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術伝流操体no.69
【6】自然則篇 (5) 末端の動きと体重移動での違いは
末端の動きと体重移動での違いは

1.はじめに

 先回は、操体の気持ちよさを深める工夫として、「体重移動」
と「末端の動き」、この2つの組み合わせを取り上げました。

 今回は、その2つをキッカケにする2種類の操体の違いを見て
いきます。つまり、「末端の動き」をキッカケにする場合と「体
重移動」をキッカケにする場合大雑把な違いを書きます。

2.末端キッカケの方が分かりやすい

 先ず、末端の手首・足首の動きをキッカケにする操体は、何と
言っても、分かりやすいのが特徴ですね。本で読んでも、実演を
見ても、割と直ぐに何をしているのかが理解しやすいと思います。

 操体って言うと、仰向け膝立て足首背屈(爪先上げ、写真1)
というイメージがあるのも、中腰尻振り運動などに比べて、本を
読んだだけでも、だいたい何をしているのか理解しやすいからで
しょう。

写真1

 比較すると、中腰尻振り運動(写真2)などは、本を読んだだ
けでは何をやっているか理解しにくいし、実演を見ても何をして
いるのだろうという感じと思います。また、自分でやってみても、
初めのうちは、何をどう調節すると気持ちよさが深くなるか、分
かりにくいと思います。

写真2

2.末端キッカケは、全身に連動させにくい

 しかし、末端をキッカケにする操体は、その動きを頭で理解し
やすい反面、操体がまとまりにくい面があるような気がします。

 バラバラになりやすいというか、注意していないと末端の動き
だけになって全身に連動しにくいものになりやすいです。言い換
えれば、体丸事の気持ちよさを感じにくい、形だけの操体になっ
てしまう可能性が高いです。

 末端の手首や足首は、動く範囲も広いし、動く方向も沢山あり
ます。また、手首足首の関節自体も色々な動き方(4種8方向)
をします。そのため、その中から、その時の体全体の歪みにピッ
タリあった一つの姿勢(タワメの間)を見付けることが難しいた
めだと思います。

3.体重移動キッカケは、体丸事の気持ちよさが出やすい

 それに比べて、中腰尻振り運動など体重移動をキッカケにする
操法は、できるようになれば、全身に連動しやすく、体の動きが
バラバラになりにくく、体まるごとの気持ちよさを味わいやすい
感じがします。

 体重移動できる範囲が狭いし、慣れてくると、どちらに動かし
たら気持ちよいか感じやすいためだと思います。原始感覚という
か勘というかが働きやすいようです。

4.膝首などキッカケは、末端キッカケと体重移動キッカケの中間

 膝を動かしたり(写真3)、首を動かしたりは、手首・足首を
キッカケにする場合と、体重移動をキッカケにする場合の中間
くらいに思います。やや、末端をキッカケにする場合に近いと
言えます。

写真3

 手の平を頭の後ろに置き、親指を支点に手首の捻転をキッカケ
にする操体(写真4)など、手を体に付けた状態から始めたり、
合掌した手や組んだ腕の肘(写真5)をキッカケにする操体など
も、同じように中間くらいだと思います。

写真4
写真5

 つまり、まとめてみると、以下の2つのことが言えます。

(1)手首足首をきっかけにする操体よりも、初めは理解しにく
いけれど、できると全身に連動しやすい

(2)体重移動よりは、初めは理解しやすいけれど、全身に連動
させにくい

5.求心性の動きの方がまとまりやすい

 また、手首足首を体から遠ざけていく動作を、手首足首を体に
近づけていく動作と比較すると、遠ざけていく方が見た目に理解
しやすいけれど、バラけやすく、まとまりにくいということも言
えます。

 これも動く範囲が広く、方向も沢山あることから来ています。

 たとえば、うつ伏せで尻に踵が着かない場合に、その足を伸ば
すように誘導する操体(写真6)が良い例になります。

写真6

 この操体は、足首を体から遠ざけることをキッカケにしている
せいか、定番の動きの操体の中では、効果を出せるようになるの
が難しいとされているようです。

 また、足は重いので一定の姿勢を長い時間にわたって続けるこ
とが難しいことからも来ていると思います。

 私は、自分でも余りこの操体、うつ伏せからの足伸ばし操体を
しません。また、初心者に伝えることもあまりしません。やって
みせることはしますが、できるように練習しなさいとは言いませ
ん。

 同じ効果が出せて、もっと簡単に身に付けられる方法があるか
らです。

 それは、尻に近づきやすい方の足の踵を少し余分に尻に近づけ
るという方法です(写真7)。

写真7

 足首付近を持って、ゆっくり尻に近づけていきます。途中で反
対側の足の方に倒れていくことが多いです。抵抗が少ない方に倒
していきます。

 動きづらくなった時点で足首を押すのはやめ、操者の反対側の
手でキッカケにした足首の延長の膝を持ち上げると気持ちよさが
深くなりやすいです。

 気持ちよさがかなり長い時間にわたって続くので、正座状態な
どの操者の膝の上に持ち上げた受け手の大腿部を乗せてしまうと
ラクです(写真8)。

写真8

 腹に息が深く入っていることを確認します。この形まで持って
いくと、患者さんの胴体部分の体重を移動させていることにもな
ります。

 気持ちよさが減ったり、受け手の腹の息が浅くなったり、受け
手が姿勢を変えたくなったりしたら、終わります。足を伸ばして
から、反対側の足を尻に近づけていくと、この操体をする前より
も尻に近づきやすくなっていると思います。

 言葉だけで操体を伝えるのは難しいので、あまり操体のイメー
ジが湧かないかもしれませんが、実際にやってみると簡単ですし、
足を伸ばしてくる定番の操体よりも身に付けるのも簡単です。

 定番と同じ効果が出るのは、背骨に伝わる動きが同じになるか
らだと思います。

 末端をキッカケにする操体がバラけてしまって、なかなか、ま
とまらないときには、このように、背骨に同じ動きを作り出す、
重さの操体や、それに近い、末端を胴体に近づける操体にしてみ
ます。

 そうすると、体全体に動きが伝わりやすく、体丸事の気持ちよ
さが味わいやすくなるようです。試してみてください。

 この「足首を尻に近づける」操体は、両足の踵がどちらも尻か
ら遠い場合には使えません。その場合には、伸ばした受け手の足
の大腿部の下に操者の大腿部を入れて少し持ち上げ、受け手の大
腿部や脹ら脛に皮膚の操体(写真9)をすると効果が出ます。

写真9

 大腿部を持ち上げるのは、足を伸ばす定番の操体の時と大腿の
高さを同じくらいにするためです。高さの調節が巧くいかないと
きには、座布団やクッションを受け手の大腿の下に積み上げても
良いと思います(写真10)。

写真10

 脹ら脛には、手の平も指も丸く当てて、親指側に捻転しながら
足首方向へのズラシを付け加えます。大腿部には、手の平を置い
た状態から同じようなズラシを加えると効果的です。

 これは、その方向への皮膚ズラシと、足の伸展が体にとっては
同じことだからのようです。

 足首を持って伸ばすよりも、操体がまとまりやすく、現代の人
には気持ちよいと言ってもらえる可能性も高くなります。

 また、持ち上げているのに比べるとラクなので、長い時間続け
られます。それで、増々、受け手に気持ちよさを感じてもらいや
すいようです。ヤジウマしてみてください。


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最終更新:2015年03月18日 15:06