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術伝流操体no.93
【6】自然則篇 (29)「おんころや語録」と自然則
「おんころや語録」と自然則

1.はじめに

 「おんころや語録」というのが出てきました。

 橋本敬三先生が晩年の頃に、『体の設計にミスはない』など操
体関係の本を出していた出版社の柏樹社からPR誌『柏樹』という
のが出ていました。

 そのPR誌の「操体法の原点を探る」特集の一部として載せられ
ていたものです。「おんころや」というのは、橋本先生が晩年に
は自分の治療室である温古堂を、そういう風に呼んでいたからの
ようです。

 「操体法の原点を探る」特集に載せられただけあって、操体法
に大切なことが書かれています。16字×130行位で、さっと目を
通すには丁度よい量なので、一時期はA4紙1枚にコピーして持
ち歩き、折にふれて読んでいました。

2.原始感覚で気持ち良い方に逃げる

 「おんころや語録」から特に自然則に関係しそうな部分を抜き
出してみます。

 「体の設計にミスはなく…ちゃんと治るようにできている」
 「頑張り方を覚えるな、逃げ方を覚えよ。力では治らない、動
きで治るのだ…」
 「操というのは、痛い方から楽な方へ気持よく逃げることさ」
 「異常感覚は本人にしか分からない。それは病気ではない。体
のアンバランスを示すサイン…逆らえば病気に…逆らわずに逃げ
ていく…」
 「生まれたばかりの赤ちゃんを見よ。しょっちゅう手足を動か
している…痛いことなど決してしない。決まった動きも何もない。
ただ無意識に体を動かしている。」
 「生きていくには、自分でしなければならぬ事が4つある(息
食動想)…人間は動物だから、動くことが大切…スーッと気持ち
よく力まないで動くこと…(息食動想の4つは)全て気持よくや
れば良い、これが自然の法則である」
 「生物には皆、原始感覚が与えられている…気持ちの良い、悪
いの識別を感じ分ける能力…この感覚に順って気持ちのいい方に
常時、動いて逃げ続けて生きていけばよいだけ…天然の法則は極
楽にできている」

 いかがでしょう。この自然則篇で書いてきた内容と、ほとんど
同じ事が書かれているように感じるのですが。

 …生物に与えられた原始感覚に順って、気持ちのよい方に、赤
ちゃんのように無意識で動いて、逃げることが大切…それに逆ら
うと病気になる…それが自然法則…

 まとめれば以上のようなことになりそうに思います。特に大事
だなと思うのは、「生物に与えられた原始感覚に順って」と「赤
ちゃんのように無意識で動いて」の部分と思います。

 操体の世界では、「痛い方から楽な方へ」とか「気持よく」と
いうことは、よく強調されます。が、その2つに比べて、「生物
に与えられた原始感覚に順って」と「赤ちゃんのように無意識で
動いて」の2つは忘れられがちのような気がしています。

 「人間が大人になって身に付けた学問知識を意識して、それに
従って」ではないということは、操体をする時に忘れないように
したいなと思います。

3.気持ちのよいことをするのは悪いという躾

 「生物に与えられた原始感覚」や「赤ちゃんのように無意識で」
ということでは、「おんころや語録」には、以下のような興味深
い記述もあります。

 「100%…人間誰しもこれを要求…60%とれば間に合うのだが、
欲が深すぎる。ほどほどに生きれば、この世は極楽…慾張ると怪
我をする」
 「気持ちのよいことをしたいのが人間…すればいいのに、しな
いのが人間…気持ちのいい事をするのが悪い事のように躾けられ
てしまった」
 「人間は頑張って生きていくべきだ、と勘違いしているのが一
般情勢になってしまっている」
 「発達するには頑張りが必要ではあるが、先ずバランス感覚で
快感を味わうことが大切…キツイ事、不快な事を無理してするの
が鍛錬だと、思い込んでいる迷信を捨てる事」

