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術伝流操体no.10 全身運動と体重移動の関係

(1)応急処置から学ぶ操体の基本  10. 全身運動と体重移動の関係

はじめに

 「術伝流操体 その8」と「その9」では、手首・足首から
の動きを全身に伝えていくとどうなるかを体験してもらいまし
た。

 今回は体重移動と全身運動の関係です。「その8」と「その
9」でも少し取り上げたので勘の良い人なら分かってしまった
人もいると思いますが、一つずつ取り上げていきます。

 手首・足首の場合には、手首・足首を先ず動かして、それを
全身に伝えていくという手順を踏みましたが、体重移動の場合
には、ある全身の動きをするときにどういう体重移動をするか
という視点で見ていく方が、初めての人には分かりやすいので、
そういう順に説明していきます。

 次回、体重移動を切っ掛けにした操体を説明しますが、その
ときに、「体重移動を切っ掛けに全身にイイ感じを伝える」こ
とは味わってもらうことにします。

1. 前に曲げるときの体重移動

 これは、立ち姿勢で体を前に曲げる(前屈)ときに、体重を
どう移動させるとやりやすいか、イイ感じが生まれやすいかと
いうことです。体重の中心は腰にありますから、腰をどっちに
動かすと体を前に曲がりやすいかということにもなります。

 先ずは、色々と試してみてください。

 体に大きな歪みなどがある場合には違うこともあります。が、
ほとんどの場合、尻を後ろに引いてから、つまり、尻を後ろに
突き出し体重を後ろに掛けてから、体を前に曲げると、曲げや
すいことが実感できると思います(写真1)。

写真1

 写真で踵(かかと)よりも腰の中心が後ろにきていることに
注目してください。

 さて、前回の復習です。この場合に手首はどうすると、前に
曲げやすいでしょうか? 手を垂らしている場合には、手の小
指側を手甲側に回す手首捻転をすると、体を前により曲げやす
くなりますね。付け加えてみてください。

2. 体を反らせるときの体重移動

 立ち姿勢で体を反らせる(後屈)ときには、体重をどう移動
すると、やりやすいでしょうか? 1.と同じように腰をどう
移動させるとよいか、ということです。

 これも色々と試してみると、腰を前に突き出す、つまり、体
重を前に移動させると、体を後ろに反らせやすいことが分かる
と思います(写真2)。

写真2

 写真で爪先よりも腰の中心が前にきていることに注目してく
ださい。この場合、手を垂らしていたら、小指側を手平側に回
す手首捻転をすると、より体を反らせやすくなりますね。

3. 体を捻るときの体重移動

 体を捻転する場合には、体重をどう移動すると、つまり、腰
をどちらに移動するとやりやすいでしょうか?

 捻転する側に体重を移動させると、つまり、腰を捻る側に移
動させると、体全体を捻転させやすくなります(写真3)。

写真3

 写真で反対側の足の踵が浮いていることに注目してください。

 この場合には、左右の手首の捻転は小指側をどう動かすかと
いうことでは同じではなかったですね。

 手を垂らしていた場合には、「捻る側の手首は、小指が手平
側に回る手首捻転」で、「反対側は、小指が手の甲側に回る手
首捻転」ですね。つまり、天から見ると胴体も両手も同じ向き
に捻転していることになります。

4. 体を横に曲げる(側屈)ときの体重移動

 横に曲げる、つまり、側屈させるときは、どうでしょう。

 これは意見が分かれるかも知れません。というのは、子供の
頃に習ったラジオ体操では、操体でこうだよというのと逆のこ
とをしているので、それが身に付いてしまっている人がいるか
らです。

 ラジオ体操では、側屈するのと同じ側に体重を移動するよう
指導していますが、これは直ぐ戻しているから成り立っている
だけで、少し長い時間行うと側屈した側に倒れやすく安定しま
せん。

 側屈する側と反対側に体重を移動した方が安定し、少し長い
こと同じ姿勢を続けても立っていられます(写真4)。

写真4

 写真で腰の中心が反対側の足の上にきていることに注目して
ください。

 このとき、手首をどうすると側屈しやすいか、側屈が安定し
やすいかも、色々と試してみてください。

5. 手を上に上げるときの体重移動

 手を上に上げるときには、どういう風に体重を移動させると
やりやすいでしょう。試してみるとわかると思いますが、上げ
た手と同じ側の足に体重を移動させると、より手が上げやすく
なります(写真5)。

