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術伝流操体・ラクな寝方をすこし強調 (6)うつぶせ寝から動きの操体

うつぶせ寝から動きの操体

1.はじめに

 今回からは、うつ伏せ寝の操体です。まずは動きの操体から。

 操体では、立位や座位で生活しているときの体の土台である下半身か
ら整えていくので、足から目を付けていきます。

 うつ伏せの場合には、膝を曲げても股関節を連動して動かしにくいの
で、そういう格好、つまりうつ伏せ膝立ててからの操体が多くなります。

2.うつ伏せ膝立ての姿勢から

 ラクな姿勢を強調するという視点でいうと、うつ伏せの場合に目を付
けるのは、足首の甲側です。

 その部分が布団などにピッタリくっついていて、足首から先がハの字
型になり親指同士の先端が近づいている形(写真1)をしていれば、足
を布団につけているほうがラクだと思います。

写真1

  逆に、足先が下腿の延長に来ている(写真2)場合には、足首の甲
側と布団などのあいだに隙間がある(写真3)ことが多くなります。

写真2

写真3

 そういう場合には、足首を上げ、膝立ての姿勢のほうがラクなことが
多いです。隙間が大きければ大きいほど、その傾向は強くなります。

 これは、脹ら脛の筋肉の中に緊張したままゆるまない部分ができてい
て、アキレス腱を引っ張って踵を持ち上げようとしているからです。

 操体でうつ伏せのときによくする検査で、お尻に踵を近づけるものが
ありますが、足首甲側と布団などの隙間が大きいほうの足の踵がお尻に
つきやすいことが多いです。

 そういうふうに、うつ伏せに寝た姿勢で足首甲側と布団などに隙間が
あれば、膝を立てた、くわしく言えば、膝を曲げて膝から先を立てた姿
勢(写真4)がラクです。

写真4

 いちおう、そういう姿勢がラクかどうか、言葉の通じる人には確認し
てから、うつ伏せ膝立ての姿勢から始める操体をします。

1)足首をお尻に近づける

 定番の操体では、両方の踵をお尻に近づけていき、近づきにくいほう
の足を伸ばす方法をしますが、この操体は操体の中でも難しいものです。

 足を伸ばしてくる足首よりの下腿をもって、伸ばしやすいように少し
抵抗をかけながら支えてあげるだけでなく、途中から膝が浮いてくるの
で、その膝もうまく支えてあげないと、タワメの間が決まらず効果も出
しにくいです。

 それに、一般的に末端を胴体から遠ざける動きのほうが方向が広く分
散していくので、タワメの間の方向を決めにくいことが多いです。

I)きっかけからタワメに入るまで

 それで、私はお尻に近づきやすいほうの踵をお尻にもっと近づけるこ
とをきっかけにする方法をしています。

 足を伸ばした状態で布団と足首の間隔が広かったほうがお尻につきや
すいことが多いですが、そうでないこともあるので、調べてから、お尻
につきやすいほうを選んで近づけていきます(写真5)。

写真5

 足首よりの下腿を持って近づけていくのですが、お尻についてしまっ
たら、そこで止めるのではなく、その動きを延長して強調するために、
その足の膝を少し持ち上げます。

 手で持ち上げていると疲れるので、正座した操者の膝の上に膝枕のよ
うに乗せてしまう(写真6)とラクです。

写真6

 そうすると足首から先が少し内側(反対側の足のほう)に倒れていく
ことが多いです。

 そういうときには、お尻につけている側の足の大転子あたりを少し上
に持ち上げぎみにして、反対側の足のほうに回転させるような動き(写
真7)を付け加えると気持ちよさが深くなることが多くなります。

写真7

II)タワメの間のときにすること

 息が深くなっているか、気持ちよさが感じられるか確認し、その姿勢
がタワメの間として続くように支え続けます。

 言葉の通じる人には声をかけて、首を左右どちらに回すと気持ちよさ
が増えるか聞いて、気持ちよさが深くなるように首を動かしてもらいま
す。
 両腕や反対側の足も気持ちよさが深くなるような格好を探してもらい
ます。わずらわしくない範囲で。

