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術伝流操体no.56
【5】応用篇 (9)カゼや内科系急性症状への対処
カゼや内科系急性症状への対処

1.はじめに

 内科系急性症状は、重ければもちろん救急医療に任せる必要が
あります。東洋的物療で対処できる急性症状は、機能的疾患まで
です。機能的疾患でも重いものや、器官破壊を伴うものは、救急
医療に繋ぎます。

 が、機能的疾患で軽いものなら、操体を始めとする徒手療法で
も、ある程度の対処は可能です。昔から伝わっている素手による
方法があります。試しにやってみて軽くなれば、様子を見ること
ができます。

 やってみて数時間以内に施術前と同じくらい痛みが復活したら、
直ぐに救急医療に任せることも大切です。器質性疾患や、重い機
能性疾患である可能性が高いからです。

 軽い人で欲練習してから、重い人を見るようにしてください。

2.基本的な手順

(1)ラクな姿勢になっているか確認
(2)指をキッカケに
(3)背中側のツボへの施術を付け足す
(4)ラクになるまで続ける
(5)仕上げに手の指もみ

2.1. ラクな姿勢か確認

 先ずは、姿勢に無理がないか確認します。姿勢に無理があると、
効果が出にくいからです。

 服装や敷物などにも無理がないかチェックします。

2.2.指をキッカケに

 応急処置なので、末端である手首・足首から先、特に指を使う
ことが多いです。

 井穴や八邪を揉んだり、指を反らしたりして、指を選びます。
井穴を挟んで揉み痛みが強い所、八邪を挟んで厚く揉んで痛い所、
指を反らしてピリピリビリビリした感じが強い所を選びます。

 選んだ指を揉んだり反らしたりしてみて、反応が良い手段を選
びます。反応は、症状の軽減の他、顔の表情、腹への息の入り具
合、姿勢の変化なども見ます。

 刻一刻と変化する、受け手の体に合わせて、手段や具合を即時
即応させ続けます。続けてる間、反らし具合、反らす方向、揉み
方、揉みの強さなどを、体の変化に応じて合わせていくというこ
とです。

2.3. 背中などのツボへの施術を付け足す

 症状の出ている部分の背中側を始め、頭首胴の背中側に出てい
るツボへの指圧などを付け加えます。

 背を丸めているときは、その曲がりの一番出っ張っている辺り
が狙い目です。その辺りに指を滑らして、ツボを探します。

 ただし、喘息発作のときは、背は反らし気味で、その一番反っ
ている辺りを探します。

 頭痛、メマイなど、症状の場所が胴体でないときは、頭首の背
中側(〜横側)を中心に探します。

 出ていたツボを指圧したり、皮膚操体したりします。これも、
反応の良い手段を選びます。痛みの強いときには、強めに押した
方がラクになることが多いです。が、そうでないこともあります。

 このとき、キュウクツそうな所があれば、声をかけて動いても
らいます。

2.4. ラクになるまで続ける

 ラクになるまで続けます。続けている間も、顔の表情、お腹へ
の息の入り具合、姿勢の変化などを観察し続け、丁度よい感じを
保つようにします。

2.5. 仕上げに手の指もみ

 仕上げに手の指もみをします。

 内科系急性症状は、上衝を伴う場合が多いので、仕上げに手の
指揉みをしておいたほうが、症状が再発したり、別の症状が出た
りする可能性を低くすることができます。

3. よく使う組み合わせ

 症状によって、よく使う指、背中側のツボが、それらの使い方
が、ある程度決まっています。

3.1. 吐き気

 左薬指を軽く反らしながら、左肩甲骨下端辺りに出ているツボ
を軽く指圧するか、皮膚操体します(写真1)。

写真1

 左が効くことが多いですが、右のこともあります。

3.2. 耳鳴り、メマイ

 症状のある側の薬指を軽く反らしながら、首の耳より部分〜頚
椎4番辺りまでに出ているツボに皮膚操体します(写真2)。

写真2

 まれに中指のこともあります。

3.3. 腹痛

 薬指を強めに反らしながら、胃の六灸に使う胸椎7~11番辺り
のツボを強めに指圧します(写真3)。

写真3

 左のことが多いですが、右のこともあります。また、中指が良
いこともあります。

3.4. 頭痛

 頭痛のある所と、それと経絡的に関係する指を使います。

 前頭部痛のときは、拇指や示指を強めに反らしながら、症状の
ある所や首前側上部に出ているツボに皮膚操体したり、症状の出
ている辺りの髪の毛を軽く引っ張ったりします(写真4)。

