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術伝流操体no.89
【6】自然則篇 (25)「気持ち良さ」と「自力」
「気持ち良さ」と「自力」

1.はじめに

 先回は、「橋本敬三先生は、東洋的物理療法の共通点の自然法
則を見つけ出し、人や時代や場所に合わせて、伝えた」というこ
とを書きました。

 今回は、東洋的物療の中での操体の特徴、操体らしさって何だ
ろうという点を書いていきます。

 操体らしさは、「気持ち良さ」と「自力」を重視すること、そ
の2つだと思います。ただし、この2つのことは、誤解されやす
い面もあります。その辺りを中心に書いていきます。

2.体が感じる「気持ち良さ」

 操体は、「人間の体の設計にミスはない」から、気持ち悪いこ
とを無理して重ねてバランスを崩した状態を、「気持よく元に戻
す」方法です。

 「無理な矯正は体を歪める」ことになりますから、「痛くない
動きが痛みを取る」、「気持よく動けば良い」ということですね。

 ここでの「気持ち良さ」というのは、動物的な、あるいは、赤
ん坊の頃に持っていた原始的な感覚で感じる「気持ち良さ」とい
う点に注意する必要があると思います。

 『万病を治せる妙療法 操体法』には、「感覚で健康を判断」、
「大切なカンをみがくこと」、「原始感覚」、「人間だけが知識
が発達してカンがにぶった」などと書かれています。

 「心で思う気持ち良さ」というよりも「体が感じる気持ち良さ」
と言ってもよいかもしれません。

 この2つの言葉は、橋本敬三先生の本には出てきませんが、今
の人に操体で言う「気持ち良さ」を説明する時には通じやすいな
と思っています。

 今は「気持ち良い」という言葉は、水泳で優勝した選手が
「チョーキモチイー」と叫んだ状態のようなことと思っている人
が多いからです。

 操体で言うような「気持ち良さ」は、「なんとなくイイ感じ」
という表現の方が伝わりやすいように思います。

 また、「チョーキモチイー」と叫んだ状態のような「キモチヨ
サ」は、「抑圧からの開放」、「抑圧の反動」に近く、操体で言
う「原始感覚」としての「気持ち良さ」とは違うようにも思いま
す。

 体で感じるというよりも、心で思い込んでいる感じが強く、ヤ
リ過ぎになりやすいように思います。

 操体は、あくまで「操体」であって、「操心」や「操想」では
ないと思います。体が感じている気持ち良さを素直に心に思い浮
かべられるカンを取り戻し、それを使って、体を操(あやつ)っ
て、より深い気持ち良さを探し味わうための技術と思います。

 「気持ち良さ」を重視するあまりに、「操心」や「操想」にな
り、カンで原始感覚で感じる「気持ち良さ」から離れてしまわな
いようにしたいなと思っています。

 『万病を治せる妙療法 操体法』を読み返して、改めて、病気
というのは、体が感じることを素直に心に思い浮かべられずに無
理を重ねて、体のバランスを崩したことが原因と思います。

 心についての知識も参考にはなりますが、あくまで、それも知
識であって、それに振り回されて、「原始感覚」としての体が感
じる「気持ち良さ」から離れてしまわないように注意したいなと
思っています。

3.自分のカンで判断する「自力」

 また、「自力」というのは、「操者の言う通りに、自分で動く」
ことではなく、「自分のカンで感覚的に判断する」ことのように
思います。

 前にも書きましたが、私の次男は、23週600g強で生まれた超
未熟児で、脳性麻痺でした。彼を育てるのに、操体は、とても役
に立ちました。

 初めは歩けず、巧緻性障害もあって、小学校1年の1学期は、
一文字も書けませんでした。本人がやりたくて仕方がなかったTV
ゲームも、小3までは上手くできませんでした。

 今では、ブラインドタッチでワープロ検定1級はじめ沢山の情
報処理の資格を取るまでになりました。その過程で、操体に大変
お世話になりました。操体がなかったら、もっと障害が残り、で
きないことが多かったように思います。

 脳性麻痺で巧緻性障害もあるので、体が上手く動かせませんで
した。風船を膨らませたりも不可だったことからも分かるように、
手足だけでなく、舌や口、体中が上手く動かせない障害でした。

