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術伝流・先急一本鍼・運動器偏 9.膝の痛み

膝の痛みは、脹脛から

(1)はじめに

 膝の痛みは、下半身の痛みの「成れの果て」という感じで、
膝の痛みを訴える人は、昔、腰痛、坐骨神経痛、足首痛など
の有った人が殆どです。それらが軽くて治療を受けるほどで
無かった場合もありますが。

 そのため、そのとき痛い急性症状が出ていても慢性期の要
素も多く、応急処置では辛さが減りきらずに残ってしまうこ
とや、痛みがぶり返すこと、再発も多くなります。

 治療の経過も長くなることも多いので、2,3回応急処置を
しても再発するようなら、慢性期の型(養生の一本鍼で解説
予定)を併用して、腹を中心に全身を整える必要も出てきま
す。患者さんには、治療が長びく可能性のあることを伝えて
おくとよいでしょう。

 とはいえ、1回の応急処置で長年の膝痛がすっかり治り、
伝えた操体などの自己養生を続けることで再発していない人
もいます。

 それに、例え、ぶり返しがあるとは言え、初めての応急処
置である程度改善しないと、患者さんには信用してもらえな
いので、よく練習して結果が出せるような技術を身に付けて
ください。

 また、膝の痛い人は、膝の皿まわりの痛みを訴えることが
多いですが、原因となるツボは膝裏側に出ていることが多く、
大腿裏から膝裏、そして下腿裏側に出ているツボを先ず改善
しないと膝の痛みは減りにくく、ぶり返すのも早くなります。

 「膝の痛みの改善は膝裏側、特に脹脛から」ということを
忘れないようにしてください。

(2)膝の痛みの応急処置の手順(図1)



 これまでにやってきた応急処置の総まとめという感じで、
練習してきた技を全て使います。今までの練習を思い出しな
がら練習してください。

 膝の応急処置も、前半、動作鍼、後始末に分けられます。
痛みが陽経側だけの時は応急処置も陽経側だけにしますが、
経過が長いせいかツボや痛みが陰経側にも出ていて、陰経側
も刺鍼する必要があることが多くなります。

 以下、陰経側も痛い場合を例に解説します。陽経側のみ痛
い場合には陰経側の刺鍼を省略します。

 応急処置の前半では、症状を良く確認したあと、先ずは陽
経側、陰経側の順で引き鍼をしてから、陽経側、陰経側に出
ているツボに刺鍼します。

 動作鍼も陽経側動作鍼をした後、陰経側の動作鍼も加える
のが基本ですが、膝の場合には、陰経側と陽経側が混ざって
しまうことも多いです。その動作が辛い時にどの辺りが原因
になっているかを考え刺鍼していきます。

 後始末は、頭に散鍼した後に手の甲に引き鍼します。

1.症状確認

 症状確認では、どのような動きが辛いか、日常生活で困っ
ていることをよく聞きます(写真1)。

写真1

 その1番目と2番目を日常生活に支障が無い位に改善する
ことを応急処置の目標にします。

 正座ができない、階段を降りるのが辛いという訴えが多い
です。正座ができない場合には、どの位までなら可能か(写
真2)、階段を降りるのが辛い場合には、膝をどのぐらい曲
げた状態で痛みが出るかを調べます(写真3)。

写真2

写真3

 どちらも痛みが出る直前の膝の曲がる角度を確認しておき
ます。

 膝の痛みに関係するツボは膝裏に出ているので、膝裏から
下腿にかけて、丁寧に調べます。

2.引き鍼と大腿裏〜膝裏〜下腿の刺鍼

 先ず足の甲に準備の引き鍼をするために、ツボを探します
(写真4)。

写真4

 陽経側は、4~5間が多いですが、3~4間のこともあります。
陰経側は、1~2間が多いです。陽経側に引き鍼した(写真5)
後、陰経側の足甲1~2間に引き鍼します(写真6)。引き鍼
をしながら動けるような運動鍼をしても良いです。

写真5

写真6


 その後にうつ伏せになってもらい、大腿裏から膝裏、下腿
裏にかけて、外側、中央、内側の3本のラインを調べます
(写真7)。

写真7

 外側は、膝裏のH字状の窪みの小指側の延長ラインで、委
陽を通ります。中央は、足裏中央のラインで、委中を通りま
す。内側は、膝裏のH字状の窪みの親指側の延長ラインで、
陰谷を通ります。

