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術伝流・先急一本鍼・運動器偏 12.巨刺、上下刺、対角刺

巨刺、上下刺、対角刺

(1)はじめに

 先回、一応、運動器系応急処置をまとめてみましたが、
運動器系応急処置には、他にも色々な技法があります。

 これから今まで紹介していない技法のうち比較的よく使
われ、効果が出やすいものを紹介していきます。

 その1回目は、巨刺、つまり、左右反対側に刺す技法、
それから、上下反対側に刺す技法、左右と上下を組み合わ
せた対角反対側に刺す技法です。

 応急処置の原則は、「遠くに強く引く」でした。

 患部が胴や頭などの体幹部にあるときには、「遠く」と
して手足の甲が使われます。が、患部が手首・足首近くの
ときには、手足の甲は「遠く」とは言えませんし、そうい
う場合に手足の甲を使っても邪気を引ききれないことがあ
ります。

 こういうときに「遠く」として使われるのが、左右反対
側や上下反対側、それらを組み合わせた対角反対側の対称
点です。

 右手首が患部なら、左右対称点は左手首、上下対称点は
右足首、対角対称点は左足首になります。

 このうち、左右反対側の対称点にツボを探して刺鍼する
方法は、「巨刺」と呼ばれ、昔から有名です。

 残りの上下対称点や対角対称点を使う方法は、今まで余
り文献には出てきていないようですが、効果的なことが多
いで、試してみてください。

 巨刺、上下刺、対角刺は、肘膝から先の痛みに有効です
が、肘膝の場合には、普通に手足の甲に引き鍼することも
できます。

 巨刺などがとても効果的なのは、やはり、手首足首から
先です。

(2)巨刺などによる応急処置の手順

 先ず症状を確認します。どういう動作をしたときに、ど
の辺りが辛いかを確かめます(写真1)。

写真1

 動かすのが辛いときには無理せずに、だいたいの位置を
調べます。その後に、その患部の左右対称点(写真2)、
上下対称点(写真3)、対角対称点(写真4)の近くを探
し、ツボが出ていないか調べます。

写真2

写真3

写真4

 対称点の近くで一番凹む所を探します。手首足首から先、
特に指周りのツボは細かいので、指で探すのは難しいこと
も多いです。

 鍼管位の太さの物を対称点の辺りに縦横十文字に滑らせ
て凹んだ場所を見付けます。それから、鍼柄の頭ほどの太
さの物で押して、ツンという感じの圧痛があるか聞いて確
認します。

 3つの対称点の中で、一番圧痛の有る所を施術か所とし
て選びます。

 焼き鳥の竹串などを加工して、太い方が鍼管位、細い方
が鍼柄位で角を丸くした道具を作っておくと便利です。

 もし患部が肘膝だったら、対称点のツボに施術する前に、
対称点と経絡的に関連する手足の甲、つまり、その対称点
の延長の手足の甲のツボに引き鍼します。

 患部が手首足首から指に掛けてなら、対称点のツボから
施術を始めます。

 施術ヵ所に、鍼柄程度の物を軽く押し付けて、痕が残る
ようにします。

 写真のディスポのように鍼管が太めの物の場合には、鍼
管ごと鍼を置くと痕から外(はず)れてしまうことがある
ので、そういう場合には、先ず鍼を先に痕の上に立ててか
ら(写真5)、鍼管を置きます(写真6)。

写真5

写真6

 対称点のツボへの刺鍼は、軽く刺鍼しながら、患者さん
に患部の様子を聞きます。

 患部を余り痛くなく動かせるようなら、辛くない範囲で、
ゆっくり色々に動かしてもらう運動鍼をします(写真7,8)。

写真7

写真8

 できる動作をしたり戻したりという動きを、辛くない範
囲でゆっくり繰り返してもらいます。だんだん動かせる範
囲が広がり、動かせる動作の種類が増えていけば、効果が
出ているということです。

