累積: - ___ 昨日: - ___今日: -

術伝流操体no.70
【6】自然則篇 (6)背骨に伝わる動きが同じなら
背骨に伝わる動きが同じなら

1.はじめに

 前回は、キッカケが「手首足首などの末端の時」と「体
重移動など体の中心に近い部分の時」の違いを、見た目の
分かりやすさ、操体のまとまりやすさなどから、見ていき
ました。

 今回は、「背骨に伝わる動きが同じなら、似たような効
果」が出る可能性が高いということを書いていきます。

2.右肘を引けない時は、左肘を引くか、右肘を前に出す

 簡単な例ですと、右肘を肘鉄砲と食らわすような感じで
後ろに引けない(写真1)という人に対して、左肘で同じ
動きをしてみる(写真2)という感じの操体です。

写真1
写真2

 この場合に効果を出す可能性を高めようと思えば、軽く
動かせる範囲で左肘を後ろに引いてもらい、動きが止まっ
たら、左手小指が手の平側に回る方向の左手首の捻転(写
真3)、左足への体重移動(写真4)の2つを付け加えると
良いでしょう。

写真3
写真4

 腹に息が入るか、気持ち良さが生まれてくるか確認でき
たら、気持ち良さを味わいます。体重を戻したくなるか、
肘を戻したくなるか、息が普通になるかしたら、終えます。

 左肘を戻してから、後ろに引きにくかった右肘を後ろに
引いてみると、引けるようになっていると思います。

 この症状に対しては、もちろん、単純に右肘を後ろに
引きにくい所から前に戻してくる(写真5)という操体で
も良いです。

写真5

 その場合には、肘が脇腹に来た辺りから、右手小指が手
甲側に回る方向の右手首捻転、左足への体重移動の2つを
付け加える(写真6)と、効果が出やすくなります。

写真6

3.2つの操体で、背骨に伝わる動きは同じ

 ところで、この2つの症状改善のための動きが、背骨に
はどう伝わっているか調べてみましょう。

 どちらも肩甲骨、鎖骨を通って背骨に伝わり、肩甲間部
の背骨を頭の上の方から見て反時計回りに回転する動きに
なっているのが分かると思います(写真7、8)。

写真7
写真8

 ですから、2つの操体の動作を同時にしてもフラついた
りしません(写真9)。

写真9

4.健側で同じ動作がキッカケの方が、効果が出やすい

 今までの経験上、この二つの動きの操体を比較してみる
と、患側で逆の動作をキッカケにするよりも、反対側の健
側の肘で同じ動作をキッカケにする方が、効果が出やすかっ
たです。

 これは、おそらく、健側同動作キッカケ操体の方が、全
身に連動しやすいし、痛い直前の姿勢から始めていないの
で気持ち良さが味わいやすいためだと思われます。

 この「やりやすい方で同じ動作をしてみる」という方法
は、肩周りで左右差のある動作制限にしてみてみると、た
いてい効果が出ます。また、紹介し伝えた相手の人が面白
がって、操体に興味を持ってもらえます。

 片手だけ背中に回しにくかったり、頭の後ろに回しにく
かったりで、帯が結べなかったり、髪が結えなかったりと
いうときには、試してみる価値があると思います。

 ただ、左右差が無い場合には、効果があまり出ません。

5.背骨の動きに左右差がないと、キッカケの手の動きは反対ではない

 また、手から伝わった動きが、背骨では左右捻転や左右
側屈の動きにはならない時には、手や腕の動作が反対では
なくなります。

 体を反らす時を例にします。この時には、手を垂らした
状態で小指側が手の平側に動く方向の手首捻転運動をキッ
カケにできます(写真10)。

 が、この場合には、左右どちらの手でも同じ向きの手首
捻転運動になりますから、片方の手ができない動作を反対
側の手でしても効果が出ません。

写真10

 もちろん、この場合にも、垂らした手を片側ずつ捻転し
て左右差がある場合には、背骨の左右捻転の左右差に関係
してきますので、やりやすい方を余分に捻転すると、やり
にくかった方が改善します。

6.左右差が有る時は、試してみる

 一見、背骨に捻転や側屈を与えない動作でも、左右差が
有る場合には、試してみる価値があります。

 例えば、立位や座位で、手を真上に挙げる動作の場合に
は、一見、背骨に捻転や側屈の動きはないように思えます。

 が、上げやすい方の腕を少し余分に上げ、挙げた手の小
指側が甲側に回転するような手首捻転、移動しやすい方に
(たぶん挙げた手と同じ側に)体重への移動を付け加えて
みます(写真11)。

写真11

 そうすると、気持ち良く、腹にも深く息が入っていきや
すいです。戻してみると、挙げにくかった方の手が上がり
やすくなっています。

 たぶん、左右差が有るときには、背骨が捻転や側屈をす
るような動きが伝わるからだと思います。例に挙げた場合
では、挙げた手の小指を甲の側に回転する動きが、背骨に
伝わって背骨の捻転運動になっています。

