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術伝流操体no.75
【6】自然則篇 (11)シコリとキッカケの動き、例の追加と例外
シコリとキッカケの動き、例の追加と例外

1.はじめに

 先回は、「動きの操体のキッカケは、シコリのある筋肉を緊張
させる動き」ということを書きました。今回は、その補足で、気
になることを書いていきます。

 先ずは、仰向け膝立て爪先上げ以外の定番のキッカケの動きと
目標とするシコリについてです。

2.仰向け膝倒しの場合

 例えば、仰向け膝倒し(写真1)では、足首、膝の曲がり具合
は、余り変化してきません。

写真1

 ただし、膝裏のシコリでは、倒れていく側が緊張しやすいです
ね。そして、この操体をした後では、その部分のシコリが弛んで
いることが多いです。詳しく言うと、倒れていく側の膝裏小指側
(写真2)と、反対側の膝裏親指側(写真3)です。

写真2
写真3

両者の痛さなどは同じではなく、差があることが多いですが。膝
裏シコリを確認しながら、仰向け膝倒し操体をしたことのある人
なら、ご存知のことと思います。


 倒れていく側の膝裏以外では、この操体で筋肉が緊張するのは、
倒れていく側の股関節(写真4)、脇腹(写真5)、仙腸関節と
思います。その辺りにも目標とするシコリがある可能性がありま
す。

写真4
写真5

 「膝倒し」という名前がついていますが、この操体で、主に動
こうとしている関節は、膝関節というよりも、股関節、仙腸関節、
腰椎なので、こちらの変化が大きいのは当然のことと思います。

3.仰向け膝立て踵(かかと)踏み込みの場合

 仰向け膝立て踵踏み込み操体(写真6)は、『万病を治せる妙
療法 操体法』(農文協)では、尻と足の境目(梨状筋の大腿骨
大転子付着部)辺りのシコリを確かめていますね(写真7)。

写真6
写真7

 動き出す前(写真8)と動き出した後(写真9)を比較すると、
この部分の筋肉が緊張している姿勢に変化しているのが分かると
思います。

写真8
写真9

 ただ、この操体の場合には、操者の肩に踵を押し付けるバリエー
ションもあり(写真10)、この時のタワメの間では、尻と足の
境目以外にも、背中全体、特に肩甲間部(写真11)辺りを緊張
させているのが分かると思います。

写真10
写真11

 それ以外でも、このシコリが取りたいなと思ったら、そのシコ
リの周りの筋肉を緊張させるような動きを試してみるとよいです。
また、そういう動きにつながる連動をキッカケにする操体を試し
てみてもと思います。

 また、シコリが見付からなくても、この筋肉にシコリがありそ
うだなと思ったら、その筋肉を緊張させたり、緊張させることに
つながる動作をキッカケにするのもよいと思います。

 見た目に分かりやすいので、先ずは、その筋肉を収縮させるこ
とを試すことが多いです。

 定番の操体をはじめ、何か例外になりそうなものを見付けたら、
教えてください。

4.逆の場合は、感覚の錯覚が多い

 ただし、必ずそうとは言えない場合もあります。気になる筋肉
を緊張させる動きをキッカケにする操体で気持ち良さが出てこな
いこともあります。

 逆に、弛緩させるほうの動きのほうが気持ちの良い場合があり
ます。つまり、反対側にある拮抗筋を緊張させる動きが気持ち良
い場合もあります。

 それは、体が改善したいシコリと、心が「痛いな」と思うシコ
リが異なっていることもあるからです。

 例えば、膝の痛みは、膝皿側、特に膝皿の周り(写真12)にあ
ると感じることが多いです。が、原因となるシコリは膝裏側(写
真13)にあることが多いです。

写真12
写真13

 膝皿側にもシコリはありますが、膝裏のシコリと比べてみると、
膝裏のシコリの方が状態が悪いです。押圧してみると、圧痛も、
膝裏側が強いことがわかります。

 膝皿まわりは、原因ではないので、そこを改善しても痛みなど
の症状は、復活しやすいです。原因である膝裏のシコリを改善し
た方が効果が長続きします。

 同じように、五十肩の痛みや肩の辛さは、肩関節の外側、特に、
肩峰周りや肩甲間部など(写真14)に感じることが多いです。
が、原因となるシコリは、脇の下やその前後の水掻きにある(写
真15)ことが多いです。