 鍼を抜いてから、患部をゆっくり痛くない範囲で動かし
てもらい、辛さや痛みが残っているところがないか確認し
ます。

 残っていたら、残っていた場所の対称点の周りを探して、
ツボを見付けます。この場合の対称点は、初めに刺鍼した
所の近くだけ探せばよいと思います。

 見付けたツボに刺鍼し、患部を動かせるようなら運動鍼
を併用します。

 鍼を抜いた後に、また、患部を動かしてもらい、痛みや
辛さが残っていないか確認します。残っていたら、また、
対称点の近くにツボを探して刺鍼し動作鍼をします。

 以上のことを日常生活に支障が出ない位に改善するまで
続けます。

 もっとも応急処置の施術時間は30分以内が望ましいの
で、それを越えるようなら中止して後始末に行きます。と
は言っても簡単な場合で1回、多くても3回位の刺鍼で良
くなることが多いです。

 後始末を丁寧にするときや、陰経側にも刺鍼したときに
は、先ず、頭の散鍼をします。

 陽経側だけの刺鍼のときでも、患部が肘膝の場合には、
施術か所の延長上の手足甲の陽経側に引き鍼します。

 患部が手首足首より先の場合にも、施術か所の手足の甲
の陽経側を調べてツボが出ていたら引き鍼しておきます。

(3)巨刺、上下刺、対角刺の組み合わせ

 足首などの捻挫が酷くて、患部を動かすと痛がられて、
充分な検査ができない場合などには、遠い方から、対角刺、
上下刺、巨刺の順で施術すると、上手くいく場合が多いで
す。

 例えば、右足首の捻挫の場合には、左手首、右手首、左
足首の対称点の順で、刺鍼します。

 このとき、刺鍼中に辛くない範囲で運動鍼をすると、効
果がより出やすくなります。

 その3か所の刺鍼を終えると、右足首を調べる位は、そ
れほど痛くなく可能な程度には改善していることが多いで
す。

 この状態で、右足首に残っている、圧痛のあるツボに刺
鍼すると改善できます。この患部のツボへの刺鍼は、軽く
するのがコツです。

 邪気は最後に刺鍼した場所に集まってくる傾向にあり、
強く刺鍼すると、後で痛みが復活しやすくなるからです。

 そのため、患部のツボへの刺鍼を避け、患部のツボと経
絡的に関連する足指に近い末端のツボを調べ、圧痛の強い
所を見付け刺鍼しておく方が、後で痛みが復活する可能性
は少なくなります。

 今回の患者さんは、畳に躓(つまづ)いて足指の付け根
を捻挫された人で、左足の第2指と第3指の間の延長が痛
いということでした(写真9)。

写真9

 そこで、左右、上下、対角の対称点を探したら、ツボが
出ていました(写真10,11,12)。

写真10

写真11

写真12

 そこで、対角の右手(写真13)、左手(写真14)、右
手首(写真15)の順で遠い方から順に、対称点に出てい
るツボに施術しながら運動鍼をしました。

写真13

写真14

写真15

 そうしたら、患部の痛みは、ほとんど消えていました。
そこで、患部の末端の井穴を調べたら、第3指の第2指よ
りの井穴にツボが出ていました(写真16)。

写真16

 こういう細かいツボの刺鍼も(2)で書いたように、先
ずツボの押した痕の上に鍼を置いた後に鍼管をセットして
から(写真17)刺鍼した方が、効果が上がりやすいです。

写真17

 後始末は、陰経側にも刺鍼したので、頭の散鍼(写真18)
をしてから、ツボの出ていた左手2~3間の八邪(写真19)
に引き鍼しました(写真20)。

写真18

写真19

写真20

(4)おわりに

 次回は、頭に刺す技法です。

ーーー 追記:2017.03.21 ーーー
犬に噛まれた痕が巨刺で消失した例
巨刺!
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最終更新:2018年07月05日 14:07