累積: - ___ 昨日: - ___今日: -

術伝流一本鍼no.62 (術伝流・体得篇(2))

鍼灸で自己養生,「指を細く使え」

1.自己養生を習慣に

 「経絡の本は、手足」と古典に書かれているとか、鍼灸学校
時代の試験に出ました。つまり、経絡の本質的な部分は、手足
の経絡ということだろうと思います。

 そのためか、要穴は肘膝から先に多いですね。つまり、経絡
を使って治療するときは、「手足のツボを使って、体幹部(頭・
首・胴)の症状を改善する」ことが中心ということだと思いま
す。

 そのため、自分の手足に鍼灸することで、自分の症状の改善
も可能です。それだけでなく、鍼灸の腕も上達していきます。
他人の体の中の動きよりも、自分の体の中の動きの方が分かり
やすいですから。自分の体の調子を整えながら、勘と腕を磨い
て行きましょう。

2.自己養生の基本的手順

 自分に鍼灸して養生していくときの基本的手順は、以下です。

(1)症状をよく観察する
(2)手足に出ているツボを取る
(3)取ったツボに施術してみる
(4)自分の体の変化を観察する
(5)変化に合わせ、必要なら施術を追加

2.1. 症状をよく観察する

 先ず、症状をよく観察します。どういう種類の痛みか、どの
場所の症状か、動作制限もあるか…など。動作制限があるなら、
どういう動作が制限されているか、どういう動作のときに痛み
が出るか…。

 それらの中でも大切なのは、症状の出ている場所です。

 というのは、鍼灸による応急処置では、症状の出ている所で
蠢(うごめ)いている邪気を、経絡的に関連する手足末端に引
くことが要(かなめ)ですから。

2.2. 手足に出ているツボをとる

 手足を触って、自分の今の症状に関係していそうなツボを取
ります。ここでは、最も基本的なことを書いていきます。詳し
くは、必要な時に解説します。

 応急処置の場合は、基本的には、手足の陽経を中心に使いま
す。先ずは、手足の陽経側のツボを取り、そこに鍼灸して改善
することを目指します。

2.2.1. 患部の位置からツボの場所を予測

 体の上下、左右、前横後などで予測します。

 上半身なら手、下半身なら足を選びます。
(より正確には、表位(肩甲骨・鎖骨から上)なら手が関係し
ます。そこから下、つまり、胸や胸椎7から下は、足も関係し
ます。ただし、頭頂部や肩甲間部の督脈華佗経などは、足も関
係していることがあります。ですから、先ずは、手の経絡を使っ
てみて、上手くいかない時は足の経絡を使ってみます。)

 患部の左右で手足の左右を決めます。

 それから、患部が体の前側なら手足の前側、体の横側なら手
足の横側、体の後側なら手足の後側を選びます。

 手の場合は、前側は、拇指〜示指とその延長です。横側は、
中指とその延長です。後側は、薬指〜小指とその延長です。

 足の場合は、前側は、2指〜3指とその延長です。横側は、
3指〜4指とその延長です。後側は、4指〜5指とその延長です。

 なお、足の場合、親指とその延長は、陰経側です。また、足
の裏、および、足の内踝の周りとその延長も陰経側です。陰経
側は、体の内側が関係する症状のときに使いますが、陽経側よ
りも慎重さが必要です。

 手の場合は、手平とその延長(前腕・上腕の手平側)が、陰
経側です。手甲とその延長は、陽経側です。

2.2.2. ツボが出やすい場所、周りの様子

 手足で、ツボが出やすいのは、骨と骨の間(あいだ)、筋と
筋の間、この2つのライン上です。手の場合は、手甲も前腕も、
骨と骨の間が多いです。

 足の場合は、足甲は骨と骨の間が多いですが、下腿は筋と筋
の間も多いです。それ以外の場所に出ていることもありますが、
それは出てきたときに解説します。

 そういう場所の中でも、ツボが出ている所は、目立つ特徴が
あります。先ずは、見た目に、黒ずんだり凹んだりしているこ
とが多いです。触ると、少しベタベタしています。押すと、表
面がペコペコして、奥まで押し込むと痛いことが多いです。

