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玉手箱

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玉手箱◆EHGCl/.tFA



縦数メートル、横幅に至っては十メートルすら越えている馬鹿馬鹿しい程に長いテーブル。
やけに高い天井には映画に出て来るような、まさに豪華絢爛という言葉がぴったりなシャンデリアが三つ。
床にもこれまた高価そうな絨毯が敷かれており、壁には金色の額縁に入れられた風景画が何枚も飾られている。
廊下やここ以外の部屋はそこら中にひび割れがあったのに対し、この部屋にはそれらしき物は一切見受けられない。
古城一階にある大広間――そこには殺し合いの会場には相応しくない、ド派手な光景が広がっていた。

「すごぉい……」

そのド派手な装飾を見て感嘆の声を上げる者が一人、無言で観察を続ける者が一人――今現在、大広間には二つの人影があった。
その内の片方、透き通るような銀色の髪を持った小さな少女もとい人形が、パタパタと壁に走り寄り、しげしげと絵画を眺め始める。
その顔には何時もの人を小馬鹿にした笑みとは少し違った笑みが浮かんでいた。
そんな水銀燈の後ろ姿を無言で見詰めながら、もう片方の人影――ゼロはテーブルに同伴されている椅子に腰掛ける。

「水銀燈。はしゃぐのは構わないが、休める時に休まないと後々に響くぞ」

そして一言、呆れを含んだ言葉をゴスロリ人形に投げ掛けた。

「そ、そんなこと分かってるわよ。少し興味を持っただけじゃないのぉ」

その言葉に顔を赤くしながら、ゼロと一つ椅子を挟んで座る水銀燈。
ゼロは既にデイバックの中から支給された食糧を取り出し、仮面を少し持ち上げながら口にしている。
その光景はなかなかにシュール且つ怪しいもので、水銀燈は軽く引きながら自身の食糧を口へ運んでいた。

「……食事の時くらい仮面外せば良いじゃない」
「私もそうしたいところだが、立場上、信用しきれない相手に素顔を見せる事はできないのでな」
「いちいち言葉にトゲがあるわねぇ。乳酸菌とってるぅ?」

取り留めのない会話。
信頼を築くでも気分を和ませるでもなく、暇をつぶす為だけの会話。
だが何時しかそんな会話すらも途切れ、一人の人間と一体の人形は黙々と咀嚼を続けることとなる。
そして丁度彼等が食事を終えたその時―――二人にとっても聞き覚えのある一人の男の声が古城内に響き渡った。






(あらあらあらあら! 死んじゃったわねぇ、真紅のミーディアム! これで真紅の力は半減、アリスへの道が閉ざされちゃったわねぇ、真紅ぅ!)

ギラーミンが行った放送に水銀燈ははただひたすらに歓喜を覚えていた。
元々このゲームに水銀燈の仲間と呼べる存在は居らず、大切な人を失うという懸念も欠片もない。
ライバルが少しでも減っていればラッキーだと思いつつ、放送を聞いていた水銀燈であったが、それは予想以上の吉報を彼女に届けてくれた。

(ナナリーは無事か……)

対するゼロはその仮面の下で安堵の表情を浮かべていた。
この時ばかりは革命家・ゼロとしてではなく一人の兄・ルルーシュとして、ただひたすらに安堵を覚え、それと同時に、こんな殺し合いに愛しの妹を巻き込んだギラーミンに対する憤怒が湧き上げていた。

「今はまだ高みの見物を決め込めていれば良い……だが絶対に辿り着くぞ、貴様の元へ……!」

小さな、直ぐ側に座る水銀燈にも聞こえないような小さな宣戦布告。
ゼロの手は音を立てる程に握り締められており、震えている。
「ちょっと、押し黙っちゃってどうしたのぉ? もしかして大事な人が死んじゃったとかぁ?」

