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術伝流操体no.78
【6】自然則篇 (14)障害者への操体は、操者にも効果的
障害者への操体は、操者にも効果的

1.はじめに

 今回は、先回の続きで、胴体の歪みと手足の歪みの関係、特に、
足の歪みとの関係です。中でも、赤ちゃんや障害者のように直立
2足歩行が巧くできない場合は、膝裏の歪みよりも胴体の歪みを
優先した方が良いと思います。

2.操体は「一期一会」

 言葉というものは一人歩きしやすいなと、改めて思います。そ
の言葉が産み出されたワケ(理由)をよく理解していないと、一
人歩きする言葉に振り回されて判断を誤ることにもなります。

 操体は自然則で作られているので、そういうことは比較的少な
いです。が、それでも一人歩きする言葉に振り回されないよう気
を付けていきたいなと思います。

 また、目で見て、耳で聞いて、手で触って確かめられることか
ら、「言葉」で語られた自然則や操体の型までの道筋を、大勢の
人に納得してもらえるような形で書き残していきたいと思います。
よろしくおねがいします。

 数学のように言葉だけで作られた世界は、言葉のみで考え伝え
合っていけます。

 また、機械のように言葉で書かれた仕様書に基づいて作られた
物は、修理の際にも仕様書に書かれた言葉を頼りにしていっても
間違いは少ないと思います。

 しかし、人間の体のように自然な物を相手にするときには、見
て聞いて触って確かめられることで、その「言葉」が実際に成り
立っているかどうかを常に確かめながら行動していかないと判断
を誤りやすくなるなと思います。

 そういう意味で、操体というのは「一期一会」なものだなと思
います。なんて書くと、若い人には通じないかもしれません。要
するに、今明宏先生がいつも言っているように、「操体はライブ」
なんです。

3.脇腹クスグリは、胴体のバランス調整

 操体で「赤ちゃんには脇腹くすぐり」というのも、赤ちゃんは
直立2足歩行の段階にないからでしょうね。膝裏シコリを改善す
ることよりも、胴体の歪みを改善するのを優先する必要があると
いうこと。

 胴体の大きな動的バランスを考えると、脇腹のある部分、背骨
でいうと腰椎の部分ですが、その辺りが一番関係しているためだ
と思います。

 腰椎には、他の骨が繋がっていません。胴体の他の背骨には、
繋がっている骨があります。胸の部分の胸椎には、肋骨。尻部分
の仙骨には、骨盤。

 他の骨が繋がっていないので動きやすいせいか、胴体の部分の
動的バランスを取るときには、この腰椎の辺りを一番動かしてバ
ランスを取っているようです。

 逆に言うと、そのために、繋がっていた骨が無くなっていくよ
うに進化したようです(参照『生命形態学序説』『生命形態の自
然史』三木成夫著)。

 細かく言うと、左右捻転運動では腰椎3番、左右側屈では腰椎
2番、上下運動では腰椎1番、前後運動では腰椎5番が関係して
いるそうです。

 が、細かく考えなくても、脇腹のくすったがるところをくすぐっ
ていれば、胴体全体のバランスが良くなるという「脇腹くすぐり」
というのは、優れた方法だなと、改めて思いました。

 「膝倒し」、「踵踏み込み」をはじめ定番操体も、腰椎部分を
中心とした胴体のバランス調整を目的としたものが多いですね。
下半身をはじめとした全身のバランス調整と言いますが、腰椎部
分の4種8方向のバランス調整が中心になっているように思いま
す。

 爪先あげも、目的とする膝裏~脹ら脛の次に動いているのは、
股関節や腰椎部のように思います。

4.脇腹もくすぐったがるようになっていった

 そういえば、我が家の次男は、赤ちゃんの頃は脇腹はくすぐっ
たがらなかったのですが、だんだんくすぐったがるようになって
いきました。

 水泳や自転車の練習をしている頃には、腕と胸の間だけでなく、
脇腹もくすぐっていたことを思い出しました。

 それで、小学校の低学年の頃は、もっぱらクスグリ療法や、そ
れと同じ効果のある筆や歯ブラシや小児鍼のローラーなどを使っ
て、くすぐったがる部分をくすぐっていました。

 ローラー鍼というのは、痛くない程度のギザギザが沢山付いて
いるローラーを皮膚の上で転がす道具です。指でくすぐるのと同
じ効果があるし、形が面白いので子供は大好きで、「コロコロ」
と呼んでいました。

 そして、寝ている間は、くすぐったがる所へ皮膚の操体をして
いました。

5.動の操体も気持良さが出るようになっていった

 でも、その頃は、足を伸ばしたり曲げたりという普通の動の操
体は余り喜ばないので、できませんでした。

 自転車や水泳ができるようになって、歩き方が、踵を上げてい
るとはいえ、直立に近づいた頃からは、足を伸ばす、つまり、内
反尖足を強調する動きの操体をとても気持ち良いと言うようにな
りました。それで、寝る前によくやりました。

 また、足の指揉みと同じ効果のある、足の先の方、足指や踵へ
の灸もしました。指揉みよりも灸の方を面白がったからです。

6.障碍児への操体は、とても効果的

 直立2足歩行が巧くできないほど歪みのある場合には、膝裏よ
りも脇腹を始めとする胴体の歪みを優先した方が良いです。そし
て、その点にさえ注意をすれば、障碍児の歪みや運動機能の改善
には、操体は大変効果があります。

 操体は気持ち良さを大切にするので、障碍児の方から操体をし
てくれと言って、せがまれることが多かったです。

 さすがに中学2年生になった頃からはそういうことは減りまし
たが、小学生の頃は、毎日夕食後や寝る前に操体をねだられてい
ました。飲み過ぎて酔っぱらってできないと、よく怒られました。

 重度の障碍児の訪問看護をしている人の話では、言葉が出てこ
ない子でも目でせがんでくるようです。

 皆さんの周りに障碍を持ったお子さんがいらしたら、ぜひ操体
をしてあげてください。少しずつですが、変わっていきます。

 できたら、お母さんをはじめ家族の人に操体を伝えて、毎日操
体するように勧めてください。痛い方法だと親子関係が壊れるこ
とがありますが、操体は気持ち良さを大切にするのでそういうこ
とはありません。安心して勧められます。

7.障碍児への操体で、操体の腕が上がる

 それに、そういう障碍児に操体をしていくことで、皆さんの操
体の腕が上がっていくと思います。

 脳性麻痺などの障碍のある人の筋肉のシコリの硬さは、肩凝り
や腰痛などが酷い人とは比較にならないほどです。そういうシコ
リに操体していると、肩凝りなどは簡単だなと思えるようになり
ます。

 また、言葉によるコミュニケーションが取れないことが多いの
で、体と体のコミュニケーション能力が上がっていきます。体の
歪みを読む能力、力を加える方向や力の入れ具合を判断する能力、
また、患者さんの体が満足しているかどうかを判断する能力など
です。

8.改善は遅いので、焦らないこと

 ただ、焦らないでください。毎日のように操体しても、1か月
単位では進歩が見られないことが多いです。

 でも、諦めないでください。操体を1年続けて振り返ると、1
年前とは大分改善していると思います。障害者のご家族に勧める
ときも、その点をよく話してあげてください。

9.おわりに

 「操体の自然則」ということで暫く書き続けてきましたが、内
容的には、「動」の操体の自然則を先ず書いてきました。「操体」
なので、体を操ること、すなわち「動」が、まず中心となると思
いますので。

 が、これで、ひとまず、「動」については終わりにして、操体
をしているときの息の変化について、次回から書いてみたいと思
います。


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最終更新:2018年01月20日 14:44