〈会計士〉

名称:〈会計士〉
呼称:《かいけいし》
大分類:ロール系

◆解説

 〈会計士〉は、経理と財務の専門家であることを示すサブ職業である。
 戦闘や生産活動にはほとんど役に立たない代わりに、特殊な計算機能を使用できる、銀行の利用に恩恵が得られるといった、一風変わった特徴を持つ。とはいえ、〈会計士〉の特徴は、ゲームの攻略そのものには直接貢献しないために、一般的には「いれば便利だがいなくてもあまり問題はない」という評価であり、保有者が限られる傾向にあるサブ職業であった。
 原作『ログ・ホライズン』では、〈三日月同盟〉のヘンリエッタや〈記録の地平線〉のトウヤが、このサブ職業の持ち主である。二人は、ギルド施設維持におけるメンバーの経済的な負担を減らすべく〈会計士〉を選んだようだ。施設維持経費削減系の特技を持つサブ職業の中では最も転職が簡単なため、彼女らと同じように節約目的で〈会計士〉を選ぶプレイヤーは一定数、存在した。


◆〈セルデシア〉における〈会計士〉

 〈セルデシア〉における〈会計士〉は、経理に携わるエキスパートである。大規模な取引を扱う大商人に雇われているか、大きな領地を管理する貴族お抱えの官吏となるかのいずれかが、一般的な〈会計士〉の立場だ。言い換えれば、セルデシアの経済規模において、〈会計士〉の職能を求められるのは、国家財政分野と、ごく一部の大規模商取引くらいのものなのである。
 このため、一般的な〈大地人〉にとって、〈会計士〉は、基本的にどこかの国の大臣や大商人の部下、身分の高い行政官とほぼ同じ意味だ。そこらの村や町で〈会計士〉が常駐していることは、まずないだろう。
 〈大地人〉の〈会計士〉の主な仕事は、徴税だ。領地の街や村を巡り、検地をしたり、どこの家には家族が何人いて、生業が何だから収入はどれだけ見込まれて、といった基礎情報をとりまとめ、税率から取り立てるべき額を弾きだして請求する。複雑な計算を大量に、迅速に行う必要性の高い税関係の実務に、〈会計士〉の力が必要というわけだ。
 それ以外にも、騎士団の兵站に関わる事務など、複雑かつ大量の数字を扱う分野でも、〈会計士〉は重宝される。経験を積み高位の役職に出世した〈会計士〉ならば、領地や国家の財政計画や、公共事業の立案といった行政の中枢に携わることになる。大きな領地を抱える貴族にとって、有能な〈会計士〉を召し抱えることは、領地の安定に向けた第一歩なのだ。
 そんな重要な役目だけあって、〈会計士〉として取り立てられるのは難しい。汚職で私腹を肥やすことも可能な立場でもあることから、能力だけでなく清廉な人柄であることも求められる。まさに、一握りの人間しか〈会計士〉にはなれないのである。
 なお、地方の青年が勉強の末に貴族の〈会計士〉登用試験に合格して役人になる……というのは、ヤマトにおける出世の1つのパターンだ。特にマイハマの登用試験は、セルジアッド候の質実剛健な気風を反映してか、身分を問わず受験が可能で、遠方からはるばる立身出世を目指す若者が集う。
 狭き門を突破したエリートたち。それが、セルデシアにおける〈会計士〉なのだ。


