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術伝流一本鍼no.2 (術伝流・先急の一本鍼・運動器編(2))
「手足陽経への引き鍼」が鍼術の基本

(1)はじめに

 今回から実技に入ります。先ずは、基本の基本からです。

 できるだけ読めば分かって二人いれば練習できるように書いて
いくつもりですので、読むだけでなく実際に試してみてください。

(2)手足の陽経に引く

 鍼術の最も基本になるのは、「手足陽経への引き鍼」です。

 これを身に付けることから、腕を磨き術を養うことは始まりま
す。繰り返し練習して、しっかり身に付けましょう。

 「手足陽経に引く」というのは、体の体幹部、つまり、頭、首、
胴の症状、特に体の表面に近い部分の症状を手足の陽経に鍼して
軽くするということです。

 昔から、症状が出ている所には邪気が蠢(うごめ)いていて、
その邪気を手足の陽経に鍼することで、刺鍼した方に邪気を誘導
し、手足の末端から体の外に引き出す、というイメージで伝えら
れてきました。

 邪気を初めから感じられる人は少ないので、初めのうちは余り
考えなくても良いでしょう。手足の陽経に鍼をすると、体幹部の
症状、特に体の表面に近い部分の症状を軽くできると考えておい
てください。

(1) 前腕の陽経側に引く

 体幹部の中でも、肩甲骨・鎖骨から上の症状は、手の陽経に引
きます。

 この部位は、漢方の世界で「表位」と呼ばれる所で、手の陽経
と関連が深く、病の初期症状が現れやすい所とされています。特
にカゼなど上気道感染症の時に初めに症状が現れる所と言われて
います。

 先ず、患者さん役の人に症状を話してもらいます。今回の練習
では、患者さん役は座位が基本です。

 練習相手がいない時には、自分の肩甲骨・鎖骨から上の状態を
観察してみましょう。

 首の動作制限などが施術前後の変化が分かりやすいので、モデ
ルとしては向いています。特に首の捻転の左右差(写真1,2)な
どが治療後の変化が分かりやすいです。

写真1

写真2

 実際に症状の出ている部分(写真3)を触ったり押したりして
確かめてから、症状の出ている場所が左右どちらか確かめた後、
左右の中で、前・横・後ろの何処になるか3分類します。これが、
どの経絡を使うか決める時の基本になります。

写真3

 首の動作制限などの場合には、その動作で伸びにくい部分にシ
コリが出ていることが多いです。首を右に向けにくい時には、左
側横頚部にシコリが出ていて、そこが伸びにくいために右に向き
にくくなっていることが多くなります(写真4)。

写真4

 さて、首のシコリが見つかったら、それと関連する手の陽経の
ツボを探すのですが、それにはコツがあります。

 経絡というのは、立位での前・横・後ろが基本です。前・横・
後ろというのは、立ち姿勢で前から見える部分同士は経絡的に関
係があるということです。横から見える部分同士や後ろから見え
る部分同士も同じです。

 前・横・後ろ×手足×陰陽(=体の内外)で、12(3×2×2)
経絡なっています。

 肩甲骨・鎖骨から上の表位は手の陽経と関連が深いので、手足
の分類では手、陰陽の分類では陽になるので、残るは前・横・後
ろの分類です。

 あと実際の治療では、体や手足の左右も関係するので、左右×
前横後ろで6(2×3)分類になります。

 その6分類にしたがって、前腕を調べます。手甲側が陽経側で
す。症状が右側なら右腕、症状が左側なら左腕を選びます。そし
て、要穴の多い肘から手首までの間で、前側なら親指側、後ろ側
なら小指側、横なら骨と骨の間を調べます(写真5)。

写真5

 その辺りの筋肉の溝に沿って、肘から手首に向かって指を滑ら
せ、窪んだ所、ベタベタした所、黒ずんだ所、押して痛い所を探
します(写真6)。そこがツボの出ている場所です。

写真6

 もし、2つ3つ見付けかったら、患者さん役と相談して、イヤ
な感じや痛みの強い方を選びます。それらが同じなら深く凹む方
を選びます。

 そのツボに痛がられないように刺します。

 押し手をしっかりして、軽く1,2回弾入してから、静かに刺鍼
していきます(写真7)。

写真7

 「痛い」と言われないように患者さん役と声を掛け合いながら、
患者さん役の様子を観察しながら刺鍼します。特に見る所は、顔
と腹です。

 顔は、表情や瞬(まばた)きを見ます。腹は、息の深さを見ま
す。瞬きが頻繁になったり、息が深くなったら、鍼が効いている
と見てよいでしょう。

 それ以上深く刺入するのは止め、その深さで横ゆらしや旋撚な
どを少ししてから、ゆっくりゆっくり抜いてきます。抜いてくる
途中も横ゆらしや旋撚などをした方が良いでしょう。

