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術伝流・先急一本鍼・運動器偏 18.頭部の打撲に灸など

頭部の打撲に灸など

(1)はじめに

 今月から「養生の一本鍼」に入ろうかと思っていましたが、
興味深い症例を体験しましたので、その報告をします。

(2)忘れていた頭頂部の打撲

 頭頂部の辺りが痛いということでした。患者さんが指差す辺
りを調べてみたら、傷のような感じになっていました(写真1)。
そのことを伝え、心当たりがないか聞いてみたら、3日前に打
撲したとのことでした。

写真1

 そのときは痛くなかったとのことで忘れていたようで、当日
の朝から痛みを感じたそうでした。こういう打撲したときは、
痛みが出ずに、しばらくして痛みが出てくる打撲は、古傷にな
りやすいです。打撲したときは、あまりに強い衝撃のため麻痺
してしまうようです。

 交通事故のときなどは、1ヶ月後に痛み出すこともあると聞
きます。

 私自身20代に、左肩甲骨下部を打撲し、1週間後に痛み出し
ました。そして、その後遺症で、冷房の中に長時間いると、左
手の握力が殆ど無くなったり、疲れると左上半身が痛くて動か
せなくなったりという状態が続きました。

 40代の頃から、鍼灸、特に灸頭鍼をして、そういう状態は
だいぶ軽減しましたが、残っていました。

 50代初めにした脳梗塞の再発予防として、漢方の専門医に
勧められて、駆瘀血剤(桂枝茯苓丸)を服用しました。そした
ら、その御陰(副効用?)で、打撲の後遺症が改善し、今は少
し違和感が有る程度です。

 こういうのは、外傷性瘀血証だそうで、若い頃に打撲捻挫や
手術した人がなりやすいと聞きました。その漢方医は、長嶋茂
雄さんの医療チームの一員で、長嶋さんの脳梗塞も瘀血証が素
因の可能性が高いとのことでした。

 そういう経験を話し、注意を促した後で、治療に入りました。

(3)準備の引き鍼

 先ずは準備として、いつものように、手甲に引き鍼。頭の傷
の場所から、手甲の中で、だいたいツボの出ていそうな所を予
測し、出ていたツボに引き鍼しました(写真2)。

写真2

 その後、頭頂部ということで、「頭頂部の頭痛は、足厥陰」
ということを思い出し、足厥陰にツボを探してみました。急性
症状なので、足厥陰の急性症状のときに、よくツボの出る、蠡
溝、中封、太衝を調べました(写真3、4、5)。

写真3

写真4

写真5

 比較すると、中封が痛いということで、そこに刺鍼しながら
運動鍼のように首を動かしてもらいました(写真6、7)。

写真6

写真7

 刺鍼後患部を見たら、邪気が引けたせいか、傷跡の色が少し
薄くなっていました(写真8)。

写真8

(4)患部の散鍼と棒灸

 次に、熱を散らし、患部の代謝を促すために、患部の周りを
散鍼しました(写真9)。

写真9

 こういう打撲の場合には、瘀血の処理を促すために、炎症が
ある程度治まったら、灸頭鍼をすることにしています。今回の
場合は、場所が、頭頂部で、直ぐ下が頭蓋骨なので、灸頭鍼は
しにくいので、棒灸で炙ってみることにしました。

 試してみたら、温かい感じがするということで続けました
(写真10、11)。

写真10

写真11

 その後に患部を見たら、温まったのか明るいピンク色になり、
傷跡の色も、また少し薄くなっていました(写真12)。

写真12

(5)仕上げ

 先急の手順通りに、仕上げとして、手甲の八邪に出ていたツ
ボに刺鍼し、邪気を引いておきました(写真13)。

写真13

 次の日に治療後の様子を聞くためにメールをしてみました。
そしたら、

「頭の痛みは殆ど感じなくなりました。治療当日は少し頭が重
い感じがしたが、ドーゼオーバーではなかったです。頭に傷が
あることさえ認識していませんでしたし、原因が分かり良かっ
たです」

との返事が来ました。

(6)「四畔の灸」と灸頭鍼

 こういう打撲には、いわゆる「四畔の灸」も効果的です(特
に、タンコブのように腫れた場合)。今回のように、頭部で髪
の毛が生えている場所には難しいですが。

 腫れたりブヨブヨになっている部分と正常な部分の境目のラ
イン上にツボ探し棒を滑らし、凹んでいる所を見付けます。た
いてい1,2cmおきにツボが出ています。そこに、糸状灸や手指
用糸艾を立ててから、一気に点火します。

写真14

写真15

 私は、その後に、中心にも1壮施灸することにしています。
その方が改善が進みやすいからです。

写真16

 また、患部と経絡的に関係する指の井穴や骨空にツボが出て
いれば、そこにも施灸しておくと、より改善が進みやすいよう
に思います。

 多くの場合、次の日に、黄色い輪が患部の周りに出現します。
ヘモグロビンがビリルビンに変化したものが黄色い輪になって
見えるようです。そして、打撲した痕の青痣は、だんだん薄く
なり、押したときの痛みも減っていきます。

 また、腫れたりしていた患部の範囲が毎日狭くなっていくの
で、四畔の灸をする場所をそれに合わせて変更していく必要が
あります。四畔の灸をするたびに、正常な部分と正常でない部
分をよく確かめ、その境目にツボを探すようにしてください。

 また、先にも書きましたように、灸頭鍼も効果的です。刺鍼
したときには出血しなくても、灸頭鍼した後に抜鍼すると、血
がタラリと出てくることが多いです。奥に溜まっていた瘀血が
揺り動かされて出てきたのかなと思います。出てきた血を注意
して処理するようにしてください。

追記:2016.8.15
 比較すると、「"棒灸での炙り"や"温灸"や"四畔の灸"は、
浅い部分の瘀血に効果的」、「"灸頭鍼"は、深い部分の瘀血に
効果的」と言えます。


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最終更新:2017年02月25日 12:15