 受け手が姿勢を少しずつ変えていくのに合わせて、ちょうどよく釣り
合ったタワメの間になるように、操者も支え方を少しずつ変えながら支
え続けます。

III)終わり方

 受け手が大きく姿勢を変えたくなるか、息が浅くなったり、気持ちよ
さが感じられなくなるまで続けます。

 言葉が通じない人の場合には、引き込まれるように感じられるときは
続けて欲しいというサインで、押し返すように感じられるときには終わ
りにしてほしいサインです。

IV)両方とも近づけにくいとき

 少し差はあるけれど両方の足ともお尻に近づけにくい場合などは、こ
の操体はしないほうがよいです。そのときには、両方の足とも伸ばす操
体をしたほうがよいからです。

2)足首をお尻から離す

 お尻に踵が付きにくい場合には、お尻から足首を離していく操体(写
真8)をしますが、足は重たいし、この操体の誘導というか抵抗というか
支えというかは難しいので、私はあまりしません。

写真8

 仰向けのときとほぼ同じやり方で方向を決めたあとに皮膚の操体をす
ることで代用しているので、皮膚の操体のところで説明します。

3)立て膝から下腿を倒す(写真9)


写真9

I)きっかけからタワメに入るまで

 うつ伏せ状態の大腿部にほぼ直角に下腿を立てた状態から足首を倒し
やすいほうに倒していきます。

 ラクに倒れるところまで来たら、上になっている足の延長の腰を少し
上のほうに回転するように持ち上げる(写真10)と気持ちよさが深く
なりやすいことが多いです。

写真10

 曲げた膝の角度が直角より大きくなってしまうと気持ちよさがなくな
りやすいので、直角よりも深く膝が曲がった状態を保つのがコツです。

II)タワメの間と終わり方

 タワメの間のときにすることと終わり方は、足首をお尻に近づけると
きとほぼ同じです。

4)立て膝から足首を回す

I)きっかけからタワメに入るまで

 うつ伏せで大腿に対し直角に下腿を立てた状態で、下腿に対し足首か
ら先も直角にします。

 踵を片手で持ち、つま先側を回して足首を捻転し、捻転しやすいほう
に捻転したままにすることをきっかけにします。

 定番の操体では、受け手に捻転してもらい、操者が抵抗する方法でし
ますが、ラクな寝方を強調するアプローチでは、操者が捻れやすいほう
に捻っていくことをきっかけにします。

 足の内側、親指〜土踏まず〜踵を結ぶラインと背骨のラインを比べる
とだいたいどちらの側に捻転しやすいか予測ができます。

 この操体は、仙骨あたりに響いていくという人が多いです。仙骨・骨
盤はじめ下半身の大きな歪みを修正するのに役立つようです。とくに女
性に喜ばれることが多いです。

 両足いっぺんにすることもできます(写真11)が、両足ともに外側に
捻転しやすい人もいるので、片足ずつしたほうが無難です(写真12)。

写真11

写真12

II)タワメの間と終わり方

 タワメの間のときにすることと終わり方は、足首をお尻に近づけると
きとほぼ同じです。

3.膝立てないで動きの操体

 うつ伏せで膝を立てない姿勢からの動きの操体での定番は、いわゆる
カエル足です。片方の足をカエルのように曲げて横に出し、片足は伸ば
したままの姿勢のことです。

 定番の操体では、受け手に膝を脇の下のほうに動かしてもらうのに対
して操者が足首近くを引っ張って抵抗する形を取ります。

1)カエル足の姿勢を強調する

I)きっかけからタワメに入るまで

 ラクな寝方を強調する方法では、まずカエル足がラクかどうかを調べ
ます。

 歪みがない場合には、足の親指同士がくっつくように近づいている格
好(ハの字型)が多くなりますが、歪みが大きくなると親指が離れてい
き、足首と布団に隙間ができていき、下腿の延長に足先がくるようにな
ります。

 そして、もう少し歪むとつま先が外側を向きます(写真13)。

写真13

 そういう状態のときには、足を伸ばしているよりも膝を曲げたほうが
ラクですから、ラクに動かせる範囲で膝を曲げてもらうとカエルのよう
な形になります。

 そういう姿勢になったら、ラクな寝方を強調する方法では、お尻を曲
げている足の膝のほうに少し動かします。そして、曲げている足の親指
を支点に踵を持ち上げます。

 両方を操者がしてもよいですし、どちらか片方を受け手にしてもらっ
てもよいと思います。また、踵の下に座布団などを積んでしまうのもよ
いと思います。(写真14)