 こういう刺し方を「速刺徐抜」と言い、手足陽経を刺鍼する場
合の基本です。

 刺鍼後、先ず、刺した場所の変化を見ます。指を滑らせてみま
しょう。ベタベタした感じがなくなって、サラサラしていません
か? 見た目にも、黒ずみが消え明るくなったり、凹みが減った
りします。押した時の痛みも減っていることでしょう。

 患部のツボも同じように変化しているか確かめてみます。動作
制限などが改善しているか実際に動作をしてみます。首の捻転の
左右差の場合には、首を捻転してみて左右差が改善しているか調
べてみます。

(2) 下腿の陽経側に引く

 同じように、胴体の下の方の症状は、足の陽経側に引けます。

 これも、腰などの動作制限などが分かりやすいと思います。よ
くあるのは、腰の捻転制限と前屈制限(写真8)です。どれ位の
状態か確かめておきます。

写8

 患者さんに症状を話してもらってから、施術する姿勢を決めま
しょう。足の陽経は足裏の場合もあり、調べる場所によって患者
さん役の取る姿勢を工夫します。

 足裏が中心ならうつ伏せが良いですが、実際には、重い腰痛な
どでは患部側を上にした横向きしか取れないことも多いです。ラ
クな姿勢を選ぶとツボも探しやすくなります。

 また、筋の溝が腕よりも多いので、一つの溝で見付からない時
は、隣の溝に指を滑らせて探します。

 腰の前屈制限の時には、下腿の真裏、承筋〜承山のラインに多
く、捻転制限の時には、向きにくい側と逆、つまり、腰の筋肉が
伸びない側の真裏よりも少し外側の飛揚〜外丘のラインが多いで
す(写真9)。

写真9

 後の手順は、手の場合と同じで、出ているツボに速刺徐抜で痛
がられないように刺鍼します(写真10)。

写真10

 刺し終わった後には、やはり、施術か所と患部の変化を観察し
ます(写真11)。

写真11

※1.「痛い」と言われたら

 痛いと言われたら、自分の足三里に刺せる鍼をだんだん太くし
ていきましょう。

 筆者は、30番の銀鍼まで刺せるようになりました。10番位ま
で刺せるようになると、一般的に多く使われるステンレスのディ
スポ鍼1番から3番を痛いと言われることは少なくなります。

 また、鍼の素材では、ステンレス鍼の方が銀鍼よりも痛いと言
われてきました。が、現在では、ステンレスのディスポ鍼よりも
銀鍼を痛がる人が、かなり沢山います。若い人ほど、その傾向が
あります。

 体の中に溜まっている化学合成物質が多いと筋肉のベタベタし
た感じが強くなります。そのため、銀鍼の筋肉との親和性の高さ
が、逆に、くっつきやすく、動かすと痛い感じを与えやすいから
のようです。

※2.深くて届かなかったとき

 足の大腿は、もちろん下腿でも手よりも遥かに太いです。それ
で、ツボが見付かった場所によっては、ツボが深くて、短い寸3
位の鍼では鍼先がツボの底のシコリに届かない場合もあります。

 そういう場合には、回旋術を使います。どちらか一方に無理の
ない範囲で捻れるだけ捻った状態からパッと刺し手を離します。
どちらか捻れやすい方に行うと、上手くいくことが多いようです。

 こうすると、届かなかったツボの底のシコリにも変化が出るよ
うです。抜いてくると、表面はサラサラとして、押しても痛くな
くなっている場合が多いです。

 螺旋的な力は遠くまで届きやすいからかも知れないなと思って
います。

 下腿ではツボが浅いことも多いです。が、これから練習してい
く腰、殿部、大腿では深い場合があるので、覚えておいてくださ
い。

(3)おわりに

 繰り返しになりますが、手足陽経への引き鍼は、基本中の基本
です。なんども練習して、しっかり身に付けてください。


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最終更新:2015年06月09日 12:25