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術伝流操体no.66
【6】自然則篇 (2) 動きから皮膚や重さへ
動きから皮膚や重さへ

1.はじめに

 前回は、「動きの操体」の変遷を辿ってみました。今回は、
そこから「皮膚の操体」や「重さの操体」までのバリエーショ
ンを紹介します。

2.タイプ6:自力と抵抗を逆に

 受け手に膝を倒してもらい、操者が手首を捻転して抵抗する
形(写真1)は、受け手の負担が大きいことに気が付きました。

写真1

 「足が重いので、気持ちよさを味わえるまで続けられない」
と言われました。膝を適度な角度に保つ姿勢を維持するには、
それだけで大きな力が必要なためだと思います。

 それで、膝を倒す方を操者がして、受け手には手首を捻る方
をしてもらったら(写真2)、皆さん、こちらの方が気持ち良
いということでした。これでも、タワメの間(ま)での体全体
の姿勢は同じです。

写真2

 ただ、操者の方も、重い足を動かし、長い時間一定の位置に
保持するのは、大変でした。気持ちよさが良く感じられるほど
タワメの間が長くなる傾向にあるためだと思われます。

3.タイプ7:大腿を床に倒してから

 それで、先ず膝をラクな方に倒してもらい、その時に胴体と
脚の角度が開きすぎて無理な格好にならないように上半身を浮
かすように動かしてもらいました(写真3)。

写真3

 つまり、タワメの間の時の胴体と脚の捻れる角度が、仰向け
で膝を倒している時と同じになるようにしたわけです。

 一番に気持ちのよい膝を倒す角度はそのままで、仰向けの床
に背中が付いた姿勢から倒れていく方の大腿の横側が床に付く
姿勢になってもらったわけです。

 その姿勢で、膝が浮き上がってこないように操者が押さえ、
受け手に手首を捻ってもらいました。受け手は、倒れていく方
と反対側に腕を伸ばしているだけでも、結構、効果があること
も分かりました。

 受け手も操者も共にラクで、長い間ずっと気持ちよさの味わ
えるバリエーションができました。倒した脚の大腿部に座布団
を1,2枚乗せれば、一人操体としても楽しめます。

4.タイプ7.2:座布団を積んだり、壁を利用したり

 背中が床に着いている方が安心できるという人には、布団な
どを畳んだものを膝が倒れていく側に気持ちの良い角度の分だ
け積んでしまうと、やりやすいことも分かりました。

 壁などを利用して同じ角度が保たれるようにしても同じです。

 比較すると、横向き寝に近い格好、つまり背中上部を浮かせ
てしまう方が気持ちよいという人が多かったです。

 が、この2つの操体の違いは、主に、体のどの辺りに体重を
掛けると気持ちよいかということで、決まってくる感じがして
います。

5.タイプ8:「押す」を「皮膚をズラす」に

 大腿を押すバリエーションをしているうちに、大腿を浮かな
いように床に押しつけるよりも、大腿の皮膚を膝の方向にズラ
した方が気持ちよいという受け手が多いことに気が付きました
(写真4)。

写真4

 そして、こういう皮膚ズラしでも、受け手が作る腕の動きに
対して、逆モーメントの抵抗になっていることも分かりました。

 そして、私は、この時に、皮膚の操体が生まれた理由(わけ)
を納得できました。

 動きやすい方向に動かすことと、皮膚をズレやすい方向にズ
ラすことを比較してみると、どちらをしても、タワメの間の姿
勢を中心に考えれば、同じモーメントの動きが受け手の体に生
まれてくることに気が付いたわけです。

6.タイプ9:抵抗も皮膚ズラしで

 「受け手が動かしている腕の方も皮膚をズラすのに変えたら
どうかな」と思いました。空いている方の手で、肩の辺りの皮
膚を、大腿の皮膚と逆モーメントになる方向にズラしてみまし
た(写真5)。

写真5

 受け手の口から「これは気持ちよい」という声が返ってきま
した。

 こうして、動きの操体は、皮膚の操体に置き換えることがで
きることが分かりました。

7.タイプ9.2:脇腹の皮膚ズラしで

 タイプ9をしているうちに、違う場所の皮膚ズラしでも、タ
ワメの間の時の姿勢が同じになれば良いことに気が付きました。

 例えば、膝の近くの皮膚の代わりに、大転子の辺りの皮膚を
膝の方へズラしても同じです(写真6)。

写真6

 その他、色々な所でできますが、一番面白いなと思ったのは、
脇腹の隣り合う2カ所の皮膚を互いに逆ベクトルになるように
ズラすことです(写真7)。脇腹の肋骨よりの皮膚と、骨盤よ
りの皮膚を逆方向にズラします。

