〈追跡者〉

名称:〈追跡者〉
呼称:《ついせきしゃ》
大分類:ロール系

◆解説

 〈追跡者〉とはその名の通り何かを追いかけること、隠された何かを探し出すことに長けたサブ職業である。
 〈エルダー・テイル〉初期の拡張パックでミニマップ機能の拡張要素とともに追加実装された比較的古参のサブ職業であり、ミニマップ機能と連動してNPCの居所を突き止めたり、隠された情報や秘密を探し当てるための様々な能力に加えて、隠密行動などに長けている。これらはクエスト進行に便利な能力ではあるが、多人数が取得してもメリットが薄く、また戦闘などには直接貢献しにくい能力であるため、知名度や需要の割りに、実際に職についている人数はそれほど多くない。単独行動に向いた能力がそろっているため、ソロプレイヤー向けのサブ職業として定着している。


◆セルデシアにおける〈追跡者〉

 〈セルデシア〉において、〈追跡者〉は諜報活動の専門家として知られる職業だ。
 同様の性質を持つ職業としては〈密偵〉〈探偵〉といった職業も存在するが、〈追跡者〉は国家組織などとは無縁の中立的な立場の技術者集団というスタンスであり、〈密偵〉のように自分の仕える主のために情報操作や隠蔽、偽情報の流布などの工作を行うようなことはないし、はたまた〈探偵〉のように法や正義、己の良心といったものに従って悪事や不正を告発したり、事件に直接介入するようなこともない。あくまでも「正しい情報を調べて、依頼と報酬に応じて提供する」という裏社会の情報屋、情報のプロフェッショナルという立ち位置にいる職業だ。彼らが得てくる情報は正確であり、虚偽や間違いがないというのが〈追跡者〉の扱う情報への評価であり、また彼ら自身の矜持そのものでもある。
 〈追跡者〉に寄せられる依頼は多岐にわたり、それらはことの善悪や勢力に囚われない。たとえば役人の不正の証拠であったり、ライバル商人の次の売り出し品であったり、場合によっては依頼者と敵対する他勢力の諜報員の所在だったりだ。〈追跡者〉たちは依頼と契約、そして己の信条に基づいてそれらの「隠された何か」を探り出し、持ち帰るのだ。
 そういった性質上、一般の〈大地人〉に広く存在を知られているような職業ではない。情報屋として知られているというのも、あくまで〈追跡者〉を利用する機会のある立場(貴族や役人が情報収集のために彼らを雇うことは珍しくない)にあるものや、裏社会に通じた者、そして〈冒険者〉といったところだろう。
 普通に生活している〈大地人〉にとっては無縁ともいえる彼らだが、どうしようもなく追い詰められてしまったときの「最後の手段」として、一般人が裏社会を通して〈追跡者〉に接触することもある。たとえば「家族が誘拐された」「盗まれた品物を取り返したい」などといった状況では、〈追跡者〉の力はとても頼りになることだろう。
 中立的立場である彼ら〈追跡者〉だが、それぞれが完全に独立して活動しているわけではない。隠された情報を扱う技術者組織のひとつとして、裏社会にその名を知られているのが〈闇鴉の巣(クロウネスツ)〉だ。勢力、陣営を問わず報酬しだいでどんな情報も入手するプロフェッショナル集団であり、その頭目である片目の老ヒューマン「鷹目のゴルドー」は、その異名にたがわぬ腕前と、ヤマトでもトップレベルの情報網を持つ。後述する転職クエストや、その他数々のクエストで〈冒険者〉とも接点の多い人物だ。
 〈闇鴉の巣〉は表だって存在する組織ではないが、ヤマトの〈大地人〉の中には「大鴉の風切羽を軒先に吊るすと鴉が夜に取り返しに来る」という言い伝えがあり、迷信に混ぜ込む形で組織へのアクセス法が密かに流布されているようだ。


