉を潤そうとした。しかし、既に中身は、空だった。


180 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/13(月) 23:48:02 ID:zgyGonTo
朝、駅の構内は人がまばらだった。発車を知らせるアナウンスが虚ろに響いている。
「悪いな、わざわざここまで送ってもらっちゃって」
「そんな……別にいいよ。せっかくの出陣なんだしやっぱり見届けなくちゃ」
そう言って明美は笑った。
「じゃ、行ってくるよ。元気でな」
俺はそう行って改札を通ろうとしたとき「待って」と明美が言って、俺の肘をつかんだ。
「これ持って行って……私とお揃いなんだ。御守りだよ」
そう言って小さな紙袋を渡してきた。
「お、サンキュ。ご利益がありそうだな」
「ううん、ないよ。中、開けといたから。御守りって開けて中を見ちゃうと
ご利益なくるんだよね。だからむしろ逆効果、かな」
「は?」意味がわからなくて呆然とする俺をよそに明美は話を続ける。
「それ恋愛守りなんだ。向こうでいっぱい新しい出会いがあるでしょ?だから……」
「俺と、他の女との恋愛がうまくいかないように……?」
明美はコクりと小さな首を縦に振った。そして、そのまま顔を下げたままにする。
顔は見えないが、肩がわなないている。
「そんな……俺は絶対、浮気なんかしないよ」
「本当に?」
うつむいたまま、声を震わせ明美が言う。
「だって3年だよ……?」
「大丈夫だよ」
俺はそう言って人目もはばからず、そっと明美を抱き寄せた。
今度、もしまた一緒に飯を食えるときが来るなら……そのときは……。
最高の晩餐にしよう。昨日のを最後の晩餐になんかさせない。
腕の中の暖かな温もりを感じながら、俺はそう心に誓った。

181 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 00:45:05 ID:nv+FRIOi
終わり、かな?
色々とバッドエンドなフラグが立ちまくってるように見えるのは
俺の心が濁っているからだろうか

182 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 01:57:00 ID:pY68+gTF
うん、きれいにまとまってるなあ。
では早速、次のお題。
「バンジージャンプ」

183 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 06:57:31 ID:8RjOA5p6
>>179-180
自然すぎてお題がどこに出てたか探すのにもう一回読んだw
明美かわいい

184 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 08:01:08 ID:/kjOhryY
青空

185 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 19:27:17 ID:hYM4wdOD


186 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 21:21:12 ID:fZDGAud8
走り高跳び

187 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/14(火) 21:24:31 ID:hYM4wdOD
バンジージャンプ、青空、侍、走り高跳び


スレ初の四題噺!!!! これは期待せざるを得ない

188 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 23:16:14 ID:tDpEUpvp
すごい御題ですね。「よくわからんお題でSS」スレの自分が書かせてもらいます。

189 名前:バンジージャンプ、青空、侍、走り高跳び:2008/10/21(火) 23:20:37 ID:tDpEUpvp
江戸時代末期のことだった。
三河の国の小さな村に、誰にも挑戦できない度胸試しがあったそうな。
それは、海岸の切り立った崖に行き、あいだが三間(約5.5m)もある、深い谷を飛び越えるというものだった。

ある日、村に屈強な侍がやってきて村人にこう言った。
「儂は江戸で知らぬものがおらぬ度胸を持つ万次と申す。この村に、誰一人達成したことの無い度胸試しがあると聞いてやってきた。」
村人は期待した。こんなに強そうな侍なら、度胸試しを成功させるのではないかと思ったのだ。

海岸の崖に行き、万次は身軽になるために褌以外を脱ぎ捨てた。
「あれ? ジイジ。お侍さんの褌、すごい長いよ。長者の奥さんの髪より長いよ。」
「あれはな、地面に褌が付かないよう走るという訓練を積んでいる証じゃよ。これは期待できるぞい。」
人々は万次の成功を期待するのだった。

万次は座禅を組み、精神を集中させる。
落ちたら死は免れない・・・
しかし、これくらいの距離、陸上なら飛び越えられる・・・
恐怖心を克服するのだ・・・
「ヨシッッッッ!!!」
気合を入れ、万次は立ち上がった。

十分な助走を行い、走り高跳びのような飛び方で、万次の身体は宙に跳んだ。
重力から解き放たれたその体は、上も下も前も後も、見る限りの青空・・・・
万次はまさに鳥になっていた・・・・

そのときだ。突然、しかも谷の中央で、万次の体は重力を取り戻した。
子供たちが悲鳴を上げる!
「お侍が落ちる!!!」
「ああ! 褌が岩に引っかかったんだ!!!」
万次の長すぎる褌は、万次が谷を飛び越える前に、手前の崖にある岩に引っかかってしまい、宙を跳ぶ万次を眼下の海へと引きずりこんでしまったのだ。

「・・・これじゃぁ、たすからねぇべ。」
「・・・お侍、死んじゃったの?」
万次の死を覚悟しながら、村人達はこわごわと谷を覗き込む・・・
・・・そこで、村人は、褌に宙吊りになりながらも、無事な万次を発見したのだった。
「生きてるぞ! お侍、生きてるぞ!」
慌てて万次を引き上げた。
そして、谷を飛び越えるのには失敗はしたものの、万次の度胸を褒め称えた。

・・・このことがきっかけとなり、日本各地に体を紐でつないで崖から飛び降りる度胸試しが広まったそうな。
この度胸試しは、「万次」の「邪魔」な「陰部の布」ということから「万次邪陰布」。
転じて、「バンジージャンプ」と呼ばれるようになったそうな。

お後が宜しいようで。

190 名前:10/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/21(火) 23:22:53 ID:rEP9SylV
早くてうめぇwww

191 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 23:28:10 ID:5/XOT+za
三題噺としてはよくまとまって面白いな

ただ、褌が長いよのあたりで、速攻オチ読めた

次のお題、バキュームカー

192 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 23:42:07 ID:DYFQq1vq
>>188
同郷の徒発見。
乙です。

193 名前:10/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/21(火) 23:43:34 ID:rEP9SylV
サンマ

194 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 23:54:25 ID:tDpEUpvp
読んでいただき、ありがとうございました。
楽しんでいただいて何よりです。

195 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 23:56:29 ID:77YPE6k4
ブランコ

196 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/21(火) 23:56:49 ID:n92LAZ6d
>>194
とてもよかったです。

197 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 00:38:19 ID:bgrXo/2/
>>189
月代&褌の男のバンジーを想像すると、なんか新鮮で面白かったw

198 名前:191:2008/10/22(水) 15:39:16 ID:WaIkwgfs
バキュームカーっていうお題は既出だったな。なしにしてくれ。

199 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 18:39:23 ID:WgwB/Nl7
おいおい、191はオレやがなw
意味不明ななりすましすんなやw

とりあえず、既出なのか
じゃあ、代わりに「おまる」にしておこう

200 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 19:20:15 ID:yPmyEbfK
おまる、サンマ、ブランコか…

201 名前:199:2008/10/22(水) 20:32:49 ID:WaIkwgfs
すまんな、下系のお題ばっかりでw
オレは未だに、小さいガキと同じで「うんこ」とか「おしっこ」とかが笑いのツボなんやw


202 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/22(水) 22:20:24 ID:wJRJ7DwE
キチガイが湧いてるな

203 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 02:28:05 ID:Dddj6Mbw
もう少し題材を選ばないと、書き手が困るよ。

それか、複数の御題から書き手が3つ選ぶとかにルールを変えないと、
難易度が高すぎる御題(「うんこ」「おまる」「人工肛門」「バキュームカー」)の度にスレが止まりそう。

204 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 03:44:55 ID:35MWm0/+
>「うんこ」「おまる」「人工肛門」「バキュームカー」

究極の選択だなw


205 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 05:52:28 ID:mbmSmi30
もっと遠子先輩が美味しく食べられるような三題を目指そうぜ

206 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 07:04:37 ID:NnPuFADe
過去のお題を再利用とかでもいいんじゃないか?

207 名前:サンマ、ブランコ、おまる:2008/10/23(木) 07:31:41 ID:CHqs/Tf3
「なぁサンマの参太郎よ、知ってるか?」
物知りで知られているサンマの三吉が話しかけてきた。暇を持て余しているらしく
以前は無口だったのに最近は口数が多くなった。

「人間の世界にはブランコというものがあるらしい」
「ブランコ?それは何だい?」
「人間の遊具だ。主に子供が遊ぶものでな。ぜひとも作ってみたいものだ」
「無理さ。材料がないもの」
「それもそうだな」



「なぁサンマの参太郎よ、知ってるか?」
また三吉が話しかけてきた。
「人間の世界には、おまるというものがあるらしい」
「おまる?それは何だい?」
「用を足すものだ。白い陶器で、できててな……」
「へぇ〜それは滑稽だなぁ。垂れ流せばいいものに、わざわざそんなものを作るなんて」
「全くだ、人間とはおかしな生き物だ」



「なぁサンマの参太郎よ、知ってるか?」
次の日もまた三吉が寄ってきて、話しかけてきた。話し好きに男になってしまったようだ。
「人間の世界にはタバコというものがあるんだ」
「タバコ?それも聞いたことがないなぁ」
「白い筒状のものでな。火をつけて吸うと気持ちよくなるらしい」
「へぇ、見てみたいな」
私がそう言うと、三吉は愉快そうに笑った。
「それならそこにあるじゃないか。あれがタバコと言ってな……」
三吉が胸ビレで前方を差して言う。
「え?どれ?ここからじゃよく見えないよ」
と、そのとき突然、体がフワリと浮かび上がった。水の抵抗を押し退けて
あっという間に水面へ。そして……体は遂に宙へ浮いた。
「あぁ……あれがタバコなのか。なるほど、嬉しそうに吸っているな」



「お客さん。このサンマは北海道産で脂がのってて旨いすよ。刺身でいいですか?」
男は網ですくったサンマを得意気に客に示しながら尋ねた。
客はタバコの煙をくゆらせながら、笑みを浮かべてうなずいた。

208 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 10:37:30 ID:YWPoSf6v
>>207
乙です。今回の題は、さすがにヒキには使えないですよね。

209 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/23(木) 16:06:48 ID:xB2ppYzt
料理屋の水槽の中かw

210 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 14:03:39 ID:/q93X+Y7
踏まえて、お題「たばこ」

211 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 19:01:10 ID:3xtTiyxD
ならば『網』

212 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/24(金) 22:56:34 ID:ZwHhj1dC
「赤」で

213 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 00:07:54 ID:Q1QqEdSS
御題もらいます。

214 名前:タバコ、網、赤:2008/10/25(土) 00:10:24 ID:Q1QqEdSS
「なあ、赤いタバコって知ってるか?」
「何、それ。怪談話?」
会社の喫煙室で、同僚の佐藤が、雑談の続きで変な話を振ってきた。
「噂なんだがな、数十年に1本だけ、白じゃなくて赤いタバコが作られるらしいんだよ。」
「へー、なんでそんなことをするんだろう? 何か当たるんかな?」
「それが・・・何か調査に関係あるらしいんだが、当たった奴がどうなったか誰もしらないんだ。」
「何だよそれ、意味分かんないよ。そもそも、誰の情報?」
「いや、俺も人に聞いた。あいつ、営業の吉田。」
「吉田の情報なら信じられねぇよ。担がれてるんじゃね?」
「それもそうだな。」
馬鹿話を打ち切り、仕事に戻った。

その日の夜、タバコが切れたことに気づいて、コンビニに立ち寄った。
「いらっしゃいませ。」
「ハイパーセブン、1つ」
「はい、964円になります。」
「ん。」
国民健康推進法ってやつのせいで、タバコもずいぶん高くなったもんだ。
「・・・まったく、迷惑な法律だぜ。」
外に出てパッケージを破り、その辺に投げ捨ててから一本吸おうと中を見たとき・・・
あった。
自分の目を疑った。
確かに、佐藤が言っていたように、1本だけ赤いタバコが入っていたのだ。
「なんだよ、これ・・・」
そのときだ、バババババババという何か空気を切るような音が聞こえてきた。
そして、自分の体が突然何かに引き上げられたような感覚に襲われた。

「おめでとうございます。あなたは、タバコが人体への影響を調査するためのサンプルに選ばれました。国民健康推進法第99条により、あなたはこの国で保障された人権を失い、動物実験対象として扱われます。国民健康推進へのご協力をお願いします。」
ヘリコプターに下げられた鋼鉄のワイヤーでできた網に囚われた俺に、無機質なアナウンスが流れてきた。
おい、なんだこれ!? 誰か!!! 助けてくれーーーーーーーーーーー!!!

215 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 10:02:05 ID:E/BrrBYv
都市伝説っぽいな

216 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 14:02:31 ID:Q1QqEdSS
そういう感じを狙ってみました。「赤い」って、ホラーな色ですよね。(赤いロウソクとか、赤い靴みたいな)
オチをもうすこし絶望的な感じの表現にできなかったかをちょっと悩み中・・・

217 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:01:34 ID:rR9PL2eX
つ「磨製石器」

218 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:21:26 ID:ikVoAtvW
「警察」

219 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/25(土) 21:22:49 ID:8xDUWnV1
「プロミネンス」

220 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:09:28 ID:TgubF2+Z
 201×年、日本。08年の事件に端を発した銃刀法規制の締め付けはとどまるところを知らず、ついに金属製の刃物をすべて規制するに至った。
はさみですら携帯は禁じられ、目的不明の「凶器」携帯で勾留される人々は後を絶たない。主に学童を対象とした点数稼ぎの検問が各地の学校周辺で見られるに及び、
国民の怒りはリミットを突破して赤く高く噴きあがった。だが、与党はどこ吹く風とばかりに受け流しつづけ、今回、35回目の改正案審議に入ることとなった。

「現場の小島さん?」
「はい、こちら小島です。現在、議事堂前より生中継でお送りしております。ご覧頂けるでしょうか、このような状況です!」
「すごい人の数ですねー。みんなしゃがんでいるように見えますが、何をしているのでしょうか?」
「ではこちらのおじいさんに聞いてみましょう。何をなさっていらっしゃるんですか?」
「これは石ですよ、今度金属の携帯が全面的に禁止になるでしょう、それに対する抗議の意味を込めて、こうして路面で石を磨いてるんです。
石しか使えないなんて不便な世の中じゃありませんか。何を考えているんでしょうね」

翌日、改正案に新たな規制対象素材が加わったことが報じられることとなった。天然石である。

221 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:17:01 ID:2c1sazEI
蒟蒻畑販売禁止を考えると、十分ありえそうで怖い。
発想が面白かったです。

踏まえて、御題に「法律」

222 名前:10/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/26(日) 00:18:26 ID:8bTVjJPr
一瞬プロミネンスがどこで改修されてるのかわからなかったw
うめえ

223 名前:10/26に名無し・1001投票@詳細は自治スレ:2008/10/26(日) 00:18:53 ID:8bTVjJPr
んじゃ俺は「チロルチョコ」で

224 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 00:37:46 ID:ED10B7nn
【かがみ】で。
*鏡でも柊かがみでも可

225 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 01:07:32 ID:jA4+C+eU
>>224
お前それ後者を期待しているんじゃないかと小一時間問い詰めたい

226 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 01:11:10 ID:TgubF2+Z
法律、チロルチョコ、柊姉妹ね把握wwwwwwwwwwww

227 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 01:22:28 ID:2c1sazEI
すげぇ! この題材で書けるとは!!!

228 名前:本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 01:46:10 ID:TgubF2+Z
書けるかwwwwww
でも渡来してみようw

229 名前:本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 02:24:25 ID:TgubF2+Z
昼下がり。
意外に風は冷たい。日差しがある程度あるとはいえ、秋の終りを感じさせる肌寒さだ。さあ、俺は絶対にやってやるぞ。
拉致してきた昌平を見ながら、そんなことを思う。法律的にも倫理的にも正しいことではない。だが、目的を遂げるためだ。昌平は
ぎりぎりまで水を満たしたバケツの中でよたよた動いたり、止まったりと暢気なものだ。
可愛がられていたのだろう、寄ってきて人の顔を見上げるしぐさにはどことなく人ずれしたものが感じられないでもなかった。
が、容赦するわけにはいかない。俺は姉に脅迫文を書いた。「金品の要求」だ。
三日後、俺は目的を達成した。さあ、これを見るがいい。法を犯し人の道を外れて手に入れた五十円玉の力!
遠からん者は音に聞け、近からん物は眼にも見よ!身を賭して得た身代金で購入した、
チロルチョコだ!早速口に含む。
ん?
これは……この恍惚は……まさしくチロルチョコ……。


なんかごめん。やっつけにもほどがある

230 名前:本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 02:28:30 ID:TgubF2+Z
ttp://bewaad.sakura.ne.jp/20070214.html
書いてるときこんなものを見つけてニヤニヤ(ry

231 名前:本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 02:32:51 ID:8bTVjJPr
201x年、住宅バブルの崩壊から始まった世界恐慌を人類がなんとか乗り越えて早数年。
職を失ったサラリーマンは昔の仲間と共に企業を興し、農家はせっせと畑を耕し、誰もが皆勤勉に働いていました。

そんな中、日本という小さな島国で一つの法改正が行われたのです。
100年以上の間、同国で使われ続けてきた単位「円」を廃止し、これからは「チロルチョコ(従来の30円に相当)」を用いるというものでした。
数々の混乱が開始以前より予見されてはいましたが、
これにより恐慌で大分安くなったとはいえ、依然開いていたドルやユーロとの差がほぼ無くなるため、世界各国は諸手を挙げて歓迎をしたのです。


「ちょっと、つかさつかさ!かがみが……」
「え、なにが……って真っ黒になっちゃってるね……お姉ちゃん」

電車内でどうやら姉妹らしい、女子高生の二人組みがなにやら騒ぎ声を立てていました。
隣に座ったおじいさんが眉間に皺を寄らせています。
大方、どちらかの女の子が持つ財布の冷却機構が壊れてしまったのでしょう。
女の子は必死になって、かばんの中をティッシュで拭っているようでした。

綺麗に取るのは難しいだろうなあ。ご愁傷様です。
私は心の中でつぶやきます。
実は私もついこの間やらかして、手帳を一つふいにしてしまったばかりなのです。
必死になって色々な方法を試してはみたものの、溶かしてから時間が経っていたせいもあり、
結局元通り使えるレベルにはなりませんでした。

とまあ、私が心の中で同情していると、一人の男が二人に話しかけに行くのが目に入りました。

「ねえねえ君たち、困ってるならこのシート使う?」
「え?」
どうやら耳にも入ってきたようです。断じて盗み聞きではありません。断じて。

「やっぱ女の子だったらカガミは大事でしょ?これだと一発で綺麗になるよ」
「あの…私は……」
押しが強すぎる、そう感じた私は彼を諌める為に重い尻をシートから浮かせました。

「そのかわりといっちゃなんだけどお茶に付き合ってくれない?どこで降りるの?」
「だから……」
「いいからいいから、遠慮しなくていいっつーの。な、これ使ってお茶でも飲んで遊びに行こうよ」
「ふぁ……はいそこまで。彼女嫌がってますよ」
ちょっと緊張して噛んでしまいましたが私がそう言いきると、

「なんだよあんた。関係無いなら引っ込んでてよ。俺は彼女に救いの手を差し伸べてるだけなんだぜ?」
とまあお寒い答えが返ってきました。
ついむかっときて
「どこが救いですか。困っている人相手に下心1000%じゃないですか」
そう私が言った瞬間、
「私はチロルを溶かしたりなんかしていません!」

結構な大声を彼女が発したので、二人とも声の元を同時に向くことになりました。
うう、隣に座っているおばちゃんの視線が痛い。
「またまた、そんな事言っちゃって。さっきそっちの子と話してたじゃない。聞こえたよ」
そうです、確かに私にもそう聞こえました。

「それは…私の姉のことです」
「え、姉はこっちの子ですよね。さっき聞こえましたよ?」

どっちの味方なのか分からないようなことを私は言いますが、それにカバンをこすっていたほうの女の子は携帯を出し、こういったのです。
「これがお姉ちゃんです。プリントの上で居眠りしちゃったので真っ黒になっちゃってます。これでいいですか?」

その時丁度電車が駅につきました。
私と、おそらく彼もでしょう。真っ赤になって予定より数駅早く電車を降りてしまいました。

232 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 02:32:56 ID:2c1sazEI
>>229
その勇気に、僕は敬意を(ry

あれ? 「かがみ」は?

233 名前:本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 02:33:13 ID:8bTVjJPr
筆力が無いのとオチが読めるのとらきすた読んだ事ないから結構適当なのは仕様です><

234 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 02:42:55 ID:2c1sazEI
>>231
「財布の冷却装置」っていう、この世界観ONLYのギミックに惹かれた。
でも、なんでツカサは鞄拭いてたんだろう?

235 名前:本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 02:48:07 ID:8bTVjJPr
っ「眠たいから」

236 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 02:53:45 ID:cVla6xxt
ワラタ

237 名前:本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 03:01:58 ID:MwE/j7wS
 日中は混雑するコンビニも、深夜になれば客もいなくなり、静かなものである。
 だが店員が楽なわけではない。女はため息をつきながら、レジ前に黙々とお菓子を並べていた。
どれもこれも煌びやかなパッケージングをされたチョコレートだ。
 二月十四日のバレンタインに深夜バイトを入れてしまったことを、女は死ぬほど後悔していた。
ああ、なんということなの。こんな面倒が待っていたなんて――。
 そうなると何事も気になってくるもので、左右に垂れるツインテールが邪魔に感じてくる。
なんで今日こんな髪型にしてしまったのかと自分を呪いたくなる。
 しかしそう思ったところでどうする事もできない。諦めてもう一度ため息をついたとき、
自動ドアの開閉音がして、女は慌ててレジについた。客である。
 客は男性で、携帯を弄っていた。顔は悪くないが、少し横幅がある。
 ――せめてもう少し格好いい男がくれば、気分も晴れるのにな。
 あくびを噛み殺しながら客を待つと、男はしばらく迷った挙句、チロルチョコを一つ持ってレジにやってきた。
「いらっしゃいませ、30円に――」
「あの、すみません、ちょっとラッピングしてもらっていいですか?」
 女の言葉を遮って男がそう願い出た。
「少々お待ちください」
 ――なんでチロル一つにラッピングをしないといけないのよ!
 舌打ちしたくなる気持ちを抑え、代わりに少しだけ客を睨んでから包装用の袋を取り出す。男を見ると、再び
携帯を弄っていた。気持ちは分からないでもないが、レジで弄るのは迷惑だな、と思いながら、女は手早くラッピングをすませた。
「お待たせしました」
 包装したチロルを男に手渡す。その瞬間、男が叫んだ。
「かがみん! かがみんからチョコ貰った! 貰ったおフヒヒヒヒ! うっひょー、オラワクワクしてきたぞ!」
「ひっ!?」
 女が驚いて声を上げるが、男はすぐに押し黙って、携帯を再び弄りだす。
 買い物が終わったにもかかわらず動かず、男は時折笑い声を上げ、女をチラチラと見ながらコンビニ内をうろつきまわっていた。
 ――怖い!
 女は気味が悪くなり、こっそり警察を呼んだ。

 駆けつけた警官により、男はその場で取り押さえられ、パトカーで交番へ連行された。
 後で女が警官から聴いた話によれば、最終的に公務執行妨害で逮捕となったという。そしてその瞬間まで、
男は携帯を握り続けていたとか。
 没収された携帯には、
「うはwwwwwなんか>>72したらポリスメン怒ってるwwwwマジで逮捕ク」
 という意味の分からない文面が残っていたそうだが、警官は何が彼をそこまで駆り立てたのか、
動機が理解できず困っているらしい。

238 名前:本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 03:16:38 ID:TgubF2+Z
>>232
つ「アクロスティック」

239 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 08:01:22 ID:JTeMyJQF
俺も書いてみる
お題くれろ

240 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 08:39:54 ID:ED10B7nn
ひぐらし

241 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 09:20:58 ID:jA4+C+eU


242 名前:本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 09:54:41 ID:TgubF2+Z
泡立て器

243 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/26(日) 18:12:40 ID:JTeMyJQF
承知、「ひぐらし」「硯」「泡立て器」ね。

244 名前:ひぐらし・硯・泡立て器 1/5:2008/10/26(日) 23:23:11 ID:JTeMyJQF
「失礼します」
 ノックをし室内に入ると、数人の男たちに迎えられた。
 首相、財務相、経産相をはじめ、この国の政界財界の中枢を担うお歴々が顔を連ねてい
る。
「やあ博士、お待ちしておりました」と首相。
 促され、私と助手はソファに腰を下ろす。挨拶もそこそこに、大臣の一人が本題を切り
出した。
「知っての通り我が国の経済は、現在、危機的な状況にあります。現状を打破するべく、
高名な博士のお知恵を拝借しようと、こうしてお呼び立てした次第です」
 私はうなずく。所得の減少、物価の上昇、過去最低を記録した株価に、過去最高の失業
率……不況を超え恐慌と呼ぶにふさわしい状況だ。
 若者は職に就けず嘆き、老人は破綻寸前の社会保障制度に絶望する。まさに、国全体が
『その日暮らし』をしているかのような不安定な状態。
 もはや、政治家だけの力ではどうすることも出来ない。そのため、各分野の権威が集め
られ、問題への対策を考えることとなった。私もその中の一人というわけだ。

245 名前:ひぐらし・硯・泡立て器 2/5:2008/10/26(日) 23:26:07 ID:JTeMyJQF
「さて、私の専門は人間の行動心理についてです。思いますに、こたびのような不況の一
番の原因は、消費の低迷です。人々は先行きに不安を覚え、金を使わなくなる。すると金
の流れは停滞し、経済は悪化するばかりです」
 私が説明すると、大臣の一人が苛立った様子で声を上げる。
「そんなことは中学生でも知っている。時間はあまり無いのだ、前置きはいいから結論を
手短に話したまえ」
 まったく、物事には順序というものがあるのに。これだからお偉方は……
「まあ、そうあせらずに。おい君、あれを」
「はい、博士」
 隣にいる助手に促し、彼の持つアタッシェケースを机の上に置かせる。私は蓋を開け、
中から取りだしたものをみなに見せた。
「それは……何ですかな? 金の延べ棒のように見えますが」と大臣。
 私が手にしているのは、長さ十センチ程度で黄金色に輝く物質。しかし、これは金では
ない。
「これは、ある種の植物の持つ成分を抽出し、精製して固めたものです」
「で、それが何だと言うのだね?」
「この成分を人間が摂取すると、物欲が増大します。購買欲に取り憑かれ、消費行動に走
るようになるのです」
 私は続ける。
「つまりですな、この薬を食べ物や飲料水に混ぜ国民に採らせれば、消費を促し景気回復
の一助とすることが出来るのです」

246 名前:ひぐらし・硯・泡立て器 3/5:2008/10/26(日) 23:30:39 ID:JTeMyJQF
 話を聞いていた面々は、驚いたように顔を見合わせる。
「そんなことが本当に可能なのかね?」
「はい、臨床データは十分に取ってあります。また、人体への毒性もまったくありません」
 みな感嘆する。しかし、疑問を口にする者もいた。
「だがなあ、そんなものは一時しのぎにすぎないのではないかね? 無理矢理に需要だけ
を増やしても、それは実体の無いバブル経済と同じだろう」
 私はそれに答える。
「たしかにその通りです。この薬は、バブルを生み出す『景気の泡立て器』といったとこ
ろでしょうか。しかし、新たな経済の流れを生み出すきっかけにはなります。まあ、その
後は皆様の政治・経営手腕次第ですな」
 彼らは悩んでいるようだったが、それまで黙っていた首相が口を開いた。

「よし、覚悟を決めよう。このまま手を打たずにいれば、この国は確実に崩壊してしまう
だろう。巧遅は拙速に及ばずだ、早急な決断をせねばならん」
 その言葉に、一同は納得したようにうなずく。首相は続ける。

247 名前:ひぐらし・硯・泡立て器 4/5:2008/10/26(日) 23:33:34 ID:JTeMyJQF
「では、まずは我々が飲んでみようではないか。自分たちで試してもいないものを、国民
に押し付けるわけにはいかんだろ」
 この男、メディアからは無能無能と叩かれているが、存外、骨のある男なのかもしれな
い。
「感服しました。では、さっそく用意するので少々お待ち下さい」

私はアタッシェケースからシャーレを取り出し、手元のコップの水を注いだ。そこに先ほ
どの『延べ棒』を浸し、底に擦りつけ溶かしてゆく。硯を使い、習字の墨を仕上げるとき
の要領だ。
 ほどなくして、シャーレ内の水は金色に染まる。スポイトでそれを吸い上げ、一同のコ
ップの水に数滴ずつ垂らして回った。
「これで出来上がりです、どうぞお飲み下さい」
 そう促すと、彼らはおそるおそる飲み干した。



 数週間後、私はいつものように研究に没頭していた。すると、助手が血相を変えて飛び
込んできた。手には今日の新聞を持っている。
「大変です、博士!」
「どうしたんだね、そんなに慌てて」
「我が国が……A国との開戦に踏み切りました!」
 差し出された紙面を見て、私は絶句した。近隣国であるA国とは、これまでも様々な問題で揉めていた。しかし、いくら何でも戦争とは……

248 名前:ひぐらし・硯・泡立て器 5/5:2008/10/26(日) 23:35:55 ID:JTeMyJQF
「一体なぜこんなことに?」
「それが……どうやらあの薬のせいみたいなんです」
 その言葉で理解した。豊富な資源に恵まれたA国は、首相たちから見れば喉から手が出
るほどほしい存在だ。
 それにA国は、我が国に対して度重なる威嚇行動を繰り返し、挑発を続けていた。
「買うは買うでも、売られた喧嘩を買ってしまったというわけか。たしかに、戦争は究極
の消費行動とも言えるが、何と愚かな……」
 もちろん、薬の開発者である私にも責任はある。目の前が真っ暗になった。
「博士、この先どうなるのでしょう?」
「世論が反戦に動くことは期待できんな。あの薬は、すでに水道水に混ぜられ、多くの国
民が口にしている。今や誰も、この戦争を止めようという気にはならないだろう。何とい
うことだ……」
 結果がどうなるのかは分からない。ただ一つ確実なのは、勝っても負けても泥沼で、得
るものなど何一つない、ということだろう。
「この国もおしまいだ。何もかも水の泡だよ……」

249 名前:本日23:59まで予備投票@名無し・1001スレ:2008/10/26(日) 23:46:44 ID:TgubF2+Z
まさか5レス分も書くとは
乙でし

250 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 00:18:41 ID:GHD2KoXo
うまいですね。

話の中の国が、現在のアメリカを指してるように思えてドキドキしてしまいました。
あの国、経済のために戦争するから。

251 名前:11/2に名無し・1001本投票!:2008/10/27(月) 00:24:46 ID:fDPkmhb5
たしかにwやりかねんwww

んじゃ次は「いなりずし」で。

252 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 00:30:02 ID:thtrjdfO
じゃあ「アクロスティック」を

253 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 00:30:34 ID:j4NaGrbN
「クヌギ」で

254 名前:アスカ:2008/10/27(月) 08:03:57 ID:PpZehDo8
感想レスが二つしかつかないようじゃこのスレも終わりね!

255 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 13:00:08 ID:+SHNCmQn
むしろ感想が書かれるようになって喜ばしい件について

256 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 20:15:44 ID:CL0g2BNI
>>254
二つしかって贅沢すぎんだろ
贅沢すぎんだろ……

257 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 20:31:31 ID:WyLyaP2B
何書いてもGJつきまくる板で褒められるよりも、スルーや殺伐がデフォの板で褒められる
方が実は嬉しかったりする。

メチャメチャ厳しい人たちが不意に見せた優しさのせいだったりするんだろうね。

258 名前:11/2に名無し・1001本投票!:2008/10/27(月) 20:41:25 ID:fDPkmhb5
そう、それがツンデレです

259 名前:アスカ:2008/10/27(月) 21:32:44 ID:PpZehDo8
いや……あたしはそれじゃ満たされないの
シンジ……あたしをもっと見て、もっと誉めて……ねぇ?
本当にあたしのこと好きなの?毎日好きって言ってくれなきゃ伝わらないわ
あたしのこともっと愛しなさいよ……じゃないと……あたし、アンタを殺しちゃうかもしれない
そしてあたしも死ぬの。そうすれば永遠に一緒にいられるでしょ……?
ねぇ? シンジ……

260 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 21:47:59 ID:thtrjdfO
アスカうぜえええw

261 名前:いなりずし、アクロスティック、クヌギ:2008/10/27(月) 22:58:49 ID:GHD2KoXo
いつもの帰り道、狐獣人の仔がふと、頭上に何かが実っていることに気づいた。
「なにかしら、昨日までは何も無かったはずなのに?」
リス族の様に、彼女は昨日に木に登り見てみると、そこに実っているのはクヌギの実だった。
「ずいぶん沢山あるわね。ちょっとオヤツにしようかしら。」そういって取ろうとしたとき・・・「キャッ」
シリから落ちてしまい、イタタタタとシリを擦る。「きっとあの実は渋いに決まってるわ。」と毒づいて帰ったそうな。

262 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 22:59:59 ID:GHD2KoXo
とりあえず、萌えは叩き潰しておきました。

263 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 23:01:16 ID:thtrjdfO
GJ

264 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 07:44:20 ID:oZWpSRfM
じゃあお題出しとく
「脅迫電話」

265 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 08:52:04 ID:wFKjtyi8


266 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/29(水) 09:57:01 ID:VylrybLv
「琵琶湖」

267 名前:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/30(木) 15:03:49 ID:pSH5gXTw
>>257
微笑みの爆弾か。懐かしいな

268 名前:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/30(木) 22:19:56 ID:ZwNhsNeD
あーりーがとーごーざいーーーますっ

269 名前:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/31(金) 07:55:40 ID:L4Pwb6Yr
じゃあお題
「ありがとうございます」

270 名前:名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/05(水) 01:38:42 ID:vB9hZp4W
お題消化でもしようかなage

271 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 22:31:59 ID:aDdBHlDb
書いてみました

「猫・琵琶湖・ありがとうございます」


嘉永3年というから、1850年ごろのことである。
現在の福岡県にあたる黒田藩は大江町のあたりを、何やら思いつめた面持ちで歩く侍が一人。
名を石久部園斎という、身の丈六尺あまりの偉丈夫である。
この男、近ごろ藩主黒田長元の命を受け御様御用、いわゆる首切り役人に任ぜられることに
なっていた。園斎は柳生の名手であり、首切り役人ということで地位こそ高くはなかったが、
一人首を切るごとに半両の手当てが出るという。元は貧乏侍の出自である園斎にとっては文句
のつけようもない待遇である。
しかし、園斎は腕こそ確かであったものの、齢五十に至るまで未だ人を切ったことがなく、い
ざお役目という段になって仕損じては如何にしたものか、と、このところそのことばかりを考
えていた。

その右手には風呂敷包みを提げており、先刻から、それがもぞもぞと動いている。
園斎は家に戻ると、家人の誰も入らぬように言いつけて、畳を敷いて道場のようにしている
土蔵へと閉じこもってしまった。そこには擦り切れた藁の座布団が一つ。園斎はそこに腰掛
けると、風呂敷包みを静かに置いて結びをほどく。
三毛猫である。近くの地蔵堂の中で眠っていたものを連れてきたのだが、風呂敷の中が存外
に居心地が良かったものか、丸まったまま眠っている。園斎はそれを静かに見下ろし、すう
っと右腕を脇差に添えた。

園斎はこの猫を斬るつもりであった。彼とてもそのような所業を躊躇わぬでもなかったが、
それ以上に、役目を前にして手が損なうことが恐ろしく、また、失敗を恐れる自分自身の
弱さが腹立たしかった。

静かに眼を瞑り、猫の息遣いを嗅ぐ。どのように刀を抜き、どのように打ち据えるかを考
えた。猫が急に動いたならばどうするか、刀が畳に食い込まぬためにはどう打てばよいか。
そのような事柄が浮かんでは消え、やがて喝と目を見開いて刀を抜かんとしたならば。

272 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 22:33:27 ID:aDdBHlDb
どうしたことか、周囲は白く霞んでいた。

さしわたし十間もない土蔵は壁も見えず、畳の目も分からず、あたりには綿のように濃い霧
が漂っている。さしも偉丈夫も恐れおののき、ゆらゆらとたゆたう霧の海を見渡すしかな
かった。
よくよく見れば、霧の下は水のようだった。朝もやにけぶる琵琶湖のごとき場所である。
冷やりとした空気が満ちており、わずかに耳に届く水の音。藁の座布団の一枚下は底なし
の淵となっていた。
ふと視線を前に戻せば、風呂敷の上に寝そべった猫が、頭だけをもたげて園斎を見ている。
その目は赤々と妖しく光り、わずかに見上げるその顔は、怒りとも悲哀ともつかぬ曖昧な
面持ちで、だが少なくとも目の前の侍を恐れてはいなかった。その顔からは何も読み取る
ことができず、それゆえにあらゆるものが詰まっていた。

どれほどそうしていただろうか。やがて園斎は完全に色を失い、刀から手を離した。
瞬間霧は引いてゆき、土蔵の壁がどこかからやってきたかのように視界に現れ、瞬く
間にそこは畳敷きの間に戻っていた。
園斎は唇を震わせながら立ち上がり、ゆっくりと歩いて土蔵の扉を開け、自分は横に
それて、どうぞ先へ行ってくれ、というような手振りをした。
すると三毛猫は二本の足で立ち上がり、ひょこひょこと、どこか滑稽さすら感じさせ
る動きで土蔵を出て行く。
そのきわに園斎を見上げ。
ありがとうございます、と明瞭に言った。

園斎はふすまのように蒼白になり、肝を潰してその場にへたり込んだという。
後にこれは久留米の化け猫が流れてきたものではないかと語られ、今でも園斎の屋敷
跡には、化け猫を鎮める小さな祠が立っているという。

273 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/12(水) 23:31:09 ID:bAFejmkb
すごっ、よくまとめれたな……

274 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 02:50:23 ID:E161Ht6P
しかも面白い…。
見事な小咄になってるじゃないですか。

275 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 02:51:29 ID:IVoiyvcA
これは素晴らしい

276 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 09:14:03 ID:cmdXCI4c
次のお題plz

277 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 11:21:46 ID:trmt4Boz
>>271-272
おおお、これはいいねー!
語り口も素敵でGJすぐる

278 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 01:18:49 ID:ZYx/xAEd
「ネトゲ」

279 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 11:59:00 ID:XaBrVNCY
『チョココロネ』

280 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 12:12:21 ID:feuxTQLl
「保険金殺人」

281 名前:1/2 ◆wT37mzglpY :2008/11/16(日) 05:07:57 ID:W00Gissi
 チョコとコロネ、そしてピッツァは夫婦だった。というと奇妙に聞こえるが、むろん本名ではないし、
三人ひと組で家庭を作っていたというわけでもない。要するにこういうことである。
 某県某市にある若い夫婦がいた。二人には幾年も子供がなく、互いに少し焦りを感じはじめて
いた。二人がもっとも恐れたのは夫婦仲が冷えることだ。ある日、妻がネットで面白そうなものを
見つけた。ネットゲーム。若いカップルがひとつのチョココロネを半分こして食べるように、仲良く、
いつまでも……そんな希望を込めて、ふたりはそれぞれ自分のキャラクターに、チョコとコロネと
名づけて遊んだ。
 最初は上手くいった。仕事で毎日帰りが遅く、妻との共通の話題がなかった夫も、夜の三十分で
素敵なデートを楽しむことができた。まるで学生時代の二人のように、いや、そのころ夢見た
想像上の二人のように。夫は頼りになる青年で、妻は可愛らしい娘だった。オンラインの世界は、
まるで夢みる仮面舞踏会だったのだ。
 だがそれも長くは続かない。レベルが上がると、なにをするにも時間がかかるようになった。夫の
生活サイクルでは、なかなかゲームにログインする時間がとれない。その反対に、専業主婦である
妻は、より長い時間をネットの世界で消費するようになった。
 コロネに友達ができた。毎日昼間からログインしている青年で、まだ学生だという話だった。彼は
強力なキャラクターを持っており、二人はゲーム内でつねに一緒に行動するようになった。その話を
すると、夫はあからさまに不快そうな顔をした。ほどなく妻は夫の嫉妬に気づいて、それが面白く
なった。何年も忘れていた感覚だ。彼女は青年、ゲーム内ではピッツァ、に既婚者であることを
告げずに、毎朝夫が出勤したあと、若い頃に渋谷や原宿で結婚前の夫とデートしたような感覚で、
毎日のようにピッツァと遊ぶようになった。ピッツァはいつもそこにいてくれた。そして夜は生き生きと
した顔で、生涯の伴侶を誓う前のお転婆な娘のように、夫の心の微妙なささめきを楽しんだのだ。
 だが妻も馬鹿ではなかった。これでは夫婦仲を温めるために始めたネットゲームが、逆にそれを
冷やしてしまうことには気がついた。しかし彼女が冷静な判断力を保っていたかというと疑問だ。
なにせ彼女は夫の嫉妬を和らげるために、青年を彼女の『お友達』として夫に紹介するという愚を
犯したのだ。


282 名前:2/2 ◆wT37mzglpY :2008/11/16(日) 05:08:48 ID:W00Gissi
 ある日曜日の朝、三人は森の中で顔を合わせた。コロネとピッツァがいつも遊んでいる場所だ。
だがそこは夫のレベルに見合っていなかった。コロネとピッツァは、チョコの知らないこの楽しい
狩り場を『案内してあげる』といった。ピッツァは前面に立って闘い、コロネはそれを支援し、チョコは
ただその光景を眺めることしかできなかった。その夜、夫はネットゲームをやめようと提案した。
 この反応は妻には予想外だった。『素敵な場所』を『案内してあげた』のに、『嫉妬に狂って』、
自分にまで引退を迫る『身勝手で器の小さい男』、それに比べて、ピッツァは。またピッツァに自分が
既婚者だとばれたことは、彼女にとって取り返しのつかない損失だった。すべては夫のせい。
 結局、チョコだけが引退することになった。妻は彼女にとっての最大限の譲歩、つまり夫が帰って
きたらゲームを中断するという条件で、なんとか引退を回避した。夫は妻がオンラインで何をして
いるか、把握する手段を失った。そして妻は夫の知らぬ間に、ゲーム内でピッツァと結婚式を挙げた
のである。またゲーム内で冗談めかして、旦那がいつまでも帰ってこなければいいのになどと
言うようになった。コロネとピッツァは新居を建て、内装を相談し、庭の手入れをし、ペットを飼った。
ネットゲームの世界にないのはただ一つ、性生活だけ。妻はそれだけは空想で補うしかなかった。
夫の体に、会ったこともない青年の肉体を重ねて。
 だが、女の反応が今までと変われば、男も敏感に気づくものなのだ。
 ある夜、セックスの最中に、夫は冗談めかして妻の首を絞める振りをした。警告だった。だが妻は
これを別な意味に取った。彼女が無意識に目を塞ぎ、ある意味楽しんでもいた巨大な背徳感は、
夫の行為を本気混じりのものと解釈させたのだ。妻は身を守る必要を感じた。夫の凶悪な行為を
ピッツァに話し、助けを求めた。だがこの二人も、自分たちの関係が反社会的であり、夫を現実世界で
糾弾しても不利なことを十分に理解していた。この価値観の二重性は、ネットゲーム廃人と呼ばれる
人種には珍しいものではない。
 二人は冷静に計画を練った。夫とふたりでトレッキングに行き、山中で夫だけ沢に落ちる。青年の
協力があれば、そんな『状況』を演出することはわけもなく思えた。保険金が出るのよ、そしたら
暮らしには困らないし、またずっと一緒に遊べるわ。分け前だって。
 青年がこの話に乗ったのは、金よりも生身の女の体を求めてのことだと、のちの尋問で明らかに
なっている。
 そして夫は死んだ。だが二人の予想に反して、ゲームログからコロネとピッツァの陰謀は容易に
暴かれた。夫の変死を捜査した警察は、彼の同僚から、夫が生前、妻のネットゲーム中毒にかなりの
苦言を吐いていたことを聞き取っていたのである。『ネット夫婦』はあっというまに逮捕され、それぞれ
相応の刑罰を受けた。
 妻と青年は、現実世界の『恋人』が想像していたような異性とは違ったことに、やり場のない空しさを
感じながら服役した。逮捕前に彼らは一度だけ寝たが、それは完全に見知らぬ誰かとのセックスだった。
二人が会ったのはそれが最後である。
 そしてオンラインの世界には、管理する者のないコロネとピッツァの家だけが残された。それは花で
可愛らしく飾られ、正確に五日サイクルで少しずつ老朽化していった。

おわり

283 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 06:45:18 ID:Szb9Q0TS
乙。小説というよりまるで説明文だな。読むの疲れたけど惰性で最後まで読んだよ。
俺が思うに、この話が微妙なのは『保険金殺人』のせいだ。
こういう可能性を狭める単語は出すな。素材として不適切。

284 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 10:17:05 ID:2ka2dh1r
最後のこの一文がたまらなく好きだなあ
>正確に五日サイクルで少しずつ老朽化していった。
なんとも言えない気持ちになる

285 名前: ◆wT37mzglpY :2008/11/16(日) 20:55:41 ID:W00Gissi
>>283,284
ありがd
なんかね、冷たくて硬い文章を書いてみたくなったんだよ。

次のお題どうぞ〜

286 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 21:09:52 ID:2ka2dh1r
んじゃ「ワックス」

287 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 21:25:57 ID:W00Gissi
「三番アイアン」

288 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 21:27:35 ID:Wut6JmHF
>>281-282
淡々としてるところが逆に切なさを煽るね。GJ

「リモコン」

289 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 21:28:24 ID:n0+a4iH3
んじゃ「祭」

290 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 20:57:22 ID:vjdRcdeA
>>289
4つ目出すなカス。これは無効で。

291 名前:三番アイアン、リモコン、祭:2008/11/17(月) 23:45:26 ID:Y9NS+LPI
「博士、お願いした例のアイアン、完成しましたか?」
「ああ、もうできとるよ。」
そう言って、博士は一見普通のゴルフクラブを取り出した。
「・・・見た感じ、普通のアイアンと変わりませんね。」
「ああ、軽量化・小型化に苦労したよ。しかし、だれもこれがリモコンで動くなんて思わんよ。」

私はゴルフクラブを製造する、中小企業の社長をしているが、最近の不景気のせいで親会社からの受注が減ってしまい困っていたのだ。
そんなおり、親会社の部長がゴルフ好きだと聞いて、より多くの仕事を受注するためにゴルフコンペに誘うことにしたのだ。
部長はゴルフが大好きだが、一つだけ問題があった。
それは、三番アイアンの扱いが苦手なのだ。

三番アイアンはゴルファーでも苦手な人が多いため、7〜4番を使用する人が多いが、
部長は何故か(おそらくうまく見せるための見得で)ここぞというときに三番アイアンを
使用して・・・・そして失敗するのが常だった。
そこで私は一計を案じた。それは珍品を作ることで有名な博士に、リモコンで動く三番アイアンを作ってもらったのだ。
それで私がうまく操作すれば、部長はご機嫌になり、受注が増えるというわけだ。

当日、私は部長に言った。
「部長、実はわが社で、新しいブランドのアイアンを作りまして。
是非とも部長に最終テストをして頂きたいんです。」
「そうか、君のところのアイアンとなれば、試さないといかんな。」
部長はそういいながら、私からリモコンアイアンを受け取った。
これで、部長がうまく打てば、わが社の製品の評価が上がるだろう。
私はほくそえんだ。

最終ホール、部長は三番アイアンを取り出した。
「では、君の会社のアイアンを使わせてもらおうか。」
ギャラリーのいるまえで、部長がアイアンをてにとった。
それを見て私はこっそりとリモコンをバッグから取り出し、操作をしようとした。
このリモコンで操作することで、ヘッドが自由な角度で曲がり、
どんな無茶苦茶な角度で打っても必ずジャストミートするという代物だ。
これのために大金をはたいたが、そこは先行投資。いずれ回収できるさ。

コンペを見に来たギャラリーが、スタンスをとった部長を見て静かになった。
私はミートする瞬間を見逃すまいと、目を皿のようにした。
そして、アイアンが振り下ろされた・・・・

ボキッ!!!

私の耳に届いたのは、ボールにインパクトする音ではなく、アイアンが折れた悲痛な音だけだった。
「なんだ、君のところのアイアンは、長すぎじゃないかね? こんな大事な場面で、なんて不良品を渡してくれたんだ! 君のところとの取引は考えさせてもらうよ!」
涙目になっている私に対して、部長は部長で、無茶苦茶なことを言い出した。

・・・・なんてこった!!!!!!

292 名前:ワックス・三番アイアン・リモコン 1 ◆16Rf2BBdUE :2008/11/18(火) 05:26:10 ID:9kkgyE/G
一ヵ月くらい前から、わたしの家にはいやなにおいが立ちこめている。
胸にくるような、鼻の内をぬるりと撫でるような、どうしようもなく人工的で、嫌味なにおいだ。
においの原因は知っている。しかし、どうすることもできない。ただ、待つだけ。いつかくる解放を、三月二十八日を――
なんて、理不尽な苦痛なんだろう?
わたしは鼻面に険悪な皺を寄せて、鼻の粘膜に残るいやな臭いを追い払うように、鼻息を吹いた。
もちろん、これでどうにかなるわけではない。息を吐けばどうしたって、この茶の間にいるかぎりは、この空気を吸わなければならないのだ。くまなく例の臭いで味付けされた、汚れた空気を。
「……アケミちゃん?」
不意にかけられた中年男の猫なで声に、わたしはおざなりに返事をした。
「なにか……気分が悪そうだね」
「いいえ」
音をひとつひとつ区切るように答えて、わたしは空騒ぎを続ける夕刻のテレビへ視線をやった。
夕食をとっている。家族の楽しい一家団欒の時間。そのはずの時間。だというのに、わたしと母の間に割り込むように居座っているこの男は、いったい何だというのだろう?
――白々しく問い掛けたところで、目の前の現実は変わらない。
この男は、母の再婚相手。わたしの父。紛れもないわたしの家族。


293 名前:ワックス・三番アイアン・リモコン 2 ◆16Rf2BBdUE :2008/11/18(火) 05:28:18 ID:9kkgyE/G
わたしは横目に、男の頭へ視線をやった。
50近い男の寒々しい頭頂部そのものよりも、それを覆い隠そうと躍起になって寄せ集めたらしい薄く惨めな髪の様子が、苛立たしいほどに見苦しい。
とにかく、ヘアワックスをつかい過ぎだった。広すぎる哀れな額がぎとぎとに油光りして、家中に安っぽい臭いが立ちこめるくらいまでヘアワックスを塗りたくる50がらみの男を、わたしはどうしても受け入れられなかった。
「アケミ」
母が、責めるようにわたしを呼んだ。
「お父さんがお話ししているでしょう」
無視したつもりはなかったが、うっかり聞き流していたらしい。わたしは男に視線をやり、軽くあごをしゃくってことばをうながした。
「……あ。だからね、アケミちゃん」
わたしの苛立ちがわずかに眉間のあたりに現れるくらいの時間をおいてから、男は半開きの口を慌てて動かす。
「今度の日曜日、ひまかな? お父さんといっしょに、どこか行こうか。車、出すよ」
「……」
冗談じゃない、と答えるべきか、前向きに善処します、とお茶を濁すかで、しばし迷う。
その沈黙を勘違いしたらしく、男はだらしない口元にぶよぶよした微笑を浮かべた。
「ゴルフ、知ってるかな? お父さんうまいんだ、少しなら教えられるよ」
「うふ、新しいクラブも買ったことだしね?」
母の少しいたずらっぽい、なんというか春めいた口調が、いやに耳に障った。
父と――わたしが中学校に入学すると同時に亡くなった父と同じようにこの男を扱う母が、わたしはたまらなく嫌になっていた。
大好きだった。そのはずだった。母も、この家も、私の家族も。
全部、嫌いになってしまった。家に立ちこめる強烈なヘアワックスの臭いが、わたしの大事なものをすべて汚したのだ。
「……気持ち悪い」
小さく、呻く。
あ、とつぶやいて、男はテレビのチャンネルを変えた。『世界の衝撃映像100連発』が、『劇的!ビフォーアフター』に切り替わる。
「た、たしかに、ごはんどきに見るモノじゃあなかったね」
わたしは視線を落とした。
愛想笑いと共に言う男の手には、10年くらいこの家にある、あちこち文字のはげ落ちたリモコンが握られている。
夕食時のチャンネル権は、父のものだった。
父の死後は、わたしにあった――母はあまりテレビを見ない人だからだ。
それが、いまはこの男にわたっている。
不愉快だった。
わたしはまだ受け入れていない。認めていない。その気もない。永遠にない。
だというのにこの男は。なにを平然と、そこに座っているのだ? なぜ猫なで声でわたしを誘うのだ? どうすれば――
「あ、ああ、無理かな、ゴルフ。受験勉強、いそがしいよね。無理かな」
どもり気味に言う男におざなりにうなずき、わたしは箸を置く。
(どうすれば――)
「ごちそうさまでした」
(この家を、わたしの家族を、元どおりにできるのだ?)
いくら考えたところで、とうていできっこない――そんなことはわかっていた。修理できないものは、もう捨てるしかないのだ。
胃を締めあげるようなワックスの臭いが、食後の鼻にずるずると這い込んだ。



294 名前:ワックス・三番アイアン・リモコン 3 ◆16Rf2BBdUE :2008/11/18(火) 05:30:28 ID:9kkgyE/G
*****

『三月二十八日までの辛抱だ!』
朝、中学校の制服に着替えるとき、わたしはいつも自分にそう言い聞かせる。
わたしの志望校は本州の進学校だ。寮もある。合格しさえすれば、入寮は三月二十八日から。
その日から、わたしは、この忌まわしい家のある九州を出て、ひたすら勉強だけをしていればよくなるのだ。
夢のような話だが、夢で終わらせるつもりはない。だから、この『呪文』を唱えれば、ヘアワックスの臭いでよどんだわたしの部屋にも、一陣の清涼な風が差し込んでくるような気分になれる。
今日は日曜だ。予備校の自習室は7時20分から開放される。
参考書と筆記用具をチェックしなおしてカバンに詰め、単語帳とハンカチとティッシュをポケットに入れる。
鏡に向かって、自分の顔を確かめる。見慣れた顔。幸いなことに父に似て通った鼻筋と、これも幸いなことに母に似てぱっちりと開いた目。
少しだけ、笑顔をつくる。顔がくしゃっとつぶれて目尻に三本のしわができるこの表情は、我ながらあまり美しくないのだが――父にそっくりだから、気に入っていた。
梳いた髪にほつれがないか、部屋に差し込む朝日にすかして確かめる。
今日も、とりあえず異状なしだ。肺に忍び込むよどんだ空気のことはつとめて考えず、わたしはカバンをとって、部屋を出た。
部屋のドアが背後で閉まるのと重なるように、耳障りな中年男の声が聞こえる。

……かし、アケミちゃんの……
……大丈夫なの?