写真7

 うまくいくと、片手の2本の指でも気持ちよさを味わっても
らうことができます。

8.タイプ10:重さの操体として見ると

 このやり方をしばらく続けているうちに、このやり方は、下
半身の重さを腹側に移動し、上半身の重さを背中側に移動して
いることにもなるなと思い至りました。

 そして、中腰尻振り運動など、体重移動を切っ掛けにするも
のが、操体の中にあるのも納得できました。

 先ほど書いた、受け手が腕を膝が倒れていく方と反対側に腕
を伸ばしていくだけでも効果が出る理由に気がついたわけです。
腕の重さを利用して、膝が倒れていくことに抵抗していると言
うことです。

 中腰尻振り運動でも、下半身の体重移動に対して、上半身で
逆ベクトル(逆モーション)の体重移動になる動きを作って、
倒れないで丁度バランスするようなタワメの間を作っているこ
とが多いですね。

 こんなことを考えていくうちに、どんな操体も、関節筋肉を
動かす形、皮膚をズラす形、重さを移す形に変化させることが
できるかもしれないなと思いました。

 その時、その場で、受け手が、気持ちよさを感じられるもの、
イメージしやすいものを選んでいけば良いのだなと納得しまし
た。

9.歪みの酷い人は、横向き寝がラク

 色々な人に操体をしているうちに、歪みが酷くなるほど、症
状が辛くなるほど、横向き寝で寝るのがラクな人が多くなるこ
とに気が付きました。

 それで、私は、今、横向き寝がラクな人には、その格好のま
まで、腰辺りと肩辺りの皮膚をズラしやすい方向にズラすこと
を、先ず、試してみるようになりました。

 その部分を暫くズラしてみて、息が深くなるかどうか見守り
ます。言葉が通じる人には、息が深くなった時点で、気持ちよ
さを聞きます。

 もちろん、ズレ具合によっては、仰向け膝倒しとは違う操体
のバリエーションになってしまうこともあります。

10.重さをいつも意識の片隅に

 そして、皮膚をズラしながら、受け手の上半身と下半身の重
さの移動具合を両手に感じて、バランスを取るようになりまし
た。

 シーソーや天秤(てんびん)のバランスを取るように、その
時その場の患者さんの体の状況に合わせて、ズラし具合や向き
をリアルタイム(即時即応)で調節していくことを心掛けます。

 重さの操体という見方を思い付いたので、皮膚をズラしたり、
筋肉を動かしたりしている時でも、微妙なバランスを取りやす
くなったように思います。

 いつも重さを意識の片隅に置いておくことで、タワメの間で、
二つの互いに逆ベクトルの動きの極(ごく)僅(わず)かな変化を
感じて、受け手の体の望みに丁度良く合わせていくことが、以
前より上手にできるようになりました。

 ヤジロベエがバランスを取って動くように、モビールが風に
吹かれてゆっくり動いていくように。

11.重さへの意識と止め時

 また、こうしていると、もうその操体を止めても良いと受け
手の体が感じ始めたサインも見付けやすいです。

 受け手の体が姿勢を大きく変えたがっているような動きを見
せたら、たいてい止め時です。それは、それまでのヤジロベエ
がバランスを取るような、モビールが風に吹かれて動くような
動きとは、全く別の種類の動きです。

 ただ、実際の人の動きはヤジロベエやモビールよりもダイナ
ミックで、終わったと思った時点から、次の操体への動きが始
まっていく人もいます。

 また、一つのタワメの間の時のバランスを取る動きも、弾力
に富んだ、生き物らしいダイナミックな動きを伴なったものに
なることも多いです。

12.互いに逆なベクトル1組で、タワメの間

 ついでに書いておきますが、互いに逆向きの同じ大きさの力
が働くから、「タワメの間」ができるわけです。逆ベクトルの
力が釣り合って、タワメという状態ができるということです。

 片一方の力だけ働くとしたら、タワメの間は生まれず、体は
動き続けてしまいます。

 一方の力だけに思える時にも、反対向きの力は、必ず存在し
ます。逆向きの力が、体の重さ、倒れまいとする動きの2つに
代表されるような時には、意識されにくいだけです。

13.色々なバリエーションを作る

 さて、「ギュ・パッ・ストン」型から「その時にラクな寝方
を強調するように皮膚をズラす」形や「重さを移してみる」形
までが、同じ操体という言葉で呼ばれることを納得していただ
けましたか?

 タワメの間を中心にして、互いに方向が逆で大きさが同じ力
が、ヤジロベエのように少しずつ動きながら、バランスを取っ
ているイメージを心に思い浮かべてみてください。

 それができれば、一つの操体から、様々なバリエーションを
作っていくことができます。

 まぁ、力が2つでなく、3つ以上で、1つの力との残りの力
の組み合わせが釣り合っていることもあるとは思いますが。

14.おわりに

 納得できない人は、疑問点をお寄せください。

 今回は、ギュッ・パッ・ストンから皮膚や重さの操体までの
共通点を書きました。次回からは、色々なタイプでの手段の違
いを通して、操体の自然則を説明していきます。

 先ずは「ギュッ・パッ・ストン」と「ふわー・ぽわわん・ふっ・
くにゃぁ」の向き不向きについて書いていきます。


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最終更新:2016年07月29日 08:54