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次の朝の寝覚めが爽やかか

体は自然、臨床は対話 【2】臨床は対話 
(4) 次の朝の寝覚めが爽(さわ)やかか

1.はじめに

 治療などをして、痼りが弛み全身のバランスが改善すると、
体に溜まっていた不要で有害なものを排出しようという動きが
出てくることがあります。

 多くは、治療をした次の日の朝までに起こります。

 汗の他に、涙、鼻水、鼻血、下痢、下血、痰、大小便、嘔吐
などだったり、皮膚が赤くなったり、熱が少し出ることもあり
ます。

 すると、体が一段すっきり透明な感じになります。

 それで、次の日、すっきり爽やかに目覚めることができます。

2.排泄が気持ち良くなるよう工夫する

 排出の仕方が普段と違っていたり、熱が出たりして、受け手
が驚かないように、「体がすっきり透明な感じになったり、寝
覚めが爽やかだったら、体に有害なものが排泄された証拠です
から大丈夫です」と伝えておいた方が良いと思います。

 それに、鍼灸や操体をして体に対する感受性が良くなった人
は、そういう排泄を気持ち良く感じることが多いので、説明し
やすいです。

 特に、治療した後の表情が晴れ晴れとしたときには、そうい
う排泄を気持ちよく感じるようです。

 もし、そういう排泄現象を気持ちよく感じられなかったと言
われたら、少し症状を消すことに頑張り過ぎた可能性がありま
す。

 次の機会には、症状を無くすことよりも、治療中にイイ感じ
の適切感を感じられることの方に力を入れる工夫してみましょ
う。

 この辺り、面白いなと思うのですが、体が不要になったもの
を一度に処理できないほど歪みを正そうと治療をしても、体は
イイ感じには成らないことが多いようです。

 この適量は、あくまで、受け手の体が感じる適切感で決まる
ので、治療者が思う適量と違うだけでなく、受け手が思ったり
言ったりする適量とも違うときがあります。

 排泄現象が気持ち良くないときには、受け手の「もっと、やっ
てください」という要請を鵜呑みにして、やりすぎたという場
合もあるので、注意が必要です。

 受け手に治療をした次の日の朝の寝覚めが良かったかどうか
聞いて、その受け手の体のその時の適量を判断するようにした
方が良いです。

 治療をイイ感じの適切なものにしたり、適量に治める工夫を
した上で、治療の終わりに、手の指を強めに刺激しておきます。
鍼灸なら、手甲への引き鍼や、手指への透熱灸。操体や指圧按
摩なら、指反らしや指揉み。

 手指を1本づつ調べ、指を反らしてピリピリビリビリするか
や、指と指との間の水掻きを調べたり、井穴を摘んだりして、
刺激すべき手甲のツボや、指のツボを見付け、強めに刺激して
おきます。

 こうしておくと、排泄現象が気持ちよく感じられる確率が高
くなるようです。

3.面眩と邪毒

 この排泄現象は、漢方の世界で「瞑眩(めんげん)」と呼ば
れている現象です。

 詳しく書くと長くなるので、何故「指周りを刺激すると、気
持ち良く感じてもらいやすいか」という理由を簡単に解説しま
す。

 江戸時代に古方派漢方を始めた吉益東洞は「瞑眩せずんば癒
えず」という言葉を残しています。体の歪みが取れると、必ず
何らかの排泄現象を伴うと考えたようです。

 体は、歪んでいるときにも「それなりにバランス」している
ので、それなりに生活していけるわけです。が、その「それな
りのバランス」を維持するための重りのような感じで、体の中
に毒物を溜め込むのかなと、私はイメージしました。

 体の歪みが取れてくると、「悪いなりのバランス」を取るた
めの「重りとしての毒物」は要らなくなるので排出しようとす
ると考えると分かりやすかったです。

 古方派では、この毒物を「邪毒」と呼び、主なものは「邪気」、
「水毒」、「瘀血」の3つだとしています。

 「水毒」は体液の悪化したもの、「瘀血」は血液の悪化した
もので、両方共、淀んで腐った水のような感じで、老廃物や未
代謝化学物質や増殖した細菌やウイルスなどを含んでいるとさ
れます。

 また、ツボの上の皮膚が少しベタベタしているのは、そこか
ら水毒が常に少しずつ染み出しているためという考え方もある
ようです。

 「邪気」は、手にピリピリビリビリした感じを受ける物のこ
とのようで、体に溜まった「邪毒」の中で、形が無く、目に見
えないが、邪毒としての存在は感じられる物を、まとめて、そ
う呼んでいるようです。

 「邪気」は「水毒」や「瘀血」から湧き出してくるとされ、
また、「邪気」が抜けると「水毒」や「瘀血」の毒性が弱まり
排出しやすくなるとされているようです。

 なんとなく、腐った水からメタンガスが吹き出しているイメー
ジだなと思うし、手にピリピリビリビリくることから電気のよ
うな感じも受けます。

 ガス(気体)のような性質があるのか、湧き出した邪気は上、
つまり、頭の方へ動き、上半身上部(表位)の症状、つまり、
頭痛、発熱、目眩、吐き気などを引き起こすともされているよ
うです。