◆ゲーム時代の〈会計士〉

 〈エルダー・テイル〉における〈会計士〉は、5番目の拡張パック〈ムーンクレスタの宝珠〉において実装されたサブ職業だ。主に生産システム周りの大幅な改定がなされたこの拡張パックでは、ゲーム内での商取引やアイテム流通の複雑化等に対応する施策として、一つの拡張機能が追加された。それが「電卓(計算機)機能」であり、この機能に接続対応して実装された新たなサブ職業が〈会計士〉である。ちなみに、この拡張において他にも〈交易商人〉などの商取引に関わるいくつかのサブ職業にも類似の拡張機能が実装されている。
 文字チャット画面で利用可能なこの計算機能は、特定の計算式や関数を入力することで自動計算が行えるものである。また、ゲーム内で別ウィンドウを展開し、簡単な表計算をすることもできた。この計算機能はゲームシステムと直結しており、ゲーム内の商取引にそのまま使える。たとえば、計算して算出した金額をそのままクリック一つで支払ったり、自動露店の売り上げを管理したりといったことができたのだ。
 ほかにも、支払いに関する会計処理の自動化、マクロ設定も可能である。「毎月の月末にギルドメンバー20人の口座に200Gずつ振り込む」というような設定を行い、自動引き落としで処理ができるのだ。手作業ではミスやトラブルが頻発するこうした手順が省略できることは、特に大人数でお金をやりとりする頻度の高い大手ギルドにとっては有益だった。
 また、〈会計士〉のもうひとつの能力に、「銀行口座の直接利用」がある。これは、わざわざギルド会館の窓口まで行かなくても、その場で直接銀行の機能の一部を利用できるというものだ。窓口にいかずとも行えるのは支払いに関する操作で、口座からの支払い(口座引き落としや、別の誰かの口座への振り込み)などが〈会計士〉ならばどこでも行える。ただし、直接利用可能なのはあくまで支払いに関する操作のみで、現金を直接引き出す、預けるといったことは不可能だ。手持ちの現金を直接増減させることはできず、あくまで銀行の中で完結する行為を、銀行外でも行うことができる、というわけだ。
 その他、ギルドハウスや購入ゾーンの維持経費削減能力など、〈会計士〉には「大手ギルドにとっては一人はいてくれると便利」という特技が揃っている。逆に言えば、少人数で遊ぶなら、〈会計士〉の利点はあまり実感しにくいということでもある。また、戦闘系ギルドには、レイドが終わったらその場で今回得た報酬や戦利品を分配する、という大雑把なやり方を採っているギルドも多く、そうしたあまり細かいお金のやりとりや商取引をしないギルドにとっては無用の長物
と化してしまう。
 特色である計算機能も、手元の電卓や、〈エルダー・テイル〉とは別に起動した専用の表計算ソフトがあれば事足りてしまうという身も蓋もない現実もあって、〈会計士〉は存在こそ知られているものの、その需用はごく一部に限られる、人口が少ないサブ職業というのが〈エルダー・テイル〉での評判だった。
 〈会計士〉への転職は、貴族の治める都市で官吏の登用試験に関するクエストを受け、合格することで行える。なお、このクエストは受験する試験の種類や行動などによって、〈会計士〉以外にも〈学者〉など他の学術系のサブ職業に転職することもできる。この官吏登用クエストは戦闘が不要でレベル制限もなく、ゲーム開始から最序盤から受けられるものであるため、〈会計士〉への転職難易度は低い。


◆〈大災害〉後の〈会計士〉

 〈大災害〉後も、〈大地人〉社会における〈会計士〉は、以前と変わらずに政治経済の基盤を支えている。〈大災害〉後の混乱と、その後の〈冒険者〉との連携は経済に少なくない影響を及ぼしたが、彼らの仕事の質に大きな変化が起きたわけではなかった。
 一方で、〈冒険者〉の〈会計士〉は、若干その数を増やしている。〈大災害〉後も〈会計士〉の計算機能や銀行の直接利用などの能力は健在であることが確認された一方で、ゲーム時代と異なり、手元の電卓や別ウィンドウで起動した表計算ソフトで計算処理を済ませることができなくなってしまったためである。
 実際アキバでも、生産系や商業系のギルドの運営や大規模な取引に関わる者や、〈円卓会議〉の事務職員などが、紙とペンと算盤を使った原始的な事務処理の作業量や負担に耐えきれずに〈会計士〉に転職するケースが発生している。
 とはいうものの、〈会計士〉になれば面倒な事務処理が一気に簡単になるかというと、そこまで甘い話ではない。〈会計士〉の計算機能はあくまで本人にしか見えないウィンドウ内でしか行えず、その過程や結果を印刷して他人に見せるようなことはできないのである。結局、記録を残して他人に伝えようとするなら、手書きで書類を作らなければならないことに変わりはないのだ。
 原作『ログ・ホライズン』の主人公シロエも、こうした背景から〈会計士〉への転職を真剣に検討した苦労人の一人だ。現在のサブ職業である〈筆写師〉も書類の複写という意味で事務に役立つこと、そして、彼の切り札の一つである〈契約術式〉の存在もあって現状維持を選んでいるが、もしも彼が元々別のサブ職業であったとしたら、〈会計士〉シロエが誕生していた可能性は高いだろう。彼に限らず、〈大災害〉後に有効性が明らかになっても、元のサブ職業との兼ね合いで選択を悩む者は多い。
 多くの場合、〈会計士〉が計算能力で試算できることは、手計算でも対応可能だ。だが、とても手計算では及ばない分野がある。それは、大規模な事業計画や長期的なシミュレーションである。「今後毎年、要因Aが×%、要因Bが○%ずつ変動する場合、今後50年で結果はこう推移する」というような複雑な計算を、〈会計士〉の表計算は瞬時に行える。さらに、一度計算式を作ってしまえば、条件を変えた場合の再計算も、予測期間の延長も、タッチひとつで思いのままだ。これを手計算でひとつひとつ行おうとすると、途方もない労力がかかり、精度も下がる。たとえば「今後20年間における〈大地人〉人口の増減や経済規模の推移の予測(〈冒険者〉が亜人討伐を行う場合/行わない場合)」などといったレベルの試算を本格的に行うことになれば、〈会計士〉の能力なしに取りまとめることは難しいだろう。
 今のところ、〈円卓会議〉などでもそこまで大規模かつ長期の事業計画が立案される予定はないので、まだあまり気づかれていない利点だが、セルデシアでの生活が長期化するにつれ、やがてその潜在能力に着目する者が現れることだろう。


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最終更新:2022年12月25日 16:10
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