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術伝流操体no.77
【6】自然則篇 (13)胴体の歪みと足の歪み
胴体の歪みと足の歪み

1.はじめに

 先回は、シコリと皮膚の操体の関係を書きました。皮膚の操体
では、シコリの上の皮膚の張りを保つのがコツなのではという話
です。

 さて、今回は、胴体の歪みと手足の歪みの関係、特に、足の歪
みとの関係を書いていきます。

2.ヒトは、直立2足歩行するサル

 操体では、上半身の症状でも、先ずは下半身の歪みを取りバラ
ンスを整えることから始めます。特に、膝裏シコリの改善を重視
しています。

 これは、ヒトが直立2足歩行するサルであることに由来します。
脹脛の筋肉が、体重を支えるという意味では一番下の筋肉だから
です。これより足先の方にある筋肉は体重を支えるよりもバラン
スを取る要素の方が強いと思います。

 この場合の直立というのは、背骨が地面に対して、ほぼ垂直な
状態になっていて、その上に頭が乗っているという意味です。

 もちろん完全に真っ直ぐ垂直ではなく、横から見るとS字状の
カーブを描いています。が、前後から見ると、ほぼ地面に対して
垂直に立っています。また、横から見た場合でも、S字状カーブ
を描きながらも、全体としてはほぼ垂直になっています。

 ダチョウなどの鳥や、それと近い恐竜など、2足歩行する動物
は他にもいます。が、彼らの背骨は地面に対してほぼ平行で、頭
は前に突き出て、後ろに突き出た尾羽や尻尾との組み合わせで、
前後のバランスを取っています。

 今、2足歩行ロボットの研究が盛んですが、バランスを取るの
が難しく、人間が歩くように見える2足歩行を実現していくのは
なかなか困難なようです。

 前にも書いたと思いますが、人間の歩行では、足跡の横幅は腰
の横幅よりも狭いのですが、それは、まだ、ロボットでは実現で
きていません。

 どちらかというと、恐竜やダチョウを無理矢理立たせたような
格好をしています。歩き方はシャモ(軍鶏)に似ているなと思い
ます。

 また、歩き始めの赤ちゃんのトコトコ歩きは、足跡の横幅が腰
の横幅とほぼ同じですね。ロボットもまだその段階なのかなとも
思います。

3,脳性麻痺児の次男の胴体の歪みと手足の動き

3.1. 背骨が一様に弓なりに前腕していた

 さて、前にも書きましたが、我が家の次男は、23週の超未熟児
で産まれました。6か月入院して帰ってきたときには、頭から仙
骨までが一様に弓なりに前に反った状態でした。

 その当時はまだ脳性麻痺という診断はされてはいませんでした
が、その状態から見れば当時から脳性麻痺だったと思われます。

 ヒトの体は腹筋に対しては背筋の方が優位、つまり、背中の筋
肉の方が強いです。そのため、脳性麻痺ではどうしても背筋の側
の縮む力が強くなり、背中側が縮むため、弓なりに前に反った姿
勢になってしまいがちです。

 背骨がそういう状態ですから、なかなか歩けるようになりませ
んでした。3歳少し前に初めて歩いたときには、両手を挙げた姿
勢で、爪先立ちで5歩ほど歩いて転びました。その歩き方を見て、
ようやく脳性麻痺という診断が出ました。

 後で、猿回しのサルの横からのレントゲン写真を本で見て、背
骨がS字状にカーブしているのを知りました。また、猿回しの人
が、小猿のときから腰や背中をマッサージなどして柔らかくして、
そういう背骨の状態にしていかないと2足歩行できないという話
も聞きました。

 それらの見聞から、なるほど、次男がなかなか歩けなかったわ
けだなぁと納得しました。

3.2. 中府のクスグリで肺機能が改善

 当時も、くすぐったりしたりして、背中を柔らかくしたいなと
は思っていました。が、それは歩行のためというよりも、肺の負
担を減らすという目的のためでした。

 主治医の説明では、「超未熟児は、肺が未発達のうちに肺呼吸
を始めるし、男性ホルモンと肺の発達がバッティングするので、
肺に後遺症が残る」ということでした。

 そのため、6カ月の入院から退院してきたときには、酸素ボン
ベからのチューブを鼻の下に張り付けていました。

 操体で赤ちゃんの病気に効果的と言われている脇腹くすぐり療
法をしてみました。脇腹はくすぐったがらなかったので、全身く
すぐってみたら、1か所、胸の腕よりの中府辺りをくすぐったが
りました。

 そこを、オシメを変えるときや、お風呂に入れるときなど、日
に十数回くすぐっていました。そのおかげか、退院後5か月ほど
で受けたレントゲン撮影で、肺の影が消えていることが分かりま
した。それで、酸素ボンベは外してよいことになりました。

