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術伝流一本鍼no.3 (術伝流・先急の一本鍼・運動器編(3))
手足の甲のツボで運動鍼

(1)はじめに

 今回から実際に運動器系の先急、つまり、運動器系の応急処置
に入ります。

 段階を踏んで一つずつ説明していきますので、一つずつ理解し
技術を身に付けていってください。

(2)手足の甲のツボで運動鍼

 鍼による応急処置の基本原則は「遠くに強く引く」ことです
(図1)。

図1

 痛みが強ければ強いほど、遠くに強く引きます。患部近くは、
軽く浅く刺すのが基本です。

 これは先回も説明したように、症状が出ている所で蠢(うごめ)
いている邪気を、手足の陽経の末端近くに鍼することで、刺鍼し
た方に誘導し、手足の末端から体の外に引き出すためです。

 患部近くは散鍼ていどに留めることもあります。

 痛みが強い時に、遠くに強く引かずに、局所に強く深刺しする
と症状を悪化させてしまうこともあるので、注意してください。
邪気は刺鍼した方に動く性質があり、患部近くに強く刺すと、患
部近くに邪気が集まってしまうからとされています。

 症状が頭や胴の場合には、手足の甲の陽経側に引くのが基本で
す。鍼が刺しやすくて、末端に近いのが、手足の甲だからです。
この刺鍼は、応急処置をする場合に、準備・後始末として最初と
最後に必ずするようにしています。

 今回は、この刺鍼をしながら患者さんに動いてもらう、いわゆ
る運動鍼を練習します。

 運動鍼は、肩首の症状に特に有効です。手甲に刺鍼しても動き
やすいからです。

 腰の場合には、動かしづらい時もありますから、そういう場合
には無理をせずに、ラクな寝方で足甲に刺鍼した後、立ち上がれ
るようなら立ち上がってもらい、の甲に刺鍼しながら腰を動かし
てもらってもよいです。

(1) 手の甲のツボで運動鍼

 肩胛骨,鎖骨から上の、肩,首,顔,頭などの症状は、手甲のツボに
刺鍼して動いてもらいます。

 先ず、患者さん役の人に症状をよく話してもらい、目で見たり
手で患部を触ったりして、先回もしたように患部の場所が左右×
前横後ろの6つの中から何処に分類できるか決めます(写真1)。

写真1

 患部の左右で手の左右を選び、患部が前よりなら手甲の親指側、
後ろよりなら手甲の小指側を探すのが基本です。

 位置関係は、だいたい、鼻,目頭,前歯なら1~2間、瞳〜目尻,奥
歯なら2~3間、目尻〜耳なら3~4間、後頭部,後頚部なら4~5間
です。

 しかし、隣りに出ることもあるので、井穴(写真2)や水掻き
(写真3)を摘んだり、甲の骨間や指関節の手の平側の横紋の端
(写真4)を押したりして確認します。

写真2

写真3

写真4

 水掻きというのは、指の付け根と指の付け根との間の部分です。

 甲の骨間の狭い所や、摘んだり押したりして痛い所が狙い目で
す。

 また、手を軽く開いてみて、見た目に指と指の間が狭い部分
(写真5)があったり、あるいは、指を反らせる(写真6)とピ
リピリビリビリする感じが強い所なども狙い目です。

写真5

写真6

 だいたい見当がついたら、指を横にして水掻きから手首に向け
て動かして凹んだ所を押してみます(写真7)。痛かったら、そ
こがツボです。

写真7

 手甲の骨間は狭いので、指先を縦に動かしたら骨間に入らない
のでツボを探せません。ここでいう「横」とは爪の表面に平行な
方向で、「縦」というのは、指を折り曲げる方向です。

 深谷伊三郎先生は、「指を細く使う」のがツボ探しのコツと書
かれています。横に動かす方が指を細く使えることが分かるでしょ
う。

 2つあったら、イヤな感じや痛みの強い方を選びます。

 そのツボに痛がられないように刺鍼していきます(写真8)。

写真8

 瞬(まばた)きが出てきたり、腹の息が深くなるなどしたり、
患者さん役が何か感じたりしたら、その深さで、鍼を旋撚したり
横ゆらししたりしながら、患者さん役に、辛くないラクな範囲で
肩、首、頭を動かしてもらいます(写真9)。

写真9

 動作制限があったら、その動作をラクにできる範囲で繰り返し
てもらいます。気持ちよい動きを探す感じで動いてもらうと、上
手くいきやすいです。だんだんラクに動かせる範囲が大きくなっ
たら、改善している証拠です。

