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術伝流操体no.88
【6】自然則篇 (24)自然法則と、個性や時代場所の特性を掛け合わせる
自然法則と、個性や時代場所の特性を掛け合わせる
1.はじめに
『万病を治せる妙療法 操体法』などの本に書かれた操体と、先
回紹介した『操体法 橋本敬三の世界 温古堂診療室から』の動画
で橋本先生がなさっていた操体は、見た目は大きく違うと思われ
る人は多いでしょう。
そして、その後から現在まで、色々な先生が、講座などで実演
されたり、DVDなどで動画として公開されたりしている操体も、
先生方一人一人、それぞれ随分と違うなと思われる人も多いと思
います。表現を変えて言えば、皆さん非常に個性豊かな操体をさ
れています。
いわゆる「仰向け膝立て膝倒し」などの二人組操体と、「中腰
尻振り運動」などの一人操体も、同じ操体と呼ぶには、差が大き
いと思われる人もいるかもしれません。
それ以上に、「仰向け膝立て膝倒し」などの二人組での「動き
の操体」と、それとほぼ同じ効果を持つ二人組での「皮膚の操体」
も、同じ操体と呼ばれていることに疑問を持つ人が多いかもしれ
ません。
2.初心者は違いに目を奪われる
そうなんですね。私も操体を習い始めた頃は、違いばかり目に
ついて、目を白黒させて、戸惑っていました。
「中腰尻振り運動」などの一人操体は、「尻振り」と言っても
フラダンスのような動きとは程遠く、気功や太極拳のような動き
だなと思いました。
「仰向け膝立て爪先上げ」は、野口整体の操法などに似た動き
に見えました。皮膚操体は、野口整体の「愉気」や気功の「外気
功」に似ている感じがしました。要するに、それぞれ違う手技運
動療法に見えました。
操体の講座を始めて20年位になりますが、初心者の感想や質問
を聞いていると、初めのうちは、やっぱり違いの方に目を奪われ
ている人が多いように思います。
3.共通点に目を向ける
しばらく戸惑った後、前にも書きましたが、赤ん坊のノビを見
ているうちに共通点があることに気が付きました。赤ん坊のノビ
やアクビに似ているということです。
そして、操体のバリエーションも、ヨガや気功や整体などの他
の東洋的手技運動療法も、みんなアクビの技術化なのかもしれな
いなと思いました。
操体で言う「動診」、「タワメ」、「瞬間脱力」という要素が
あるなと思いました。操体のように、その3つが全て揃っていな
いものもありますが。
4.橋本敬三先生は、自然則を伝えた
そう思ってから、『万病を治せる妙療法 操体法』を読み返し
てみると、ちゃんと書いてありました。
目次だけ見ても、「バランスのくずれと健康」「バランスを調
整する無意識行動」「感覚で健康を判断」「大切なカンを磨くこ
と」「運動系の秘密の原則」「痛くない動きが痛みを取る」「気
持よく動けばよい」「テクニックにこだわらない」「体の動かし
方・動作の極意」「無理のない動作は美しい」「無理のない動き
のきまり」「重心移動の法則を知る」「覚えてほしい自然法則」
「動かすコツ・動くコツ」「運動生理をよく知って治す」「痛み
を取る極意はこうだ」「寝ていての快適運動」「気持よく元に戻
すこと」など。
「バランスを調整する無意識行動」は、先に書いた「操体は、
アクビの技術化」と通じるものがあるなと思います。実際に
「 バランスを調整する無意識行動」の項目(p101)を見てみ
ると、「たとえば、たいくつしているとアクビをするとか…」
と出ています。
そして、「自然法則」や「極意」「コツ」と言った表現が多い
し、「テクニックにこだわらない」とも書かれています。橋本先
生の高弟だった先生方の操体が、それぞれ随分と違うように見え
る理由は、ここにあるのかなと思いました。
「医者として五十余年」(p206~)に、「民間療法をあさる」
「世の知られぬ在野の名人」「自ら試す物理療法」「恐るべきは
自然法則」などと書かれています。
橋本先生は、 様々な手技運動療法を学ばれ、自分で試していく
中から「東洋的物理療法(手技運動療法)」の「自然法則」を見
つけ出されたようです。そして、それをお弟子さん達に伝えたの
だと思います。
5.達人の技術=自然法則×達人の個性
それで、私は、「達人の技術=自然法則×達人の個性」だと考
えるようになりました。
つまり、橋本敬三先生や高弟の先生方の操体で、それぞれ違っ
て見える所は、その先生の個性なんだということです。橋本敬三
先生が伝えた東洋的物理療法の自然法則に、それぞれの先生がご
自身の個性を掛け合わせたものが、それぞれの先生の操体なんだ
なと思いました。
逆に言えば、橋本先生が自然法則を伝え、「テクニックにこだ
わるな」と伝えたから、それぞれの先生は、それぞれの個性を掛
け合わせることができたようにも思います。
6.時代場所などで、表現形は異なってくる
「達人の技術=自然法則×達人の個性」は、より詳しく言えば、
以下のようになると思います。
達人の技術=自然法則×達人の個性×常連の個性×時代の特性
×場所の特性×…
私が操体を学んだ中の一人の高弟の先生は、橋本先生に言われ
1970年代半ばに仙台から東京に出てきて、操体を始めたそうで
す。
東京の人に、仙台で習い覚えた操体をしても「気持ち良い」と
言ってもらえないこともあったそうです。仙台に帰った時に橋本
先生に相談したら「受け手が気持ち良いと感じることを探せ」と
言われたとのこと。そして、当時の東京の受け手に気持ち良いと
言ってもらえる操体を工夫したそうです。
「バランスのくずれと健康」「無理のない動きのきまり」「気
持よく元に戻すこと」などとあるように、操体は、「日常生活で
無理をして体のバランスを崩した状態を、気持ち良く元に戻して
いく」技法です。
そして、時代や場所が違えば、仕事の仕方や家事の仕方が違っ
てきます。すると、無理の仕方も異なってくるので、歪み方も少
し違ってきます。そして、受け手の人も様々ですから、「気持良
く元に戻す」技法、受け手が気持ち良いと感じる技術方法も少し
ずつ違ってきます。
そういう感じで、それぞれの先生方が、時代や場所、常連の受
け手に、自然法則を合わせていくことで、それぞれの先生方の操
体が生み出されて行ったように思います。
7.先生方の共通点から自然則を掴む
ですから、逆に、様々な先生方の共通点を見ていくと、操体の
自然法則が見付けやすいと思います。私が書いてきた「操体の自
然則」は、様々な先生方の共通点と、私が思ったものと言うこと
もできます。
少なくとも、違いに目を奪われている人よりも、共通点に目が
行った人の方が上達が早いように思います。20年ほど操体を伝え
てきて実感しています。
8.自然則に自分の個性などを掛け合わせる
そして、先生方の共通点から見つけた自然法則に、皆さん一人
一人の個性を掛け合わせることで、皆さん一人一人の操体ができ
るように思います。
自分の個性だけでなく、時代や場所の特性、常連の受け手の個
性なども掛け合わせる工夫ができると、より良いでしょう。そし
て、時代や場所や受け手の変化にも合わせて、少しずつ改善して
いきましょう。
「何でもかんでも一つの方法がよいということでは賛成できま
せん」(p124)とあるように、橋本先生自身が、そういう風に
歩まれたように思います。
ですから、『万病を治せる妙療法 操体法』に書かれた操体と、
『操体法 橋本敬三の世界 温古堂診療室から』の操体の動画が、
表現形としては大きく違って見えるのだと思います。
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最終更新:2015年03月25日 17:55