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術伝流一本鍼no.67 (術伝流・体得篇(7))

引き鍼のコツ、痛くない刺鍼のための練習

1.はじめに

 今回は、引き鍼で効果が出しやすいコツを始め、痛くなく刺
すため、色々な状態に合わせるための練習法を紹介していきま
す。

 細かいことですし、「そんなこと知ってる」という人も多い
かと思いますが、初心者で躓(つまづ)いた人に伝えているこ
と、私自身が工夫してきたことなどを書いていきます。

2.引き鍼で邪気を引き出すために

 術伝流では、鍼の「邪気を引く道具」という側面を重視し、
初心者には、先ず「体幹部の邪気を手足に引く」ことを身に付
けてもらっています。大抵、すんなりと身に付けてもらえるの
ですが、時々は習得できない人が出ます。

 置鍼中心の臨床を身に付けた人に多いです。置鍼中心の場合
は、刺鍼後に押手や刺手は離してしまうので、刺鍼中の押手や
刺手の使い方には、それほど気を使わないからかなと思ってい
ます。

 時には、施術後に刺鍼した所が炎症のように腫れてしまうこ
ともあると聞きました。体幹部の邪気を刺鍼した所までは引い
てくることができたが、そこから体の外には出せなかった状態
です。

 抜鍼時の押手や刺手の使い方を身に付けると、こういう現象
は起きなくなります。「体幹部の邪気を手足に引く」場合の押
手や刺し手の細かい使い方を書いてみます。

2.1.弾入のときは、皮膚を張る

 先ず、弾入のときには、ツボの上の皮膚を少し広げるような
指使いをします(写真1)。こうすると、ツボの上の皮膚が張っ
た状態になるので、弾入しやすくなりますし、痛みも出にくく
なります。皮膚に張りがなくタルんだ状態だと、弾入もしにく
く、痛みも出やすいです。

写真1

 もう少し具体的に書くと、鍼管を置いた後、押手の上側(皮
膚から遠い側)を支点に、指の皮膚側を鍼体から離すように動
かし、ツボの上の皮膚を少し広げ、張りを作ります。

2.2.刺入と抜鍼時点の判断

 弾入の後は、静かに鍼を刺入していきます。横に揺らしたり
しながら手の重みを掛けていくと、スーッと吸い込まれるよう
に刺入できることが多いです。

 急いで刺入したい場合は送り込みでも良いと思います。刺入
しにくいときには撚鍼するのも良い手段と思います。

 何か感じたら、深さを変えずに弾鍼(写真2)などをして、
邪気を引きます。何か感じるのは、患者さんでも、鍼師でも、
どちらでも良いです。効果が出ていれば、腹の息や瞬きなどが
変化するので、その辺りを目安に十分に邪気を引き出します。

写真2

 瞬きが少なくなったり、腹の息が普通に戻ったら、抜く時期
と判断します。刺鍼中や抜く時期を判断する目安は、他にも色々
あります。少しずつ自分が使える目安を増やしていきましょう。

2.3.抜鍼時に抜けにくかったら弾鍼

 抜鍼の時には、途中で抜きにくくなることがあるので、注意
してください。この時に無理して抜鍼しようとすると、患者さ
んに痛がられてしまいます。

 抜けにくい感じがしたら、押手を少し引き気味にして、弾鍼
などをします。押手を引き気味にするというのは、極端に言え
ば、皮膚が少し持ち上がったような状態を作るということです
(写真3)。

写真3

 しばらく弾鍼していると、スッと抜ける方向に動き出します。
そしたら、抜いていきます。手甲など浅い所でも2,3度抜けに
くくなることがあります。その度に、押手を引き気味にして弾
鍼します。

 この押手を引き気味にしながら弾鍼というのが、邪気を体の
外に引き出すコツです。

 大抵は意識しなくても、指が自然にそういう感じに動いて上
手くいくことの方が多いのですが、上手くいかなかったら意識
して身に付けてください。また、初心者が他人に刺鍼するとき
には、意識して、こういう風にした方がよいでしょう。

 これが上手くいかないときには、経絡的に関連する末端の指
を反らせると(写真4)同じような効果が出せます。反らす方
向によって効果の出方が違います。

写真4

 患者さんがピリピリビリビリ感じる方向、鍼師が抵抗感を感
じる方向が効果的なことが多いです。また、その反らした指を
瞬間脱力させたりしてもよいです。 ここで言う瞬間脱力という
のは、指を反らせてからパッと離すことです。

