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術伝流一本鍼no.57 (術伝流・養生の一本鍼・応用編(9))

筋痛症(線維筋痛症の初期症状に近いもの)

1.基本的に

 普通の運動器系疾患とは思えないほどの激痛を訴えるが増え
ています。90年代後半から見かけるようになり、2000年以降
は毎年増加傾向にあります。腕の場合は、首肩も痛むが、腕の
痛みやシビレの方が酷いことが多く、モノが持てなくなること
もあります。

 線維筋痛症の発症時に似ていますが、手足どれか1本だけの
ことが多いです。病が進行して、全身に痛みが出ると、線維筋
痛症と診断されるようです。

 原因不明で治療法がなく、タライ回しになることが多いよう
です。左腕の場合には、心臓系の疾患を疑われますが、検査し
ても異常が見られません。

 水毒や瘀血が疑われる腹証や背部症候が見られます。腕なら、
腹証は、患側の胸脇苦満、心下痞などです。腕で、背部の兆候
は、患側の脊椎7~11番の華佗経や痞根にツボが出ます。腿なら、
患側の瘀血証のこともあり、鼠径部の辺り(五枢~維道、居髎)、
仙骨の周り、腰徹腹にツボが出ます。

 患側の上腕や大腿の陰経側に、邪気が溜まっていることが多
く、切経をすると、非常に痛がります。鍼をすると、ピリピリ
ビリビリした感じを訴える人が多いです。ただし、自覚痛は無
いことが多く、切経の前には痛みを言わないことが多いです。

 初めての発症は、運動した直後、手術や出産などの後などに
多いようです。手術や出産の後に発症した場合は、瘀血証の徴
候が出ています。

 腹部の水毒や瘀血から発生した邪気が、上腕や大腿の陰経側
に溜まり、感覚神経に不正なインパルスを発生させているので
はないかと考えています。邪気は、生体内雑電気なのかなと言
う感じもしました。

 また、運動後に発症した場合は、運動時の骨格筋の活動電位
が切っ掛けの可能性も頭に浮かびました。

 治療は、運動器系の応急処置に、腹部の水毒や瘀血を減らす
養生を組み合わせています。

 食養は、和食を勧めます。また、添加物や精製物は、減らし
た方が予後が良いことが多いです。水毒や瘀血を減らす漢方薬
を併用した方が治りやすいと思うので、漢方の専門医に研究を
してほしいなと思っています。

 添加物や精製物の多い食事と、パソコンや携帯の使用が、こ
のような症状が増えた要因の一つではないかと思います。パソ
コンや携帯を使う人が多くなってから、こういう症状を訴える
人が多くなってきたように思いますので。

 また、以下のような話も有り、全体として化学合成物の摂取
を減らす必要が有るように思います。


2.ツボが出やすい所

1)上腕、大腿の陰経側

 脇の下~上腕陰経、大腿陰経側、その2つの筋肉の溝の中で、一番
凹んでいる所。

2)腹部の腹証の出ている所

 水毒なら、鳩尾、中脘、承満、章門、上肓兪など。

 瘀血なら、五枢~維道、関元、居髎、下肓兪など。

3) 2)の背中側

 水毒なら、胸椎7~11番の華佗経、痞根など。

 瘀血なら、腰椎3~5番の華佗経、腰徹腹、上仙、次髎、仙
腸関節など。

4)1),2),3)と経絡的に関係する手足のツボ。

 上腕や大腿の陽経側、肘膝から先に出ているツボ。

3.手順など

1)先急:患部周囲の邪気を減らす

 先ずは、患部周囲の邪気を減らし、辛さや痛みを軽くします。

 手順は、基本的には、運動器系の応急処置と同じです。手足
甲陽経側→手足末端陰経側→上腕や大腿の陰経側→腕や腿の陽
経側→手足甲陽経側。

 上腕や大腿の陰経を丁寧に調べ刺鍼します。

2)養生:水毒や瘀血を減らす

 腹部の水毒や瘀血を減らしながら、患部の痛みや辛さを減ら
していきます。

 仰向けになりにくいようなら、先ず1)をして、仰向けにな
れる位には改善します。

 慢性期の養生の型をし、必要なら灸をします。

 鍼のみで変わりにくいツボが見付かったら、灸頭鍼や補の灸
も併用します。

3)食養なども勧める

 和食を勧めます。

 添加物や精製物を減らすよう伝えます。精製物とは、白砂糖
や、NaClが100%に近い食塩、白米、精白小麦粉などです。
それらを、味醂、ハチミツ、メープルシロップ、和三盆、黒糖
や、自然塩、玄米、全粒粉などに変更します。また、甘味は量
も少なくするようにします。添加物は、化学調味料はじめ化学
合成物で食品に添加されているものです。

