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術伝流一本鍼no.69 (術伝流・体得篇(9))

周りに人に鍼灸してみよう

1.はじめに

 今まで書いてきたように、自分の軽い病気に鍼灸したり、症例
集で過去の症例を検討したり、そういう経験を十分したら、次は、
自分以外の人に鍼灸させてもらいます。周りの人で鍼灸させても
らえそうな人に声を掛けてみます。

2.自分の鍼灸のファンを増やす

 「鍼灸院を経営するというのは、自分のファンクラブを作るよ
うなもの」と言った先生がいました。名言だと思います。鍼灸し
て喜んでもらえる人を少しずつ増やし、自分の鍼灸のファンを増
やしてくことが大切です。

 でも、無理してファンが減ったら逆効果です。ですから、無理
の無い範囲で少しずつ増やしていきます。

 例えば、鍼灸をしてなかった時代を知っている人には、信用し
てもらいにくいです。特に、目上の家族、親戚、子供の頃の友人
は、難しいです。

 そういう人に、初めて鍼灸したときに「痛い!」「熱い!」と
思われたら、それからは鍼灸させてもらえなくなります。特に、
結果が出なかったら、「下手だ」「鍼灸は痛く熱いだけで効かな
い」という不信感をもたれてしまいます。

 そうなると、その後に鍼灸させてもらえる可能性は非常に低く
なってしまいます。先ずは、痛くない鍼、熱くない灸で、結果を
出すことが大切です。

 逆に、結果を出して、そういう人たちが調子の悪くなったとき
に「鍼灸して」と言ってくるようになったら,しめたものです。
それが、治療家としての「初めの一歩」だと思います。

 そして、そういう鍼灸をしてなかった頃からの知り合いに結果
を出せれば、鍼灸ができるようになってから知り合った人には、
比較すると結果が出しやすいです。

3.自分に太い鍼を痛くなく

 ですから、先ずは、たっぷり鍼灸で自己養生して、結果を出す
経験を積み重ねることが大切です。しかも、痛くない刺鍼ができ
るように練習します。

 体得篇(7)にも書きましたが、そのため、自分に刺すときに
は、患者さんに刺す鍼よりも太い鍼を使います。ディスポ鍼の5
番位が自分に痛くなく刺せれば、1,2番の鍼を刺して痛がられる
ことは少なくなります。

 痛がられたら、自分に刺せる鍼を太くしていきます。私は、
30番まで自分に刺せるよう練習しました。それでも痛がられて
しまうことはありますが、自分にディスポの3番までしか刺せ
なかった時よりは、少なくなりました。

4.簡単な処置から

 そして、やらせてもらう時も、先ずは、自己養生の場合と同じ
ように、運動器系の症状への簡単な処置から始めます。

 手足陽経の肘膝から先、特に手足甲に、肩・腰をはじめ運動器
系の痛みを引きます。しかも、初めは陽経側のみにします。つま
り、初めのうちは、足甲は、陽経側の第2指から第5指に繋がる
骨間のみ使います。

 肩こり、腰痛などなら、 体得篇(3)(4) や、自己養生の
鍼灸の経験を参考に、手足甲のツボを探します。左右×前横後の
6分類が基本です。つまり、体の左右どちら側の症状かというこ
とと、前側・横側・後ろ側のうち、どの辺りの症状かということ
です。

 肩など上半身なら手甲で、体の前側の症状なら母指〜示指、横
側なら中指〜薬指、後ろ側なら薬指〜小指の可能性が高いです。

 腰など下半身なら足甲で、体の前側の症状なら第2指〜第3指、
横側なら第3指〜第4指、後ろ側なら第4指〜小指の可能性が高
いです。

 その辺りを、自己養生の時と同じように探して、ツボを見付け
ます。

 見つけたツボに刺鍼していきます。

 痛がられないように、押手の下への圧を強めにしてから、弾入
します。ディスポのステンレス鍼なら、銀鍼のような細かい3回
の弾入よりも、一度の弾入の方が痛がられないことも多いように
思います。

