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術伝流一本鍼no.58 (術伝流・養生の一本鍼・応用編(10))

置鍼法への応用

1.はじめに

 今まで書いてきたような術伝流一本鍼の治療は、置鍼にも応用
ができます。

 置鍼する場合も、刺鍼時も抜鍼時も、刺法の三原則「手足に引
く」「陽に引く」「下に引く」を守ることが大切です。

 浅鍼で深い所に響かせたいなら回旋術をしてから置鍼するとよ
いです。表位などに熱い所が有れば、先ず散鍼してから鍼を刺し
ます。刺すツボは一本鍼と同じですが、姿勢を考慮して無理の無
いものを選びます。

 患者さんの大きな動き、咳、くしゃみなどに配慮します。寝返
りを打ちたくなったり、咳やクシャミをしたくなったりしたとき
には声をかけてくれるよう、あらかじめ伝えておきます。

 置鍼時と抜鍼時に、鍼の本数を数え、同じか確認することを習
慣にします。

 患者さんを近くで見ていないと、患者さんの反応が分かりにく
いので、注意が必要です。

 肺のある所は、置鍼中にシコリが弛み、鍼が奥まで刺さり、気
胸になることがあるので、奥のシコリが弛んでも大丈夫な長さの
鍼を使うなどの工夫をする必要があります。

 術伝流一本鍼の方法でツボが取れ効果が出せるようになってか
ら挑戦すれば、比較的直ぐにできるようになります。

 置鍼法では、邪気よりも真気の動きが大きいように思います。
この真気の動きの気持ち良さに引かれ、置鍼による治療が好きに
なる人も多いです。そのため、慢性期の養生には、置鍼効果的な
こともあります。

2.慢性期の養生、全身調整の手順

2.1. 診察

 先ず、仰向けで、脈診、舌診、腹診をします(写真1)。

写真1

2.2. 仰向けの置鍼
 それから、手の陰経→陽経、(腹)、足の陰経→陽経の順で、
ツボ、特に古いツボを探し、刺鍼した(写真2)後に置鍼します
(写真3)。

写真2

写真3

 手の陽経は、腕を置く位置が難しい時には、うつ伏せに回して
もよいです。腹は、切皮程度か、円皮鍼にします。省略してもよ
いです。

 しばらく置鍼してから、刺鍼時と同じ順序で抜鍼します。足陽
経の鍼を抜く前に弾鍼などをして、上衝しやすい邪気を下に引い
ておくとよいです(写真4)。

写真4

2.3. うつ伏せの置鍼

 次に、うつ伏せで、首、肩、(腕)、背中、腰、足の後側の順
で、ツボ、特に古いツボを探し置鍼します(写真5)。

写真5

 肋骨より下には刺さないように、肋骨より皮膚側の筋肉内に鍼
先があるように、気を付けます。また、置鍼中にシコリが弛んで
も、胸腔を包む膜に鍼先が届かないような配慮も必要です。

 しばらく置鍼してから、刺鍼時と同じ順序で抜鍼します。足陽
経側の一番足先よりの鍼を最後に抜鍼します。そして、仰向けと
同じように、抜鍼前に弾鍼などをして、上衝しやすい邪気を降ろ
しておきます。

2.4. 補の灸頭鍼、補の灸の併用
 仰向け、うつ伏せのどちらも、置鍼中に古いツボや古い病に関
係していそうなツボがあったら、それらのツボに補の灸頭鍼をし
ます(写真6)。

写真6

 腹のヘソ周りなど灸頭鍼よりも補の灸が向きそうな所は、補の
灸をします(写真7)。

写真7

 そういう感じで灸頭鍼や灸をすると、ただ置鍼だけするよりも
変化が早いです。

 また、灸頭鍼している間に、邪気の出る量が多く、上衝が心配
なら、灸頭鍼した所と経絡的に関係する手足末端に出ているツボ
に刺鍼し、弾鍼などをして、邪気を末端に誘導します。

 私は患者さんの体が変化していく様子を見ているのが好きです
し、安全の点からも、置鍼中に患者さんの傍(そば)からは離れ
ないことにしています。灸頭鍼や補の灸をしたり、末端に置鍼し
た鍼を弾鍼したりし、指を反らしたり、関連するツボに指を触れ
て変化を見たりしています。

2.5. 仕上げに座位で頭散鍼、手甲へ引き鍼

 仕上げに、座位で、頭の熱い所に散鍼した(写真8)後に、手
甲に引き鍼(写真9)します。

写真8
写真9

 これは、施術後に立歩きはじめたときのフラつき、その後の頭
痛や目眩などの邪気の上衝による症状の防止に効果的なので、忘
れないようにしてください。

3.簡便法の手順

3.1. 肩・腰など背中側の症状

 ラクな寝方で寝てもらい、手甲、患部の周囲、足の陽経の順に
ツボを探し、置鍼します。抜鍼は、上から下に、首、肩、背、腰、
足、最後に手甲の順でします。手甲の抜鍼前に、弾鍼するのも同
じです。

 ラクな寝方で寝てもらうのは、置鍼中の患者さんの大きな動き
を少なくするためです。

 手甲の鍼は、置鍼しにくければ抜いてしまいます。そのときは、
仕上げに座位で、手甲に刺鍼します。

 置鍼中に古いツボや古い病に関係するツボに補の灸頭鍼をする
と効果的なのは、全身調整のときと、同じです。

3.2. 養生、体質改善

 仰向けで、腹への補の灸と組み合わせます。手陰経の肘の付近
(写真10)、足の陰経〜陽経(写真11)の順で置鍼した後に、
腹の古いツボに補の灸をします(写真12)。

写真10
写真11
写真12

 刺鍼と同じ手順で抜鍼します。足の陽経を抜鍼する前に弾鍼な
どして、邪気をおろします(写真13)。

写真13

 その後、頭に散鍼し(写真14)、手の指端または骨空へ透熱灸
をして仕上げます(写真15)。

写真14
写真15

 指端や骨空への灸は、目覚ましなので、治療した後に寝られる
ときは省略してもよいです。その場合は、手甲に引き鍼しておい
たほうが無難です。

3.3. 手足の肘膝から先で自己養生

 自分の手の届く範囲に円皮鍼を簡便法の手順で貼ることで、自
己養生できます。その上や近くへツボの間接灸や操体法などの運
動法を併用すると、より効果が出やすいです。また、一人で右手
の治療もできて便利です。

 手足の肘膝から先のツボに円皮鍼を貼るだけでも、かなり改善
します。経絡の効用を感じます。

4.おわりに

 「今まで置鍼して大丈夫だったのに、頭痛など治療後の辛い症
状を言われた」という相談を受けることが2000年以降増えてき
ました。近頃は邪気が沢山溜まっている人が増えてきているせい
かなと思います。

 そんなときに以上のような手順で置鍼抜鍼してもらったら、そ
れから治療後の辛い症状を言われることが少なくなったと聞いて
います。

 置鍼は、一本鍼と比較すると、真気を動かす方法で、邪気が動
く可能性は低いです。が、邪気が沢山溜まっている人だと、邪気
も動いてしまいます。動いた邪気は上衝し、横隔膜から頭にかけ
ての急性症状を引き起こしやすいです。

 抜鍼手順に注意したり、後始末として、頭の散鍼、手甲の引き
鍼、手骨空への透熱灸をしたりすると、そういう急性症状が起き
る可能性を減らせます。

 説明した置鍼は例なので、慣れている置鍼法に応用してくださ
い。


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最終更新:2015年08月18日 09:41