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術伝流操体no.91
【6】自然則篇 (27)自立のために症例を残そう
自立のために症例を残そう

1.はじめに

 先回は、「自立を目指すことも自力」ということで、自立の重
要性を書きました。極言すれば、「先生の言葉でしか操体を語れ
ないうちは自立したとは言えないし、自力で操体ができるように
なったとは言えない」ように思います。

 そこで、今回は、自立した操体操者になるためには、どうした
ら良いかということを書いていきます。

2.自然則は同じでも表現形式は違う

 時代や場所を超えて成り立つのが自然則ですが、表れ方は時代
や場所によって少しずつ違います。

 操体など東洋的物療は、「気持ち悪いことをすると体が歪む、
その状態が続くと症状が出る」、「体に気持ちのよいことをして
歪みを改善すると、症状が消える」というのが基本でしたね。

 ここで、「体が歪む」のは、筋肉の中に機能性病変を起こした
所が発生してしまうからです。必要もない時にも緊張したままの
部分が残り、骨などを引っ張ってしまうため、歪んで見えます。

 操体を初めとする東洋的物療は、こうした筋肉の機能性病変の
改善を手段としています。

 そのため、時代や場所により体の使い方が変われば、違いも出
てきます。つまり、体の使い方が変われば、酷使する筋肉にも違
いが出て、機能性病変を起こす場所も少しは違ってくるというこ
とです。

 例えば、この20年位は、携帯とパソコンを使うようになった人
が多くなっています。橋本先生が操体をまとめていた1960年代
の仙台とは、人々の働き方が違っています。

 60年代の仙台では「表層の運動筋」を使う割合が多く、比較す
ると、現代は「深層の姿勢維持筋」を使う割合が多くなっている
と思います。

 ですから、現代では、昔の本に書かれた通りのギュパッストン
型の操体では、気持ち良いと言ってもらえないことも多くなりま
す。

 パソコンを一日中使い続けるような仕事をしている人は、姿勢
維持筋が機能性病変を起こしていることが多いですから。そうい
う場合は、フワ〜ポワンフックニャァ型の操体の方が気持ち良い
と言ってもらえる可能性が高くなります。

 これからも時代によって、仕事の仕方が異なってくれば、それ
に合わせて、歪み方、機能性病変の出やすい筋肉も異なってくる
でしょう。そういう場合も、目の前の人の歪み方に合わせて、気
持ち良いと言ってもらえる操体をアレンジしていくことが大切に
なると思います。

 ですから、今、自分の生きている時代の自分の周りの患者さん
の特徴を把握することが、操体臨床をしていく上では大切です。


3.症例を残そう

 今の時代に自分のいる場所の人々の歪み方の特徴を把握するた
めには、沢山の人に操体をしてみるのが良いと思います。特に、
敏感な患者さんとの「体と体のコミュニケーション」は役に立つ
と思います。

 そして、よく出会うコミュニケーション、興味深いコミュニケー
ションなどは、症例として書いていきます。特に、昔の例と違い
のあるものは公開していきましょう。

 まだ、操体をさせてもらえる相手が少ないうちは、二人組での
操体練習会を開くなりして、操体をする機会を増やしていきます。

 そして、二人組での練習では、受け手役は、体の中の様子をで
きるだけ詳しく口に出していきます。操者役は、受け手役のその
時の体の状態に合わせて、操体を変化させられるよう練習してい
きます。

 この時にも、今まで経験したことのないようなタワメの間など
があれば、症例の形に書いてみるのも、練習になると思います。

 いずれにしろ、症例を残していくことは、その時代の体の歪み
方と、それに合わせて操体を応用した記録を残していくことにな
ると思います。それを積み重ねていくことで、橋本先生が操体を
まとめた意味も理解できるようになっていくと思います。

4.より深い自然則を理解していこう

 橋本先生の個性や活躍された時代の特性と、自分の個性と今と
いう時代の特性、それらの違いもハッキリと認識できるようになっ
ていくでしょう。

 それは、操体の自然則を理解するのに不可欠と思います。何故
なら、前にも書きましたが、自然則というのは共通部分にあるか
らです。

 違いが分かったら、違わない部分、つまり、共通部分がどこか
考えていけば、より深いレベルで自然則が理解できるようにって
いきます。

 そしたら、理解できた自然則を自分なりの言葉で書き出してい
きましょう。そうすることで、自分の言葉で操体を語れるように
なっていくと思います。そして、そういうことを通して、だんだ
ん、操体操者として自立していけるようになっていくと思います。

 そして、そうすることが、操体をまとめてくださった橋本敬三
先生に対する感謝の表現のような気が私はしています。

5.おわりに

 こうやって考えていくと、橋本敬三先生が、東洋的物療に興味
を持ってから操体としてまとめるまでの数十年の間になされたこ
とに近いことをしていくことのような気がしています。

 操体操者として自立するということは、橋本敬三先生が遺した
結果を真似てできるようになることだけではなくて、そういう橋
本敬三先生が操体をまとめていく過程で歩んだような生き方を真
似していくことなのかもしれないなと思います。

 「正体術はじめ色々な東洋的手技運動療法、鍼灸などの中から
共通の自然則を見つけ出し、その時に自分の目の前にいる人に合
わせて、気持ち良いと感じてもらえるように応用していく」

 そういうことを、橋本敬三先生は、されていたように思います。
それと同じような工夫を続けて行きたいなと思っています。


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最終更新:2015年01月04日 15:57