テンションがハイになっているからか、余裕を滲ませた表情で水銀燈は挑発的な笑みを見せる。
だがゼロはその言葉に返事をすることなく、水銀燈へと顔を向けた。

「食事は済んだか?」
「……つまんない男ねぇ……。ええ、済んだわよ。次は何処に向かうの?」

一つ頷き立ち上がるゼロ。
そのまま出口へと続く扉へ向かうのかと思いきや―――何故か机の側面へと回り込み、丁度真ん中の所で立ち止まる。
その不可解な行動を不審に思う水銀燈であったが、特に何も言わない。
取り敢えずゼロの言葉を待とうと傍観に務めていたのだが――、

「え?」

――次の瞬間、意味不明の事態が発生する。

まず最初に水銀燈が知覚したのは頬叩き付ける強烈な風。
同時にドグシャと何かが叩き潰れたような鈍い音が鼓膜を震わせる。
刹那に起きた突風と轟音。
ふと我に返ると視界の中の光景が一部変わっていた。
絵が飾られた壁、目の前に置かれた大きなテーブル、テーブルの側に立つ場違いな格好をした変態――先程まで見ていた景色はこうだった。
だが現在は違う。
絵が飾られた壁、床を覆う真紅の絨毯、そして片足を上げた状態で立つ変態……おかしい。
――テーブルは?
――大広間に入ったと同時に目に入った、あのどうしようもなく目立つ大テーブルは?
何かに思い当たったのか、水銀燈の顔がゆっくりと、まるでゼンマイ仕掛けの人形のように後ろへと向く。
そして水銀燈は見る。
見るも無惨な姿と化したグシャグシャのテーブルを。
石で出来ている壁にめり込んでいる木製のテーブルを。
ゼロに蹴り飛ばされ、壁に掛かっていた絵画ごと叩き潰された巨大なテーブルを。

「な、な、な、な、な、何してるのよ、アンタ!?」

ようやく自身を取り戻した水銀燈がまず行ったことは距離の確保。
警戒と共に羽を羽ばたかせ、自分の力を最大限に引き出せる中距離―――天井付近へと身を置く。
そして何時でも羽根を撃ち出せるよう待機し、ゼロを睨み付ける。

「まぁ落ち着け、水銀燈。お前は不思議に思わなかったか」
「何がよ! アンタの格好? さっきの行動? 全部意味不明よ!」
「……そうじゃない。この部屋についてだ」
「この……部屋?」

どうやら協定を反故にするつもりではないらしい―――ゼロの纏う空気や口調からそう読み取り、水銀燈は絨毯へと降り立つ。
とはいえ一定の距離は空けており、警戒も完全に解いている訳でもない。
攻撃、回避、逃亡……その全てを選択できる距離と心構えを持ってゼロと向き合う。

「……どういうことよ」
「何も分かっていないのか……まぁ良い、順を追って説明しよう」

そんな水銀燈を見つめため息を吐くと、ゼロはある箇所を指差した。
そのある箇所とは沢山の絵画が飾られた壁。水銀燈には何の変哲もなく見える壁であった。

「まず違和感を感じたのはこの大広間内の壁だ。古城内の壁にあったひび割れがこの部屋には無い」
「……それがどうしたのよぉ」
「次にこの装飾だ。不自然だとは思わないか? 地図には古城跡と記されているこの施設。
その名の通り内部は古ぼけていた。あるのはひび割れた壁と埃を被った調度品のみ、確かに古城と言うに相応しい。
だがこの部屋は違う。シャンデリアに絵画にテーブルに絨毯……全てが新品同様に輝いている。
そう、綺麗すぎるんだよ。他の箇所と比べ、この大広間はあまりに綺麗すぎる。まるで此処だけ新調されたみたいにな」