声は、母の寝室から聞こえた。母とあの男が、こんな朝早くの寝室で、なにごとかを囁きあっている。
むかでの交尾を見るような不快さと、手がつけられないくらいまで進行した虫歯の穴を覗き込むような好奇心が、汚れた胸のうちでぞわぞわとからまりあった。
立ち止まって、耳を澄ます。

……大丈夫さ。栄転だよ。S市支店の規模はウチの社でもトップなんだ。
……そんな遠くに引っ越すなんて、大変じゃないかしら。今から準備したほうが……

S市。
心臓が、止まった。
S市。S市!
わたしの志望校がある場所だ。本州の、はるか遠くの、あの男がいないはずの!


295 名前:ワックス・三番アイアン・リモコン 4 ◆16Rf2BBdUE :2008/11/18(火) 05:36:41 ID:9kkgyE/G

……アケミちゃんのためだからね。ああ、万が一落ちちゃったら、蹴る用意はできてるんだ。
……あなたったら……そこまでしなくってもよかったのに。
……折角できた家族だからね。ばらばらにはなりたくない――

頭が真っ白になっていた。
聞いていられなかった。
聞きたくなかった。
忘れたかった。
消えたかった。
「あ……ああう」
変な呻き声が、喉から漏れる。カバンの重さにふらつきながら、わたしは玄関へ向かう。
逃げられない。離れられない。家族だから。父だから。娘だから。
(そんな……)
そんな。このいやな臭いを吸い続けなければならないなんて。あのいやな中年男の手にリモコンを委ね続けなければならないなんて。そんな。
(そんなこと、許されるはずが――)
玄関にたどりついた。よろめきながら靴をはく。
(何かあるはず。どうにかできるはず。どうにか)
焦っていた。靴ひもさえうまく扱えず、何度か蝶々結びをほどいてはまた結ぶ。
(……)
ふと、手が止まった。
玄関脇に、大きなゴルフバッグが立て掛けられている。
あの男のものだ。
靴ひものほどけたスニーカーをひきずって、それに近寄る。
あの男のものだけあって、強烈な例のにおいが染み付いている。鼻をつまみたくなりながら、わたしはバッグのファスナーを下ろした。
じゃら、と金属質の音が鳴り、中に詰められた数本のゴルフクラブが顔を出す。
あの男が居座る家に帰ってきて、あの男の臭いをかいで、あの男の声を聞き、場合によってはあの男に笑いかけることさえしなければならない。
そんな生活から、そんな毎日から、わたしが――非力な女子中学生である佐渡明美が抜け出すことのできる、たったひとつの方法。
(つまるところ……)
クラブのなかでもひときわ新しい、傷のないものを、両手にしっかりと握り締める。
(これしかない)
傷のないもの。
男の頭が完全に潰れるまで、曲がらずに使えそうなもの――
そう、これしかないのだ。
わたしは笑った。母の目に凶器を映して、父の笑顔で、笑った。




296 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 10:56:38 ID:/SDMFxE1
>>295
いいね!文章も上手いし、引き込まれたよ。
ただラストが残念。個人的には終り方としてどうかと思う。

297 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 11:12:58 ID:Fi/GHKtG
すっげぇ!
この書きにくい3つのお題が見事に織り込まれて潔癖な少女の嫌悪感がよく出てる
てか文章うまいな

298 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 14:17:43 ID:2c6+QWav
おお、こりゃ良作だわ。
にしても最近、お題がカオスだなw

299 名前:291:2008/11/19(水) 20:06:08 ID:5jIN/g6E
俺は無視かよ 氏ねw

300 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 01:15:36 ID:2zICapch
ごめん、完結してるとは思ってなかった

301 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 01:15:43 ID:8uW0PwcZ
>>299
感想が無いってのが感想だって気付けないの? 馬鹿なの? 死ぬの?

302 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 09:16:14 ID:PmJOZUI6
時々いるよな。
スルーされるのが許せないって奴。
流れで見逃されてるって事もあるのに、ワザワザそこまで引き戻すの。

過ぎた話はそこで終わりだよ。

303 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 10:34:23 ID:Q1y9MdXw
次のお題一つ目いってみようかな
「擦り傷」

304 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 13:10:43 ID:a+/0yHK9


305 名前:304:2008/11/20(木) 14:35:44 ID:a+/0yHK9
↑二つ目のお題ね、これ。

306 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 20:55:58 ID:Q1y9MdXw
三つ目こないかー
あげ

307 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 21:00:15 ID:t6fDi93T
じゃあ
「豆腐」

308 名前:「擦り傷」「狼」「豆腐」 1/2:2008/11/20(木) 22:28:25 ID:I6qAj6zT
てくてく、とことこ。

通学路を小さな女の子がひとり、元気に帰ってゆきます。

女の子のお気にいりは真っ赤な防災ずきん。

おかあさんが縫ってくれたそれを、女の子はとても大切にしていました。

クラスメートのいじわるな男の子によごされないように、毎日頭にかぶって学校にゆき、

家にも防災ずきんをかぶって帰ります。だから、女の子についたあだ名は「赤ずきん」でした。


かわいいおかっぱをふわふわゆらし。赤い防災ずきんをきょろきょろ。

そんな赤ずきんちゃんは、おとなの人にも人気者です。

今日は、お豆腐売りのおじさんが赤ずきんちゃんに目をつけました。

やあお嬢ちゃん、学校がえりかい。ふひひ。

赤ずきんちゃんは笑顔でごあいさつをします。こんにちは、ちんどんやのおじさん。

お豆腐売りのおじさんはチャルメラをぱーふーと吹き鳴らしました。

そうそう、駅前パチンコ開店よろしくねってちがうわ、ぼけ。

冷たい空気がながれて、赤ずきんちゃんとおじさんの心をさむくしました。

標準語をしゃべってばけていますが、おじさんは、かんさいじんという種類のいきものなのです。



おじさんの鼻息があらいので、赤ずきんちゃんにはふしぎです。

お嬢ちゃん、いい子だから。おじさんは目をちばしらせて言います。

お豆腐、買っていかないか。まだ今日いっこも売れてないんだ。

すると赤ずきんちゃんは、おおきくてつぶらな目からぼろりと涙をこぼしました。

おじさんはびっくりしました。こんなところをだれかに見られたら逮捕されてしまいます。

まって、お嬢ちゃんまって。どうしたの。まだなにも痛いことしてないよ。

赤ずきんちゃんは泣きながら言いました。かわいそうなおばあさん!

え、かわいそうなのはおじさんだよ。お豆腐売れてないんだよ。ていうかだれ、おばあさんって。

おじさんは当惑を隠せません。

309 名前:「擦り傷」「狼」「豆腐」 2/2:2008/11/20(木) 22:28:49 ID:I6qAj6zT

お豆腐売りのおじさんはおいおいと泣いていました。かわいそうな赤ずきんちゃんのおばあさん!

癌で高血圧で戦争神経症のPTSDで、おまけに梅毒とHIVと低血圧と、あと癌なのです。不幸すぎます。

赤ずきんちゃんは言いました。でもおとうふがあれば、おばあさんの病気はなおるかもしれないの。

そして、赤ずきんちゃんはさびしく笑います。

でもわたし、おかね持ってないから。おじさんのおとうふ買えないから。

なにを言うとるんや、みなまでいわすな。持ってかんかいどろぼうっ。

やさしいお豆腐売りのおじさんは、ボウルにいっぱいのお豆腐を赤ずきんに持たせてくれました。



てくてく、とことこ。

おじさんからお豆腐を巻き上げた赤ずきんちゃんは、元気に帰ってゆきます。

てくてく、とことこ。……べしゃっ。

赤ずきんちゃんは、ころんでしまいました。

あああああん。

赤ずきんちゃん、今度はほんとうに泣いてしまいました。てのひら、ひじ、ひざが真っ赤です。

お洋服もよごれてしまいました。

大切な、とてもたいせつな真っ赤な防災ずきんまで、白いどろどろによごされてしまいました。



赤ずきんちゃんは、泣きながら歩いていってしまいました。

ここまでの都合のわるい一部だけを、近所のおばさんが目撃していました。

一週間後、お豆腐売りのおじさんのおうちに警察の人がやってきました。

おじさんは、おばあさんが、おばあさんがと意味不明の供述をくりかえしました。

そうそう、そういえば赤ずきんちゃんのおばあさんは去年の冬に亡くなっていましたっけ。

おしまい。

310 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 22:34:19 ID:Q1y9MdXw
おじちゃん哀れwww
赤ずきんちゃんはどこまで本気だったんだろう……

311 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 23:02:32 ID:t6fDi93T
地味に巧いな

312 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 23:13:39 ID:a+/0yHK9
がらにもないこと言うけど、こういう文体は個性的で好きだがらあんたに惚れた

313 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 23:16:03 ID:I6qAj6zT
うひひ、お目汚しでございました
ありがとー

314 名前:擦り傷、狼、豆腐:2008/11/21(金) 00:44:16 ID:Uj4WnWqr
「母ちゃん!来た!狼!来たって!やばいって!」
台所の母親はハアーッと溜息をついて
「あのね健。ここ世田谷区よ?何が狼よ、バカじゃないの」
「危なかったんだって。噛まれそうになったしおれ」
「もうね、お前みたいな嘘つきは豆腐の角に頭ぶつけて死ねばいいよ」
「そんなの擦り傷にもなんねーよ」
「嘘の次は屁理屈か?二階行ってなさい!」

怒鳴り疲れた母親がテレビをつけると七時のニュース。
「東京世田谷区でAさんの飼っていた狼が逃げ出しました」
母親はせんべい片手に呟きました

「おお、かみよ」

315 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 02:39:23 ID:80mpeURp
誰が上手いこと言えとw

316 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 02:41:26 ID:vQ0Ibbtm
豆腐の角で頭ぶつけて死ねばいいで2つの御題をクリアするとはw

317 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 01:30:12 ID:pnOiRr66
お題くださいあげ

318 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 01:57:40 ID:26I7v5H6
んじゃ某スレに被せて「蜘蛛の糸」

319 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 04:16:41 ID:7zyMqM28
「海水浴」

320 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 07:22:46 ID:MN+A+pCf
「インク」

321 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 16:58:47 ID:Fz8oktc5
また関連性無くて難しいw

322 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 19:51:58 ID:pnOiRr66
書いてみました

「蜘蛛の糸・海水浴・インク」


たまに、よく分からない染みがあった。
建物の高さや、風向き、壁面の突起物の有無などによって多少変わるが、通常、
インクの染みは建物からそれほど遠くない地点に残る。
ところが、ごくごく稀に、かなりの助走と跳躍を行ったと見られる染みもあった。
それは大きな放物線を描き、染みにその勢いがわずかに残って、前方へ広がる扇型
となる。

そのような染みの主は、どのような心境であったのだろうか。海水浴を楽しむ子供
のように半ば浮かれ心地で、この世の有象無象から開放される喜びとともに跳んだ
のだろうか。
彼らは視界の先に何を見ていたのだろう。もし跳躍が救いを求める行為であるなら、
空には天から下ろされた蜘蛛の糸が見えたかもしれない。

私は清掃を続けながら。ずっと般若心境を唱えていた。
蜘蛛の糸を掴みそこなったインクの染みは、ゆっくりと大地の奥へ染みこんでいく。

323 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 19:56:11 ID:Fz8oktc5
なんでインク?
背景が気になってしかたないなこれは

324 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 21:38:32 ID:D8Bz0TGX
はぅ―――次のお題に行くのはちょっと待って!今、三分の二書き終えたとこなんだ。
遅くとも明日の昼には……

325 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 22:01:15 ID:NMHUpILn
実を言うと、俺もこのお題で書いてたりする。
まあ、たまにはこーいうのもいいだろ。
今日明日中には投下するんで、新たなお題を出すのはちいと待ってくりゃれ。

326 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 22:06:57 ID:D8Bz0TGX
>>325
ホロたーーーん!! かぁぁいぃよーーーー!!お持ち帰りー!!

327 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 22:07:24 ID:Fz8oktc5
了解ですぜ、旦那方

328 名前:地獄の日々(海水浴、インク、蜘蛛の糸)1/4 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/22(土) 22:31:44 ID:NMHUpILn
 なあ、ロールシャッハテストって知ってるか?
 紙にインクを垂らして、出来たシミが何に見えるかで、精神分析をする方法だそうだ。
それによると俺の性格は、凶暴、残忍、冷酷、非道……まあ、とにかく最悪らしい。
 自分で言うのも何だが、たしかに俺は悪党だ。ガキの頃から悪さばかりしてて、大人に
なってからは盗みに殺し、何でもござれだ。しかし挙げ句の果てには警察に捕まり、死刑
判決が下された。そしてめでたく刑が執行され……
 まあ早い話、俺は死んで地獄に落ちたんだ。

 さて、お前さん『地獄』って聞いて、どんなことを連想した?
 地の池地獄に針地獄、拷問拷問また拷問、金棒持った鬼どもに、鬼より怖い閻魔様。
 こんなところだろ。
 だがなあ、それが全然違うんだよ。俺も来てみて驚いた、罪人どもは自由そのもの。地
の池地獄で海水浴、針の山でピクニックと、どいつもこいつも『あの世の春』を謳歌して
やがるんだ。
 何でかって?
 まあ考えてもみろよ。今の世の中、善人なんて一握りもいやしねえ。どいつもこいつも
他人をだまくらかし、蹴落とし、てめえがいい思いすることばかり考えてるじゃねえか。
んで、死んだ後、そいつら御一行が次から次へと地獄にやってくるんだぜ。地獄はパンク
寸前ってなもんよ。

329 名前:地獄の日々(海水浴、インク、蜘蛛の糸)2/4 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/22(土) 22:33:45 ID:NMHUpILn
 となると、管理する側はたまったもんじゃない。とてもじゃないが、まともに面倒みき
れる人数じゃねえからなあ。鬼どもは疲れ果てて拷問どころじゃないし、閻魔様の顔から
はすっかり覇気が消えちまった。地獄の責め苦は、今や完全にお役所仕事だ。

 さて、そんなこんなでしばらく地獄で過ごしてみたんだが、悪くない。あくせく働く必
要もねえし、腹も減らない。つまらん犯罪なんて起こる訳もない、なにせ金だの女だの、
もめ事の元になるもんがねえんだからな。
 だが、さすがに飽きてきた。それに、人が多すぎて窮屈だったらありゃしない。何とか
ならねえかなあ。
 そんなことを思いながら、地の池のほとりに寝そべっていると、天から白い糸が降りて
きた。
「さあ、これに掴まりなさい。そなたを極楽へと導いてしんぜよう」
 威厳と優しさに満ちた声が響く。
 ひょっとすると、これが噂に聞く『蜘蛛の糸』って奴かい?
 俺は蜘蛛なんて助けた覚えはないんだが、まあいい。せっかく極楽に案内してくれるっ
て言うんだ、ありがたく世話になろう。

330 名前:地獄の日々(海水浴、インク、蜘蛛の糸)3/4 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/22(土) 22:36:06 ID:NMHUpILn
 糸を昇りきった俺の前には、言葉では表せないくらい美しい光景が広がっていた。
 どんな場所かって? だから『口じゃあ言えない』って言ってるだろうが、この唐変木。
 んで、そこに立つ一人の男……いや、女か? とにかく絶世の美男……いや、美女がい
るんだわ。
「そなたを歓迎しようぞ」
 さっきのあの声だ。するってえと、あんたがお釈迦様かい?
 そう聞くと、神秘的な微笑みを浮かべながらうなずいた。よく見ると、背中には後光が
射してやがる。こいつはたまげた。
 しかし、俺みたいな悪党を極楽に呼んだりして良かったのかい?
「そなたのような悪人こそ、救われるべきなのじゃ。さあ、罪を告白して悔い改めるがよ
ろし」
 おいおい、そいつは宗派が違うだろ。いい加減なこったな。
「そなたもきっと、心を入れ替え生まれ変わることができるであろう」
 だからもう死んでるんだよ、俺は。
 まあ、何にせよありがたい。これからは夢のような毎日だ。極楽極楽……

331 名前:地獄の日々(海水浴、インク、蜘蛛の糸)4/4 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/22(土) 22:38:10 ID:NMHUpILn
 ……ここは地獄だ。
 しばらくの間、極楽で過ごしてみた俺は、ここへ来たことを心の底から後悔した。
 ここに集まる連中は、どいつもこいつも聖人君子ヅラした奴ばかり。きらきらした目で
お互いを褒め合い称え合う毎日、胸がムカムカしてくる。
 何より大変なのは説法の時間だ。お釈迦様が、ありがたーい教えを朝から晩まで皆に説
いて下さる。周りの連中は、涙を流しながらひたすらそれに聞き入る。だが、俺にとって
は苦痛以外の何者でもない。
 だめだ、これ以上こんな所にいては気が狂う。何とかしなくては。
 頼むから地獄に返してくれ。俺はお釈迦様にそう頼んだ。
「何を言うのです、せっかく極楽に来られたのですよ。気は確かですか?」
 今は確かだよ。だが、このままだといずれ、精神が参っちまう。
「……そうですか。そこまで言うのなら仕方ありません。もう一度、あなたを地獄に落と
しましょう」
 ありがたい……俺の目から、思わず涙がこぼれる。地獄での懐かしい日々に戻ることが
できるのだ。
「気が変わったら、またいつでもおいでなさい。極楽は、あなたを歓迎するでしょう」
 二度と来るか、こんな場所。聞いて極楽見て地獄たあ、このことだ。

332 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 22:39:04 ID:7zyMqM28
極楽がホントに地獄だなwww

333 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 22:44:06 ID:Fz8oktc5
極楽はそりゃ死ぬだろw
地獄はネット環境とかもあったりしないかな

334 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 22:53:25 ID:D8Bz0TGX
GJ! なかなか面白かったよ!!やっぱ『くもの糸』って言ったら芥川くんだよなぁ……。
時代を越えて残る文学作品ってのはすごいねぇ。リリスの生み出した文化の極みだよ。

335 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 23:39:49 ID:drScFXXL
地獄には女いないのか
しかし天国も嫌だなぁ……

はっ、気がついてしまったぜ
天国でも地獄でもなく今生きてる現実を楽しめという、
作者からのメッセージが込められてたんだな?

336 名前:くもの糸、海水浴、インク○1/4:2008/11/23(日) 00:19:38 ID:rWoSlYVc
相変わらず古い家だ。俺の家も決して新しくはないけれど、こんなに伝統のある建物ではない。
柱や壁、それに調度類のひとつひとつが長い歴史を感じさせる。
ここは幼馴染みの麻里絵の家。互いに家を行き来するような仲だけど、それは別に付き合ってるとかそういうのじゃない。
小さい頃からの関係が高校生になった今でも惰性で続いているという感じだ。
「あ、それでね」
麻里絵は、こたつの真ん中に置かれたみかんに手を伸ばしながら口を開いた。
「この間、おじいちゃんが亡くなったっていう話、したよね?」
「ああ、残念だったな。まだ元気そうだったのに……」
「あ、そんな悲しそうな顔しないでよ」
麻里絵が笑って言う。
「確かに淋しいけど、畳の上でみんなに見守られながら最後を迎えたんだし……幸せだったと思うよ」
この間教えてくれたときは泣きそうな顔だったのに。場を暗くさせないように気を遣ってくれているんだろう。
麻里絵のじいちゃんは、麻里絵のことをすごく可愛がっているようだった。
悲しくないはずはないのだ。
麻里絵がみかんの皮を剥きながら、言葉を続ける。
「おじいちゃん亡くなる前に変なことを言ってたの」
「変なこと?」
「うん……」俺が聞き返すと麻里絵は思案顔になって
「えーっと……『麻里絵にクモの糸の中に入っているインクをあげるよ。クモの糸から“つ”を抜いてごらん』だったかな」
「なんだそれ?」
「わかんない。おじいちゃん、頭はしっかりしてたから、たぶん暗号みたいなものだとは思うんだけど」
確かにそうだ。齢八十を越えているとは思えないくらいしっかりした人だった。
俺はこの手のモノはあまり得意ではないけれど、恐らく麻里絵でも解けるように作られた暗号だ。
難解なものではないだろう。
「紙とペン貸してくれるか?」
「うん。ちょっと待ってて」
そう言って、麻里絵はこたつを抜けると、素早くペンと紙を持ってきた。
「わかりそう?」
ペンを受け取った俺はとりあえず『クモの糸、インク、“つ”を抜く』と、わけのわからないまま殴り書きをした。
クモノ……イト?“つ”を抜く?
“つ”なんて 初めから『くものいと』に入ってないじゃないか。
俺は頭を抱えたまま、ひたすらペンを走らせる。麻里絵は黙ってその様を見つめている。
「無理かな?」
「いや、もうちょっと待って」
別に麻里絵のことが好きだとかいうことはないが、女の子の前で良いところを見せたいというのは男の性だろう。
それが可愛い女の子であればなおさら、だ。

337 名前:くもの糸、海水浴、インク○2/4:2008/11/23(日) 00:21:16 ID:rWoSlYVc
「そうか……『クモの糸』から“つ”を抜く意味がわかったぞ」
「ホント?」麻里絵が幼い少女のような笑顔を見せた。
「たぶんだけどな。『KUMONOITO』から“TU”を抜くんだ。そして並び替えると……」
「並び替えると?」
この先はわからない。でもあと少しで解ける気がする。
麻里絵が目を輝かせてこっちを見てくる。投げ出したくはない。
と、そのとき閃光が頭の中を駆け抜けた。わかった。クモの糸、そしてインクの意味が。
「麻里絵!お蔵の鍵を借りてきてくれ!」
俺はこたつから身を乗り出した。
「ちょ、ちょっとどうしたのよ急に……。暗号が解けたの?」
「ああ、ばっちりだ。早くしてくれ」
「うちの物置……鍵かかってないよ」
麻里絵が言った。俺はその言葉を聞くや否や、こたつを飛び出し麻里絵の手を握って駆け出していた。
「う、うわっ……待ってよ。物置に何かあるの?」
俺に手を引かれたまま後方で麻里絵が言う。
だが俺の耳には届いていなかった。
麻里絵のじいちゃんは、とんでもないプレゼントを残していったのかもしれないのだ。




俺達は庭にたたずむ蔵の前まで来た。麻里絵の家にはけっこうな大きさの蔵がある。
壁の所々が欠けていて、剥き出しの土壁を晒しているところが悠久の歴史を物語っている。
「入るぜ?」
「……うん」
俺は興奮を抑えながら入り口の扉に手をかけた。
「でも、何で物置に来たの?クモの糸がここを指すっていうこと?」
「ああ、そうだよ。『クモの糸』から“つ”に含まれる母音と子音を抜いて並び替えると『物置』になるんだ。」
俺は蔵の中に足を踏み入れながら答えた。
「え……」麻里絵は小さな声を漏らした。今、麻里絵の頭の中では
『KMONOIO』の七字がめまぐるしく動いていることだろう。
俺は蔵の中を見回した。少し暗いけど天窓から差し込む光で、物の輪郭は、はっきりとわかる。
綺麗に片づけられた家の中とは対照的に、雑多な物が割と無造作に置かれている。
「ねぇ、それじゃ『インク』は何を指すの?」
さっそく捜索にかかった俺の背後から麻里絵の声が響いてきた。
俺は麻里絵に背を向けたまま、逆に問い返した。
「なぁ、『インク』のスペルわかるか?」
「え?えーっとI、N、Q、U……」麻里絵がどぎまぎと答える。
「違うよ。『INK』だ。そしてそれを並び替えると……」
俺はしゃがんだまま振り返り麻里絵の顔を仰いだ。
「『KIN』。つまり『金』だよ」

338 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:21:34 ID:a5n7oBnl
おお、推理物か

339 名前:くもの糸、海水浴、インク○3/4:2008/11/23(日) 00:24:04 ID:rWoSlYVc
「金……!で、でもそんな高い物を、こんな鍵もかかってないような所に……。あ、そうか、だから……」
麻里絵は何かにハッと気が付いたような表情を見せた。
「どうした?」
「おじいちゃん、言ってたの。『なるべく早く“インク”を探しなさい』って……」
俺は背筋にゾクッとするものを感じた。間違いない。盗まれるのを恐れていたんだ。
「よし、本気で探そうぜ。金塊なんかだったらスゴいな。南の海に行って優雅に海水浴でもするか?」
麻里絵は笑いながら俺の腕を叩いてきた。
「なんでおじいちゃんのお金で、あんたを海外旅行に連れてかなきゃなんないのよ」麻里絵はニヤリと笑って
「っていうか、もしかして……私の水着姿が見たいだけだったりして……?」と俺の顔を覗きこみながら言ってきた。
「いや、アッキーナばりの小さい膨らみを拝んでも、悲しくなるだけのような気が……」
俺がそう言うと麻里絵は素早くローキックを放った。痛い。
麻里絵は、バカ、と言って俺に背を向けると奥の方の捜索を始めた。
「冗談通じないんだもんな……」俺はぼやきながら、右足の痛みをこらえて捜索活動を再開した。




十分くらい経ち、俺が自分の推理に疑念を抱き始めたときだった。
「ねぇ、ちょっと来て!」麻里絵の声が蔵の中に響き渡った。
俺は持ち上げた物を放り出すと、急いで麻里絵の元に駆け寄った。
「見つかったのか?」
麻里絵の手には小さめの箱が抱かれていた。
「わかんない。でも、見て。小さな紙が貼られてて、これに『麻里絵へ』って書いてあるの。見たところ、けっこう新しい箱みたいだし……」
「きっとそれだよ。外に出て明るいところで開けてみよう」
「う、うん」




「一、二、の三で一緒に開けようぜ」
「う、うん」
冷え込んではいるけれど気にならなかった。期待に心臓が波打っている。
頭上では煌めく真夏のような太陽が周囲を明るく照らしていた。
「いい……?一、二の……三!」
遂に箱の中身が白昼の下に照らされる。そこには、まばゆいばかりの黄金が!……なかった。
「なんだこれ?」
俺は箱の中の白い布でくるまっていた物体を取り出す。
「それ、もしかして……」麻里絵が言った。思い当たるフシがあるのか。
俺はすっかり拍子抜けしてしまったが、とりあえず何でもいい。ある程度価値のあるものが出てきて欲しい。

340 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:24:25 ID:vQk4is2I
よくこの短時間でここまで練り込めたなと思う
すげー

341 名前:くもの糸、海水浴、インク○4/4:2008/11/23(日) 00:25:18 ID:rWoSlYVc
「これ、お肉だ。燻製のお肉。おじいちゃんと私の大好物……」中身を確認して麻里絵が言った。
俺は軽い目眩がした。『金』だと思ってたのに……よりによって『肉』?
「でも、何でだよ……。インクだろ?I、N、Kだぜ?」
「それ、私思ったんだけどさ」
麻里絵は大事そうに肉の燻製を抱きかかえている。どうやら麻里絵にとっては満更でもないらしい。
「おじいちゃん、英語の綴りなんて知らないと思うんだよね。だから『INKU』で考えてみると『NIKU』、『肉』になるよ」
あ……。なんだか金属の塊で頭を殴られたような気がした。勝手に勘違いして、舞い上がって……俺はバカだ。
「どうすんだ、その肉?」俺は憮然として尋ねた。
「もちろん、食べるわよ。大切に、味わってね。こんなに手のこんだプレゼントの渡し方をするなんて、なんかおじいちゃんらしい」
麻里絵は本当に嬉しそうだ。どうやら、じいちゃんの人生最後のサプライズは成功したらしい。でも……
「はぁー……」思わず溜め息をついてしまう。
「なに?がっかりしちゃった?」
「そりゃ、まあな。期待が大きかっただけに……さ。」
「一緒に食べる?」
「いや、遠慮しとくよ」
なにしろ麻里絵のじいちゃんの形見だ。喉を通りそうにない。
「でもお礼が何もないんじゃ悪いよね。暗号の謎解きしてくれたし、探すの手伝ってくれたし……」
「いや、お礼ならもらったよ」
「え……?」
「何てな、“嘘”だ。何ももらっちゃいないさ。まぁいいよ、ツケにしとくから、そのうち百倍くらいで返してくれ」
「何よそれー」
麻里絵が季節外れの向日葵のような笑みを見せた。

本当は“嘘”じゃない。このくらいの労力に見合うモノならもう受け取った。
それは、じいちゃんが亡くなってから麻里絵が見せたことのない、心からの笑顔。
なんでだろう……。麻里絵のことが好きなわけじゃないのに、俺は麻里絵の笑顔が……。
「なぁ、麻里絵」
「なに?」
「肉が好きなのは構わんが豚みたいにブクブク太ったりすんなよ」
「バカ、言われなくてもわかってるわよ―」
本当かよ?という言葉は呑み込んでおく。またローキックを浴びせられたらKOさせられるかもしれない。
それより、大きな胸欲しさに太ったりしないんだろうか。
心配だ。麻里絵はひょっとしたら俺の、将来の……。
いや、バカな。
俺は空を仰いだ。空には俺達を見守るように雲間から太陽がのぞいていた。

342 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:29:33 ID:a5n7oBnl
すげーまさかここまで書けるとは

343 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:29:34 ID:vQk4is2I
超乙
こういうの大好きなのぜ〜

アナグラム好き?

344 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:30:32 ID:a5n7oBnl
よく思いついたな

345 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:35:07 ID:9jAYUOkE
良作が続くなあ

346 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:36:24 ID:7Ys8aU3P
初めての三題ものを大急ぎで書き途中だが、自信なくなってきた……

347 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:38:27 ID:6rTYr5o5
これはいいss

348 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:39:21 ID:a5n7oBnl
>>346
さぁさぁ、早くみせてみるんだ

349 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:42:07 ID:vQk4is2I
>>346
自信は自分の内部から湧き出るものじゃなくて、
他人から分けてもらうものだとじっちゃが言ってた

さぁ、投下するんだ

350 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:45:10 ID:SRccU4KO
>>336,337,339,341
これはなんという良作w

351 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:46:27 ID:SaO8Ij7T
次のお題出せー

つか、以前のお題でも話が思いついたならいくらでも書いて投下していいと思うんだけど。

352 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 00:48:55 ID:a5n7oBnl
そうだよね、以前の御題でもノープログレム

353 名前:ゴッサマー(海水浴、インク、蜘蛛の糸)@:2008/11/23(日) 02:15:14 ID:7Ys8aU3P
ノルマンディー上陸作戦に参戦した小説家といえば
「ライ麦畑でつかまえて」のJ・D・サリンジャー、あるいはノーベル賞作家のウィリアム・ゴールディング等が有名だろう。
しかし、ノルマンディーの予行演習として1944年4月末、イギリスのデヴォン州南岸はスラプトン・サンズで行われた
「タイガー作戦」においても、アメリカ人作家ウィリアム・コーエンが非業の戦死を遂げていたことを知る者は、現在ではほとんど居ない。
彼は上官からライフジャケットの着用法を誤った仕方で教えられ、上陸中に溺死したのだ。
従軍以前アメリカで無名の童話作家であったビル・コーエンの著作は長らく、処女作にして唯一の刊行作品
「アントニーー・アントとクモばあさん」がアメリカ議会図書館の蔵書として一冊残っている限りだったが
ヌーディストにして無自覚の霊媒体質をもつイギリス人女性シャーリー・ブラック35歳は
2004年7月30日、まさしく彼が死んだその海岸で、知られざる彼の遺稿を発見することに成功した。

きっかけは、砂に埋もれた万年筆だった。
その夏スラプトンで、ボーイフレンドのエドマンドと共に生まれたままの姿で波打ち際を歩いて
自然との一体感を満喫していた彼女は、埋もれていた万年筆を偶然踏んづけた。
最初は単なる足の裏の違和感だけだったが、ふと立ち止まり、前を歩くエドマンドの背中を見つめているうちに
彼女の心中に得も言われぬ寂寥感が広がっていった。
いきなりうずくまって泣き出す彼女にエドマンドが気づき、何が何だか分からないながらも
懸命になだめていると、彼女の裸足の指のあいだから錆びて砕けたペン先が覗いているのが見えた。
踏んで怪我をしたのかとエドマンドは思ったが、調べてみるとシャーリーの足の裏は無事だった。
「ひどいものを捨てるやつが居るな、まあとりあえず今日はホテルに戻ろう」とエドマンドは言い、彼女も素直に頷いた。
そして、「こいつはちゃんとしたところに捨てなくちゃ」と、二人はぼろぼろの万年筆をホテルへ持ち帰った。

その晩シャーリーは夢を見た。
冒険心に溢れたアリの少年アントニー・アントが、優しいクモばあさんに編んでもらった
クモの糸製の凧に乗って大西洋を越える夢だった。
シャーリーはカモメに乗って、旅の途中のアントニー・アントとお喋りをする。
アントニー・アントは彼女に、このままでは収容所送りになるかも知れない両親や親戚の話をする。
アントニーはアメリカで兵隊になって、ドイツに残してきた家族を助けたいのだ。夢の中でシャーリーは泣く。
朝目覚めると、彼女は現実でも泣いていた。心配するエドマンドに、シャーリーは夢の話をする。
エドマンドは彼女にタイガー作戦の話をする。
ろくに読んだこともないフロイト「夢判断」だの、ユングの曼荼羅だのの話をして、ひとまず二人は納得する。
万年筆は捨てられることなく、彼女のおみやげになる。

バカンスが終わり、ロンドンへ帰ったシャーリー。
三週間ほどは何ごともなく平静に過ごしていたが、ある日突然、趣味のシルクスクリーン――
自作の柄をつけたピタピタのTシャツは、裸ほどでないにしろ過ごしやすいのだ――がどうしようもなく恋しくなって
仕事を早引けして家に帰ると、矢も盾もたまらず新作に取りかかった。
新作の図案は稲妻のように彼女の脳内を駆け巡り、手は見えざる糸に操られるように紙の上を走った。
書き上げたのは、アラビア語の無気味なパロディじみた、判読不能の文字の羅列によって編まれた
ネイティヴ・アメリカンの装飾品ドリームキャッチャー、あるいはクモの巣の絵であった。
シャーリーはどうしてそんなにシルクスクリーンをやりたくなったのか、
どうして自分がこんな絵を描きたくなったのか、全く分からなかったが
出来上がったものはなかなか前衛的でパンチがあるように思えたので、その原稿は感光フィルムに写しておいた。

354 名前:ゴッサマー(海水浴、インク、蜘蛛の糸)A:2008/11/23(日) 02:15:45 ID:7Ys8aU3P
それからも彼女は月に一度くらい不意の芸術的衝動に襲われるようになり、書く絵は決まってクモの巣だった。
枚数をこなしていくうちに、彼女はそれがあのスラプトンのホテルで見た夢の
アントニー・アントの凧に似ていることに気づき始めた。
完成したTシャツは同僚やエドマンドには好評だったが、
彼女には月一回の自動筆記が次第に恐ろしく感じられるようになってきた。
あの引きずられるような感覚、作業中に描線の一部がゲシュタルト崩壊を起こして
海岸線や兵隊の後ろ姿やドイツ軍の魚雷艇のように見える瞬間などが怖くなってきた。
作業を終えた後の部屋は決まって、スキージーから剥がれて宙を舞った糸状のインクで大変汚れていた。
クモの糸が風に乗って空中を浮遊する「ゴッサマー」という現象があるが、空飛ぶインクの様子はちょうどそれに似ていた。
液の粘性が強すぎるのだと推理して使うインクの種類を変えてみるが、現象は一向に収まらない。
シャーリーはスラプトンで拾ったあの万年筆が原因だと思い至り、それを捨てようとしたが
叔母のアニーは「万年筆の以前の持ち主はきっと死人で、天国からでも伝えたい想いがあるのだ。
実生活に支障の出ない程度には従ってあげなさい」と言って止められた。

前触れなくやってきて、仕事に手がつかなくさせる幽霊はもう十分に迷惑だ、とシャーリーはうんざり気味だったが
万年筆を拾ってからちょうど一年後の2005年7月30日、アントニー・アントと家族の絵(らしい抽象画)を描いたきり
彼女の降霊術の時間は終わった。以来、霊感は二度と降りては来なかった。
ことが済んでしまうといささか現金なことに、
一年間の心霊体験は彼女にとって忘れ難く楽しい思い出となり、好んで語り草にするようになった。
お気に入りの映画、トーマス・ヤーン監督「ノッキン・オン・ヘヴンズドア」の有名な台詞に引っ掛けて彼女は言う、
「私が死んで天国に行ったら、毎日裸で暮らして、みんなに海と万年筆の話をするわ。
それで万年筆の持ち主を探し出して、アントニー・アントのその後について尋ねるの。
海の話をする流行が、天国で終わってしまってなければいいけど!」と。

アメリカを目指して旅に出たアントニー・アントの結末は、実はシャーリーのシルクスクリーンにすでに書き込まれていた。
クモの糸に当たる奇妙な文字は、あるやり方で英語のアルファベット26文字と対応するのだが
翻訳には750以上の工程を経る必要があるため、誰にも解読できなかったし、
そもそも彼女の作品の中に文字や文章を見出すものが誰一人として居なかった。
もちろんシャーリーにも分かっていない。万年筆がタイガー作戦に散ったビル・コーエンの遺品であることも、
死の間際、恐怖を紛らわすために彼が「アントニー・アントとクモばあさん」の続編の想を練っていたことも、
書かれずに終わった物語が天界の暗号によって、現代の彼女の手に不思議に蘇ったことも。

例えばお茶菓子、例えば古いレコード、例えば野球の試合のように、
コーエンの万年筆には不可視の碑文が、霊界の魔法によって刻まれていたのだ。
同じような碑文は全て死者の沈黙の言語で綴られていて、その多くは今日もなお煉獄をさまようがままでいる。
彼の物語は幸運にもすくい取られたが、審判の日が訪れるまで、それも匿名のままであり続ける。

355 名前:346:2008/11/23(日) 02:18:18 ID:7Ys8aU3P
三時間くらいで勢いで書いたので
何だかお題以外に色々詰め込んで訳分からなくなってしまった。
三題は難しい……

356 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 02:19:31 ID:6rTYr5o5
事実は何%位入ってるのですか?

357 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 02:25:20 ID:a5n7oBnl
また違った趣の作品が
この三題凄いな、良作がドンドン出てくる

358 名前:346:2008/11/23(日) 02:26:33 ID:7Ys8aU3P
>356
もちろんウィリアム・コーエンとその作品、シャーリー以下現代の登場人物なんかは架空ですが
サリンジャーとゴールディングがノルマンディー上陸作戦に参加したのは本当。
タイガー作戦も本当にあった事件で、ライフジャケットの着け間違い云々も実際にあったことらしいです。
地名も本物。スラプトン海岸はイギリス有数のヌーディストビーチなんだそうです。
ゴッサマーや映画の薀蓄は調べて書きましたが、慌てて書いたので間違いがあったらマジごめんなさい。

359 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 02:26:48 ID:yj+thUX8
>>346
よい。すき!

360 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 08:39:54 ID:9jAYUOkE
同じお題で、違う作風の作品を見比べ楽しむってのも面白いな。

>>322
独特で不思議な匂いがする世界だな、もう少し読んでみたいとおもた。

>>328
まさに落語って感じだ。お題の使い方が巧いし、語り口も心地いい。落ちの一言も気が利いてる。

>>336
これは……短時間でよく思いついたなあ、すごい。発想に脱帽、短編〜中編に仕立てたものを読んでみたい。


>>353
いやいや、よく書けてるぜ。こちらも知的な感じの作品だな。

361 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 11:09:51 ID:Vmd/F/+v
>>353-354
すげー、他のと雰囲気が違ってかつ完成度が高い
なぜ三題スレは才能の宝庫なんだよwww

362 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 12:27:49 ID:rWoSlYVc
ちょっち早いが次スレのテンプレ決めようぜ
>>1じゃ余りにもテキトー過ぎるだろw

363 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 12:42:13 ID:Vmd/F/+v
ちょっちどころじゃない件について
せめて700を超えたくらいからでいいんじゃないか?

容量もまだ余裕あるし

364 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 15:48:57 ID:SaO8Ij7T
あんまり早く作ると埋もれて分かんなくなりそうだし>テンプレ

ついでにここまでのまとめ。
漏れあるかもしれないし、綺麗に整形とか出来ないからごめんね

>>2-4       >>7
>>11-13      >>18   >>21-23
>>26-28      >>30
>>34-35      >>40
>>41-43      >>45-46
>>49-50,52     >>54
>>55-57       >>61
>>66-68      >>70-72
>>74,77-78    >>85
>>79,82-83     >>90-92
>>93-95      >>98
>>99,103,105   >>109-113  >>120-128
>>131-133      >>134
>>136-137,143  >>145-146
>>150-152     >>157

365 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 15:49:27 ID:SaO8Ij7T
(続き)
>>164-166     >>179-180
>>184-186     >>189
>>193,195,199   >>207
>>210-212     >>214
>>217-219     >>220
>>221,223-224  >>229,231,237
>>240-242     >>244-248
>>251-253     >>261
>>265-266,299  >>271-272
>>278-280     >>281-282
>>286-288     >>291     >>292-295
>>303-304,307  >>308-309  >>314
>>318-320     >>322     >>328-331
>>318-320     >>336-341 >>353-354

366 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 16:03:45 ID:P/1qfz68
ttp://www7.atpages.jp/jlcbr/

367 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 17:02:06 ID:sqhe80FS
お題出してみよう
「カラス」

368 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 17:26:24 ID:SaO8Ij7T
「加湿器」

369 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 17:53:40 ID:a5n7oBnl
ラベンダー

370 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 17:55:36 ID:6rTYr5o5
「記憶を失った男」

371 名前: [―{}@{}@{}-] orz:2008/11/23(日) 17:56:28 ID:6rTYr5o5
おっと>>370はなしで

372 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 18:01:00 ID:Vmd/F/+v
「カラス」、「加湿器」、「ラベンダー」の3つか

何にも思いつかないぜ、HAHAHAwww

373 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 19:20:21 ID:a5n7oBnl
>>364-365
まとめ乙!

374 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:02:13 ID:9jAYUOkE
作品の投下率がすごいな……

375 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 00:35:32 ID:zrR6IL1R
カラス、加湿器、ラベンダーのお題で投下↓

376 名前:カラスの仮面 1/3 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/24(月) 00:37:56 ID:zrR6IL1R
「アヤ……おそろしい子……」
 私の演技を見た憑影先生は、思わずそうつぶやいた。そりゃそうよ、だってわたしは天
才ですもの。
 他のライバルたちは、嫉妬と羨望の入り交じった目で見つめる。わたしみたいな新入り
の小娘に主演を奪われて、さぞ悔しいんでしょうね。
「先生、ちょっとお手洗いに行ってもよろしいかしら?」
 そう言って、わたしは部屋を出た。もう……こんなに動いたから、頭の皿が乾いちゃっ
た。

 わたしは妖(アヤ)、劇団『つきかげ』に来て一年になるわ。
 この山奥の古寺には、日本中の妖怪の中から選び抜かれたエリートが集まってるの。人
をだますための変化と演技は、妖怪にとっては欠かせない技能。それを磨くために、夜な
夜な練習を続けているってわけ。

「河童なんかに、変化ができるのかしら?」
 わたしに対する風当たりは厳しかった。まあ当然よね、劇団メンバーは猫また、妖狐、
化け狸、いずれも人を化かすプロの家系に育ったお嬢様ばかりですもの。遠野の淵で育っ
た田舎娘が、スカウトされて入団するなんて、認めるわけにはいかないんでしょうね。

377 名前:カラスの仮面 2/3 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/24(月) 00:40:21 ID:zrR6IL1R
 でもこれが現実、先生はわたしを選んだ。
 かつて伝説の女妖と呼ばれたカラス天狗、それが憑影先生。先生はわたしの才能を見出
し、後継者として育ててくれている。そして明日はいよいよ本番。人間に化け、人間たち
の前で磨きあげた演技を披露しなくちゃいけない。
 緊張する……でも大丈夫、わたしならきっとやれる。頭の皿を濡らしながら、そう自分
に言い聞かせる。


「アヤ……あなたなら出来るわ。『紅天狗』を完成させてちょうだい」
 いよいよ本番、控え室で先生がわたしをはげましてくれる。
「はい、必ず成功させてみせます」
 先生以外には演じることは不可能とまで言われた、幻の舞台『紅天狗』。きっと、演じ
きってみせる。
「そうそう、あなた宛にこんなものが届いていたわよ」
 そう言って、紫の花束と小包を手渡された。
「これは……紫のラベンダーの人?」
 誰かは分からないが、いつもわたしを陰で支えてくれている人だ。

378 名前:カラスの仮面 3/3 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/24(月) 00:42:07 ID:zrR6IL1R
 小包を開けると、四角い装置が入っていた。
「まあ……最新型の加湿器だわ。あなたのことを考えてプレゼントしてくれたのね」
 うれしくて、思わず涙が出た。
 さっそく使ってみる。心地よい湿り気が楽屋に広がり、わたしの皿を、体を、心を潤し
てくれた。さっきまでの緊張も、どこかに飛んでいった。
 ありがとう、紫のラベンダーの人。


 本番直前の舞台袖で、わたしはじっと目を閉じた。これまでの出来事が走馬燈のように
頭に浮かぶ。つらく厳しい練習だったが、今ではいい思い出だ。
 さあ、ここからわたしの伝説は始まるんだわ。
 舞台袖からステージに躍り出る。目の前には大勢の観客、そして目映いスポットライト
がわたしを照らす。
 ……ん? スポットライト?
 だ、だめよ……そんなに強く照らされちゃ、頭の……皿が……乾いちゃ……

379 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 00:46:53 ID:BybjDEQf
まさかガラスの仮面ならぬカラスの仮面が来るとはw
加湿器をくれるとはなんてよく河童のことをわかってるんだ紫のラベンダーの人

380 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 06:38:13 ID:UVYGz69y
発想は面白いと思ったけどカラスの仮面もラベンダーも話の中で重要な要素になると思いきや、活かされてないね。
三題全部入れると話ができない!ってときは「道端にはラベンダーが咲いていた」とか
書いて軽く流しちゃうのもありかと思いますぜ
なにはともあれ、この書きにくいお題でGJ

381 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 09:52:01 ID:1inT6ypu
物凄く意表を突かれたw
まさにこの発想は無かったわ

>>380
元ネタ知らないのかな、少女漫画だけど意外と面白いよ。

382 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 12:13:24 ID:dzXlgsjw
硝子のマスクだよねぇー

383 名前:380:2008/11/24(月) 12:59:47 ID:UVYGz69y
有名なのかな。無知ですまん。

384 名前:ラベンダーピンク(カラス、加湿器、ラベンダー)@:2008/11/24(月) 14:45:19 ID:szbtUQkb
老ハンナの110回目の誕生日を間近に控え、家族は祝い事の準備に忙しかったが
当のハンナはと言うと、このところ日課であった孫娘に付き添われての散歩も止めにして
大好きなラベンダーのアロマの入った加湿器をかけっ放しの自室に一人篭り、
灰色の窓の景色を憂鬱そうに眺めるばかりであった。
誕生日と共に、「カラス男」の訪問が近づいていたからだ。

その冬、街には「カラス男」の噂が広まっていた。
黒い外套とぼろぼろの軍服らしきものを身に着けたその男は、早朝のダウンタウンに現れる。
男の面相は、くちばしのような大きな鼻や小さな眼をしていて、どことなくカラスを思わせるものだという。
彼は何故か紫とピンクのラベンダーの花束を抱え、朝もやの中をカラスの群れを率いて飛び回るのだ。
飛ぶって、そいつ背中に羽でも生えてるの? さあ、破けた大きなコートの裾で羽ばたくんだって。
人を襲うとか? さあ、ただカラスと一緒に飛んでるんだって。
モスマンとか、バネ足ジャックあたりの有名な都市伝説を足して割ったような、下らない噂話。
ちょうど街で大量発生したカラスが問題になり、行政が鳥害対策に重い腰を上げた頃で
糞や散らかされたゴミの始末にくたびれた主婦なんかが、気晴らしに冗談でも始めたのが
変な形で広まっただけなんだろうと、噂を聞いた人の大半がそう思った。

老ハンナは違った。ひ孫たちが「カラス男」について話すのを聞いたとき、
彼女には思い当たる節があったからだ。罪深き「カラス男」、彼女の幼馴染。

老ハンナは今はアメリカに暮らしているが、生家はドイツ、バイエルン州の都市ヴュルツブルクにあった。
近所に住んでいたのがオスカール・ディルレヴァンガーだった。
オスカールは幼い頃から利発ではあったが、動物をいじめ殺したり
年下の子供や女の子にひどいいたずらをする、ろくでもない子供だった。
しかし、どういう訳か同い年のハンナにはよく懐いていたし、彼女の言うことなら多少は聞いた。
オスカールは、ハンナの家の庭に植えられたラベンダーの花壇が好きだった。
彼女の家族が引っ越すとき、何株かを彼にやったことをハンナはおぼろげに記憶している。

二人は45歳のとき、ベルリンで再会した。
ハンナの夫で電子工学博士のマックスはナチ党員で、
武装親衛隊の将官になったオスカールの友人だったのだ。
ある折マックスの家に招かれたオスカールは、そこでハンナと出会い、
彼女のほうでは最初分からなかったが、彼はすぐにハンナを思い出した。
オスカールの性癖は変っておらず、ナチ党内でもやはり評判の悪い男だったが
ハンナの前だけでの素直さも相変わらずだった。
彼はそれからも時折家を訪れると、ハンナと他愛のない世間話をして過ごすのだった。

戦争が終わり、ハンナは学者として大成していた夫が
米軍の「ペーパークリップ作戦」によってアメリカに招かれたので、一家でドイツを離れることが出来た。
一方オスカールは、「囚人部隊」の悪名高い第36SS武装擲弾兵師団を指揮し、
最後にはレジスタンスに捕まって捕虜収容所でなぶり殺しにされた
(あるいはエジプトに逃亡して、ナセル率いる自由将校団に加わりクーデターを助けたとの説もあるにはあるが)。

「最近朝方はカラスがうるさいでしょ、おばあちゃん」
夜になって孫娘がハンナの寝室に来た。老ハンナはもう寝る時間だ。
孫はベッドを整え、暖房器具のタイマーを設定し、サボテンの鉢植えに
庭の井戸から汲んだ水をやり、ついでに枕元の超音波式加湿器の貯水槽にも水を足し、
その他細々とした世話をハンナに焼いてくれた。
「ねえ、ニーナ。窓の鍵を開けといてくれないかい」
「何で?」
「何でもだよ。ねえ、鍵を開けておくれよ」
「駄目よおばあちゃん。泥棒とかカラスとか、入ってきちゃうでしょう?」
ニーナは結局、窓の鍵を閉めたままにして出ていってしまった。
老ハンナは「カラス男」の訪問を予感しつつも、鍵を開けることなく寝入ってしまった。