写真4

 症状の強い側が効果的なことが多いですが、反対側のこともあ
ります。

 偏頭痛のときは、症状の出ている側の薬指(中指)を強めに反らし
ながら、 症状のある所や首横側上部に出ているツボに皮膚操体し
たり、症状の出ている辺りの髪の毛を軽く引っ張ったりします
(写真5)。

写真5

 後頭部痛のときは、症状の強い側の小指(薬指)を強めに反らし
ながら、 症状のある所や首横側上部に出ているツボに皮膚操体
したり、症状の出ている辺りの髪の毛を軽く引っ張ったりします
(写真6)。

写真6

 症状の強い側が効果的なことが多いですが、反対側のこともあ
ります。


3.5. 不整脈

 左側の小指を強く反らしながら、肩甲骨の左下角辺りに出てい
るツボを軽く指圧するか皮膚操体します(写真7)。場合によっ
ては、示指の骨空をつかい、強めに指圧します(写真8)。

写真7
写真8

 まれに心臓が右にある人がいるそうですが、そういう時には右
を使います。

3.6. 軽い喘息発作

 利き手側の母指を強めに反らしながら、利き手側の胸椎3番辺
りの華佗経に出ているツボを、横から胸椎に押し付けるように、
強めに押します(写真9)。

写真9

 反応を見ながら(写真10)、良さそうなときに、反らした母指
を弾くように瞬間脱力します(写真11,12)。その途端に息を吐
き、発作が治まることが多いです。

写真10
写真11
写真12

 ちょっとコツが要りますので、軽いときに練習するようにして
ください。

3.7. まとめ まとめると以下の図1のようになります。


図1

4. 別のキッカケを使うもの

 3.で説明した、指反らしと背中側のツボの組み合わせ以外の方
法もあります。

4.1. 腹痛に腹への皮膚操体

 腹痛のときに、大腸の左側上部の曲がり角あたりに手の平を当
て、軽く温めるような感じで皮膚操体します(写真13)。

写真13

 横行結腸から下行結腸への曲がり角あたりです。右側の上行結
腸から横行結腸への曲がり角のこともあるので、左側で変化が遅
いときは、右側もしてみます。

 また、同じ側の薬指を反らすと変化が早いこともあります。

4.2. 気絶に脇腹を拳骨でゴリゴリ

 橋本敬三先生が第2次大戦中に爆弾が近くで爆発し気絶した人
に使ったそうです。肋骨と骨盤のあいだの脇腹の背中よりを拳骨
の四指骨空で、ゴリゴリ強めに刺激します(写真14)。

写真14

4.3. カゼへの指圧操体

 カゼも軽いものなら、指圧や操体でも対処可能です。

 先ず、軽く手の指揉みをした後、仰向けで、鎖骨の首側~胸上
部を弛めます(写真15)。膻中の直ぐ脇の肋間から肋骨1本上がる
ごとに外寄りにツボが出ていて、中府に至ります。順に指圧して
いきます。

写真15

 前頚部(写真16)〜横頚部~後頚部(写真17)~後頭骨下縁を弛め
ます。後頚部や後頭骨下縁は母指骨空でします(写真18)。

写真16
写真17
写真18

 うつ伏せで、肩~肩甲間部を弛めて(写真19)、上腕前腕を弛め
(写真20)、手指揉みで仕上げます(写真21)。

写真19
写真20
写真21

 時間があれば、腹や大腿の太陽~少陽もします。

 応用編の始めのころ解説した、操体と指圧の組み合わせを参考
にしてください。

 橋本敬三先生は、カゼが長引いたときには、腸恥隆起の特に左
側に圧痛のあるシコりがある(写真22)と書き残されています。
見つかったら、左膝抱え込みと皮膚操体の組み合わせで対処しま
す(写真23)。

写真22
写真23

 セキが長引いたときには、鎖骨の腹側にスジバリがあることが
多いです(写真24)。そのスジバリに皮膚操体にしながら、母
指を反らして、そのスジバリを弛めます(写真25)。

写真24
写真25

 この2つは、内科系急性症状とは言えませんが、おまけです。

5. おわりに

 内科系急性症状への操体をはじめ手技による対処を書いてきま
した。もちろん、こうすると効果が出やすいということで、目の
前の受け手の体の様子に合わせていくことは大切です。試しにやっ
てみる経験をたくさん積み重ねて、効果を出せるようになってく
ださい。

 また、はじめに書いたことに関連しますが、内科系急性症状で
は、手を出してなんとかなるかどうかの見極めも大事です。この
辺りも経験を積み重ね、見極めが有効な確率をあげていくように
してください。


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最終更新:2017年02月25日 14:50