 のちに鍼灸学校で、中府が「肺の募穴」、つまり、腹側で肺に
効果的なツボと聞いたときに、この経験を思い出し、納得できま
した。

 それでも、肺の機能は低く、風邪を引きやすかったり、冬中ゼ
ロゼロしていたりしました。それで、胸まわりを調べたら、その
辺りの筋肉や、胸と同じ高さの脇や背中の筋肉がガチガチでした。

 それで、そのガチガチの筋肉を改善すれば、少しは呼吸がしや
すくなり、肺の負担を減らせるかなと思いました。

3.3. PTやOTの成果が出なかった

 脳性麻痺という診断がついたので、病院で定期的にPT(理学療
法)の訓練を受けることになりました。優しいPTの先生でしたし、
玩具を使ったりして楽しめるように工夫はしてくださいました。

 が、どちらかというと、縮んだ筋肉を伸ばす方向での訓練が多
かったので、次男は痛がり、イヤがって逃げ回っていました。

 それで、目標を聞いて、家では操体や按摩などして筋肉をほぐ
し、なんとか目標を達成できるようにしていくということにしま
した。次男がイヤがるので、それしかできませんでした。

 また、小学校入学くらいから手先を使うOT(作業療法)の訓
練も始めたのですが、訓練の成果は出たとは言えない状態でした。

 それで、小学校入学するまでは、あまり長い距離を歩けず、自
転車の前カゴに乗せるか、ベビーカーに乗せるかしていました。
短い距離を移動するときには、母親が手をつないで歩いていまし
た。

 小学生になる頃には体重が重くなって、小柄な母親には支えき
れなくなってしまいました。それで、私が手をつないで歩くよう
になりました。

 その頃の背骨の状態はようやく背中上部での前への弯曲が減り、
背中の上半分は真っ直ぐに近づいていました。しかし、まだ、背
中を前に曲げることはできませんでした。そのため、マット運動
の前転はできませんでした。できても、背中から落ちれずに、尻
が先に着地する状態でした。

 また、小学校入学の頃には、自転車の前カゴにも入れにくい大
きさになったし、体重も超未熟児の割には重くて、前カゴに乗せ
るのが無理な感じになりました。

 フラッカーズという商品名の子供を前カゴに乗せてもふらつか
ないという専用の自転車を利用していましたが、余りの重さで、
前カゴに乗せているとハンドルがふらつくようになっていたので
す。

 特に、母親が自転車の前カゴに乗せて移動するときの事故が心
配になってきました。それで、補助輪付きの自転車の練習を始め
ました。

3.4. 自転車の練習に、時間がかかった

 足は伸筋優位、つまり、脳性麻痺では伸ばしやすく曲げにくく
なります。そのため、初めは、ペダルに足を掛けずに地面を足で
蹴って前に進む方法(通称キックキック)で自転車を前に進ませ
ることすらもできませんでした。

 キックキックができるようになってからは、次の課題のペダル
に足を乗せるのが、なかなかできませんでした。それができたら、
今度は、ペダルを1周させるたびに足がペダルから外れて落ちて
しまうという状態でした。

 そんなことの連続でしたが、3か月ほどかかって、なんとか、
補助輪つき自転車を乗れるようになりました。

 3年生になって、補助輪付きに乗るには体も大きくなり、から
かわれたりイジめられたりする原因にもなりました。それで、補
助輪を外す練習をはじめました。

 明治神宮外苑で休日に大人になっても自転車に乗れない人に乗
り方を教えてくれる催事があると聞いて、出かけてみました。で
も、初めについた指導者には「この子には教えられないな」と言
われてしまいました。

 それでも何回か通っているうちに練習のやり方を教えてくださ
る指導者に出会えて、練習方法を知ることができ、真っ直ぐや左
回りはできるになりました。

 右回りがなかなかできるようにならないので、私と一緒に近所
の公園でも練習しました。3か月たって、ようやく、1km四方
位ある、その広い公園の幅4m位ある遊歩道を止まらずに1周で
きるようになりました。

 幅1m以下の狭い歩道を走れるようになるのには、それから1
年ほどかかりました。

3.5. 平泳ぎができるようになった

 同じ頃、小学校の水泳授業のために、PTさんから訓練を受けて、
クロールは泳げるようになりました。でも、「内反尖足の脳性麻
痺児には、平泳ぎは一生できません」と言われてしまいました。

 が、本人はやりたがっていました。それで、毎週金曜夕方の時
間帯が障害者向けに開放されていた近くの温水プールに通いまし
た。

 溺れる可能性もあるので、後ろからゆっくり泳いで、ついてい
きました。後ろから見ていたら、手は平泳ぎ風に動くのですが、
足の方は1年たっても両足とも棒のように後ろに伸びたままでし
た。

