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術伝流操体no.74
【6】自然則篇 (10)シコリとそのまわりの筋肉
シコリとそのまわりの筋肉

1.はじめに

 今回は、「シコリから操体を予測する」の2回目です。「動き
の操体のキッカケは、シコリのある筋肉を緊張させる動き」とい
うことを書いていきます。

 操体の経験が長い人なら、既に知っている人も多いでしょう。
また、達人の先生方から「シコリがある筋肉を縮ませる動きをキッ
カケにするとよい」という話を聞いたことがあるかも知れません。

2.筋肉を緊張させて、人は動作している

 さて、筋肉が作用するときには、筋肉には、力が入り、緊張し
て硬く太くなり、筋肉を短縮しようとする力が出ます。そのため、
他の力が作用していないときには、筋肉は短縮していきます。

 バケツを持って立たされたときなど、腕を伸ばしたまま重い物
をぶら下げているときにも、筋肉は作用しています。そのため、
力が入り緊張して硬く太くなり、筋肉を短縮させようとする力は
出ていますが、筋肉は短縮してはいません。

 こういう同じ姿勢を維持し続けるときには、「等尺性収縮」と
呼ばれる、筋肉の長さが変わらない作用をしているようです。

 筋肉が作用していないときには、筋肉は、緊張が弛んで柔らか
く細くなり、短縮していた場合には伸長します。

 体が動くときには、その動きに合わせ、必要な筋肉が緊張し短
縮します。逆に言えば、人を始め脊椎動物は、筋肉を緊張させて
動いているわけです。

3.同じ動作を繰り返すと、疲れた筋肉にシコリができる

 同じ動作を繰り返したり、長いこと同じ姿勢を続けたりすると、
同じ筋肉を緊張させつづけることになります。

 すると、その緊張しつづけた筋肉は、疲れていきます。その疲
れが休んだり寝たりして、次の日までに改善しているうちはよい
のです。

 が、その疲れが解消されず累積していくと、緊張している必要
が無い状態なのに、硬く太く緊張したままの部分が、疲れた筋肉
の中に出てきます。

 そのときの動作や姿勢では、その筋肉は緊張していない方が自
然なのに、その筋肉の中に緊張して硬いままの部分が出てきます。
これがシコリです。

 つまり、本来は必要に応じて緊張する筋肉の一部分が、使いす
ぎによって疲れきって緊張したまま硬く太くなって、弛まなくなっ
てしまったのが、シコリです。

 ですから、無理して伸ばそうとすると、つまり、その筋肉が弛
まないとできない動作をすると、痛みが出て、それ以上は伸びな
いよというメッセージを出すわけです。

 そして、弛んでいる方が自然なのに硬く緊張しているのですか
ら、他の力が作用しない状態では、その筋肉は短縮した状態になっ
ています。

 そのため、体全体を見ると、歪んで見えることになります。ま
た、左右でシコリが出ている部分が違えば、左右差が目立つこと
になります。

4.操体のキッカケは、シコリをより緊張させる動き

 さて、操体では無理をしませんから、基本的には、そういうシ
コリに対して、痛い動きと反対の動きをキッカケにします。

 弛緩させる動作をすると痛いのですから、緊張させてみるわけ
です。見た目に分かりやすいので、短縮させてみることが多くな
ります。

 シコリのある筋肉を短縮させていくと、その筋肉の中のシコリ
になっていなかった部分も、だんだん緊張して短縮し硬くなって
いきます。

 やがて、シコリの周りも、シコリの部分と同じ位に緊張する状
態になります。そして、その時には、初めにあったシコリは、同
じ程度に緊張した周りの筋肉に埋もれてしまい、目立たなくなり
ます。

 そのため、先々回に書いたように、「タワメの間ではシコリは
消える」という現象になるようです。つまり、動きの操体では、
シコリの周りの筋肉をそのシコリと同じ位か、それよりももう少
し緊張させたときに、「タワメの間」という状態になります。

5.腕と胸の間に張る筋肉のシコリ

 実際にヤジウマしてみましょう。

 肩こりも慢性化してくると、脇の下や、その周りにもシコリが
できます。脇の下の前後の筋肉、つまり、腕と背中との間や、腕
と胸との間に張っている筋肉の中です。

 自分一人で試す場合には、胸と腕に張る前側の筋肉が試しやす
いと思います。また、前側でも、初めは二人でした方が、より分
かりやすいと思います。

 その部分を親指と他4指で挟んで、シコリを探します(写真1)。

写真1

 シコリが見付かったら、そのシコリを挟んだまま、腕をあちこ
ちに動かしてみます。腕を伸ばしたまま横や後ろに上げると(写
真2)、シコリの周りの筋肉が伸長するせいか、そのシコリが目
立つようになるし、痛みも出てくるでしょう。