 ここら辺りは難しいですが、体の原始感覚で感じる「気持ちよ
さ」と、心で思う「気持ちよさ」を区別して行けば良い感じがし
ています。

 「体の原始感覚で感じる」気持ちよさに順って行くと、たいて
い「60%で満足」できることが多いです。が、「心で思う」気
持ちよさに従うと「100%を欲張る」結果に陥りやすいように思
います。

 これは、「心で思う」気持ちよさというのは、「体の原始感覚
で感じる」気持ちよさから離れて、抑圧されてしまった反動であ
ることが多いからのような気がしています。

 つまり、「体の原始感覚で感じる」気持ちよさの通りに動くこ
とを、「人間は頑張って生きていくべきだ、と勘違いしているの
が一般情勢になってしまっている」世間で、「気持ちのいい事を
するのが悪い事のように躾けられ」て、抑圧されてしまった結果
に対する反動なんですね。

 抑圧の反動、つまり、幻を求めていることになるので、際限な
く欲張ることになりやすいのだと思います。

4.一生退屈しない、工夫してみる

 ですから、「人間は頑張って生きていくべきだ、と勘違いして
いるのが一般情勢」の世間で、操体法的生き方をしていくのは、
一生の課題なのかもしれません。

 「おんころや語録」には、以下の記述もあります。

「原始感覚を追いつづけることによって一生退屈しない…ウソか
ホントか試してみる…工夫してみる…弥次馬は面白いよ」

 「気持ちのいい事をするのが悪い事のように躾けられてしまっ
た」にも関わらず、「人間は頑張って生きていくべきだ、と勘違
いしているのが一般情勢」の世の中で、「生物には皆、原始感覚…
気持ちの良い、悪いの識別を感じ分ける能力…この感覚に順って
気持ちのいい方に常時、動いて逃げ続けて生きていけばよいだけ…
天然の法則は極楽にできている」という生き方を貫いていくのが
操体法…というところでしょうか?

 まぁ、あんまり気張っても頑張ることにしか繋がらないような
気がするので、のんびり、ゆっくり、色々な工夫をしてみて、ヤ
ジウマを楽しみながら実践していけば良いことなのでしょう。

 そして、それは、一生飽きずにやっていける、一生退屈しない
ほど、工夫のしがい、ヤジウマのやりがいのあることなんでしょ
う。

 そして、それが「この世は極楽」という言葉の中身なんでしょ
うね。確かに、なかなか実践しがいが有るというか、退屈などし
ている暇は無さそうな感じですね。

5.おわりに

 昔は、一々、「今の瞬間に感じている気持ちよさ」が、

(1)動物由来の「体」が「原始感覚で感じている」事なのか、

(2)「人間は頑張って生きていくべきだ、と勘違いしているの
が一般情勢」の世の中で、「気持ちのいい事をするのが悪い事の
ように躾けられてしまった」「心で思っている」事に過ぎないの
か、

チェックしてみたこともありました。

 でも、今は、そういうことをしなくても、割りと素直に原始感
覚で気持ちよさを感じられるようになっているなと思います。

 そういう状態になれたことに、先ず一番に関係していると思う
のは、第1子の生後6か月位のアクビ・ノビだったように思いま
す。それまで見た、操体はじめ気功,太極拳,整体,野口体操など東
洋的運動療法の達人たちよりも理想的な動き方をしているように
見えました。

 ですから、「おんころや語録」で、橋本先生が「生物に与えら
れた原始感覚」や「赤ちゃんのように無意識で」と書いているこ
とは、素直に納得できます。

 操体って言うのは、新しく事を覚えることではなく、赤ちゃん
の頃には普通にできていたことを思い出すだけなんだなと思いま
す。これからも、一生かけて、いろいろ工夫ヤジウマし、より深
く思い出していこうと思っています。

追記:おんころや語録の全文は以下です ーーー


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最終更新:2018年05月07日 13:49