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術伝流・先急一本鍼・運動器偏 22.運動器偏補足 ムチウチ

 ムチウチ

 内科系の表位の応急処置を連載してきましたが、運動器系急性
期のno.16のときに掲載できなかったムチウチの症例を体験しま
したので、割り込みで、書いておきます。

 基本的なことは、no.16で書いた上半身の運動器系応急処置と
同じですので、忘れてしまった人は、no.16を参照してください。

(1)ムチウチの症状確認でのポイント

衝撃を受けた姿勢、方向を詳しく聞く

 ムチウチの場合には、症状確認のときに注意することがありま
す。それは、事故などで、どういう方向から衝撃を受けたかとい
うことです。衝撃を受けた方向を、できるだけ、詳しく聞きます。
衝撃の方向と動作制限のラインが一致することが多いので。

 どこの座席で、どういう姿勢で、どういう方向から衝突され、
どういう風に衝撃を受けたか、などを詳しく聞きます。その後に
痛み辛さ動作制限などの症状が出た場所の移り変わり、現在の痛
み辛さ動作制限なども詳しく効きます。

大きな衝撃を受けた場合には、麻痺して痛みを感じないことも

 交通事故のような大きな衝撃の場合、一番目、二番目に衝撃を
受けた所は麻痺してしまって、その時は痛みを感じないことが多
いです。そのため、治療を受けないことになってしまうことも多
くなります。

 一週間後、一ヶ月後に鈍い痛みが出てきたりします。そういう
痛みは、長引くことが多いです。また、奥の方の場合は自覚痛は
感じないこともあります。

ツボの見付け方

 念のため、実際にやりにくい動作を無理のない範囲でしてもら
い、確認しておきます。また、日常生活でできなくて困る動作が
あれば、良く聞き、必要なら無理の無い範囲でしてもらい、確認
しておきます。

 また、事故時に衝撃を受けたであろう場所も目安になります。
素直に、動作制限の場所と衝撃を受けた場所がほぼ同じになるこ
とが多いです。が、違う場合もありますので、注意が必要です。

 時間が経過している場合には、動作制限のライン上や、衝撃を
受けただろうと予測した近くに、ペッコリ穴が空いたような所が
見つかります。虚したツボです。見た目にも凹んでいることが多
いし、指で押してみると、指がズブズブと奥まで入ってしまうこ
とが多いです。そこが、改善すべきツボの出ている場所です。

 経過が長いためか麻痺して痛まないことも多いので、患者さん
が痛まないと言ったからという理由で、選穴しない理由にはなり
ません。一番に衝撃を受けたラインか、日常生活で一番に困って
いる動作制限の中で最も伸びるライン、この二つのライン上で、
一番凹んでいる所が候補になります。

(2)刺鍼手順など

 手順は、五十肩や顎関節症など上半身の運動器系応急処置と同
じで、手甲引き鍼の後、見付けておいた衝撃を受けたラインなど
の虚したツボに刺鍼し、動作制限が残っているようなら動作鍼を
し、頭の散鍼と手甲への引き鍼で仕上げます。

 重い場合には、1回の治療で1方向の動作制限の改善という感
じで数回治療する場合もあります。しかし、軽い場合は1度の治
療ですっかり良くなってしまう場合もありました。

 重い場合は、体全体の調子を整えるために、腹診なども含め、
養生の一本鍼などを併用して治療します。

(3)症例

 3年近く前にムチウチになった人が講座に見学にいらしたので、
治療させてもらいました。

 始めに経過を聞いたら、バックミラーを見たときに後ろから追
突されたとのことでした。次の日くらいには、腰も痛くなり、日
が経つに連れて、痛みが増していったそうです。

 1年近くシビれた状態が続き、その後も時々痛み、2年経って
からは、左がツレる感じで、使わないせいか左の筋力が落ちた感
じがするとのことでした。

 ムチウチの症状確認でのポイントである、どういう方向から衝
撃を受けたかを考え、この場合には、左斜め上を見た時の姿勢で
真後ろからということになるかなと思いました。

 そこで、左斜め上を見た時に真後ろから衝撃が来た場合に、首
がどういう風に衝撃を受けるか思い浮かべながら、後頸部のツボ
を探しました。そしたら、首左側の背中に近い辺りに古いツボが
ありました(写真1)。

写真1

 先ず準備として、左手の手甲を調べ、出ていたツボに引き鍼し
ました(写真2)。

写真2

 その後、見付けておいた首左後側のツボに刺鍼しました(写真
3)。

写真3

 表層から鍼を入れていくと、非常に硬い筋肉に当りました。ム
チウチの場合には、頚椎の直ぐ上に患部があることが多いので、
この硬い部分は、おそらく奥の患部を庇(かば)っているためだ
ろうと、そこを刺し通していきました。

