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姿勢や動作でツボを探す

体は自然、臨床は対話 【1】体は自然 [3] ツボの出方、探し方
(3) 姿勢や動作でツボを探す

1.はじめに

 目の前のの人が、その時に、最もラクな姿勢、動きやすい動作、
動きにくい動作を利用したツボ探しの方法を書いていきます。

2.ラクな姿勢からのツボさがし

 先ず、姿勢から。患者さんに、その時に一番ラクな姿勢を選ん
でもらいます。

 言葉の通じる人なら、

「仰向け、うつ伏せ、横向き、どの寝方が寝やすいですか?
 横向きも左下でも右下でもどちらでも良いです。
 今、一番ラクになれる寝方で横になってください。
 寝方が決まったら、足や手を置く位置もラクにしてください。
 足や手を少し動かして、ラクな位置を探してみてください。
 色々試して、今一番ラクな姿勢で寝てみてください。」

 とか声を掛ければよいと思います。

 赤ん坊、認知症の老人、重度の障害者など、言葉の通じない人
の場合には、その人がその時に取っている姿勢でよいです。

 そういう、その時にその患者さんが取っているラクな姿勢を良
く見てください。

 そういうラクな姿勢で、一番上になるライン、一番下になるラ
イン、一番縮んでいるライン、一番伸びているラインにツボが出
ていることが多いです。

 このうち特に出やすいのは、一番上になっているラインと一番
縮んでいるラインです。

 一番上になるラインに出やすいのは、重力負荷を避けるためだ
と思います。

 一番縮んだラインに出やすいのは、ツボの奥は過緊張して硬く
縮んでいるので、ツボの出ているラインを縮めたほうがラクだか
らだと思います。

 一番下になるラインに出やすいこと、一番伸びたラインに出や
すいことの2つは、それぞれ、一番上になるラインに出やすいこ
と、一番縮んでいるラインに出やすいことの2つの表裏対応かな
と思います。

ラクな姿勢で上になるラインにツボが出る例

 ギックリ腰のときには、多くの場合、痛い側を上にした横向き
寝の姿勢しか取れません。そして、体を腹側に曲げた姿勢で寝て
います。上になった方の膝が、下側の足の膝よりも前に出ている
ことが殆どです。

 そういう姿勢で上になるラインに、ギックリ腰の応急処置に使
うツボが並びます。

 腰では、肋骨と腰骨の間の脊柱起立筋の一番外側(腰徹腹)、
腰骨の少し尻寄り(環跳)。

 大腿では、大腿横側中央(風市)。

 下腿では、膝裏の小指側の溝から2,3cm脹脛に寄った所(下委陽)、
その膝裏小指側のラインを足首の方に辿って脹脛が終わる辺り
(飛揚など)。

 足首から先では、外踝(そとくるぶし)と踵(かかと)の骨の間
(陽大鐘)、外踝の小指寄り(丘墟)、足甲の4~5間(地五会、
足臨泣)、足小指の指裏の皺の4指側の端、足4指の指裏の皺の小
指側の端など。

ラクな姿勢で縮んだラインにツボが出る例

 一番縮んだラインに出やすい例は、前にも出しましたが、脹脛
がツりやすい人の膝裏や鼠径部があげられます。

 また、古い五十肩で腕が少ししか上げられない人は、脇の下に
ツボが出やすいことも、例になると思います。

内科系症状のツボも姿勢から分かる

 ギックリ腰のような急性の運動器系の症状でなくても、慢性の
内蔵系の症状でも、姿勢からツボが読める場合が多いです。

 例えば、花粉症の人は、肩甲骨の間が下に尖った逆三角形に窪
んでいることが多く、夏などで薄着のときには、歩いている姿を
後ろから眺めただけで分かります。

 これは、肩胛骨の外側と腕の間(肩貞)にツボが出て、その奥
が縮んでいるためです。そのため、その痼りの上の肩胛骨外上側
の部分が肋骨の方に回転して近付き、その結果、肩胛骨の内上側
の部分が肋骨から離れて出っ張ってくるためです。

 呼吸器に関係する慢性症状の場合、この肩貞にツボが出ている
人が多いです。呼吸に関係する臓器のある所の中で、横輪切りに
した場合に筋肉の厚い所なので、出やすいのでしょう。しかも、
慢性期なので側面寄りに出やすいことも関係している感じです。

 喘息の人も、この傾向があります。また、喘息の人は、うつ伏
せになってもらうと、利き手側に顔を向けることが多いです。こ
ういう人は、肩甲間部の利き手側の背骨の直ぐ脇(華佗経)に溝
のような窪みができていて、その奥に硬い痼りがあります。その
ため、その部分を中心に肩甲間部の背骨の利き手側が縮んでいる
ので、首を利き手側に向けるのがラクになるわけです。

 こういう人を見かけたら、その溝の中で一番凹んでいる所に灸
頭鍼してあげるとよいです。

3.動作制限があるときのツボ探し

 患者さんがある特定の動作ができないと訴えているときのツボ
探しも面白いです。

動作の描く面と皮膚表面の交わる線状にツボが出る

 患者さんに、そのやりにくい動作を痛くなる手前までやっても
らいます。

 その時に注目するのは、動作の軌跡が描く平面です。痛みなど
が出る所がどう動いていくか、痛みの出る筋肉全体がその動作を
したときにどういう面を描くかを観察します。ツボは、「その動
作の軌跡が描く面」と「皮膚」との交わる部分にできる線の上に
並びます。