確かに一理ある―――辿ってきた古城の内部を思い出し、水銀燈はそう思った。

「でもそれが何だって言うのぉ? ただ単にギラーミンが気紛れでこういう内装にした可能性もあるじゃない」
「確かにその可能性もある……が、私にはあのギラーミンがそのような無意味な行動を取るようには思えない」
「実際そうなってるんだし、そうなんじゃないのぉ」
「そう、実際にこの大広間には手が加えられている。まるでここが特別な場所であるかのように、だ。
このような殺し合いを催すギラーミンが、本当に意味も無くこんな部屋を用意すると思うか?
この豪華な内装には何らかの意図が組み込まれている……そうは思わないか、水銀燈?」

言葉を紡いだままゼロは部屋の端へと移動し、足元の絨毯を掴む。
そして軽いジャンプと共に絨毯を思い切り引っ張り上げる。
それはただの絨毯ではない。大広間一体を覆う程に巨大な絨毯だ。
だが、ゼロの豪力によりそれは紙切れのように宙を舞う。
当然、絨毯の上に立っていた水銀燈は引っ張られる絨毯に足を取られ、その場に転び倒れる。

「煌びやかなシャンデリア、壁に掛けられた絵画の数々、巨大なテーブル……大抵の人間はそちらに目を奪われる。事実私もそうだったし、水銀燈もそうだった。
ならば、そこ以外のなかなか目に届き難い箇所……テーブルの下や絨毯の下はどうなっているのか――」

宙を舞う真紅の絨毯。
その下を悠遠と歩く黒き魔人。
仮面の下の二つの目がそれを捉える。

「―――答えはこれだ」

―――テーブル、絨毯、二重に蓋されていたその箇所に三つの穴が開いていた。
左側から大中小と大きさの違ったドーナツ型の空洞……そこには三つの『○』が存在していた。






「……別にテーブルを蹴り飛ばしたり、絨毯を投げ飛ばしたりする必要はなかったんじゃないの……」

顎に手を当て三つの空洞を観察するゼロの隣で、水銀燈は嫌みをこぼした。
先程転んだ拍子に頭をぶつけたらしく、細い両腕は頭をさすっている。

「水銀燈、これをどう思う?」
「どこからどう見ても『○』ねぇ……この『○』に何かはめ込むんじゃない?」
「お前もそう思うか……」

床に空いている大きさの別れた三つの空洞。
取り敢えず、水銀燈とゼロの手持ちの道具にはハマりそうな形の物はない。

「そもそもこの『○』に何かはめ込んだとして何が起きるのよ」
「それは分からないが……少し此処を読んでみろ、ヒントらしきものが書いてある」
「『力が欲しければ戦いの証を一つ提示せよ』……? どういう意味よこれぇ?」
「『戦いの証』という物が何かはまだ特定できないが、その『戦いの証』をこの『○』にはめ込めば何らかの『力』……武器か何かが出て来るのだろう」
「……罠の可能性はぁ?」
「皆無とは言えないが限りなく低いだろうな」

観察を終えたのか、ゼロはその言葉を発すると同時に立ち上がり、大広間の出口へと歩いていく。

「ちょっともう出ていくの!? この仕掛けはどうするのよ!」
「私達の持ち物には『○』型の物など無い。つまり、今の時点ではその仕掛けを作動させるには至らない訳だ。
動かせもしない仕掛けの前で無意味に時間を浪費するのなら、他の行動を取った方がずっと有意義だと思うないか?
ここには、その『○』にはまりそうな物を発見した時にでも戻ってくれば良いだろう」
「そ、それはそうだけど……」

そのままスタスタと大広間から歩き去るゼロを、水銀燈は腹立たしげに睨み付け、そして自身もその後を追っていく。
この大広間の一件を通し、彼女の中でのゼロの評価は著しく上がった。
たった十数分の間にこの隠された仕掛けを発見したのだ。
ゼロの頭脳、考察力、推理力、観察眼が常人離れしている事は水銀燈も認めざるを得ない。
だがそれと同時にゼロに対する苛立ちも増加していた。
化け物のような戦闘力、ずば抜けた頭脳、死の恐れなど微塵も感じさせない不遜な態度……全てに腹が立つ。

(いつか絶対に殺してやるんだからぁ……!)