 そう言えば、電気や空気にも「気」という言葉が入っていま
す。同じような性質があると昔の人が思ったので、どちらにも
「気」という言葉が入っているのでしょう。目には見えないが、
働き、つまり、機能は感じられるものを「気」と呼んだのかな
と思います。

 邪気の場合は、目には見えないが、邪毒としての働きは感じ
存在を想像できるから、「気」と言う言葉を使っているのかな
と思います。

 特に、病が動く発作的急性症状のときには、水毒や瘀血から
沢山の邪気が湧き出し頭を衝(つ)き、肩甲骨鎖骨から上の表
位で急性症状が出るとされています。

図1 

4.邪気を実感する

 ここで、「水毒」や「瘀血」ならまだしも「邪気」となると、
「そんなもの、あるわけない」という人も多いと思います。

 私は、次のような観察から、有ると考えてもよいのでは…と
いう立場です。

 ツボの出ている部分の10cm位上の空中を、皮膚に平行に指
先を動かすと、ツボの真上で指を動かすスピードが変わったり、
指が皮膚から離れる方向に跳ねたりする現象が観察できます。

図2

 先ず、一人の人に、前腕の手平側を上に向けて、水平に机の
上などに置いてもらいます。

 前腕だとやりやすいからで、背中でも腹でも同じ現象は起き
ます。

 もう一人の人に、その前腕の10cm上の空中を、腕の中央に
沿って肘から手首まで、指を、できるだけ一定の速度で、ゆっ
くり動かしてもらいます。肘から手首まで1秒位かけて。

 皆で横から観察してみましょう。

 所々で、少し指が上に跳ねたり、指を動かすスピードが変化
したりしているのに気が付くと思います。

 人を替えて実験してみても、場所が少し違うことはあるけれ
ど、同じように、上に跳ねたり、スピードが変化したりしてい
ることが観察できます。

 「私は邪気なんて分かりません。」と言う人でも、指は動い
ています。

 そして、その跳ねたりした所の下の部分の腕を押してみると、
痛かったりして、いわゆるツボになっているのが分かります。

 この実験は、参加する人に「邪気」の話とか、「こういう結
果になります」とか説明しないで、手順だけ説明して実験して
も同じ結果になります。

 この観察から、私は、ツボからは邪気が常に少し噴出してい
るのではないかと考えました。

 頭で意識できなくても、心で思えなくても、指は嫌な感じを
受けて避けるように動くようです。

 生物は、アメーバのような単細胞生物から進化しました。

 特別な感覚器官はないけれど、イイ感じのものには近づき、
イヤなものからは逃げられなければ、生物として生き延びるこ
とはできなかったはずです。

 人間の細胞の一つ一つにも、そういう原始的能力が残ってい
るのかもしれません。

5.邪気を手末端に引く

 さて、治療の話に戻ります。

 治療の終わりに手甲に引き鍼したり、指に糸状の透熱灸をす
ると、この邪気を指先から出せるようです。

 また、邪気が出ていくため、指を反らすとピリピリビリビリ
するみたいです。

 そのため、水毒や瘀血の毒性が弱まり、体の普通の排泄能力
で出しやすくなり、治療をした後の排泄現象が気持ち良く感じ
られやすくなるようです。

 「体は自然」で書いたように、手甲側は肩胛骨鎖骨から上、
手平側は横隔膜から上の体の内側と関係が深く、手首足首から
先は急性症状に向いています。それで、頭の方へ向かって動い
た「邪気」を手指の治療をすることで治めることができるよう
です。

 治療の後に、電話で頭が痛くなったなどと相談されたときに、
受け手にやってもらうこともできますので、覚えておいてくだ
さい。

 鍼灸ができなくても、手の指揉みや指反らしをしておくだけ
でも効果があります。

 もし、指揉みが上手く伝わりそうになかったら、「手の指を
反らして、一番ピリピリビリビリする指をしばらく反らしたま
まにしておいてください。ピリピリビリビリが少なくなるまで」
と伝えればよいでしょう。

 この方法は、免疫学者の安保徹先生によって有名になった、
指の爪の根本のツボ(井穴)の刺絡(針で刺して血を一滴出す)
や、そのツボの指揉みと、ほぼ同じ効果のある方法です。2つ
の方法より、やりやすく効果も出しやすいと思います。

 髪の毛を引っ張るという方法もあります。その方法でも頭の
方から「邪気」は出ていくようです。ただ、髪の毛を引っ張る
と、たまに「よけい頭が痛くなった」という人もいますので、
そういうときは中止した方がよいでしょう。

 邪気は刺激を与えた方に動く性質があり、髪の毛を引っ張る
と、そこから抜けても行きますが、上手く止めないと、次の邪
気を頭に呼び込むことにもなるためと思われます。

 髪の毛を引っ張るのに比べると、指揉みの方が、頭の痛くな
る確率は低いようです。また、髪の毛を引っ張った後に指揉み
指反らしをしておけば大丈夫だと思います。

6.おわりに

 治療した次の日の朝の寝覚めが爽やかになるように、色々と
工夫していきましょう。


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最終更新:2017年02月25日 06:28