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術伝流一本鍼no.59 (術伝流・養生の一本鍼・応用編(11))

初めて診る病に出会ったら

1.はじめに

 臨床の場では、今まで学んだことのない病気や症状を訴える患
者さんに出会うこともあります。鍼灸の良い所は、そういう人に
対しても応急処置や慢性期の養生ができることです。うろたえず
に、できる範囲で、当たり前のことを当たり前にします。

 先ずは、患者さんから、症状や病の経過を良く聞きます。そし
て、時間をかけて全身を診察させてもらい、大きな歪みや古いツ
ボを探します。体全体の大きな歪みは少し遠目に眺めたほうが分
かりやすいこともあるので、そういうこともしてみます。

 急性症状が出ていたら、体のどの辺りで、一番、病が動いてい
るか、どの辺りで邪気が蠢(うごめ)いているか、見当をつけます。

 機能性病変か器質性病変かの鑑別をしっかりすることも大切で
す。急性症状で器質性病変の可能性が高ければ、救急医療との連
携を考慮します。

 慢性期では、水毒、瘀血など腹の邪毒のうち、どれが一番関係
しているか見当を付けます。そして、出ている大きな歪みや古い
ツボと、それらの邪毒との関係に矛盾がないか調べ、考えます。

 古い病や打撲などが関係していることもあり、ケガや手術など
を中心に、昔の病歴を聞く必要もあります。また、普段している
仕事の時の姿勢や動作を始め、環境面に由来することもあります。
必要と感じたら、その辺りも聞きます。

 標準的な現代医学の治療がどうなっているか、調べます。また、
どういう病理か、どういう組織の病変か、なども調べます。イン
ターネット、図書館の本や雑誌なども利用します。

 鍼灸など東洋医学の症例を探してたりもしてみます。症例を沢
山発表している先生の本は役立つことが多いです。仲間を集め、
症例報告や症例相談をするメーリングリストなどを作るのも良い
です。また、講習会などで知り合った先生や先輩に質問するのも
良いと思います。

2.ツボの出やすい所

2.1.慢性的症状

2.1.1.古いツボ、古い歪み

 先ずは、古いツボが出やすい所、古い病、打撲、手術に関係す
るツボが出やすい所の2つを診ます。体の大きな歪みに関係する
所です。腹、脹ら脛、首の3か所には、古い歪みが出やすいです。
上腕大腿の陰経側に出ていることもあります。

 それらと経絡的に関係する所に出ていることが多いです。

 それらとの横輪切り相関する所も診ます。患部やそこと関連す
る所の背中側(体の後ろ側)などです。

 術伝流一本鍼no.50「古い病、古いツボ」を参考にしてくだ
さい。

2.1.2. 動作、血行、神経の関係

 症状の出ている所と、動作の連動、血行、神経伝達での3点で
関連する所も診ます。

 動作の連動とは、症状の出ている所と、一緒に動くことが多い
所です。

 血行や神経伝達関連では、患部(や幹部と関係する所)の少し
中枢寄りを診ます。中枢寄りとは、血行なら心臓寄り、神経伝達
なら脳寄りの所です。

 この辺りは、術伝流一本鍼no.52「目、晴れやかに」に、詳しく
書きました。

2.1.3. 心の疲れなど

 心の疲れなどが関係していそうなら、そういう関係のツボが出
ていないか調べます。

 術伝流一本鍼no.51「心を鎮める」を参照してください。

2.1.4. 女性特有のこと

 女性の場合は、女性特有のことも考慮した方が良いです。

 術伝流一本鍼no.55「生理痛から安産・産後まで」を参考に
してください。

2.2.急性症状

 急性症状のツボは、邪気が一番蠢いている所の横輪切り相関と
縦切り経絡的相関の2か所を中心に探します。横輪切りでは、頭
首胴の背中側が中心です。経絡的相関では、手足経絡の手首足首
から先の方が、狙い目です。

 この辺りは、内科系は、術伝流一本鍼no.19〜21、23〜26を
参考にしてください。運動器系は、術伝流一本鍼no.1〜18、22
などを参考にしてください。

3.手順

 先ずは、患者さんの辛さが少しでも減らないか考えます。急性
症状に関係するツボを、運動器系応急処置や内科系応急処置の手
順で施術します。「先急」、「先ず急を治す」ですね。

 辛さが少しでも減らせたら、次からは、慢性期の養生の手順で、
腹を中心に見付けたツボを順番に改善していきます。鍼のみで変
わりにくいツボが見付かったら、灸や灸頭鍼も組み合わせて治療
していきます。

4.東洋医学は病人治療

 こうして書いたものを読むと、今まで書いてきたことと殆ど変
わりがないことに気付くでしょう。そこが、鍼灸など東洋医学的
治療の面白い所です。目の前の患者さんのその時の体の状態にピッ
タリ合ったことができれば、自然に、症状は改善していきます。

 東洋医学は、病気治療(特に病名治療)ではなく、病人治療で
す。自然則に基づき、目の前の患者さんのその時の体の状態にピッ
タリ合ったことができるよう、精進と工夫を重ねていきます。

5.今までの自然則と違うことが出てきたら

 目の前の患者さんのその時の体の状態に合わせていくうちに、
今まで使ってきた自然則と矛盾することが出てくるかもしれませ
ん。そういう時も目の前の患者さんのその時の体の状態を優先し
ます。

 そういう時こそは、新しい発見のチャンスです。その状態を良
く観察し、今までの自然則の内容を改善したり、新しい自然則を
見付けていきます。

 そして、そういう新しい発見を伝え合う仕組を作り、どんどん
伝え合い、みんなで向上していきましょう。


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最終更新:2015年08月13日 20:48