 それから、静かに、そっと、刺鍼していきます。刺し手の重さ
を利用し、必要なら、横に揺らしたり、捻鍼したりしながら。

 術者や受け手が何か感じたら、その深さで留めます。そして、
少し鍼を引き気味にした状態にします。

 その状態から、弾鍼しながら、声を掛け、患部やそれに関連す
る部分を、無理のない、辛くない範囲で、ゆっくり動かしたり戻
したりを繰り返してもらいます。だんだん動きが大きくなれば、
効果が出ている証拠です。運動鍼や操体鍼ですね。

 鍼を刺されるのを嫌がっているようなら、無理せずに、見つけ
たツボに、円皮鍼や粒鍼を貼ってもよいです。そして、貼ったま
ま、同じように無理のない範囲でゆっくり動いてもらいます。

 体得篇(5)に書いた「顔面部の炎症、カゼの初期」などなら、
手指への灸が効果的です。井穴、骨空などの指周りのツボに、糸
状灸や手指用糸モグサの灸をします。

 特に、モノモライやニキビや口角炎などの顔の炎症、カゼの初
期の発熱や項背のコワバリなどの内科系症状は、手指のツボへの
灸が効果的です。どの指を使うかは、そういう症状のときに自分
に灸した経験を活かしてください。

 体得篇(6)に書いたような腹痛、生理痛などの内科系症状や
全身バランスなどの慢性症状は、足爪の上の温灸が効果的です。

 千年灸(商品名)や釜屋ミニ(商品名)などの間接灸で良いと思いま
す。今は煙に敏感な家族がいることも多いので、煙の出ない炭モ
グサを使ったものの方が良いでしょう。

 足の甲でも良いのですが、やりすぎて皮膚を痛めたりする人も
います。そういう人には、紙絆創膏などを1枚貼った上から灸す
るように助言してください。

 施灸後にノボセるようなら、仕上げに足第2指の爪の上か、足
三里に仕上げの灸をするように伝えてください。

 自分で試して効果があったら、その経験も伝えてみましょう。

5.本格的な鍼灸へ

 そういう感じで結果を積み上げていくうちに、調子の悪い時に
鍼灸してと言ってくるようになったら、信頼されたということで
しょう。

 そしたら、頭首胴など体幹部にも鍼灸させてもらえると思いま
す。今まで書いてきた先急や養生の鍼灸をさせてもらいましょう。
養生の場合は、腹診もお忘れなく。腹診は、沢山経験することで、
見立てが上手くなっていきますから。

 ただし、あせらないことです。あせってやりすぎると失敗しや
すく、余計悪くなったとか言われたりもします。こういう現象は、
施術者側、患者さん側、どちらかの、あるいは両方の欲望が原因
のことが多いです。殆どかもしれません。

 施術者側の欲は、早く沢山の経験をしたいということ。患者さ
ん側の欲は、気になる所は全て無くしたいという感じ。患者さん
側の「もっと、ここもして」という希望を聞いているうちに、鍼
灸しすぎてしまうこともあります。

 先急では、1回の施術で1つの症状の改善を目指します。養生
では、1回で1つ腹のツボが改善することを目指します。どちら
も、準備と後始末の引き鍼や末端施灸を丁寧にすることを忘れな
いようにしてください。

 患者さん側から「もっと」と言われても、やりすぎになりそう
なら断ることも大切と思います。「これ以上すると、後始末を確
実にできる自信がないので、またにしてください」とか言って。

 こういう言い訳は、初心者なら、それほど変でなく通用すると
思いますし。運が良ければ、かえって信用されたりもします。

 そうです。ゆっくり、あせらずに経験を増やしていった方が、
ファンは増えやすいような気がしています。いかがでしょう。


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最終更新:2014年11月20日 08:25