写真2

 腕を伸ばしたまま前に上げると(写真3)、シコリがはさんだ
指から外れ、外れるときに痛みが出るようです。

写真3

 肘を曲げて指先を胸に近づけるようにすると(写真4),比較
的シコリが目立たなくなるようです。

写真4

 その状態から手首を捻転してみます。小指が手の甲側に回るよ
うな手首捻転では、シコリは再び目立つようになります。

 小指が手の平側に回る手首捻転をすると(写真5)、シコリは
ますます目立たなくなります。つまり、シコリの周りの筋肉全体
が硬く太くなっていき、シコリを摘んだときに感じた痛みも少な
くなります。

写真5

 その手首捻転をキッカケにして、その捻転がしやすいように、
首や背中も動かしていきます。また、体重もイイ感じの方に移動
したりして、体全体に動きを伝え、体丸事に連動させていきます。

 そうすると、首は、目標のシコリの方に近づきます。背中全体
も、側屈していきます。体重は、目標のシコリのある側に移動し
ていきます。そういう姿勢になることが多いと思います。

 すると、ほんのりとした気持ち良さも出てきて、腹の息も深く
なり、タワメの間になったことが分かると思います。

 腕と胸の間の筋肉の中でのシコリのある場所によって、つまり、
その筋肉の中でのシコリの選び方によって、少しずつ、腕の位置
や曲げ具合は変わってきますが、小指を手の平側に回す手首捻転
をすると、この辺りの筋肉は硬く膨らんでくるようです。

 後もう一つ、この胸と腕の間の水掻き状の部分のシコリは、挟
んだ状態で脇の下の方(座位では上方)に移動すると、シコリが目
立たなくなるようです。

 それで、実際に集まって二人組で練習するときや臨床の場では、
この部分のシコリを見付けたら、そのシコリをまず目立たない方
に動かしてから、手首をそのシコリの筋肉が目立たなくなるよう
な方に捻転することにしています。

6.腕と背中のあいだの筋肉のシコリ

 試してみると分かりますが、後ろ側の腕と背中の間に張ってい
る筋肉の中にあるシコリ(写真6)も同じです。

写真6

 そのシコリを先ず目立たない方に動かしてから、手首をそのシ
コリの筋肉が目立たなくなるような捻転をすると、タワメの間が
見つけやすいです(写真7)。

写真7

 この場合の捻転は、手甲を背屈した状態から中指が小指側に回
るような手首捻転が効果的です。ヤジウマしてみてください。

7.定番の爪先上げ操体と膝裏シコリ

 定番の動きの操体でも、シコリを見つけて、そのシコリを目標
にする操体では、そのシコリの周りの筋肉を緊張させることをキッ
カケにしています。

 膝裏のシコリを取るための有名な「仰向け膝立て爪先あげ」の
操体(写真8)でも、その動きをすると、脹ら脛が硬く膨らみ緊
張してきます。

写真8

 確かめてみないと、この爪先上げ操体で緊張してくるのは、足
甲側の下腿の筋肉(前脛骨筋など)で、脹ら脛の筋肉は、弛緩す
ると思ってしまいます。

 が、実際に手で触れながら操体してみると(写真9)、下腿裏
側の脹ら脛の筋も緊張して、触れている所が硬く太くなってきま
す。

写真9

 膝裏を触れても分かりにくかったら、脹ら脛の真ん中あたりに
触れながら爪先上げ操体すれば、分かりやすいと思います。

 そして、脹ら脛が硬くなったころには、膝裏のシコリが目立た
なくなるのを観察できると思います。この場合には、脹ら脛の筋
肉は長さが変わらない等尺性収縮をしているのでしょう。

 膝裏のシコリは、どちらかというと脹ら脛よりにあることが多
いので、こういう動きの操体が生まれたのかなと思います。

 この脹ら脛の筋肉は、足の甲を反らさないで膝を曲げるときは、
緊張しません。が、その状態から足甲を背屈させていくと緊張し
てきます(写真10)。

写真10

 この操体は、たいてい、初めに膝裏のシコリを確かめるなど、
他の操体とは違った面もあります。また、橋本敬三先生が晩年に
一番やった操体だそうです。

 それで、前から気になっていたのですが、実際に筋肉に触れな
がら操体して確かめてみると、動きの操体のキッカケの原則に当
てはまっていました。

 この点について、『万病を治せる妙療法 操体法』のp69には、
爪先上げを「農作業や山登りでヒフク筋が緊張して痛む時に」に
用いるとして紹介しているので、橋本敬三先生も多分ご存じだっ
たと思います。

8.おわりに

 直立2足歩行する人間に特殊な構造なのか、犬など4足の哺乳
類も同じなのかは、まだ確かめていません。後、鳥や恐竜はどう
なっているのかも。

 詳しい方がいたら、教えてください。よろしくおねがいします。


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最終更新:2015年03月21日 11:31