〈料理人〉

名称:〈料理人〉
大分類:生産系

◆解説

 〈料理人〉は、素材アイテムから食料アイテムを作り出す生産系のサブ職業である。隣接、あるいは協力するサブ職業として〈農家〉〈漁師〉〈牧童〉のような素材生産に関わるサブ職業のほか、〈狩人〉〈採取人〉のような採取系サブ職業、〈醸造職人〉のような加工系サブ職業が存在し、協力して〈セルデシア〉の食事情を支えている。


◆〈セルデシア〉における〈料理人〉

 〈セルデシア〉における〈料理人〉は普遍的存在である。ある程度自給自足を志向する典型的な農村において、人口のおおよそ5~7パーセントが〈料理人〉であるようだ。
 食料は生存に不可欠であり、その食料アイテムを作り出す「料理」は、〈家政婦〉や〈メイド〉などの一部のサブ職業がごく低レベルの調理補助ができる以外は、すべての人々が〈料理人〉に頼っている。〈料理人〉はコミュニティに必須の存在なのだ。
 「職業」の存在によって一人の人間が可能なことと不可能なことが厳密に規定されているセルデシア世界は、現代の地球世界と比べて厳格な分業制となっている。食料は生存のために必須ではあるが、それは基本的に〈料理人〉以外に作り出すことはできない(例外として果物などの生食はありうる)。
 農村部などの〈料理人〉の主な仕事は、村の共有財産であるパン焼きかまどを用いてパンを焼くことだ。パン焼きは村の規模によって週に一回程度から毎日まで頻度には差がある。共同で焼かれたパンは、各家庭に配分される。また〈料理人〉は共同のかまどや炊事場を利用して、惣菜的な料理を大量に作り出し、これもまた各家庭に配分する。どのような料理が作られるかについては、その地方の産物や豊かさの影響を受けるために一概には言えないが、農村部での食事はほとんどの場合、このパンと惣菜、水、そして運が良ければ生食できる果実や野菜などが加わる程度だ。
 都心部では都市内部の小コミュニティ、すなわちギルドや貴族の館などに雇われてほぼ同じような業務を行っている。また、場合によっては飲食店を経営し、不特定多数の人間に食料を供給している例もある。
 このように生活上必須のサブ職業である〈料理人〉だが、その社会的地位は決して高いとは言えなかった。理由としてはひとえに、〈料理人〉の手によって加工された食料アイテムには味というものがなく、生命維持のために必要な義務としての飲食行為だったせいだろう。高レベルの食料アイテムともなれば、味以外に能力上昇効果などの恩恵もあるのだが、〈大地人〉の〈料理人〉がその段階に到達したという例は報告されていない。