 食養に関しては、術伝流操体に詳しく書きました。
術伝流操体no.81 食の自然則:基本は和食
術伝流操体no.82 自炊は無理なく
術伝流操体no.83 18時間断食、カゼの食養など

4.症例

1)左腕の激痛

 術伝流一本鍼no.17 左腕の激痛(線維筋痛症の発症時に
似ている)を参照してください。

2)足首捻挫の後遺症

 右足の内踝(くるぶし)から親指の右足内側横側面に、抜歯時
の麻酔注射の後のようなシビレ感(感覚異常)が続いていると
言う人。麻痺して感覚がまるで無いわけでもなく、動かせない
わけでもなく自由に動かせるとのこと。

 この人は、ネットの筋痛症関連の掲示板が縁で、術伝の通し
稽古に来てもらいました。通し稽古は午前中で終わりましたが、
面白そうな症例なので、術伝講座の参加者にも参考になると思っ
たこともあって、午後まで残ってもらい、施術させてもらいま
した。

 発症後9カ月で、筋痛症治療で有名な石川の整形外科に2回
通い、近所のTP鍼の所や麻布のTP注射にも通っているが、改
善が思わしくないということでした。

 局所のみの異常かどうか分からないので、先ずは、仰向けで、
全身診察させてもらいました。

 脈は、実でしっかり打って元気そう、ただし、体格に比べ、
少し細めかなと思いました。舌裏側の血管が両側ともドス黒く、
瘀血証の兆候でした。上腹部は、特に左側が硬く、水毒もあり
そうでした。臍周囲も左側が硬く、鼠径部も左側が硬い状態で
した。

 患部の位置が右足太陰脾経なので、大腿の足太陰脾経の左右
差を診てみました。

 大腿部も左側にツボが出ていました。下腿の足太陰脾経の左
右差を診ていくと、右側の脹ら脛が終わる辺り(漏谷)にツボ
が出ていました。そして、この辺りから先は、右側にツボが出
ていました。また、下腿までは、それほど冷えていないのに、
足首から先は非常に冷えていました。

 腰椎や坐骨神経などに関係しているなら、こういうツボの出
方や冷えの出方は変だなと思いました。出ていたツボを患者さ
んにも確認してもらい、右足に怪我か何かしなかったか聞いた
ら、右足首捻挫を繰り返したとのこと。その後遺症の可能性が
あるなと思いました。

 施術は、経過が長いので、慢性期と考え、養生の型で、左手
陰陽、左横腹の順で刺鍼していきました。初めての人だし、大
勢が見ていることもあって、左鼠径部は、打鍼をしました。そ
れから、臍周囲、左上腹部、左大腿の順で刺鍼しました。

 それから、右に移って、漏谷の辺り。ここは1cm位の太さ
の筋張りになっていたので、2カ所ほど刺鍼して筋張りを無く
しました。

 足首近くの大谿の辺りに出ていたツボに刺鍼したら、古そう
な邪気が出てきました。それと、捻挫の後遺症なら瘀血の滞留
もあるかなと思い、置鍼し、墨モグサで灸頭鍼をしました。

 内踝前方の商丘あたりも凹んでいてツボが出ていました。刺
鍼したら、そこでも古そうな邪気を感じたので、置鍼し灸頭鍼
をしました。

 公孫の辺りも大きく凹んでツボが出ていたので、刺鍼したら
大量の邪気が出てきました。同じく、置鍼し灸頭鍼をしました。
公孫の辺りの灸頭鍼では、灸頭鍼中に、鍼がしばらく震えてい
たので、かなり大量の邪気が出ていっているのかなと思いまし
た。

 これだけ大量の邪気なら、邪気の出口を末端に作った方が良
いかなと思ったので、隠白にも置鍼し、打鍼用金属棒で、弾鍼
しました。

 公孫の辺りの灸頭鍼は、初めセイリンのラック灸でしたが、
足りなそうなので、釜屋の温暖を追加しました。炭の量が、温
暖の方が、ラック灸の倍位あります。

 患者さんが熱さを感じたそうなので、紙を挟んで熱さの調整
をしたりしながら、燃え尽きるまで待ちました。

 終える頃には、何故か、先に刺鍼した漏谷あたりも赤くなり、
しかも直径2mm位の赤いブツブツが数個出てきました。灸頭
鍼を取り去ってみると、大谿、商丘、公孫の辺りも似たような
感じでした。それと、内踝から土踏まずにかけて、イトミミズ
のような細絡が目立つようになりました。奥の瘀血が動いたか
なと思いました。

