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術伝流操体no.71
【6】自然則篇 (7)タワメの間の姿勢と操体の焦点
タワメの間の姿勢と操体の焦点

1.はじめに

 先回は、操体は、背骨に伝わる動きが近いものは似たような効
果が出るということを書きました。特に、「手足で左右差がある
動作制限には、やりやすい方を少し強調すると、やりにくかった
ほうが改善する」という手段は、効果が出やすいです。

 今回は、その続きとして、操体をして、ある特定のタワメの間
になった時に、背骨のどの辺りに伝わるか、胴体のどの辺りに効
いているかを予想する方法について、書いていきます。

2.タワメの間の姿勢での上腕・大腿の向きに注目

 結論から先に書くと、基本的には、あるタワメの間の姿勢になっ
た時に、そのタワメを作っている手足の、上腕や大腿から胴体に
働いている力の方向に、その時に体が操体の効果を出したがって
いる所があります。

 単純な動作の場合には、上腕や大腿の延長線上になります(写
真1,2)。延長線上に胴体がない場合には、延長線と直交し手足
の付け根を通る直線の延長上になります(写真3)。

写真1
写真2
写真3

 また、胴体を捻転する力が働いている場合には、その2つのラ
インに平行なラインも候補になります。

 ここで、先ず、タワメとは、2つの力が働き、釣り合った状態
であることを思い出してください。

 1つの力しか作用してないように見えても、実際に1つの力し
か作用してなければ、動きが止まらず、タワメにはなりません。
こういう時のもう片方の力は、重さのことが多いです。

3.上腕・大腿の延長線上に効果が出やすい

 詳しく説明していきます。タワメの間で、タワメを作っている
手足の上腕や大腿部の骨と同じ方向に力が働いている状態なら、
その延長線上に効果が現れる可能性が高くなります。

 ここで、上腕骨や大腿骨と同じ方向に力が働いているというの
は、その方向に伸ばしたり縮めたり、また、それと同じ方向の皮
膚ずらしをしたりしているということです。

 簡単な例ですと、手を頭の上のほうに伸ばしている場合です。
この場合には、その伸ばしている腕の上腕部中央のラインをその
まま胴体の方に延長したライン上に、そのとき体が操体の効果を
出したがっている可能性が高いわけです(写真4)。

写真4

4.大腿や上腕に捻転する力が働いているなら

 そして、タワメの間で、主にタワメを作っている手足の上腕や
大腿に垂直な方向に力が働いているなら、手足の付け根を通る、
その垂直なラインと平行な延長線上に効果が出る可能性が高くな
ります。

 例えば、上腕に左右捻転の力が働いている時や膝倒しの時には、
上腕骨や大腿骨の向きと垂直で、手足の付け根を通る線の延長線
上に効果が出やすくなります。

 こういう現象が成り立つのは、骨に沿う形で伸縮させる運動の
向きと、捻転運動の向きが基本的に直交(直角に交わる)するこ
とから来ています。膝倒しの時には、骨盤を捻転する動きが関係
しています。

 簡単な例では、腕などを垂らした状態で手首を捻転している時
を考えてみましょう。捻転運動の力の向きは腕を伸ばした状態で
は、上腕部の骨と直角になる方向です。

 それで、その場合には、肩から伸ばした腕と、肩を起点に直角
の方向の胴体部分に、その時に体が操体の効果を出したがってい
る所がある可能性が高いです(写真5)。

写真5

5.仰向け膝倒しの時に、胴体に働く力

 上記の2つの腕の動きの例、つまり、腕を上に伸ばす動きと、
垂らした腕を捻転する動きは、仰向け膝倒しで、倒れていく膝に
対して、倒れていく方と反対側の腕で抵抗を作る場合によく使わ
れる動きです。

