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術伝流一本鍼no.68 (術伝流・体得篇(8))

症例を読み、ツボを分類する

1.はじめに

 先回も書いたように、鍼灸を体得していくために、自分に鍼灸
していくこと、特に、自分が軽い病気のときに鍼灸してみること
が役立ちます。

 ただ、経験が浅いうちは、今の自分の症状に効果的なツボが出
ている所が分からないことが多いでしょう。私もそうでした。そ
ういう時には、達人の先生方が書き残した症例集や症例が沢山掲
載されている本が参考になります。

2.症例集などを読んで、ツボを書き出す

 手に入る症例集などをどんどん読んでいきましょう。一人で大
変なら、数人で集まり、一人に一冊ずつ症例集を割り当て、皆で
勉強していくこともできます。

 私も、仲間と一緒に、全身の器官別かつ症状別に各自が担当し
た症例集で使われているツボを集め分類比較する勉強会を、月1
で2年ほどしたことがあります。

 もちろん時間をかければ一人でも可能です。

 例えば、立姿勢で上の方から調べるなら、先ずは頭、その中で
一般的な症状と言えば頭痛でしょうか。参考文献に載せた症例集
などの中から、頭痛に使われているツボを集めていきます。

 そして、私は、深谷伊三郎先生の『経穴活用宝典』の余白に、
参考文献に挙げた達人の先生方の本に出てくるツボや治療法を書
き込んでいきました。余白が多いのと、目次や索引が使いやすかっ
たからです。

 そして、気になる症状に出合う度に、索引で引き、書き込んだ
ものを含めて読み返していました。

[参考文献]

『漢方養生談』荒木正胤著 大法輪閣 

『名灸穴の研究』深谷伊三郎著 刊々堂 

『経穴活用宝典』深谷伊三郎著 鍼灸の世界社 

「奇穴・無名穴・変動穴の活用」
 (『取穴法の全て』の付録)深谷伊三郎著 鍼灸の世界社 

『お灸で病気を治した話』深谷伊三郎著 鍼灸の世界社

『特効針灸治療法』福島聡著 壮神社

『東洋医学見聞録』西田皓一著 医道の日本社

『臨床生情報』日産玉川編 医道の日本社

『経穴の使い方 鍼の刺し方』鍼灸素霊会  績文堂

『図説 東洋医学 鍼灸治療編』 学研

『鍼灸特効穴一発療法』山本敏夫著 源草社

『鍼灸臨床マニュアル』北村・森川著 医歯薬出版

『針灸治療の実際』代田文誌著 創元社

『鍼灸臨床Q&A』鈴木育雄著 叶屋 

『鍼灸臨床わが30年の軌跡』 長野潔著

『鍼灸による即効療法』 橋本敬三著 医歯薬出版

 ・以下は江戸時代の本の解説書ですが、参考になります。

『鍼道発秘講義』横田観風著 医道の日本社

『鍼灸重宝記』本郷正豊著 医道の日本社

『杉山真伝流臨床指南』大浦慈観著 六然社 

『名家灸選釈義』深谷伊三郎著 刊々堂

  • 以下は、鍼灸ではないですが、症例は参考になると思います。
『生体の歪みを正す』には、鍼灸の症例も沢山出てきます。

『万病を治せる妙療法 操体法』橋本敬三著 農文教

『生体の歪みを正す』橋本敬三著 創元社  

『風邪の効用』野口晴哉著 ちくま文庫

『症状別家庭でできる指圧』増永静人著 有紀書房

『図解病気を治す指圧入門』増永静人著 有紀書房

3.ツボを分類してみる

 ツボを器官別症状別に集めて気になる症状に出合う度に読み返
すだけでも勉強になりますが、そのツボを分類してみると、より
理解が深まると思います。術伝では、以下のような分類を基本に
しています。

(1)経絡的関係
(2)横輪切り的関係
(3)左右上下対角的対称関係
(4)動作時連動的関係
(5)血行や神経伝達の関係
(6)気血水的関係
(7)器官の機能的関係
(8)古い歪みの関係
(9)そのほか

3.1 初めは、「経絡的」、「横輪切り的」の2つ

 初めは、以下でした。鍼灸、特に和方鍼灸の基本が「手足に引
く」「陽に引く」ということには気づいていましたから。

(1)経絡的関係
(2)横輪切り的関係
(3)その他

 前にも書いたと思いますが、経絡的関係というのは、基本的に
は、立ち姿勢での重力負荷の分担に由来すると思います。それに
対して、臓腑論などの横輪切り的関係というのは、寝た姿勢での
重力負荷の分担に由来すると思います。

 この辺りは、ツボは「筋肉の機能性病変」という視点からは、
当然のことになります。

 長い時間をかけてツボを集めているうちに、「その他」が幾つ
かに分類できることに気づきました。「その他」を眺めて、「そ
の他」の中で分類として独立させられないかを検討していきまし
た。

 そして、「左右上下対角的対称関係」、 「動作時連動的関係」、
「気血水的関係」、「血行や神経伝達の関係」、「器官の機能的
関係」、「古い歪みの関係」などを見つけました。

