太陽経病証

(1)基本的に

 太陽の病は、体の後ろ側におもな症状がでて、痛みが激しいことが特
徴です。座骨神経痛などが典型例。

(1.1)かたよった使い方と内側の症状が原因

 体のかたよった使い方がおもな原因になっていることが多いですが、
内蔵など体の内側の症状が関係していることも多いです。

 肩こりなど上半身の場合には、腕や目のかたよった使い方が原因のこ
とが一番多いですが、風邪や虫歯など上半身に関係した病、食べ過ぎ、
悪血証、欲求不満などが関係することも多いです。

 右利きで左肩こりのときには、心臓の負担が反映していることがあり
ます。子供のころに弁膜症だった方や不整脈のある方など。

 こういう方は、普通の肩コりでは肩甲間部上半分がコっているのに対
し、肩甲骨の下角あたり(心愈〜膈愈)のほうのコリがひどいので区別
できます。また、左前腕の少陰経の手首付近(陰げき)にツボが出ている
ことが多くなります。

 腰痛など下半身の場合にも、体のかたよった使い方が原因のことが多
いですが、下半身の外傷や悪血証などによる腹のシコりが原因のことも
多いです。

(1.2)古くなると特定のところに辛さや痛みが集中

 古くなると特定のところに辛さやシコりが集中する傾向があります。

 上半身の場合には、肩関節・肩峰まわりの肩峰から3cmほどのくぼみ
に痛みがあることが多く、その原因となるツボは、その裏側の脇の下か
ら上腕陰経に出ます。

 下半身の辛さは、膝の皿まわりのくぼみに集中することが多いです。
腰痛があった方が座骨神経痛になり、そして歳とって膝の痛みを訴える
というのが典型的なパターンですが、足首捻挫を繰り返した方も膝が痛
くなる方が多いです。その原因となるツボは、膝裏から脹ら脛に出てい
ることが多くなります。

 体の裏側の痛みは自覚しにくく、表側の痛みとして感じることが原因
のように思います。この場合、患者さんの訴える肩峰まわりや膝皿まわ
りだけの治療では、あまり改善しないことが多いです。

(1.3)動かないでも痛いほうが重い

 一般的に動くと痛いものよりも、動かなくても痛いもののほうが重く、
治療も長くかかることが多いです。

 そういうときには、腹の邪毒などが関係していることが多く、腹の邪
毒を減らしていく必要があります。

(1.4)シコりに邪気がはいるとピリピリビリビリ痛む

 ただシコりがあるだけでは痛まないこともあります。

 そういうときにも、腹の邪毒からの邪気がはいるとピリピリビリビリ
と痛み出すことが多いです。

 慢性期の型などで養生し、腹の状態を良くしただけで肩コりや腰痛が
治ったりするのは、腹のシコり由来の邪気が減るためです。

(2)ツボの出やすいところ

 くわしいことは、運動器系応急処置、運動器系慢性期を参照してくだ
さい。

 肩では、肩井、首の付け根、膏肓、肩貞、天柱、横頚部中央、脇の下
など。首の付け根は女性に多く、肩貞は慢性期に多く、天柱は不眠をと
もなうときに多いです。

 腰では、大腸愈、殿央、環跳、仙骨まわりなど。

 カゼ、便秘、食べ過ぎ、悪血などが原因のこともあり関連するところ
にツボが出ます。古典にも出てきます。

「太陽之為病、脈浮、頭項強痛而悪寒」
(うなじにもシコりが出る)

「太陽病、項背強几几、無汗、悪風、葛根湯主之」
(うなじから背中にかけて強くこわばる)

 患部や腹の邪などに経絡的に関係するところにも出ます。
  • 手陽経なら、中渚、上小海、合谷など。
  • 手陰経なら、上腕の脇の下からの溝の中など。
  • 足陽経なら、下委中、飛揚外丘、下昆侖、丘墟、甲4,5間など。
  • 足陰経なら、下陰谷、築賓、大鐘、曲泉、中封など。

(3)手順

 手順も、くわしいことは、運動器系応急処置、運動器系慢性期を参照
してください。

(3.1)急性期

肩など上半身

 肩など上半身の場合には、まず手の甲に引き、つぎに、肩、頚、上腕
の順でツボの出やすいところをさぐり、出ていれば刺鍼。

 肩を動かしてもらい、可動域制限があるときには動作鍼をして、陽経
側の動作鍼を一通り終えても痛むときは脇の下をさぐり、ツボが出てい
ればそこを起点に手の陰経の動作鍼をします。

 おわりに、頭に散鍼し、手首より先の陽経、手の甲や八邪八風などに
刺鍼。

 肩頚は表位なので熱をともなうことが多いので、熱のあるところは、
刺鍼前に散鍼するようにしてください。

巨刺など下半身

 腰など下半身の場合には、まず、ラクな姿勢で寝てもらうと、その寝
方で上になるラインにツボがならぶことが多く、その姿勢で刺鍼します。
横向きが多いです。

 足の甲→腰→大腿→下腿→動作鍼→足首が応急処置の基本手順で、陰
経側も刺鍼するときには、動作鍼のあとに、足首より先→大腿→下腿の
順に刺鍼し、陽経の足首あたり→頭散鍼→手の甲の順で仕上げます。

(3.2) 慢性期

 慢性期の基本の型で、患部や関連するところを丁寧に四診し刺鍼ます。

 鍼のみで変わりにくいところには、うつ伏せ→仰向けの順で上から下
に、灸や灸頭鍼を付け加えてもよいです。

 また、灸や灸頭鍼中心で、うつ伏せで、はじめに手の甲に引き鍼した
あと、上から下に置鍼・灸・灸頭鍼をし、つぎに、仰向けで上から下に
置鍼・灸・灸頭鍼をして、動作鍼をしたあと、手の指端の灸をして終え
るという方法でも良いです。鍼のみで変わりにくいときに向きます。




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最終更新:2010年08月04日 07:45