 腕を上げたり回したりがしにくいという動作制限の場合には、
刺鍼した所が痛まないように、無理のない範囲でゆっくり静かに
動かしたり戻したりする必要があります。

 場合によっては、術者の押し手や刺し手を離した方がいいこと
もあります。抜鍼する時には、また押し手をつくり、除抜します
が。

 刺し終わったら、先ず、刺鍼した所の凹み、ベタベタ、色、痛
さ、奥の堅さなどが変化しているか確かめます。次に、患部の痛
みや動作制限などの変化を確認します。

(2) 足の甲のツボで運動鍼

 腰など下半身の症状は、の甲のツボで応急処置をします。

 先ず、患者さん役に症状をよく話してもらい、動作制限のある
動作をラクにできる範囲でしてもらったり(写真10)、目で見た
り、手で患部を触ったりして、患部の場所が左右×前横後ろの6
つのうちの何処に分類できるか決めます。

写真10

 その患部が上になるように寝てもらう(写真11)と、患者さん
も寝ているのがラクだし、ツボ探しや刺鍼もラクにできることが
多いです。

写真11

 患部を上にする寝方と患者さんがラクに感じる寝方が違う場合
には、ラクな寝方の方を優先します。

 その姿勢で足甲のツボを探していきます。うつ伏せの場合には
膝を曲げてもらうと探しやすいです。

 腹など前なら2~3間、横(や冷え)なら3~4間、腰など後ろな
ら4~5間が原則です。が、隣に出ることもあるので、手の場合と
同じように、甲や指まわりを見て触って調べます。

 足の場合には、指の足裏側の関節部の横紋の端(写真12)が
ツボ探しの狙い目です。

写真12

 そこに小さいけれど押すと大変痛いシコリができていたら、
その延長線上の甲にツボが出ていることが多いです(写真13)。

写真13

 2,3カ所あったら、一番違和感の強い所、痛い所を選びます。

 そのツボに刺鍼していき、反応があったら、患者さんに腰を動
かしてもらうのですが、肩首と違って動かしづらそうだったら、
無理せずに術者が刺し手を離して動かしてもよいし、動かすのを
止めてもよいです。

 また、アゴを胸に近づけたり逆に首を反らしたりを、ゆっくり
繰り返してもらったり、首や手首を左右に捻転したり戻したりを
ゆっくり繰り返してもらうのもよいです。

 前屈後屈の制限がある場合には、アゴを胸に近づけたり、首を
反らせたりを繰り返すと効果が出やすいです。また、腰の左右捻
転制限があった場合には、首や手首の左右捻転を繰り返す(写真
14)と効果が出やすいです。

写真14

 そういう動きは、背骨を伝わって、腰の動きに連動しているか
らです。

 刺鍼した後、刺した所と患部の確認をし、その後に動作制限の
改善具合を確かめます(写真15)。

写真15

(3) 手の甲のツボで腰の運動鍼

 腰などの動作制限でも、立って動ける程度のものなら、立ち姿
勢で、手甲の4~5間に刺鍼しながら動いてもらう運動鍼や、後谿
に浅刺しての運動鍼もできます。

 先ず、動作制限のある動作を無理のない範囲で確かめてもらい
ます(写真16)。

写真16

 左右どちら側が制限になっているかで、左右どちらの手に刺鍼
するか選びます。

 手甲4~5間に刺鍼し、反応があったら、動作制限のある動作を
ゆっくり無理のない範囲で繰り返してもらいます。

 左右捻転制限なら、ゆっくり無理のない範囲で、腰を捻ったり
戻したりします。

 前屈制限なら、ゆっくり無理のない範囲で前屈したり戻したり
(余裕があれば天井を見たり)を繰り返します(写真17,18)。

写真17

写真18

 (2)で運動鍼ができなかった場合で立ち上がって調べたら動作制
限が残っていた時などに試みてみるとよいと思います。

 制限のある動作を、辛くないラクな範囲で、気持ちよさを探し
ながら繰り返してもらうのがコツです。

 この時に足甲4~5間を使わないのは、立位では足甲は緊張して
いるので、緩みにくく、響きが腰に伝わりにくいからです。

(3)おわりに

 運動鍼は、運動器系の症状の時には、必ずと言って良いほど、
よく使います。繰り返し練習して、しっかり身に付くけてくださ
い。


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最終更新:2015年06月09日 12:49