385 名前:ラベンダーピンク(カラス、加湿器、ラベンダー)A:2008/11/24(月) 14:46:24 ID:szbtUQkb
明け方、ハンナが目を覚ますと、薄暗い部屋の中は何だか霧がかっているように見えた。
東向きの一番大きな窓の向こうに黒い影があるのを、カーテン越しに認めた。
影は窓を叩いた。ハンナはかすれる声で答えた。
「ごめんなさい、鍵は閉まってるのよ」
影はしばらく窓の前でごそごそやっていると、どうやってか自力で鍵を開け、部屋に入ってきた。
それはぼろ切れのような黒い外套を羽織り、やはりあちこち破れて、毛羽だったりてかったりして、
まるでカラスの濡れ羽のようになったSS将校の灰色の制服をまとったオスカールだった。
顔立ちが生前より細く鋭くなり、小さなボタンのような瞳をした彼は
その服装と相まって、ハンナにはまさしく一羽の巨大なカラスに見えた。
彼は噂どおり、ラベンダーの花束を両手で持っていた。制服の胸元には、勲章ではなく
ラベンダー・ピンク色の逆三角形の胸章が留まっていた。
「お久しぶりね」
「そうだな」
オスカールはベッドの横に立って、ハンナを見下ろした。
「お迎えに来てくれたのね」
「そういうことだ。と言っても別に、今すぐ死ぬ訳じゃないがね……ほら」
彼はハンナに、ラベンダーの花束と黒い逆三角の胸章を渡した。
「まあきれい。それに、何て良い香り……。あら、これは?」
「お前さんの勲章さ」
オスカールはその黒い三角を、ハンナの寝巻きの胸に留めてくれた。ハンナははっとした。
「私は地獄へ行くのね」

ベルリンでのオスカールとの付き合いの中で、
ハンナは彼に頼んで密かに女性を都合してもらうことがあった。
ハンナは同性愛者で、研究にかまけてばかりの夫との生活に倦んでいたのだ。
強制収容所で、黒い逆三角の胸章を着けられて死を待つばかりの女性たち。
オスカールはその中から何人かを、ハンナの一晩の逢瀬のために連れ出した。
用済みの女性はオスカールが始末した。オスカール自身が楽しむこともあったかも知れない。

「地獄ってどんなところ?」
「ひどく寒い。霧が濃くて何も見えない。おれたちは遅効性のガスを呑んで、のた打ち回って壁を引っかいてる」
オスカールは血だらけの手をハンナに見せた。ハンナは頷いた。
それからオスカールは窓へ向き、帰ろうとした。彼女は呼び止めた。
「あなた、街の人にカラス男って呼ばれてるのよ」
彼は彼女に背を向けたまま
「おれたち亡者は至るところに居る、地獄と現世は重なっている。
普段は互いの世界を薄くて硬い、不透明の膜が隔てているが
頑張ればそいつを一時的にでも破くことは出来る。
だから、あれは膜を突き抜けるための頭突きみたいなものなんだ。
こうして思い通りに身動きできるだけの、大きな穴を開けるためのね。
おれがここに戻ってくる用事はあんたで最後だ、同じことをするのはもう無理だな。
残りの業(カルマ)は地獄で清算しなければならない、お前さんも、もうじきそうなる」
オスカールは窓に手をかけた。
「花をどうもありがとう」
「地獄の霧の中では他人の姿は見えない。おれたちはもう会うこともないだろう」
オスカールは飛び去った。開け放たれた窓は部屋中の霧が吸い込み、それから独りでに閉まった。
朝食の時間になり、ニーナが起こしに来た時には
花束も黒い胸章もハンナによってベッドのそばに隠された後だった。

オスカール・ディルレヴァンガーの訪問から程なくして、
老ハンナは110歳の誕生日を迎えた。そしてその一週間後、彼女は亡くなった。
ハンナは遺言で、自分の棺桶にあのラベンダーの花束と胸章を入れるよう家族に頼み、それは叶えられた。
彼女の死因は老衰ではなく仮性結核だった。加湿器の水槽から仮性結核菌が見つかった。
保健所の職員が庭の井戸をさらうと、底のほうからカラスの死体が出てきた。
そのカラスが、老ハンナを殺した菌のキャリアだろうと言われた。
行政はカラスの一斉駆除に乗り出し、噂の「カラス男」もまたカラスたちと共に街を去り、
二度と住人たちの話題に上ることはなくなった。

386 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 14:48:19 ID:szbtUQkb
カラスの仮面、笑えました

自分もと思ったが、また第二次大戦+幽霊譚になってしまった

387 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 14:52:01 ID:dzXlgsjw
媒介は結核菌で無理心中か……

388 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 15:27:50 ID:BybjDEQf
しんみりとした静かな話だね

389 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 18:39:59 ID:UVYGz69y
俺も書く〜

390 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 19:20:28 ID:zrR6IL1R
カラス、ラベンダー、加湿器で別の話を書いたんで、もいっちょ投下させとくれ。

391 名前:おかしな話 1/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/24(月) 19:23:29 ID:zrR6IL1R
 目の前には一面のラベンダー畑が広がっている。高原の澄んだ風が、その香りを俺の元
に運んでくれる。
 しばし堪能してから、俺は宿泊場所であるペンションへと足を進めた。さあ、今回はど
んな事件が起こるのやら。
 ログハウス風の宿に着くと、いかにも人の良さそうな老夫婦が俺を迎えてくれた。だが
油断してはならない、人は見かけによらぬもの。彼らの一挙一動まで、きちんと目を配ら
ねば。
 挨拶と宿泊カードの記載を済ませ、部屋に案内してもらう。
 こじんまりとした客室は、簡素だが落ち着いた雰囲気を醸し出している。エアコンと加
湿器で室内は快適な温度湿度に保たれ、ラベンダーのアロマキャンドルの香りがこれまた
心地よい。老夫婦の気配りと人柄が感じられる。
 俺はベッドに寝ころんだ。少しの間、目を閉じリラックスする。いつもは、自慢の灰色
の脳細胞をフル回転させてばかりなのだから、たまにはこんな風に頭を休めるのも悪くな
い。まあ、だがこんなに穏やかな時間は、そう長くは続かないだろう。

 少し早いが、夕食前に風呂を頂くことにした。ゆっくりできるうちにしておかなければ
な。もっとも、風呂場で事件に出くわすなんてこともよくあるから、油断はできないのだ
が。

392 名前:おかしな話 2/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/24(月) 19:25:24 ID:zrR6IL1R
 浴室は、やや大きめのバスルームといった具合だ。客室と同じく隅々まで手入れが行き
届いている。浴槽にはラベンダーの花びらが浮かび、湯気と香りが充満している。
 ふむ……今回はラベンダー尽くしだな。おそらく事件と何らかの関係があるのだろう。
花言葉は『あなたを待っています』だったか、意味深だな。犯人の動機に関係したモチー
フかもしれない。
 ……いかんいかん。リラックスしようと思ってはいるのだが、どうしてもこんなことを
考えてしまう。職業病だな、これは。
 仕事柄、こういったペンションや温泉宿に泊まる機会は多いのだが、事件のせいであま
りゆっくりできないことが多い。楽しみの入浴も、カラスの行水になってしまうことがほ
とんどだ。こんな風に長風呂をしたのは、いつ以来だろうか。

 風呂から上がると食事の用意ができていた。部屋に持ってきてもらってもよかったが、
せっかくなので食堂で老夫婦とご一緒することにした。
「大したおもてなしは出来ないのですが……」
 そう言って郷土料理をテーブルに並べる。

393 名前:おかしな話 3/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/24(月) 19:28:08 ID:zrR6IL1R
 この料理に、もしかすると毒が盛られているのかもしれない。まあ、俺は絶対に死ぬこ
とはないのだから、あまり気にすることもない、遠慮なく頂く。うむ、これは美味い。
「よかったらハーブティーでも」
 食後に、老婦人がお茶をごちそうしてくれた。温かい液体が腹におさまると、ささくれ
立った神経も休まり……

 ん?
 いくら何でもおかしいぞ。なぜ何も起こらない?
 いつもなら、この辺りで死体の一つや二つ、出てきてもおかしくないのだ。しかし今回
はどうも勝手が違う。考えてみると、登場人物といえば、俺と老夫婦の三人だけ。これで
は謎の深めようがないではないか。老夫婦のどちらかが殺されたとしても、犯人がすぐに
特定できてしまう。これでは推理モノなど成り立たない。一体、どうなっているのだ?

 それでも俺は待った。あせるな、今に事件が起こるはずだ。外から悲鳴が聞こえるはず
だ。謎に満ちた突然の訪問客が現れるはずだ。
 しかし、いくら待てどもそんな気配は微塵もない。老夫婦とたわいもない会話をしなが
ら、ただ時間が流れてゆく。
 作者め、一体何を考えているんだ? 推理小説の読者が求めているものは『非日常』だ
ろう。こんな何の変哲もない日常を淡々と描いた作品など、だれが読みたがるものか。
 凄惨な密室殺人が起こり、探偵である俺は巧妙なトリックを見破る。そして、犯人が涙
ながらに衝撃の過去と犯行動機を自白する……それこそが醍醐味ではないか。

394 名前:おかしな話 4/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/24(月) 19:30:38 ID:zrR6IL1R
 客室に戻り、ベッドに横たわる。しかし眠れるはずなどない。
 おかしい、おかしい……なぜ何も起こらない?
 疑問は焦りに、そして次第に苛立ちへと変ってゆく。いても立ってもいられず、何度も
寝返りを打つ。気が狂いそうだ、こんなことは前代未聞ではないか。
 俺は探偵小説の主人公なのだぞ。『何も起こらない』のでは、立場がない。それどころ
か、俺の存在意義そのものがなくなってしまう。
 ふざけるな、いやだ、我慢ならん……何とかしてこの状況を変えねば……

 ……何だ、悩むことなんてないじゃないか、『事件がないなら起こせばいい』のだ。俺
としたことが、なぜこんな簡単なことに気付かなかったんだ。
 俺は今までありとあらゆる犯罪、特に殺人事件に関わってきた。俺の中には、そんじょ
そこらの犯罪者なんかとは比べものにならないくらいの、膨大な量のノウハウがある。い
わば殺しのスペシャリストだ。

395 名前:おかしな話 5/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/24(月) 19:32:45 ID:zrR6IL1R
 作者が殺さないなら、俺が殺せばいいのさ。足がつかないように死体を作り上げるなん
て、俺にとっては造作もないこと。事件をねつ造し、架空の犯人を仕立て上げ、何食わぬ
顔で推理を披露してやればいいんじゃないか。
 さて、思い立ったら行動あるのみ。では早速、あの老夫婦を……


「院長、今日は新しい患者が来るそうですね」
「ああ、殺人の罪で捕まった男だ。とんでもなく巧妙な密室トリックを使ってね」
「ああ、テレビでもやってましたね。あわや完全犯罪というところで、たまたまやってき
た名探偵に見破られ、御用となったとか。しかし、何でまたウチの施設に?」
「うむ、鑑定の結果、そいつの精神に異常が見つかったそうだ。だから刑務所ではなく、
ウチの精神病棟へと送られるのだよ」
「へえ、どんな症状なんですか?」
「そいつが言うには、この世界は一つの物語で、自分はその主人公なんだと。他の人物は
脇役で、君も私も、作中の登場人物でしかないそうだ」
「馬鹿馬鹿しい、おかしな話ですね」
「ああ、おかしな話だ。そんなこと、ある訳ないのに」

396 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 19:58:01 ID:BybjDEQf
なんというメタな話w
よく考えると混乱してくるぞ

397 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 23:37:55 ID:b0hFje6g
書いてみました

「カラス・加湿器・ラベンダー」


香水瓶の中に青いオイル。
それは加湿器の中に注がれて、暖炉で暖められた部屋に放散される。

マリーアの褐色の肌はわずかに上気し、首筋の辺りは汗ばんでいた。彼女の体温は、
いつも僕のそれよりわずかに高い。濡れたように光る黒い大きな目、奔放に跳ね回る
長い黒髪。歯を見せて明るく笑うマリーアは、そんなことを彼女に言うととても怒ら
れるのだけれど、カラスのような印象を備えていた。

――そうだった

僕はささやくように言う、マリーアの濃紺の唇が僕の肩口を吸う。

――君は加湿器にブランデーを入れるのが好きだったね。いつの間にか僕たちは夢
心地になって、君はとめどなく放埓になるんだ

ブランデーなんて入れていないわ、とマリーアは言う。今日はラベンダーのオイルよ。
この甘く奥深い香りは確かにラベンダーのものだ、君はいつも香りで僕を支配して、
ただならぬ恍惚の淵へと引きずり込む。君の大きな目は感情の動きにくるくると表情
を変え、肌理の細かい肌は僕のあらゆる部分に密着して体温を伝える。君の高揚と陶
酔は、呼気と体温という形で僕に流れてくる。

398 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 23:39:01 ID:b0hFje6g
僕は、いつもそうであったように夢とうつつの境にあった。マリーアの柔らかな
両手が僕の顔を撫で、熱い息が僕の顔にかかる。

――だめだよ、マリーア

僕は必死に抵抗する。だが心も体も、すでに彼女のものになっていた。暖炉の赤い灯
がマリーアの背後に揺らめき、彼女の白い歯が獰猛な笑みとともにこぼれる。
何故だめなの。彼女がからかうようにたずねる。

――僕たち、まだ十歳にもなっていないじゃないか

何を言っているの。マリーアは困ったような面持ちになって、小首を傾げて僕の腰の
あたりを探る。それは子供の頃の話かしら。

――ラベンダーを嗅いだから、時を少しだけ、遡ったんだよ。

そう、とマリーアは言って、もう喋るなとばかりに僕の唇をふさいだ。
カラスの羽ばたくような長い黒髪。暖炉の灯とむせ返るような芳香。彼女は何も
変わっていない。僕のあらゆる記憶の中で、マリーアはいつも明るく、奔放で、
そして、とても熱かった。


399 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 23:50:32 ID:BybjDEQf
これはなんと官能的な

400 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:06:13 ID:1hcCnWCF
336です。投下しますね。

今度はアレを元ネタにしましたが、アレとは設定が異なってるのでオリジナル作品として読んでくだされ。
あと、お題そっちのけで暴走してるみたいな話になったけど、先に物語ありきではありませんので。
ちゃんとお題から生まれた話ですよ―

401 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:07:33 ID:i8GItOXs
情熱的だなあ。
加湿器をむせ返る様な芳香にからめたのは巧かったですにゃ。

402 名前:カラス、ラベンダー、加湿器○1/5:2008/11/25(火) 00:07:44 ID:1hcCnWCF
俺が扉を開けると、里香はベッドから半身起こして、本を読んでいた。
殺風景な病室の白い壁、病院特有の匂いと雰囲気。俺はそれがとても嫌いだった。
こんなところで毎日過ごしたりしたら気分が悪くなるだろう。それでも里香は、この病院で、もうずいぶん長いこと暮らしてる。
「あ、裕一」
里香は読んでいた本を脇に置くと、俺の方を向いた。何もない病院だ。
来訪者というのは嬉しいものなのかもしれない。わずかに笑みが浮かんでいるように見えた。
「よぉ、里香。お見舞いに来たぜ。これ、うちの庭で採れたラベンダー。
それと調理実習で作ったクッキー 。はは、ごめんなくだらない物ばっかで」
俺は持ってきた物を里香のベッドの傍らにある机の上に置いた。
「ううん、ありがと。あ、ラベンダーいい匂いがするね」
「そうか、まぁ確かに俺もラベンダーの匂いは嫌いじゃないけど……ってあれ?」
俺の視線が見慣れない機器にくぎづけになる。なんだ、あれ?
「ん?ああ、それ加湿器。お母さんが風邪ひくといけないからって買ってくれたの。空気も綺麗にしてくれるんだって」
「へーそうか。よかったな」
これでお前の病気が治るのも早まるんじゃないか、という言葉が喉元まで出かかったが
俺は慌てて引っ込めた。完治するはずがないんだ、里香の病気は……。そんな単純なもんじゃない。
気休めなんか言ったって何にもならない。
「なぁ、里香今日の調子はどうだ?」
「悪くないよ。加湿器もあるし、裕一も来てくれたし」
里香が笑顔で答える。
「なんだ、俺の顔を見ると元気が出るってことか」俺がおどけた調子で言うと
「違うわよバカ。誰も来ない日って退屈なんだもん。いないよりマシってだけ」
里香は顔を背けて、怒るような口調で言った。
「なんだよ、素直じゃないなぁ。そんなこと言うと帰っちゃうぞ」
「いいわよ、別に。私困らないもん」
照れ隠しなのか、機嫌が悪くなってしまったのか里香の語調がちょっと厳しくなった。
「うそうそ、そんな怒るなよ。せっかく来たんだし、少し話しようぜ。今日さ、学校で笑えることがあったんだよ。世古口のやつがさ……」


そう、里香との時間は永遠じゃない。永遠どころか、あと数年続く保証だってない。
時間を無駄にするわけにはいかないんだ。来て早々帰るなんてことできない。楽しまなくちゃ。

403 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:09:19 ID:u/VoUeLZ
この人の書く女の子可愛いなぁ

404 名前:カラス、ラベンダー、加湿器○2/5:2008/11/25(火) 00:09:40 ID:1hcCnWCF
「あとはレポート書かなくちゃ……。じゃあな、里香。また来るよ」
「うん、バイバイ」
話し込んでしばらく経った後、俺は病室を出た。
そして病院の無機質な廊下を歩く。看護士が点滴を運んだり、リハビリ中のじいちゃんがゆっくりゆっくり歩いていたり……いつもの見慣れた光景だ。
俺はあと何回この廊下を歩くことになるんだろうか。そんなことをとりとめもなく考えていたとき、俺の視界に妙な男が映った。
真っ黒な帽子、真っ黒なスーツ、真っ黒な靴……。ビジネスマン風の男が立っていた。
でも雰囲気が普通ではない。目は猛禽類のように鋭いのに、焦点は定まってない。
その男が立っている周辺だけが、普段の病院とは異質な空気に包まれている。
この人はまともじゃない。そう思ってさっさと立ち去ろうとしたとき
「おい」
男の立っている位置をわずかに過ぎたとき、背後から声がかかった。くぐもったような低い声。
今、俺に話しかけたのか?意思に反して思わず立ち止まってしまった。
猛禽類に睨まれたネズミというのはこんな感じか。
「ちょっと……いいか」
これは俺に話しかけているのだろう。俺は動悸が早まるのを感じながら振り向いた。
視線が合う。
「お前は秋庭里香が可哀想だとは思わないか?」
何を言い出すんだこの男。里香を知ってる?俺は声を出せずに男を見ていた。
「俺は可哀想だと思っている……。彼女は幼い頃から病に蝕まれ、苦しい闘病生活を強いられてきたんだ」
「だ、誰なんだ。あんた……」俺は声を絞り出すようにして言った。
「カラス……とでも言っておこうか。カラスみたいだろう」
そう言ってスーツ姿の男は両腕を広げた。夕闇が迫る中、飛びたつカラスのように。
「俺は不公平なことが嫌いでな……」
男は腕を下ろして口を開いた。
「だが世の中には不公平なことが溢れている。例えば生まれて間もなく……いやそれどころか、生まれた時には
既に病に冒されている者もいる。そして辛い日々を送り、結局は若くして短い生涯を終えることになるのだ。
一方で、生まれてから大した病気もせず幸せに暮らし、大往生を遂げる者もいる。なぁ……不公平だと思わないか?」
男が一歩踏み出し、俺との距離が縮まる。俺は反射的に上体をのけぞらせた。
「だから、何なんだ……?」得体の知れない恐怖に体がこわばる。俺は努めて平静を装って言った。すると
「俺は秋庭里香の病気を確実に治すことができる」男は確信に満ちた声で力強く言い放った。


405 名前:カラス、ラベンダー、加湿器○3/5:2008/11/25(火) 00:10:51 ID:1hcCnWCF
「なっ……。そんなの嘘だ」
「嘘……か。確かに『治す』というのは正確ではないな」
男は俺から離れると、目を細めて窓の外を見た。
「移せるのだよ、秋庭里香の病を。何の関係もない第三者にな」
「そ、そんなこと……」
「できないと思うか?だが私にはできる。ただ、それには問題があってな……」
男が俺を見た。鋭い視線が俺に突き刺さる。
「だから俺はお前に話しかけたのだ」
「どういうことだ……?」
俺が尋ねると、男は口元にわずかな笑みを浮かべて言った。
「わからないか?秋庭里香の病を他人に移すというのが何を意味するのか」
男は愚かな者を見るような目で俺を見た。そして
「殺人だよ……。秋庭里香はもうじき死ぬのだからな」男の声が氷のように冷たく響く。
その言葉に場の空気が凍りついたような気がした。いつの間にか、俺はこの男から視線を外せなくなっている。
「もちろん、今まで健康にのほほんと過ごしてきた者に病をなすりつけるのだからな、それは格差是正であり正しい行為だ。
とはいえやはり殺人を犯すのは、俺のような善人には心苦しい……。だから、お前が俺に命令してくれ。 『秋庭里香の病気を第三者に移せ』……と」
男は静かにそう言った。
「それはつまり、責任を俺に押し付けるということか」
「そうだ。俺は哀れな操り人形。お前は傀儡師だ。これなら俺の良心は痛まずに済む。さぁ命令しろ、里香の病気を他の人間に移せ、と」
「断わる……と言ったら?」
「そうだな……里香が死ぬのは実に悲しいが、別に俺は困らない」
里香が死ぬ。その言葉が俺に重くのしかかった。何の罪もない里香が……。病気に殺される?
嫌だそんなの……。
「頼む……」
俺の口はいつの間にか自然と開いていた。
「里香の……里香の病気を他の人間に移してくれ。め……命令だ」

406 名前:カラス、ラベンダー、加湿器○4/5:2008/11/25(火) 00:11:59 ID:1hcCnWCF
「里香……治ったのか!」
「うん、私、もうどこも悪くないよ。学校にだって、どこにだって行ける」
信じられない……。本当に……。あの男の力は本物だったのだ。ということは、他の誰かが里香の病気にかかったんだろう。
だがそんなの知ったことじゃない。あの男が言っていたように『格差是正』だ。
「ねぇ裕一、私ディズニーランドに行ってみたい。それから海で泳いだり、山でキャンプしたり、スキーしたり……色々やってみたい」
里香の目には、今までに見たこともないくらいの輝きが溢れていた。
「いいよ、どこでも連れてってやるよ。あんまり金は持ってないし、季節柄、今すぐはできないこと
だってあるけど……関係ねぇよ。俺達にはまだまだ何十年もの時間が残されてるんだからさ」
俺は里香の手を取って言った。そうだ俺達には未来がある。
「嬉しい、裕一……」
里香の体が俺に寄せられた。里香の髪の毛の甘い香りが鼻をくすぐる。
「ねぇ裕一……わた……て……」
え、何だって聞こえないぞ。
「裕一……なん……裕」
何だ、どうした。あれ、何だ。視界が歪む。景色が崩れる。これは……夢?


407 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:12:40 ID:u/VoUeLZ
支援

408 名前:カラス、ラベンダー、加湿器○5/5:2008/11/25(火) 00:13:44 ID:1hcCnWCF
「裕一、裕一!」
誰かが俺を呼んでいる?視界が真っ白で何も見えない。その上、頭の中にまで霧がかかっているようで意識がはっきりしない。
「裕一!」
これは……里香の声だ。何でそんなに悲痛な叫び声をあげているんだ。
「裕一……」
今度は違う人の声だ。これは……母さん?何でむせび泣いているんだ。
「裕一」
次に聞こえたのやけに、はっきりとした声だった。直接、脳に響いてくるようだ。
「裕一」
もう一度同じ声が聞こえた。そして続けて声が脳内に響き渡る。
「約束は果たしたぞ。秋庭里香の病魔移転完了だ。新しい病魔の宿主は……戎崎裕一、お前だ」
お、俺……?霞んでいく意識の中で、俺は過去を回想した。そうだ。里香の病気を他の人間に移すのを頼んで……。
「俺の任務は終了だ。秋庭里香は今後は病とは縁のない幸せな日々を送ることだろう。さらばだ」
男の声は、何かに吸い寄せられるように遠ざかっていった。
何で……俺が?いや、そうか。俺は今まで大きな病気にかかったことがない。
せいぜい風邪くらいなもんだ。
『生まれてから大した病気もせず幸せに暮らし……』
『今まで健康にのほほんと過ごしてきた者に……』
記憶の中の男の声が蘇る。そうだ。これには……俺も当てはまるんだ。
「『格差是正』だよ、裕一」
里香の声が聞こえた。でもこれは幻聴だ。里香はこうなることを望んでなんかいなかった。俺が死ぬことなんて……。なぁ……そうだろ?
返事を聞く間もなく、俺の脳裏に更に濃い霧が立ち込めていく。
そして遂には、その霧ごと何かに吸い込まれていくように
俺の意識は真っ暗な闇の中へと消えていった。

409 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:14:45 ID:A1veqpwQ
  

410 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:15:41 ID:A1veqpwQ
おおぉぉ
また凄い話が来たな

411 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:16:52 ID:Lf5iH9aF
感情と発病のレベルが濃いな

412 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:19:36 ID:tUgGOwSv
1つのお題に5作品とは…盛り上がってるなあ

413 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:20:27 ID:Lf5iH9aF
簡単なお題じゃないんだけれどねぇ
いいことだ

414 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:22:15 ID:u/VoUeLZ
好きな女を守って死ぬとは漢の生き様だ

え? そういう話じゃない?

415 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:23:07 ID:i8GItOXs
むー、構図は単純なはずなんだけど読んでる自分にぐさりときたよー
良作乙!

自分なら最愛の人の病気を自分の命と引き替えに、
しかも納得ずくで死ねるだろうか

416 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:24:52 ID:A1veqpwQ
でもこの話の場合知らされてなかったんだよね
カラスはいかにも悪魔っぽいなぁ

417 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:31:33 ID:f/UypjZE
お題投下していいですか?
「抹茶白玉あんみつ」

418 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:34:00 ID:A1veqpwQ
じゃあ「冬」

419 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:34:12 ID:Lf5iH9aF
輪廻

420 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:35:55 ID:u/VoUeLZ
次は
「冬」、「抹茶白玉あんみつ」、「輪廻」
で決まりか

また、混沌としたお題だな

421 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:36:55 ID:tUgGOwSv
「抹茶白玉あんみつ」「冬」「輪廻」か
ところで>>397は実によろしい、ちゃんとエロくて(ぇ


422 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 00:37:01 ID:hjcXEBlP
初期からこのスレを覗いてる身としては、盛り上がってうれしいかぎり。

>>386
おお、設定とゆーか世界がリアルだな。歴史好き?
下調べや資料漁りが嫌いな俺には、書きたくても書けない文章でつ。

>>391
こいつは深いな、色々な受け取り方が出来る。もしかしたら俺たちも、単なる作中の……
一つ前のガラカメのパロにはワロタw

>>397
おっきしたw

>>400
上手いね、話がきれいにまとまってて読みやすいし、言い回しも好き。
欲を言えば、オチが予想の範囲内だったので、さらにもう一段斜め上をいってほしかった。でも良作。

423 名前:一窮さん 0/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/26(水) 02:26:40 ID:SvHoEmEf
抹茶白玉あんみつ、冬、輪廻のお題で投下。

424 名前:一窮さん 1/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/26(水) 02:28:52 ID:SvHoEmEf
 むかしむかし……ではなく、現代のお話。あるお寺に、一窮さんという見習いの子坊主
がおりました。
 この一窮さん、まだ小さいのにたいそう頭が良く、ことあるたびに見事なとんちを披露
しては、周りの者たちを感嘆させておりました。

 さて、この地方は冬になると深い雪に覆われます。外出することもままならず、時間を
持て余した一窮さん。彼は次第にネットサーフィンで時間を潰すようになりました。
 もともと頭が良かった一窮さんは、ネットを通じて様々なことを覚えました。情報革命
により、今や子供でも簡単に知識を得られる時代なのです。瞬く間に、大人顔負けの知識
を身に付けてしまいます。
 しかし少々問題が。部屋に閉じこもって、パソコンばかりいじっていたせいか、いささ
か性格がひねくれてしまったようです。頭の良さを鼻にかけ、他人や世の中を小馬鹿にす
るような子供になってしまいました。
「一窮や、輪廻転生の話は知っておるな。お前はたいそう頭がいい、もしかすると本当に
一休さんの生まれ変わりかもしれんな」
 和尚様は笑いながら話しかけます。ほめたつもりだったのですが、一窮さんは素直には
喜びません。

425 名前:一窮さん 2/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/26(水) 02:30:50 ID:SvHoEmEf
「知らないのですか和尚様? とんち小僧の『一休さん』のイメージは、アニメなどによ
り、後世つくられたものなんですよ。実在の一休宗純とは何の関わりもありません。その
くらい常識ですよ」
 万事こういった具合です。いらぬことを言っては、大人たちから叱られておりました。

 ところで、このお寺には名物があります。抹茶白玉あんみつです。
 参詣客に振る舞うためのものなのですが、代々伝わる秘伝の製法でつくられたあんみつ
は絶品で、それ目当てに寺を訪れる者もいるくらいです。
 しかし、修行の妨げになるという理由で、一窮さんは食べさせてもらえません。不満に
思い、和尚様を問い詰めます。
「酒やタバコがダメというなら分かります。ですが、糖分は人間が生きていく上で必要不
可欠な栄養素ではないですか。こんな制約を設けるなんて馬鹿げている」
 しかし和尚様は取り合ってはくれません。
「ダメなものはダメじゃ。我らは質素倹約を旨とせねばならん。いたずらに美食を追求す
るは、煩悩の始まりであるぞ」
 逆に説教をされてしまいました。

426 名前:一窮さん 3/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/26(水) 02:33:06 ID:SvHoEmEf
 しかしある日、片づけものをしようと調理場に入ると、和尚様がこっそりあんみつを食
べているではありませんか。一窮さんは、たまらず詰め寄ります。
「ずるいですよ自分だけ。僕にはあれだけ偉そうなことを言うくせに、恥ずかしいと思わ
ないんですか」
 たじろぐ和尚様、苦し紛れにこのような弁明をいたします。
「い、今まで黙っておったが本当のことを教えよう。じ、実はな、これは子供にとっては
猛毒なのじゃ。口にすると死んでしまう。つまり、食べていいのは大人だけなのじゃ」
 そう言ってそそくさと退散してしまいました。しかし、そんなことで納得する一窮さん
ではありません。
「子供だましの言い訳だ、理屈も何もあったもんじゃない。これだから最近の大人は」

それからいくばくか経った別の日、一窮さんは和尚様からこっぴどく叱られてしまいま
した。理由は一窮さんが嘘をつき、務めをさぼろうとしたことにあります。罰として、座
禅を命じられてしまいました。
 真冬の本堂の寒さは、骨身に堪えます。一窮さんはくやしくてなりません。
「自分のことは棚に上げてなんだよ。それに僕より頭が悪い癖に偉そうに。くそ、今に見
てろ……」

427 名前:一窮さん 4/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/26(水) 02:36:02 ID:SvHoEmEf
 自慢のとんちの出番です。

 翌日、和尚様は用事のために寺を空けることになりました。
 出発を見送った後、一窮さんは納屋から金属バットを持ち出し、和尚様の部屋へと向か
います。部屋に入ると、数々の豪華な調度品が目に飛び込んできました。質素倹約とはま
るで無縁のようです。
 一窮さんはバットを振りかざすと、自慢の調度品の数々を次々と壊しにかかります。青
磁の壷を割り、伊万里の皿を砕き、五十インチプラズマテレビの画面を粉々にしてしまい
ました。
「はあ、すっきりした」
 日頃の鬱憤を晴らし、すがすがしい顔の一窮さん。その足で、調理場へと向かいます。

 調理場の冷蔵庫には、ボウル一杯の抹茶白玉あんみつが作り置きしてありました。
「すみません、僕はとんでもないことをしてしまいました。もはや、命を以て償う他あり
ません。和尚様は、これを『毒』だとおっしゃいました。僕は反省の証に、この毒を飲も
うと思ったのです」
 先ほどの破壊行為を咎められたら、こう弁明するつもりでした。

428 名前:一窮さん 5/5 ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/26(水) 02:38:07 ID:SvHoEmEf
 和尚様は、自分が「嘘
をつくな」と説教をした手前、「本当は、このあんみつは毒なんかじゃない」などとは、
今さら言えるはずがありません。一窮さんの思う壺。
「僕にかかれば、世の中ちょろいもんさ」
 そうほくそえみ、白玉あんみつを口に放り込みます。
「これは……美味しい!」
 一口食べると、そのあまりの素晴らしい味に驚いてしまいました。さわやかな甘味と風
味が口の中に広がり、えも言われぬハーモニーを奏でます。まさに絶品スイーツ、これ目
当てに参詣客が訪れるというのも納得です。二口、三口と食べ進めるうちに止まらなくな
り、無我夢中であんみつを頬張ります。
 その時、異変が起こりました。欲張りすぎたのでしょう、口一杯に詰め込んだ白玉が、
喉につかえてしまったのです。
「……んぐっ……んぐっ!」
 苦しさで、思わずその場に倒れ込んでしまいました。水を飲むため蛇口に向かおうとし
ましたが、手足に上手く力が入らず、立ち上がれません。息ができないため、助けを呼ぶ
こともできません。
 白目をむいてバタバタともがいていましたが、次第に顔が青ざめ……


教訓:世の中そんなに甘くない、大人の言うことは素直に聞こう。

429 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 02:45:47 ID:Zy0Dcb1i

一窮ナマイキだなwww

あんみつの描写の巧さに感激した
明日買ってくることにするよ

430 名前:あんみつこわい ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/26(水) 04:09:26 ID:SvHoEmEf
ついでにもう一つ投下↓


A「なあ、お前らにとって、世の中で一番怖いものってなんだ?」

B「当たり前のことだが、やはり『死』だな。何だかんだ言っても、人間死んだらお %b

431 名前:あんみつこわい ◆phHQ0dmfn2 :2008/11/26(水) 04:13:40 ID:SvHoEmEf
すまん、何かエラーが出たんで貼り直し↓


A「なあ、お前らにとって、世の中で一番怖いものってなんだ?」

B「当たり前のことだが、やはり『死』だな。何だかんだ言っても、人間死んだらおしま
いだ。輪廻転生だの死後の世界だの、そんなもん当てになるか」

C「死も怖いが、希望の無い『生』だって怖いぜ。ウチの会社、今年は不景気で冬のボー
ナスが出ないらしいんだ。まともに貯金も出来やしないし、景気の先行きは不透明。今後
の人生が不安で不安で仕方ないよ」

B「なるほどなあ……で、お前は何が怖いんだ?」

A「俺か、俺は抹茶白玉あんみつが怖い」

C「なんだよ、『まんじゅうこわい』じゃないか。最初からそれが言いたかっただけか」

B「真面目に答えて損したなあ」

A「うーん、流石に引っかからないか……」

C「当たり前だろ。まあでも、ちょうど小腹も減ってきたことだし、三人であんみつでも
食いに行くか……」



アナウンサー「……ニュースをお伝えします。中国製のあんみつの材料から、猛毒の化学
物質が検出された事件です。あんみつを食べ病院に運ばれた三人は、いずれも重体で未だ
意識が戻らず……」

432 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 06:37:25 ID:Ptk35hux
投下すればいいってものでもないんだけどね

433 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 10:58:07 ID:oyNOZRc+
ちょwwテラギョーザw

434 名前:抹茶白玉あんみつ、冬、輪廻:2008/11/27(木) 06:43:30 ID:Xyxa5zTs
「……牛丼、チョココロネ、パフェ、クレープ、メロンパン。では62番目に言った食べ物は?」
「白玉抹茶あんみつ」
助手は考えるそぶりも見せずに即答した。
「凄いな。今言った食べ物は全て順場通りに覚えたのか?」
「はい。完璧です。博士の開発した記憶力増強装置は成功ですね」 助手が嬉しそうに言った。
彼は自らの体を張って実験台になってくれているのだ。
「そうだな、一週間でこの効果なんだ。今年の冬を越すまで使い続ければ……あるいは
人間の限界を超えられるかもしれん。これからも実験台になってくれるか……?」
「もちろんですよ博士。この装置の効果を実証し、その後で発表しましょう。きっと全世界を震撼させることができますよ!」


―冬が終わり春が訪れた―
「博士!!」
青ざめた顔で助手は研究室に入ってきた。
「早く……早く記憶力減退装置を作ってください!」
「何を急に……どうしたんだ?」
「町中に恨みのある奴らがいるんです!このままでは殺してしまう!」
「ちょっと落ち着いてくれ。何があった?」
「思い出してしまったんですよ、前世の記憶を、そして更にその前の前の前の前の前の前の前の前の前の前の……
世代の記憶まで、ずーっと。今や町のあちらこちらに親の敵や恋人の敵がウヨウヨしてるんですよ!殺意を抑えきれません!」
「それはいかんな。すぐに開発しよう」
そう言って博士は助手に背を向けて机に向かった。
記憶力増強装置の応用で記憶力減退装置を作るのはそう難しくない。
博士がペンを走らせ頭をフル回転させていると助手が背中にもたれかかってきた。
更に助手は両腕をまわし、博士の体に絡みついてきた。
「何をしてる?」博士が訪ねると助手は言った。
「何だ……覚えてないの、マリー?350年前に、僕達はこうして毎日愛し合っていたじゃないか。
姿形は変わってしまったけど、君の魂は変わっていない。ああ、だめだマリー!僕は自分を抑えきれないよ!」
助手は博士の服を強引にはぎとった。
「アーッ!」
研究室に、博士の悲鳴が木霊した……。


435 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 08:29:48 ID:Xyxa5zTs
もう次のお題でいいよ
「輪廻」が使いにく杉。
あと「抹茶白玉あんみつ」も微妙。意味に幅がないから使い方が制約される。


436 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 09:17:15 ID:nbfrraE2
そこを何とかするのが腕の見せ所であり
このスレの醍醐味なのさ

437 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 10:40:17 ID:WTFVgTdZ
アッー!

じゃあ次のお題いこうか

「魔法」

438 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 14:34:59 ID:kNRAPFOa
パンダ

439 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 18:05:17 ID:S5nZrTiX
「黒子」
「ほくろ」でも「くろこ」でもいいw


440 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 18:08:14 ID:yPDrh/IO
「魔法」、「パンダ」、「黒子」

の3つに決定しました
白黒VS黒、のアグレッシブな対決が期待されますね

ついでにage

441 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/28(金) 16:11:39 ID:hr7c6gV6
このお題なら書きやすそうだな

442 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 10:46:18 ID:gSzT6OiA
お題を3セットくらい使って長編ってアリ?

443 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 13:41:51 ID:ub2OUDvp
やりたいようにやっていいよ。
ただそれに努力と見合った感想レスがつく保証はないけどw

444 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 14:02:00 ID:aVMoZ7A1
それは読んでみたい!
どんなのが出来上がるかドキドキだ

445 名前:単色カアキ ◆pkHvZT49GM :2008/11/29(土) 20:32:21 ID:n0ZH6nq0
投下するよ。
燃料になればいいな。

2レスでタイトルは
「ほくろのないパンダ」。

446 名前:ほくろのないパンダ(1/2) ◆pkHvZT49GM :2008/11/29(土) 20:33:14 ID:n0ZH6nq0
「なあ雄太」
ピッチャーが暴投するような荒さで、康之はいった。
「なんだよ」
そのワイルドピッチを一瞥すらせず、ド真んなかに構え続けるキャッチャーのように、ぶっきらぼうに俺も応える。
「パンダってさ――」
そこまでいって、康之は黙る。
風が冷たい。なぜ俺たちはこうんなところにいるんだろう。
冬の急勾配の川縁で、腕で膝を抱えるように座っている。ひなたと緑の雑草がやたらと心地いい。
「なんだよ」
遠くの空を見ながら隣の雄太にいう。
逡巡の空気が漂った後、「やっぱいい」とだけ呟いた。
「なにがいいんだよ」なおも俺は食い下がる。
「大したことじゃねえから」
「いいからいえよ」
制服の胸ポケットから煙草を出しながら、しかし康之のほうは見ずに言葉を放つ。
「いいんだって」
「お前がよくても俺がよくねえんだよ」
俺がこうして絡むのは、別に康之の話がとてつもなく聞きたいからじゃない。
それだけ暇だということだ。康之をもてあそぶという暇つぶしだ。
またも躊躇の雰囲気が流れ、康之は口を開いた。
「パンダってさ、ほくろ、あんのかな」
はあ、と康之を見て疑問符を投げかける。
無視するみたいに康之のほうを見ないことを目標にしていたのに。
打ち負かされた気分だと悔やみながら、視線を空に戻す。
「あったらなんなんだよ」
俺の胸ポケから煙草を一本かっさらい、康之は火をつけて吸った
「――見えんのかな、ほくろ」
意味がわからなくて、俺は首だけ傾げた。
「ほら、パンダって白黒じゃん。黒いところにほくろあったら見えねえじゃん」
空から視線を外し、目の前の中空を見つめて考える。なるほど。
「でも白いとこなら見えるじゃん」
まだ火のついていない自分の煙草を、康之のほうに向ける。火をつけやがれこのヤロウ、という意味だ。
「でもテレビじゃホクロあるパンダなんて見ねえし」
「隠れてるだけじゃね」
「ああ、月の裏側が見えねえみてえにな」
何度も何度も頷いてから、やっぱ違うな、と独り言のように漏らす。
「動物園でもほくろのあるパンダなんて見なかったし」
なんだか少しうざくなって、じゃあパンダのほくろは白いんじゃね、と投げた。
「ああ、白いほくろか。それだったらパッと見じゃわかんねえよな。
……いや、やっぱパンダにほくろはねえんだわ」
俺の煙草をしっかりと無視して、康之は一人で納得している。
「火ぃつけやがれこのド腐れが」
俺が呟くと、そっか、と康之は漏らす。
「黒子のパンダもたぶんいねえんだわ」
なにくろこって、と煙草の先を康之の頬にグリグリ押しつけながら訊く。
「まっくろの個体のことさ。遺伝子の異常だとかで、色素がおかしくなることがあるらしい。
――で、その黒子ってのは、パンダには生まれないんだ」

447 名前:ほくろのないパンダ(2/2) ◆pkHvZT49GM :2008/11/29(土) 20:33:48 ID:n0ZH6nq0
「……よくわからんが、そうなのか」
ああ、と頷きながら俺の手を振り払う。
「まっくろなパンダはパンダじゃない。それと同じように――」
希望に輝く眼差しで、康之は雲を見上げる。
「――白いほくろはほくろじゃない」
俺たちの見る遠くには、青い空と白い雲。
たゆたう雲はどこか自由そうで、でもヤツらは自らどこかへ行こうとは思わないんだろう。そう感じた。
「で、なんの話してたんだっけ」
康之のなにげない疑問に、俺も考え込む。なんだっけ。
「ああ、そうだそうだ。進路の話だ」
康之は自分の疑問に、自分で答えた。
そうだった。もう年の瀬も押し迫り、受験勉強もろくにしていないのは俺らぐらいだろうな、って話をしてたんだった。
高校3年生。塾にもいかず授業はよくサボる。そんな悪友同士。
「進路か。卒業したら就職でも――」
そこまでいった康之の言葉を、横から俺が掠め取る。
「――それはねえな」
康之は俺を一瞥して、にやっと笑って煙草を消した。
「――バンドでも組むか」
俺は彼方の空を見て、それもいいな、と呟いた。
「よっしゃ、ギター見に行こうぜ!」
康之に腕を引かれ、俺は嫌々立ち上がった。
俺はボーカル兼リードギターでお前はベースな、と勝手に決める康之に、
オンチがボーカルじゃ長くもたねえな、と俺は悪態をついた。
火のつかなかった煙草はどこかに落ちて見当たらなかった。
まあ、それでもいっか。と心中で笑った。
したいことを抑えて笑いたいときに笑わない、そんな俺たちは俺たちじゃない。
空が高い。この青い空がいつか夜に陰るとしても、今、俺たちは笑っていた。

448 名前:単色カアキ ◆pkHvZT49GM :2008/11/29(土) 20:34:20 ID:n0ZH6nq0
以上ですよ。
感想あると嬉しいな。

449 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 20:37:44 ID:aVMoZ7A1
白い黒い以前に毛があるからほくろは見えないんじゃね?
しかし暇なときって本気でどうでもいい話したりするよなw

450 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 21:47:32 ID:QlvbFDMW
たしかに色以前に毛で見えんわなw
しかし、白子(アルビノ)の反対の意味の黒子ってあるのか?

451 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 21:53:02 ID:gSzT6OiA
表現が無駄に小難しいのがウザい。雰囲気はちょっと好きだけどね。乙

452 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 01:27:29 ID:UxvWGjBN
このスレ、他のSSスレなんかに比べると反応が辛口だよな。
全体的な作品のレベルは、むしろ他より高いくらいだと思うんだがなぁ。

453 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 12:12:31 ID:YeJ5uFRz
変に馴れ合いとか変に叩き合いとかじゃなくてこのくらいがちょうどいい

454 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 12:54:46 ID:tyDoHSH8
もう次のお題に行っちまっても、いいんじゃねぇのかぁ?

455 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 13:38:12 ID:tyDoHSH8
まだ早いだろ。あと2、3日は今のお題でいいんじゃないのか。

456 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 15:03:10 ID:h0e954OX
志村〜!
ID!ID!