写真14
写真15

 膝と同じように、後者を改善した方が、前者だけを改善した時
よりも、治療効果が継続しやすいです。

 また、腰や背中が痛いなと感じた時に、その痛みの原因になる
シコリが腹側にあることもあります。

 例にあげた3つの場合に、動きの操体をしてみると、はじめに
痛みを感じた側の筋肉が弛緩していくキッカケが気持ち良いと言
われることが多くなります。

 膝の場合は、膝裏の筋肉を収縮するキッカケが多いです。「仰
向け膝立て爪先上げ」以外では、「うつ伏せ膝立足首回し」の時
(写真16)も、シコリ(写真17)のある捻転していく側の膝裏
脹ら脛よりの筋肉を緊張させる動きがキッカケです。

写真16
写真17

 五十肩の場合は、これまでも紹介したように、脇の下前後の水
掻き状の筋肉を緊張させることをキッカケにして改善します。

 つまり、前側は、腕と胸の間に張っている筋肉を緊張させる動
作をキッカケします(写真18)。後側は、腕と背中の間に張っ
ている筋肉を緊張させる動作をキッカケにします(写真19)。

写真18
写真19

5.陰側の痛みを陽側の痛みと感じてしまう

 裏側、東洋医学の世界では「陰」の側と言いますが、「陰」の
側の痛みは感じにくい、というか、心に思い浮かべにくいようで
す。その表裏反対側の「陽」の側に痛みがあると思いやすいよう
です。

 押されてはじめて、摘まれてはじめて痛みを感じるようです。
同じ強さで、押したり、摘んだりして、痛さを比較してみてはじ
めて、圧倒的に裏側の方が痛いと感じることが多いです。

 特に、受け手が表側(陽)の痛みを「何となくその辺り全体が
痛い」とか、「もっと、ずっと奥の方が痛い」とか、「鈍い感じ
の痛み」とか、そういう表現をされるときには、裏側(陰)にあ
るシコリが原因のことが多いです。

6.猫背に見える人が後屈が気持ち良い場合

 少し複雑になりますが、そのまた逆というか、一見猫背に見え
る人が反らしたほうが気持ち良い場合もあります。

 喘息や高血圧などの心肺系の疾患がある場合には、首の付け根〜
肩甲間部にシコリがあることが多いです。こういう人で、一見、
猫背に見える人がいます。

 この部分は「胸部後弯」と言って、後ろ側に弯曲しているのが
自然です。が、こういう人の場合には、その部分の背骨の上にあ
る筋肉が緊張したままになったため、その部分の背骨が引っ張ら
れて、その弯曲が少し少なくなっています。

 そして、少なくなった弯曲を補うために、その上下の背骨、首
の下の方の背骨と肩甲骨の下の背骨が余分に後方弯曲しているた
めに、頭から腰まで全体として見ると猫背に見えるようです。

 猫背には見えますが、一番緊張したままになっているのは肩甲
間部です。ですから、首の付け根から肩甲間部にかけてを反らし
ながら上腕も後ろに引くような姿勢が気持ち良いことが多くなり
ます。

 また、体が改善したいシコリが別の場所にある場合にも、取り
敢えず目標にしたシコリの周りの筋肉を緊張させる操体をしても
気持ち良さが出てきません。

 受け手と対話しながら、受け手の息の深さに注意しながら、気
持ちの良さが深くなる操体に誘導していってください。

7.おわりに

 色々な例外はありますが、目標のシコリがあるときには、その
シコリ周りの筋肉を緊張させる動き、中でも収縮させる動きを、
先ず試してみると、気持ち良いと言われる可能性が高いです。覚
えておくと役に立つと思います。

 そういうことを先ずキッカケにして操体をはじめて、気持ち良
さを探しながら、ゆっくり動いていってもらうとよいと思います。

 そして、気持ち良さが出てきたり、息が深くなるタワメの間が
見付かったら、そのタワメの間の姿勢から、そのときに体が改善
したがっているシコリを見付けます。

 そして、そのシコリに手や指を当て、そのシコリに皮膚操体を
します。そうしながら、そのシコリが変化していく様子を観察す
ると面白いですよ。

 通し稽古などでも、タワメの間が上手く決まったときに、腕と
足の動きが言葉通りにタワメを作り、そのタワメの焦点に目標と
なるシコリがある(写真20)ことが、結構、多いです。

写真20

 次回は、シコリと皮膚操体の関係について書いていきます。


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最終更新:2015年03月24日 11:24