 井穴を揉んだり(写真5)、指の関節部や爪を細かく叩いた
りしても、似たような効果が出ることも多いです。試してみて、
効果が出やすい方法を選びます。他にも、似たような効果を出
せる方法があるかもしれません。工夫してみてください。

写真5

3.痛くなく刺せるようになるために

 刺鍼で痛さが出てしまうと、効果が出にくいです。特に、初
心者が家族や友人に鍼をして痛みが出てしまうと、それ以降は
鍼をさせてもらえなくなってしまうことが多いですね。

 そういう時には、自分に刺せる鍼をだんだん太くしていきま
しょう。そうすると、痛みを出さない鍼の動かし方が自然に身
に付いていきます。

 私も、初めはディスポの1番しか、自分に痛くなく刺せませ
んでした。2番だと少し痛みを感じました。毎日30分ほど自分
に鍼をして、少しずつ太い鍼を刺していきました。

 鍼灸学校を卒業したころ8番位の太さの中国鍼が刺せるよう
になり、その年の夏に30番の銀鍼を自分に刺せるようになり
ました。毎日自分に鍼を刺し始めたのは、鍼灸学校1年の夏休
みからなので、丸3年かかったことになります。

 30番の鍼は、鍼管を使い弾入で切皮すると、痛いです。鍼
管なしに鍼をツボの上の皮膚に立て、横に揺らしていると、痛
くなく切皮ができます。皮膚の細胞と細胞の隙間を探していく
感じで横に揺らすのがコツです。

 切皮ができてからは、撚鍼のほうが刺入しやすいです。が、
この時も、筋肉の細胞と細胞の隙間を探していく感じで鍼先の
向きも少し動かした方が上手く行きます。筋肉に5mmほど刺
入できれば、そこからはツボの底のシコリまで比較的簡単に刺
入できます。

 自分の体に30番の鍼が刺せれば、かなり敏感な人にも、痛み
を余り感じさせずに刺入することができるようになります。

4.細い鍼も刺してみよう

 逆に、細い鍼を自分に刺せるようになると、硬いシコリにも
刺しやすくなります。

 こちらも、自分に刺せる鍼をだんだん細くしていきます。私
は、銀の霞鍼まで刺せるように練習しました。

 銀の霞も、弾入での切皮は難しいです。鍼が細く柔らかいの
で、弾入すると曲がりやすいからです。撚鍼、特に、操体の橋
本敬三先生が刺入練習法として紹介している片手撚鍼法がやり
やすかったです(片手撚鍼法→術伝流一本鍼no.63)。

 鍼先から1cmほどの鍼体をもって撚鍼していく方法です。た
だし、鍼柄が重いと難しいので、青木実意商店の細軸など、鍼
柄が軽い鍼が使いやすいです。

 2,3mm刺入できたら押手をして、普通に撚鍼していきます。

5.おわりに

 刺鍼練習器、缶などに糠を詰めたもの、浮きもの通し、桐板
通しなど刺鍼練習法は、色々ありますね。 また、半熟ゆで卵、
皮付きバラ肉、豚足などに刺したという人もいました。ペット
の猫や犬で練習した人もいるようです。

 そういうのも、練習になると思いますが、私は、自分の体に
色々な鍼を刺すのが一番練習になるような気がしています。

 特に、自分のちょっとした不調、ケガ、病の時に刺鍼すると
良いです。そういう時に、色々な鍼で様々な刺し方をしてみる
と、体の状態に合わせた鍼の動かし方が、だんだん身に付いて
いきます。

追記:2016.11.28ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 銀鍼の霞から30番まで自分に刺せるようにすることが「上達
コツ」、特に「色々な患者さんに合わせるための"手の内"を広
げるコツ」ということは、講座でも伝えるようにしています。

 が、今の所、霞も30番も自分に刺せるように成りました。と
言う報告は有りません。20年以上続けて講座をしているのです
が。

 もし、私の講座を受講した人と、私に差が有るとしたら、そ
ういう点が一番関係しているかなと思ってしまいます。

 そして、術伝の講座に通えなくても、銀の霞〜30番を自分に
刺せるように成っていれば、このHPを見て、術伝講座に見学か
通し稽古に来れば、このHPに書いてあることを身に付けること
は可能なような気がしています。
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最終更新:2017年01月27日 23:53