457 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 15:24:15 ID:zhCcC5IW
悪いが大爆笑w

458 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 16:14:06 ID:ZA6zGQbU
落語かよw

459 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 20:23:28 ID:zfx680CN
約1時間の間にはたしてtyDoHSH8になにがあったのか

460 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 22:53:04 ID:moV+zKd5
 突風に晒されながら、僕は揺らぐことも無く立っていた。
 地上三十階建ての、この街では一、二を争う高さのビル。そこに、
僕は立っていた。
 僕の、生まれつき白みがかった髪と肌は、夕焼けの色に染められ、
心の中は、これから訪れる宵闇のような青に染まっていた。
 今日も、これから戦いだ。
「……世界は間違っている」
 そんな僕の怨嗟の声は、どこにも届くことは無い。如何に間違って
いようが、世界は止まる事無く、前を向いて進んでいくのだから。
 僕の声に追いつかれまいと、先んじて進んでいくのだから……。
 僕の苦労が報われる事が無いのを、如何に不満に思っていようと、
そんな事は世界にとっちゃ知ったこっちゃないのだ。
「……レンレン」
 僕は、肩に乗っかった“相棒”に声をかけた。
「レンレンって言うな。……なんだよ」
 白と黒のツートンカラー。いわゆるパンダの姿をしたそれは、
動かなければただのぬいぐるみにしか見えない。
 だが、それは動く。それどころか、喋りすらする。あまつさえ、人並み
以上の知性すら持ち合わせている。
 彼――性別は、一応オスらしい――は、彼自身の証言を鵜呑みに
するのならば、魔法の国からやってきた魔法の国の住人なのだとか。
 名前はレン。僕は、愛着を込めてレンレンと呼んでいるが、彼には
その呼び名はあまり気に入られていないようだ。
 勿論、最初は単なるトリックだと思って、そんな発言は真に受けて
いなかった。どこかに発信機が無いか、どういうギミックで動いているのか、
色々と彼を調べたりもした。でも、彼から力を貰い、僕はその言葉を信じる
しかなくなった。そして――
「……いつになったら、終わるの?」
 ――この、忌々しい戦いに、参加せざるをえなくなった。
 別に、僕の戦いを誰かに見て欲しいとか、評価して欲しいとか、そういう
事を思ってるわけじゃない。だけど……これは、あんまりにもあんまりだ。
「そりゃあ……ステージモンスターを全部倒すまで」
「……はぁ」
 それは、わかっている。問題は、怪物共が、あと一体何対いるのか、
という事だ。僕は、返ってくる答えをわかっていながら、あえて聞いた。
「あと、何体いるの?」
「わかんない」
 ……やっぱり。
「ずっとわかんないままなの? 前聞いた時もわかんなかったよね?」
「そんな事言われても……俺、そういう情報収集苦手で……」
「……はぁ」
 この頼りにならない相棒の存在も、僕のため息の数を増やす一因だ。
 とはいえ、彼がいなければ僕がここにこうして立っている事はなかった
わけで、そういう意味では感謝はしている。僕の命を救ってくれた事に関しては。
 でも……もうちょっと違う救い方はなかったのかな?
「とにかく、今日も出るんだよね、これから?」
「うん、それは間違いない。さっきステモンの気配感じたから」
 ……命と引き換えに、戦う宿命を背負わされた、か。
 言葉にするとカッコいいんだけどね……僕も、最初は結構いいかも、
って思ってたりしたくらいだし。
 でも……やっぱり、これはあんまりにもあんまりだよ……。
「先に変身しとこうよ、美由!」
「……」

461 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 22:53:20 ID:moV+zKd5
 僕はジト目でレンを見る。
 僕が変身したくないって事、一向に彼は理解してくれない。
 こんな口調にこんななりだけど、僕も一応女の子だ。魔法の国の
住人の力で変身するとなれば、それは当然魔法少女なわけで、初めての
変身の前には、僕は凄く期待した。
 ……そして、その期待は見事に裏切られたのだ。
 きらびやかなコスチュームに、華やかに彩られた魔法のステッキ。
 そんなものは僕には一切与えられず――
「あっ、ステモンの気配が近いよ! さあ、美由、変身だ!」
「……はぁ」
 戦う力は、“あの姿”にならなくては手に入れられない。そして、僕が
戦わなくては、大勢の人にステージモンスターは迷惑をかける。
「……マジカルウラカタスタッフサン、ショーオンザステージ!」
 ――与えられた姿は、これだ。
「魔法の黒子、マジカルミュー、こっそり見参!」
 黒子。そう、黒子。もう、ほかに説明のしようが無いくらい、どうしようも
無く黒子。舞台の袖で待機し、大道具小道具を捌けるのに全力疾走し、
観客の意識を捉えないよう、黒に全身を包む、裏方専門スタッフ。
 その黒子に、僕は変身するのだ。
 ………………。
 黒子って……黒子って……。
 これは、無いよ……何度変身しても、やっぱりそう思う。
「さあ、今日も背後からこっそり忍びよって、気づかれない内にステモンの
 急所をそのステッキで一突きだ!」
 しかも戦い方こんなのだし……これも無いよ……なんで? なんでなの?
 別に誰かに知ってもらいたいわけじゃない。派手な戦いをして目立ちたい
わけでもない。でも……でもね……これは酷いでしょ?
「……やっぱり、世界は間違っている」
 怨嗟の声は、やっぱりどこにも届く事は無く――
 今日も僕の戦いは、ため息に彩られて始まるのだった。

                                      終わり

462 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 22:55:05 ID:moV+zKd5
魔法の黒子って言いたかっただけとです。

463 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 23:19:25 ID:zfx680CN
魔法少女ならぬ魔法の黒子かwww
しかも僕っ娘とは

464 名前:創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 23:22:39 ID:tyDoHSH8
すげーいい!文章のリズムが滑らかだし、アイデアも俺は好きだ。
君の中に俺は野村美月を感じたぜ。

465 名前:笑いボクロ 1/6 ◆phHQ0dmfn2 :2008/12/01(月) 15:27:36 ID:4nte5+W2
 その女は美しくなかった。いや、正確に言うなら醜かった。
 だらしなく太った体、シミと吹き出物だらけのくすんだ肌、肉団子のような脂ぎった鼻
、分厚く紫色の唇、腫れぼったい目。さらに血行が悪いため、目の周りは常に濃いクマで
縁取られており、周りからは「パンダちゃん」などと揶揄されていた。
 部屋で鏡の前に立ち、一人つぶやく。
「どうしてこんな顔に生まれてきたんだろう……」
 彼女は恋も知らない。人並みに男性に好意を寄せたことはあるが、自分の容姿を気に病
み、いつも想いを伝えることができないでいた。
「わたしだって恋をしたい、生まれ変わりたい。美しくなりたい、美しく……」

「なれるわよ」
 突然、声がした。
 驚いて振り返ると、小さな可愛らしい女の子が立って……いや、浮かんでいる。文字通
り『小さな』女の子で、身長は十五センチくらいだろうか。背中には透き通った羽がつい
ている。
「あなた……何なの?」
「妖精よ」
 女がたずねると、こともなげに答えた。夢かと思い頬をつねってみると、たしかな痛み
がある。これは現実なのだ。

466 名前:笑いボクロ 2/6 ◆phHQ0dmfn2 :2008/12/01(月) 15:29:48 ID:4nte5+W2
「わたしは美の女神様に仕える妖精なの。お望みなら、あなたを魔法で美しくしてあげて
もいいわ」
 まるでシンデレラだ。突然の申し出に一瞬戸惑うも、女に断る理由はなかった。
「お願い、美しくして。そのためなら何でもするから」
 心の底から懇願する女。
「わかったわ、あなたの理想通りにしてあげる。でも一つだけ約束して、これからは絶対
に『笑って』はだめ」
「笑っては……だめ?」
「ええ、そう。願いを叶えるには、それ相応の対価が必要なの」
「もし笑ったらどうなるの? まさか命を落とすとか……」
 不安げに聞くと、妖精はクスクスと笑った。
「大丈夫、そんな大事にはならないから安心して。えっとね、これからは一回笑うたびに
、あなたの顔にホクロができちゃうの。泣きボクロならぬ『笑いボクロ』ってところね。
顔中ホクロだらけじゃあ、せっかく美しくなっても台無しだから気を付けないとね。さ、
どうする? 覚悟はできた?」
 女は少し悩んだ後うなずいた。
「ハルハルハルハルトシュラー……」
 妖精が手をかざし呪文を唱えると、女の体は暖かい光に包まれた。
「はい出来上がり、これで満足かしら?」
 おそるおそる鏡をのぞき込み、女は思わず息を飲んだ。

467 名前:笑いボクロ 4/6 ◆phHQ0dmfn2 :2008/12/01(月) 15:32:11 ID:4nte5+W2
 すらりとした体、しなやかな手足、艶やかな髪、透き通った白い肌。大きくて潤んだ瞳
は長い睫で縁取られ、形のいい鼻とピンクの唇には艶めかしい色気が漂う。そこには思い
描いていた理想の自分の姿があった。
「これが……わたし?」
 思わず笑顔がこぼれる。
「すごい……すごいわ! 本当にありがとう」
 礼を言おうと振り返ったが、妖精は消えていた。
 次の日、目覚めた彼女は再び鏡を見てうっとりとする。しかし、あることに気付いた。
「あれ? こんなところにホクロが……」
 頬の真ん中に、ぽつんと小さなホクロがあった。昨日見たときはなかったはずだ。
「そっか……昨日、うっかり笑っちゃったんだ。これからは気を付けないと」

 女は職も住まいも変え、生まれ変わった新しい人生を送り始めた。
 夢のような毎日だった。すれ違う男たちは彼女を見て感嘆を漏らし、女たちは妬みと憧
れの入り交じった視線を浴びせる。これまで味わったことのない快楽に、女は酔いしれて
いた。

468 名前:笑いボクロ 4/6 ◆phHQ0dmfn2 :2008/12/01(月) 15:35:35 ID:4nte5+W2
 しかし『笑えない』生活というのは、なかなか骨の折れるものだ。彼女はテレビや漫画
を見ることを止めた。また人付き合いも必要最小限しかしなくなった。何かのきっかけで
笑ってしまっては、せっかくの美しさが台無しだ。
「君は変わってるね」
 男性からはこんな風によく言われる。デートに誘われることはたびたびあったが、笑顔
をまったく見せない彼女と深い仲になる者はいなかった。
「これも美しさを保つためなんだもの、仕方ないわ」
 女は自分自身にそう言い聞かせる。念願の美を手に入れたのだ、このくらいの代償には
耐えなければならない。

 そんなある日、彼女は恋をした。ふとしたことで知り合った青年に、一目で心を奪われ
てしまったのだ。
 ギリシア彫刻のような引き締まった体、精悍かつ繊細な顔立ちは、単に整っているとい
うだけではなく、言葉に表せない不思議な魅力を放っている。
(この人が、もしかしたらわたしの運命の……)
 女は直感的にそう思った。
 また、青年には少し変わった部分があった。若くてハンサムなのに、人付き合いを避け
世捨て人のような生活を送っているそうだ。どこか自分と似ていて、そこに女は惹かれた
のかもしれない。
 女は毎日その青年のことを想う、想いはどんどん膨らむ。そしてついに決心した。
「この想いを伝えよう」

469 名前:笑いボクロ 5/6 ◆phHQ0dmfn2 :2008/12/01(月) 15:37:16 ID:4nte5+W2
 美しさからくる自信は、彼女を行動に駆り立てた。意を決して青年の部屋を訪ねる女。
「どなたですか?」
 青年が顔を出す。しかしその顔は、全体が隠れるほどの大きなマスクとサングラスに覆
われていた。
「すみません、突然お邪魔して……あの、どうかされたんですか?」
「いや……ちょっとね。それより何か用ですか?」
 ぶっきらぼうに言う青年、どうやらあまり歓迎はされていないようだ。しかしここまで
来ては引き下がれない。すうっと深呼吸をして、彼女は想いを告げた。
「わたし……あなたのことが好きなんです」
 しばしの沈黙の後、男が口を開く。
「ありがとう、うれしいよ。でも、残念だけど君とはつき合えないんだ」
 女の目の前が真っ暗になった。自分の美しさに自信を持っていただけに、断られたショ
ックは大きかった。

470 名前:笑いボクロ 6/6 ◆phHQ0dmfn2 :2008/12/01(月) 15:38:52 ID:4nte5+W2
「あの……わたし、タイプじゃないですか?」
「そんなことないよ、君はとてもきれいだし魅力的だ」
「じゃあ、他に恋人や好きな人でも?」
「いや、そんな人いないさ」
 じゃあどうしてと食い下がる女。青年は困ったように腕組みをした後、仕方ないなとい
う風に口を開いた。
「うーん、このままだとあきらめてくれないみたいだね。じゃあ正直に打ち明けるよ。実
は、昔の僕はとても醜い男だったんだ。でもある日、不思議な妖精が現れて、魔法の力で
今の姿に変えてくれたんだ。信じられないかもしれないけど、本当の話だよ。でも、それ
には条件があってね。誰かが僕のことを好きになり想いを寄せるようになると、その間、
僕の顔は……」
 そう言って青年はマスクを外した。現れた顔を見て、女は絶句する。
「こうなってしまうんだ、笑えない話だろ?」
 そこには、顔一面をびっしりと覆う『想われニキビ』が……

471 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 18:49:20 ID:b77X/Lah
俺、浪人生なんだけどさー今日は倫理で面白い誤植があったよ
「人工受精」って書かれるはずのところが「人口受精」ってなってたw
人の口で精子を受けるって意味に取れるよねw ゴックンのことかよwww


472 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 20:06:45 ID:GBMxDW76
同じ黒子が増えるタイプで
同じ境遇のものどうし、黒子が増えることを気にせずに生きていこうと誓い合うハッピーエンドかと思ったらww
この終わり方は予想外

473 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 21:59:54 ID:ACswluXW
なるほど、黒子(ほくろ)ね
(くろこ)としか見てなかった

474 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 22:03:32 ID:nZZYG2/G
この男ほとんど常に思われにきびできてそうだなw

475 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 00:47:40 ID:EAK7bbI0
>>442
実際に十題噺を試したことあるけど、なかなか新鮮だぜ。
さすがに十個もあると、お題を話に盛り込み辻褄を合わせるだけでも一苦労だがw

476 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 14:38:53 ID:IuwZDhyD
>>475
見せろ。投下しろ。

477 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 16:53:26 ID:LFmpCwrU
次のお題だそっかー。
「カボス」

478 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 17:35:07 ID:Qdu/7V20
「巫女」

479 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 17:35:42 ID:np82Duwa
こたつ

480 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:06:17 ID:sSQ8F7Rn
「うー、さぶっ」
 まったく、歴史のある神社というのも困ったもんよね。
 別にいいのよ? 正月も巫女装束で、やってくるお客さんを
もてなさなければならない、っていう伝統に関しては。
 そのお陰で、最近のブームにも乗っかれて、参拝客はウナギ昇り。
お守りとか破魔矢の捌ける数も、数年前から比べると数十倍にまで
なったんだから。生活の為に神社をやってる、うちみたいな家から
したら、懐が潤うのは悪い事じゃないってのは、確かにそう。
 けどねぇ……巫女装束しか身につけちゃダメ、ってのはどうなのよ?
しきたりだかなんだか知らないけど、上にも下にも、巫女装束以外の
服を見につける事が、うちでは禁じられている。
 寒風吹きすさぶこの真冬、しかも山上の境内において、ほとんど
シャツ一枚に等しいこの巫女装束は、厳しいとかそういうレベルじゃない。
鍛えてないと死ぬ。いやホントに。
 この為に、秋口から水垢離とかやって寒さになれる訓練はしてるん
だけどねぇ。それでも、やっぱり寒いものは寒いのよ。仕方無いわよね?
 だから、休憩時間になると、部屋に飛んで帰ってこたつに一直線。
「あぁー」
 思わず風呂に入ったおっちゃんみたいな腑抜けた声が出る程温かい。
 まさに生き返るような心地、って奴よね。
 今日はまだ正月に向けての準備だから、このままお昼の流れだ。
しばらくはこの天国に浸っていられる……ああ、幸せ……。
 けど、参拝客が来るわけでもない、正月に向けての準備まで、こんな
薄布一枚でやんなきゃいけないのは、何かこうしきたりに対する理不尽さ
みたいなのをどうしても感じるわね……。
「おーい、和美ぃ」
 あ、何か呼んでる……けど、出たくないのよね、この天国から。
「なぁに、仁樹?」
「今日、冷え込むから、昼は鍋でもしようと思うんだけど、いいかぁ?」
「構わないわよぉー、っていうかむしろ大かんげー!」
 岩沢仁樹は、私の従姉弟だ。料理人志望とやらで、この時期になると、
うちの神社で出店みたいな感じの飲食店をやっている。というわけで、
正月前後になると、うちの料理も彼が作ってくれるんだけど、これがまた
美味しい。彼のお店も、参拝客増加の一因ね、きっと。
「よっしゃ、しばらく待っとけよぉー」
 確か、冷凍庫にはお豆腐があったはず。お鍋にはやっぱり豆腐よね。
あの豆腐も仁樹の手作りで、とっても美味しいのよねぇ……あ、涎出そう。
 それに何より、仁樹が作る鍋と言ったら、自分でカボス搾って作って
くれる、ポン酢の美味さが特筆物。適当に作ったしゃぶしゃぶでも、
アレにつけて食べたらホントにほっぺたが落ちそうなくらい美味しく
感じるんだから。
「あー、ホント幸せー」
 まあ、この幸せもつかの間なんだけどね……。
 昼休み終わったら、父さんや母さんと準備の作業替わってあげないと。
流石に両親働かせっぱなしでコタツでぬくぬく、ってわけにはいかないのさー。
「孝行娘よねぇ、わたしも……えへへ」
 自分で言ってみて、ちょっと照れくさくなっちゃった。あは。
 ま、今はまだわたしの休憩時間。
 ひと時とは言え、この幸せを時間の許す限り味あわせてちょーだい。

                                               終わり

481 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:06:34 ID:sSQ8F7Rn
ちなみに上も下もついてないし履いてないです。

482 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:09:54 ID:ZMEoBMgo
参拝客が増えている本当の理由は……
いや、言いますまい、そんな事は

483 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:12:01 ID:np82Duwa
凄く綺麗に御題クリアしてるね


484 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:13:10 ID:Pf0A6V+X
そこな巫女…豆腐を分けてくださらぬか

って言いたくなったのは秀逸な描写とキュムキュムのせいだな
正統派三題消化だね

485 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:44:11 ID:Qdu/7V20
GJ!


柊姉妹はまだか!?

486 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/12/04(木) 23:48:24 ID:Pf0A6V+X
>>485
よく
覚えてたな
アレ(229)は縦読みだって

487 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 00:27:20 ID:8J6Vi52b
最優秀三題噺賞

488 名前:お題:巫女、カボス、こたつ 1/2:2008/12/05(金) 11:47:28 ID:QjHhxKPt
 俺が学校からの帰り道商店街をいつものように歩いていると少女に話しかけられた。
「あんた、私の代わりに巫女になりなさいよ」
 巫女という字には女という文字が含まれており、
 俺は口調と一人称から判断できる通りに男なので、
 頼む相手としては相応しくないなぁとか、
 それを言うんだったら巫男という読み方も分からないような単語が適当なんじゃないかなぁ、
 と一瞬でよくここまで考えられるよな、と思わず自画自賛したくなってしまうような思考を経て、答える。
「お断りします」
 こういう輩に対しては明確な意思表示をする事が大切だ。
 曖昧な返事をすると間違いなく自分の都合のいいように解釈されてしまう。
「いいから、ほら、早くこれ着て」
 渡されたのは巫女装束であり、目の前にいる少女が着たらさぞ似あうのであろうが、
 俺が着てる姿を想像しても気持ちが悪いだけだ。
 いや、案外目の前の少女もそういう事なのかもしれない。
 人間だれしも自分に対する評価というのは低くなりがちだ。
「大丈夫、俺が保証する」
「はぁ? あんた何言ってるの?」
 何を言っているのかと聞かれれば、確かに何を言っているか分からなかったなぁ、と反省しつつ
 少女に手渡された巫女装束をどうしたもんかと逡巡する。
「早く!! ヤツラが来ちゃうじゃない!!」
 少女の焦り具合は尋常ではなく、授業中に便意に襲われた小学生のそれと同じくらいであり、
 こう表現するとイマイチ焦り具合が分かりにくくなるが、それはもう焦っている様に見えた。
「早く着替えなさいよ!! 地球のピンチなのよっ!!」
 俺が巫女装束を着ないと地球がピンチになるのか。
 地球の平和の安さに驚くべきなのか、自分の巫女装束姿の高さに驚くべきなのかを考える。
 しかしそれがこの事態の解決につながる訳ではないと、ふと気が付く。まさに天啓。

489 名前:お題:巫女、カボス、こたつ 2/2:2008/12/05(金) 11:48:17 ID:QjHhxKPt
「分かった、着るよ」
 別に何が減る訳でもなく、唯一減るものといったら俺の時間くらいなもんだろうが、
 この無意味な押し問答をする時間と比べたら、巫女装束姿を少女に見せる時間と大差無いように思えたのだ。
 流石にこの衆人監視の商店街で着替えるのは勘弁してほしいなぁとは思ったが、
 少女の眼圧に俺は耐えられれなかったのでいそいそと着替えることにする。
「あんたが着ればいいんじゃないか?」
「私には巫力がないの」
 巫力と言われても俺は浮力の方しか想像できず、
 遠まわしに俺が周囲から浮いていることを揶揄されたのかと深読みしてしまったが、
 少女の説明を聞くと巫力は霊力のようなものであり一種の才能のようなものであり、
 本来は修行をしなければ使えないらしいのだが、
 少女に手渡された巫女装束には着てる者に巫力を引き出す力を与えるらしい。
「おっし、着れたぞ」
「似あうじゃん」
 そう言って少女は不敵にほほ笑んだ。嫌味か?
「あれが敵よ」
 そういって少女の指さす先には確かに黒くてふわふわした何かが浮かんでいた。
「で、俺は何をすればいいんだ?」
「近づくと危ないから、遠距離から何かを投げつければいいわ」
 何か投げつけるのに適当なものがないか周囲を見渡すが何も見当たらない。
 とりあえず八百屋のおっちゃんに事情を説明すると、
 腐りかけのカボスを提供してくれることになった。
「巫力を込めて、思いっきり投げつけて」
 巫力を込めろと言われても、初めて使う力だから勝手が分からない。
 幸いカボスは大量にあることだし、とりあえず試してみるか。
「えい」
 やる気のない感じにカボスを放り投げる。
 近所の小学生でもこれをキャッチするのは容易いだろう、という球速、軌道。
 カボスはやる気のない放物線を描いて黒いふわふわしたもにあたり、消滅。
 余りのあっけなさに気が抜ける。そもそも気を込めていたのかは謎であるが。
「お疲れ」
 そういうと少女は俺の家の方向とは逆方向に歩いていってしまう。
 巫女装束は返さなくていいのかと思うも、これが報酬なのかもしれないと閃き、
 俺の生活に巫女装束がまた必要になる事態は無いので報酬としては成立していないという結論に達する。
 制服に着替えようかと思ったが、人目が痛いので走って家に帰ることにする。
 何がなんだか分からないが、人生なんてそんなもんかもしれない。
 突然人生なんて語りだしてどうしたんだコイツは、と思ったかもしれないが、
 こういう時は意味の分からない深そうな事を言って置くのが定石ってもんじゃないかと俺は思う。
 疲れた、思考のしすぎなのかもしれない。家に帰ってコタツにでも入って温まろう。
 如何せんこの巫女装束ってのは薄着でいかん。体の芯まで冷え切っている。
 人生とは巫女装束のようなものかもしれないな、そんな事を考えながら早足で家路につく俺なのであった。

490 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 11:58:34 ID:QjHhxKPt
三題噺、初挑戦、投下完了

これで少しは三題噺のレベルが下がるといいんだけどな

491 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 12:12:51 ID:XEebZpZT
投下乙!
意外と巫女服いきなりもらうってラッキーかもよ

492 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 14:30:34 ID:uXA+Bsb4
なんでもそうだけど、つくりのしっかりしたのは高いからな

493 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 14:39:04 ID:8J6Vi52b
文章が冗長ですね。もう少し歯切れの良い文章にすれば良いかと。
でも初めての割にはお上手ですよ。

494 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 15:58:32 ID:Bn1PQfv5
こういうラノベ、実際にありそうだなw

495 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 00:45:07 ID:cFHc+b0o
そろそろ次のお題出してもいいのかな?

496 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 07:44:58 ID:CrKxZBTf
いいとも〜

497 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 15:11:39 ID:PgWgbUc7
「食事」

498 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 15:14:18 ID:sgs7rUVD
「150年後」

499 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 16:45:13 ID:CrKxZBTf
《地球儀》

500 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 21:53:37 ID:fYTrHA8p
「食事」 「150年後」 「《地球儀》」で決まりですか。

501 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 21:54:25 ID:fYTrHA8p
「君はこれを見てどう思うかね?」
 白い髭をたくわえた男は、向かいに座り、携行食での簡素な食事を
摂っている女に尋ねた。手元にある、小さな模型のようなものを指し示しながら。
「どうって……《奇妙な双子の根源》……シャム・オリジナル、ですよね」
「そうだ。その球体地図……かつて、かの世界においては、当時の天体名を
 取って《地球儀》と呼ばれていたものだ」
「その骨董品がどうかしたんですか、先生?」
 女は相変わらずパリポリと音を立てながら、携行食を頬張っている。
 その様子に、男は軽く嘆息を漏らしながら、言葉を続けた。
「……君の食べているそれだがね」
「これですか? ごく一般的な、このテラにおける食事ですよね?
 これがどうかされたんですか?」
 栄養を満たし、ある種の成分により腹も満たし、それを食べるだけで
一日分の食事を取る必要がなくなるというそれは、この世界が“テラ”と
呼ばれるようになった頃から作られるようになり、今では全世界において
広く食されるようになっている。
「味気ないと、そうは思わんか?」
「味気ない? ……これ、チョコレート味ですけど?」
「そういう事を言っているのではない」
 男は再び嘆息し、壁面ディスプレイのスイッチを入れた。
「かつて、テラがアースと分かたれる前……その星がまだ《地球》と
 呼ばれていた頃の食事が、これだ」
「へえ」
 そこには、その当時の一般的な昼食――当時は一日の食事を
三回に分けて取るのが一般的で、つまりはこれは昼に食べる
食事というわけだ――の様子が映し出されていた。
 その映像には時折ノイズが走り、お世辞にも綺麗な映像とは
いえなかったが、そこに映っている物については十分に判別できた。
「なんか……ごちゃごちゃしてて、面倒臭そうですね」
 女は、感じたままを素直に口にする。
 茶碗という言葉も、そこに盛られている白米という存在も、そして
おかずという概念すらも、彼女には存在しない。いや、彼女だけではなく――
「……それが、今を生きる我々の、一般的な考え方だな」
 この世界の、誰の中にも。
 簡素な食事。彼女の食事風景をそう評する人間は、この世界の中に限って
言えば、男くらいのものだ。この世界における“一般”は、彼女の感性に
他ならず、そしてこの世界には、男のように、過去を振り返る人間は――
歴史を読み解こうとする人間は、ほぼ、存在しない。
 故に、彼女の摂っている食事は“当たり前の食事”であり、決して本来は
“簡素な食事”などと評されるものではないのだ。それは食事だけの話ではなく、
ありとあらゆる活動が合理化され、最小限の労力で済むようにと、今の世界は
その様式を変えていた。いや、変えていたという言葉も当てはまるかどうか。
男にしろ、女にしろ、気づいた時には世界はそうあったのだから。
 ただ、昔を知ろうとした男だけが、かつてはそうでなかったという事を
知っているに過ぎない。ただ、それだけだ。
「だが思うのだよ、私は」
 男は、孤独な男は、だがそれでも思わずにいられなかった。
 白い髭を撫で付けながら、遠くへと視線を飛ばす。天窓から見える空に浮かぶ、
青く、白く、緑色をした天体へと。
「世界が元の一つから、二つに分かれて一体何年の月日が流れたのか……
 それは未だ私にもわからん。誰にもわからん」
 《地球》という一つの星が、《テラ》と《アース》という二つの星に分かたれた。
その事実は、空に浮かぶ青く、白く、緑色をした天体が教えてくれる。
その事実は、誰もが知っている。だから、かつて《地球》と呼ばれていたこの世界の
源は、現在《奇妙な双子の根源》という名で呼ばれている。
 だが、それだけだ。空に浮かぶそれは、その事実を教えるだけで、
他に何も語りはしない。そして、多くの……いや、彼以外の誰も、それ以上を
知ろうとはしなかった。過去も、現在も――
(――そして、これからも?)

502 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 21:55:06 ID:fYTrHA8p
 何故かはわからない。だが、その事を……誰も過去を振り返ろうとしないという
事実が、男の身体に身震いを生じさせる。
 いつだったかはわからない。最初にその身震いを感じたその時から、
男は孤独にも過去を振り返り、歴史を紐解く努力を始め、そして今に至っている。
「知ろうとすればわかるのかと思ったが……私一人がそうした所で、
 過去を、歴史を紐解くのには限界があった。いくつかの資料を発見し、
 ようやくかつての《地球》における生活をある程度推測できるようになった程度だ」
 男は、視線を天よりおろし、壁面ディスプレイの映像に向けた。
「かつての生活は、現在よりずっと雑多で無駄が多かった。だが、
 かつての人々は、今よりずっとよく笑っているように、私には思えた」
「……先生、何か今日、変じゃないですか?」
 女は言う。その通りなのかもしれない。苦笑を漏らしながら男は思った。
 一応、彼女は男にとって助手のような役割を持った存在ではあったが、
彼の考えに共鳴してはいない。やはり、彼女もこの世界の人間であり、
それ以上ではなかった。だが――
「君に、頼みたい」
 ――それでも、彼女は男の、いわば道楽とすら言える活動に、唯一
今まで不平も漏らさず付き合ってくれている、彼に一番近い存在だ。
「託すならば……君にしか託せない」
「……何を、言ってるんですか?」
 女は、携行食を机の上に置き、男の瞳をじっと見つめた。
 一体、彼が何を言いたいのかを、何とかして察そうとするように。
「私ももう歳だ。この通り、髪も白くなり、髭まで真っ白だ」
「……!」
 女の表情が変わる。男の口調が、次第に師としてのそれから変わって
いる事に、彼女は気づいたらしい。
「君に学問を教えた師として……そして、失格者ではあったとしても、
 君がこの世に生を受けるきっかけとなった――父親として」
「……やめてよ、父さん」
 女の口調が変わる。師と弟子としての口調から、父と娘としてのそれに。
 母が去り、他の子供達が去っても、それでも残った、一人だけ残った娘。
 彼女が残ってくれた理由は、男にはよくわからなかった。本当に、何もかも
わからない事だらけだという事を、今更想い、男は再び苦笑する。
「だから、君に……お前に、託したい」
 これは、押しつけなのだろうな、と苦笑の中に思いながら、恐らく、託されるも
捨てるも自由だと言っても、彼女は託される事を選ぶだろうなと予測しながら、
自分のそういった計算に軽く呆れながら、それでも彼は口にした。
 その、願いの言葉を。
「過去を……追ってくれ」

 男は、それから三日後に、安らかな顔で息を引き取った。
 女は、あの言葉が遺言であったという事に、ようやく確信を得て、
そして、彼と同じような――父とよく似た表情で、苦笑した。
「……父さんったら、ホント、勝手なんだから」
 その苦笑は、だがしかし、決意に溢れた物だった。
 その日、その瞬間、彼女の道が始まる。
 苦難に満ちた――だが、孤独ではない道が。

503 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 21:55:52 ID:fYTrHA8p
どう見てもプロローグです。
本当にありがとうございました。

504 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 23:04:02 ID:Alo0YYS3
まさに彼女の冒険はこれからだ!だなw
しんみりした雰囲気がいいかんじ


505 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 00:07:19 ID:8lVTf7iU
独特な世界観が面白いとは思うよ

506 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 13:05:50 ID:KTt2zY6s
これはよいss

507 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 22:05:39 ID:x23D8i2b
「好きだ、実紗乃!」
 俺の全身全霊を込めた、それは告白だった。
「そうか。私は好きじゃないが」
 そして、その告白は見事に当たって、そして砕かれた。
 もう、これ以上無いくらい、粉みじんに。
「用はそれだけか? これから友人と食事なので、失礼する」
 そう言って、彼女は――古寺舞(こでまい)実紗乃は、去っていった。
 颯爽と、凛とした容姿そのままに。風に髪をなびかせながら。
 ――固まった俺を残したまま。
「………………」
 そして、固まること小一時間。
「どうだったの、祐司?」
 背後から聞こえてきた声に、俺はようやく溶けた。溶けすぎて
そのままへたり込むくらい溶けた。どろっと。
「その様子だと、聞くまでも無いみたいね、あはは」
「笑うなよ、映奈……そもそも、お前がしろって言ったんだろ、告白……」
 声の主の名は岬映奈。いわゆる腐れ縁という奴で、何かとつるんでいる
女だ。今回のこの全身全霊を込めた告白も「うだうだ考えないで、当たって砕けろよ!」
という彼女の後押しによって実行したものだった。まあ、結果、見事に当たって
砕けたわけだが。
「まあ、予想はしてたけど。実紗乃ちゃんはあんたにゃ高嶺の花なのよ」
「そりゃまあ……そうだけどさぁ」
 確かに、彼女は校内美少女ランキング問答無用の第1位で、その立ち居振る舞いは
大和撫子を地で行き、性格的には竹を割ったようなさっぱり系で、男からは無論、
女子にも大勢のファンがいると言うのだから。
 そりゃもう、俺のような特に何のとりえも無い男には、高嶺の花と言う以外無い。
高嶺っていうか、チョモランマとかそういうレベルだよなぁ……。
「ま、見事に玉砕したわけだし、そろそろ身の程ってもんを知った方がいいんじゃない?」
「うるさいっ! ……俺は諦めない! 諦めないぞっ!」
「……そ、そう? まあ、根気があるのはあんたのいい所だけどさ、
 別に、その、実紗乃ちゃんみたいに凄い美少女じゃなくても、それなりの、
 あんたに合った女の子が身近にもっといると思うんだけどなぁ……」
「そんな娘いるっけ?」
「……ああ、そう。そっか。そうだよね。いないよね、うん。あーごめん、いないわ、あはは」
「だから笑うなっ! ……とにかく、俺はもっと自分を磨いて、いつか彼女をゲットするっ!」
「……まあ、程ほどに頑張んなさいよ。程ほどにね」
「だらっしゃぁあああああああ!!」
 俺は、何故か呆れたように苦笑いを浮かべる映奈を傍らに、大声で叫びながら拳を突き上げた。

 ――150年後。
「……なんて言うかさ、馬鹿の信念岩をも通す?」
「馬鹿と言うな。大天才だぞ、俺は」
「まあ、そっか。そうだよね。天才だ。天才だよ祐司は。あーはいはい」
 150年の歳月も、俺達の姿を変える事は無い。
 なんやかんやとあった結果、俺は老化を止め、人を永遠に生かす薬を
開発する事に成功していた。薬を飲むと生殖能力が無くなってしまうという
副作用こそあったが、世界の多くの人がこの薬を飲み、今や人は老いに
怯えず生きる事が可能となった。
 そして、150年の歳月も、俺の想いを変える事は無い。
「よし、じゃあ、今月分の告白行ってくる!」
 そう。俺は未だに彼女を……古寺舞実紗乃を思い続けていた。
 俺の作った薬を彼女もまた飲んでいて、不老を手に入れていたのだ。
 そして、俺は性懲りも無く、彼女に告白をし続けていた。この百五十年間ずっと。
 そして、やはり相も変わらず玉砕し続けていた。
「……ホント、何とかと天才って紙一重よね」
「ん? 何か言ったか?」
 呟く声に振り返ると、寂しそうな、悲しそうな、だが面白そうな、愉快そうな、そんな複雑な
顔で笑う映奈がそこにいた。
「なんでもないわよ、馬鹿っ!」

508 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 22:06:14 ID:x23D8i2b
我ながら色々と無理がありますが、そこら辺はキニシナイ方向でどうか一つ。

509 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 22:11:24 ID:TyCPcpE6
老化しないけど生殖をなくす薬をどっかで読んだ気がするけども
どこで読んだかまでは思い出せない自分がいる

そして地球儀が見つけられてない俺がいる

510 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 22:21:04 ID:x23D8i2b
素で入れ忘れました、ごめんなさいorz

ダメじゃん、俺・・・

511 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 22:26:12 ID:x23D8i2b
> 確かに、彼女は校内美少女ランキング問答無用の第1位で、その立ち居振る舞いは
>大和撫子を地で行き、性格的には竹を割ったようなさっぱり系で、男からは無論、
>女子にも大勢のファンがいると言うのだから。曰く、彼女が歩けば地球儀が回る。
>……言葉の意味はよくわからんが、とにかく凄いんだという事はよくわかる。

無理やり差し込んでみました(ぉぃ

512 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 22:26:58 ID:TyCPcpE6
修正乙w

513 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 23:01:36 ID:zdo9U2Ae
主人公の信念が素晴らしいなw
しかし名前が懲りすぎてて読めんぞ

514 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 13:29:18 ID:St3JuZyj
懲りすぎ→凝りすぎ  じゃなかんべか


515 名前:お題:食事と150年後と地球儀:2008/12/15(月) 18:23:38 ID:vgV+QEwL
「兄さん、お久しぶりです!」
「やあ、よくきたな。お前とまたこうして食事ができるなんて、夢のようだ」
二人は笑い合いながら、豪華な大理石のテーブルに腰掛けた。

「僕も同感です、どうかあの時の私を許してください」
「おいおい、そんな言い方はよしてくれ、悪いのは私だったのだ」

言葉遣いはよそよそしくも、お互いを気遣い合うそのやりとりは
この兄弟の絆の強さを物語っていた。
不意に弟が部屋の隅に転がる丸い物体を指差す。

「やや、あれは。あの時の」
「そうさ、お前が欲しがっていたのに、私が渡さなかったものだ」
頭ほどの大きさをもった球体は《地球儀》と乱暴に書きなぐられていた。

「懐かしいですね」
「ああ、私もどうかしてた。まさかお前が出て行ってしまうとは思いもしなかったんだ」
「忘れましょう、兄さん。さあ食事を」

兄が難しい顔で腕を組む。

「いいや、こんなものがあるからよくないのだ。存在するからこそ誰かが所有せねば
ならない。私とお前の間にこんなものは必要ない、共に壊そうではないか」
「なるほど、乾杯の代わりに派手にやるのも悪くないですね」

二人は大きなハンマーを一緒に握り、力を合わせて球体に振りおろした。
ぱかーんという大きな音が部屋にこだまする。

「150年ぶりですね、二人で力をあわせるのは」
「ああ、短かったような気もするが、その時間は私たちの絆をより深めたはずだ」
「素晴らしい兄に感謝します!」
「お詫びといっては何だが、お前にはこの《木星》をやろう、なかなか美しいぞ」

こうして地球は滅亡した。
その上で生きていた人間の悩みなど、ちっぽけなものなのだ。



おわり

516 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 18:25:43 ID:YjvaSlUJ
テラ割ロスwww

517 名前:515:2008/12/15(月) 18:59:43 ID:vgV+QEwL
ああっ タイトル入れ忘れてた!

「悩みを解決する方法」で!

どうでもいいかwww

518 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 19:02:39 ID:OfUpDIXo
いいねぇ、難しいこのお題を上手に消化できてると思う

さて、そろそろ次のお題かな?

519 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 00:46:47 ID:mBi9eZ1a
創作意欲をかきたてられるようなお題を頼む(=ω=.)

520 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 02:58:31 ID:cGBUyNrg


521 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 03:03:28 ID:0sli2HJs
「一年」

522 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 03:03:36 ID:lgK+cRXu


523 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 07:29:25 ID:mBi9eZ1a
良いお題だ^^

524 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 14:28:10 ID:OdJjsTa6
「鍵」「一年」「森」でいってみよう!

525 名前:お題:一年と鍵と森:2008/12/16(火) 21:49:18 ID:cLyIBbJB
『その男をつなぐ鍵』

私はこの深い森の中で、ただ一人、鍵を作る仕事をしている。
街からずいぶん離れたこの場所に、客など来ることはめったになかったのだが、
ある朝、疲れきった顔の青年が私を訪ねてきた。

「こんにちは。ホフマンさんですね?」
「ああ、私を訪ねてくるものがあるとは。驚いたな」

青年は礼儀正しく挨拶をしてからイスに腰掛けた。
「ご謙遜を。下の街ではあなたはわりと有名なんですよ」
私はため息まじりにそんな事があるわけないと、答える。

「この小屋を見つけるのに一年かかりました。まったくひどい森です」
「私は気に入っているんだがね。何か困ったことでもありましたかな?」
「ええ、なんでも随分長い間鍵を作っていらっしゃるとか」
「そうさ、今じゃあもう趣味みたいになっちまってるがな」

青年は一度目線を落とし、そして思いつめた顔で私に言った。

「あなたを脱獄容疑で逮捕します」

ああ、まいったな。また手錠が増えちまった。

526 名前:525:2008/12/16(火) 21:59:08 ID:cLyIBbJB
投下終了です。っていうかなんか俺こんなんばっかり、、、

527 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 21:59:22 ID:VdAAU7qY
逮捕されるたびに手錠が増えるのか?

528 名前:525:2008/12/16(火) 22:00:35 ID:cLyIBbJB
ほんとだw
これは変だwww

529 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 22:03:38 ID:VdAAU7qY
脱獄して手錠を外すために森で鍵を作る男の話だよね?

どの程度の犯罪だったか分からないと
有名なことを否定するのも変かな? と思った

むしろ有名と言われたらドキッとした方がそれっぽいんじゃないかと

まぁ、まだ投下できてない俺がいうのもアレですけどねw

530 名前:525:2008/12/16(火) 22:04:47 ID:cLyIBbJB
なんか恥ずかしくなったきたから次! はやく! 次!
キャー

531 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 23:13:38 ID:HPxuILIX
いや、恥ずかしがることないよ
深い森の奥で大量の手錠に拘束されたまま鍵を作り続ける男って
なかなかいい感じのイメージじゃない?
わたしは好きです

532 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 23:55:42 ID:mBi9eZ1a
中学生の割には良く書けてるよ

533 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 21:07:25 ID:1BH0ZFbD
「おい一年坊主、体育倉庫の鍵しめといてくれ」
「はい、森せんぱい」

534 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 21:08:54 ID:qI2fP5Hw
>>532
大丈夫、君が中学生になっても多分このレベルに届かないから

535 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 23:14:26 ID:QMNtdZ8O
>>533
これ以上短いのは難しいだろうなw
よくまとめたと言うべきかw

536 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 23:17:07 ID:97ieJP+E
>>533

話としてはどうかと思うけど、やられた感はあったwww

537 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 23:42:10 ID:hK4X06so
>>533
短いのに全部はいってるw

538 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 01:02:03 ID:LNcMD30h
一年前、森先輩の部屋の鍵をなくした

539 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 13:58:36 ID:6IF36qBx
一年後、森先輩の部屋で鍵は見つかった

540 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 17:32:26 ID:SARFr0jA
密室トリックだ!

541 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 20:27:57 ID:THNSxMdZ
さらに一年後、事件の鍵を握る森先輩は姿を消した

542 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 20:41:06 ID:LNcMD30h
必至の捜査のすえ、森先輩は逮捕された。
だが一年後先輩は刑務所を脱獄したが、しばらくして再逮捕された。





数年後、どこかの街はずれの森の中で毎日鍵を作っている男の噂が僕の耳に聞こえてきた。

543 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/19(金) 10:21:15 ID:ctuxx1H1
森先輩の人生は波瀾万丈だなぁw

544 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/19(金) 18:29:18 ID:4P3DeKIQ
森先輩ネタやりすぎだろwwww

545 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/19(金) 20:08:39 ID:XYDD9Zat
「あ、林センパイ、鍵持ってきやした」
「おい一年、何べんも言うがオレは森だ」

546 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/21(日) 00:35:24 ID:z34x4XhH
一年坊主「おい森先輩、体育倉庫の鍵閉めてこいよ」

547 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/21(日) 12:26:12 ID:OsWB5tzr
森先輩「一年後くらいには閉めますんで、鍵。勘弁してつかーさい」

548 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 00:45:10 ID:Tryclxfe
この試合、一年の森が鍵だ。

549 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 01:05:06 ID:y/01wEcm
ところでそろそろ次の御題は?

550 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 16:55:18 ID:H8C7Vk/8
ちょwww
ほとんど森先輩ネタだけだった状況にワロスwww

次の御題、行ってもいいかな?

551 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 17:06:18 ID:oaUZ4Svw
いいともー

552 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 17:30:51 ID:DpWPxogu
新聞

553 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 17:33:53 ID:y/01wEcm
朝日

554 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 20:01:04 ID:ImUZxfWj
鳥肌

555 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 20:59:06 ID:H8C7Vk/8
「新聞」
「朝日」
「鳥肌」

か。

鳥肌実が朝日を浴びながら新聞読んでた
という電波が来たが、これでは駄目っぽいので考えよう。

556 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 21:14:25 ID:Wz71dc9A
やべぇ……電波キタ……あとは発信できるかだが……とりあえずベストは尽すお⊂(^ω^ )⊃

おっおっ( ^ ω ^  )

557 名前:新聞 朝日 鳥肌:2008/12/23(火) 00:01:29 ID:ATS6BMak
>>556では無いが……発信ッ!!


 夜明け前に目が覚めた。
 いつもよりも何時間も早いくせに、妙にさっぱりとした気持ちがする。二度寝する気も
起きないで布団から出ると、真冬の空気がスウェットの裾から入り込む。私は身震いをして、
ストーブをつけた。ツマミを下げると、かすん、という音に一拍遅れて、ふわっと
赤い光がともる。冬の早朝はしんと静まり返っていた。なあんにもないという空白は、
とても久しぶりのように思う。

 疲れきって家に帰り、最低限のことをやって眠る。朝は遅刻するギリギリに起きて、
慌ただしく準備をすると家を飛び出る。
 最近はずっとそんな毎日だった。誰だ、大学生は暇だなんて言ったのは。理系は例外なのか、
料理くらいしか家事を手伝わなかったツケなのか、バイトのしすぎなのか――おそらくその
全ての積み重ねなんだろう。真面目にやりすぎて馬鹿を見るのはそういえば昔から私には
たまにあったことだ、なんて、そんなことも忘れていた。そんなことも思い出せないくらい、
最近の私は、切羽詰まりすぎていたんだ。
 ストーブを眺めながら、そんなことを考える。ゆるゆると、さあ着替えでもするか、と思う。
お気に入りのニットワンピは最近着ていなかった。なんとなくローテーションから外れていた。
ハンガーに吊るされっぱなしのそれを出す。隣り合ったコートがずれて落ちてきそうになって、
少し焦ってそれを抑えた。着替えるという行為は一度脱ぐわけで、さすがに寒い。
すっかり室温の布が肌に触れるのに季節をかみしめた。昨日もおとといも、同じだった
はずなのだけれど。
「あ」
 何かを思い出したちょうどその時、玄関のほうで物音がしてそれを忘れてしまう。
ガタン、と金属の音、表からはエンジンのアイドリング音。
 興味のままに、ロックを外してドアを開けた。断続的な排気音はとたんにクリアになる。
屋外の気温に、いっせいに鳥肌が立つ。


558 名前:後半:2008/12/23(火) 00:02:56 ID:ATS6BMak
「……あ」
 マンションの廊下を見下ろすと一台のバイクが止まっていて、そこにちょうど人影が
乗ろうとしていた所だった。新聞配達員。ようやく思い至ると同時に、不意に見上げた
人影と目が合う。
 動きを止めたその配達員は、高校生くらいのようだった。思いもよらず、若い。幼いとまで
感じる。苦学生、というやつなのだろうか。それはこちらの勝手な想像だけれど……そうだ、
毎朝郵便受けに入っている新聞は、こうやって誰かが運んできたものなのだ。
 びっくりして黙ってしまって、バイクがガスを吐く音だけが空気を震わせる。時間が
止まったような感覚に気まずくなって、私はとりあえずの言葉をつむぐ。
「お疲れさま、です。……ありがとうございます、いつも」
 見下ろす少年は目を丸くして、何か、一言二言返事をしたようだった。でもそれは
エンジン音にまぎれて聞き取れない。流れはじめた時間。彼は目をそらし、バイクをひときわ
唸らせると、あっという間に街並みに消えていった。
――ありがとう、だって。
 自分で言った言葉に、笑ってしまう。小学生みたいだ。恥ずかしいな。でもそんな
言葉がぽろりとこぼれるような自分が、ちょっと嬉しい。面映ゆいような心地に、
ひとりで私は笑う。
 一年弱を過ごしている私の家は、戻ってみるとぽかぽかと暖かかった。ストーブの熱が
回ったのだろう。乾燥した空気が頬をひりつかせて、さっき忘れたのは顔を洗うことだと
思い出す。やっぱり少し寝ぼけているのかもしれない。きっとそれも、きんと冷たい水が
流し去ってくれそうな気がした。
 街の音がする。車の通る音や、風に草木が擦れる音、犬が吠えている。おはよう、と挨拶を
交わしているのは飼い主だろうか。洗面台のすぐそばの窓からは、橙色の朝日が流れ込んでいた。
 日常は続く。



終わり。

559 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 00:11:07 ID:1h/N7Wda
いつもの日常のひとコマ、か
冬の朝の雰囲気がよくでてるねー

560 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 00:12:35 ID:gSlvuhxJ

何か久しぶりにやりたくなってきたな>三題

561 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/23(火) 06:46:03 ID:kBEOQXiy
マジでうめーなオメー 感心したぞオメー 本物の作家目指してるのかオメー

562 名前:新聞、鳥肌、朝日 1/3:2008/12/25(木) 00:53:55 ID:ny94vRhR
まだ夜も明けきらない時間帯、朝の6:00。朝日の気配が感じられるものの、依然として闇が辺りを占めている。
僕はそんな暗がりの中、息を切らしながら走っていた。走っているのに、身を裂くような寒さがなくなることはない。
厚手の服の上から、染み入る寒さが何とも辛い。なぜ、休日の早朝に、僕はこんな目に会わなければならないんだろう。
僕をこんな目に会わせている張本人は、そこの角を曲がったところの公園にいる。
きっと頬をふくらまして……
「遅いわ、優人君。10分遅刻!」
やっぱり……怒っていた。
「すみません。でも、こんな朝早くから待ち合わせしなくてもいいじゃないですか……」
「だめよ、ジャーナリストにとっていつでも活動できるようにしておくことは、すごく重要なの。優人君は朝に弱いみたいだから、訓練も兼ねて集合はしばらくこの時間帯よ」
最悪だ……。でも、口ごたえしたところで無駄なのかもしれない。それよりも今は、少しでも早く暖かい所へ移動したい。
「とりあえず、どこかに移動しませんか?まさか真冬の公園で打ち合わせするつもりじゃないですよね?」「そうね……私はそれでもいいかと思ってたけど、優人君寒そうだし、喫茶店に移動しましょうか」
綾子先輩はそう言うと、公園の出口に向かって歩き出した。僕もついていこうとしたところ、綾子先輩はくるりと振り返った。
「これ、貸してあげる。鳥肌立ってて、寒そうだわ」
遠子先輩はするりとマフラーを首から外すと、手早く僕の首に巻き付けた。心地好い暖かさが、首周りを覆う。
「ありがとうございます……。でも鳥肌なんて見えてないですよね」
僕は当たり前だけれど、半袖を着ているわけじゃないのだから。
遠子先輩は鳥の羽のように柔らかく微笑むと
「ジャーナリストの勘よ」
と得意気な顔で言ったのだった。


563 名前:新聞、鳥肌、朝日 2/3:2008/12/25(木) 00:57:41 ID:ny94vRhR
朝早くから営業している珍しい喫茶店に入ると僕達は打ち合わせを始めた。
正確に言えば、綾子先輩の思いつきから発動する暴走を抑止するのが僕の仕事だ。
「でね、目撃情報もあるのよ。だからここはひとつ未確認飛行物体の記事を一面に……!」
「だめですよ。それじゃ校内新聞じゃなくて、どっかの怪しいスポーツ新聞になっちゃいますよ」


「『木村先生の不倫疑惑発覚』なんていう記事は?不確かな情報だから少し調査する必要があるんだけど」
「誤報だったら訴えられるからダメです!っていうか、本当だったとしても校内新聞で取り上げるのはまずいですよ」


「森君失踪事件は?」
「今まで先輩が言った中では一番まともな記事になりそうですけど、森先輩は変わった人ですからね。
夏休みのときみたいに、どこかに旅に出てるだけじゃないですか?あまり騒ぎたてるのも良くないと思いますが」


あれやこれやと話し合い、結局決まったのは『運動部の大会結果』と『中華まんのグルメレポート』。
後者は校内新聞のネタとしてはどうかと思うけど、仕方ない。他にネタがないのだから。
というのも、綾子先輩の熱意が異常で、部員が四人しかいない(内、二人は幽霊部員)にも関わらず毎週一、二回のペースで発行し続けているのだ。
冬休みも『部活で学校に来る人は多い』との理由で、発行のペースはまるで落ちていない。



564 名前:新聞、鳥肌、朝日 3/3:2008/12/25(木) 00:59:51 ID:ny94vRhR
「さぁ優人君、たくさん食べて、しっかりレポートするわよ!」
首からデジカメをぶら下げて、やけに張り切っている綾子先輩に付き従い、僕は色々な店を回った。
コンビニ、スーパーなどの地域の店をのぞいて回れば意外とバラエティーに富んだもので、なかなか面白い記事になりそうだった。

「ピザマンやアンマンだけじゃないのよね、今は。見て!ストロベリー味やプリン味もあるわ!あ、でもあっちの豚の角煮まんも美味しそう……。これは全部トライしてみなきゃだめね」
「そうですね、でもお金、大丈夫ですか?」
「余裕よ、余裕。部費けっこうもらってるしね。お腹に入りきらなくなるまで、とにかく食べ尽しましょう!限界に挑戦よ!」
趣旨が変わってきている気がしたけれど、僕は黙って頷き、綾子先輩の差し出す袋を受け取った。
暖かい湯気が袋から立ち上り、香ばしい匂いが鼻を刺激した。



「優人君」
「はい」
僕達は部費を数千円使って、たっぷりと食べ尽した。既に昼ご飯の時間帯に近づきつつあるが、もう満腹だ。
「いっぱい食べたわね〜。お菓子みたいな中華まんから、洋風だったり、和風だったり……中華まんの新しい可能性を探り続けている人達の努力が伺えたわね」
「そうですね。記事も意外と華やかなものになりそうですよね」
「でも……」
「ですね……」
僕達は、一つの結論にたどり着いていた。それは……
「普通の肉まんが一番おいしいわね」
「そうですね。やっぱり普通が一番ですよ」

565 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 01:07:29 ID:aIRy/WDe
朝六時からなにやってんだこいつらwww
お題も綺麗に消化されてていいね!

566 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 01:09:36 ID:ny94vRhR
うわぁ……、一ヶ所「遠子」って書いちゃったよ。まぁ明らかに心葉と遠子を意識して書いたわけだけど……

567 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 01:13:52 ID:siK1fwmQ
お腹がすいて胸がキュンとした

568 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 01:48:06 ID:3laPCXZS
>>566
確かにそんな感じだw
しかし腹減った

569 名前: ◆91wbDksrrE :2008/12/29(月) 17:37:30 ID:g9y4W+X3
「さっむいなー……」
 軽く鳥肌が浮く腕を見ながら、何となく息を吹きかけてみる。
 これが、しばらく経ったら今度は汗すら出てくる程暑くなるんだから、全く
火の力というものは偉大と言うかはた迷惑というか。
「よいしょ、と」
 大鍋に、一気に水を注ぎ、大型コンロにしかける。
 出汁の素を投入し、コンロに火をつけると、一気に部屋が暖まり始めた。
「ふぅ……あったけ」
 しばらく煮立つまで待っている間に、具材の下準備に取り掛かる。
 そうしていると、朝日も昇り、外が明るくなってきた。
「おはよー」
「おう」
 朝日が昇ると同時に、背後から挨拶の声がする。いつもの事なので、
俺は振り向かずに手だけ挙げて答える。
「仕込み中かー。あったかそー」
「暖かいなんてもんじゃなくなるんだけどな、これから」
 大鍋の水が沸騰するまではそれなりに時間がかかる。俺は手元で具材を
切り揃えながら口を開いた。
「明日から、気の早い連中がもう来始めるだろ? だから、準備は今日から
 しておかないとな。お前もだろ、和美?」
「そうなのよねぇ……まったく、寒いわ混むわで毎年嫌になっちゃう」
 肩越しに振り返って見ると、彼女、天乃江(あまのえ)和美はがっくりと
肩を落とし、大げさにため息などついていた。
「こっそり毛糸のパンツでも履いておいたらどうだ?」
「仁樹ぃー、それセクハラー」
「はは、すまんすまん」
「うむ、許してつかわす!」
 ため息顔が、笑顔に変わる。
 うん、やっぱりこいつはこっちの方がいい。
「学校はもう休みだよな?」
「うん。だから少しは楽なんだけどね」
「ま、継ぐつもりがあるんなら、しっかり頑張れよ。俺も応援するし」
「仁樹の料理は何よりの応援ですよー。今日の昼も楽しみにしてるからね!」
「今日は仕込みと、あと店が少しあるから、賄い飯になるけどいいか?」
「ぜーんぜん。むしろ賄い大好き」
「ははっ、そう言ってくれると助かるな。和美は、これから水浴びか?」
「水垢離と言いなさい水垢離と。冷たくて嫌になるけど、あれやっとかないと
 こんな薄着できないからねぇ」
「大変だな、本物の巫女って奴も」
「ホントよー。うっかりこけたら大変よ。全部見えちゃうんだから」
「……お前、それ逆セクハラだぞ」
「あら、仁樹ったら純情……冗談はともかく、いつかあんたにも着せて
 あげるから、巫女さんの服」
「すね毛生やした女装巫女か……」
「ネタにはなるわよ?」
「……むぅ」
 一瞬悩んでしまった自分。我ながらどうかと思う。
「さて、じゃあ行ってきますか!」
 彼女はパンパンと自分の頬をはたいた。気合を入れたらしい。
「おう、行ってこい。あ、帰ってくるとき忘れずに新聞取ってきてくれよ」
「はいなー」
 彼女は、ひらひらと手を振りながら、冷たい空気の満ちた朝の境内へと
出て行った。
「さて、と」
 丁度頃合よく、大鍋の水が沸騰したようだ。切り分けた具材を投入しながら、
俺は昼飯の事を考えていた。
「今日の賄いはなんにしようっかなぁー」
 何となく、心が弾む。
 今日はいい事がありそうだ。
                                     終わり

570 名前: ◆91wbDksrrE :2008/12/29(月) 17:40:01 ID:g9y4W+X3
一応。
>>480を書いたのも私です。続きというか、別場面で。

571 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 23:58:33 ID:091aUqCY
>>570
乙。だがちょっと読みにくいかな―……。



さぁ、2008年最後の御題をそろそろ出しましょうか

572 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 00:05:15 ID:0kvIXedL


573 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 00:16:34 ID:PLajBdO6
水垢離とかマジ寒いよな

574 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 00:30:07 ID:y9b2b9d0
>>572
鏡(かがみ)は既出なんで、できれば違う御題を出していただきたいでつ

575 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 10:31:53 ID:9YmpM06L
「餅」

576 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 10:58:04 ID:WIMaRwSu
くしゃみ

577 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 14:14:14 ID:RnCUOf8W
年越し

578 名前:創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 21:57:38 ID:uKg9oN5h
「餅」「くしゃみ」「年越し」

ケッテー!