 ですから、そういう所を探して、2,3か所見付かったら、一
番嫌な感じの所を選びます。

2.2.3. 「指を細く使え」

 ツボは、基本的に、出ていそうなラインに指を滑(すべ)ら
せて探します。このとき、指の滑らせ方にコツがあります。深
谷伊三郎先生は「指を細く使え」と言っていたそうです(福島
聰 著『特効針灸治療法』壮神社p268)。

 指は、爪の横幅方向の幅(はば、写真1)の方が、爪と指紋
の間の厚み方向の幅(写真2)よりも広いです。

写真1
写真2

 「指を細く使え」というのは、そういう指の形状を理解し上手
く利用しろということではないかと思います。実際に手足の甲の
骨と骨の間のツボを取るときなど、 骨と骨の間が狭いので 、指
を横にしないとツボが取りにくいです。

 前腕下腿のツボを取るときにも、指先の先端ではなく、少し
横の爪の角(かど)辺り(写真3)を使った方が、ツボが取り
やすいです。指先を使うよりも、確実に取ることができます。

写真3

 指をツボが出ていそうなラインに皮膚に対して60度位の角度
で当ててから(写真4)、滑らせながら横にし、指先の横角の
部分でツボの芯を見付けます(写真5)。このとき、指先に少
し捻りを加え、えぐりこますような感じにすると、ツボの芯が
見付けやすいです。

写真4
写真5

 繰り返しになりますが、手足の甲のツボを探すときには、初
めから指を横向きにして、甲の骨と骨の間に入れないと、探し
にくいです(写真6)。

写真6

 鍼灸というのは、どういう運鍼法・施灸法をするかよりも、
出ているツボが確実に取れているかの方が、効果が出るか否か
に関係します。先ずは、手足に出ているツボを精度高く取れる
ようになることが大切です。

 ツボを探すための様々な工夫は、これからも書いていきます。
今回は、最も基本的なこと、初めに身に付けてほしいことを書
きました。

2.3.取ったツボに施術してみる

 取った手足のツボに鍼灸してみます。取り敢えず、自分が知っ
ている方法で良いと思います。慣れていなくて不安なら、円皮
鍼、粒鍼、チタンテープ、点温膏などを貼ってみてもよいです。

 左手で片手刺しができれば、自分の右腕のツボにも刺鍼可能
です。これについては、後で、説明します。

2.4.自分の体の変化を観察

 自分の今の症状に変化があったか、出ていたツボの周りに変
化があったか、よく観察します。この2つの場所の施術前後の
様子を比較することは、習慣にしてください。

2.5. 変化に合わせて、必要なら追加

 1回目の施術後の体の状態の変化に合わせて、必要なら、関
連するツボに鍼灸します。

 初めのうちは、余り沢山しない方が良いでしょう。

 また、先急(応急処置)で書いてきたように、手足の陽経側、
特に手首足首から先で終了することも大切なポイントです。

3.かなりの所まで独習が可能

 こんな感じで、自分の小さな症状を鍼灸で改善してみます。
先ずは、自分の体を整えながら、勘と腕を磨きます。勘を磨く
と、体のその時の状態を掴めるようになります。そして、その
時の体の状態に合わせて丁度よいことができる腕を磨いていき
ます。

 自分の体をある程度は自分で整えることができなければ、他
人の治療はできません。

 自分の体の中の動きがある程度は掴めなければ、他人の体の
中の動きは分かりません。


   次へ>>>術伝流一本鍼no.63



   >>>目次へ・・・・・・・・・術伝流一本鍼(あ)

   >>>このページのトップヘ・・術伝流一本鍼no.62

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

術伝HP内検索:上の@wikiメニューの「wiki内検索」


お知らせとお願い

術伝流鍼灸操体講座で患者さん役を募集

 術伝流鍼灸操体講座は、実践面を重視しています。実際に症状が出て
いる方の治療を見たほうが勉強になります。そこで、講座で患者さん役
をしてくださる方を募集しています。

 くわしくは、術伝流のモデルをみてください。

 よろしくお願いします。

感想・間違いなど

 感想などあったり、間違いなど見つけた方は、術伝事務局あてにメールをください。

 よろしくお願いします。

「術伝」症例相談用メーリングリストの参加者募集

 「術伝」では症例相談用メーリングリストの参加者を募集しています。
参加希望の方は、術伝事務局あてにメールをください。

 よろしくお願いします。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

   >>>術伝HPトップへ ・・・・トップページ

最終更新:2017年01月27日 23:28