エリクソン(1963)


エリクソン(1963)は、フロイト,ユングの継承者で,アメリカインディアンの子どもの研究から出発した。1950年代以降,青年期・成人期の研究に重点を移していった。そうした発達研究の基礎理論として構想されたのがライフサイクル論である。
それは,フロイトの心理・性的な発達理論に,ユングの考え,自我心理学の成果,社会的・文化的視点などを加えてさらに発展させたものである。
エリクソンはルター,ガンジーなどの伝記の研究によって,その発達理論を裏打ちし,
ライフサイクルやアイデンティティの考えの提唱者として,広く一般にも知られるようになった。
エリクソンは、人間の発達を自我の発達に焦点を置いて捉えた。リビドーの存在を認め,それが各器官に順次移行していくというフロイト理論に立脚しながら,このリビドーの高まりが自我の発達と内的に関連している点,および対人関係や歴史的・文化的環境が自我の発達に欠かせない点に注目した。

エリクソンは,これらの要点が、自我の発達にあらかじめ予定された課題(心理社会的危機)を設定していると考える。(自我は最初の課題を乗り越えなければ,次ぎの課題と取り組むことができない。)したがって,それぞれの課題は一つの段階を構成することになる。
自我の発達に関するこのような考えから,エリクソンはライフサイクルを八つの段階に区分している。

エリクソンの心理社会的発達の8つの段階


 エリクソンは人間の発達段階を8つに区分し,一つの段階から次の段階に移行したとき,個体と環境との関係から要請される発達課題を達成できるかどうかの緊張状態を「心理・社会的 危機」とよんだ。またエリクソンは「『危機的』というのは転機の特質であり、前進か退行か,統合か遅滞かを決定する瞬間の特質である」とも述べている。
各々の心理-社会的な時期において、子どもは周りの社会的関係に関して選択(決心)を迫られる事態に直面する。例えば、エリクソンのいう乳児期後期(自立性、対疑感)では、子どもが自立することを進められるならば自立感を発展させられるが、逆に発達課題には、ハーヴィガストが問題にしたような行動の形成と、エリクソンが問題にした特定の対象を中心とした人格、社会的行動の形成が考えられる。しかし、両者はともに諸課題は特定の事項に遂行されるべきであるとし、臨界期を指摘している意味で、発達を考えるうえで有意義な問題提示をしているといえるだろう。


りえ
最終更新:2007年11月13日 01:25