 腕を伸ばす方を詳しく書くと、倒れていく膝の大腿部と平行で
逆向きの方向に、つまり、腕を肩より上げた方に腕を伸ばして抵
抗を作ります。

 また、捻転の方は、1つ目の方向と直角に上腕部がなるように
腕を肩より下げて、小指側が手平側に回転する方向に手首を捻転
させて抵抗を作ります。

 この2つの場合には、付け足しとして、捻転と伸展の両方を使
いますが、使い方が違います。

 1つ目では、先ず手首を捻転させ、手首をしっかり固定させた
状態にしてから、伸ばした方が効果が出やすいです。2つ目では、
先ず腕を軽く伸ばし、遊びがない状態に固定してから、手首を捻
転させます。

 捻ってから伸ばすか、伸ばしてから捻るかの違いで、どちらも
後の方の動きが胴体に伝わります。どちらも似たような効果を上
げますが、どちらがより効果を上げるか、受け手が気持ち良さを
感じられるかは、受け手の体の状態によって異なります。

 さて、胴体に捻転の力が加わる場合には、上腕や大腿をそのま
ま延長するラインと、それらと直交するライン、その2つのライ
ンの組み合わさった力以外にも、それらと平行なラインにも、体
がその時に効果を出したがっている所がある可能性があります。

 例えば、仰向け膝倒しの場合には、大腿に直行するライン上の
力も胴体に働きますが、胴体を捻転する力も生まれ働きます。

 胴体の下部に対して大腿と平行の方向に捻転する力、ネジのよ
うな螺旋をえがく力が働いています。ここで、胴体の下部とは、
主に、ヘソから下のことです。また、大腿と並行の方向の捻転と
は、大腿と垂直なラインを中心に胴体を膝の取れていく方向への
捻転です。

 こういう螺旋的な力の場合には、必ず、どこか途中で反対向き
に作用する螺旋的な力があり、その向きの変わり目のライン上に、
体がその時に操体の効果を出したがっている所があります。2つ
の反対向きの螺旋力の変わり目のラインに、一番、力が働くから
です。

 反対向きの螺旋の力が有るのは、無いとタワメの間ができない
からです。

 仰向け膝倒しの時の反対向きの力は、すでに書いたように、倒
れていく反対側の腕で作ります。そして、腕を頭の方に挙げた状
態でも、肩より下げた状態でも、作り出す力の方向は大腿と平行
で向きが反対になります。

 そして、大腿のラインと腕の作る力のラインの間、腹から腰に
かけての肋骨・骨盤のない腰椎の辺りが反対向きの螺旋の力の変
わり目になります。

 細かく言えば、腰椎3番あたりのラインです。逆に言えば、捻
転の中心だから、痩せた人では、この辺りがいちばん細くなるわ
けです。雑巾を絞ったときを思い出してください。

 そして、このタワメの間で、仰向け膝倒しの効果が出る変わり
目のラインは、大腿とほぼ平行になります。

 ですから、仰向け膝倒しと同じ効果の皮膚操体として、一番、
伝え手の動きの少ないものは、ラクな方を上にした横向き寝になっ
た受け手の脇腹の皮膚を、骨盤に近い方は腹側に、肋骨に近い方
は背中側に、ズラすという形です(写真6)。

写真6

 やってみたことがなかったらヤジウマしてみてください。気持
ち良いという人が多いですから。

6.上腕と大腿から胴体に働く力の交点あたり

 このように、タワメの間を作るのに利用している手足の大腿や
上腕の位置を見ていくと、そのタワメの間で効果が出るところが
予測できます。大腿や上腕の延長か、それらと直行するラインを、
先ず思い浮かべればよいわけです。

 それに、延長方向にしても、直角方向にしても、そのラインを
伸ばしていった先に体幹部がないと効果が出るところがないこと
になりますから、どちらかラインを伸ばした先に体幹部がある方
が効果を上げている方向になります。

 言いかえれば、大腿と上腕の向きをそのまま延長したラインと
それに垂直なライン、そしてそれら2つに平行なラインを参考に
しながら、その操体で上腕や大腿からの力が胴体にどう働いてい
るかを見ていけば、体幹部のどの辺りに効果が出やすいかが予測
できます。