579 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/03(土) 14:44:12 ID:6joye6eo
過疎って参りました……

580 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/07(水) 23:33:31 ID:o4GiBi/1
超絶出オチながら、投下します。


「……っく、ヒッ、ふぁ、あーはらいてェ、アハハハハ!! は、腹、痛ッ……、ふふはは」
ここは賽の河原。もちをのどにつまらせ子供の時分に死んだ俺は石を積むこと幾星霜、
その度ごとに鬼に邪魔をされる毎日だった。いつものように走って逃げながら、
呟いた言葉――「来年こそは、石を積みきってやる」――が、鬼の笑いのツボに
クリティカルヒットしたらしい。
震え出す体。歪んだ容貌。鬼の異変に気づいたのは俺だけじゃなかった。たくさんの
子供達がいぶかしり、やがて状況を把握する。
すなわち……「来年の話をすれば、鬼が笑う」。
いやちょっと待って欲しい、冷静に考えて欲しい。それはただの故事成語というか
諺ではないのか? 遠い未来の話をするなんて採らぬ狸の皮算用、ちゃんちゃら
可笑しいって意味じゃあ無いのか? いやしかし鬼は笑っている。来年の事を
言えば言うほど、鬼は笑っている。
「花火大会するぞー!」
「ええと、えっと……バレンタインにチョコゲットするぞー!」
「お、お前らやめッ、ヒヒ、く、……っははは!! はぁ、はぁ、あ゛ー……ぶぇっくしょい」
大きなくしゃみ。過呼吸でふらつくのか、しゃがみこんでねっころがって大爆笑していた鬼が、
「ぶはー」と酔っぱらいみたいな声をあげた。
「はー……完敗だよ。ックショイ。そうなんだよなあ、この時期はコレが辛いんだわ」
「あの、なんでこの時期、なんですか?」
おずおずと、女の子が鬼に話しかけた。鬼はあぐらをかきながら「あぁ?」と
彼女を睨む。こえー。だがそのまさしく鬼の形相も、思い出し笑いでもしたのか
ニヤニヤと綻ぶ。それもそれで怖ぇー。
「いや、あのな、鬼にとって来年トークは、……フフフ、わりぃ思い出し笑い、がフヒ、
ひひ、……来年トークは弱いんだよぉ。年越しとか近づくとよ、どうしたって来年の話、
するだろ、ふ、ハァックシュン! あ゛ー……。あーハナ垂れて来た……で、その時
生者も亡者も言うだろ、『鬼が笑うぞ』ってさ、ックシュ。ウワサされるたびにコレだよ」
花粉症かいッ!! ツッコミは怖いから口にしない。そして、俺達はきっと同じことを
考えている――今の内に、積めるんじゃないだろうか? 来年の話題を二、三
思い浮かべながら、俺はそっとあとじさりをした。


終わり。

581 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 02:26:54 ID:R3tAwZBC
次のお題行こうか
年越しって感じでもないし

「告白」

582 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 03:26:04 ID:JX3+d+kI
5cm

583 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 03:33:32 ID:BUtJMnXz
「境界線」

584 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 06:41:43 ID:ErVEJVS6
がんばれ子供たち
鬼を出し抜くんだ

585 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 11:21:21 ID:mnes2C43
秒そk(ry

586 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 13:38:11 ID:/XEVUaq0
鬼カワイソス これ何かのパクり?オリジナルのアイデアならけっこうすごいと思うよ

587 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/08(木) 22:10:24 ID:bP9BTM9h
詳しくないんだけど、賽の河原のあの話って、小石積み上げられたら
何かしらの救済があったりするもんなのかね?

588 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 17:13:37 ID:LDGhzuG5
プログラマーのバグフィックス地獄はまさしく賽の河原状態らしい

何度直してもクライアントから難癖付けられる
視界に広がるのはいつまでも無味乾燥な画面ばかり
休日の予定を夢見るも永遠に来ない休日
そのうち同僚が失踪する

589 名前:「告白」 「5cm」 「境界線」1/2:2009/01/12(月) 20:00:35 ID:QKMHT9qs
「告白」 「5cm」 「境界線」

 僕たちの町には境界線がある。平野の真ん中にあるこの小さな町は100年も前に、境界線を作る原因となった大きな喧嘩を
したそうだ。いまとなっては些細なことだった原因が何もかもに波及して住民を二分し、片方が屋根を赤く塗れば
もう片方が青く塗るといったありさまにまで発展してしまった。それどころか町の真ん中に線を引き柵を立て
その柵を次々に広げていったあげくに平野の果てまでそれを続けていった。100年前の柵建て人はとうとう帰ってこず、
遠い柵の果てでその一族は未だに柵を立てていると言われている。
 さて柵の向こう側とこちら側はとても仲が悪い。それでも一応、交流と呼べるものはある。休日の柵市である。ここでは
商売人もいれば普通の人もいて、商品や不要なものをもってきたりして柵のすぐ側にならべて売ったり買ったりできるのである。
とはいえ皆全くの無言で通すのがここの慣習なので、どれだけ人数が多くとも賑わいがあるとは言い難い。
口を開かずふくれっ面をするのが当たり前、ありがとうとかまた来いなんて言葉は禁句ですらあるのだ。
 しかしこの柵向こうのものというのは、こちら側では手に入らないため足しげく通う人は絶えない。僕もその一人で
休日はいつも向こう側の品物を見て回っていた。そこでふと一冊の本を買ったのがきっかけだった。
 それを家に帰って読んでみると5cm四方の紙片が挟まっていてどうやら誰かの走り書きらしいメモだった。
内容は数学の問題なのだけど、解きかけで止まっていて、どうやら途中で詰まったらしいと知れた。

590 名前:「告白」 「5cm」 「境界線」2/2:2009/01/12(月) 20:02:45 ID:QKMHT9qs
 よくよく思い出してみると確か学生らしい柵向こう女の子から買った古本である。たまに顔をみるので名前は知らないが知った顔だ。
こちらが買うこともあれば、たまにふらっとやってきては僕が読み終わった本を彼女が買っていく事もあった。
どうやらメモを栞代わりに使ったものらしい。数学は昔得意だったので僕はそれを解いて答えをそのメモの裏に書き込んでおくと、
そのうち彼女が来たら返してやるつもりで、次の休日に売る物といっしょにしておいた。思惑通り次の柵市に彼女が現れたので
僕は彼女が買った本にそっとメモを挟んでひどい仏頂面で渡した。彼女も不機嫌そうな顔で買っていった。全くの無言である。
しばらく経ってまた彼女から本を買ったのだが、またメモが挟まっていた。また数学の問題で難度が上がっている。これは挑戦だった。
僕は難しくなったそれをなんとか解くと裏に答えを書き、別の問題を書いたメモを用意した。もちろんこれも次の市で、彼女が買う本に挟んだ。
そんなことを繰り返してるといつのまにか問題がなぞなぞになり、哲学になり、そのうちチェスの問題になって、
最後には他愛もない雑談が始まってしまった。
 そんなことが5年ほど続いた
 白状してしまうと、僕は最近彼女のことが気になって仕方がない。いろんなことを語り合ったはずだけれども、
未だに彼女の笑顔を見たこともなければ声も聞いたことがない。そんな相手を好きだと言ってしまうのは変だろうか。
本に挟みたくて挟めない一枚の紙片を机の引き出しにしまって僕はため息をつく。柵をまたいだ恋なんてそうそう実るわけがない。
告白の文句はもう決まっているだが……。
 紙片には一言こう書いたのだ。
『仲直り、しない?』

(終わり)

591 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:06:27 ID:yxcRLrrv
GJ!設定もそれに乗った流れも自然でおもしろかった!

592 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 20:06:40 ID:hxl6Dgcb
おおーなんかいいなー
文章だけの恋か

593 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 13:45:43 ID:JZEDM7ZF
うん、なんかいい感じだわ。何がいいのかわからないけど、何か素敵よ。

594 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 18:21:38 ID:BU0n6GPj
何か面白いね。なんかキラッとした感じ。

595 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 18:23:06 ID:nQFmedzR
キノの旅に出てきそうな感じがする


596 名前:589-590:2009/01/14(水) 22:20:02 ID:Md4ENpk7
なんか反応が良かったのでホッとしました。

では次のお題を一つおいときますね( ´ー`)つ『杭』

597 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 22:44:26 ID:87i6feoa
『灰』

598 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/14(水) 22:49:34 ID:7ftBvGs1
『ノック』

>>596
すごくよかった。このスレの投稿作品の中では一番好きです。
また気が向いたときに落としてくれると嬉しい。

599 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 00:42:24 ID:OeLCfbzq
一番好きとか言われるとムカつくな〜(^ω^♯)ビキビキ
じゃあ俺のは嫌いなんだ?ふーん?
荒らしたくなってきちゃったな〜

600 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/15(木) 00:46:15 ID:VkVsR3DF
>>599
逆転の発想だよ、なるほど君!
その荒らしたい気持ちを創作力に還元するのよ!

というわけで、俺もちょっと気合入れていきたいと思います。ウィーッシ!

601 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 23:26:51 ID:WKnujDtv
「お前これで満足なのか! この一年間、南高校に杭を打つ為に
 頑張ってきたんじゃないのか!」
 きっと先輩は楔と言いたいんだと思う。でもそんな事はどうでもいい。
もう、どうでも良かった。
「……満足なんてしてないですよ。ただ、どうでもいいだけです」
 自分でも驚く程に、その声は疲れきっていた。自分の声なのに、どこか
遠くから響いてくるようで、俺はなんだか自分が夢の中にいるような心地
だった。どうせ夢なら……もっといい夢を見せて欲しいもんだ。
「ははっ……」
 そんな自分の考えに、俺は自分で苦笑していた。
 夢は夢でも、俺が今見ているのは悪夢だ。それも、決して覚める事の無い。
「本当に……本当に、どうでもいいのか? お前の気持ちは……野球に
 かける気持ちは……その程度だったのか?」
 先輩は、信じられないと言った様子で、呆然と呟いた。
 確かに、俺はこの一年間、必死で野球に打ち込んできた。千本どころか、
一万本近い数のノックを毎日のように受け、いつも家に帰ると燃え尽きた灰の
ようになっていた。
 でも、それは……それは、毎年県大予選でうちが敗北している、南高校に勝つ
為なんかじゃ、決してなかった。そんな俺の姿を見て、元気付けるように笑って
くれる奴がいたから――だから、俺は頑張れた。俺は、勝とうと思えた。
 俺はただ……ただ、あの娘に、麻弥に、見てもらいたくて……凄いって言って
もらいたくて……あいつの笑顔が見たくて、だから……だから!
「俺には、もう続ける理由がありませんから、野球」
 あまりにもそっけなく響く、俺の言葉。
「……俺は、野球なんか、元々好きじゃなかったんですよ」
「だが、お前には才能が……」
「才能があるからなんだって言うんですかっ!」
 突然声を荒らげた俺に、先輩は身を竦ませた。
「……すいません、怒鳴ったりして。でも……俺は、野球なんか、元々
 好きじゃなかったんですよ。だから、辞めるんです。どうでもよくなったから、
 だから辞めるんです。それだけです。他には何も……ありません」
 ――もう、あいつはいない。だから、俺に野球を続ける理由は、何も、無い。
「……麻弥は……」
 先輩は、とうとうその名前を口にする。その名前を出せば、もう引き返せない
とわかっていながら、それでも口にした。もう、その名前にしかすがるものが
なかったのだろう。
「麻弥は……きっと、天国でお前の事を」
「そんなわけないでしょう!?」
 再び俺の怒声が部屋に響き、先輩の言葉を掻き消した。
「そんな都合のいい話が……あるわけ、ないでしょう……」
 最後は、絞り出すようにしか、言葉に出来なかった。
 俺は先輩に背を向ける。それは、拒絶の意思表示だ。
「……それでも……麻弥は、お前の事を天国で見ていてくれてる。
 例え、お前が野球を辞めても、な」
「……先輩に、なんでわかるんですか、そんな事」
「姉妹だから……姉妹、だったから、な」
 そう言い残して、先輩は部屋から出て行った。
「………………」
 これは夢だ。
 覚める事の無い悪夢だ。
 だから、何も救いは無い。都合のいい救済なんか、訪れない。
 俺は……自分が全てを捧げてもいいと思えた、たった一つの物を失い、
これから空虚に生きていくのだろう。
 これは、そういう話だ。だから、これで終わり。
 あとはもう……終わっていくだけだから。

                                      終わり

602 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 23:27:51 ID:WKnujDtv
ここまで投下です。

ノックって言われてまず出てきたのが横山ノックでしたが、
それ、無理♪

603 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 23:34:13 ID:YzSPJVlJ
うわぁぁぁぁコレは泣ける
こいつ立ち直ってくれるのかな

604 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 06:50:46 ID:0Y5BYiUr
先輩……切ない。
てか先輩男だと思ってたら実は堅い口調の女の子ってずるいぜ?

605 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 22:50:02 ID:5OqzH4Jx
一つ目のお題:鉄腕アトム

606 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 23:09:46 ID:u8AeJi5Q
二つ目のお題 信楽焼き

607 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 23:51:59 ID:bD5N4SxW
三つ目のお題:小学六年生

608 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 10:02:30 ID:uKcJyPo5
なんつーカオスw

609 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 12:07:29 ID:VeQfBQoB
これは歴代屈指の難易度……

610 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 12:44:52 ID:Yd7yGYfD
まあ、噺家が高座でやるような本来の三題噺らしくはある

611 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 14:41:03 ID:VeQfBQoB
「で、やっちゃったんだ」
「うん、ごめん」

私の目の前に置かれた置物を改めて観察する。
デカい。

小学六年の女子の平均身長は、
文部科学省学校保健統計調査(平成17年度)によると146.9cmとなっており
137.8cmである私の身長は小六の女子としては若干物足りない、
ってそんな事は今はどうだっていい。

問題はこの置物のサイズが、
私の身長と殆ど変らないということだ。

「これ、134cmくらいあるよね?」
「惜しい、135cmだ」

ますますもってどうでもいい。
そんな事を考えている表情を露骨にしていたら。

「ん? 公式設定どおりだぞ?」
「知らないよ、そんな事!!」

変なとこで凝り性なパパが、
趣味で焼き物を始めたと聞いたとき嫌な予感がした。

そしてその予感は現実ものに。

「何でよりによって鉄腕アトムなのよ!?」
「そりゃホラースレの作品に何でホラーなんだよ!! って突っ込むとの同じだぞ?」
「意味分からんわ!?」

しかしこれ以上深入りしては行けないという予感が。
この予感は現実のものにする訳にはいかない。

「しかも信楽焼なので十万馬力です」
「関係ないっ!? 何でこんなもの作ったのよ!」
「ほら、来週お前誕生日だろ……」

なるほど、一足早いプレゼントという訳か。
ズレてる気がしなくもないが悪くない。決して悪くない。

「で、昔お前がお兄ちゃんが欲しいって言ってたのを思い出して……」
「そこ、おかしくない?」
「じゃあいっちょ焼いてみるかと」

しかもそれ幼稚園の頃の話だろ……。

「良かったな、これで今日からウランちゃんだぞ?」
「ドッキュンネーム!? しかもそれだと私がおまけみたいになっちゃってない!?」

「ちなみにお兄ちゃんどいてそいつ殺せないというと、どいてくれます」
「無駄にハイテクだ!?」
「十万馬力だからな」
「関係ねー!!」

この鉄腕アトムは我が家の庭に鎮座することに。
あ、誕生日プレゼントは別にちゃんと買ってもらいました。

612 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 15:04:58 ID:mgmOu97f
お見事!

613 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 15:15:20 ID:V6dmWkn3
すげぇww
GJ!!

614 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 15:30:51 ID:1ju5eupG
パパ、是非そのアトムを写真に撮って立体スレにうpしてくださいwww

615 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 20:21:46 ID:uKcJyPo5
娘も父もいいキャラだなwww

616 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/19(月) 23:00:35 ID:rpEeJkSl
たんたんたぬきのはついてるんだろうか

617 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/20(火) 19:56:11 ID:1L1n4nLa
鉄腕アトムキン?

618 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 07:27:25 ID:lDEy1ABP
お題1:パイプ

619 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 11:01:33 ID:0lw2Or4f
お題2 涙

620 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 14:56:53 ID:Ok+ea7pC
お題3 頂点

621 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 20:56:03 ID:gPgW+RXF
 ああ、なんだい? あんたから話しかけてくるなんて珍しい事もあるもんだ。
酒の勢いを借りてでも、言いたい事がある? なんだい、これから俺に告白
でもしようってのかい? はっはっは、物好きもいたもんだな。
 ま、やめといたがいいな。こんな奴に惚れたっていい事なんか何もないさ。
俺もあんたが涙を流すとこなんか見たくない。だから、そういう話をしようって
んなら、ここで話は打ち切りだ。俺はもう寝る。おやすみ。あんたもいい夢を。
 なんだ? 不服そうだな。じゃあ、どんな話ならいいのかって? ……まあ、
そうだな。あんたみたいな物好きになら、俺の身の上話くらいならしてやっても
いいかもな。なんせ、明日はあんな所に行くんだ。誰か一人にくらい、俺が戦う
理由って奴を知っておいてもらいたい……そういう気分なんだよ、俺は今な。
 俺がこんな気分になる事なんか、滅多に無い事だからな。あんたは運がいい。
 さて、何か俺のことで聞きたい事はあるかい? あ? 俺に好きな奴がいるか?
あんたなぁ……そういう話するならこれで打ち切りだ、っつって言ったよな?
 あー、まったく残念だ。せっかく俺の事を色々知るチャンスだったのにな。
自分でそれを見事に無にしやがって。勿体無い事するよなぁ、お前も……って、
何情けない顔してんだよ。冗談だよ、冗談。でも、その質問は無しだ。そういう
話をする気分じゃ、残念ながら無いんだよ、俺は今な。
 で、何が聞きたい? ん? ああ、それか。確かに気になるだろうな。
そうだ。俺は別にこいつを燻らせる趣味はねえ。肺悪くするだけだからな。
そう、あいつにもいつも言ってたんだよ……でも、あいつは聞きゃしねえ。
その事で何度も喧嘩したりしたな。でも、あいつは絶対にこれをやめなかった。
そうだよ、このパイプは、そいつのもんだ。そうだな……何て言ったらいいかは
わかんねえが……一言で言うなら、形見、かな。ああ、そいつはもうこの世に
いねえ。だから、あんたがそんな泣きそうな顔をする事は無いよ。まあ、あいつが
いようがいまいが、あんたにゃその芽は無いんだが。……だから泣くなって。
あんたの涙は見たくないって言っただろ? ったく……そんな涙もろくて、よく
俺達の盾が務まるな。ま、戦いになった時のあんたの凄さは、誰よりも俺が
一番よく知ってるが。
 ……まあ、そうだよ。これが俺の戦う理由だ。敵討ち、って事に、一応は
なるのかな。……はっきりしないって? そりゃそうだ。だって、俺には、あいつ
の仇をどうにかしてやろうってつもりは、これぽっちも無いんだからな。俺の
敵討ちは……仇を討つ事で成し遂げられるんじゃない。結果的に、仇を討って、
その結果が、仇を討った事になる。そういう類のもんなんだよ。
 わかんねえか? えっとだな……明日、あの場所で、俺達が目的を成し遂げ
たら、それが俺の敵討ちに繋がるんだよ。
 ……ああ。あいつは、“頂点”に挑んで、そして死んだ。だから、その敵討ちと
して、俺があいつに代わって“頂点”に挑み、そして、勝つんだ。
 “頂点”には、別に恨みはねえから、普通の敵討ちとは違うんだよな。そこら辺が
ややこしいところなんだけど。でも、“頂点”が居座る、“頂”を獲る為には、
“頂点”に勝つしかない。だからまあ、しのごの考える必要自体ねえのかも
しれねえ。どっちにしろ、“頂点”に勝つ……奴を殺る事でしか、仇は獲れねえ
わけなんだから。
 ……明日、俺達、勝てるよな? ………………なんだい、その不安そうな
顔はっ!? ここは嘘でも男が女を勇気付ける所だろうっ!? 全く、あんたは
いつもいつもそうやって糞真面目で……はぁ。こんな時でも、あんたはあんた
なんだな。緊張とか、してないのかい? 俺は……まあ、わかるだろ? あんたに
こんな話をしてるって時点で察せよ。
 あ? 身の上話って言ってたのに、全然見の上は聞けてない? なんだよ、
俺の戦う理由を聞けたくらいじゃ満足できないのか? まったく、変な所で
贅沢だよな、あんたは。

622 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 20:56:12 ID:gPgW+RXF
 ……そうだな……じゃあ、こうしよう。あした、あんたは俺を絶対に生き残らせろ。
んで、あんたは絶対に生き残れ。まあ、できれば他の奴らも生き残ってもらいたい
けど、一先ずは俺とあんたとで生き残ろう。そしたら、俺がどうして俺に
なったのか……そこん所を話してやるよ。
 ……ああ!? あんた最初から死ぬ気かよ!? そんな根性じゃ、“頂点”にゃ
デコピンでのされてしまいだぞ! 気合入れろ気合! あんたが生き残って
なきゃ、俺が生き残っても話する相手がいないんだからな! 絶対生き残れ!
 ……とにかく、今日はもう寝ようぜ。ちょっと話しすぎて、疲れたし。明日に響くと
不味いからな。あんたも寝ろよ、もう。ああ。おやすみ。
 ………………行ったか。
 はぁ……ったく、何なんだよあんたは。せっかく明日で終わる覚悟が出来てたのに、
その為に俺を覚えておいてもらおうとこんな話もしたのに……すっかり、死にたく
なくなっちまったじゃねえか。
 ま、責任取って、俺が私に戻ってからも、あんたにゃ付き合ってもらうとしようか。
 ……その為にも、明日は、死ねなくなったな。
 あいつの敵も討って、その上で俺も死なないで、そしてあんたも死なせない。
 ……奇跡でも起こらにゃ無理だが……起こしてみせようか、一度くらい!


「……なんなんだよ、はこちらの台詞なんだがなぁ」
 彼は、苦笑いを浮かべながら一人ごちた。
 密かに――と思っているのは彼だけで、みなその事実は知っているが――想いを
寄せる、男勝りな女剣士に決戦前夜呼び出されたと思ったら、自分の想いを拒否された
上、彼女の心の中にいる、いまはもうどこにもいない男の存在を延々語られた……まったく
もって、話に聞くだけならばとんだお笑い種である。
 だが、それで良かったと、そう彼は思っていた。
 経緯はどうあれ、話し始めた時に彼女の中にあった死の影が、話が終わる
頃にはなくなっていたのだから。
「お前が生きてくれていれば……何度だってアタックできるからな」
 戦いの中においてそうであるのと同じように、粘り強く執拗にアタックすれば、
あるいは彼女を振り向かせる事だってできるかもしれない。彼女も、生きて帰り
さえすれば、色々自分の事を聞かせてくれると、そう言ってくれたのだ。
 死者に勝つ事はできないまでも、死者に並ぶ事ならば、できるかもしれない。
 その為にこそ、自分は生者として、彼女と共に帰ってこなければならない。
死者として死者と並んでも、意味などないのだ。
 それは、彼女にしても同じだ。彼女が死者として死者と並ぶような事があれば、
それは彼にとっては敗北だ。これ以上無い、完全なる敗北だ。
 それだけは、嫌だった。
「……こんな邪な決意で、明日大丈夫かな?」
 そんな事を思いながら、再び苦笑いを浮かべる彼の目には、空の頂点に
浮かぶ満ちたる月が映っていた。そこにいる存在の事を思い浮かべながら、
それでも彼は、笑いの形を変えた。苦笑いから、不敵な笑みへと。
「俺とお前の未来の為に……奴には、踏み台になってもらうとするか!」
 夜明けと共に、戦いは始まる。
 その結末がどうなるか……それは未だ、夜空に浮かぶ月すらも知らない――

                                                  終わり

623 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 22:00:47 ID:IyToI3ve
GJ!!

624 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/23(金) 23:32:17 ID:mSZhhox8
おお、いい感じだ。前後も読みたくなるな。

625 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 04:04:32 ID:Jfnh2pB5
上手いもんだなー
面白かった

626 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/25(日) 18:02:59 ID:X0fRwFk3
独白が冗長だと思う

627 名前:お題「パイプ、涙、頂点」 1/6:2009/01/27(火) 07:42:46 ID:dy5OffgV
 学校からの帰り道。
 俺は道端に転がっていた大きめの小石を思いっきり蹴飛ばした。

「痛っ!」

 小石には予想より重量があり、蹴った反動で痛みが走り思わず目に涙が滲む。

「くそっ、今日は厄日だな……」

 何をやっても上手くいかない、こんな日は早く帰って寝てしまうに限る。
 そう結論づけ歩くペースを上げたところで。

「ちょいなちょいな、そこのお兄さん」

 キャッチセールスか? と思い振りかえる。
 そこに立っていたのは見るからに胡散臭い服装をした女だった。

 昔のファンタジーに出てくる魔法使いのような黒いローブ。
 そしてその服装に似つかわしくない手に持った鉄パイプの存在。
 それらが見事に調和し、女からは関わってはいけない人のオーラが出ている。

「お兄さん、今日嫌なことあっただろう?」

 誰だって一日に一つくらいは嫌なことはあるもんだ。
 そうやって興味を引いて、壺やら絵画やらを売りつける。もしくは宗教の勧誘か……。
 なんにせよ、それが彼女の手口なのだろう。

 無視することを決定し、さらに歩くスピードを加速する。

「あぁ〜ん、無視しないでくれよぅ。怪しいものじゃないんだよぉ」

 これで怪しくないんだったら、この世の何が怪しいっていうんだ。
 女は全力で早歩きする俺を必死で追いかけながら俺に話しかける。

「う〜ん、その嫌なことは恋愛絡みかな?」

 ギクリ。
 ……いや偶然だ。俺くらいの年齢の男なら恋愛である可能性が高いという予想。
 そう、それが偶然にあたっただけだ。

「好きな娘の前でチャック全開、か。高校生だと手痛いミスだねぇ」

 そう言いクスクス笑う女、って待て。
 その事を知っているのは教室に残っていた数人のはずだ。

 その話が既に学外まで伝播している……ってそれはおかしい。
 いくらなんでもそんな些細な事が噂になるはずはない。

 そう思い足を止め女の方を見る。
 俺が止まった事が嬉しいのか、女の表情はニコニコと笑顔だ。 

「何故その事を知っている?」
「のど、渇いた」

 俺が歩みを止めたのは、ちょうど喫茶店の目の前。
 って事はつまり……。

628 名前:お題「パイプ、涙、頂点」 2/6:2009/01/27(火) 07:43:23 ID:dy5OffgV
「やっぱりこうなる訳か」

 そう、ぼそっと呟く。

 しかし目の前の女は俺の奢りの
 パフェとコーヒーに夢中になっていて聞いていなかったようだ。

「んで、あんたは何者なんだ?」

 今度は大きめな声でそう問いかける。

「んにゃ? 見て大体想像できんかいな?」

 女はローブをみょーんと引っ張ってみせる。

「いや、全然分からん」
「むぅー、ジェネレーションギャップって奴かな?」

 ジェネレーションギャップを感じるくらいの年齢差があるようには見えないんだがな。

「じゃあこれをば」

 そういって女は懐から一枚の紙を取り出した。

「魔法淑女、佐藤ちえ……?」

 肩書きの奇抜さ、それに似あわぬ名前の平凡さに驚く。
 が、この程度なら十分対処可能だ。

「で、その魔法淑女さんが何の用ですか?」
「おや、信じてくれる気になったのかい? お姉さん嬉しいよ」

 信じないといったら、信じるまでそれについて話されるんだろう。
 そんな不毛なことをするよりはさっさと要件に移ってもらった方が時間の短縮になる。

「いやね、街を歩いてたら嫌に負のオーラの出てる少年がいたからね。お姉さんが助けてあげようと思って」
「負のオーラって……」
「ふっふっふ、魔法使いはオーラが見えるもんなんだよ」

 誇らしげに笑う女……もとい佐藤さん。

「何でその内容まで?」
「上位の魔法使いになると人の心も読めるんだよ?
 私は一応この地区の魔法使いの頂点に立つ女だからね。それくらい朝飯前さ」

 本格的に危ない人かもしれない。
 警戒心を強めながら慎重に話を進めていく。

「それで、そんなキミにお勧めの商品がこちらだ!」

629 名前:お題「パイプ、涙、頂点」 3/6:2009/01/27(火) 07:44:21 ID:dy5OffgV
 とうとうきた!
 これでキャッチセールス確定だ!

 ゴトリ。
 そんな喫茶店には似つかわしくない音が響く。

「……鉄パイプ?」
「いやいや、これはただの鉄パイプじゃないんだよ」

 そうは言っても見た目はどうみても鉄パイプ。
 言われてみればさっきからずっと持ってたなぁ。

「これは嫌なことを忘れられる魔法の鉄パイプなんだ! キミにぴったりだろう?」

 誇らしげな顔をする佐藤さん(自称魔法使い)。
 はい、アウトー。

「どうして鉄パイプなんですか?」

 なるべく刺激しないようにしないと。
 下手すると目の前の鉄パイプで殴られかねない。

「さっきキミ、石を蹴ったときに、痛くて涙を流しただろう?」

 くそっ、そこまで見られてるんか。
 恥ずかしさで顔が真っ赤になるのを感じる。

「どうして痛いと涙が出るのか、不思議じゃないかい?」

 言われてみれば不思議ではある。何の関係もないような。

「それはね、涙には嫌な事も一緒に流して消しちゃう力があるのさ」
「はぁ……」

 素敵な話だとは思うものの、信じることは到底できない。

「つまり魔法の鉄パイプで思いっきり頭をブン殴られると……」
「いやいや」
「嫌なことを忘れちゃえるんだよ」
「それ、記憶喪失っていうんじゃ……」

 ちっちっち、と音を鳴らし指を振る。
 フィクションの世界ではたまに見かけるが現実でやられるとこの上なく腹が立つ。

「本当ならお金を頂くところなんだけどね、パフェ奢ってもらったし……」
「奢ってもらったし?」
「ただであげちゃおう、お姉さん太っ腹だなぁ」

 ビンゴ! これは催眠商法だ!
 ただでモノをプレゼントしお得感を煽ったのちに、
 割高な商品(布団、浄水器など)を売りつけるあの商法だ!

「はぁ、ありがとうございます」

 素直に受け取っておく。からくりが分かればこっちのものだ。
 ここから反撃開始……と?

630 名前:お題「パイプ、涙、頂点」 4/6:2009/01/27(火) 07:45:31 ID:dy5OffgV
「じゃあ少年、頑張ってくれたまえ」

 そういって佐藤さんは席を立つと、喫茶店を出て行ってしまった。

「え?」

 今度こそ本当にびっくりして動きが止まる。
 頑張るって、何を?

「本当に何もなし? え? え?」

 場所が喫茶店であることも忘れ、
 発信器でもついてないかと鉄パイプを調べる俺。

「ただの鉄パイプだな……」

 放心状態。あのお姉さんは何がしたかったのだろう。
 そんな事を考えこんでいると。

 コンコン、とガラスを叩く音。
 それに気が付きそちらの方を向くとそこには……。

「あれ? 遠藤くん?」

 俺の名前は遠藤修二であるからして明らかに俺に声をかけているのであるが、
 問題はそこではなく、その声の発生源が清水さんであることだ。

 清水さんとは、清水優子さんのことであり、
 俺が絶賛片思い中の人であり、本日チャック全開の姿を見られてしまった人です。
 なんでこんなとこになんでこんなとこに。

「ナンデコンナトコニ?」

 しまった内心がそのまま出てしまった。
 しかも緊張して片言になってるし。

「たまたま見かけたからさ、どしたのかなーって。待ち合わせ?」
「いや、違うけど……」
「ちょっと待ってて」

 どう説明したもんだろうか、と思っていると清水さんが喫茶店に入ってくる。

631 名前:お題「パイプ、涙、頂点」 5/6:2009/01/27(火) 07:46:41 ID:dy5OffgV
「う〜ん、私ココアで」

 そうウェイトレスさんに注文し、俺の前、つまりさっきまで佐藤さんが座っていた席に座る。

「で、どうして一人で喫茶店に? ん? これ鉄パイプ?」

 あちゃー、やっちまった。そりゃ不審に思うよな。
 いい言い訳も思いつかなかったので正直に白状することにする。

「いや、キャッチセールスのお姉さんに魔法の鉄パイプだって売りつけられて」
「遠藤君流石だね! 普通の人にはその返しは出来ないよ」
「これがマジなんだよ……」
「マジならもっと流石だよ、うん遠藤君すごいや」

 なんだか微妙な関心のされ方をしているような……。

「で、いくら取られたんだい?」
「いや、パフェとコーヒー奢ったらただで譲ってくれるって」
「うん、やっぱり流石遠藤君だ」

 清水さんにとって俺はどんな奴だと認識されているのだろう……。

「しかしそれにしてはさっき見た時は凹んでた気がするんだけど?」
「そう?」
「こう、オーラ的なものが出てたよ」

 もしかすると清水さんは魔法使いなのかもしれない。
 佐藤さんの話のせいで一瞬そんなことを考えてしまう。

「何かあったのかい? もしよければ相談してくれないか?」
「いや、学校で、あの、チャックが……」

 何となくその場の空気に流されて口を滑らせてしまう。
 言った後でしまった、と思ったが時すでに遅し。

「なんだ、そんな些細なことを気にしてたのか!
 あっはっは、そんな不運なナイープボーイに何か奢っちゃる!」

 と笑い飛ばす清水さん。

「もうここまで来たら一人も二人も一緒だし俺が奢るよ。悩みも聞いてもらったし」
「そうかい? 悪いね。じゃあ今度何か埋め合わせをさせてもらうよ」

 といったところで清水さんのココアが空になる。

「うん、じゃあこの辺で私は失礼するよ」
「あ、俺も」

 会計を済ませ喫茶店を出ると、入る頃は明るかった空が暗くなっている。

632 名前:お題「パイプ、涙、頂点」 6/6:2009/01/27(火) 07:47:28 ID:dy5OffgV
「じゃあこの辺で……」
「ちょっと待った! かよわい女の子を夜道に放りだすなんて本当に男の子かい?」
「……送っていくよ」

 情けない話だが、清水さんから声をかけてくれて助かったというのが本音だ。
 送っていこうとは思っていたのだが、声に出す勇気はとてもじゃないがなかったし、
 そんな展開になったら何を話せばいいのかとか色々考えてしまって……。

「定食屋!」

 そんな事を考えていたら清水さんが突然叫ぶ。

「定食屋で奢ってやろう、今週末は空いてるかい?」
「土曜も日曜も空いてるけど……なんで定食屋?」
「前から気になってはいたんだけどね、女だけだとそういう場所は入りにくいもんなんだよ」

 なるほどそんなもんなのか。

「ん、ここでいいよ。このマンションだし」
「そう? じゃあ明日学校で……」
「だね。じゃあおやすみ!」

 マンションに入っていく清水さんの姿を見送る。

 今週末に会う? 俺と清水さんか? マジで?
 それってデートじゃね? ってか今の喫茶店も……。

 一人になってようやく俺の脳みそが回転を始める。
 とそこで手に持っている鉄パイプの存在に気がつく。

「嫌な事を忘れる鉄パイプ……か。あながち嘘でもないかもな」

 結果として今の俺は学校であった些細なこと(本人にそう言われたし)を忘れ、
 今さっきあったことと、今週末のことで頭がいっぱいになっている。

 これも元はといえば鉄パイプ、もとい魔法淑女佐藤さんのおかげではある。
 ……まぁ偶然だろうが。

 しかし魔法のおかげでこうなったと考えてもいいかもしれない。
 とりあえずこの鉄パイプは大切に保存しておこう、そう心に決めたのだった。

633 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 07:49:39 ID:dy5OffgV
投下終了
こんだけ投下が遅れているにも関わらず、
推敲回数0だからミスとかあるかもしれん

ついでにage

634 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 08:00:08 ID:N3yfCmmr
GJ!!
いい雰囲気だ

635 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 18:38:38 ID:XqDY/4nO
GJ!いい話だ

636 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 08:15:56 ID:h3DpPHOI
面白かった!!でも、鉄パイプと佐藤さんの存在が何か最後のオチの伏線であって欲しかった。

637 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 08:31:41 ID:I6KhqG1O
変なお題なのによくここまで毛色の変わったいい話ができあがるもんだなー
あ、いや変なお題だからこそか

638 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 06:28:09 ID:4he43HQv
そろそろお題出してもいいよな?
「図書室」

639 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 10:28:55 ID:DLXYbtfu
お題2
未熟者

640 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 13:27:23 ID:Ybz9KKDF
>>633
鉄パイプって盲点だったなぁ。
冷静に考えたら、むしろタバコふかすアレより思いつきそうな
もんだけど、全然頭になかった。

調和した近寄ってはいけない雰囲気笑ったw
あと、清水さんの性格というか、口調が凄い好みw

GJでしたー。


三つ目のお題は次の人に任せた!↓

641 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 14:49:51 ID:muDgIw5b
「味」

642 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 17:47:38 ID:7Yo9mxPh
next

「図書室」「未熟者」「味」

ファイッ

643 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 20:24:15 ID:dxGSE00Q
K・O!

カンカンカン



・・・ごめん、ちょっとやりたくなっただけ。

644 名前:創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 22:27:17 ID:mjK/cGQX
ここまだあったんだ、懐かしいなぁ

645 名前:図書室・未熟者・味 ◆91wbDksrrE :2009/01/31(土) 23:05:50 ID:dxGSE00Q
投下します。

中で書かれてる分類とかの話は、記憶とざっと調べた内容に
基づいてますんで、実態とは異なる場合があるかもしれませんが、
その時は寛大な心でご容赦を。

ではいきます。

646 名前:図書室・未熟者・味 ◆91wbDksrrE :2009/01/31(土) 23:07:16 ID:dxGSE00Q
 連れ立って歩く男と女がその歩みを止めたのは、とある部屋の前だった。
部屋の名は『図書室』。数多の蔵書を有し、時にはその静寂故に勉学の
場として、時にはその情報量故に探索の場として活躍する、学びやに
おける頭脳……などと考えている人間が、果たしてどれくらいこの学びや
の中にいるだろうか。願わくば、より多くの人間にそう思ってもらいたいもの
なのだが……現実はそうはいかない。まことに残念な話だが。
 扉の前に立つ男と女の耳にも、静寂とは程遠い喧騒――と言っても、
学びやの中で比較するならば、相当にマシな方ではあるのだが――
が届いている。
 見れば、そのネクタイの色から、男と女は今年この学びやへとやってきた
新入生であるらしい。
「まったく、図書室の使い方が未熟な輩ばかりだ」
「図書室に熟練も未熟もないだろ、常識的に考えて……」
「お主も未熟者だな。見ているがいい。キャリア十五年の妙技を見せてやる!」
 扉を開ける直前、女――年恰好からすれば少女と呼ぶのが相応しい
だろう――は傍らでぼやく男――こちらも同じく少年と呼ぶのが相応しい
――を一喝した。無論、その場はまだ扉の前とはいえ、図書室という本来
静寂に満ちるべき場所であるが故に、声は絞られていた。なるほど、心得て
いるようだ。
「静かにするのだぞ、お主も」
 扉を開けると同時に、彼女の口元はキッと結ばれた。もう二度と声を
漏らさまい……そんな決意が伝わってきそうな程に、固く。
 その姿は、同じように凛々しくひきしまった目元や、ほっそりと
引き締まった面と合間って、まるで武士(もののふ)の如き、気高く強さを
覚える美しさを創り出していた。
 まあ、実際問題、二度と喋らないわけにはいかないのが現実ではあるが、
そうするのが妥当であるという彼女の考えはよく理解できた。
 だが、同行者にはその彼女の考えは理解できないらしい。
「見てろって言われてもなぁ……あ、俺漫画読みたい」
「うつけが。私達が何の為にここに来たと思っている」
「え? サボる為でしょ?」
「だからお主はうつけなのだ。調査の為に、図書室という場所は思いの外
 有益じゃという事も知らず、ただ静か故に仮眠の場とでも思っておるのだろう」
「違うの?」
「違うわっ!」
 言葉の勢いとは裏腹に、それでも彼女の声は小さい。
 周囲では、友達と談笑したり、備え付けのパソコンに向かいキーボードを
打鍵したり、眠りこけていびきをかいたりしている人間が多々見られる。
そういった人間の中にあっても、彼女は一人静寂を乱さまいと気を配っている。
「とにかく……この図書室に来るのは今日が初めてだが、中学のそれと
 勝手はそう変わらんはずだ。蔵書の数は比較にならん程多いが、幸いきちんと
 整理はされておるようだしな」
「お前……ホントに真面目だなぁ」
「お主が不真面目すぎるのだ。他人の優を賞賛する前に、まずは己の
 劣を疑い、恥るがよい。……とにかく、行くぞ。目的の書は、この奥にあるはず」
 どうやら、彼女達は何らかの調査を目的として、この図書室へとやってきた
らしい。本来図書室とは、そういう目的の為にこそ利用されるべき場所であり、
その為の機能を有している。この学びやにおいても、それは変わらない。
「なんでわかるの?」
「本の背にある分類番号を見るのだ」
「分類番号? この背表紙の?」
「うむ。それが書物の種類を表している。日本十進分類法というものだ」
「なんじゃそりゃ」
「図書室……図書館というものは、単に娯楽として読書をしたり、道具を持ち込んで
 勉強する為にだけ訪れるものではない。お主にも、それくらいわかるじゃろう」
「ああ、まあそりゃ……今みたいに、探し物しにきたりするよな」
「その通り。しかし、探し物をしにきたのに、どこに何があるのかわからんのでは
 話にならん。整理整頓され、目的の情報が載っていると思しき書物があるおおよその
 場所くらいわからなくてはな」
「へえ……」

647 名前:図書室・未熟者・味 ◆91wbDksrrE :2009/01/31(土) 23:07:49 ID:dxGSE00Q
「その為に用いられるのが、この番号というわけだ」
「そんなのに使うためについてたんだな、この番号。すげえな」
「知らなかっただろう?」
「なんかお前ホントに図書室の熟練者っぽいなぁ」
「恐れ入ったか」
「でも、そんな面倒な事しなくても、ネットで検索すりゃ一発じゃないか?」
「……」
「え、な、何? 俺なんか悪い事言った?」
 何気ない、少年にとってはそのつもりで放った言葉だったのだろう。だが、その他愛の
無い言葉に、少女のキリリと引き締まっていた顔が、見る間に崩れ、今にも目に光る
物が見えんばかりに歪んでいく。
「……それでは、浪漫がない」
 彼女はそんな表情のまま、これもまた、それまでの小さい、だがはっきりとした
声とは違う、呟くような、消え入るような声でそんな事を言う。
「ロマン?」
「そうだ。出会いの可能性を自ら狭めてしまう。それでは浪漫が無い」
「……よくわかんにゃい」
「味が無い、と言い換えてもいい。無味乾燥だ……とまでは言い切れないが。
 ネットで検索した方が、確かに正解の一部には早く辿り着けるだろう。だが……」
「だが?」
「目的の書物の隣に、面白そうな本を見つける事は、できない」
「そりゃ、そうだ……でも、それってそんなに大事な事か?」
「大事だとも。……ここだな」
 話をしながらも、彼女達は歩みを止めていなかった。
「世界史、文化史の棚……確かに、ここならありそうだな、神話の本」
「……大事だとも。でなけれな……私とお主も出会わなかった」
「ん? 何か言ったか?」
「いや……何も」
 それだけ言うと、少女は沈黙した。少年も、それに倣うように、また。
「……」
「……」
 沈黙を保ったまま、二人は棚に並んだ書物のタイトルを見つめ続けた。
「それにな」
 その沈黙を破ったのは、少女の方だった。彼女は、一冊の本を手に取ると、
少年に差し出した。
「正解の、その全容を知る事も……難しいのだ」
「……全容、ねぇ」
「この一冊だけでも、まだ足りぬ」
 次々と、少女は棚から本を抜き出していく。
「お、おい……ちょっと、多くないか?」
「調べるというのは、本来はこういう事だ。まあ、一先ずはこのくらいにしておこう」
「……お、重いんっすけど」
「何の為にお主を連れてきたと思っているのだ?」
「荷物持ちかよぉ」
「ふふっ……後でジュースくらいはおごってやる。一先ず移動するぞ」
 両手に分厚い本を抱えた少年を連れて、少女は入り口の方向へ歩いていく。
閲覧用の机は、入り口に程近い場所にあるからだ。
「私はな」
 その途中、少女は少年を振り返り、口を開いた。
「全てを知る事は、人の身にあっては不可能だと思っておる」
「……そりゃ当たり前だろ」
 彼女が何を言わんとしてそんな事を言い始めたのかはわからなかったが、確かに
その通りであろう事は間違いない。全てを知る事は、人の身にあっては……いや、人
ではないものであっても、不可能だ。“私”とて、そうなのだから。

648 名前:図書室・未熟者・味 ◆91wbDksrrE :2009/01/31(土) 23:08:09 ID:dxGSE00Q
「だが、だからと言って、対面した問題の、その答えだけを知ればいいとは、思っていない」
「……それも、当然だろ?」
 彼女が何を言おうとしているのかは、やはりわからなかった。だが、その顔には
徐々に活力が戻り、今にも泣き出しそうだった表情は、今や笑みすら浮かべる程に
なっていた。
「だから、私は本を探し、本を読むのだ。その時、答えに辿り着くまでに手に入る、
 全ての情報が、私にとっては意味がある。目的の本に載る答えの隣に記された言葉は無論、
 時には目的の本の隣にあった本の内容すらも、私にとっては意味がある……お主には、わかるか?」
 なるほど、そういう事か。
 彼女にとっては、図書室というのはそういう場所であり、そういう意味があったのだ。
「ぶっちゃけた話、よくわからん」
「……そうか」
 少年の返答に、見る間に少女の表情が萎んでいく。だが――
「でも、ちょっと面白いかも、って思った……ホントだぜ?」
「そうか!」
 ――次の一瞬で、再び花開く。
 その転変に、“私”は思わず苦笑いをもらしてしまった。もう一つの理解故に。
「それがわかれば……わかってくれれば十分だ! お主をここに連れてきたかいが
 あろうというもの!」
「おい、声でかいぞ」
「むっ……これはすまぬ」
 それまで抑えていた大きな声を思わず上げてしまう程、彼女の感情は激しく
揺さぶられたらしい。無論、嬉しさによって。まったく微笑ましいものだ。
「まあ、これからはもっと本読まないと駄目だろうしな……読み方、教えてくれるか?」
「ふっ……お主は未熟だからな。私がしかと指導してやる」
 少年の少しはにかんだ様子から、どうやら、二人の関係は定まったらしい事が伺えた。二つの
意味で喜ばしい事だ。彼が彼女に導かれてくれれば、それは“私”にとっても望ましいのだから。
 囁くような声で楽しげに会話を交わしながら、分厚い本のページを繰る二人。
 しばらくは“私”も彼らを観る事で、退屈を紛らわせる事ができそうだ。

                                          終わり

649 名前:図書室・未熟者・味 ◆91wbDksrrE :2009/01/31(土) 23:08:21 ID:dxGSE00Q
ここまで投下です。

650 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 02:32:34 ID:rUicDwmc
GJ!!

651 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 03:05:35 ID:oDarxHAk

俊弘に横からモニターを覗き込まれる。
「何見てんの?」
「いや、スレ立て」
「図書館で2ちゃんとか、ねーし」
「だってうちのプロバイダ、規制されてんだもん」
「なんてスレ?」
「『お前らはじめてコンドームを買ったのいつ?』」
「童貞が立てるスレじゃねーな」
「童貞だから知りたいんです」
「童貞乙」
「あ・・・」
「どうした?」
「2に童貞乙ってかかれた・・・」

俊弘が俺の肩に手を置いて言う。
「童貞乙」

次の日、罰ゲームに負けてコンドームとうまい棒(サラミ味)とコンニャクを買った俊彦は、
コンビニから出てきて一言つぶやいた。
「コンニャクあたためますかって言われた」
あの頃の僕達は未熟な性の探求者だった。

652 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 03:12:48 ID:6+guGsQh
上手いなー。ありそうでイイ。
面白かった

653 名前:図書室、味、未熟者 1/2:2009/02/01(日) 07:15:20 ID:I4S05R4a
 水曜日の放課後。
 高校二年である私、飯田詩織が一週間で一番楽しみな時間だ。

 音が出ないように静かに図書室の扉を開け、
 貸出カウンターをそっと窺う。――いた。

「こんにちわ、ブンくん」
「あ、こんにちわ。飯田先輩」

 ハードカバーのSFの本を手に持ちながら、
 目線だけをこちらに向けながら軽く頭を下げる。

 完全に「先輩<本」の図式になっているこの失礼な少年は、
 銀城文博――通称ブンくん、高校一年、つまり私の後輩だ。

 通称、と言っても私しかその呼び方はしない訳だが。

 寝グセがそのままになっているとしか思えないボサボサの黒髪と、
 規則通りにきっちりと着ている制服が絶妙なバランスだ、と思う。

 顔立ちは完全に童顔であり、その上メガネをかけているので、
 中学生の低学年と言われても信じてしまいそうなほど幼い印象を受ける。

 身長も私とどっこいといったところだろうか。

「今日は早かったね」
「掃除、なかったんで」

 あくまで目線は動かさずに、淡々と答える。
 先輩に対してこの態度はどうよ? と最初のうちは思ったりもしたのだが、
 何か月も一緒に仕事をしているうちに気にならなくなった。

 むしろ変に敬語を使ったり、気を使おうとしない分、
 他の後輩より一緒にいると楽なくらいだ。

654 名前:図書室、味、未熟者 2/2:2009/02/01(日) 07:15:51 ID:I4S05R4a
 最低限の仕事はちゃんとやるし、失礼なことをする訳ではない。
 薬にも毒にもならない、そんな味もそっけもない空気のような存在だ。

 シフトの関係で彼と一緒に仕事をするのは水曜日しかないのだが……、
 先述の通りこの時間が私の一週間で一番好きな時間となってしまっている。

 この感情は男女のソレではない……と思う。
 生まれてこのかた、色恋沙汰とは縁がなかった未熟者なので断定はできないが。
 多分、癒しとかそういった類なのではないだろうかと自己分析している。
 ペットセラピーのソレに近いものだと。

 本を読むブンくんの横で数学の課題を始める。
 ペラッペラッというページをめくる音と、カリカリというシャーペンの音だけが図書室に響く。

 図書の返却と貸し出しの手続きがたまにあるくらいで他に仕事は殆どない。
 そうしてあっと言う間に時間は過ぎていき閉館時間となる。

 鍵をかけ担当の先生に鍵を返しにいく。
 ついでに業務日誌も提出。といっても殆ど書くことなどない訳だが。

 既に人の気配の殆どない校内を、昇降口まで並んで歩く。
 会話はない。でもそれが心地よい。

「じゃあね、ブンくん」
「じゃあ、また」

 校門を出たところで別れる。
 ブンくんはバス、私は駅から電車だ。

 私の静かな幸福の時間は、こうして静かに終わりを迎える。

655 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 07:16:27 ID:I4S05R4a
投下終了

656 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 07:21:05 ID:rUicDwmc
GJだ

657 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 07:48:54 ID:BR2Zighg
一気にきたな、なんか
GJですよー

658 名前:遠子:2009/02/01(日) 10:46:04 ID:hHad8Wu5
>>653
話に展開がないけど、美味しいわ……。甘くて、舌触りのやさしいコーンスープをいただいている感じなの。
小さくてかわいい器に、少しだけ盛られているから、すぐなくなってしまうのだけれど、飲み終わると体が芯から暖かくなるのよ。

659 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 12:28:36 ID:NwIFNtdK
どれも雰囲気が違ってて、工夫の仕方も色々だし面白いですねえ、、
ほぼいっぺんに投下されてるというのがまた。

次は自分も参加してみようかな。

660 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 23:16:32 ID:HJcD1x6j
ええーい!長門フラグが立っておるのに誰も長門を書かないとは
なにごとかーーー!!!

661 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/01(日) 23:17:30 ID:B1+ZWRjO
You、書いちゃいなよ

662 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/02(月) 23:44:54 ID:kqtsGIEz
そろそろ次のお題が欲しくなってきたが
書いてる途中の人はいるのかな?