 また、感覚的にも一般とは違っていて、赤ん坊の頃に初めて
「くすぐり療法」を試した時には、脇腹をくすぐったがりません
でした。

 全身で、ただ1カ所、腕に近い胸の部分だけをくすぐったがり
ました。これは、肺の機能が低かったからのようです。後に、鍼
灸学校で、その場所は「肺の募穴」と呼ばれる所で、腹側では肺
に一番効果的と習い、とても納得が行きました。

 そういう状態でしたので、「操者の言う通りに、自分で動く」
ことを要求しても、不可能でした。

 脇腹をくすぐったがらないことが分かった時には、くすぐり療
法では無理なのかと、目の前が真っ暗になりました。しばらくし
て、絶望なんかしてられないと思い直し、全身をくすぐってみま
した。

 そしたら、胸の一番腕に近い部分だけをくすぐったがることが
分かりました。毎日数回くすぐっていました。

 当時は、肺の組織の肺胞が半分潰れていたそうで、酸素ボンベ
からのチューブを鼻の下につけていました。2カ月ほどの間くす
ぐった後の検診で、肺胞がほぼ全部開いたことが分かり、酸素ボ
ンベは外してよいことになりました。

 その他にも、脳性麻痺児の特徴である内反尖足を強調する姿勢
の「タワメの間」になる操体が好きだったりしました。

 そして、障害のない一般の人にも、ラクな寝方で寝てもらい、
それを少し強調する姿勢が「タワメの間」になるような操体を試
してみたら、非常に気持ちが良いと言ってもらえました。

 そんな経験をしてきましたので、余計、橋本先生の言う「自力」
というのは、「操者の言う通りに、受け手に動いてもらう」こと
ではなく、「受け手のカンで自分で感覚的に判断してもらう」こ
とが中心になると思っています。

4.他人の気持ち良さが分かるのがプロ

 『 万病を治せる妙療法 操体法』には、見付けられませんでし
たが、橋本先生は「他人の気持ち良さが分かるのがプロ」とも言っ
てらしたと聞きました。

 それで、私は、定番の操体に近いことをする時でも、受け手の
体が気持ち良いと感じそうなことを提案し試してもらい、イイ感
じがしたことを付け加えてもらうようにしています。

 足をキッカケにしていたら、首や手の置く場所や向きなどなど
です。立位や座位では、そういう体の末端の動きだけでなく、体
重移動も付け加えてもらいます。もちろん試してもらいイイ感じ
のする方を選んでもらいます。

 寝た姿勢で体重移動は、立位や座位よりも難しくなりますが、
尻や腰の動きで体重移動ができることもあります。そういう時に
は、寝た姿勢でも体重移動を試してもらいます。

 そういう風に一つ一つ試してもらった方が、受け手もイイ感じ
を増やしていく方法を身に付けやすいように思います。そして、
結果的に、自宅で自分で一人操体をする習慣を身に付けやすいよ
うに思います。

5.おわりに

 「気持ち良さ」と「自力」の2点を伝えて目指すことは、受け
手が、自宅など普段の生活の中で、自分の「原始感覚」で「気持
ち良さ」を「自力」で判断し、逆モーションバック運動を中心に
イイ感じを増やし、自分で自分の健康を取り戻すようになれるこ
とだと思います。

 講習会の場ではするけど、自宅では実行しない、実行したくて
も不可能では、「自力」で体の歪みを取り除き、「自力」で「生
体の歪みを正す」ことが可能になったとは言えないと思います。

 受け手が、普段の生活の中で、必要に応じて操体できると良い
なと思っています。無意識に操体していたという感じだと、もっ
と良いなと思います。そうです・・・無意識にアクビやノビをし、
寝相を変える、元気な赤ちゃんのように。

 そして、できれば、周りの人もそんな感じで操体ができるよう
に、周りの人に操体を伝えられると、もっと良いなと思います。

 そういうことを目指して、「気持ち良さ」や「自力」の2点を
伝えていきたいなと思っています。


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最終更新:2015年01月03日 17:13