 硬い部分を通り抜けた感じがしたら、もう一つ非常に硬い筋肉
の層に当りました。そこも、おそらく、奥の患部を庇っているの
だろうと、刺し通していきました。

 そこを抜けたら、やはり、頚椎の直ぐ上にフニャフニャして冷
たい部分がありました。しばらく刺鍼していても動きが鈍かった
ので、真気を誘う(催気?)ように、ゆっくり大きめに鍼を動か
し続けました。

 しばらくして温まった感じがしたので、患者さん本人にも改善
したことを確認してもらってから、抜鍼しました。

 このように、冷たい部分を温めたり、虚している部分を補すた
めには、細かく速い動きで邪気を抜き出した後、ゆっくり大きめ
に鍼を動かしながら待つのが、コツだと思います。
(細かく速く動かし邪気を抜き出す>>>術伝流一本鍼no.77
(ゆっくり大き目で虚を補し温かく>>>術伝流一本鍼no.78

 抜鍼した後、ツボの出ていた所は、フニャフニャした感じや凹
みが、すっかり無くなっていました。周りで見ていた人にも確認
してもらいました。また、患者さんは、息が深くできるようになっ
たとのことでした。

 その後に、動作鍼に移り、首を動かしてもらい、動かしづらい
所、痛みが出る所を探してもらいました。ある角度で、左肩甲骨
上辺りが突っ張るというので、突っ張りを感じる角度に首を固定
し、ツボを探して刺鍼しました(写真4)。

写真4

 その後、また動いてもらうと、背骨側と肩甲間部側に突っ張る
所が移動しました。3回ほど動作鍼を繰り返して、不自由なく首
や腕が動かせるようになりました。

 事故の次の日くらいから、左腰も痛くなったと言うことでした。
それで、うつ伏せになってもらいました。すると、左脊柱起立筋
が盛り上がっているのが、目に付きました。これも、多分、悪い
所を庇っているのだろうなと、左腰を探したら(写真5)、虚し
ているツボを2つ発見しました(写真6)。

写真5

写真6

 そこに順に刺鍼していきました(写真7)。

写真7

 ここも古い虚したツボのせいか、なかなか変化しなかったので、
じっくりゆっくり大きく鍼を動かしながら、温まるのを待ちまし
た。2カ所刺鍼したら、案の定、左脊柱起立筋の盛り上がりは消
えました。

 その後、左痞根、仙腸関節、下腿、足首の周りなどに出ていた、
関連しそうなツボに刺鍼しました。

 左痞根のツボは、脊柱起立筋の外端で肋骨の近くです。脊柱起
立筋を横から突き刺すように、畳に平行に刺鍼します。途中で大
量に邪気が出てきたので、弾鍼して抜き出しました(写真8)。

写真8

 仙腸関節は、子供の頃から弱点だったとか、ここも大量の邪気
が溜まっていました(写真9)。

写真9

 下腿は、飛揚〜外丘の辺り(写真10)と築賓の辺り(写真11)。

写真10

写真11

 足首の周りは、大鐘(写真12)と陽大鐘(写真13)。

写真12

写真13

 この辺りは、腰痛や膝痛のときと同じような感じで、陽陰陽の
手順で、刺鍼しました。

 ゆっくり立ち上がってもらい、腰の前後屈(写真14)、左右捻
転(写真15)、そして、首を動かしてもらい(写真16)、違和感
の無いことを確認してもらいました。

写真14

写真15

写真16

 その後、頭に散鍼し(写真17)、手甲に引き鍼して仕上げまし
た(写真18)。

写真17

写真18

 古いツボを動かしたせいか、治療後に、温泉に長く入りすぎた
時のようなダルさが出てきたようでした。そのためか、時々しば
らく横になったりしていました。が、講座終了時には、すっかり
元気になっていました。

 1週間後に、また治療させてもらいました。

 初めに経過を聞いたら、左が柔らかくなって力が入らなかった
そうです。右で支えて仕事をしたので、右を治療しないで良かっ
たとのことでした。

 左首の肩寄り(写真19)や腰にはツボが出ていましたので、そ
の辺りを中心に同じような手順で刺鍼しました(写真20、21)。

写真19

写真20

写真21

 バックミラーを見たときに追突されたので、右腰が少し浮き気
味で左腰に体重が掛かった状態だったで、左首だけでなく、左腰
でも衝撃を受けたのかなと思いました。

 ムチウチの症例としては、興味深い症例を体験でき、ありがた
いなと思いました。 

追記2019.07.01


 ムチウチのツボは深いです。が、古くなる(発症から時間が経
つ)ほど深くなるような気がしてます。また、古くなるほど、奥
のフニャフニャの幹部の直ぐ上のカチカチ部分も硬さも酷くなる
傾向に有るように思います。

 ですから、発症後できるだけ早く鍼などで改善した方が治りや
すいように思います。




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最終更新:2019年07月01日 11:36