663 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 04:36:33 ID:o/+4asZV
中高のころ図書室に入り浸ってた俺としては懐かしい雰囲気だなー


664 名前:「図書室」「未熟者」「味」 1/3:2009/02/03(火) 07:07:02 ID:n6+tDtb3
--------------

その日の午後、私は馴染み客のF氏から電話を受けた。
曰く、「蔵書をいくらか引き取ってほしい」とのこと。
F氏は、その道には知られた稀覯本のコレクターである。
彼の屋敷には、彼のコレクションのために特別にしつらえた一室があり、
古書を生業とするものなら垂涎ものの奇書・珍書がひしめいているのだ。
譲られることになる品への期待は勿論だが、
ことのついでになかなかの眼福も得られるかも知れぬ。
私は、身支度もそこそこに、店先に「臨時休業」の札をかけると、
いそいそと彼の屋敷へ向かった。


「それでは、こちらのお値段でいかがでしょうか。」
引き入れられたのは応接室だった。
私は広げられた蔵書を丁寧に調べると申し出た。
「ああ、そうだね」
F氏は金額を一瞥すると、さほど興味もなさそうに答えた。
「今度、以前お探しとうかがった戯曲集の中巻が手に入りそうなのですよ。
 よろしければ是非お持ちしますが」
「ああ、そうだね」
F氏はまた、上の空の調子で答えた。
「しかし、いつもながら素晴らしい蔵書です。」
私は彼の様子にいくらかいぶかしいものを感じながら、応接室の書棚を見渡し水を向けた。
「そうそう、以前見せていただいたエクトーレ全集の初版、
 あれは素晴らしかった。是非もう一度拝見したいものです」
私はちらり、とF氏の表情を伺う。
「それは、図書室に入れてあるのだ。」
……それでは、図書室へ。
そう導かれる事を半ば期待しての言葉だったが、F氏の言葉は途切れたままだった。
私はひそかにため息をつくと、手荷物にまとめた本を脇に携え立ち上がった。
「それでは、良い品をありがとうございました。
 またお売りいただける品などありましたらお呼びください。」
一礼をして部屋を辞去しようと扉へ歩を進めかけたとき、
それまで心ここにあらずの風情だったF氏が、ふと首を巡らせた。
「ねえ、君。」
「はい。」
「近々、蔵書を処分しようかと思うんだ。」
「と、言いますと」
「全て。」
私は思わず、F氏の顔をまじまじと見つめた。
「全て、ですか。」
「ああ。」
予想外の申し出に、私が接ぐ言葉を失っていると、F氏は言った。
「いや、全てとは言えないな。君の期待には添えまい。どれだけが残るものやら」
「……何か、ご事情があるのですか。」
私が問うと、F氏はきゅ、と眉根を寄せた。
「正直、どうしたものかと思っているのだ。」
F氏は、組んだ手の上に頤を乗せる。
「近頃、私の図書室に、妙なものが棲み付いたのだ」
F氏は、言葉を切った。
「困ったことに、あれは」
ほう、と息をつく。
「本を、食うのだ。」

665 名前:「図書室」「未熟者」「味」 2/3:2009/02/03(火) 07:07:43 ID:n6+tDtb3
暗い廊下を進み、F氏はひとつの扉の前で立ち止まった。
「静かに」
彼が音を立てずに扉を細く開いた。手招きされて、私はその隙間へと顔を近づけた。
鼻腔をくすぐるのは、身になじんだ古書の匂いだ。ぼんやりとした灯りに照らされて中の様子が見える。
天井までの据付けになった梯子つきの書棚が列を成している。
以前この部屋に招かれたときの記憶にあった一分の隙もない書棚は、しかし今、あちこち抜けが出来ていた。
手当たり次第に抜いた本を積み上げたのだろう、床は高低さまざまな塔が形成されている。
本の山にうずもれるように、一脚の椅子が見えた。腰掛ける人影が身じろぎをする。
暗色の上着の背中ごしに、ちらりと紙の白が翻るのが見えた。本を、読んでいるものらしい。
「聞こえるかい。」
そう囁かれて、私はようやく、先ほどから聞こえていたはずの音に気付いた。
低く、またしわがれたように高く。奇妙に上下する音は、室内で本を読む人物から漏れてくるのだった。
時折、ひきつるように息を呑み、すする水音が入る。
「ああして、泣くのだ。泣きながら、本を読む」
むせび泣く声がひときわ大きくなった。流れる涙をぬぐう腕が、袖口からのぞいた。
白い毛に覆われた腕が、そして横顔が見えた。その姿は獣だった。

「あれは」
「ありていに言えば、山羊なのだ」
「山羊、」
私が聞き返すと、F氏は頷いた。
「最初は、ほんの小さな山羊だった。ある日、この図書室に現れたのだ。二ヶ月前になる」
部屋の薄暗がりの中、その白は自ら発光しているようだった、という。
その山羊は読書用の足休めの上に立ち、口を動かしていた。
「食っていたのだ、本を。ダルゴーの評論集だった」
その場面を思い出したのか、F氏は一瞬渋い顔をした。
「それは、また」
「私は当然、つまみ出そうと近付いた。すると」
喋ったのだ、という。
「ここはどこだ、と、幼い声で」
「私の図書室だと答えた。すると、泣き出したのだ。帰りたいと言って。母が恋しいと」

ほとほとと涙を落とす様子があまりに寄る辺なく、気の毒に思ったF氏は小山羊に尋ねた。
「どこに帰るというのだ。」
「かあさまの匂いのする扉がたくさんあるのに、どれを選べばいいのかわからないの」
扉、とは本のことであろうと見当をつけたF氏は、書棚から別の一冊を引き出し山羊に与えた。
山羊はためらいがちに本に鼻を近づけると、やわらかそうな頁をむしり、と口に含んだ。
「かあさま、かあさま。」
山羊は、咀嚼しながら、再び大粒の涙を流しはじめ、母を呼んだ。

「そして泣くのだ。帰れない、これは違うと言って。」
F氏は淡々と続けた。
「排泄はしない。ただ、日に日に大きくなった。本を食べて」
「ある日、二本足で立つようになった。語彙も豊富になり、泣かずに会話が出来る日もあるようになった」
図書室からは一歩も出ずに、奇妙な飼育は続いた。
日々人臭さが増してくる山羊に、試しに上着を与えてみると、喜んで羽織った。
「あるときから、本を食べなくなった。『読んでいる』ように見えた」
「しかし違ったのだ。あれは文字を『呑む』ようになった。」
山羊が「読んだ」本からは文字や図の一切が消えていた。残るのは幾冊もの白紙の本。
「やがて体の成長は止まった。そして、みるみる年老いていったのだ。」
F氏は、ふつりと言葉を切った。
「鼻が利かなくなった、とこぼしていた。」

「本当はもう、母の匂いもおぼろげにしか思い出せないのです。」
ある日山羊は、F氏にそう言い、自嘲したような笑みを漏らしたのだという。
「私は、もう国には帰れないでしょう。きっと……もう既に食べてしまったのです。
 私は帰る道を探すうち、いつしか本というものの、
 ひとつとして同じもののない、目くるめく味の虜になった。
 そして夢中になるうちに、帰る道すら食いつぶしてしまったのだと、思うのです」
そうして山羊は、深々とF氏に向かって頭を下げた。あなたには大変申し訳ないことをした、と。

666 名前:「図書室」「未熟者」「味」 3/3:2009/02/03(火) 07:08:18 ID:n6+tDtb3
「おそらく、あれはもう長くないのだ」
F氏は、そっと図書室の扉を閉めると言った。
「私と言葉を交わすこともなくなった。
 ただ、ああしてひとりでこっそりと泣くのだ。本を読みながら。ここに現れた頃と同じように」

「……なぜ私に、この話を。」
「さてね」
私の問いかけにに、F氏は考えるような仕草をしてみせた。
「私はね。正直、自分のことをいっぱしの収集家で、愛好家だと思っていたんだ。
 人々の思考、知識の殿堂。本というもののすばらしさに心酔していた。
 本の世界にこそ無限の宇宙が広がっていると」
彼は一旦言葉を切り、は、はと声を出して笑った。
「それがどうだ。あれに出会って……全てがどうでもよくなった。
 世界のあらゆる知識も、あらゆる物語も、全てが。」
「 …… 」
「君を呼んだのは、私の中に残った未熟な収集家としてのせめてもの良心、といったところか。」
「しかし、」
「そして、観察者として。」
F氏は、私の目を見て言った。
「私は、この先一生涯読み返すであろう、私だけの物語を手に入れようとしている。
 けれどね、どんな物語にも頁を繰る者、観察者が必要だよ。そうは思わないかい、君」
私は、返すべき言葉を見つけられないまま、F氏の瞳が妙にきらめくのを見ていた。
「そのときが来たなら、また連絡を入れよう。」
F氏はそう言うと、ゆっくりきびすを返した。

--------------




あの屋敷から戻った私は、あの場で過ごした
歪んだ夢のようなひと時を、何度も思い返した。
扉の隙間から垣間見たあの山羊は、「本物」だったのか?

ひと月が経ち、ふた月が経った。
やがて、それを思うたびに感じていた奇妙な焦燥感も薄れてゆき
脳裏にこびりついたかすかな不安感を残すだけとなり。

あれから、2年が経とうとしている。
F氏からの連絡は、絶えて無い。

667 名前::2009/02/03(火) 07:09:16 ID:n6+tDtb3
以上、駆け込みで初参加です。
本の名前はでたらめ。
自分で書くと客観的に見られなくて不安になります。

668 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 07:47:42 ID:keF2RaA5
GJ!!
これはまた不思議な雰囲気で

669 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 08:23:50 ID:/+QERobV
発想がエクセレントめでたしブラボーグッド!!最高!!
だが山羊はどうなるのだ!?

670 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 10:42:20 ID:o/+4asZV
いかにも上質のショートショートって感じだなー

671 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 13:34:13 ID:Tlkzq0Mo

「携帯」「関係」「介護」

672 名前:「携帯」「関係」「介護」 1/2:2009/02/03(火) 17:09:04 ID:UY421n60
 俺が退院して今日で丁度一ヶ月目だ。
 まだまだ生活に支障を来たしまくりで、満足にキーボード入力すらできない。
 もしこいつがいてくれなかったら、俺はライターなんて職業は続けられなかっただろうな。
「ご主人! メール来たよ!」
 舌っ足らずなキンキン声のこいつは、俺の指が復活する間だけの携帯介護ロボット。ゲーセンのプライズみたいなちっこいなりのくせに、妙に高性能だが、どこか抜けてるところもあって割りと愛着が沸くように作られてる。
 しかし、こんな夜更けのメールなんてどうせ広告かなんかだろ。
「とりあえず読み上げてくれ」
 らじゃっなんて返事をすると全身で一生懸命にマウスを動かし、メールを表示させた。可愛い奴め。
「件名! 出会いのないあなたに! 内容! ひとづ」
「削除だ。」
 まかせろご主人っと勢い良く返事をしてメールを削除する。
 言葉で指示できてほぼ完璧に遂行してくれるのは素晴らしいだが、こいつはもう少し頭の良い動きができないもんなのかなぁ。
「ご主人は人妻が嫌いか?」
 かといってこういうことは平気で聞いてきやがる。精神的なケアも介護には重要だっつの。
「ああ、嫌いだ。そんなことを聞いてくるお前も嫌いになってきた。」
 そんな風に突き放してみると、相変わらずこう言う。
「嗚呼、ご主人。もう聞かないから許して! 優しいご主人大好き! 色男!」
「いっつもそのほめ言葉じゃねえか。」
「う、えと、違う言葉も勉強した! イ、イ、イエメン!」
「国だろ。どんな国かは知らんが。」
 イケメンと言いたかったのだろうか。ホント高性能なんだかバカなんだか。
「じゃああたしはご飯でご主人を喜ばせる! 待ってろ、ご主人!」
 じゃあって何だじゃあって。
 まぁ、お前の料理は割りと食えるから許してやるよ。


673 名前:「携帯」「関係」「介護」 2/2:2009/02/03(火) 17:12:08 ID:UY421n60
「料理はお前の持つ唯一の特技だな」
「そうだろ! あたしが作ったご飯は三ツ星だ!」
 飯なんて食えないくせにこの自信はどこからくるんだろうな。
「お前、味なんてわかるのか?」
「味は分かんないが、食べてる時のご主人、普段よりニコニコしていた」
 なんかちょっと悔しいな。
「テレビ見て笑ってただけで本当はあんまり美味しくないんだ」
 あれ、固まった。
 おいおい、煙出てきてるぞ。これ、やばいのか?
 しかし、そんな俺の様子を確認したのか、突然ニコっと笑う。
「なんちゃってな!」
 けたけたと笑い出したのを見て安心した俺は不意に口走ってしまった。
「バカヤロ、心配させんなよ。寿命が縮んだ」
 言った後でしまった、調子付かせたかと思ったが、むしろこっちが心配させたようだ。
「ご、ご主人! 長生きしてね! どっか悪いところあったら言ってくれね? できることならなんでもやったげるから!」
 ちょっと必死すぎだろ。
 ……でも、そんなところが可愛いんだよな、こいつ。
 この一ヶ月、俺の生活はずっとこの調子だ。
 事故で手を怪我してから、気が滅入ってネガティブになっていた俺を救ってくれたのはこの小さな介護ロボ。
 レンタル期間は手が治るまでだが、こいつを返すのはなんか忍びない。
 愛着、と呼んでも差し支えないかな。
 一方的に尽くしてもらうだけの関係で、こいつは迷惑してるのかもしれないが、手が治ったら今度は俺がこいつを喜ばせてやろう。
 悪くないよな。だってもう俺は、こいつを家族だと思っているんだから。
 さ、明日もこいつの為に仕事を頑張ろう。一日でも早くこいつを家族として迎えられる日が来るように。
「いつもありがとうな。」
 指で突付きながら目を合わせずに言ってやった。


-------------------------------------

初参加です。三題噺って思っていたより遥かに難しいです。
私は書いてて楽しかったですが、皆さんはどうでしょう。

674 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 17:27:39 ID:sHNiIdzK
イエメン吹いたww

675 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 17:57:31 ID:o/+4asZV
介護ロボットかわいいなw
この話俺好きだなー

676 名前:勝手に支配人:2009/02/03(火) 17:57:38 ID:t850Uy5R
一人で全部決めるのは反則 しかも題変更の了承も得ていない
よって無効とする


新しい題

677 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 19:02:15 ID:QOUjOT6K
お題「暗号」

>>664
久しぶりに来たが、これは素晴らしい

678 名前: [―{}@{}@{}-] 創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 19:04:37 ID:vrSGJ5lS
お題「支配人」

679 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 19:24:16 ID:fM7tiysN
お題「正午」

680 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 19:43:23 ID:sHNiIdzK
じゃあ
「暗号」、「支配人」、「正午」という訳で

それにしても>>672-673は良作だったと思うんだ

681 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/03(火) 19:44:22 ID:o/+4asZV
キャラがすごくよく立ってるよね

682 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 00:41:16 ID:CoYB55oS
こんな子が遣って来るなら俺もさっそく腕を折ることにするよ!!

683 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 02:34:37 ID:jIvMTCE2
>>682
待てっ、早まるんじゃない!

684 名前:暗号 支配人 正午:2009/02/04(水) 05:23:36 ID:a7liqiiq
灰色のスーツを着た男がカウンター席に座り、スコッチ、ロックな、と注文した。
マスターが、無愛想なヤツにはストレートしか出せないね、と無愛想に答え、中ほどまでスコッチウイスキーが注がれたグラスをテーブルに置く。
スーツの男はグラスの中身に少しだけ口を付け、かぁっと唸った。
「きついねぇ。氷が無けりゃ飲めねえな」
マスターは軟弱な男だなと呆れ顔で吐いて捨てる。
そして急に真顔になって続けた。
「例の年代物だが、お前さんの予想は正解だ。かなり昔から蔵にため込んでたようだよ。臭くて飲めたもんじゃあないが、あの癖は病みつきになる。蔵の場所は船着き場の四十一番だ。管理人の数は八人。全員がネズミ用に爆竹を用意しとるよ」
「けぇっ!湿気てんな。それじゃ仕込み直しもできねぇ。職人は手配してあるんだが、匂いを嗅ぎに近寄れもしないならどうしようもねぇぜ」
別の客からお代を受け取ったマスターがスーツの男に顔を寄せて小声になる。
「その蔵には支配人がいてな、正午に重たい菓子折りを手土産に訪ねりゃ、蔵の扉を開いてもらえるように話はつけてあるよ」
スーツの男が参ったという表情で首筋を撫でる。
「さすがはマスターだ。酒に関しちゃ頼りになるねぇ」
「男に頼られてもな。」
スーツの男は、違ぇねぇ、と答えてがははと笑った。
「それじゃお代な。また来るよ」
そう言って分厚い財布から適当に紙幣を掴むとカウンターに置いた。
釣りは取っといてくれと言って席を立つ。
マスターはその背中に言葉を投げかけた。
「深酒で死なんようにな」
スーツの男は振り返らず手をヒラヒラと降り店を後にする。
減った様子のないスコッチが、照明からの光で輝いていた。


-------------------------
携帯で打ったので短めです。

685 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 06:13:14 ID:exGoFFDw
乙!早いね

雰囲気好きだな。無愛想なマスター、色々副業ありそうでいい感じ。
酒は何かの符丁?それともほんとに盗んででも飲みたい酒なんだろうか。

686 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 12:14:56 ID:nq9VjY7u
爆竹は銃だろうな
酒は麻薬か?

687 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 16:35:10 ID:yGYrOqMF
>>686
そういう意味だったのか……

688 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 02:15:06 ID:8IHGoy+V
>>686さんの言うとおりです。
お題の一つが暗号ということでそれっぽくしたんですが、
もう少し深い意味を言葉に持たせる工夫が必要そうですね。

689 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 02:18:25 ID:nktzo35/
 神≪世界の管理人≫と決着をつけるために、
 午後零時≪約束の刻≫に僕はこの場所にやって来た。

「ふはははは、お前にあの暗号が解けるとは意外だったな」
「IQ二万八千の天才をなめんじゃねぇ!!」

 吐き捨てるように言う。

「自分で天才と言うか……ははは、面白い」
「何とでも言え」
「しかしその天才を創ったのが誰か分かっているのか?」
「これ以上お前と下らない会話を続ける気はない」

 気力、体力ともに十分――行ける!!

「あの時救えなかった姉さんの敵を――討つ!」

 ここまで来るのに協力し、そして散っていった仲間の顔が脳裏をよぎる。
 行くぞっ!! 最終決戦だ!!

 ―完―

690 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 04:29:20 ID:7bV60hMF
つっこみてぇぇぇ!

691 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 08:00:12 ID:GiX5L1FQ
やべえツボったwwwww

692 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 08:30:40 ID:E66VOUmm
○○先生の次回作にご期待下さい!

693 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:29:08 ID:Ou3bIU7i
たたたたたたたたたたたたたたた
たたたたたたたたたたたたたたた
たたたたたたたたたたたたたたた
たたた正午に南口に来て下さい。

              支配人

ヒント:たぬき

694 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 22:29:54 ID:aGjtSfNf
たぬきというか手抜きだなwww

695 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/06(金) 23:00:41 ID:+d0dXWTW
せめてもっと本文を散らせw

696 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 00:10:52 ID:35hbx70i
ではそろそろ次のお題を一つ。『占い』

697 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 00:17:48 ID:uMsP5LUF
じゃあ「妖精」

698 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 00:25:19 ID:Hhu9oUKp
お題「スポイト」

699 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 03:01:58 ID:zG1IgV8h
それじゃ、
「占い」「妖精」「スポイト」

go!

700 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:41:44 ID:XC8FvrE7
「らんらんるーのハッピー占い」
ロイヤルミルクティと生ハムメロンで潤いつつ、このサイトを見るのが
俺、木村吾郎(30・童貞)の朝の日課となっている。
「今日の乙女座のあなたは恋愛運にツキあり!」
そう書かれて、俺は思わず身を乗り出した。
30歳で童貞。人はこのスペックを「妖精」やら「魔法使い」と呼ぶ。
クリスマスやバレンタインデーになると憂鬱になる俺にとって
この占いの結果は「待ってました!」といいつつ膝を叩きたくなるほど。
「今日のあなたのラッキーアイテム  スポイト
これで恋のパワーをいっぱい吸い取っちゃえ!」
椅子から転げ落ちた。
毎回思うのだが、ここのサイトのラッキーアイテムは毎回メチャクチャだ。
ある日は鹿の剥製。
またある日は核兵器。
脳内メーカーでらんらんるーの脳内を覗いてみたい。
しかし、信じるものは神を見る。
スポイトを持っていれば俺の前にイカすガールが現れることだろう。
こうして俺は、道具箱からスポイトを取り出しバッグに入れ久々の外に出たのである。

 そしてどうなったかって?それは想像に任せる。

すみませんでした。

701 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:44:57 ID:phA5Dfb1
この男謎過ぎるwww

しかし久々の外って事は引きこもりだったりするのか……
なんてヘビーな野郎だ

702 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 00:01:20 ID:uMsP5LUF
らんらんるー☆

703 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 01:35:51 ID:ABKCzhH8
700です。
×そう書かれて
○そう書かれてあり

死にたい。

704 名前:「占い」「妖精」「スポイト」 1/5:2009/02/08(日) 08:43:53 ID:dxQHX0hk
「あ、母さん、今日は美穂の家に寄るから晩御飯いらないです。以上。」
 由奈子は学校の屋上で緊急の連絡と称し、禁止されている携帯電話を使用していた。
 母が受話器を置いたことを確認した由奈子は、通話を終了し電話を畳む。
 ふと、何か宙に舞うカマキリのような物が目に入り、由奈子は自然とその物体を目で追った。
「私、妖精!」
 確かに妖精のような姿をしている。ひらひらのフリルがたっぷりとあしらわれた服。蝶のような形の半透明な翅。可愛らしい姿だ。
 しかし、由奈子は無視を決め込み屋上から立ち去ることにした。
「ちょっと待ちなさいよ! あんた今私と目が合ったじゃないの!」
 妖精は彼女を追いかけながら必死に気を引こうと躍起だ。
 しかし、由奈子の足は止まらない。
「まちなさいって言ってるでしょ!」
 妖精が制服の後ろ襟を掴んで引っ張った。
 煩わしそうな手つきでその邪魔な妖精を、由奈子は払いのけた。
「ギャス!」
 大したダメージはないが、妖精の大きく体勢を崩れた。
 由奈子がさらに歩を進め、屋上の出入り口のドアに手をかけようとした時、
「ひぐぅぅ。ふぇ、ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
 甲高い声で妖精は泣き喚きだした。
 耳障りで不愉快な声。
 由奈子は妖精に振り返ると吐き捨てる。
「うるさい」
「だって、あんたが、私のこと無視、して、ひぐっ」
 妖精は返答をしようと必死だったが、鼻声で途切れ途切れだ。
 由奈子が妖精をじっと見つめる。
 次第に落ち着いてきたらしい妖精が、突然呆けたような顔になった。
 そして、だんだんと眉間に皺を寄せる。
「あ、声も聞こえてるじゃない!」
「認識したと認識しなければいないも同然。故に妖精は存在しなかった」
 さすがにこれ以上無視し続けてもまたうるさいだけだと推測した由奈子はきっぱりと妖精に告げた。
「酷い! 鬼子!」
「……うるさい」
 結局結果は変わらなかったが、これ以上泣かれても困るので話を促してみる。

705 名前:「占い」「妖精」「スポイト」 2/5:2009/02/08(日) 08:44:20 ID:dxQHX0hk
「で、その妖精が何?」
「ヒゲモジャの妖精皇帝、オーベリズムロディアンヌ様の占いによると三時間後に妖精みんなが滅んじゃうのよ!」
 何を言っているのか理解したくなかった由奈子は事態を収束させるべく続きを語る。
「そうして妖精という存在はなくなり、世界は物理法則に基づいた秩序の上に毎日を構築していくのだった。完。ご清聴ありがとうございました。先生の次回作にご期待ください。」
「悪魔! ヤマタノオロチ!」
 またも批判された。
「あんた、私が見えてるんだから協力しなさいよ!」
 由奈子が急にキョロキョロし始める。
「……?」
「いまさら見えてないフリしても遅いわよ!」
 面倒くさそうな案件は無視するという由奈子の心理は見切られてしまったようだ。
 妖精は由奈子の制服の襟を掴み涙目で訴える。
「もう時間がないの! お礼ならなんでもするからぁ!」
 由奈子の目の色が変わった。
 きちんと確認する。
「なんでも?」
 妖精は大いにうなずいて答える。
「なんでもよ!」
 由奈子の表情に便所のネズミも逃げ出しそうなドス黒いオーラが宿った。
 腕組みをすると抑えきれない欲望の塊が口から飛び出した。
「世界を手にする機会がこれほど早く訪れようとはな! はは、ふははは、あっははははははははははははははは!」
「無理だから」
 冷静に突っ込まれた由奈子が元の乏しい表情に戻る。
「……」
 そして無言で妖精を見遣った。
 なんでもって言ったじゃないか。
 そんな由奈子の気持ちは妖精に届いたらしい。
「妖精にできる限りのことよ! まぁ、要求は後にして。とにかく手伝って! お願い!」
 妖精が話を進めようとする。
 堂々巡りはうんざりなので由奈子も流れに乗ることにした。
 とりあえず聞いてみる。

706 名前:「占い」「妖精」「スポイト」 3/5:2009/02/08(日) 08:44:45 ID:dxQHX0hk
「何をすればいいのさ?」
「三時間後に妖精独立自治区に飛んでくる核ミサイルの重水素を、このフェアリースポイトで、全部吸い取るのよ!」
 独立のあたりで由奈子は思った。
 うん、良くわかんないからいいや。
 一応最後まで聞いてさらに理解が後退したので由奈子は全てを諦めた。
「さ、帰って母さんの手伝いをしなきゃ!」
「ちょっと、聞いてなさいよ!」
 妖精が由奈子の顔面にへばりつく。
 邪魔なので首根っこを掴んで引き離した。
 いくつかの疑問が沸かなかったこともない。
「じゃあ、質問。」
 由奈子はそれをストレートに聞いてみることにした。
「いいわ、何でも答えてあげる。」
 妖精はまたも腕組みをして大きくうなずく。下っ端っぽいくせに偉そうだ。
 由奈子の疑問その一。
「なぜ核ミサイルが妖精の住処に?」
「知らないわよ!」
 腕を組んでまで宣言したことをあっさり反故にする妖精。
 由奈子は思い出したようにつぶやき、踵を返す。
「あ、美穂にお菓子買って行こうかな。」
「答える! 答えるからぁ!」
 妖精が由奈子の肩を掴み全身で引き止める。
 向き直った由奈子はじっとりした瞳で妖精を見つめた。
 うっ、と身じろぎしつつも妖精が解説する。
「どうして妖精独立自治区に飛んでくるのかはわからない。けど、皇帝が言うには純粋水爆の実用実験が行われるらしいのよ」
 ああ、人間の勝手な都合ってやつね。
 そう理解した由奈子は相槌を打った。
「なるほど。」
 由奈子の疑問その二。
「じゃあ、なぜスポイト?」
 もっともな疑問だろう。
 両手を腰に当てて薄い胸を張る妖精が答える。

707 名前:「占い」「妖精」「スポイト」 4/5:2009/02/08(日) 08:45:10 ID:dxQHX0hk
「皇帝の占いでは、妖精が準備したスポイトを手にした人間二十人の有志が、妖精たちを救うって出たそうなのよ」
 はいはい、不思議ちゃん。そういう設定のアニメがありそうだよね。
 敢えてスポイトの件には突っ込まずにおいた。
 由奈子の疑問その三。
「それじゃ、一番重要な質問。」
 これの回答如何で協力を断ることもある。
「どうやって核ミサイルのところに行くの?」
 自腹とか言いやがったらどうしてくれよう。
 しかし、由奈子の腹のうちとは裏腹に、妖精は自信たっぷりだ。
「ふっふっふー。いいところに気が付いたわねぇ」
 思わせぶりな台詞を言って手を広げると小さな棒が現れたではないか。先端には土星を模したようなオブジェが乗っている。
「そうれ!」
 妖精が全身を使ったアクションで、土星棒をシャランラと振る。
 すると由奈子の背中に光の飛沫が上がり、妖精と同じ蝶のような翅が現れたではないか。
 背中の異変に気付き、首だけで振り向いた由奈子の感想。
「胸糞悪い」
 "小さなお友達"から"少しアレな大きいお友達"までが願って止まない現象を目にしても、このクール&ドライ。
 重力から開放されたように浮き上がる由奈子。
 空中で地団駄を踏むという器用さを見せながら、妖精は当然のように怒った。
「何よ何よ! 私たちのことバカにするの!?」
 一方、由奈子は少し表情を綻ばせ、ひよひよと妖精の頭上を飛び回っている。
 そして、妖精の問いに淡々とした口調で答えた。
「こんなこと、私の世界観の中にあってはならない」
「じゃあ、私の目を見て言いなさいよ!」
「いや、ヒトが機械に頼らず単独飛行するという貴重な事実であって、楽しいとかそういうものじゃないから。気にしなくていいから。」
「はいはい。」
 呆れる妖精とは逆に、由奈子の鼻息はどんどん荒く瞳はキラキラになっていた。
 しかし、時間は残り少ないようで、
「とにかく行こ! 急がないと!」
 妖精は由奈子を急かし、先に飛んでゆく。

708 名前:「占い」「妖精」「スポイト」 5/5:2009/02/08(日) 08:45:47 ID:dxQHX0hk
「仕方ないね。」
 そう言いながらも由奈子のテンションは最高潮だ。
 妖精の後を追う。
 速度を上げるが、予想に反して空気抵抗は感じない。快適な空の旅。
 ノってきた由奈子は横に一回転してみる。景色がぐるりと回転し、世界を操っているような感覚を覚えた。
 さらにスピードを上げて妖精に追いつく。
「どこまで飛ぶの? ペンシルバニア?」
 真剣な横顔の妖精は少し重い声で答えた。
「アメリカ合衆国ネブラスカ州オファット空軍基地」


----------------------------------------
ちょっと長いですが、楽しめてもらえれば本望です。

709 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 08:52:30 ID:uDzoKxil
由奈子クールすぎだろwww
随所に挟んであるネタもいい感じだねぇ

710 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 09:04:58 ID:8ZAktc9j
あ、だめだ。続きが読みたくなるw

面白かったです、お疲れ様!

711 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 09:29:38 ID:8NtA6Vx2
行き先がやけにリアルwwww

712 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 10:22:16 ID:ABKCzhH8
>>704-708
魔法の妖精リリカルスポイト乙。w
楽しすぎますね。

713 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 10:27:05 ID:XoNkETVy
妖精自治区そんな場所にあるのかよww

714 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 11:53:02 ID:LI8njvbB
「この糞妖精!ケツにスポイト突っ込んでトムヤムクン流し込むぞ!」
「やってみろやコラ!」

昼寝に落ちる意識の片隅に二人の声が聞こえてくる。
またケンカしてる。そういえば今朝のTVで乙女座は動物に注意っていってたな。
妖精も動物に入るのかな。まあどうでもいいか。

715 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 13:42:02 ID:dxQHX0hk
>>713
通称・妖精村はもっと自然たっぷりの環礁とかにのっぺり広がっています。
なぜ行き先がオファット空軍基地かと言うと、アメリカ戦略軍があるからです。

そして眠いときにだーっと書き進めて推敲なしの文章はマジ乱れまくりですね。反省。


>>714
ストレートアイパーの妖精が浮かんだ!

716 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/08(日) 16:00:35 ID:+NXfpke1
おもろいなー
みんなスポイトが妙にシュールだw

717 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 10:36:01 ID:YyBhiFGu
とーこせんぱいはくーふくです

718 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 13:26:14 ID:00hPO9Ca
おい、お前ら!遠子先輩用に甘い話を用意しろ!

719 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 17:25:31 ID:5UU3x6X4
>>718
じゃあ、次のお題は「スイーツ」で。

720 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 19:20:21 ID:QgO6Ls1w
>>719
じゃあ、もう一つのお題は「洋館」で。

・・・あれ、間違えた?

721 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/09(月) 19:45:13 ID:D33lYnDa
じゃあ3つめは「葉」で。

722 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 09:46:40 ID:Ot+fhnRO
じゃ次
「スイーツ」「洋館」「葉」

723 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 16:17:36 ID:PgksbIkH
これはちょっとかきやすそうかも

724 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 00:06:41 ID:SbrblyA/
書きやすそうなお題ほど難しい
自分で一からストーリーを練らなきゃいけないから

725 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 03:37:46 ID:Kr5IS3kD
「うえっぷ、大豆くせっ」

 もう暫く湯葉は見たくないな……。
 そんな事を考えながら目の前に積まれた湯葉の山を消費する。

「なんでバレンタインに湯葉なんだよ……」

 実家を離れ一人暮らしを始めた俺に、
 律儀にバレンタインのチョコを贈る母親は嫌いではないが、
 チョコと湯葉を間違えるってのは母親以前に人としてどうかと思う。

「とりあえず段ボールを片づけるか……」

 と段ボールをたたんでいると、中から紙が一枚こぼれおちる。

「手紙……?」

 どうやら奥に入り込んでいて空けた時には気がつかなかったらしい。
 メールを教えたりしたのだが、間違えて総理大臣の携帯に送信したりしたので、
 諦めてローテクな手紙を連絡手段とした、という逸話を思い出す。

「えと、背景前略息子へ」

 早速漢字間違えてるし。しかも用法も。

「三月の下旬に羊羹でひな祭りをやるみたいなんですが出席しますか?」

 羊羹……洋館、あぁ伯父さんのところか。
 伯父さんは庭をスコップで掘ってたら油田を見つけたという大富豪で、
 いつか完璧な密室殺人劇を自分の目で見たいといって洋館を作ってしまった変な人だ。

 ……うちの親族変な人だらけだな。呪われてるんじゃないか?
 それにしてもひな祭り?

726 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 03:38:20 ID:Kr5IS3kD
「前回のひな祭りではお父さんが半年入院してしまって、
 それ以来やってなかったのですが今回晴れての復活となったみたいです」

 ひな祭りずいぶん危ないなっ!?

「今回も荒れると思うので、ハンドクリームと製氷皿は忘れないようにしてください」

 荒れるってハンドクリームは手荒れ限定だ。
 挙句製氷皿は何に使うんだ……?

 ひな祭りに参加したものかどうか考えていると、インターホンが鳴り響く。

「入るよ〜?」
「おう」

 絵にかいたような友達以上恋人未満な関係の奴が入ってくる。
 バレンタインでチョコを一個ももらえなかった俺を憐れみにきたんだろう。

「あっはっはー、その顔だとチョコもらえなかったみたいだねー、って大豆臭っ!?」

 入るなり失礼なこと言っちゃってるけど事実だから仕方がない。

「あれ、湯葉食べてる?」
「うん、実家から送られてきて……」
「あ、被っちゃったか」
「え?」
「はいこれ」
「チョコ?」
「湯葉」
「流行ってるのか、湯葉……?」
「?」

 流れ行くと書いて流行な訳だがこんな流行はさっさと流れていってしまえ。
 そんな湯葉まみれな俺のバレンタインなのだった。

727 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 03:39:41 ID:Kr5IS3kD
気の向くままに書いたらこうなった
反省はしてない

これで6作目かと思うと結構書いたんだなぁ
これからも駄作を垂れ流すと思いますがよろしくです

728 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 04:05:41 ID:MXbvi4f4
湯葉wwwww
うん、これも葉だよねたしかに

729 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 04:13:07 ID:NQ2I44Zd
湯葉の人乙!
俺は突っ込まないぞ!w

730 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 04:16:53 ID:fyYU1R4F
トリッキーなお題消化方法だなw
湯葉だから消化に良いってか?ww

731 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 04:32:09 ID:AacZQknQ
湯葉大人気wwww

732 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 08:30:44 ID:p0sR4n5r
湯葉ばばばw いいよコレw

733 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 16:17:00 ID:Yn7vusKS
おはようございますww
湯葉ちょっとマジ面白すぎwww

734 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 21:58:18 ID:GJl3nXZZ
うわー羊羹ひな祭り気になるわ
3月になったら是非お題に絡めてくれ

735 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 20:37:09 ID:0ARkDgP/
そろそろ次のお題募集しちゃってもいいかな?

736 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 20:48:07 ID:hngZJ09Q
お題「腹痛」

737 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 20:51:43 ID:thCT5bbb
「梅」

738 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 21:47:14 ID:qWYtcpOB
「絵の具」

739 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 22:01:06 ID:nz34Lv+F
「ねえ」
「なんだよ」
「絵の具って美味しいのかな?」
 そんな愚にもつかない事をこいつが言い出すのはいつもの事だ。
「美味いわけねえだろ。腹痛くなるぞ」
「でも、こんだけカラフルだと、色んな味がより取り見取り、って気が
 してこない?」
「こねえよ」
 相手にするのも馬鹿らしい……といつも思うんだが。
「じゃあ僕が実験してやる!」
「あ、ちょ、お前っ!?」
 放っておけない理由がこれだ。放っておくと、愚にもつかない事を
実践し始めてしまう。俺は慌てて絵の具を取り上げると、頭を一発
ポカリとやった。
「アホか! 腹壊すって言ってんだろ! これ油の塊なんだから……」
「じゃあ、炒め物とかには使える?」
「つくづくアホか!?」
 その後、絵の具には発色の為に色々と危険な物質が含まれて
いる事を説明したら、ようやく諦めたらしい。
「でも、あのピンクの、きっと梅の味がするよ……美味しそうだなぁ」
 ……諦めてないらしい。
「とにかく、食うなよ。腹壊して泣いてても、さすってやらないからな」
「そんな事言って、僕がホントに泣いてたらやってくれる癖にぃ」
「もうそんな歳でもないだろ、お前も。だいたい、中学に入ったんだから」
「あー、もうそのお説教は聞き飽きた! いいもん、あき兄の目が
 届かない所で食べてやるもん!」
「あ、ちょっと、和江!?」
 行っちまった……あいつ、ホントに自分ちに帰ってから食べる気か?
「まったく……せっかく可愛い顔してんだから、もう少し女らしく
 なって欲しいもんだが……」
 俺の呟くように放った願いは、恐らくもう何年かしないと叶わないだろう。
 ま、その頃までに、俺ももっと男らしくなっとくとするか。


 終わり

740 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 22:01:18 ID:nz34Lv+F
ここまで投下です。

741 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 22:17:35 ID:6QQaVIiS
おおー綺麗に入ったな
とりあえず絵の具食うのはやばすぎるからやめろww

742 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/15(日) 23:09:19 ID:0ARkDgP/
三題噺だってことを忘れてしまった
それくらいナチュラルにお題が入ってるぜ

GJ!!

743 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/16(月) 06:15:34 ID:ZcK+elWj
GJだ

744 名前:「スイーツ」「洋館」「葉」:2009/02/16(月) 22:36:13 ID:smf/bkAD
八月のある日、
私は自分の部屋で、アイスを食べながら暑中見舞い用の絵葉書を眺めていた。
涼し気な青い花の絵が綺麗だったからなんとなく買ったものだ。
別にだす相手もいないんだけど。
そうだ!いい事おもいついた!
クラスの連絡表を引っ張り出し、葉書に吉田君の名前と住所を書き込んでみた。
妄想のスイッチが入る。

夏期講習で吉田君が「暑中見舞いありがと」といって隣に座る。
その後、講習が終わって帰ろうとするところを呼び止められる。
「これ、旅行のおみやげ」
そういって渡された小さな箱を開けると中に青い指輪が入ってて、
「左手かして」なんていわれて、それからそれから・・・
その後も妄想は進み、吉田君の親戚のもってる洋風の別荘で、徹夜で一緒に宿題をするあたりで眠りに落ちた。

目を覚ますとお母さんがベランダの洗濯物を取り込んでいた。
私の部屋のベランダ使うのやめてほしいって、いつも言ってるのになあ。
薄目を開けて時計を見るためにテーブルの上に目をやる。あれ?葉書きが無い。
いやな予感がした。
「お母さん、テーブルの上にハガキ・・・」
「ああ、もう一緒に出しといたよ」
「え?」
「葉書き出しとこうかって聞いたら『うん』って返事したじゃない」

次の日、私はクラス全員分の暑中見舞いを書いていた。

745 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 01:53:07 ID:zVOlqxy8

ハガキで葉を消化する発想はなかったわ

洋館の消化方法はやっぱり親戚の家とかになっちゃうよなwww

746 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 02:15:28 ID:QNJkhUnT
乙。普通にありそうなのがよいw

747 名前:お題:「腹痛」、「梅」、「絵の具」 1/1:2009/02/17(火) 08:17:09 ID:zVOlqxy8
 母親と二人で昼御飯を食べ終え、
 絵の具で塗られたような人口着色料たっぷりのアイスを食べ終えた俺は、
 突然な腹痛に襲われ、トイレに引きこもらざるを得ない状況になってしまっている。

「腹が痛ぇ……」

 これは間違いなくアレが原因だ。
 さっき食べた昼御飯のうなぎと梅干し。

 科学的には食べ合わせが悪いなんて根拠はないと、
 母親が豪語していたのでつい食べてしまったが、
 やっぱり迷信は馬鹿にしたもんじゃないな……。

「さっきの話は本当ですよ?」

 そしてトイレのドアの向こう側から、
 思考を読んでいたとしか思えない母親の声が聞こえる。

「え、あの迷信に科学的根拠ないないとかいう話?」
「はい、本当に根拠はないみたいなんです」

 その後むしろ消化の悪いうなぎと、
 消化を助ける働きのある梅干しは相性がいいくらいとかいう話を聞く。

 じゃあ何故お腹を壊してしまったんだろう。
 アイスを食べてお腹を冷やしてしまったのだろうか?
 そんなんでお腹を壊したことはなかったんだがなぁ……。

「あれでしょうか、一年前のうなぎを使ったのがいけなかったんでしょうか?」
「明らかじゃねぇか!!」

 ん、でもそれにしても何で母さんはお腹を壊してないんだ?

「私の分は新しい奴ですからね!」

 ……無茶苦茶にもほどがある。

「愛のムチです!!」

 俺はこの腹痛から何を学びとればいいんだろうか……?
 とりあえずトイレから出たら何発かしばいておこう。
 そんな事を考えながらトイレでひたすら腹痛と戦う俺であった。

748 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 08:19:02 ID:zVOlqxy8
忘れてましたが>>725-726のお題は、
「スイーツ」、「葉」、「洋館」です

という訳で投下終了

749 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 08:25:09 ID:qHf4W5T1
>>744
クラス全員に出して隠すのかw

>>747
母ひっでぇ

750 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 09:41:42 ID:QNJkhUnT
>>748
アンタはヘンな母親萌えかw

751 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 09:59:21 ID:4O8jdJrm
放課後、寒くて人気の無い廊下。
俺はわざと足音を響かせながら、久しぶりに美術室に向かう。
ドアを開けると美術部の後輩が一人いて、スケッチブックに何かを描いていた。
スケッチブックから顔をあげ、こっちを見て前髪を指ではらう。
「道具取りにきたんですか?」
「うん。まだ絵の具とか、ロッカーに置いてあったなって思って」
「先輩、もう入学試験終わったんですか?」
「いや、明日」
「あんまり緊張感ないですね」
「俺、緊張すると片腹痛くなるし、無い方がいいや」
「片腹痛いの使い方、間違ってます」
「腹が痛い時って『もしかしたら盲腸かも』って考えない?」
「考えません」
「そっか」

ロッカーの中の物を適当にカバンに入れて、美術室を出ようとすると、後輩に呼び止められた。
「先輩、ちょっと待って下さい」
後輩は窓辺に行き、花瓶に刺してある梅の木の枝を、蕾から少し下で切りとるとこっちに差し出した。
「お守りです」
「梅が?」
手、小さいなーと思いながら、蕾のついた梅の枝を受け取った。
「梅は学問の神様の菅原道真に縁のある花で、道真を祭った神社には大体植えてあります」
「ふーん」
後輩はすうっと息を吸うと、
「東風(こち)吹かば 匂ひをこせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ」
よどみなく一息で歌い上げる。
「聞いた事ありませんか?」
「なんとなくあるかも。でもいいの?」
「私が持ってきた梅だから問題ないです」
「そっか、ありがと。じゃあお礼に絵の具お前にやるよ」
不意をつかれたらしく、後輩は返事に詰まって少し迷った後、小さな手で絵の具を受け取った。
「・・・ありがとうございます」
少しぎこちないお礼の言葉に、どういたしましてと適当な返事をして早足で美術室を出る。

校門を出る時、コートのポケットに手を入れながら校舎を振り返った。
そして、ポケットから手をだして、握っていた蕾を嗅いでみる。
微かに桃のような香りがした。

752 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 10:11:52 ID:J4R41r4k
青春しとるなー

753 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 21:53:44 ID:QNNlp7bh
いいなあその引用句がいいなあ
空気の作り方が巧い
腹痛がうまく絡めれるともっとよかった

754 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 18:18:39 ID:UB4EKdLj
そろそろお題募集してもいいかなー?

755 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 18:30:06 ID:9i7j+4+b
お題

「方程式」

756 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 18:36:50 ID:NIkrdgac
「スマート」

757 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 18:52:28 ID:buRKk3y/
ザンギエフ

758 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 19:06:43 ID:FA+baX8u
ザンギエフ元ネタ知らねえw
邪気眼系のコピペで、「これはナントカの定理だな」とかって、
理科の実験だか算数だかの時に得意気にデタラメを披露してたって話を思い出した。

759 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 19:16:24 ID:NIkrdgac
「ここだっ!」
 俺の方程式は完璧だった。奴の両手から放たれる真空の刃。
連発で放たれるそれに対して、俺は近づく術をほとんど持って
いない。だが、その連発には、間隙がある。その事は、ガードを
固めての観察で理解できた。
「ハァッ!」
 相手の首を刈る為に使う、この技。だが、今回俺の豪腕は相手
の首を薙ぐ事なく、空を切る。だが、それでいい――!
「抜けたぜっ!」
 円運動の動きで、直進してくる真空の刃をすり抜けるようにして
かわし、一気に距離を詰める。一跳びで“あの技”の射程に持って
いけるだけの距離にまで。
 奴の顔色が少しだけ変わったのを、俺の目は捉えた。
 このまま歩いていくという選択肢も無いではない。だが、奴の
あのしゃがんだ体勢からは、真空の刃だけでなく、鋭い足払いも
また繰り出される。だから、俺は――跳んだ。
 相手に届くわけのない距離で放たれる、俺のドロップキック。
 だが、それはフェイントだ。相手がガードしようと身体を固めた
所で、俺は体勢を整え着地。そして――吸う!
 真空を操るのは奴だけじゃねえ。俺だって、両手を引き、掴む
動作で真空を発生させ、相手を引き寄せることができるんだ。
 引き寄せてしまえばこっちのもんだ。奴の首を俺の子供の胴
程もある太ももで固定し、その足の力でもって飛びあがる。
さらに、回転も加えて威力は倍増――奴は再起不能だ。
 俺の目には、奴がはいつくばり、俺がウィニングコールを
受けている姿が、その瞬間はっきり見えていた。
 だが――
「なにっ!?」
 奴は、ガードの姿勢をとらず、しゃがんだままだ。
 もうすぐ着地し、吸い込みの態勢に入るというのに、奴は無抵抗
で俺の“あの技”を喰らうつもりか!?
 そこで俺は自分の計算違いに気づいた。そうだ、奴は……端から
守る気なんか、これっぽっちもねえんだ……!
 その事を、俺はしゃがんだ態勢から振り上げられた奴の足を顔面
に喰らい、思い知らされた。
「……っ!」
 俺の飛込みを読んでの、対空迎撃。
 完璧なまでに俺の脳を揺さぶるその一撃で、勝負はついた――



「ザンギエフ、YOU LOSE!」
 ……あ、なんだ? レフェリーの宣告の声が、どこか遠くに聞こえる。
「……っ」
 頭を振り、身を起こすと、周囲は沸いていた。
 ……そうか、俺は……。
「戦い方が、スマートではないな」
 気づいた俺を、見下ろす視線がある。声も、そこから聞こえた。
「いい加減に故郷へ帰るんだな……お前にも、家族がいるだろう」
 ……そうか、俺は、また……また、負けたのか。
「へっ……そういうわけには行くかよ」
「……お前のその執念だけは認める。だが、執念だけでは私には」
「勝てるさ。現に、近づけもしなかったお前の、懐にまで今回は近づけた」
「……」
「次は……吸って、掴むぜ?」
 俺には確信があった。あの、一撃を喰らう前に見た光景は、幻なんか
じゃなくなるってな。その確信があるからこそ、俺は奴に告げた。
「さあ……もう一丁やろうぜ!」

                                      終わり

760 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 19:25:57 ID:NIkrdgac
ここまで投下です。

>>758
スト2シリーズに出てくるロシア人レスラーキャラとして有名ですね。
新日本プロレスに参戦したロシア人レスラーの一人の名前でもあります。

761 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 19:31:57 ID:buRKk3y/
ザンギとガイルか、GJ!!
さすがにザンギエフはあれだったかね

762 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 19:34:44 ID:NIkrdgac
そこを捻り出すのが面白いという説も。
まあ、自分は思いついたのがストレートだったので
そのままいかせてもらいましたが。

763 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 11:49:45 ID:cZUjM1RA
ちょっと見ないうちに、なんてお題が出てたんだ…
そしてそれを書く方はもっと凄いがw

>>759
おお、これぞストリートファイターの真骨頂!真空波使いと赤きサイクロンの路地裏ガチバトル!
ザンギエフかっこいいなぁ、めっちゃ男前だ。やっぱ美学があってこそのザンギ様だぜ

764 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 12:41:01 ID:JereSOdY
この御題でちゃんと書いちゃうのすげえええええ

765 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 12:22:14 ID:s6YQBzo2
お題変えようぜ
流石にピンポイントすぎるw

766 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 12:28:34 ID:cZKSHTgL
「卒業」

767 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 12:57:12 ID:nAdiu1N2
猫の日なんで
「猫」

768 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 13:39:22 ID:tWKbczqe
坊主

769 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 13:43:12 ID:s6YQBzo2
「卒業」、「猫」、「坊主」

把握した

770 名前:「方程式」「スマート」「ザンギエフ」:2009/02/23(月) 01:34:02 ID:Wf2mc/mo
日曜日に二ヶ月ぶりに実家に行くと、小学生の甥に宿題の方程式をやらされた。
その後、ゲームに誘われる。
ストWだ。

懐かしさが込み上げる。ストUも4作目かぁ。
スーファミで猿みたいにストUやってたのは10年、いやもう少し前か。
リュウを動かしながら当時を思い出して甥に話す。
「小学生の時さ、近所に女子で一番背が高くて、女ザンギって呼ばれてた奴がいてさ、
 なな子エフとか言われてたな」
いつも一緒に遊んでた。ケンカもよくした。中学で引越してから全然会ってないけど。
後ろで見てた母が口を挟んでくる。
「そういえば、なな子ちゃん去年結婚したって」
「ホント!?」
母は、アンタも早く結婚したらとお決まりのセリフを言って台所へ行った。

そうかー、アイツ結婚したのかー。もうそんなにたったんだよな。
少し気の抜けたツラの俺を甥が見つめる。
その視線に気付き、俺は自嘲気味に鼻でフッと笑ってから言った。
「いやね、向こうはもう結婚してるのに、俺は小学生の時と変わらず波動拳だしてんのかと思ったら」
甥は、分かった様な分からない様な顔をした。
「お前も10年たって同級生が結婚すれば分かる。いや、分からない方がいいか」

子供に言う話じゃないかなと思いながら、今度はザンギエフを選ぶ。
あー、立ちスクリューでねえ。失敗して出た大パンチがケンに当たる。
スマートじゃねなあ。しょうがねー、ジャンプからスクリュー出すか。
ストXが出る頃には結婚していたいなー。
そんな事を考えながら、俺は十字ボタンをぐりぐり回した。

ー終ー

771 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 03:59:19 ID:hRoYJn7E
20台になるとよくあるねぇ
同級生が結婚

772 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 06:40:40 ID:EO4q1lYQ
空気が切なすぎるぜ……

773 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 12:11:55 ID:UZdxVFTv
せつねえ……
スト2か……「はどーけん!!」とか叫んでポーズ真似してた自分が痛い。


774 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 12:37:09 ID:RyVW/tV8
うむぅ。ザンギエフ話は残りのお題2つが完全にオマケだな。
三題噺になりきれてない気がする。どっちも話は面白いからもったいない。
まぁそもそもこのお題、3つ全部に必然性持たせるのはハードル高すぎるとは思うがw

775 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 01:51:53 ID:+nl8b3ho
「なんて言うことだ――」
 ザンギエフは、黒板の前で汗を垂らしていた。
 方程式が、書いてある。
 たった9文字の、短く、簡単な方程式である。
 Mは、体重であった。
 Lは、なんと身長であったのだ。
 単位は、メートルである。

「まさか俺が――俺が」
 BMI=M÷L÷L
 25越えたら肥満ですよ?
「俺がデブだったなんて!」
 スマートにならねば――。ザンギエフは腕を振り始めた。

776 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 02:01:59 ID:Jx9WPDB1
神降臨

777 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 08:58:38 ID:NNIChHKR
すげえ! よくある光景だがこれは思いつかんかったw

778 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 10:42:46 ID:4GY9o4qg
BMIという発想はなかった

779 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 19:51:07 ID:HlmOMm5k
筋肉太りだから問題ないだろう

780 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 19:52:52 ID:UV69mwlk
そういえばふと思い出したが、スト2時代の公式設定だと、
皆ありえないくらい細かったらしいが、スト4だとそこら辺ちゃんと
整合性取れてるんだろうか。

781 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 20:50:05 ID:zPdX5RGR
スト2時代のプレイヤー的には、3とかZERO以降の筋肉ダルマのが違和感かも

782 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 21:42:53 ID:Fp/Fg+f4
御題変えるの早すぎ、死ね

783 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 21:44:47 ID:UV69mwlk
>>782
別に以前のお題で書いてもEンダヨ!

