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術伝流一本鍼no.71 (術伝流・体得篇(11))

漢方の勉強もしてみよう

1.はじめに

 江戸時代の葦原検校『鍼道発秘』に
「夫れ疾病の初めて発するや大抵鍼刺して巳ゆ、
  其の既に盛んなるや、湯液以て之を治すべきなり」
という一文があります。江戸時代には、鍼灸と漢方薬を同じ人が
扱っていたからでしょう。

 現代では、鍼灸師は、漢方薬を扱えませんが、江戸時代の鍼灸
文献をよく理解するためにも、漢方の勉強は必要だと思います。
特に、江戸時代に盛んで現代日本でも一般的な古法派漢方は、
『鍼道発秘』や『杉山真伝流』などに書かれた江戸時代に実践さ
れていた鍼灸と関連が深いので、参考になることが多いです。

 私自身まだまだ勉強の途中ですが、考えていること、実践して
いることを書いてみます。

2.外傷性瘀血証が駆瘀血剤で改善

 漢方薬が効果的なことは、私自身も経験しました。20代の頃
に左肩甲骨下角を骨折したことの後遺症で、外傷性瘀血証になり
ました。冷房に当たったり、その部分に刺激が加わると、左手の
握力が無くなりました。そして、左肩甲骨の患部が疼くような辛
さが続きました。

 また、左足首捻挫の後遺症で、左片足立が短時間しか不可能で、
スキーをするとターンに大きな左右差がありました。そして、そ
れらの瘀血の影響で、冷え性でもありました。

 灸や灸頭鍼で、かなり改善しました。でも、症状は残っていま
した。それが、脳梗塞の再発予防に飲んだ漢方の駆瘀血剤で大き
く改善しました。冷え性ではなくなりましたし、余程の寒い時期
でないと、左肩甲骨が疼くこともなくなりました。左片足立も右
とほとんど同じ時間可能になりました。

3.漢方薬の処方を鍼灸治療の参考に

 漢方薬の処方は、鍼灸治療の参考になります。

 患者さんが漢方薬を処方されている場合は、漢方薬の処方解説
などを読み、その漢方薬が使われる証、つまり漢方的な病態を理
解し、邪気の蠢(うごめ)く場所、水毒や瘀血のある場所の見当を
付けます。

 場所は、表位、上焦、中焦、下焦くらいの大雑把で良いと思い
ます。治療する前に処方されている漢方薬が分かれば、事前に調
べておきます。

 そして、治療で腹診をするときに、見当を付けた辺り、及び、
そこと経絡的に関係する手足を、丁寧に診察し、ツボが出ていな
いか調べます。

 私が、処方解説として利用している参考書は、『臨床応用漢方
処方解説』(矢数道明著、創元社東洋医学選書)、『傷寒論真髄』
(横田寒風著、績文堂出版)、『漢方製剤 活用の手引』(臨床情
報センター)などです。

 詳しく調べたいときには、『和訓 類聚方広義・重校薬徴』
(吉益東洞他著、創元社東洋医学選書)で、一つ一つの薬剤の特
徴を見ます。

 例えば、『重校薬徴』では「桂枝、上衝を主治す」とあるので、
桂枝の入っている処方のときには、上衝を治めるのに効果的な鍼
技術(手甲への引き鍼、頭の散鍼など)を使うことを検討します。

 また、「人蔘、心下痞硬支結を主治す」とあるので、 人蔘の入っ
ている漢方薬が処方されていたら、 心下あたり、具体的には上腹
部の中央の上半分と、その背中側、及び、それらと経絡的に関係
する手足の部分を、丁寧に観察し、ツボが出ていないか調べます。

4.その病気によく使わる漢方薬を参考に

 患者さんに漢方薬が処方されていない場合でも、患者さんの病
気に頻繁に処方される漢方薬を調べると、参考になることがあり
ます。

 患者さんの症状や病気を漢方の症例集などで調べ、よく使われ
る漢方薬を調べます。そこからは、3.に書いたことと同じように、
使う鍼灸技術やツボが出ていそうな場所を予想します。

 例えば、カゼによく処方される漢方薬には葛根湯があります。
『傷寒論』には、
「太陽之為病、脉浮、頭項強痛而悪寒」
「太陽病、項背強几几、無汗、悪風、葛根湯主之」
と出ています。

 ですから、カゼの診察のときには、脈が浮いていないか、悪寒
悪風がないか、汗が出ているかいないか、項(うなじ)〜肩〜背中
が凝っていないか、それらと関連する場所にツボが出ていないか
などを調べます。

 また、それに適した鍼灸技術を使うこと検討するわけです。脈
が浮なら、浅目で手早い刺鍼のほうが向くとか、汗を出させるた
めに散鍼したりとか、項〜肩〜背中の凝りを弛める刺鍼をしたり
とか、ですね。

 病気と漢方薬の組み合わせについて、私が参考にしているのは、
『漢方養生談』(荒木正胤著、大法輪閣)、『症候による漢方治
療の実際』(大塚敬節著、南山堂)、『洋漢統合処方からみた漢
方製剤保険診療マニュアル』(秋葉哲生著、ライフサイエンス)
などです。

 『漢方養生談』は、1965年初版の本ですが、鍼灸の技術や、
症例ごとの出やすいツボなども掲載されていて、参考になります。

5.漢方医とコミュニケーション

 ツムラが配付している本による処方は、漢方を勉強している人
では嫌いな人もいるようです。が、現在日本の患者さんへの漢方
処方を知ったり、西洋医学との組み合わせを知ったりするには、
重宝します。

 また、漢方を処方している医師とのコミュニケーションをとる
ときにも役に立ちます。ツムラが後援する医師や医学生の漢方研
究会などに出席すると、もらえます。そうしなくても、漢方の勉
強をしたいからと、ツムラに連絡すれば手に入ると思います。

 漢方医とコミュニケーションをとるときにも、現在日本の漢方
を知るためにも、勧めたい本が、もう一冊あります。『専門医の
ための漢方医学テキスト』(日本東洋医学会学術教育委員会著、
南江堂)です。

 1990年代には中医の影響が強かった日本の漢方の世界も、現
在では、本来の日本の伝統の漢方を踏まえたものになっているこ
とが分かります。

 また、江戸時代に盛んだった鍼灸の伝統を踏まえた鍼灸を目指
している術伝流の私にとっても読みやすい本でした。終わりの方
に鍼灸の解説も載っています。

 この本を難しく感じるようでしたら、『学生のための漢方医学
テキスト』(日本東洋医学会学術教育委員会著、南江堂)から読
んでもよいと思います。

 また、以下のHPも参考になると思います。

 (医師との連携を考える際には必読のHPと思います)

6.漢方関係メルマガなど

追記:2017.01.28 漢方関係のメルマガなどーーーーーーー
漢方スクエア ツムラ

元気通信 養命酒
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

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最終更新:2017年01月28日 00:35