写真5

 写真で腰の中心が同じ側の足の上に来ていることに注目して
ください。

 このとき、手首はどうすると手が挙げやすくなったでしょう。
復習してみてください。 

6.落ちているものを拾うとき

 床などに落ちているものを拾うときには、どうでしょう。こ
れも意見が別れるかもしれません。

 腰を落とさずに体を前屈して落ちているものを拾うときには、
拾う手と反対側の足を前に出し、そちら側に体重を移した方が
拾いやすいのです(写真6)。が、同じ側の足を前に出して拾
う人もいて、それが原因で腰痛になっている人が多いです。

写真6

 同じ側の足を前に出して落ちているものを拾う場合には、しっ
かり腰を落としてから拾う(写真7)と腰を痛めにくいです。

写真7

 特に床にある重いものを持ち上げるときには、重いものの方
に臍を向けてから腰を入れて持ち上げないと腰を痛めやすいで
す。

7.利き手で作業するとき

 利き手で長時間作業するとき、つまり、料理をしたり、字を
書いたり、物を作ったりするときには、利き手と反対側の足を
前に出して、そちらの足に体重を掛けるようにする(写真8)
と作業しやすく、長時間作業しても腰を痛めません。

写真8

 長時間作業するときに利き手と同じ側に体重をかけていると
腰を痛めやすくなります。これも、腰痛の原因となる普段の姿
勢のうち非常に高い割合を示すので、注意してください。

9.素早く動くものを相手にするとき

 格闘技のときや卓球のときなど、近くで素早く動くものを相
手にするときには、6.とは逆になります。

 利き手と同じ側を前に出す、いわゆる、ナンバ歩きで半身動
作です。利き手を前に出すときには、同じ側の足を前に出して、
体重もそちら側に掛けます。反対側の手を前に出すときには、
反対側の足を前に出して、体重もそちら側に掛けます。そうす
ると、相手の素早い動きにも付いて行きやすく、疲れません。

 昔から間合い三間といいます。5m強以内の距離で、素手か
軽い武器を持ち素早く動くものを相手と格闘する場合には、利
き手と同じ側の足を前に出す半身動作が有利です。ですから、
色々な格闘技の試合場の面積は、だいたい直径5m強位です。

 相手にさらす自分の体の面積も少なくできるのも、半身動作
が格闘技に有利な点だと思います。ですから、日本に限らず、
西洋のフェンシングの場合も剣を持つ側の足を前に出していま
す。

 ただ、がっぷり組んで力を出し合う、相撲のいわゆる「がっ
ぷり四つ」などの場合は、ナンバ型では不利になります。相撲
は、離れたときにはナンバ、組んだときは利き手と反対側の足
を前に出す、この切り替えが素早いことが必要かと思います。

 ボクシングのジャブとストレートなども脚の使い方が逆です
ね。ジャブはナンバ、ストレートはナンバと反対です。

8.山道を登り下りするとき

 半身動作は山の急斜面を登り下りするときにも有利で、疲れ
ません。

 また、階段の昇り降りにも有利です。特に、2,3段跳ばし
て階段を駆け上がるときには、足と同じ側の手を前に上げる方
が絶対速いです。試してみてください。

 半身動作だと、足を上げたり下ろしたりする側と同じ手を上
げたり下ろしたりするので無駄がないからです。

 普通に歩くときのように、「前に上げる足と、反対側の手を、
前に出す」歩き方で急斜面を登ると、背骨を軸とする回転運動
が、手足で逆になるので、スムーズに体を上に上げことができ
ません。

 例えば、右足を前に上げる動作は、左足に体重を移し、そこ
を支点にして、体を天から見て反時計回りに回転させながら上
に上げる動作になります。が、左手を前に出す動作は、体を天
から見て時計回りに回転する動作につながるので、互いに逆の
動きになってしまい、効率が悪くなります。

10.重いものを持っての半身動作は腰を痛める

 半身動作の有利な点を挙げてきましたが、短時間作業でも半
身動作が不利なこともあります。

 餅搗きのように、重い杵を持上げて下ろすというような作業
の場合には、1回でも半身動作で行うと腰を痛めます。

 杵を持つときには、先ず、利き手前で杵を持ち、利き手と反
対側の足を前に出して、臼に臍を向けます。それから、利き手
を杵の先端の方へ移動させながら杵を上げていきます。十分上
がって突くときには、利き手を手前に移動させながら、杵の重
さを利用して落とし、手は方向を制御するためにだけ使うよう
にします。

 利き手前というのは、両手で杵を持つのですが、利き手が杵
の先端側になるように持つ持ち方です。

おわりに

 どういう動作をするかによって、利き手側の足を出した方が
良いか、反対側の足を前に出した方が良いかは違うので、それ
ぞれの動作に合うよう、しっかり身に付けましょう。体の動か
し方が効率的になり、体を歪めることが少なくなります。


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最終更新:2016年07月22日 08:06