784 名前:創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 11:06:47 ID:8+UblguO
グリーンだヨ!

785 名前:お題:「卒業」、「猫」、「坊主」 1/4:2009/03/01(日) 01:02:45 ID:ydU6Nnqu
「今から卒業式を始める!」

 場所は第三猫軍事学校体育館。
 卒業猫一同が整然と並んでいる。

 第三猫軍事学校は落ちこぼれの通う学校であり、
 徹底したスパルタ教育で有名である。

「出席番号一番、相猫っ!!」

 ここで元気よく返事をして前に出る。
 予行練習で何度も練習したところだ。

 卒業式の様子はNTVによって全国中継されており、
 ミス=学校の恥、という事で厳罰処分を下される。

 数年前に壇上でおならをしてしまった先輩の話は有名だ。
 彼がその後どうなったのかは……いや言わない方がいいだろう。

「にゃいっ!!」

 しまった! 噛んだ!!

 しかしここでやってしまったという顔をしてはいけない。
 バレてない可能性があるというものあるがそれだけではない。

 ここでミスに対する対処を間違えると、更にバツが重くなるからだ。

 その後、卒業式は何事もなかったのように進行し、
 もしかするとお咎めなしか? という淡い期待もあったりした。

 まぁ、その淡くも儚い期待は無残に打ち砕かれることになるのだが……。

786 名前:お題:「卒業」、「猫」、「坊主」 2/4:2009/03/01(日) 01:03:39 ID:ydU6Nnqu
「おい、相猫。先生が呼んでたぞ」

 卒業式も終わり別れを惜しむムードが漂う教室で、
 クラス委員の男子に声をかけられる。

 この時点で私の期待は無残に砕かれてしまった。
 せめてバツが軽い事を祈るしかない、期待薄ではあるが。

 クラスに雰囲気に後ろ髪を引かれつつも、
 これ以上バツが重くなってはいかんと職員室へ向かう。

「失礼しますっ!!」

 職員室に入ると、担任の猫村先生が仁王立ちで待っていた。
 しかしその顔はそこまで怒っている風でもなく、
 そこまでバツは重くないのではないかという新しい期待を私に抱かせたりもした。

 まぁ、その淡くも儚い期待も無残に打ち砕かれることになるのだが……。

787 名前:お題:「卒業」、「猫」、「坊主」 3/4:2009/03/01(日) 01:04:34 ID:ydU6Nnqu
「丸刈りだ」

 猫村はさらっと言い放つ。

「はい?」
「聞こえなかったか? 丸刈りだ」

 よほど大切なことなのか二回も言われた。
 まぁ私が聞き返したからなのだが。

 こんななりでも私は年頃の女の子だ。

 そんな髪型になってしまっては、
 ボーイフレンドの一人も作れなくなってしまうじゃないか。

「それだけは勘弁してくださいっ!」
「ダメだ、これでも卒業祝いということで軽いくらいなんだぞ」

 ダメだ。
 このままでは学校を卒業した後、青春を謳歌することが出来ない。

 こうなったら――殺るしかない。

 伊達に学校で三年間勉強したわけではない。
 落ちこぼれの私にだって、奥義の一つや二つ使いこなせるのだ。

「乙猫(おとめ)の髪は、安くないっ!!」

788 名前:お題:「卒業」、「猫」、「坊主」 4/4:2009/03/01(日) 01:05:29 ID:ydU6Nnqu
 手のひらに猫エネルギーを集中させる。
 どうせ今日で卒業するのだ。

 三年間の鬱憤を晴らす意味もこめて、全力で――行く。

「奥義、投猫興(とうねこきょう)!!」

 直撃。コンクリートの床が砕けて砂埃が舞う。

「殺ったかっ!?」

 しかし砂埃が晴れて見えてきたのは勝利ではなく――絶望だった。

「ちぃっとも効かんなぁ」
「!?」

 実戦練習では鰹節すら貫いた超威力の攻撃をくらって無傷!?

「伊達に長年教師をやっている訳じゃなくてね」

 そう言ってスーツに付着した砂埃を払う猫村。

「さぁて今度はこちらから行かせてもらうぞぉ!!」

 次回予告☆
 ネコ戦記第二話「脱出! 第三学園!」
 来週もお楽しみにっ!!(嘘です)

789 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 01:06:15 ID:jro5dovc
続くのかよwww
てか鰹節をもつらぬく奥義ってwww

790 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 01:06:23 ID:ydU6Nnqu
投下終了です
自分でも何を書いているか分かりません

791 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 01:07:05 ID:zQzCkp7c
にゃんだこれwww

792 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 01:08:22 ID:jro5dovc
来週は先生に坊主にされちゃうんですね、わかります

793 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 01:22:18 ID:GOI/pY87
にゃんてこったw

794 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 15:58:30 ID:NAxM7X7K
にゃんにゃのにゃ?www

795 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 16:37:56 ID:inYIyeAA
投下切れたかな?
そろそろ次のお題を募集したいんだがいいだろうか?

796 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 16:56:02 ID:iCe9m6VC
いいんじゃないかなあ!!
と言ってみる。後から以前のお題で投下もありだろうし。
お題一つ目なら「ただいま」

797 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 16:59:44 ID:Lp7H8Yk/
「日記」

798 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 17:01:59 ID:RHVZh3YG
台詞もあり?
「おまえかよ!」

799 名前:南チアキ:2009/03/02(月) 21:52:38 ID:MhTqUTXM
>>798
無しだバカ野郎

800 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 21:53:34 ID:BW7PZTHF
全1レス。

「ただいま」
「おかえりー」
あたしは反射的に言葉を返して、それから違和感に気づく。同居する姉はサークルの
合宿で居ないんじゃなかったっけか。そもそも玄関が開く気配もなかったぞ。
課題をこなしていた手を止め、あたしは窓際のアイツの方へ行く。足音に反応して、
ばさばさっと羽音がした。
「ただいま。ただいま、ただいま」
「やっぱりおまえかよ! あー……、うん、おかえり」
鮮やかな水色と黄色の体は、せわしなく狭い鳥籠をうろついている。気まぐれで
飼い始めたセキセイインコは近ごろ急激に言葉を覚え出した。いちばん最初に
しゃべったのが「お姉ちゃん?」で恥ずかしかった。その次に覚えたのが
「あーっ、もう!」で、小鳥のつむぐ人間くさいセリフに今度はお姉ちゃんが
恥ずかしがっていた。
インコはくるくると喉を鳴らす。ときおり日本語をもらしては、あたしたちをドキッと
させる。家計簿のついでの一言日記はコイツのことばっかりで、なかなかそれも悪くない。
「ねえ、『ただいま』の返事は『おかえり』なんだよ」
インコは無表情だ。
「ね、『おかえり』」
「あーっ、もう!」
あたしは笑みを溢した。それにあわせて小鳥が鳴く。
「ただいま。ただいま」
「『おかえり』」
お姉ちゃんが帰ってくるまでに覚えて欲しいな、と少し思った。思いっきり楽しんだ
くせに疲れて愚痴っぽくなるあの人をびっくりさせてやろう。あたしとコイツとで
迎えてやろう。
「『おかえり』」
派手に彩られた体と真っ黒な瞳は、きっとあたしの感傷なんか知らないんだろう。
でも、無言でくちばしを喘がせる仕草はその言葉を練習しているみたいで、あたしは
やっぱり嬉しいのだった。



おわり。

801 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 21:58:03 ID:CMYgeZUz
○月×にち

まただいまおうがあらわれた
なんどでもよみがえるっていってたけど、
さすがに5かいめだと「おまえかよ!」っていいたくなる
どうしてさいしょはしょうたいをかくすんだろう
おまえは用無しだバカ野郎

802 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 22:01:54 ID:inYIyeAA
>>800
いいなー、仲良し姉妹いいなー

>>801
一瞬ただいまがどこにあるか分からなかったじゃねーかwww

803 名前:お題:「ただいま」、「日記」、「おまえかよ!」:2009/03/02(月) 22:05:58 ID:inYIyeAA
「やばいやばいやばいやばい」

 真っ白な日記帳を前に頭を抱える。
 これは明日提出なのにこの白さはやばい。
 あんな洗剤やこんな洗剤も羨むに違いない真っ白さだ。

 そもそも受験を控えた中学生への宿題としてはおかしいのだ。

 受験勉強に集中して欲しいけど、全く宿題を出さない訳にもいかない。
 そんな教師としての妥協点がありありと見受けられる。

 しかし教師連中は致命的なミスを犯した。
 真面目に受験勉強をした生徒に日記に書くようなネタなどあるわけがないのだ。

 実際この一か月を思い出しても、
 塾と家を往復し、たまにゲーセンによって息抜きをする。
 それ以外の動作がまったく思い当たらない。

 日記は一週間分でいいと指定されているが……。

 いっそ事実をそのまま書いてやろうか?

 ――――

 8/23
 今日は塾にいって勉強した後、
 山内たちとゲーセンによって家に帰って勉強しました

 ――――

 ……なんだこのくそつまらなさは。
 とてもじゃないが中学生のレベルではない。

 ダメだ。この大事な時期に日記ごときで内申に響かれては困るんだ……!

 しかもこのつまらなさは俺のプライドが許さない。
 いったいどうすれば……。

804 名前:お題:「ただいま」、「日記」、「おまえかよ!」 2/4:2009/03/02(月) 22:06:48 ID:inYIyeAA
「ただいまー」

 ガチャ、とドアの開く音が響いたあとに、姉貴の声が遅れて響く。
 ん、姉貴?

「おかえり、姉貴!」
「おお、あんたが出迎えるなんて珍しいわねん?」
「失礼な、家にいればやってるだろ……」

 大体において姉の方が先に帰宅しているのだ。
 その点において俺が出向かるのは非常にレアなケースと言える。

「ってそうじゃなくて、姉貴ブログやってるだろ?」
「あぁ、やってるわよん?」
「毎日更新してるんだよな?」
「そうよん! アクセス数も五桁突破したのよん?」
「そうかそれはよかったな……ってそうじゃない! 相談があるんだ!」

 これだ。起死回生の一手。
 夏休みの最終日に終わってない宿題は家族に頼る!

 日曜午後六時半からの海産物アニメで、日本人にすりこまれた危機対処術。
 これを利用しない手はあるまい。

「頼む姉貴! 日記のネタの出し方を教えてくれ!」

 姉貴が真面目に教えてくれる確率は五十パーセント。
 つまり五分五分フィフティーフィフティー。

 とても大切なことなので何回も繰り返して言いました!!

「いいわよん?」
「ありがとう姉貴!」
「ありがとうなんて水臭いわ……世界でたった二人の家族じゃない」

 一見いい感じのセリフに見えるが、
 両親は健在だし、結婚してる兄貴と小学生の妹もいるので非常に不適切な台詞だ。

805 名前:お題:「ただいま」、「日記」、「おまえかよ!」 3/4:2009/03/02(月) 22:07:34 ID:inYIyeAA
「ともかく……なんかない?」
「そうねぇ、あんた散髪いったじゃない?」

 言われてみればそうだ。
 夏休みの最初の方に髪が伸びていたので切りにいったんだった。

「しかしそれだけじゃ弱くないか?」
「モヒカンにしたことにすれば?」
「校則違反だよっ!!」

 しかも現在の俺の頭髪の状態を見れば一発でウソと分かる。

「じゃあ今日丸刈りにしたって日記に書いて頭剃れば、
 日記のネタも埋まるし整合性もとれるしでバッチリじゃない?」
「日記に合わせて事実を変更するってどうなのよ……?」

 しかし散発は悪くない。
 少なくともゲーセン+塾のコンボよりは遥かにマシだ。

「他になんかない?」
「あんた魔王倒さなかったっけ?」
「どんだけあやふやなんだよっ!?」

 魔王倒してたらとてもじゃないが日記帳じゃ足りない大冒険だろう。

「あぁ、魔王と言ってもモヒカンのよ?」
「別に髪型は聞いてねーよっ!!」

 魔王にも髪型ってあるんだろうか……?

「ほらこの調子で埋めちゃいなさい?」
「えぇ、えー」

 時計を見ると時間は既に十二時を回っている。
 やばいこのままでは明日に影響をきたしてしまう。

 えぇいままよ!
 空白で出すよりはマシだろう。

 眠気による変なハイテンションも手伝い、
 姉貴に言われるがままに日記帳の残りを埋めていく……。

806 名前:お題:「ただいま」、「日記」、「おまえかよ!」 4/4:2009/03/02(月) 22:08:13 ID:inYIyeAA
 翌日。
 昨夜仕上げた日記を見て絶句。

「モヒカン……日記?」

 内容は俺が髪を切ってモヒカンにしたとか、
 モヒカンの魔王をバリカンでしばき倒したとか悲惨な感じになっている。

「なんで俺は昨夜姉貴に相談したんだ……」

 そうだ全ては海産物アニメのせいに違いない。
 そうでもないとこのやり場のない怒りに気が狂ってしまいそうだ……。

「お、お前。日記どんな感じ?」

 親友で隣の席の山内が俺の日記をひょいと取り上げる。

「げぇ、モヒカン日記!?」

 しまった!
 これでは俺の築き上げた高潔なイメージが崩れてしまうっ!!

「なんで被るんだよ〜、俺だけだと思ったのにー」

 そう言って山内もモヒカン日記と書かれた日記帳を取り出す。

「お前もかっ!!」

 結局このクラス三十五人中、十二人がモヒカン日記であったことは、後世まで語り継がれる伝説となるのであった……。

807 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 22:08:49 ID:inYIyeAA
という訳で投下終了
お姉ちゃんとか魔王とか被ってしまったのはなんでだぜ?

808 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 22:10:04 ID:CMYgeZUz
まさか魔王がカブるとはww

809 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 22:40:33 ID:CQwEPP47
>>800
あーっ、もう!この子かわいいよぅ

>>801
ちょwwwその発想は無かったw

>>807
これまたはっちゃけてるなw

810 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 22:52:30 ID:REoSw394
>>807
なにがなんだかww焼酎噴きかけたw
いいノリですた

811 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 22:53:39 ID:NAxM7X7K
「ただいまと言えば、どう応える?」
「そりゃ、『おかえり』よね、常識的に考えて」
「ならば、こう言われたらば? ……ただいま○んこ」
「……え?」
「そう、そう言われれば、お前はこう返すだろう。おかえりんこ、と」
「……あの、ちょっと……あの、さ」
「あ」
「……気づいた?」
「しまった……先にネタをばらしてしまったら、お前が言ってくれる
 わけがないじゃないか! 俺の馬鹿っ!」
「……えっと、あの、ね?」
「仕方が無い。この罠はお前の妹に仕掛けるとしよう」
「……全然気づいてないんかい」
「お、噂をすれば何とやらだ。帰ってきたぞ」
「ただいま○んこー!」
「おまえもかい!」
「おかえりんこー……はっ、しまった、俺が罠にっ!?」
「あはは、やったー!」
「………………」
「お兄ちゃん、そんな罠にあたしがかかると思ったら大間違いよっ」
「こいつは一本取られたなー、あっはっはっは」


     今日の日記

 本気で私がしっかりしないと、わが家は色々とヤバイ。
 ……頑張ろう。超頑張ろう。

812 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 23:04:05 ID:REoSw394
あれー?w

姉頑張れ
ちょう頑張れ

813 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 23:07:45 ID:inYIyeAA
ん? あれ?
あぁ、ん? でもちょっと待て

あ? ん?
って感じになった

とりあえずお姉ちゃん頑張れ

814 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 23:10:21 ID:DypLgfxP
>>800
これいいな!
今まで投下された中だとこれが一番好きだなー

>>801
ただいまの位置wwww

>>807
姉のブログの中身気になるwww

>>811
ダメだこいつ…早くなんとかしないと

815 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 14:54:29 ID:NQntGkSh
そろそろお題クレクレいいよね?

816 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 14:57:40 ID:JxcFYS32
んじゃ、
「あまもり」

817 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 15:02:59 ID:17s2Wm8m
「巨乳」

818 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 15:11:15 ID:lXEPxNag
ガソリン

819 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 17:43:47 ID:QtfwlhiE
あまもり 巨乳 ガソリン か
なんというカオスww

820 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 21:27:45 ID:5SEcrA82
 さっきからぼったんぼったんうるさい。
…と、いうのはガソリンスタンド、「ソクハツ石油」東村山店の店内が雨漏りしているから。
店内にあるバケツや各自家から持ち寄ってきたタライを使っても足りないほどある雨漏り。
っていうか、そろそろ改修したいんですけど、店長。
「人は単調な音が繰り返す空間にいると絶対に狂うってよく言うけど…。
…マ ジ で 狂  う わ 、コ ラ 〜 ! !」
店長の紅霞さん。小さいころからの夢だったガソリンスタンド経営を見事叶えたお姉さんだ。
…ちなみに巨乳である。怒りながらその巨乳をたゆんたゆんさせているために俺の目線はその方向に釘付けなワケで。
「ってどこ見てんのよ!!」
強烈なビンタが飛ぶ。俺はその力強さに吹っ飛ばされた。
「すいません、店長…。」
典型的なラブコメマンガよろしく、頬に大きな手形をつけた状態で俺は起き上がった。
とはいえ、その巨乳はどうしても見入ってしまう。怒られても仕方がない。
「…っていうか、改修しないといけませんね。業者呼んで雨漏り直してもらいましょうよ。
この雨漏りのおかげでここの売店利用する人、少ないんですから。」
「業者ぁ??」
紅霞さんが俺を睨みつける。…何か悪いことでも言ったんだろうか。
「ガソリンスタンドはねぇ、ああ見えてあんまり儲からない仕事なのよ…。
維持費とか〜光熱費とか〜。それで業者なんかに頼んだら…我が「ソクハツ石油」東村山店は破産しちゃうのよ!」
破 産。この単語が一気に俺の頭上にのしかかってきた。
「あーもう!こんなことなら、もう少しマシな将来の夢を考えるべきだったわ…。
八百屋さんとか、煙突掃除屋さんとか…っていうか、雨漏りを直す人とか…。」
雨漏りをBGMに紅霞さんのボヤきは続く。続くったら続く。
って言うか、女の子の将来の夢とは思えないんですけど…店長。

821 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 22:01:18 ID:17s2Wm8m
よくぞまとめた!
乙!

822 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 22:03:32 ID:DQyhls9o
 うー。
 だーれーかー!
 大きな声を出してみても、その声が虚しく響くのが聞こえるだけで、
私以外の誰の声も返って来ない。
 たーすーけーてー!
 こんな事になるなら、好奇心で裏庭の蔵になんか忍び込まなきゃ
良かった……急いては事を仕損じる、って奴ね。急いだからって、この
崩れてきた桐箱の下敷きになって動けない状況が変わるわけじゃ
ないもの。怪我らしい怪我が無いっぽいのは、怪我の功名だけど。
 ……ぐすん。
 なんだか泣きたくなってきた。怪我はなかったけど、上手い具合に
積み重なった桐箱で、まったく身動きは取れない。何なのよ、もー。
なんでこんなに綺麗に、隙間無くぴっちり私の身体にジャストフィット
なのよもー! 何か、この蔵あまもりしてるらしくて、さっきから私の
自慢の巨乳にぴちょんぴちょんって雨粒が落ちてきて冷たいし、
もう、泣いた鴉がもう笑ったわ……。
「ひにゃぁっ!?」
 ああ、もー! またぴちょんってきたー! もーいやだー!
出してー! 誰かここから出してよー!
 そんな風に騒いでいた私の耳に、バイクのエンジンの音が聞こえた。
 誰か来たのかな? だったら気づいてー! たーすーけーてー!
「……なんだ? なんで蔵の中から……」
 あ、声だ! かすかにしか聞こえなかったけど、聞き間違えようの
無い、御主人様の声!
「柚子、中にいるのか?」
 ガラガラと、蔵の戸が開く音と一緒に、今度ははっきりと聞こえた。
やっぱり御主人様だ! 私のピンチに助けに来てくれたのね!
愛の力は、こんな蔵の壁なんかじゃ妨げられないのよ……ふふふ。
「……うわ、こりゃ酷いな。柚子、いるのか? いたら返事しろ?」
 はーい!
 私は御主人様の命ずるがまま、勢い良く返事をした。
 段々と、人が近づいてくる気配を感じる。
「……そこにいたか」
 私の身体にジャストフィットしていた桐箱が取り除かれ、御主人様の
怒った顔が覗いた。私は嬉しくなって、思わず御主人様に飛びつき
……って……え? 怒った、顔?
「柚子……お前の仕業か、これ?」
 見れば、蔵の中は酷い有様だった。虎穴に入らずんば虎子を得ずとは、
こういう状況の事を言うのかもしれない。私が下敷きになっていた桐箱の
他にも、色んなガラスや陶器だったらしい物の欠片が散乱し、
それらが置かれていた棚もいくつか倒れ……えっと、もう、とにかく酷い。
「……ん? どうなんだ?」
 怒ったまま笑わないで欲しい。怖すぎる。御主人様怖い。怖いってば!
だから小首かしげて私の両足を持ち上げないでー!
「……はぁ、まったく、お前はイタズラ好きなんだから」
 違うの! ここに入ったのは、単なる好奇心で、別にイタズラしようとか
そんな事はこれっぽっちも思ってないの! ただ、たまたま敷き布か
何かに引っかかって、それから後の事は記憶に……てへっ♪
「とにかく……お前が無事でよかったよ。もうここには入るなよ?」
 当然! もうこんな所に入るもんですか! ……考えてみたら、
中身の無い桐箱の下敷きだったから良かったようなものの、あの陶器
やガラスの欠片が私に降り注いでたら……ぞっとする。
 御主人様は、そんな私の様子を見て苦笑。どうやら、機嫌の方は
直ったようで、まさに雨後の竹の子! 
「ここの片付けはまた今度にして……帰るか」
 帰るって……バイクで? あれ、ガソリンの匂いがして嫌いなんだけど
……でも、今はそれより御主人様と一緒にいたいから、我慢しよっと。
「じゃ、帰るぞ、柚子」
「にゃー!」

823 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 22:16:38 ID:QtfwlhiE
すげー
2人ともよくまとめたな
同じ3題でも全然違う話になってるのが面白い
てか店長も柚子ちゃんもかわいいよう

824 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 22:20:45 ID:5SEcrA82
>>822
乙津
ぬこの柚子たんハァハァ。
いろんなことわざ知っていて、えらいな柚子たん。ww

825 名前:あまもり、巨乳、ガソリン:2009/03/08(日) 02:41:04 ID:5ZpWHqfV
「もうこの家も寿命か・・」
父と二人で建てた家は、住人がいなくなってすでに3年が経っていた。
昨夜から降り出した雨を凌ぐ力は、もうない。
ベニヤ板の隙間から入る雨は、中学のころに私が隠したエロ本の上に落ちた。
昔流行った巨乳アイドルの胸に落ちた水滴が染み込んで行く様は、アイドルの肌がもう水を弾かなくなったみたいで笑えた。

あいつがここに住んでいたころは、よくウチのものをここに隠したっけ。
母の口紅や私の大事にしていたロボットの模型。でも一番多かったのは父の靴。
あんな臭いもんよく持ってくよ。
あ、でもガソリン缶がここで発見されたときは大騒ぎだったな。缶が倒れてガソリンがもれちゃってさ。
うちに誰もタバコを吸う人がいなくてよかったよ。危うくウチまで全焼するところだったからな。

今でもあいつが戻ってきそうな気がして壊せなかったこの家。
いつのまにかこんなに古くなっていたんだと気づく。
「なあ、ポチ。この家、明日から別のやつが使うことになったんだ。許してくれよな。」

小さな庭にある小さな犬小屋。ここに新しい家族が増える。
私は今、新しい家族のためにこの家の雨漏りを直しているところだ。


初めて作文してみた。
明日集英社の筆記なのに文才のなさに泣きそうだ・・。

826 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 02:43:14 ID:JsIRTmbx
犬小屋か…しんみりするな

827 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 03:20:39 ID:eUy7YUsZ
犬小屋にエロ本隠すなよ!

828 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 16:02:53 ID:h3j4WZzW
「あまぁぁぁぁああぁぁもりぃぃぃいぃぃ」
「うっさい黙れガソリンかけて焼き殺すぞむしろ死ね」
「……あまもりに気が滅入って来たのをほぐそうとレミオロメって
 みただけなのに、何故そこまで言われなきゃならん」
「黙れって言ったのがわからなかったかこの阿呆故に死ね」
「少し巨乳だからっていい気になるなよ!」
「いい気になるかこの胸重いし肩こるしぶしつけにじろじろ
 見られるし見た奴は死ねばいいと思う故にお前がまず死ね」
「……どっちにしろ死ねと言われる運命なのか、俺は」
「そうだ死ね……でも、死ぬのは雨が上がって、夜が明けてからだ」
「……怖いのか? 暗闇の中で、一人で、雨音がぴちょんぴちょんって」
「し……死ね」
「そうかそうか……怖いのか」
「うっさい黙れって言ってるだろこの馬鹿痴を所以として死ね」
「……ほれ」
「……! し、死ねっ! ホントに死ねっ! 誰もお前にギュッて
 して欲しいなんて頼んでないから死ねっ!」
「その割には抵抗しないんだな」
「……」
「お、黙った」
「……恥故に死にそう」
「しばらく死んどけ。朝になったら生き返らせてやるから」
「……わかった。死ぬ」
「まったく……お前とだと、どうしてこういう展開にしかならんのだ?
 普通妙齢の女子と、同い年の男子が、夜同じ部屋で真っ暗闇の
 中ギュッて抱きしめあってたら、もう少しこう、なんというか……」
「……すぅ」
「あ、もう死んでる」
「……ぐぅ……しねー……」
「……俺も死ぬか。この状況だと、死ねるかどうかわからんが」
「……もう食べられないからしぬー」
「それがオチかい。わけわからん」

                                      終わり

829 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 21:23:40 ID:JsIRTmbx
こ、これはなんという破壊力
最初でオーフェン思い出したけどそんなもんじゃなかった
なんというキャラなんだこいつ

830 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 22:47:21 ID:aVe0J/gx
荒野で車が止まったら くちぶえ吹いてみるといい
たちまち起こるつむじ風 ガソリン・ガールのお助けだ
まぶしいブロンド波打たせ 「はぁい! お兄さんお困りね?」
胸はゆさゆさ巨乳ちゃん ウエストきゅっとくびれてて
脚はすんなりのびやかで にこっと笑うガソリン・ガール
立ち往生の男たち 雨漏りしずくに打たれたように
背中をぶるっとふるわせる
給油孔にノズルつっこみ たちまちタンクは満タンだ
お代を受け取り ガソリン・ガール
バイバイ、またねと去っていく
今日もたくさんガス欠車 荒野にくちぶえ鳴り響く
すてきなすてきなガソリン・ガール
今日も給油に大忙し


831 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 23:06:07 ID:h3j4WZzW
何故俺の愛車は自転車なのだ・・・

832 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 23:24:20 ID:JsIRTmbx
その荒野はどこにあるんだい?さぁ早く教えておくれ

833 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 23:26:40 ID:h3j4WZzW
金剛峰寺のある辺りじゃないか?

834 名前:「卒業」「猫」「坊主」:2009/03/09(月) 22:12:34 ID:P/i9jXPy
高校で出来たばかりの友人が初めて遊びに来た時の事。
お前んちの中学の卒業アルバム見せてと言われて、俺は机の引き出しからアルバムを取り出した。
集合写真のページを見ながら友人が言う。
「お前いなくね?」
「これ」
「丸坊主じゃん!わかんなかったわ」
「野球部だったから」
今はもう眉毛の上まで伸びた前髪をいじりながら言った。
アルバムのページを次々にめくり、メイド喫茶やステージ上のバンドの写真が並ぶページを開く。
文化祭のときの写真だ。友人がつぶやく。
「うちの文化祭でもメイド喫茶したよ」
そしてメイド服の女子達が写っている写真を指差して言う。
「あ、この子可愛い、猫耳つけてる子。やべえ、俺一目惚れしたかも。他にこの子の写真ない?」
俺はさっきのページを開き、自分の写真を指差した。
「マジで?」
「うん、ごめん。男子も一人やることになって、坊主の方がカツラ付けやすいからって」
アルバムの入ってた引き出しの奥から、その時の猫耳を取り出して友人に見せる。
俺はもう一度言った。
「ごめん・・・」

ー終ー

お題から時間たってしまったけど。せっかくだから投下します。

835 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 22:22:34 ID:KFzO5/eK
(つ∀`)窃ない

836 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 22:29:28 ID:2RakWBbU
せっかくだから猫耳装着してやれw

837 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 22:31:19 ID:KFzO5/eK
多分、クラスの女子どもは、キャーキャー言いながら
彼に化粧を徹底的に施して化けさせたんだろうなぁw

838 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 22:53:46 ID:pXIzgx5L
ハッこれは…「萌える女装少年」?!

839 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 19:38:40 ID:WZxYXNoQ
そろそろクレクレか?

840 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 19:52:19 ID:k8EdCRJW
お題「オークション」

>>834
これ好きだw

841 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 20:15:30 ID:GC2RhtH9
お題「ハックション」


842 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 20:17:14 ID:O3uONmDQ
お題「パッション」

843 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 20:19:45 ID:GC2RhtH9
ションなわけで、お題は

「オークション」
「ハックション」
「パッション」

に決定です。
奮って創作しまション

844 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 19:17:32 ID:lbwX5nkq
ションづくしw

845 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 20:18:18 ID:qtmkS7bH
>>843
はいはいカエリマスヨー

846 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 22:56:14 ID:4ghn907W
ションなご無体な!!

847 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 11:13:17 ID:KzRmAaJ7
誰もやらんだろ

848 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 13:41:49 ID:5BmdZMPG
再募集か?

849 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 18:50:48 ID:gwZaE/0Z
『本日のゲスト、佐々木優子さんのお宝は、こちらです!』
 何気なく見ていたテレビ。今日もまた、つまらない惰性で続いている
だけの番組を垂れ流し、皆それを面白いと思いこむ事で、暇を潰して
いる。その一人として埋没している自分に、歯がゆさを感じないでも
なかったが、それをどうにかしようと考え、行動に移せる程には、俺は
もう若くはなかった。
 テレビ画面では、効果音と共に、お宝にかけられていた布が取り
払われ、その下から古ぼけた人形が現れる。
 その瞬間、画面を半眼で見つめていた俺は、その眼を見開く事に
なった。そこに映し出された、あまりにもあまりな“懐かしさ”に。
『はい、こちら……おもちゃですかね?』
『ビニールで造られた人形、今で言うフィギュアの先駆けですね、はい』
『ハックション大魔神の人形です』
『小さい頃テレビで見てましたよ。懐かしいなぁ、はい』
『ゲストの佐々木さん、この玩具は一体?』
『ええ、小さい頃によく一緒に遊んでいた子に貰ったもので……』
 まず俺の目はテレビ画面に釘付けとなり、そしてその中に映し
出されたブリキの玩具に釘付けになり、最後にその玩具の持ち主
であると紹介された、佐々木優子の顔に釘付けとなった。
 佐々木優子。ベテランの域に入り始めた女優であり、幅広い年齢層
に支持されている、人気女優だ。俺も彼女が主演するドラマを何度か
見た事があるので、知っている。
 詰まらないテレビ番組の中でも、何故か彼女の出るドラマだけは、
不思議といつもチェックしていた。内容は、脚本によって当たり外れ
が大きかったが、それでも彼女が出るというだけで、いつもチェック
だけはしていた。
 それが、何故だったのか、その確信を今俺は得た。
『その子が、ハックション大魔神凄く好きだったんです。で、いつも
 大切そうに持ってて……それで、いいなぁー私も欲しいなぁー、って
 いつも言ってたんですけど……』
『そうしたらくれたんですか?』
『いいえ。「これは俺のだからやんない」、って』
 そう言って彼女は笑う。その笑顔に、俺は見覚えがあった。
 その笑顔だけじゃない。彼女の顔に、俺は見覚えがあったんだ。
『でも、ある日私、引越しする事になって……それで、その時に』
『おお、ええ話やなー』
『「お前が寂しくなった時、くしゃみしたら俺が飛んでくから」って……
 ハックション大魔神みたいに飛んでいくから、って。でも、私くしゃみ
 はしなかったんです。その子に心配かけちゃいけないって、一生
 懸命頑張って、明るく振舞って……そしたらいつの間にかこんな
 仕事やってました。えへへ』
『しかし、この人形、いい仕事してますねー。オークションとかに
 出された同種のものは、百万くらいの値がついたものもありますよ?』
 ……空気読めよ鑑定人……。まあ、番組の進行上、仕方が無い
んだろうが、それでも空気読めよ鑑定人。
『へえ、凄いですね』
 だが、そんな空気の読めていない鑑定人の言葉に、優子は素直に
関心している。その驚きながらはにかむ顔は、やはりそうなのだと
確信するに足るくらい、あの日の面影を残していた。
 佐々木優子……結婚したのか、それとも何か理由があるのかは
わからないが、彼女は俺の幼馴染だった、武藤優子だ。確信、した。
 あの日俺があげた、ハックション大魔神の人形を、彼女は今まで
ずっと大事にしていてくれたのだ。

850 名前: ◆91wbDksrrE :2009/03/12(木) 18:51:05 ID:gwZaE/0Z
『でも……金額とかは、高くても安くても、いいんです。今日は少し
 この場をお借りして、この人形をくれた彼に伝えたい事があって』
『ほぅ、どうぞどうぞ』
『今、私、とある方からプロポーズ受けてるんですね。それで、今……
 正直悩んでます。だから……もし、この番組を今、この人形を
 くれた京太君に、もう一度逢いたいって……そう思ってます。
 ………………忘れられない、から』
 鼓動が跳ね上がった。
『もし、この番組見てたら……連絡、ください。もう、随分おばさんに
 なっちゃったけど……それでも、よければ……連絡、ください』
 俺は、その瞬間、傍らに投げ出していた車のキーを握り、独り暮らし
の部屋を飛び出した。視界の隅に映る、潤んだ眼で、顔を真っ赤に
して、あの日別れる時に見せたような、泣きそうな顔をしている彼女の
顔を脳裏に焼きつけ、乱暴に車に乗り込み、エンジンをかける。
「きっかけもらっても何もできないのは……歳だからじゃなくて、
 ただ不甲斐ないだけだよな!」
 あの番組は生放送だ。そして、その放送局までは、車で約三十分。
 連絡をくれと言われても、俺は今の彼女の連絡先など知らない。
この機を逃せば、彼女に逢える機会はもうないかもしれない。
 その先に、何が待っているかはわからない。詰まらないが、先が
見える生活は、もう戻ってこないかもしれない。この先には、もしか
したら耐え難い受難(パッション)が待っているのかもしれない。
 でも……それでも……今の俺のこの情動(パッション)は、止められない!
「待っててくれ、優子!」
 彼女に逢った時に言う言葉を心に浮かべながら、俺はただひたすらに
彼女の元へと急ぐ。
 俺だって……俺だって忘れられなかったんだから!

                                        終わり

851 名前: ◆91wbDksrrE :2009/03/12(木) 18:51:44 ID:gwZaE/0Z
1レス目トリ入れ忘れた

ここまで投下です。

852 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 19:16:46 ID:XUJcAHj9
乙です
見事な消化率ww

853 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 19:17:17 ID:8dKNg9Sy
乙、上手く消化したなー。
ベタベタだけどこういう話好きだw

854 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 19:19:04 ID:UU7voKJ9
うお、三題噺だってこと忘れてた

855 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 19:58:31 ID:5BmdZMPG
いつ出るのかと思ったら終盤にパッションでた

856 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 22:01:45 ID:a43ih7qb
うまくまとまってるね。でも、何でも鑑定団見るまではっきりとは覚えてなかったんでしょ?
フツーに忘れてるやん(´・ω・)

857 名前:オークション・ハックション・パッション:2009/03/13(金) 19:41:14 ID:98yipNRs
四畳半一間のおんぼろアパートに、人間の背丈ほどもある大きな箱が、ながながと横たえられている。
午後も三時をすぎた西日が閉め切られたカーテンの隙間から射して、白い箱に模様を描いた。
薄暗く、狭くるしい部屋のなかで圧倒的な存在感を放つ白い箱は、棺のようにも見える。
だが、これは死したものが眠る箱ではなく、
これから眠りから目覚めようとする「彼女」がその中に横たわっているのだ。
おれは台所へ立ち、コップに水をくんだ。
期待と緊張とで手が震え、持っていたコップが蛇口にあたってかちん、と音を立てた。
おれは一気にコップの水を呷ると、大きく息を吐いた。

ーー長かった。

様々な追憶が脳裏を過ったが、今は感傷に浸っている場合ではない。
おれは箱に歩み寄ると、厳重に施された梱包をすべて取り除き、おもむろにロックに手をのばした。
パシュ、と音を立ててロックが解除され、わずかに開いた隙間からひんやりとした
冷気が流れ出し、それと同時に低く唸るようなモーターの駆動音が響きはじめる。
自動開閉式の蓋が完全に開き、現れた「彼女」の姿におれは思わず息を呑んだ。
頭の周りにつややかな光輪を描く、繊く、長い、栗色の髪。
染みひとつないすべらかな雪花石膏の肌。
群青色のドレスに包まれた、すらりとした肢体……。
身体のどの部分をとっても比類なき完璧な造形美を誇る「彼女」は
おれのみみっちいアパートの部屋の中にまるで天使が降臨したかのように光輝を放っていた。

この時をどれほど待ちわびたことか……!

おれは沸き上がる感慨を押さえきれずにこの日までの長い道程をふりかえった。
21世紀初頭に製作されたアンドロイドの最高傑作、通称「眠り姫」。
おれは子どもの頃訪れた博物館で、特別展示されていた「彼女」を見て、一目でその虜になったのだ。
アンドロイドがまだ珍しかった時代に造られた「彼女」は、本来ならばもはや時代遅れの骨董品だが、
未だに「彼女」を凌駕する美しさをもったアンドロイドは存在していない。
しかし、ロボット産業の黎明期に造られた「彼女」は原因不明の不具合により稼働することが敵わず、
「彼女」の設計・制作を手がけた、とある博士の研究所に長らく封印されていたのだ。

目覚めることのない眠り姫。
いつの間にか「彼女」にはそんな呼び名がつけられ、次第に人々から忘れられていった。
だがおれは幼い頃に見た「彼女」を忘れることができず、
いつか「彼女」を手に入れるという、いつ叶うとも知れぬ夢に並々ならぬパッションを燃やして、
その夢を実現するための努力に人生の大半を費やした。
おれのことを妄執に捕われた馬鹿な男だとあざ嗤う奴はごまんと居た。
普通の人が望むであろうこまごまとした幸せ。おれにはそんな物は無意味だった。
おれにとってはただ一つ「彼女」だけが、この偽物だらけの世の中で、燦然と輝く本物だった。

しかし、日夜進歩し続ける技術にも関わらず、「彼女」の不具合は一向に解明されなかった。
「彼女」は何十年も日の射さない暗い倉庫で一度も目を覚ますことなく、眠り続けていた。
「彼女」を手に入れることは不可能なのかもしれない。そんな思いが兆してきていたある日、
おれにとって青天の霹靂というべき知らせが舞い込んだ。
「彼女」を製作した博士の孫がこのほど「彼女」の不具合の原因をつきとめた、というのだ。
そして祖父の博士よりも商売人で遣り手の孫博士は、今や目覚めの時を待つばかりとなった「彼女」を
オークションに競けることを決めたのだ。
おれは狂喜した!
いままで嘲笑の屈辱に耐えながらも、ひたすらに溜め込んできた全財産を使う時がやってきたのだ。
いち小市民にすぎないおれだが、このオークションにはおれの今までの人生が懸かっている。
どんなことをしても絶対に「彼女」を勝ち取る……!
合法・非合法を問わず、おれは考えつくあらゆる手段を講じ、その日を待った。
満を持して迎えたオークションは好事家の金持ち共がひしめき合い、
単なる骨董品として値踏みする無粋な視線を「彼女」に送っていた。
だが、おれはそんなやつらを徹底的に蹴散らし、ついに「彼女」を手に入れることに成功した!
「彼女」を手に入れるためにおれがどれほどの犠牲を払ったかはいまさら言うには及ばないだろう。
とにかく、今、おれの目の前に「彼女」がいる。それだけがすべてだ。


858 名前:オークション・ハックション・パッション:2009/03/13(金) 19:51:17 ID:98yipNRs
おれが感慨に耽っている間、「彼女」は長き眠りから目覚めようとしていた。
白かった頬にもほんのりと赤みがさしてきて、生命の匂いの薄い人形から
生き生きとした人間へとうまれ変わっていくようだった。
すると、薔薇のつぼみのようなくちびるがほころび、
動かしがたく精緻に配置された眉が少し顰められた。
瞼が震え、長い睫毛が淡い影を曵いてゆっくりと持ち上がり、
その下から人間では持ち得ない、空よりも澄んだ真っ青な水晶の瞳が現れた。

おれは感動のあまり、なにも考えられず、ただただ「彼女」を見守った。
「彼女」は透き通るような白い腕を差し上げると、箱に手をかけて半身をぎこちなく起こした。
しばらく周囲の状況が把握できなかったようだが、何度かゆっくり瞬きをすると、
傍らに座り込むおれに顔をむけた。
冴々とした青い瞳がおれを捉える。
その深淵なる瞳の奥に、脈打つパルスが閃光となって疾り、ぶつかりあい、
微細な火花を散らせて瞳の表情を刻々と変化させていった。
宇宙の星々の輝きを、そのまま封じこめたような虹彩が、おれを認めて引き絞られる。
その地上に二つとない一対の宝石におれの顔が映っている。

「彼女」は再度ゆっくりと瞬きをすると、かすかに微笑んで、深く柔らかい声色でおれに語りかけた。
「おはようございます。わたしの名前を、おしえてください」
「彼女」の一挙手一投足に見惚れていたおれはその言葉に我に返った。
音声認証だ。
その認証精度の低さにより今ではもうほとんど見られなくなった認証方法。
おれは「彼女」の名前を考えていなかったことに焦った。
急にそんなこと言われてもすぐには気の利いた名前は浮かばない。
もうすこし落ち着いてからゆっくり考えたかったのに!
おれは頭をがりがりと掻きむしって考え込んだ。

そのとき、乱雑に閉められたカーテンの隙間から、今まさに沈んでいこうとする
今日の太陽の最後の光が、「彼女」の胸のブローチに反射して、おれの目を眩しく貫いた。
その次の瞬間、おれは鼻の奥にもうれつな違和感を感じて、鼻と口を塞いだ。

いかん!! いま、それだけは絶対にやってはならん……!!

しばらく戦々恐々として鼻をつまんでいたが、そのうち、きいんとするような鼻の奥の不快感が
急に去って行き、スッキリとしてきた。
おれはほっと安堵し、手を離して
ふたたび「彼女」の名前という、重要な事柄を考えることに没頭しようとした。
だが、手を離した瞬間、押さえつけられていたバネが突然放たれたように
爆発的な不快感がおれを襲った。

「ハ、ハ、ハ、ハックションっっ!!!!」

盛大なくしゃみの衝撃とそれとは別の衝撃が戦慄となっておれの背筋を走り抜けた。

「彼女」はしばらく沈黙していたが、ややあって深く頷き、あの忌々しい太陽にまけないくらいの
まばゆい黄金色の微笑みで、おれにこう告げたのだった。
「認証いたしました。わたしの名前は、ハックション。どうぞよろしくお願いいたします。マスター」

859 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 20:58:56 ID:NlceEDKP
切ねえwww

まあ、愛称ハッちゃんでいいやん。

860 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 21:25:42 ID:4iJH55ao
これは傑作www

861 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 17:39:04 ID:PTSTalnc
そろそろクレクレか?

862 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 18:34:02 ID:AmK70rov
「お小遣い」

863 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 18:55:39 ID:PTSTalnc
「売れないアイドル」

864 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 21:25:30 ID:8pCV/Sk0
「アルパカ」

865 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 21:26:08 ID:a0InH7vy
「戦場」

866 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 21:26:57 ID:a0InH7vy
*おおっと*

>>864のが早かったので

「お小遣い」
「売れないアイドル」
「アルパカ」

でケッテー!

・・・アルパカって、馬っぽい奴だったっけ?

867 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 21:28:57 ID:BWG6nGfX
ラマみたいなやつでもっともこもこなあれだね

868 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 21:30:58 ID:a0InH7vy
サンクス。

もふもふするんだな、もふもふ。

869 名前:「お小遣い」 「売れないアイドル」 「アルパカ」 :2009/03/15(日) 10:58:23 ID:IFDTs1Hg
大講義室に入ると同じゼミの女友人が声をかけてきた。
「顔色悪いよ、大丈夫?」
「食費削ってるから」

財布の中は300円を切っていた。子供の小遣いにもならない。
でも、あさってになればバイト代が入る。
「あのアルパカに似てる顔の売れないアイドルのおっかけ、まだ続けてるの?」
「ちょっと表に出ろ」
「いや、褒め言葉だって褒め言葉。癒し系?」
売れないは褒め言葉じゃないだろ。語尾が疑問系になってるのも少し気になる。

「なんの話してんのー?」
他の友人も話に混ざってきた。
「いや、遠藤君がアイドルのおっかけで食費削りすぎだって話」
「ああ、あのアルパカに似てる顔の」

ー終ー

870 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 14:08:20 ID:kpgcyfvS
これは相当似てるなw

871 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 14:35:35 ID:eKd2SzMm
そっちで認知されてたら、確かにアイドルとしては売れないわwww

872 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 17:00:07 ID:95rQ4fIq
テラコンセンサスwwwwww

873 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 21:13:31 ID:5wl2DQaO
え? 普通にかわいくね? アルパカ似アイドル。

874 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 21:19:11 ID:eKd2SzMm
ttp://image.nowa.jp/p/arakin/000000377d60f98398ee99c43f79c584825204b9333b9a8-m.jpg

これ見たら微妙かなぁ・・・と思ったが

ttp://carview-img02.bmcdn.jp/carlife/images/user/374891/p1.jpg

これ見たらなんだかいけそうな気がする〜

あると思います!

875 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 21:33:56 ID:kpgcyfvS
いや、ないだろ

876 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 21:36:49 ID:5wl2DQaO
個体差ありすぎw
今度富士TVの某番組スペシャルでアルパカが出るのが楽しみなんだ、俺

877 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 03:36:37 ID:BP+CUwnA
いやありだってw

878 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 10:40:44 ID:0xHxAZzZ
絵師よ頼む!アルパカ似アイドルを描いてくれ!
クレクレすまん

879 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 12:38:38 ID:BP+CUwnA
そういえばニコニコで結構アルパカ流行りだよな
アルパカMODとかあるし

880 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 15:06:38 ID:4vCfUblI
>>878
無茶振りネタ落書きなら任せろ!
と意気込んだものの、ただの企画ものAV的なのが描けた
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01169.jpg

881 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 15:08:40 ID:BP+CUwnA
首長w

882 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 15:41:17 ID:7Mz1J7Fs
これなら、ありだ!

883 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 17:56:32 ID:cR359PZI
ttp://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01170.jpg
ごめんね、アルパカ要素を追及したらアイドル要素なくなっちゃったごめんね

884 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 18:10:08 ID:7Mz1J7Fs
こっちは、う〜ん……あり、いやなしだな

885 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 18:13:50 ID:cR359PZI
妖怪じゃねえかwww

886 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 18:27:52 ID:4vCfUblI
ところではたしてアルパカ要素とやらは首でいいのだろうかw

887 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 18:32:52 ID:9wRs9eWf
>アルパカに似てる顔

顔だなw

888 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 18:47:39 ID:EMU/lmI7
ここはすごい
http://fhp.blog105.fc2.com/blog-category-3.html
毛の刈り方によってまったく別モンだ。

889 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 18:50:40 ID:7Mz1J7Fs
なんと濃密なアルパカスレw

890 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 18:52:30 ID:L3qVk68C
もはや新ジャンルw

891 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 19:31:25 ID:TU/CgBPn
アルパカ子でっす♪
http://www6.uploader.jp/dl/sousaku/sousaku_uljp01171.jpg.html

あれ…ここなんのスレだっけ…?

892 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 19:36:34 ID:7Mz1J7Fs
パカッ☆

893 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 19:38:17 ID:BP+CUwnA
おお、これはありだ

894 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 21:20:44 ID:dUzNmmox
>>891
うんあり、これはありだ

895 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 23:11:52 ID:EoOt3Ke8
今回のお題をドラクエ5ネタで書こうと思って〜ぇ〜え〜
WEB検索でネタ元を確認したらぁ〜ぁ〜あ〜
アルパカかアルカパかわからなくなったぁ〜〜〜♪

あると思います!

896 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 23:25:44 ID:7Mz1J7Fs
いや、それはないな

897 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 23:28:04 ID:L3qVk68C
>>895
書き込む時は一番最初に

「吟じます!」って書かないとw

898 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 01:36:32 ID:Ic8Woh/D
濃厚なアルパカスレがあると聞いて
アルパカとアイドル要素を両立させてみようと思った。

無理だった。
http://www6.uploader.jp/user/sousaku/images/sousaku_uljp01178.png

899 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 01:38:38 ID:J6QXNte+
やだ、このスレ獣臭い……

>>898
GJ!

900 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 02:19:51 ID:+NPFmj3g
>>898
お、今までで一番アルパカっぽい

901 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 10:53:34 ID:2eTurzIR
これに小遣い要素が入れば、三題絵になるなw

902 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 12:37:22 ID:ZU5jATes
このスレはアルパカに乗っ取られたようですw
今回のアルパカといい懐かしの森先輩といい、こういう流れがあるから侮れない

903 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 13:16:38 ID:+NPFmj3g
森先輩懐かしいなw

904 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 18:43:55 ID:cm+PVuzR
ええい、そろそろアルパカから離れないと、
本当にアルパカスレになってしまう!w

というわけで、そろそろ次のお題、いいかな?

905 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 19:05:27 ID:CvMm59PI
「行き止まり」

906 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 19:16:25 ID:XSxGg55o
「リンゴ酢」

907 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 19:32:44 ID:GkGb5kuh
「スィート」

908 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 19:35:02 ID:XSxGg55o
しりとりにしたいと思ったらその通りになったよ、わーい!

909 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 19:41:19 ID:GkGb5kuh
>>908
いや、意図はミエミエだったから乗った。
それでいてお題に出来そうなのとなると……ちょっと悩んだぞw

910 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 22:15:53 ID:8nSYCP8T
ttp://hirame.vip2ch.com/up/hirame030068.jpg
ttp://hirame.vip2ch.com/up/hirame030069.jpg

アルパカと言えば
双葉では東方の作者が何故かアルパカとの合成写真でよく出てくるよな

911 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 22:41:11 ID:bfisrrIk
待てっ、アルパカの流れはもう終わりだ!

912 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 21:33:40 ID:8Wxf3uiW
んじゃ、次は
「行き止まり」「りんご酢」「スィート」
だな。

913 名前: ◆91wbDksrrE :2009/03/19(木) 13:15:02 ID:ZoSvIH7q
「行き止まり……袋小路か」
 男は唸った。
 場は、坂井食品研究所、その一部署である甘味研究室だ。
「打開するにしても、藪を切り裂く鎌もなく、木を打ち払う鉈も無し」
 男の目の前にあるのは、試験作品として作られた菓子だった。
 命題として与えられたものは――健康に寄与する菓子。
 健康の為になる菓子を作るにあたって、酢酸を導入する事を思い
ついたまでは良かった。だが、酢酸をそのまま用いては、酸味ばかり
が勝る甘みの無い菓子が出来上がってしまう。それを上に乗せる
果物やクリームによってどうにかできないかと試行錯誤し、ただの
醸造酢ではなく、果実酢を用いる事で、既存のものと比較してかなり
の甘さを出す事には成功していた。
「特にリンゴ酢を用いた場合の風味はいい……だが」
 だが、それでもまだ足りない。甘味食としての甘みが、試験作には
絶対的に足りていなかった。
 健康を志向する以上、糖質を増やす事で甘みを出すという選択は
採れなかった。人工甘味料の増量も、なるべくならばしたくない。人体
への影響は知られていないが、初戦人造品。信用を置くには値しない。
 ではどうするか。その為の策を、一つ男は打っていた。だが、その
策を打ってより既に一週間、音沙汰は無いままだ。
「……むぅ」
 その時、男のデスクにある電話が音を立てた。
「……なんだ、こんな時に……はい、もしもし」
『主任にお電話です。なんでも、吉田農場と』
「すぐに代われ!」
 来た。男が待ち望んでいた連絡が、ついにやって来た。
 吉田農場。一部では知られた、特性の果実酢を供する農場の名だ。
男が打っていた策とは、その農場から通常より甘みの強いリンゴ酢を
手に入れ、それを使用するという事だった。
「もしもし!」
『注文の品……ご用意、できます』
 男の念願は叶った。
 それからわずか三ヵ月後、男の作った作品が、店頭を飾る事になる。
 伝説と呼ばれるスィートの、その始まりだった――


「まあ、伝説的に売れなかったわけですが」
「なんでやねん」
「リンゴ酢とあんことパスタとご飯の絶妙なバランスが大不評だったとか」
「あんこ入りパスタライスかよっ!?」
「withリンゴ酢、みたいな」
「……そりゃ売れないわ。ってか男、拘る所間違いすぎ」
「ですよねー」

                                  終わり


914 名前: ◆91wbDksrrE :2009/03/19(木) 13:15:25 ID:ZoSvIH7q
ここまで投下です。

あんこ入りパスタライス♪

915 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 13:21:35 ID:3FDoN4pM
そりゃ売れねーわwww

916 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 14:15:54 ID:0aZtz7ni
あんこ入り☆パスタライ酢とな

917 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 14:51:05 ID:NugtxSR8
あんこ入りパスタライスって字面にワロタw

ゴーストスイーパー美神にこんなやつあったよな。
あまりのまずさに幽体離脱するハンバーガー。

918 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 15:02:15 ID:0aZtz7ni
かつてはニコ動にあんこ入りパスタライス製作動画が上げられまくったものよ

919 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/20(金) 22:54:02 ID:aaYOXjyQ
次のクレクレにいくか?