7.足でも左右差があれば、同じ

 これは、足の場合でも同じです。

 手足の動きに左右差が有ったら、その動きをやりやすい
側の動きを少し強調することをキッカケにする方が、やり
にくい側で逆向きの動作をすることをキッカケにするより
も効果が出る確率が高いです。

 そして、足首の背屈や捻転など「やりやすい方に末端を
動かす」ことと「移しやすい方に体重を移動する」ことを
付け加えると気持ち良さが味わえる可能性が増えます。

 やったことがなかったら、試しにヤジウマしてみてくだ
さい。

 前回、うつ伏せで尻に踵が付きにくいときに、その足を
伸ばす定番操体と、反対側の付きやすい方の踵を尻に近付
けていく操体は、同じ効果があることを書きました。これ
も、上に書いた自然則そのままだということが分かると思
います。

 この二つの動きが仙骨にどう伝わるかと見ていきます。
仙骨は、背骨では、これら2つの動きで、足の動きが初め
に伝わるからです。

 ここでは話を分かりやすくするために、右足踵が尻に付
きにくかったことにします(写真12)。

写真12

 先ず、定番の操体では、付きにくい方の右足を痛くない
範囲で尻に近付けた状態から少しずつ伸ばしていきます。

 多くの場合、膝が空中に浮いている状態で伸ばした方が
気持ち良いので、片手で膝を支え、もう一方の手で伸びて
くる右足首に抵抗を掛けるという形になります(写真13、
14)。

写真13
写真14

 この二つの手の使い方、補助と抵抗をする手のバランス
などが、少し難かしいです。そのため、定番の操体の中で
は、習得に時間が掛かるとされているようです。

 さて、この操法で、「タワメの間」の形は、どうなって
いるでしょう。立ち姿勢でボールを前蹴りするための準備
で、足を後ろに伸ばして振り上げた姿勢から、足を前に蹴
ろうとする方向に力を入れている状態(写真15)に見えま
す。

写真15

 または、歩いている時の後ろ足を次の一歩のために前に
出そうとする状態にも思えます。そういう状態を、うつ伏
せにした形になっています。

 その場合に、仙骨には、少し反らした状態から、右側の
反りを左側より緩和する方向に動かそうとする動きが伝わ
ります。そうしながら、右前、つまり右の腹側に捻転させ
る動きも加わります。


 同じ効果を上げると紹介した、付きやすい左足をお尻に
付けていく動きでは、どうでしょう。多くの場合、途中か
ら曲げた左足が右足の方に倒れていき、しかも、左膝を持
ち上げると気持ち良さが深くなるということを、前回に紹
介しました。

 この場合に、仙骨に伝わる動きは、やはり仙骨を反らし
ながら、しかも、左側をより反らせながら、つまり右側の
反りは比較すれば少なくしながら、右前のほうに仙骨を捻
転させる動きになっているように思います。

8.おわりに

 どうして、背骨に伝わる動きが同じ操体は似たような効
果が出るのでしょう。この点について、私は、ヒトは直立
2足歩行するサルだからかなと思っています。

 直立2足歩行がヒトの最も基本的な動きで、その動きは
背骨を中心になされているためかな、魚が背骨を横に振っ
て泳ぐように…などと考えています。歩くときは、左右交
互に背骨を回転させていますし。

 この見方、つまり、背骨に伝わる動きが同じ操体は似た
効果があるという見方を思いついてから日が浅いので、ま
だ、色々な操体をすると動きは背骨にどう伝わるかについ
て、全て調べてみたわけではありません。

 ですから、例外が見つかるかも知れません。皆さんがお
得意の操体でヤジウマしてみて、違う例が出てきたら、教
えてください。

 次回は、そういう見方で操体を見ていったことから思い
付いたことを書いていきます。

 その時している操体が背骨のどの辺りに最も影響を与え
ているか、それから発展させて、タワメの間である特定の
姿勢になった時に、その姿勢は体のどの辺りに効果を上げ
ようとしているかを判断する方法などです。


   次へ >>> 術伝流操体no.71



   >>> 目次へ・・・・・・・・・術伝流操体(あ)

   >>> このページのトップヘ・・術伝流操体no.70

   >>> 術伝HPトップへ ・・・・トップページ

術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」


お知らせとお願い

術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集

 術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て
いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
をしてくださる方を募集しています。

 くわしくは、術伝流のモデルをみてください。

 よろしくお願いします。

感想・間違いなど

 感想などあったり、間違いなど見つけた方は、術伝事務局あてにメールをください。

 よろしくお願いします。

「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集

 「術伝」では症例相談用メーリングリストの参加者を募集しています。
参加希望の方は、術伝事務局あてにメールをください。

 よろしくお願いします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

最終更新:2018年07月07日 14:30