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術伝流一本鍼no.78 (術伝流・体得篇(18))

真気を呼んで巡らすための鍼の動かし方

1.はじめに

 今回は、「刺鍼中に起こる兆しとそれへの対応」の2回目で、
「真気を呼んで巡らす」ときの兆しと対応(主に鍼の動かし方)
を書いていきます。いわゆる「補」に近いと思います。温まって
くることが多いですし。

 実際には、先回書いた「邪気を蠢いている場所から引き、体の
端から体の外へ出す」ことと組み合わせて使います。が、初心の
うち、上手くできるようになるまでは、どちらかを主に使うか意
識した方が上達が早いと思います。

 こちらを特に主にした方が良いのは、腹への刺鍼かな。腹でも
横腹は、先回の刺法が主になると思いますが、下腹や臍周りなど
は、今回の方を主にすることが多くなります。

 虚や冷えが強く、邪気を退けた後しばらくしても真気が巡って
来ない場合には、腹以外の場所でも、この刺法を使ってみます。

2.「寫」と「補」の刺法の大雑把な違い

 いわゆる「寫」的な刺法と「補」的な刺法の大雑把な違いを書
いていきます。

 「寫」の時は「細かく、強めに、速く」動かす、「補」の時は
「大きめに、そっと、ゆっくり」動かす、という2つが基本です。

 これは、「邪気を引く」には、鍼を「細かく、強めに、速く」
動かす方が向いていて、「真気を呼んで巡らす」には、鍼を
「大きめに、そっと、ゆっくり」動かす方が向いているからだ
と思います。

 「寫」の時に「弾鍼」や「押手を切打」するのは、「細かく速
く」鍼を動かすためです。『杉山真伝流』を見ると、鍼を「細か
く速く」動かす手技は、いろいろ出ていますね。その中から、目
の前の患者さんの体から反応が返ってきやすく、自分が使いやす
いものを選べばよいと思います。

 これに対し、「補」のときの技法は少ないというか、あまり伝
わっていないようです。『杉山真伝流』を見ても、よく理解でき
ませんでした。もう少し『名家灸選釈義』のような実践に基づく
解説をして欲しかったなと思いました。

3.ゆっくり動かしたら温まった

 『鍼道発秘』の「大寒」には、「鍼を深くして久しく留むべし」
とあります。これは理解できました。

 腹などに刺鍼している時に、ツボの底の硬い部分を弛め、邪気
を引き出しても温まった感じがしてこない時にも、しばらく待っ
ていれば温まってくることが多いからです。

 『杉山真伝流』「皆伝之巻 鍼法察要」の「気察」には「…邪
気の至るや緊にして疾く、穀気の至るや徐にして和す…」とあり
ますが、本当に、そういう感じのことが多いです。

 ただ、待っているだけでは退屈なので、自分に刺している時に
いろいろ試してみました。なかなか良い動かし方を見付けられま
せんでした。

 それと同じ頃に、太い鍼を刺す練習もしていました。太い鍼は
弾入すると痛いので、接触鍼をしながら切皮できないかなと、ぼ
んやり動かしていました。

 すると、ある時、ほんのりと温まってきました。そして、いわ
ゆる「真気が巡ってきた」のも感じられました。その頃までに、
気功太極拳や野口整体の愉気などの経験が20年以上ありました
ので。

 この経験をしたのは、資格を取った年の夏だったと思います。

 その時は、速く動かすと痛いので、「ゆっくり、そっと」鍼を
動かしていました。それで、できるだけ、ゆっくり、そっと、動
かしてみました。そしたら、温まりやすいことが分かりました。

 それから、色々と経験を積み重ねていくうちに、瀉法が「速く」
以外に「強めに、細かく」動かすのが良いのに対し、「ゆっくり」
以外に「大きめに」動かした方が、温まりやすく、真気も巡って
きやすいことが分かりました。

 真気が巡ってきた時というのは、ほんのり温かい感じがします。
温かい風がゆっくりと吹いてきて包まれるような感じがします。

 人によっては、寒い冬の日に日陰から日向に出た感じとか、雲
の切れ間から日が差してきた感じという表現をする人もいました。
ほんのりと言っても、ジワジワと来る感じの時よりも、フッと来
る感じの時の方が多いせいかもしれません。

 生理学的には、その辺りの毛細血管に血が巡ってきたのではな
いかと思います。

 毛細血管というのは、入り口に括約筋があって、必要のある時
だけ流れるような仕組みになっていると、生理学の本に書いてあっ
たような。その括約筋が弛むのかなと思っています。

 見た目にもほんのり赤くなって見えることが多いです。

4.敏感な患者さんで試し、講座でも公開

 自分に6割以上の確率で可能になってからは、敏感な患者さん
に冷えた感じのツボを見つけると、事情を話し了解してもらった
上で、試させてもらいました。経験が多くなるにつれ、だんだん、
自分でなくても「真気が巡る」確率が上がっていきました。

