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鍼術覚書 (3)ツボ

ツボ

はじめに

 ツボの出方には自然の法則がある。ここまで書いてきた
ことを含め、書き出す。

ツボの出方の自然則

1.ツボは、歪んだ体の負荷分担システム

 ヒトは動く生物、筋肉を伸び縮みさせて動く動物で、筋
肉を緊張させて負荷に耐える。心の負荷にも、体を緊張し
て耐える。負荷が1カ所に集中しないよう、関連する筋肉
で分担。

 筋肉は、3つの状態に変化する。必要に応じて自在に伸
び縮みする状態、過緊張してカチカチで伸びなくなった状
態、過弛緩してフニャフニャで縮めなくなった状態の3つ。
この過緊張、過弛緩は、一時的機能的なものなので、鍼灸
すれば改善する。

2.主な負荷は、重力

 ヒトは地球という星の地上で生きる生物で、重力を基本
的負荷として進化してきた。地球上の生物の形や動きを考
えていくときに、重力との関係を無視することはできない。

3.立位での重力負荷分担が十四経

 ヒトは、地球の地上で直立2足歩行するサル。立位の姿
勢では、天から見て重なる所同士で、重力を負荷分担して
いる。「頭の天辺の頭痛は足厥陰」もその関係。

4.臥位での重力負荷分担が愈募穴

 寝るときには体を横たえるから、重力負荷は体の横輪切
りの方向に掛かる。

 歪みが少ない人は、仰向け寝で寝ることが多く、背中の
筋肉の最も太い所で負荷を受け止めるから、兪穴が1行線
に並ぶ。

 歪みが大きくなると横向き寝などが多くなるから、横に
ズレて2行線や華陀経などに出やすくなる。

 兪募穴などは、寝た姿勢での重力負荷分担なので、普段
は歩かない赤ちゃんや寝たきりの人には、横輪切りのツボ
の方が効果的。

5.動作時連動筋肉内にツボが出やすい

 ある動作をしたときに一緒に動く筋肉にツボが出ている
ことが多い。ある筋肉にツボが出れば、一緒に動く他の筋
肉に余分な負荷が掛かるから。

 巨刺、上下刺、対角刺、奇経の「左内関と右公孫」など
も、この関係。

6.大きなツボは筋肉の厚い所に

 横輪切りや縦切りの原則から少し外れていても大きな筋
肉のある所にツボが出ることも多い。大きな筋肉の方が大
きな負荷を引き受けられるから。

 例えば、「肺の募穴が中府」、「目が悪いと、顎と首の
境目にツボが出る」など。どちらも関係する臓器の中心の
横輪切りラインからはズレているが、その辺りで最も筋肉
が厚い所。

7.ツボの上の皮膚表面は、凹んでいる

 ツボが出ている所の上の皮膚表面は、ペコペコと凹んで
いる。ツボの下の皮膚に近い筋肉が一時的に機能的な過弛
緩の状態、つまり、フニャフニャでズブズブになっている
から。

 ツボが出ている辺りを予測できたときに、ツボの出てい
る所を細かく特定するときの一番の目安。少しベタベタ湿っ
ていたり、艶(つや)が無く黒ずんでいたりも、目安。

8.ツボ末梢側の血行、神経伝達の阻害

 ツボの奥は、痼り、つまり、一時的に機能的な過緊張に
なっている。

 過緊張の状態になった筋肉が血管や神経に影響して、そ
こから末梢側の血行や神経伝達が阻害される。座骨神経痛、
三叉神経痛、顔面神経麻痺、冷え、瘭疽(ヒョウソ)、乳腺
炎、乳汁不足などの場合のツボの出方。

9.動作制限の直前で伸びる筋にツボ

 動作制限のあるときには、その一歩手前の姿勢で、最も
伸びようとしている筋肉の最も伸びようとしている所にツ
ボが出る。

 腱の付着部が痛いときには、その腱の筋腹にツボが出て、
腱付着部を引っ張っていて痛みが出る。指の動作制限でも、
その動作をする筋の筋腹にツボが出る。腕の最も太い辺り。

10.内蔵の機能的関係からツボを予測

 口内炎では、胃腸の調子が悪いことが多く、胃腸の病の
ときと同じ所にツボが出やすい。二日酔いのときには、肝
臓のツボとか。

11.ツボは古くなると横にズレる

 筋肉の最も太い所で受け止めようとするせいか、背中側
は1行線、腹側は腹胃経に、初めは出る。

 歪みが古くなると、そこだけでは負担しきれずに、だん
だん横にズレて出る。背中側では、脊骨の直ぐ脇の華陀経
と脊柱起立筋の外側の端(痞根、腰徹腹など)。腹側では、
臍の周り、章門、五枢~維道の辺りなど。

 現在は、そういう、正中の近くや体の横側にツボが出て
いる人が多い。昔の文献を参考にするときは、その点を考
える。例えば、昔は「女三里」(三陰交)との話があるが、
今は、その横の蠡溝の方が多い。

12.古い病のツボは体の境目に出やすい

 古い病に関係するツボは、体の境目、左右境界の正中線
の辺り、前後境界の少陽や厥陰、上下境界、頭と首の境目、
手足と胴体の境目などに出やすい。上下境界は二つ、横隔
膜の辺り、臍と命門を結ぶラインの辺り。

 古くなると横にズレて出る現象の「成れの果て」だろう。

おわりに

 この12個の自然則をよく理解することが大切。

 患者さんの訴えを聞いたり、体を目で見て手で触って確
かめたりしたことと、こういう自然則を照らし合わせると、
だいたいツボの出ている辺りを予測できる。

 後は、その辺りを見て触って、その辺りで一番凹んだ所
を見付けられれば、ツボは取れる。


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最終更新:2016年07月19日 11:42