 力の働くラインとその延長上に、そのタワメの間で、体が操体
の効果を出したがっている所があります。

 また、そのタワメの間を作るのに上腕と大腿の両方が関係して
いれば、体幹部のどの辺りに効果が出るか見当がつきます。上腕
と大腿の動きが作り出している2つのラインが交差する辺りにな
るからです(写真7)。

写真7

7.足の伸ばし方から、どこが悪いか予測する

 胴体を捻転させる力が無い時には、大腿や上腕から力が伝わる
ラインの延長に効果が出やすいです。また、胴体を捻転させる力
が有る時には、その力が働く延長のラインの他に、捻転を作る2
つの螺旋力の境目辺りにも、効果が出やすいです。

 分かりましたか。分かりにくいところがあったら、質問を寄せ
てください。

 こういう予測の例は、今まで出した以外にも、沢山あります。

 例えば、足の踵を突き出したりとか、足を伸ばすのが気持ち良
いという時でも、床にほぼ平行に伸ばしたい時と、床から40cm
ぐらい高い所に伸ばしたい時があります。

 この2つでは、受け手の体が、その操体で効果を出したい所が
違います。床に近い時には、肩など上半身の調子が悪いことが多
いです。そして、高い時には、腰など下半身の調子が悪いことが
多いです。

 上半身の場合には、伸ばそうとしている足の大腿部のラインを
延長していけば、右肩が悪いか左肩が悪いかも見当がつきます。
大腿骨を天から見たときの方向の延長線上に、効果が出やすいの
で。

 つまり、先ほどは、床と大腿の角度を見ていたのですが、今度
は背骨と大腿の角度を見るわけです。

 先回の「背骨に伝わる動きが同じ操体は似たような効果」とい
う自然則を使う時にも、今回の「タワメの間の姿勢で大腿・上腕
の延長上か直行する方向を中心に、その操体で胴体に働く力の方
向を見ていけば、その方向の延長線上にそのときの操体の焦点が
ある」という自然則を付け加えると、より効果的なものに変化さ
せていくことができます。

 受け手から「ほんのちょっと違う感じ」と言われたり、息の深
まり具合がイマイチなときなどに、力の方向などを少し変化させ
るときに思い出して応用してみてください。喜んでもらえる可能
性が上がると思います。

 例えば、肩の調子が悪い人を寝た姿勢で操体する場合などに、
寝た姿勢での大腿の向きを延長した方向か直行するラインを延長
した方向に悪いほうの肩がくるように、大腿の向きを少し変えて
もらったら、「あ、ピッタリ」と言ってもらえる可能性が高くな
ります。

 そして、反対側の足や両腕も、痛いほうの肩に力が働きやすい
ようにしてもらうと、より深い気持ち良さが味わってもらえる確
率がますます高くなります。この点については、次々回くわしく
書きます。

 膝倒しなど胴体が捻転しているときには、螺旋を描く力が胴体
に作用しているのを思い浮かべると理解しやすく見当がつけやす
いと思います。寝ている姿勢によっては、その調整が難しくなる
かもしれませんが。

 そして、操体でも、他の手技運動療法でも、例えば内臓系の病
などにこういう方法が効果があるという情報があったときにも、
その方法で効果が出るときの姿勢に注目すると、その方法が効果
を出せる理由に納得ができる場合が、けっこう、あります。

 また、重度の障害で、ある特定の姿勢にしかなれない人にも、
赤ちゃんや認知症の方など言葉が通じにくい人が特定の姿勢を取
りたがる時などでも、応用できます。

 その特定の姿勢での大腿や上腕の向きを見ていくと、その人の
体の悪い所、というか、その時にその人の体が良くしたがってい
る所が見えてくる可能性があります。

8.おわりに

 今回は、「タワメの間の姿勢で力が働く先に効果が出やすい」
ということを書きました。

 次回は、膝裏のシコリなど目標にしているシコリがある場合に、
タワメの間で、そのシコリはどう変化しているかという話から、
丁度よいタワメの間の姿勢を見付ける方法について書きます。


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最終更新:2015年03月20日 11:01