写真14

II)タワメの間と終わり方

 タワメの間のときにすることと終わり方は、足首をお尻に近づけると
きとほぼ同じです。

III)注意すること

 今までの経験では、定番のカエル足と同じように脇の下のほうに動か
すよりも、いま説明したようにお尻を膝のほうに動かすほうが気持ちよ
い場合が多いようです。

 しかし、そうでない人もいるので、そういう場合には、その受け手の
気持ちよいと感じる動きを少し強調するようにします。

 また、親指を支点に踵を持ち上げるよりも、爪先あげ、つまり、足の
甲を背屈させる動きが気持ちよいという人もいるので、踵を持ち上げる
のがイイ感じではなさそうなら試してみてください。

 さらに、ラクに寝た姿勢でつま先が外開きしない人でも、足先に左右
差があれば、この操体が気持ちよい人も多いので、試してみてお腹に息
がはいったり、気持ちよさが感じられるようなら、してみるとよいでしょ
う。

4.うつ伏せから、手の動きの操体

 定番にはありませんが、うつ伏せから手をきっかけにする動きの操体
もできます。

 目の付けどころは、肘の位置と首の向きです。うつ伏せで首が左右ど
ちらかに向いている場合には、向いているほうの首の付け根から肩甲間
部がこっていて縮んだままで伸びにくいので、首がそっちに向いている
ことが多いです(写真15)。

写真15

 ですから、首が向いている側の首の付け根から肩甲間部にかけてをよ
り縮ませるような動きの操体をします。

 いちばん簡単なものは、肘を持ち上げることです。うつ伏せの姿勢か
ら肘を持ち上げると、肘を持ちあげたほうの首の付け根から肩甲間部が
縮みます。

 喘息や花粉症の人は、首の付け根から肩甲間部にかけて古いツボが出
ていることが多いので、この操体を喜んでもらえます。

1)肘を持ち上げる

I)きっかけからタワメに入るまで

 ラクな姿勢で寝ているときに、首が左右どちらを向いているかを確認
し、首が向いているほうの肘を持ち上げます。

 この格好の場合には、基本的にはラクな位置に置かれた上腕の延長線
と背骨が交わるあたりのこりがいちばんひどいことが多い(写真16)の
で、そのあたりがいちばん縮むように配慮しながら持ち上げます。

写真16

 持ち上げる高さは軽くスーッと持ち上げられる程度ですが、言葉の通
じる人には、どのくらいの高さがイイ感じがするか聞くとよいでしょう。

 持ち上げたあとで、肘を頭のほうと足のほうへ動かしてみて、言葉の
通じる人が相手ならどちらがイイ感じがするか聞いて、イイ感じのする
方向を選びます。言葉が通じない人が相手なら、軽い力でスーッと動い
ていく方向を選びます。

 手で腕を持ち上げているのは疲れるので、高さや方向が決まったら、
受け手の頭のほうをむいて座り、受け手に近い側の膝を立てて、立てた
膝の上に受け手の肘を乗せてしまう(写真17)とラクに長時間持ち上げ
続けることができます。

写真17

 両手が空くので、余裕があれば、上げている肘の延長の手の指揉みを
したり、首から肩甲間部の背骨の近くのいちばんこっているツボを指圧
したり皮膚ズラし(皮膚の操体)したりもできます。

 なかには、上腕を肩より下げて寝るのがラクな人もいます。こういう
人の場合には、肩を起点に上腕と直交する線と背骨が交わるあたりをい
ちばん縮めたがっていることが多い(写真18)ので、そこがいちばん縮
むようなタワメの間になるように操体をします(写真19)。

写真18

写真19

II)タマメの間と終わり方

 タワメの間のときにすることと終わり方は、足首をお尻に近づけると
きとほぼ同じです。

 手がきっかけなので、反対側の手や両方の足を動かせたら動かしても
らい、イイ感じが増えないか確かめます。

5.おわりに

 今回は、うつ伏せ寝がラクな場合の動きの操体を紹介しました。次回
は、うつ伏せ寝がラクな場合の皮膚や重さの操体です。


   つぎへ>>>術伝流操体no.18



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最終更新:2010年08月21日 11:35