 その3本のラインを足の付け根の方から踵まで順に凹んで
いる所を押して圧痛がないか聞き(写真8,9)、圧痛のある
所を覚えておきます。印を付けてもよいと思います。

写真8

写真9


 外側では、委陽の2,3cm足首よりの下委陽、そのラインを
そのまま辿って脹ら脛が終わる辺りの飛揚〜外丘、踵の上の
陽大鐘など。中央では、委中の2,3cm足首よりの下委中、承
筋、承山、アキレス腱中央部など。内側では、陰谷の2,3cm
足首よりの下陰谷、築賓、大鐘など。そういう所に圧痛のあ
ることが多いです。

 古くなるとそのラインの延長線上の大腿部にも出ているこ
とが多くなります。踵の上の大鐘や陽大鐘は、踵の骨に足底
に向かって押し付けるように押すと圧痛がわかりやすいです
(写真10)。

写真10

 調べた3本のラインの圧痛のあったツボを外側、中央、内
側の順で、それぞれのラインでは腰の近い側から足首に向かっ
て順に刺鍼していきます(写真11,12)。

写真11

写真12

 踵の上の大鐘や陽大鐘は、踵の骨に足底に向かって、つま
り圧痛の有った方向に鍼を置いてから刺鍼します(写13)。

写真13

 この足裏側の刺鍼だけで膝の痛みがかなり改善され、膝を
動かして動診できるようになることが多いので、直ぐ動作鍼
に移ります。

 余り無いと思いますが、膝裏側だけの刺鍼では膝が動かし
にくい場合には、膝の表側、膝の皿の外側、内側、中央のラ
インを調べ圧痛のあるツボを探し刺鍼します。

 膝裏側と表側のツボの出やすいラインについては、図2も
参考にしてください。

3.膝の動作鍼

 今までしてきた動作鍼と基本的には同じで、できない動作
で最も伸びようとしている筋肉にツボが出ていることが多い
です。

 正座不可という動作制限が多いので、先ずは、その動作が
ラクにできる範囲で痛くなる直前まで曲げてみて(写14)、
膝の皿周りの窪みを調べ、一番痛い所を見付け、そこに先ず
刺鍼します(写真15)。

写真14

写真15

 いったん戻してから調べ直すと少し可動域が広がりますか
ら、先ほど刺鍼した所から下腿方向と大腿方向に溝を辿って
次のツボを見付け(写真16)、見付かったツボに刺鍼します
(写真17)。

写真16

写真17

 すると、また少し可動域が広がり次のツボは膝から先程よ
り遠くに出ます(写真18)。繰り返します。

写真18

 写真のモデル患者さんは比較的軽かったので、表側1ライ
ン3カ所の刺鍼で済みましたが、辛い動作によっては、足裏
の側に刺鍼する必要がある場合もあります。

 座位で症状が確認しにくい場合には、立って確認したり、
横向きなどの寝た姿勢で確認したりもします。

もう少しで正座ができそうなとき

 もう少しで正座が可能な場合や、できるけれど体重が掛け
られない場合には、ツボは大腿の胴体より、鼡径部や尻近く
に出ています。特に伸びる側の大腿付け根から尻にかけてツ
ボが出ていることが多いです。

 痛い側を上にした横向き寝で正座をした時と同じ位に膝を
深く曲げた姿勢でツボを探し刺鍼します。

階段を降りるのが辛いとき

 また、階段を降りる動作が辛いときなどは、ある程度改善
してからは、実際に階段を降りてもらうか、階段と同じ位の
段差で降りる格好してもらって、痛む所と曲がり具合を確認
します。

 実際に階段で検査するときには、手すりに掴まりながら降
りてもらい下で待つか、一段下から手を添えながら降りても
らいます。

 座位になれるところに戻って、同じ曲がり具合に膝を曲げ
痛んだ所辺りを探して圧痛のあるツボを見付け刺鍼します。

 何回か繰り返しになることもありますが、一鍼するたびに
改善していくので、それほどイヤがらずに試させてくれるこ
とが多いです。

4.後始末

 陰経側にも刺鍼したときには、後で腹の邪気が上衝する現
象が起きて、頭が痛くなったり熱が出たりする可能性もある
ので、念のため、頭に散鍼した後に手甲に引き鍼しておきます。

 手甲は、肩こりなどの仕上げの引き鍼と同じように、井穴
を摘んだり、指を反らせたり、甲の骨間を押したりして、出
ているツボを探します。

 余り無いと思いますが、陽経側だけに刺鍼したときは、足
甲の陽経側2~3、3~4,4~5間の何れか一番痛い所に刺鍼し
て終えます。

(3)おわりに

 膝の痛みの治療ができるようになると、それを応用して肘
や股関節の治療もできるようになります。

 肘については、腱付着部痛への鍼、捻転時の動作鍼という
技術がありますので次回解説します。が、股関節については、
膝と余り変わらないので、工夫して試してみてください。


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最終更新:2022年02月19日 23:39