 さすがに、そろそろ、あきらめさせた方がいいかなと考えはじ
めた頃に、25m泳いでいる途中で1度だけ足が開きました。次男
に伝え、ほめたら、すごく喜んでいました。

 それから少しずつ足が開く回数が増えていき、初めて足が開い
てから1年位たって、なんとか足の方も平泳ぎ風になっていきま
した。水泳を習い始めてから4年以上経っていました。

 そして、中学1年生の臨海学校では、顔をあげた平泳ぎで遠泳
を完泳し、医療関係者を唖然とさせました。

3.6. スキーや縄跳び

 また、障害者向きのスキー教室に通い、スキーブラというスキー
の先端が交差しないようにする補助具を付けてですが、簡単な斜
面なら滑れるようになりました。

 縄跳びもなんとかできるようになりました。

 体を前に曲げることもできるようになり、マット運動の前転も
できるようになりました。逆に、字を書くときには、ノートに目
を近づけすぎて心配なほどになりました。

3.7. OTの成果が出るようになった

 それで、そういうことができるようになってから、急に、手足
の訓練の成果が上がるようになっていきました。

 やりたくてもできなかったTVゲームのアクションものなども
なんとかできるようになりました。 本人が好きなTVゲームなら、
私の苦手なアクションゲームの複雑で速いボタン操作も、小学5
年生でできるようになりました。

 保育園時代には、塗り絵をさせると、2,3cmはみ出してしまう
程しか、手先のコントロールができませんでした。

 つまり、線を描きはじめようとする点や、描き終えようとする
点が2,3cmズレてしまうほど、手が大雑把にしか動かなかったの
です。巧緻性障害と言います。

 そういう状態だったのが、なんとか1.5cm四方位の文字なら書
けるようになりました。小学校卒業時点では、時間をかければ
1cm四方の文字を書けるようになりました。 

 作業療法の手先を動かす訓練も順調に進むようになり、担当の
OTの先生から「この子は脳性麻痺ではないんじゃないのかな」
と言われるほどになりました。

3.8. できることが増えていった

 自転車の訓練を始めた頃は、普通の人が1ステップでできるこ
とを100ステップに分けて練習すれば何とかという状態でした。

 が、中学生になったら、本人の好きなことなら10ステップ、
興味のないことでも30ステップに分ければなんとかなるかな位
には、なりました。

 そして、高校生になって、ようやく箸をなんとか使えるように
なりました。

 今だ、全ての面で普通の人と同じようにできるようになったわ
けではなく、社会人になった今でも、爪先立ちで歩いていますし、
その他にも練習してもできないことは、沢山あります。

 が、できることが増えていきました。高卒後はいった職業訓練
校で、ブラインドタッチを覚え、ワープロ検定1級、情報処理の
資格などを取りました。

4. 胴体の動的バランスが大切

 長々書いてきましたが、何が言いたいのかというと、「体幹部
の基本的なバランスが取れていないと、手足のリハビリは効果が
上がりにくいのではないか」ということなのです。

 操体では、下半身は土台だから最初は下半身の歪みを取るとい
う目的で、膝裏のシコリをまず見ていきます。

 が、それは背骨が少ししか歪んでいない人に通用することだと
思います。我が家の次男の小学校入学前までの状態ぐらい胴体に
歪みがあると、手足の操体をしても効果が上がりにくいのではな
いかと思います。

 こうして、次男の成長を振り返ってみると、体を動かすときの
胴体の大雑把なバランスが取れる状態になったとたんに、手足の
リハビリの効果が出だしたように思えます。

 自転車で左右バランス、クロールで左右捻転バランス、縄跳び
で上下バランス、スキーで前後バランス、ついでに言えば、平泳
ぎで足を左右に開き戻すときのバランス。

 お分かりとは思いますが、例えば、スキーは前後の動的バラン
スが取れないと、できません。また、自転車は、左右の動的バラ
ンスが取れないと、乗れません。

5.おわりに

 操体で下半身、特に膝裏から改善していくのは、ヒトが直立2
足歩行するサルであることに由来します。

 ですから、よくよく考えてみれば、直立2足歩行が巧くできな
いほど胴体に歪みのある場合には、胴体の歪みを先に正した方が
良いというのは当たり前の話かも知れません。でも、今まで余り
話題になったことはないように思います。

 私自身次男にずっと付き合ってきてようやく理解したことです。
初めから分かっていたら、赤ちゃんの頃にそういう視点で操体を
していたら、もう少し歪みを減らせたかなと思いながら書いてい
ます。


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