3.2. 左右上下対角的対称関係

 「左右上下対角的対称関係」のうち、「左右」は、古典では
「巨刺」が有名ですね。

 「上下」は、『東洋医学見聞録』に、膝の痛みを同側の肘のツ
ボで改善する例が出ていました。

 「対角」は、操体で、足首捻挫を対角反対側の手首で改善する
などの形で使われていました。

3.3. 動作時連動的関係

 「動作時連動的関係」とは、例えば、「目の疲労」の改善には、
手や肩や首に出ているツボも使われるということです。目を使う
ときには、手や肩や首も一緒に動かしていることが多いからです。

 そういう、ある動作をする時に一緒に動く筋肉などに出ている
ツボも使って治療した方が、使わない場合よりも、改善しやすい
し、治療効果が長持ちしやすいです。

3.4. 血行や神経伝達の関係

 「血行や神経伝達の関係」とは、症状の出ている所の少し中枢
側にツボが出ている例です。ツボが出ている所から末梢側は、血
行や神経伝達が障害されやすいからです。中枢というのは、血行
では心臓、神経伝達では脳です。

 水虫が特定の足指股に出ている時は、その骨間の足甲〜足首に
ツボが出ていることが多く、そのツボへの鍼灸で改善します。同
じような感じで、ヒョウソを手甲のツボに鍼灸し改善した例は、
操体の橋本敬三先生の『生体の歪みを正す』に出ていました。

 また、顔や頭の症状が首のツボで改善することが多いのも、血
行については、顔や頭は末梢だからと思います。不眠や眼圧が天
柱〜風池など後頭骨下縁の首のツボで改善することなどは、典型
例と思います。

 それ以外で「血行や神経伝達の関係」がツボ探しのポイントに
なるのは、冷え、シビレ感、神経痛、感覚麻痺などの時です。
「冷えやシビレ感は、血行が関係」し、「神経痛や感覚麻痺は、
神経伝達が関係」しているからです。

3.5. 気血水的関係

 「気血水的関係」とは、邪気の発生源は、水毒や瘀血なので、
邪気が多い時には、水毒や瘀血に関係しやすい中焦や下焦あたり
にツボが出ている可能性が高いということです。

 アトピーや喘息は、中焦の水毒を減らした方が改善しやすいで
す。また、更年期のノボセなどは、下焦の瘀血を減らした方が改
善しやすいです。

3.6. 器官の機能的関係

 「器官の機能的関係」というのは、例えば、口内炎や口角炎の
時には胃腸に関係する所にもツボが出やすいということです。

3.7. 古い歪みの関係

 「古い歪みの関係」というのは、なかなか改善しない慢性期の
症状には、「古い歪み」に関係する所にツボが出やすいということ
です。昔から有名なのは、痞根、徹腹、華佗経、ヘソ周りなどです
ね。口伝では、会陰とかも聞きます。

 なかなか改善しない不調に対しツボを消していったら左督兪が残っ
たという話は『特効針灸治療法』に出ていました。

 昔の打撲捻挫や手術痕などの影響で瘀血や筋肉や皮膚の引きつれ
などが残り、それらが原因していることも多いです。

3.8. その他に、上記以外も有るかも

 これからも「その他」から新しい分類を見付けていきたいなと思っ
ています。

4.手順を考え実践し味わい、記録する

 ある症状に使われているツボが分かったら、自分の体を調べて
みてツボが出ているかどうか確認してみます。

 それから、手順を考え実践してみます。手順は、イヤな感じが
したり、後で頭が痛くなったり熱が出たりしないように、準備と
後始末を考えればよいと思います。施術中も施術後も余分な避け
られる負担は、できるだけ減らした方が良いということです。

 術伝では、今まで書いてきたような手順を勧めています。

 そして、実践した結果を味わいます。記録に残し症例として発
表するのも大切と思います。雑誌とかが大げさすぎると思うのな
ら、仲間で症例を相談し合うメーリングリストを作るのも良いと
思います。

 臨床の場に出たら、今まで勉強したことと、自分の臨床経験を
照らし合わせ、その経験も加えて、ツボ探し始め自分の技術や考
え方を高めていきましょう。

5.おわりに

 私は、今、自分が診たことのない、新しい病気、初めて出合う
病気の人を診るときには、先ず全身を診察させてもらい、上記の
(1)〜(8)の視点からツボを探しています。

 そして、見つかったツボを、今まで書いてきた術伝流の先急や
養生の型の手順で鍼灸していきます。すると、初めて診る病気で
も改善してしまうことが多いです。

 (3)〜(8)も、なんとなく、こんな感じがすることが分かっ
た段階で、先ず自分に試してみて、良さそうなら仲間や知人に試
させてもらってきました。それで、納得できたら、患者さんの症
状を診るときにも応用してきました。

 そして、時間をかけて、一つずつ(3)〜(8)を見つけてき
ました。

 ツボの出方は、他にもあるかもしれません。みなさんも探して
みてください。そして、見つけたら発表してください。よろしく
おねがいします。


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最終更新:2017年07月23日 08:00