◆ゲーム時代の〈追跡者〉

 〈エルダー・テイル〉における〈追跡者〉は、初期の拡張パックによる大規模アップデート時に、ミニマップの機能拡張とセットで追加されたサブ職業のひとつである。画面上にプレイヤー付近の地形が表示される、いわゆる「ミニマップ」の画面に、より詳細な追加情報を表示できるようになる職のひとつとして追加されたのだ。こういったマップ機能拡張能力があるサブ職業としては他にも〈辺境巡視〉や〈斥候〉、〈地図屋〉などがある。例えば〈辺境巡視〉ならば周辺の偵察が可能な〈追跡者〉の類似能力を持っていたり、〈斥候〉や〈地図屋〉であればより詳細な地図情報がミニマップに表示されたりするようになっていた。
 〈追跡者〉はプレイヤーの周囲に存在するNPCやモンスターをリスト表示し、さらにその中から指定した特定のNPCやモンスターがどこにいるのか、ミニマップ上に矢印で表示するという追跡能力を持っていた。また、何らかの手段で隠れているNPCであっても居場所を看破し、発見することもできた。これはクエスト受注や進行のために会話しなければならないNPCの所在を、街の中を歩き回らずとも知ることができたり、「特定のモンスターを○○匹討伐する」というようなクエストを受けたときも、目当てのモンスターをあちこち探し回らなくてもよくなるため、クエスト進行には非常に役立つものだといえるだろう。
 しかし、〈エルダー・テイル〉はネット上に攻略情報が非常に充実していたゲームであったこともあり、クエスト進行においては〈追跡者〉の能力がなくとも、攻略サイトを参照することで十分対応可能だった。また、モンスターを探すという用途に限った場合でも、パーティーに一人いれば便利だが、複数いても効率が上がるわけではない能力であるため、有用性が知られていた反面、実際に〈追跡者〉の職に就いたプレイヤーは多くなかった。とはいえ〈追跡者〉は追跡能力以外にも隠密行動能力も併せ持っているため、単独での戦闘やクエスト進行を好むソロプレイヤー向けのサブ職業として一定以上の評価や人気を保持している。
 プレイヤーが〈追跡者〉に転職するためには転職クエストのクリアが必要だが、初期に追加されたサブ職業らしく転職条件は容易で、ゲーム開始とほぼ同時に転職することも可能だった。
 転職クエストでは、都市部のダウンタウンで孤児を集め隠密技術を仕込んでいる片目の老人を探し出し、入門クエストとして悪徳商人の調査依頼を受けることになる。このクエストは戦闘が発生しないため難易度こそ低いが、進行することで街を治める貴族も関与する大掛かりな陰謀が発覚し、このまま調査を進めれば貴族と敵対することになりかねない、という事態に発展する。この後クエストは3つに分岐し、「市民のために不正を告発し白日の下に晒す」と〈探偵〉に、「悪貴族の主筋にあたる大貴族の送り込んだ密偵と接触し、事件を隠密裏に処理する」と〈密偵〉に、「当初の依頼通りに情報を持ち帰り事件には関与しない」だと〈追跡者〉に転職可能となる。分岐の結果に応じてストーリー展開やクエストクリア時の老人の反応が変わるため、クエストを繰り返し、3つのルートを全てクリアするプレイヤーもいるようだ。


◆〈大災害〉後の〈追跡者〉

 〈大災害〉後、〈冒険者〉はミニマップ機能が使えなくなっているため、当然ミニマップ機能と連動している〈追跡者〉のキャラクター追跡能力も使用不可能になっている。だが、能力が完全に消滅したわけではなく、〈冒険者〉自身の感覚に置き換わる形でその恩恵を受けることができるようだ。例えば、名前や容姿、身に着けていたものなどの手がかりを元に「あっちの方角にいる(ような気がする)」程度には探知が可能だったり、隠れている対象の気配を感じたりなどだ。
 もっとも、〈冒険者〉自身の感覚となったことで、使いこなすためには〈冒険者〉自身のセンスや技量、そして経験といったものに大きく左右される。うまく使いこなせず、早々に他のサブ職業に転職した者もいれば、ゲームシステムの制約から解き放たれたことで「マップの機能拡張」の枠を飛び越えた応用能力に目覚めた者、併せ持った隠密能力を生かし、本職顔負けの諜報能力を発揮している者まで様々だ。
 また、〈冒険者〉〈大地人〉双方にかかわる大きな変化がひとつある。現在、〈追跡者〉(および、同じ転職クエストからの派生で転職可能となる〈密偵〉〈探偵〉)の転職クエストの基点となる片目の老人、「鷹目のゴルドー」が行方不明となっており、転職することが不能となっているのだ。
 これはなぜか? その原因はウェストランデにある。ゴルドーの持つ〈追跡者〉としての腕前、〈闇鴉の巣〉の情報収集能力、そして何より「優秀な諜報能力を持つ人材を増やす(転職させる)ことができる」ことを危険視した〈Plant hwyaden〉のインティクスによって、ゴルドーが拉致されたためである。彼女はまずゴルドーに対し秘密裏に接触し、莫大な資金とウェストランデ王朝の権力を背景にミナミへの臣従と、自身の部下のみを〈追跡者〉や〈密偵〉に転職させるよう要求した。だが、ゴルドーは特定の権力者の走狗となることを断固として拒否。その結果、強行手段としてゴルドーは拉致され、〈闇鴉の巣〉も解体、そのメンバーも相当数が消息不明という事態になったのだ。
 ゴルドーの失踪により、これまでのように〈追跡者〉に転職することは不可能となった。だが、それは〈追跡者〉への転職が絶対に不可能になったことを意味するかといえば、そうとは限らない。なぜなら、ゲームシステムの制約から解き放たれた〈大災害〉後の世界では、ゲーム時代のクエスト以外の手段で転職できる可能性があるからだ。〈追跡者〉としての技術や心得を誰かから伝授してもらうことができたならば、〈追跡者〉のサブ職業を得ることは不可能ではないはずだ。追っ手を逃れて潜伏している〈闇鴉の巣〉の生き残りや、他の諜報組織と接触することができれば、そこから新たな〈追跡者〉が誕生するかもしれない。もし、ゲーム時代の方法以外で転職を行う方法を発見することができたなら、それは偉業(そして新たな〈口伝〉の発見)として称えられることになるだろう。
 ゲーム時代に存在したクエストの消滅で転職が不可能になるケースは〈円卓会議〉でも把握しており、転職クエストの実態の調査やクエスト関係者の保護などの対処に乗り出している。アキバの〈冒険者〉にそういった調査や保護のクエストを依頼することもあるようだ。
 そう、〈追跡者〉におけるゴルドーの失踪のような事例は、他のサブ職業でも確認されており、またこれからも起こりうるのである。こうした「転職の起点となる人物」の保護や行方を探し出すことにこそ〈追跡者〉の能力が必要というのは、皮肉な話といえる。


タグ:

サブ職業
+ タグ編集
  • タグ:
  • サブ職業

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2022年12月23日 17:38
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。