920 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/20(金) 23:10:41 ID:Ru66pgcS
いいのかな?
では「チューリップ」

921 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 00:33:26 ID:RXkM93k9
プリン

922 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 00:39:44 ID:mZOWOAQX
「リーインカーネイション」

923 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 00:42:16 ID:X1ehRtRX
またしりとりか!

924 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 00:42:56 ID:X1ehRtRX
よく見なくてもしりとりじゃないね><

925 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 00:43:03 ID:EguvQixZ
だが悪くない

リーンカーネイションって転生だっけか?

926 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 00:46:40 ID:mZOWOAQX
まあしりとりでも単なる遊びにしなければ。
結構お題の考案でも頭は使う。

>>925 そうそう。
「転生」でも「輪廻」でも。

927 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 02:19:43 ID:3ggAm/AH
リインカーネイションならロリババァを盛り込みやすいかも

928 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 08:45:48 ID:RXkM93k9
「リーンカーネイションって格好良いねー」
 お裾分けだというチューリップをうちの母親に届けた後、何故か人の部屋に居座る幼なじみは人の雑誌をめくりながらそんなことを言い出した。
「お前意味分かってて言ってんのかよ」
「響きがいいじゃん、必殺技っぽい」
 アホだこいつ。
 そしてやっぱり斜め読みの女王だ。リーインカーネイションの単語が載った雑誌にはちゃんと意味の解説も載っているハズなのにそれが頭に入っていない。
 たぶん幼なじみは見出しだけ流し読んでいる。これでは雑誌記事を書いた人間が浮かばれないではないか。
「リーインカーネイションは輪廻転生って意味だぞ」
「うおーちょーかっけー」
 カタカナ言葉や漢字言葉というだけで無条件に良い物に感じるのはいくらなんでも即物的過ぎるだろこいつ。
 幼なじみの馬鹿さ加減にちょっとだけ将来が心配になる、どのみち俺にはどうてもいいことだが。
 可哀想なものを見る目で幼なじみを見ているとその視線気付いた相手は何故かそのまま雑誌で顔を隠した。雑誌の表紙にはムーの文字がでかでかと輝いている。
「本に変な癖がつくだろうが、やめろ」
「突っ込むとこそこなんだ」
 何となく雑誌を握る幼なじみの手に力が入りすぎている気がして注意をすれば、明らかに落胆した声が戻ってくる。
「あ? それ以外気にすることあんのか」
 変なやつめ。
 軽くにらんでやると渋々といった様子で雑誌を元の場所に直した。
 よしよし。この部屋に来る度に色々しつけたもとい言い聞かせた甲斐があった。
 ちょうどそんなことを思った時コンコンと自室のドアがノックされる。
 普段はノックなんてしない母親だが幼なじみが来ているときは別だ。その気遣いはもっと普段から俺に対して発揮していただきたい。
 ドアを開けてひょいと顔を出した母親は幼なじみに向かってにっこり笑う。
「チューリップありがとうね」
「いいえー、くれた親戚の趣味らしいんでうちもたくさん余ってるんですよ。またお裾分けしに来ますね」
「あら、ほんと。嬉しいわ、今日はゆっくりしていってね」
 ゆっくりの下りで何故か俺を見る母親。相手の都合によるんだから俺に目配せしても意味無いだろう。
 帰ると言われたら俺は当然引き留めない。
「はいこれどうぞ」
「わーありがとうございます!」
 何故か部屋の主をドスルーして出しっぱなしの小さなローテーブルにプリンが並ぶ。
 チューリップのお礼兼おやつということらしい。
 幼なじみはほくほく顔でスプーンを手に取っているが未だ口をつけていない。一緒に食べるということを重視しているのは昔からだ。
 母親が出て行ったのを確認してから俺もスプーンを取り、一応いただきますをすると幼なじみもそれに倣った。
 幼なじみはパクリとプリンを口にして幸せそうな顔を浮かべる。
 プリン一つでここまで喜べるとは本当に安上がりなやつだな。
「二人で食べると美味しいよね」
「そうか? 一人で食べようが二人で食べようが質量も構成物も違わんぞ」
 むしろ他人に気を遣うのが嫌だから一人の方が気楽で良い。
 するとプリンを前に幼なじみがぽつりとつぶやく。
「この調子で現世中に決着つくのかな」
「なんだお前、不倶戴天の敵でもいるのか。初耳だぞ」
 なんという物騒な話だ。やり合うなら俺の関わらない遠くでやって欲しいと心底思う。
 すると何故か生ぬるい視線で幼なじみに見られた。
 それはお前が俺に向けるべきものではないと思うんだが。どちらかというと向けられる側だろお前。
「うん、来世になってもプリン一緒に食べられたらいいねって話だよ」
「お前がプリンにそこまで執着していたとは思わなかったな」
 その敵とはプリンをはさんで向き合う仲なのだろう。よし、意味分からん。
「プリンの業を来世に持ち越すのはある意味お前らしいが、なるべく現世のうちに決着つけとけよー」
 お前の背負う業のことなんざ知ったことではないが。
「頑張るよ」
 幼なじみはそう言って非常に微妙な顔で笑っていた。

終わり

929 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 14:18:23 ID:EguvQixZ
なんという鈍感な主人公
いい幼馴染じゃないかぁ

930 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 12:39:20 ID:IbF1u2VJ
鈍い男は好きだwww

931 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:11:54 ID:izJ2jZ/Q
あーあ、決死のチャージだったやもしれんのにw

932 名前: ◆91wbDksrrE :2009/03/24(火) 00:04:22 ID:EZyb5fOR
 食べかけのプリンを机の上において、彼女は私の元にやって来た。
「ねえ」
 彼女は尋ねる。いつものように、抑揚の無い、何を考えているかよく
わからない声と表情で。
「このチューリップがわたしだったら、貴方は愛してくれる?」
 その言葉の意味も、わからない。だから余計に、私は彼女が何を
考えているのかわからなくなる。
「ねえ、答えて。貴方は、もしわたしが花でも愛してくれるかしら?」
 だが、ただ一つだけはっきりしている事はある。それは、私が彼女の
事を間違いなく愛しているという事だ。
 力にはなれず、癒しにもなれているか定かではなく、彼女が私を
愛してくれているかどうかという、それすらもわからないのに……だと
言うのに、間違いなく――私は彼女を愛している。
「……教えて。ね?」
 彼女の手指が私の頭を撫で、私はただ、頷いた。言葉は紡げない。
ただ頷く事しか、私にはできない。
「そう」
 だが、私の頷きを見て、彼女の顔がほころぶ。
「……リーインカーネイション……転生って奴で、わたしも貴方みたいに
 なりたいなって、そう思ったの。できればそう、チューリップみたいに
 なれたらいいな、って。今は無理でも、次に生まれる時は」
 彼女の指に撫でられながら、彼女の言葉を聞きながら、私は酷く
満ち足りた時間を味わっていた。
「……はぁ」
 だが、その満ち足りた時間もすぐに終わる。彼女のため息と共に。
「駄目よね、こんなんじゃ。色々終わってるわよね……貴方もそう思う?」
 そんな事は無い! そんな事があるのものか! 私は嬉しいのだから!
貴方が話しかけてくれる事が! 貴方と会話をする事はできずとも、
頷きでもって貴方の言葉に応えられる事が! だから、そんな事を
言わないで……言わないでくれ……。
「……やっぱり、貴方もそう思うか。確かに、犬猫どころか、植物相手に
 独りごちてたら、色々とヤバイわよねー。あはは」
 私の否定の言葉は、しかし空気を振るわせる事は無い。
 彼女の手指に撫でられて、私はただただ頷くばかり。
 それだけしか――私には、できない。
「でも、もしチューリップになれたとして……チューリップは、おじぎ草に
 恋をしたりするのかしらね?」
 そう、私はおじぎ草。ただの植物。物言わぬ、頷く事しかできない植物。
 だが、それでも……貴方がチューリップであろうとも、人間であろうとも、
蜜を運ぶ蜂であろうとも、地を這う蟻であろうとも、それが貴方である限り、
必ず愛する――愛させて、欲しい。
「さーて、プリン食べて今日は早く寝よっと! 明日もまた仕事だしねー!」
 秘めることしかできないこの想いが叶う事は、恐らく無いだろう。
それは、例え来世であろうとも。奇跡でも起きない限りは。
「じゃ、おやすみね」
 だが――眠りに落ちる彼女に、小さな頷きを返しながら思うのだ。
 願わなければ、奇跡は起きない。
 ――そんな、どこかで聞いたような、だが真実として在る、一つの摂理を――

 終わり

933 名前: ◆91wbDksrrE :2009/03/24(火) 00:04:58 ID:EZyb5fOR
ここまで投下です。

934 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 00:24:24 ID:rs9KALKK
ああ、なんかこの話無性に好きだ。

935 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 01:07:51 ID:KOz2pt0t
>>928
たしかに、リーインカーネーションって語感のうさんくささはムー的ねw
しかしムー民にしてフラグブレイカーとはややこしいの好きになっちゃったな、幼馴染の子はw
こんなんでも駆け引き的にはムー民が大幅リードかもしれん

>>932
おじぎ草の今後の奮起に期待か、<彼女>が鬱に振り切れて悲劇的なことになってしまうのか
いずれにせよ転生を通して縁が絡みそうな未来を予感させる終わりかたよねー

936 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 22:06:13 ID:KvQOcMXS
次いくかい?

937 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 00:35:13 ID:1129BP5n
来いやカス共

938 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 00:57:16 ID:9xiwK5dI
んじゃ
「マッチ」

939 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 01:11:43 ID:25STOmqV
「深海魚」

940 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 01:19:28 ID:UYCXxJMu
「名誉心」

941 名前:「マッチ」「深海魚」「名誉心」:2009/03/25(水) 01:37:51 ID:Ca3EU5DF
 湿気ったマッチで煙草を点す。
 節制の為に薄暗くしてある部屋の中、マッチの灯りが揺らめいては壁にその光の輪郭を踊らせた。
 会社の不正によって、俺が十数年来誇って来たキャリアと功名心は失われた。
 それでも俺は、――海溝に落とした小石が不満を嘆かないのと同じ理屈で、少なくとも不幸ではないと思う
 僕の人生は、特に困難もなく転がり続けたように思う。
 勉強を楽しんでいた。苦手な科目はもちろんあったが、苦手を克服する事を楽しんでいるうちに有名大学に進学していた。
 進学したあとは楽しみらしい楽しみもなかった。周りからは「君はいつも楽しそうだね」などと言われていた。理由はわからないが、つまらないと力説する意味はなかったので笑って済ませていた。
 気がつけば二流の会社で高給を頂く身分になっていた。部下に干渉せず、助言に期待も込めず、かつ上司には流れるように従った。確実に従う事はしなかった。夏目漱石の引用という訳でもないが、骨が折れるし、逆境や不条理に竿立てるのはやはり無駄なのだ。
 流そうという奴がいるなら流されればいい。
 俺は、俺の人生になんの不満もない。
 失業後も、大麻の栽培にあっさりと成功した。
 この地方で売り子と呼ばれている連中にも簡単にパイプを繋げられた。
 収入に問題はない。
 でも、なにも楽しくない。
 カーテンを少し開けると、月明かりさえ届かない曇りの夜空だった。
 蓋をされたような気分だ。
 どこかで名誉を願っていた心が、肺と一緒に煙草脂に濁り切っていた。
「まるで深海から太陽を見上げてるような気分だ」
 パトカーの姿が見えたので、俺はカーテンを締めて、眠りについた。




942 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 04:33:24 ID:pOUiuWuz
マッチ売りの少女は遂に行き倒れてしまいました。
そこへ身なりの整った青年が通り掛かります。
「おや、このままではしんでしまいます。私の家に来なさい。」
青年は少女を抱えて家につれていきました。
しかし家には入らず、少女を馬小屋のわら草の上に寝かせました。
「両親に見つかっては追い出されてしまうからね。静かにしていて。」
「ありがとう。ありがとうございます」
少女はただただ礼を言います。
少女にしてみれば、屋根とあたたかな草のベッドが与えられただけでも、青年に感謝しきれないくらいなのです。
やがて母屋の灯りが消えた頃、青年はパンとスープをもって少女のいる馬小屋をおとずれました。
「ありがとう。ありがとうございます。」
少女は礼を述べて、ポロポロ泣きながらパンとスープを食べました。
「お礼の言葉なんかいらないよ。僕はきみが欲しいんだ。」
青年は、月明りしか差さない吐く息も白む馬小屋で、少女の服を脱がせました。
少女は今から何をされるのか全然わかりませんでした。
しかし興奮したようすの青年に気おされて、抵抗することも出来ません。
「大丈夫だよ。痛いのは少しの間だけだよ。」
青年は少女を組み敷きました。
少女が叫びそうになると、青年の手が少女の口を塞ぎました。
それでも暴れると青年は少女の首を締めました。
ついに少女は抵抗をやめ、されるがままになりました。
少女の噛み締めたくちびるに鉄の味がにじみました。
そして満たされた青年が服を整えていると、青年は不意に息ができなくなりました。
青年は自分の首をさわってみます。
鉄の杭が突き立っていました。
少女がわら草を掃除する鋤で青年の首を突き刺したのです。
少女は青年の身ぐるみをみんな剥いで、長すぎる裾をまげて着込みました。
青年を藁に埋もれさせてマッチで火を着けます。
少女は馬を引いて外に逃げました。
小屋はみるみる燃えてゆきます。
少女は馬に跨がりみるみる駈けてゆきます。
慣れない馬の背中にあたり、お腹の下がズキズキと痛みます。
しかし青年の体温の感覚を忘れるためには、馬の体温を感じていた方が幾分ましでした。
少女は馬のたてがみにすがりついて泣きました。
馬の背で泣いていると、いつのまにか崖の舳先まで駈けて行って、止めるまもなく海に転落してしまいました。
体温が下がり、泳ぐ体力ももうありません。
深海の底に沈み着くと、満月の月が水中からでも見えました。
するとどうでしょう、月が真っ赤に染まる出はありませんか。
よく目を凝らせば、沈んだ少女と月の間の海で、馬が鱶に食まれていました。
まるで空を飛ぶ馬が空を飛ぶ鱶に囓られているようです。
少女は薄れゆく意識のなかで、幻想的な景色をみて思わず微笑みました。
鱶が少女に近付いて来ます。
「ほほう、俺が馬を食うさまをみて笑うとは、なんという豪胆。お前は助けてやろう」
鱶は少女をやさしく咥えて水面に近付きました。
「俺は深海魚なんだ。ここから先は自力で泳ぐんだな」
少女は鱶に放されたところから、必死に泳ぎました。
もう水中に入って一分は超えているでしょう。
水を掻く手が動きません。
少女は意識を失ってしまいました。

少女が目を覚ますと、そこは山小屋のようでした。
「おお、気がついたかね」
猟師然とした男が、少女に笑いかけます。
話を聞いてみれば、本来猟師をしている男の元に鱶退治の依頼が入り、そこで溺れていた少女を助けたのだそうです。
「鱶は?鱶はどうなりましたか?」
「猟銃で撃ったよ。ばらばらさ」
少女は少し落ち込みました。

943 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 04:34:53 ID:pOUiuWuz
少女は山小屋の猟師に突如言いました。
「わたしをお嫁にもらっていただけませんか」
少女は考えていました。
人を殺めたこと。
故郷には帰れないこと。
きっと追われていること。
「わたしは裕福に暮らしたい欲も良家の令嬢になりたい名誉心もありません。ただ平穏に
暮らしたいのです、だからどうか、わたしをお嫁にもらっていただけませんか」
猟師はまいったなという顔をして言いました。
「ふだんと違う狩場に行ったら、鱶に加えて嫁まで狩れてしまった」
ふたりはひっそりと契りを交わし、いつまでも仲良く暮らしました。

今、マッチ売りの少女だったおばあさんには孫がいます。
赤い頭巾の良く似合う、かわいい女の子です。

終わり

944 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 10:34:25 ID:DaKLj1TI
まさかの赤ずきんエンドwww

945 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 17:11:49 ID:pOUiuWuz
狼に食われて生還するような人なら、
それまでの人生もさぞや波乱万丈だったろうと思って。

946 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 18:05:53 ID:MbWI+TCT
>>941
なんかこっちまで気だるくなってくるな。
雰囲気悪いけどいいじゃん。

>>945
なるほど。
とりあえず、終わりよければ全ていい・・・のか?w

947 名前: ◆91wbDksrrE :2009/03/26(木) 21:01:30 ID:iNpQeZnx
「マッチとは、何故マッチなのであろうか」
「またわけのわからない事を……」
 彼の意味不明の戯言は今に始まった事ではない。名前というものに
異常と評してしまえる程の関心を持ち、それが何故そう名づけられた
のかということを知りたがる。だが、その過程で紡がれる言葉は、私の
ような常人にとっては戯言以外の何物でもない。厄介なのは、その戯言
が割と長く続くという事だった。以前『深海魚とは何故深海魚と言うのか』
と言い始めたので、『そりゃ深海に住んでるからでしょ』と答えた時、
『なるほど』と三秒で話が終わったのは、例外中の例外だ。
 まったく、顔はいいんだから、黙っていればもてるだろうに……と
言いたい所だけど、黙っていてもてた結果どうなったかを何度か
目にしている私は、そんな風に言うこともできない。
 はぁ……全く、難儀な奴。
「マッチだぞ? match……適合する、試合をする……そういった意味
 を持つ言葉だ。何故点火具にその呼称を用いた?」
「えーっと……」
 何らかの納得できる答えを得るまで、彼のこの戯言は止まらない。
だからいつも私は頭を捻って彼の戯言に付き合うんだけど……なんで
いつもいつも私が付き合わなきゃいけないのか、と思う事も度々。
 それでも付き合ってるのは、腐れ縁って奴なんだろう、多分。
「火点ける時に、こするトコとマッチの頭がこすれるのを、試合する
 のに例えて……とか?」
「なるほど。少々気になる部分もあるが、そういう考え方もできそうだ」
 何か言い方がむかつくけど、このままいけば戯言に付き合うのも
程ほどに済みそうだったので、私は何も言わない。
「しかし、いつも思うのだが……」
「何よ」
「お前はどうして私のこんな話に付き合ってくれるのだ?」
 何も言わなかったら、思いもしなかった疑問が飛んできた。
「私は、お前とのこの時間が楽しい。だが、お前はそうでもあるまい」
「……自覚あるんなら、少しはどうにかして欲しいんだけど」
「その時間に、わざわざお前が付き合ってくれる理由は、何だ?」
「それは……腐れ縁、じゃないかな、多分」
「そうか……腐れ縁か」
 彼の浮かべた、どこか寂しげな微笑に、何故か私の胸はドキッとなった。
「その腐れ縁は、いつまで続いてくれるのだろうか」
「……そんなの、私に聞かないでよ」
 一度跳ね上がった心臓は、その反動からか高鳴る事をやめない。
 今日は……いつもと違う。違い過ぎる。何もかもが。
「私には名誉心も、功名心も無い。私が欲する心はただ一つ。それは……」
「あー、もう、わかったわよ! 一生あんたに付き合ってあげる!
 腐れ縁でよければね!」
 私は、彼の言葉を遮るように椅子から立ち上がった。部屋を出ようと
して、彼の方を一度だけ振り返ると
「……そうか」
「っ……!」
 そこには、嬉しそうな微笑をたたえた、彼がいた。その顔を見た瞬間、
心臓が口から飛び出るかと思う程跳ね回り、顔が一瞬で真っ赤になる
のを私は自覚した。
「……もうつ……馬鹿ぁっ!」
 理不尽だ。彼も理不尽なら、私のこの気持ちも理不尽だ。ちょっと違う
面を見せられただけで、なんで……なんでこうも簡単に……。
 後ろ手に扉を閉め、私は一つの事を決心する。
「そういう風になりたいなら……もっと私ごのみにしてあげるから、
 覚悟しなさいよね」
 自然顔に浮かんだ笑みと共に、そんな呟きが口からこぼれる。
 明日からは……色々と大変な感じになりそうだ。
 でも……それも、悪くは無いかもしれない。

                                    終わり

948 名前: ◆91wbDksrrE :2009/03/26(木) 21:02:13 ID:iNpQeZnx
ここまで投下です。

ちなみに、火を点ける方のマッチの語源は「ランプの芯」だそうです。

949 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 15:44:32 ID:z/9hKc45
次いくか?
「極寒の地」

950 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 16:12:51 ID:8srlTQJv
「音痴」

951 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 16:15:22 ID:/8AM+emM
「あさいち」

別に「朝市」でも「朝一」でもいい。

952 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 17:20:35 ID:qRo3kPWr
遅れた。「マッチ」「深海魚」「名誉心」です。 

 「次の方、どうぞ」
  よばれて窓口にやってきた男は、ひょろりとした長身を折って、窮屈そうに椅子に納まった。
  こういう目をした人ばかりなら、いいんだけどな。
  私は目の前に腰掛けた男をさりげなく観察しながらそう思った。
  面長の顔に楕円形のレンズの銀縁眼鏡。やや神経質そうな顔立ちをしているが
 眼差しはあくまでも穏やかで理知的だった。
  あんたみたいな人なら、きっとすぐに働き口は見つかるよ。うん、大丈夫。
  今までにどういういきさつがあってここに来ることになったかはわからないが、
 この善良そうな男に心の中で声援を送ったあと、マニュアル通り、相手を落ち着かせるための
 曖昧な笑顔をうかべて私は口を開いた。
 「おまたせしました。えーと、まず一つお聞きしたいのですが、
 以前はどういったお仕事をされていましたか?」
  男は幾度かしぱしぱとまばたきすると、口ごもりながら答えた。
 「はい、あのう、魔術師をしていました」
  長身に似合わず、細く、ひよひよとした鳥のような声だった。
 「ほう、魔術師ですか。ずいぶんと専門的なお仕事をされていたんですね。すごいですねえ」
 「ええ、まあ、恐縮です……」
 「どのくらいお勤めになられましたか?」
 「20年程でしょうか」
 「それは、なかなかの経験がおありですね。再就職には有利です。
 きっとすぐに新しい仕事が見つかると思いますよ」
 「はあ、それはどうも……」
  男は言葉をにごすと、量は十分にあるが、白髪がまじって全体的に灰色になった頭髪に手をやった。
 「それで、今回転職をご希望ということですが、やはり魔術関連のお仕事を希望されますか?」
 「いえ、その方面はもういいんです。全く別の職種に就きたいと思ってます」
  男はそれまでの戸惑いがちな態度と違い、きっぱりと言い切った。
  その言葉には高い専門性を必要とする職業についていた者にありがちな、自らのキャリアを誇る響きは全くなかった。
 魔術師と言えば生まれついての資質と長年にわたる知識・技術の修練が必須の職業だ。
 当然、その職に就くことのできる者は限られるため、業界は慢性的な人手不足で、
 どこにいっても引く手あまただ。無論、給与や待遇もかなり良い。
 「え……そうですか。キャリアも十分あるのにもったいないな……」
 「いえ、いいんです。魔術師の職に、未練はありません」
  ぽつりとそう呟くと皺の少ないつるりとした顔をなぜて男はほうっと息をついた。
  この人、一体いくつくらいなんだろう?
  私は消しゴム付きの鉛筆の頭を机にトン、トン、とついてそんな事を考えた。
 「わかりました。では、なにかご希望の職種はございますか?」
 「特には、ありません。働けて、生活できるくらいの給料がもらえればそれで結構です」
 「そうですか。特に希望はナシ、と……。ではとりあえず、お住まいの近くからの求人を検索してみますね」
 「おねがいします」
  男は安堵したように目元にすこし皺をよせて笑い、机の上で慎ましやかに手を組んで、私が検索を終えるのを待った。
  だがその時、どこからか、何かが唸るような音が聞こえてきた。
  それも空気を伝わる振動の音ではなく、人の精神に響く音だ。
  私ははっとして目の前の男を見た。
  男はさきほどの穏やかな表情から一変し、かつて魔術の現場の第一線で見せていたであろう峻厳な顔つきになっていた。
 「ちょっと失礼」
  男はそう言うと懐から小さな箱を取り出し、スライドさせて、中から細くみじかい木の棒を取り出した。
 先端には丸く固められた赤い薬品がついている。
  マッチだ。



953 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 17:36:30 ID:qRo3kPWr
  男は机でマッチを擦って火をつけた。だがその火は普通のオレンジ色の炎ではなく、真っ青に燃える、美しいがどこか恐ろしい、この世ならぬ炎だった。
 男はその炎の上に手をかざし、眉根をよせて何事かぶつぶつと唱えはじめた。電気が点いているにもかかわらず、部屋の中が急に薄暗くなっていく。
 炎は次第に大きくなり、青を濃くしてゆらゆらと揺らめいた。炎を覗き込む男の額に汗が浮かぶ。周りの人間たちの影が炎の光輝に照らされて、
 縫い止められたように動きを止め、くっきりと黒く壁に映し出された。
  すると突然、さまざまなポーズをとった人影の林のなかに大きな魚のような影がぬっと現れ、目にも留まらぬ速さで影の間を縫うように奔り、消えた。
  私はぎくりとして男の方を見た。
  すでに15センチほどになっている深い海のような色の炎の中を、ちらっと魚らしきものの尾びれがよぎった。男はそれを見ると声の調子を強め、
 炎の中に人差し指を突っ込み、釣りをするように指を炎の中で泳がせはじめた。
  男の詠唱は高く低く、まるで歌のように紡がれ、聞いているとどこか遠くへ運ばれていってしまいそうだった。
 男の歌と、炎のひかりが私を酔わせ、意識が朦朧とし始める。瞼が重くなり、身体の力が抜けていく。
  だが突然、ギョトギョトとした禍々しい光が私の目に飛び込んできた。狂った光を宿した巨大な魚の眼。それがまるで喰い殺そうせんばかりに私を捕らえた。
 「ああっ!」
  私は思わず叫び声をあげて後ろにのけぞった。
  その瞬間、炎の中から乱ぐい歯をむきだしにした、大きな厳つい顔の気味の悪い深海魚が躍り出て、男の指に噛み付いた。
 「!!」
  食いつかれた男がするどく一声叫ぶと、青い炎が光の輪となって魚を捕らえた。魚は輪を引きちぎろうと渾身の力で暴れ、
 急激に負荷がかかった輪からバチバチバチッと激しく火花が散る。千切れそうになりながらも魚にくい込む輪から稲妻のような白刃が走り、
 あたりは真っ白な閃光に包まれた。
 「わああっ!」
  私は悲鳴を上げ、頭を抱えて机に突っ伏した。

954 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 17:38:10 ID:qRo3kPWr
 「大丈夫ですか」
  私はその声にはっと我に返った。
  温厚そうな眼差しを取り戻した男が私を心配そうに覗き込んでいた。
  部屋の明るさも元に戻っている。周囲は異変などなかったように、気怠く平和なざわめきに満ちている。私はおそるおそる身を起こした。
 「あ……大丈夫、です」
 「そうですか。よかった。申し訳ありません。巻き込んでしまったようですね」
 「いえ……あの、さっきの魚は……」
  私はちらりと男の指に目を落とした。男は手を組み替えてさりげなく隠そうとしたが、人差し指の爪が無くなっていた。
 「逃げられてしまいました」
  男は事も無げに苦笑まじりに言ったが、眼鏡の奥の眼はこまかく揺れていた。
 「なんなんですか、あれは一体……?」
 「あれは……前職で私が術を使って呼び出したものなのです」
  男の顔に苦渋と悔恨にみちた表情が浮かんだ。
 「経験も長く、召喚術に長けていると、とあるプロジェクトの中心的役割に任命されましてね。長い時間をかけて準備を重ねに重ねました。
 自信もありましたし、失敗が起こるのは万に一つ、いやありえないことだと考えていたのですが、その奢りが引き寄せたのでしょう、
 召喚は失敗してしまったんです。同僚があれに二人喰われ、ついには私自身の手にも負えなくなってしまった……。
 私は魔術師でいることが耐えられなくなって、辞職しました」
  男は吐露するように一気に述べたてると、動揺を押さえようと瞑目して深呼吸をした。そして爪のなくなった人差し指を握り込んで俯いた。
 「辞める時に私は自分の力と引き換えにあれを封印しようと試みましたが、やはり封じきれなかったようです。
 時折、ああして魔力の衰えた私をも喰らおうと出て来る。私も以前は自分の能力を誇り、社内で一番の魔術師などとうぬぼれていましたが、
 そんな名誉心もあれのお陰ですっかり折れてしまいました」
  男は自嘲するように口を歪め、手に残ったマッチ棒をぽきりと折った。
 「こんなふうに、ね」
 「……お察しします」
  私は男の手の中のふたつに折れたマッチ棒を見ながらやっと、そう言った。
 「新しい仕事、見つかるでしょうか?」
 「見つかりますよ、きっと……」
  精一杯誠実に答えたつもりだったが、私は男の眼をまっすぐ見て答えることができなかった。
  コンピューターでいくつか適当な求人が見つかったので、プリントアウトして男に渡した。
 男は縮こめていた身体をぎくしゃくと伸ばして立ち上がり、深々と頭を下げると、ありがとうございました、と言って去っていった。
  私は窓口に座って、ただ、彼の後ろ姿を見送った。

955 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 03:20:12 ID:TDkt+hI8
すげー面白い!
マッチの魔術の辺りの発想やら描写がマジぱねぇ!
憬れるわコレ
GJ!

956 名前:「マッチ」「深海魚」「名誉心」:2009/03/30(月) 19:49:24 ID:KZ+7su4B
おいらも出遅れました。
深海魚と名誉心の組み合わせが難しいよね…。

「マッチ」「深海魚」「名誉心」

 入り江の岩の上に腰を降ろした。もう最近では服が汚れても気にはならない。夕闇が降り始め冷たく
なった潮風に吹かれながら、私はタバコを取り出すと一本くわえ、マッチをすった。
 タバコに点火して用済みになった小さな炎を、海のほうにゆっくりとかざすように遊ばせる。
目の前の海は底が見えず黒々としている。下手に入れば思わぬ深みに沈むと言われる危険な海だ。
聞けば海の底にはぽっかりと大穴のような海溝があるという。
 やがて大穴の中で何かが動いた。薄暗い中で幽かな光の揺らめきが意思を感じさせた。
 確かにそこに何かが蠢いている。

 結婚はできない、といったのだった。
「私じゃなくて、あの人を選ぶのね」
 その頃、私は出世することに躍起になっていた。私の新しい恋人は新たなプロジェクトチームを率いる立場にあり、
そのプロジェクトの展望も非常に明るいものだった。より多くの実績を勝ち取り、成果をあげることに夢中になっていた私の
名誉心を、ひどく刺激するものだった。
 彼女とは大学時代から同棲を続けていてもうかなりの年数が経っていた。よく知る者などからは
早く結婚してやれと言われることはしばしばあったのだが、仕事にかかりきりになるにつれ他の事はおざなりになりがちだった。
ようやく身辺を整理しようという段階に至って結婚の話がでていた。
 幾度かの話し合い、言い争いをした。それでも強引に話をまとめ、私は手切れ金を用意した。しかし彼女はその頃には既に
なにごとかの決意を固めていたようだった。手切れ金をつき返し「絶対に許さない」とはき捨てた。
 長い付き合いなので彼女の考えと言い分はわかった。私もそこでようやく彼女を殺害することを決めた。


957 名前:「マッチ」「深海魚」「名誉心」:2009/03/30(月) 19:51:40 ID:KZ+7su4B
 漁師町で大穴は不気味でありながら、どこか神聖なものと捉えられているようであった。潮の影響で様々なものが
流れ着き沈んでいく。海が荒れて沿岸で死者がでるような際には、水葬にだした時代もあったが
皆この深い海溝の周りへと流れてゆき、しかし陸に上がることなくいずこかに消えたそうだ。
伝説では死者は大穴に沈み魚になるのだという。そして日の届かぬ海の底で生き、人であった頃を恋しがっては
時折奇妙な深海魚の姿を見せるのだそうだ。
 それは骸を飲み込む深遠なのだ。
 周りの岩礁では時折、ぽつりぽつりと灯りがともる。人影をみることもある。彼らの訳はしらないけれど、私の理由は明白だ。
 あの日から私の人生は順調に進むと思われた。しかしほどなくして私の思惑と反し、この国は不況と停滞の時代に入った。
プロジェクトは例外なく中止や見直しを迫られ、多くの社員がその椅子を追われた。私も整理され、私の新しい恋人は整理されずに済んだ。
 それからというもの、私はこの岩礁にふらりと通っては黒い海面をじっとみつめる。後悔ではない。ただ仕事を失って
生のままの自分になってしまったとき、私は自らが何をやったのかわからなくなってしまったのだ。それを確かめなければならないと
いう欲求が、ふとした瞬間に沸いてくるのである。
 しばらく考え事をしていると水面になにかがきらりと見えた。魚の鱗のように思えた。光を飲み込む大穴のその上に何かがいる。
うねるようにちらりちらりと動く光に私は目をこらした。確かにあそこには何者かが在る。じっと見続けるとこれまでにない直感が
私を襲った。
 目が合った、と思った
 その瞬間、私はその魚を追いかけなければならないと感じた。あの伝説は本当だろうか。こちらを見たのは
深海の住人と成り果てた彼女ではないだろうか。ゆかなければ、確かめなければ。私は海に足を踏み入れようとした。
 だがその必要はなかった。光る鱗が走った。一直線に私のいる岩へと。
 その速さに恐ろしさを感じたが、目を離せず逆に身を乗り出した。やはりそうなのか、と思うのと同時に水が弾けた。
 眼球に痛みが走り、私はしばしうずくまった。

 目が元に戻った頃には既に海面はいつもの黒々とした様子を見せていた。先ほどのは魚かイルカが悪戯でもしたのだろうか。
 しかし馬鹿げた心持ちになったものだ。あの冷たい海に身体を投げ入れるところだった。
「仕事、さがさなくちゃな」
 私は呟くと立ち上がった。濡れた岩に滑らないよう足を運ぶ。もう慣れた道ではあったが安心できる道というわけでもない。
 すると正面からゆらゆらと蛍火がこちらに向かってきた。目を凝らすと暗闇にぼうっと浮かび上がるように男の姿がみえる。
近づくにつれだんだん姿がはっきりとしてくる。地元の男だろうか、小柄でもう壮年といったところか。髪はほとんど色が抜けて白かった。
 すれ違うときになって軽く会釈した。この先にあるのはあの岩礁だけだ。
 彼は何度もここに通っているのだろう。私もきっとまたここに来るだろう。
(終わり)

958 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 22:17:35 ID:t/p9aKmQ
>>954
おもろい。
何というか、自然な面白さがあるな。

>>956
何か、自業自得なんだろうけど、切なくなるな・・・

959 名前:極寒の地 音痴 朝一:2009/03/31(火) 17:38:36 ID:lumJjh/C
 ここは極寒の地、シベリア。ここで日本発祥の大イベント、コミケが開催されることになった。
それに真っ先に食いついたのがここに住むワトソンとイヴァンの男2人だった。
2人とも、生粋の「アニヲタ」という奴で日本へは年に数度訪れている。
しかし、2人はただのアニヲタではない。成田に降り立つなり、
現地での宿の手配より、食事より、何より秋葉原に向かうことを優先するほどのスーパーヲタクだ。
成りもライフスタイルもアニヲタのそれそのもので、彼らを白眼視しない人間はいない。
とにかくまあ、そんなアニヲタ2人は朝一でコミケ会場の前に来ていた。
しかし、ここは極寒の地シベリア。今日の最高、最低気温ともにマイナス二桁である。
いくら、シベリア生まれのシベリア育ちなシベリア人とはいえやっぱりこの寒さには耐えられない。
体を温めるウォッカも十二単よろしく幾重にも重ねたコートも寒さの味方をしてくれなかった。
「寒いな、イヴァン……」
「耐えろ、耐えるんだ。この向こうであのサークルさんの新刊や日本から来たフィギュアが待っているんだ…!」
顔を雪まみれにしながら、歯をガタピシ言わせながら、アニヲタ2人は寒さに耐える。
とにかく耐える……。
耐えるったら耐える……。
「駄目だ…俺はもうここまでだ。なんだか眠くなってきた…。ああ、向こうに俺の嫁がワンサカ…。
つかさたん、今行くからね……ハァハァ」
ワトソンは至福を絵にかいたような表情でゆっくりと目を閉じる。
「ばか〜!眠っちゃだめだ!ここで寝たらあのサークルさんの新刊や日本から来たフィギュアを見る前に死んでしまうぞ!」
そんなワトソンをイヴァンは往復ビンタで叩き起こした。
「はっ……!そうだ、俺はまだ死ねない!死ぬわけにはいかない!ここで死んだらもうコミケにも秋葉原にも行けない!」
「そうだ、友よ!そうだ。歌を歌おう。歌えば寒さも吹き飛ぶはずだ!」
かくて2人は歌い始めた。大声で、高らかに。
某月ごとに歌い手が変わる31人の女子生徒が出てくるアニメの主題歌、
某魔法というより、魔砲少女なアニメの第2期の主題歌、
某ゆるゆる女子高生アニメの主題歌……。
2人は寒さを忘れ、ヒートアップした。特に某EDのダンスが印象的なアニメの曲では振り付きで熱唱。
それにしてもこのアニヲタ、ノリノリである。
しかし、彼らの最大の弱点。それは「音痴」だった。おまけにそれに気づかないもんだから救いようがない。
Wジャイアンっていうレベルではない。
そんな2人の酔狂は警備員からつまみ出されることで幕を下ろしたのである。

教訓・列に並んだら、静かにしましょう。


960 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 17:39:18 ID:lumJjh/C
あげてしまいました。
すみません……。

961 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 18:13:41 ID:mLhksYv7
ちょっと待てw

962 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 18:26:08 ID:lumJjh/C
>>961
アッー!
2度あることは3度ある…。

963 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 18:52:32 ID:mLhksYv7
ああいやいや、SSの感想だよw

964 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 19:56:53 ID:bRyg0Bwi
ワロタwww
レスでコントすんなwww

965 名前:創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 20:21:02 ID:+taprBur
なんかアメリカの実写コメディドラマチックな絵が
目の前に浮かぶような感じでワラタwww

966 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:58:30 ID:4m+r+oLf

「極寒の地」「音痴」「朝一」


「兄、起きて」
 ゆさゆさと揺さぶられるにつれて徐々に頭がぼんやりと覚醒してくる。
 ベッドの横のカーテン越しに感じる空の明るさから、今は未だ普段起きている時間より
だいぶ早いのではないだろうかと考えた。
 だったらまだ寝てたっていいじゃないか。
 寝ぼけた頭は欲望に忠実な結論を出しずれていた布団を頭まで被った。
 すると大きな溜め息とともに揺さぶっていた手は離れる、よし諦めたか。
 一安心して惰眠をむさぼろうとした瞬間、どすりと思わず胃の中身をぶちまけたくなる
ような衝撃が腹部に走った。
「ぐぼぁ!?」
 思わず飛び起きると布団越しのちょうど腹の中心当たりに華奢なかかとがめり込んでい
た。
 なんてこったい、朝からかかと落としとはヘビーすぎるぜ。
「げほ、ぐほっ」
「おはよう」
 咳き込んでいる兄のことなど一向に心配する様子も見せずに淡々と朝の挨拶をされた。
「じゃ」
 そしてそのまま踵を返す。
 見慣れたパジャマ姿は大変よろしいがここまで素っ気ないと萌える暇もありゃしない。
「待てぃマイシスター。何でお兄ちゃんはこんな朝早くに起こされちゃったのかな?
 ん? 怖くて一人でトイレに行けないから着いて来て欲しいというのなら全力でお供す
るぞ」
「にわか知識で得た龍の鱗を砕く槍術の練習をするから朝一で起こせって言ったのはそっ
ち」
 心の底から妹に面倒くさそうな顔をされた気がしたのはきっと気のせいだ。
 まぁそれが事実だったとしても可愛いから許す!
「んなこと言ったか?」
「滅べばいいのに」
 普段から冷たいマイシスターの視線がなお冷たい。心なしか部屋の気温も下がったよう
な気がする。
 ベッドの上にいるのに極寒の地にいるような居心地だ。
 ここは前向きにこんな経験が出来る俺って超素敵って思うことにしよう。ひゃっほう。
「すまないマイシスター。俺の記憶はミジンコ並みなんだ」
 頭の中身が暖かくても仕方ないのでベッドの上で土下座をかます。
 だが想像したように頭を踏みつけられることは無かった。
 別に期待してたわけではないので大丈夫。想像しただけだ。
「つくづく救いようのない」
 その発言に想像を見透かされたのかと思ってちょっとひやっとした。
 さすがに頭の中を見られたとなるともう自決するしかないので、おそらく土下座をした
ことか自分で記憶力をミジンコ並みだって認めたかのどっちかだと思うことにする。
 その両方ってことはないよな?

967 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:59:19 ID:4m+r+oLf
「はい」
 冷や冷やしていると目の前に差し出されたのはマイクスタンド。長い首部分に三つに分
かれた足が着いてるやつだ。
 土下座をやめ棒状のそれを手に取り軽く振り回すとマイシスターは露骨に不快そうな顔
をした。
 これでエロゲソングを熱唱しろと言うことか! だが俺は音痴なんだ、残念なことに!
 仕方なくマイクスタンドを握りしめ己の欠点に悶えていると重要なことに気付いた。
「これマイク着いてないぞ」
「槍の替わりにするってマイクを外したのは兄」
 昨日の俺はどうかしていたに違いない。なんかそんな気がしてきたけどまあいっか!
 俺は黙ってマイクスタンドを脇に置いた。
「なぁその兄って呼び方やめないか? どう聞いても『あれ』とか『これ』とかの替わり
に使ってるように感じるんだ」
 そんなことはないとこの兄はかたくなに信じてはいるが。
 可愛いマイシスターを見ているとそんな気がしてきて困る。
「当たり」
「肯定するなんて! 俺は悲しい! 兄さんでも兄ちゃまで兄貴でもなんでもいいからも
うちょっと愛を込めて呼んでくれ!」
 個人的には兄やも捨てがたい。
 というか愛情があるなら基本なんでもオッケーだ。よし俺ってば懐広くないか。
「じゃあ兄」
 しれっと、いつも通りの淡々とした様子で応えるマイシスター。
「元に戻っとるー!?」
 盛大に叫んでのけぞるとマイシスターは無言で耳をふさいでいた。
 その慣れた様子にちょっと嬉しくなる。
 ふふ、ここまではいつも通りだなマイシスターよ、手慣れた会話が心地良いぜ。
「戻るも何も変わってない」
「愛は?」
 恥ずかしさからかマイシスターは苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「元から無い。むしろ現在マイナス」
「今後の可能性は!?」
「今この瞬間に摘み取られた」
 そう言うと疲れ果てたような溜め息をついたマイシスターは静かに俺の部屋を出て行っ
た。
 時計を見ると午前五時四十五分を差している。
 今日もマイシスターに兄への呼び方を変えて貰おう作戦は失敗に終わった。
 だが俺はまだまだ諦めないぞ!

終わり

968 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 02:02:52 ID:r+LE1hUN
なんて…なんてダメな兄なんだ…w

969 名前:「極寒の地」「音痴」「あさいち」 1/2:2009/04/05(日) 04:47:05 ID:L0ue9rA6
 かじかんだ手に吹きかけた息は白くもうもうと空へ吸い込まれていく。
 その様子を目で追いかけ、この湯気が雲になり故郷の街まで飛んでいくのかなと考えてみたが、そんなは夢見がちなことではと思い直し、くすりと笑いが漏れが。
 先ほどから聞こえていた、甘く落ち着いた少女のハミングは小笑いと同時に消えていた。
 なぜ止めてしまったのか不思議に思い、少女へ振り返る。
「私の吐息は宙を昇り〜雲へ姿を変えるでしょう〜」
 ハミングではなく言葉を乗せて歌っていた。
 しかし、すさまじく崩壊した歌声で。
 その歌があまりに酷く、また、自分の考えていることを読み取られてしまいあっけに取られ、少女をじっと見つめていたようだ。
 こちらを一瞥した彼女は恥ずかしそうに俯いた。
「ごめんなさい。音を言葉にすると、声の均整が取れなくて……」
 朝の静かなこの時間でなければ聞き逃しそうなほどに小さな声で呟く。
 この少女はそんな悩みを抱えてこの私へと手紙を遣した。
 これまでにたくさんの音楽の悩みを聞いてきたがこれほどに難解な案件は初めてで、正直どのようにして解決すべきかと、ここ昨夜一晩頭をかかえた。それほどに酷い。
 だが、ハミングは非常にきれいで、小鳥のさえずりのような優しく暖かい声が、まるで氷を打ったように周囲の空気に響く。
 志あらば、街で歌手として成功することすら難しくないであろう才能だ。
 まあ、依頼とは言っても歩合制なので、この仕事はキャンセルして次の仕事に移っても構わないが、彼女の声は放って置けないほどに魅力的だった。
「ハミングはこの澄み切った空気の様にきれいだ。」
 その言葉で少女は少し顔を上げた。
「だがしかし、言葉を発するとどうも酷すぎるな。」
 少し上がった顔はすぐに下を向く。
「心配は要らない。きっと言葉に重きを置きすぎなのだろう。まずは言葉への苦手意識を消そう。」
 そう言ってハミングから次第に「a」の発音へ切り替えるように指示を出した。
 少女が腹に両手を当ててハミングを始めると、広い雪原にあの甘美な響きがこだまする。
 「ふ」とも「う」とも「ん」とも聞こえるようなハミングの曖昧な発音が、はっきり「あ」と分かるように変化してくる。
 そのまま大きく口を開いていくように指示を出すと、それは見事な「あ」の発音になる。
 少女の目の前で軽く握り拳を作ってやり、発音を止めるように指示する。
 声を止めた彼女は、一面の雪に花が咲くのではないかと思うほどの笑顔で喜びを表した。
「できたっ! できましたよ! 先生、できました!」
 その笑顔に嬉しくなり自然と拍手をしていた。
「後はその応用だ。言葉を意識するのではなく気持ちを意識すれば、自然と歌に言葉が乗るはずだ。」

970 名前:「極寒の地」「音痴」「あさいち」 2/2:2009/04/05(日) 04:47:58 ID:L0ue9rA6
 その後の彼女は水を得た魚のようだった。
 日が昇りきる頃にはこの国で必要とされる発音の全てを歌に乗せられるようになった。
 さらに練習は続き、ついには童話を歌うことに成功した彼女が、
「レッスンの最後に、即興で歌います。聞いてくれますか?」
「もちろん。上達っぷりが楽しみだ。」
 それを聞いてにっこりと微笑んだ彼女は五歩ほど距離をとると、スカートの両端をつまんでお辞儀をしてみせる。
 一人分の拍手が雪の海に吸い込まれていき、風が耳の横を通る時の小さな音だけが聞こえる。
 すぅっと冷たい空気を彼女が吸った。
「私の吐息は宙を昇り 雲へ姿を変えるでしょう
 ゆたりゆたりと空を流れ 見たことのない街を見下ろし
 たまには見上げられながら ゆたりゆたりと流れ行く
 どこか遠くの知らない人と 出会うことに似ているようね
 私もそこへ行ってみたい 雲に掴まり行ってみたい」
 まだまだだ。
 まだまだ発音に拙い部分は残されている。
 しかし、聞き終わったあとのこの清涼とした気持ちは何だろう。
 歌を聴いただけで、これほど胸のすく思いをした経験は片手で数えるほどしかない。
 そんな気持ちを隠さず全て少女へと打ち明けると、少女は口を押さえて涙をこぼした。
 これほどの実力ならば声楽専修学院への編入も夢ではない。
 いや、今いる学院の生徒で彼女の実力に及ぶ者はいないはずだ。
 未だに泣き止まぬ少女の柔らかく濡れた頬に手を当てハンカチで涙をぬぐってやり、自分の名刺と、それと同じ大きさの推薦状との両方を手渡す。
「気が向いたらで、構わないが――――」
 二枚の紙切れを見た少女は始め何か分からない様子だったが、そのプラチナチケットの意味を理解して声が上ずるほど驚いた。
「これっ……! 本当に…………?」
 信じられないといった様子で何度も確認を取ろうと質問する彼女に全てイエスだと答える。
 三回ほど言って聞かせたところでやっと信じてもらえた。
 感激のあまり呆然とした少女が手元の二枚を見つめる。
 そして、はっとなり元気な声で、
「ありがとうございます!」
 少女はもう一度、頬を濡らした。


-------------------------------------------
眠くて推敲と校正がままならない…
あとは…まかせた……

971 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 18:02:04 ID:Seyb3PBY
お、これは続くのかな?
これから物語が動き出す気配がして、続きがすごく見てみたい

972 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 23:48:46 ID:Rmoh3a0b
続きが気になる

973 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 06:01:34 ID:O6M5dz4A
あさの空気の感じがきもちいいわ。そしてこの先は波乱万丈ぽい


そろそろクレクレ
つか次スレかこんどは

974 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 16:20:50 ID:1AomaQ72
テンプレとか新しくすべき?

975 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 16:31:03 ID:9C4KuusK
今小説だけ参加可能だから次スレからは絵とかもおkにして欲しいかも
アルパカ祭もあったし絵の参加があってもおもしろそう

976 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 21:50:30 ID:pNOtpXtV
三題含んでたらなんでも有り、という認識に既になってたぞw

テンプレは変更しといた方がいいな。

977 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:49:25 ID:O6M5dz4A
・・・
三つのお題をすべて使って創作するスレです。

創作ならなんでも可。
折を見て新しいお題を出し合います。
過去のお題の投下もどうぞ。
・・・

こんなんどうだろう
タイトル、SS以外も入りやすいように三題創作とかにした方がいいのかな。
「三題噺」って字の雰囲気好きなんだけど

978 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 22:58:05 ID:BDK4JgYM
あー絵とか歌もありなのか
それいいなあ。賛成賛成

979 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:04:26 ID:1AomaQ72
スレタイは三題噺でいいとおもうな
どうしてもっていうなら【】でなんかつけるとか

980 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:08:22 ID:c1mS2CUR
案出ししてみる
【三題含めば】三題囃2【何でも在り】
テンプレ>>977で個人的には文句ナッシンです

981 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:08:26 ID:pNOtpXtV
俺の好きなパターンだと

三題噺噺

とやって、part数増えたら噺がどんどん増えていく、
というのがあるけど、まあスレ立てる人にお任せw

無難に

三題噺その2

とかのがいいかな。

982 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:10:21 ID:1AomaQ72
あわせわざでこんな感じか

【三題含めば】 三題囃その2 【何でも在り】


983 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:22:07 ID:YXG1EEIK
そのスレタイだと「創作物なら何でもOK」というのは伝わらん気がする。
「どんな小説でもOK」くらいに取られるんじゃないか?

984 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:24:32 ID:O6M5dz4A
【三題使って】三題噺その2【なんでも創作】

こんなんはどうだろう

985 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:26:12 ID:pNOtpXtV
まあ、その辺りで適当に、かな。



986 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:33:32 ID:O6M5dz4A
じゃ、立ててみる。

987 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:36:02 ID:O6M5dz4A
ごめん規制されてた。誰かお願い。

988 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:36:49 ID:1AomaQ72
んじゃいこか

989 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:38:30 ID:1AomaQ72
次スレだよー

http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1239028681/

990 名前:創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 23:39:50 ID:O6M5dz4A
>989
乙でやんす


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