殺意すら込められた水銀燈の視線。
その先には悠々と古城の出口へと向かうゼロの姿。
水銀燈の視線を気に止める様子すらない。
その態度もまた水銀燈の苛立ちを高めさせるのだが、ゼロにとってはどうでも良いことでしかなかった。
ゼロは歩を進めたまま、ある事柄に対する思考を始める。

(『○』、か……。大体の予想は付くがな)

思考の内容は先程見つけた窪みについてであった。
―――大中小と連なる三つの『○』。
―――窪みの下に記されていた『力が欲しければ戦いの証を一つ提示せよ』の一文。
様々な情報を脳内で整理し、ゼロはほんの十秒で結論を導き出す。

(……首輪、だろうな)

自身に装着させられた首輪に触れ、ゼロは小さくため息を吐く。

(『戦いの証を一つ』ということから『戦いの証』が複数あるのは読める。
そして三つの穴があるのに提示すべき『○』は一つ……これは大中小と大きさが変わっている以上、その『戦いの証』にサイズのバラつきがある事を示している。
この会場に複数あり、ドーナツのような『○』型、そしてサイズにバラつきがある―――私が知る中では首輪しかない)

トントンと指の先で自身の首輪を叩くゼロ。
ゲームが始まり相当な時間が経つというのに未だ馴れることのない首輪の感触。
引きちぎりたくなる思いを押し込め、ゼロは歩く。

(……とはいえ首輪以外の『○』型が当てはまらないとも限らない。やはりまだ推測の段階だな……。
それにこれらのヒントは全てギラーミンから与えられたもの……いまだギラーミンの掌の上から出るのは難しいか……)

未だ絶対的な立場からゲームを支配するギラーミン。
その憎々しい顔を思い出し、ゼロは小さく歯軋りを鳴らす。
―――妹の守護と主催者への反逆を胸に、黒き魔人が再び会場に舞い降りた。
―――虎視眈々と優勝を狙う仮初の仲間と共に、ただひたすらに邁進する。



【A-2 古城跡/1日目 朝】
【ゼロ@コードギアス ナイトメアオブナナリー】
【状態】:健康
【装備】:大戦槍@ワンピース
【道具】:基本支給品一式、強力うちわ「風神」@ドラえもん、MH5×4@ワンピース
【思考・状況】
1:ナナリーの捜索。そのために情報を集める。
2:ナナリーの害になる可能性のある者は目の届く範囲に置く、無理なら殺す。
3:中心部を目指す。
4:『○』に関しては……
5:ギラーミンを殺して、彼の持つ技術を手に入れる。
6:自分の身体に掛けられた制限を解く手段を見つける。
【備考】
※都合が悪くなれば水銀燈は殺すつもりです。(だがなるべく戦力として使用したい)
※ギラーミンにはタイムマシンのような技術(異なる世界や時代に介入出来るようなもの)があると思っています。
※水銀燈から真紅、ジュン、翠星石、蒼星石、彼女の世界の事についてある程度聞きました。
※ナナリーの存在は水銀燈に言っていません
※会場がループしていると確認。半ば確信しています
※古城内にあった『○』型のくぼみには首輪が当てはまると予想しています。

【水銀燈@ローゼンメイデン】
【状態】:健康、服に若干の乱れ
【装備】:卵型爆弾@バッカーノ、チェスの長メス@バッカーノ
【道具】:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
【思考・状況】
1:優勝を狙う。
2:しばらくはゼロと組んで行動する。
3:『○』についてはどうしようかしら……。
4:守るべき者って……バカバカしい。
【備考】
※ナナリーの存在は知りません
※会場がループしていると確認。半ば確信しています


※古城内の大広間に『○』型のくぼみがあります。このくぼみに何が当てはまるかは不明です。




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