◆ゲーム時代の〈料理人〉

 〈料理人〉は、〈エルダー・テイル〉発売最初期から実装されている最古のサブ職業のひとつである。常に一定数のユーザーを得ており、生産系サブ職業の中では中堅的なポジションにある。
 食料アイテムの基本的な効果はHPの自動回復速度の保持である。〈エルダー・テイル〉の〈冒険者〉は、非戦闘時におとなしく活動している限りHPやMPが徐々に回復していく能力を持っている。この能力は〈回復職〉以外の〈冒険者〉がひとりで冒険をするためには必須の機能であり、ゲームの前提ともいえるものだ。しかし、このHPの自動回復は、一定期間の間に自身のレベル相応の食料系アイテムを使用していないと空腹状態となり、1/10程度の速度に低下して
しまう。同様に飲料系アイテムを使用していなかった場合、MPの自動回復速度も低下してしまう。つまり、快適なゲームプレイをするためには食料アイテムは必須なのだ。
 〈料理人〉によって作り出される食料アイテムの数は多く、ヤマトサーバーで通常の成長をした場合でも、おおよそ200種類ほどのレシピを学習することができる。これは、プレイヤータウンのNPCから購入することができるレシピのみであり、一般フィールドで採取したり、モンスターからドロップする素材のみで作ることが可能な、いわゆる〈低位製作級〉食料アイテムのみを対象にしたレシピである。大規模戦闘で入手する〈高位製作級〉レシピも存在し、その総数はヤマトサーバーのみで300種を超えていたといわれる。
 同レベル帯の食料アイテムは、HPの自動回復速度保持という点ではほぼ同様の性能を持っているが、それ以外にも持続時間(プレイヤーの俗語では「腹持ち」と呼ばれる)や、付加的な能力上昇効果に差がある。数値的にはわずか1%程度の差異ではあるが、大規模戦闘ギルドなどにおいては軽視できない性能差でもあるために、高位のレシピや食料アイテムには大きな需要が存在した。そこまで強力ではないものであったとしても、HPの自動回復速度保持という点だけで、
食料アイテムはすべてのプレイヤーから必要とされているアイテム種別だといえるだろう。
 生産系サブ職業のレベルを上げることは、ひたすら生産を繰り返す必要がある。〈料理人〉の場合、食料アイテムを数千個単位で生産することがそれにあたるが、そのためにはおびただしい量の素材アイテム、燃料となる木材アイテム、くわえて生産設備などが必要となる。しかし〈料理人〉が作る食料アイテムは、武器防具などの装備アイテムと違い、水薬(ポーション)や矢弾などと同じく消耗型のアイテムであるために、常に一定の需用が存在する。作った食料アイテム
を売却することで資金を稼ぎながら育成しやすいのだ。転職も容易であり、これらの点から、生産系サブ職業の中では〈鍛冶屋〉などと比べて難易度が低い職と評されている。
 また最初期に実装されたサブ職として、関連クエストの量も特筆すべきだろう。その多くが「河口アジの素焼きを10人前作って兵士詰め所へ配達してくれ」などというドラマ性の薄いものであったとしても、クエスト達成報酬やクエスト達成経験値などがあるために、プレイの彩りとしては馬鹿にしたものではない。ソロ志向の〈冒険者〉はクエスト目当てで〈料理人〉になることもあったようだ。
 一方で、すべての生産系サブ職業に言えることだが、戦闘能力やクエスト突破能力にボーナスがつくということはまれだ。〈料理人〉もその例にもれず「友達にひとりいれば十分だし、最悪マーケットでお金を払えば料理アイテムは買える」という点で、まったく見かけないはずれサブ職業というほど低評価ではなかったが、ぜひとも自分自身でプレイすべきというほどに高評価なサブ職業でもなかったのも事実である。
 こうした経緯から〈料理人〉は、多くのプレイヤーが聞いたことがある程度には知名度の高いサブ職業でありながら、その絶対数はさして多いわけでもないという、中堅どころの立ち位置に落ち着いている。


◆〈大災害〉後の〈料理人〉

 〈大災害〉を経て最も激動に見舞われたサブ職業のひとつが〈料理人〉であろう。その経緯は原作『ログ・ホライズン』に詳しい。「味覚を刺激する新料理法」は世界各地においてほぼ同時期に発見され、周囲に広がっていった。秘密を守ろうと尽力した集団もあったようだが、その秘密を守りきれた事例は少なく、〈大災害〉から一年もたてば、他コミュニティとの交流が途絶えた砂漠や山中の村以外には、おおよそ新料理法が広まったといってもよい。
 味のある料理はセルデシア世界のあらゆる階層、〈冒険者〉のみならず、〈大地人〉の労働者にも富裕層にも貴族階級にも等しく大きなショックを与えた。娯楽に乏しく規範に縛られていた〈大地人〉の生活に、初めて生産のためのモチベーションが生まれたのだ。
 旧来のメニュー画面からの料理法で〈大麦粉〉から〈固い黒パン〉を作る場合、〈大麦粉〉の質は〈固い黒パン〉の最終的なアイテム等級に影響を与えることはあれ、味に対しては影響しない(いずれにせよ味のない貧しい食感のアイテムになるのだ)。その意味において〈大麦粉〉は砂粒が混じったものでも、泥水に落ちて乾かしたものでも問題ない。このような状況では丁寧な収穫や保存の管理意識が育たないのも当然だ。
 しかし新式の手作業による料理法では、素材アイテムの状態は、ダイレクトに完成品の味に影響を与える。丁寧な収穫や不純物の混じらない管理など、〈料理人〉だけではなく、社会のあらゆる部分へと波及するような大革命となったのである。
 もちろん当の〈料理人〉にも大きな影響はあった。〈料理人〉に転職する〈冒険者〉は増え、〈大地人〉の間でも農村部などで就職人口の上昇がみられる。旧式のアイテム作成法では差がつかなかった料理アイテムの出来栄えが、〈料理人〉本人の技量次第で明確に差が出るような状況になったため、同レベルの〈料理人〉同士であっても評価に差がつくようになった。その意味でも研鑽と淘汰の時代になったといえるだろう。
 総じて〈大災害〉後の〈料理人〉は評価が上がったサブ職業である。〈冒険者〉、〈大地人〉を問わず、「生活のために必須のアイテムを作る職」であるという評価を飛び越えて、生活に潤いと幸福をもたらす真に敬意を向けられる地位を獲得したのだ。


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最終更新:2022年12月23日 17:45
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