 そして、講座でも、基本的なことを身に付けた後の人には公開
し、感想を聞いたり、試してもらったりもしました。講座に来て
いる人にも敏感な人は多く、その意見は大変参考になりました。

5.現在、主に使っている動かし方

 いわゆる「補」、「真気が巡る」状態にするために、私が主に
使っているのは2つです。

 一つ目は、鍼柄を持ち、「ゆっくり、そっと、おおきめに」、
鍼を曲げたり回したりします。

 左右など2方向に曲げる時には、鍼柄の先を、ゆっくり、刺鍼ヵ
所から少し離れた所の皮膚に近づけるようにします。回す時は、鍼
を少し曲げた状態で、ゆっくり、刺鍼ヵ所の周りを半円を描くよう
に動かします。

 弾鍼や横揺らしを、「大きめに、そっと、ゆっくり」にした感
じですね。色々な動きの中から、目の前の患者さんの体から反応
が返ってきやすいものを選べばよいと思います。

 私の経験上、比較的確率が高かったのは、「8の字を描くよう
に動かす」方法でした。要するに、「2方向に曲げる」ように動
かすのと、「半円を描く」ように動かすのを組み合わせたもので
す。

 先ず一方向に鍼を曲げていき、鍼柄が水平になった位で半円を
描くような動かし方をし、90度位したら反対方向に鍼を曲げて
いき、また鍼柄が水平に近くなったら、先程とは逆向きの半円を
動かすようにし、90度位したら反対方向に鍼を曲げていきます。

 方向を変えると結果が出ることもあるので、「8の字」を1回
描いた後に30°位方向を変えて、次の「8の字」を描くようにし
ています。

  患者さんの反応が返ってきやすい方向や曲げ具合が分かったら、
その方向や曲げ具合を中心に真気を呼ぶようにします。

 もう一つの方法は、捻鍼を「大きめに、そっと、ゆっくり」に
したものです。片方に捻転するのを1秒位かけます。片側に捻転
し終えた時点で0.5秒位留めますから、往復で3秒以上はかけま
す。

 もっとも、患者さんによって反応する遅さや留め時間が違うの
で、反応が返ってきやすいものを選ぶ必要があります。

 こちらの方法で、経験上、比較的確率が高かったのは、捻転し
ながら指腹と鍼柄を少し滑らす感じも混ぜた場合です。ゆっくり
捻転しようとすると、時々、指腹と鍼柄が滑ってしまうことがあ
りました。面白いなと思って続けたら、真気が巡るのが早かった
のです。

 敏感な患者さんには分かる人が多く、この動かし方の方が良い
と言われました。鍼を摩擦する感じにもなるので温まりやすいの
かなと思いました。

 この方法は、鍼柄だけでなく、鍼体でも可能です。細いので、
微妙な動きになり、練習は必要と思いますが。

 どちらの方法でも、手で人を呼ぶときのように、鍼を横揺らし
することを、時々、混ぜた方が良い場合もあります。上記した方
法だけで真気が巡りにくい時には、試すことにしています。

6.おわりに

 ご理解できましたでしょうか? 文章で伝えるのは難しい分野
なのかもしれませんね。

  戸ヶ崎正男先生が『杉山真伝流』を評して「鍼の動かし方は、
上下、左右、左右捻転」と言ったとか、東洋鍼灸出身の人から聞
いたことがあります。その通りだなと思います。

 あまり使わないですが、今回書いた方法の他に、上下つまり鍼
を深くしたり浅くしたりを「大きめに、そっと、ゆっくり」した
場合にも、真気が巡ったこともあります。ただ、鍼を刺す動きを
「そっと」するのが少し難しいような気がしました。

 他にも色々な動かし方で「真気を呼んで巡らす」ことは可能と
思います。今回ここで書いた以外に有効な方法をご存知な方は、
「あはきワールド」などで発表してくださるとありがたいです。
よろしくおねがいします。

 また、この刺法をしばらく使っても、真気が巡って来ない場合
には、灸頭鍼をしてみることが多いです。いつか、こういう状態
も鍼のみで改善できるようになろうと気持ちを新たにしつつも。

追記:2017.01.25ーーー 真気を巡らしムチウチを改善した例 ーーー
 この「ゆっくり大きめに鍼を動かして、虚を補す」刺法で、ム
チウチを改善した症例は、以下に書いています。

術伝流一本鍼no.22 先急・運動器偏 補足 ムチウチ
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追記:2019.03.04ーーー この刺法は、漢方鍼に似ているかも ーーー
 この「ゆっくり大きめに鍼を動かして、虚を補す」刺法は、
いわゆる「経絡治療」系の中で一番実践的な「漢方鍼」の刺法に
近い感じがしています。特に、皮内や皮下などの浅鍼の場合には。
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