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術伝流操体no.85
【6】自然則篇 (21)心が思う気持ちよさへの疑問
心が思う気持ちよさへの疑問

1.はじめに

 先回は、「「想」の理想は「無想」ではないか」ということを
書きました。今回は、その延長で、心が思う気持ちよさへの疑問
を書いていきます。

 橋本敬三先生は、

「気持ちのいいことは何をしてもよい…だけどもね…その時には
うんと気持ちよくっても、後になって気持ちが悪くなる、つまり、
後味が悪いっていうのがあるが、それは本当の気持ちよさとは違
う…」(『からだの設計にミスはない』p14)

と書かれています。

 私は、心で思う気持ちよさを追求し過ぎると、後味が悪くなり
やすいように思います。

 心で思うことは暴走しやすいからではないかな思います。要す
るに想像することには制限がないので、心で気持ちよさを追求し
過ぎると、つい必要以上の想像をしてしまいがちになるからのよ
うに思います。

2.心の思いは、他人の言葉に由来するものが多い

 そして、もう一つ、心に思い浮かべることは、他人の言葉に由
来することも関係しているような気がしています。

 普段の生活の中で、心に思っていることで、自分が実際に体験
したことや自分がその体験を整理して考えたりしたことから、心
に思い浮かべているものの割合は少ない人が多いのではないでしょ
うか?

 私自身、自分で振り返ってみて、多くても3分の1位かなと思
います。残りは、他人の言葉や思いに由来するようです。

 心に何か一つのイメージが浮かんだときに、そのイメージから
別のことを連想していくことで、心は思うという行為を続けてい
きますが、その連想のパターンも、自分の実際の体験を中心に作
られている人は少ないのではないでしょうか?

 言われたこと、読んだことなど、他の人の言葉や思いに基づい
て、連想を続けているように思います。

 特に日本では、国語教育で作者の心情を読みとりなさいという
設問をたくさん解答させられます。そして、世間の空気を読んで、
それを心に思い浮かべ、それに従って行動するよう躾(しつけ)
られます。

 この場合に、明確に言葉で指示されないことの方が多いですが、
世間の空気とは、はっきり言ってしまえば、その世間を支配して
いる親分がどう思っているかではないでしょうか?

 しかも、その親分は、余り表(おもて)に出ない影の親分のこ
とも多いですね。

3.体の感じることを心で思えないと、歪みが溜まりやすい

 そういう日本で特に目立つことなのかもしれませんが、体が感
じていることよりも、世間の空気の方を優先して、心に思い浮か
べている人を沢山見かけます。

 そういう風に、世間の空気を読んで動いた方がラクかもしれま
せんし、世間体も良いのかも知れません。しかし、それが体の感
じていることと離れすぎていると、体の不調を感じにくくなるの
で、体に歪みが溜まりやすくなります。

 そういう事情のせいか、体が感じていることを心で思えない人、
つまり、「心が自分で、体は道具」のような感じで生きている人
は、 病が重くなる傾向にあるように思います。

 「心が自分で、体は道具」のような感じで生きていれば、体の
感じる不調や歪みを心に思い浮かべることができないので、体の
調子の悪さや歪みがどんどん蓄積されていくことになります。

 そして、病気が重くならないと自覚できない、大きな症状が出
て初めて変だなと感じることになります。つまり、体の中の器官
が破壊されて初めて体の不調に気付くということにもなりかねま
せん。

 逆に、体で感じていること、心で思っていること、頭で考えて
いること、口で言っていること、体で動いていること、それら全
てがほぼ一致している人は、大きな病気にはなりにくいようです。

 病気になっても、一晩寝れば治ってしまう「宵越しのカゼは引
かない」タイプが多いように思います。

 これは、ヒトの体は、ホモ・サピエンスになってからは、ほと
んど進化していない野生動物に近いままだからと思います。野菜
や家畜のように品種改良されているわけではありません。

 そういう体をもつヒトが、その体が感じていることとは違うこ
とを心で思い浮かべて行動していれば、体に歪みが蓄積されてし
まうのも当たり前かなと思います。

4.体が感じる気持よさで判断する

 「体が自分で、心は他人、少なくとも心の3分の2は他人かも
しれない」と思っていた方が健康には良さそうです。

 操体などの練習で、体の内側で起きていることを口に出して言
う習慣を付けるのは、上達が早くなるだけではなく、とても良い
養生法になるのも、そういうことからも来ているようです。

 普段の暮らしの中で何か迷ったときにも、体が気持ち良いと感
じるかどうかを判断基準にした方が、健康には良さそうです。そ
して、その判断で回り道することになっても、賽の河原の石積み
のような結果になることは少ないようです。

 逆に言えば、体が気持ち悪いと感じていることを選択すると、
その時はラクに過ごせても、賽の河原の石積みのような繰り返し
をすることになる可能性が高いということです。皆さん、思い当
たる節(ふし)はありませんか?

 世間の空気を読んで行動することを要求され、建前と本音が違
い、アカウンタビリティの無い日本では、社会的に不利になるこ
ともあるので、時、場合、相手を選び、言い方にも工夫する必要
があるとは思います。

 ちなみに、アカウンタビリティは、説明責任と訳されることが
多いようですが、詳しく言えば、「ガッテンして納得してもらえ
るような説明をする責任」ということだと思います。

 そして、地球全体が単一市場化していく21世紀において、文化
が異なる国際間の仕事で通用するのは、何でも口に出して整然と
説明できる人だと思います。

 国際社会では、心情を読むことよりも、事実に基づいて文化背
景が異なる相手が納得できるように心情を説明することを要求さ
れますから。

5.おわりに

 今回は、体が感じている気持ちよさを素直に心に思い浮かべら
れることが大切なのでは…という話を書きました。

 周りの空気を読むことなどに影響されて、体に感じていること
を素直に心で思えないと、体に歪みが生まれやすいし、そういう
状態が続けば病気になりやすいということです。

 ですから、操体をしているときの「気持ちよさ」も、それが体
で感じている気持ちよさかどうかを時々チェックした方が良さそ
うに思います。 


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最終更新:2015年09月26日 21:41