 こういうことを文章だけで理解してもらうのは、なかなか難し
いですね。

 例を出します。腕を真横に上げていく動作では、動作の軌跡は、
肩を中心に中指を先端にした円を描きます。その面と皮膚表面と
交わる線は、肩の横側から中指に繋がる線です。この動作がしに
くい患者さんがいたら、動かした腕に出る、その動きに関わるツ
ボは、その線の上に並びます。

 この動きは単純なので比較すると分かりやすいと思いますが、
他の動きでも同じです。

 立ち姿勢で、腕を垂らした状態で、小指側を手平側に回すよう
な手首捻転の動作制限を考えてみます。この場合には、肩の周り
のツボは、肩の先端から胸の方へ、床と平行な線の上に並びます。

 少し腕を外側に上げた状態で同じ動作の制限がある場合には、
上げた腕の上腕部と直角の線上(胸側)に並びます。

 これは、伸ばした腕を回転するという動作は、腕を伸ばした方
向と直角の軌跡を描くからです。

動作が大きくなるぼど、関節から遠くにツボが出る

 そして、面白いことに動作が大きくなるほど、一番ポイントに
なるツボは、動作の中心になる関節から、だんだん、遠ざかりま
す。

 先ほどの腕を垂らした状態から真横に上げる動作では、ほんの
少ししか上げられない場合には、肩の先端の直ぐ下2,3cmの所に
出ます。30度ほど上げられる場合には、三角筋の終わる辺り、
上腕の中ほどに出ます。45度位まで上げられると上腕の肘寄りに
出ます。

 これは、どの動作にも言えるようです。

 もう一つよく使うのは、腰痛などで腰が前に曲げられないで、
顔が洗えないときです。

 腰の前屈には、腰椎の中でも5番が関係しているようです。そ
れで、少ししか前曲げができないときには、痛む側の背中の肋骨
の下側辺りと、尻中央から足と尻の境目辺りにポイントとなるツ
ボがあります。

 そこを鍼などして弛めると、もう少し前に曲がるようになり、
ポイントとなるツボは、大腿裏側の中央辺りに移動します。

 また、そこを弛めると、もう少し前に曲がるようになり、ポイ
ントは、大腿の膝裏近くに移ります。

その動作で最も伸びようとしている所にツボが出る

 この動作の軌跡のラインでツボを探すというのは、別な言い方
をすれば、その動作で最も伸びようとしている筋肉の一番伸びよ
うとしている部分に出るということです。

 表裏対応のためか、最も縮もうといている筋肉の一番縮もうと
している部分にもツボが出ることもあります。

 その動作の軌跡のラインで、最も伸びようとしている所を調べ
るツボ探しの方法は、どの関節の可動域制限にも当てはまります。

 痛い一歩手前まで制限のある動作をしてもらい、最も伸びよう
としている筋肉か、最も縮もうとしている筋肉のライン上で、一
番凹んだ所を探し、その姿勢を変えないで鍼をします。

 一度、動作を戻してから、もう一度動作をしてみると可動域が
広がっています。

 まだ、十分な可動域にならないときには、十分になるまで同じ
ように繰り返します。一鍼するごとに可動域が広がっていき、ツ
ボは、制限のある関節から、しだいに、遠ざかった所に出ます。

 指など手首足首から先で鍼を痛く感じるときには、同じことを
糸状灸でやります。

4.腱付着部痛のツボ探し

 また、これと良く似たもので、ツボが腱を引っ張っていること
が原因で痛みや動作制限が出ることがあります。

 つまり、骨に腱がついている所に症状が出ているときには、そ
の腱の筋腹にツボが出ていて、そこが縮んで腱を引っ張っている
ことが原因で痛みや動作制限が出ることがあります。

 肘、踵、顎関節症のときの顎関節などで、直ぐ下が骨で筋肉が
殆ど付いていない所の痛みや、バネ指など指の動作制限のときに
よく見られます。

 やはり、痛みや動作制限が起こる少し前の姿勢で、痛みや動作
制限を起こしている所から、筋を胴体の方に辿り、凹んだ溝の中
の一番凹んだ所を押すと、ツボが出ています。

 まれに反対側の末端寄りの筋肉に出ていることもありますが、
ほとんどは胴体寄りの筋肉に出るので、先ず胴体寄りを調べて見
付からなければ末端側を調べるとよいです。

 ただし、顎関節症のときには、下顎を釣る筋に多く、頬から額
の横寄りの側頭部に出ます。

 肘の尖端の痛みのときには、上腕の一番太い辺り。踵の痛みの
ときには、脹脛の一番太い辺り。バネ指のときには、前腕の一番
太い辺り。

5.おわりに

 もちろん、鍼灸では、未病を治すことも必要なので、そこだけ
するわけではなく、全身のツボを見ていきます。

 でも、一番ポイントになる所が分かれば、先急後緩の先急、つ
まり、応急処置のポイントが把握できます。

 今回の部分は、具体的には、術伝流一本鍼(あ)の「先急の
一本鍼・運動器」で、部位別に詳しく解説しています。


   >>>つぎへ>>>ツボから先の血行や神経伝達の障害



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最終更新:2017年05月28日 15:27