 患部の感じを聞いたら、改善したということでした。表情も
晴れ晴れとした笑顔になりました。座位になってもらい、頭頂
部の近くの足厥陰~足太陰に関連すると言われる所に出ていた
ツボ2つに刺鍼しました(頭刺>>>術伝流一本鍼no.13)。

 その後、頭の熱い所に散鍼し、手甲への引き鍼し、仕上げま
した。

 筆者の私も、若い頃の左肩甲骨の打撲の後遺症で、その辺り
の感覚異常に、長い間、悩まされました。それと同じような感
じだったので、分かりやすかったです。

 下腿の脹ら脛の終わる辺りから先だけ、右にツボが出ていた
のに気付いて、怪我か何かしたかという質問ができたことが、
改善への切っ掛けだったように思いました。

 このような訴えや線維筋痛症などの患者さんには、打撲捻挫
したかや手術歴などを聞く必要を改めて感じました。良い経験
をさせてもらい、勉強になりました。

 この人を紹介してくれた大阪の鍼灸師さんから、本人からの
メールのコピーを含め、コメントをもらいました。

 「当人からのメール添付します。『今日、金子先生の通し稽
古の受け手役に参加して来ました。今までの足の麻痺がかなり
取れました。感謝ですよ~。今までの鍼灸は何だったのって感
じで、とても晴れ晴れな気持ちで帰宅中です。痺れの元は、昔
捻挫を何回かして内出血して、汚れた血が溜まったみたいです。
帰りにドラッグストアでお灸買って、金子先生の言われた場所
にお灸します。いやー神業です。今まだ 興奮しています』。
病態の把握が的確だった症例と思います。知人の一人として感
謝いたします」

 以下の返信をしました。

 「メール紹介ありがとうございます。自分と似たことが原因
だったので、分かりやすかったです。こんなに喜んでいただけ
ると、こちらとしても非常に嬉しいです」

3)リウマチ薬で数値は下がったが、症状が改善しない

 メールで「2年ほど前から関節の腫れ痛み、リウマチ薬で数
値は下がったが、症状は改善しない」という相談を受け、講座
にモデル患者さんとして来てもらいました。話の感じから線維
筋痛症の初期症状のような感じを受けました。


  • 1回目

 現在いちばん困っていることを聞いたら、左手首の痛みと言
うことでした。が、今まで見てきた人との比較のため、先ず腹
診をさせてもらいました。案の定、左胸脇苦満(写真1)、心
下痞があり、左脇の下から左上腕陰経側に痼りもありました。

写真1

 ただ、初めてなので、先ず、応急処置として、左手首の辛さ
の改善をすることにしました。要するに、体が邪気を出したがっ
ているのに、手首の所で詰まって出られないから、辛いんだろ
うなと思いました。

 頭を触って熱い感じがしなかったので、手甲の引き鍼は省略
し、左手首内関から施術開始しました。次に、手甲の2~3間
と3~4間を比較したら、3~4間がイヤな感じとのことでした。
そこに出ていたツボに刺鍼したら(写真2)、中指と薬指、特
に薬指の方に何か動いているとのことでした。

写真2

 ああ、この人も邪気の動きが分かる人だなと思い、それが減っ
たら言ってくれるように伝え、刺鍼を続けました。邪気が減っ
たように感じたので、患者さんにも確認してから、抜鍼しまし
た。

 抜鍼した後、左手首を動かしてもらったら、良くなったと言
うので、仕上げに移りました。指の井穴に邪気の出口を作って
おいた方が良いように思ったので、左手中指薬指の井穴を調べ
ました。薬指両側、中指の薬指側の3カ所にツボが出ていたの
で、透熱灸をしました。

 夕方「…本日の施術は、まさに瞬時に効果を実感できました…
一針で体があれだけ反応するとは、驚きでした。」というメー
ルが届きました。ありがたいなとも思ったし、改めて良かった
なと思いました。

 症例としては、「術伝流 先急の一本鍼No.17」とよく似て
いるので、次は、慢性期の養生も含め、そういう治療をするの
で、読んでおいてもらえるよう伝えました。


  • 2回目

 2回目なので、慢性期の養生の型でやらせてもらいました。

 腹診では、心下痞と左胸脇苦満でした。しかも、左上腹部と
左肋骨下部を比べると、左上腹部の方が、ほんの少しだが、床
からの高さが高い状態でした。普通は肋骨の方が高いのに。

 その後、腕と胸、腕と背の間に張っている筋肉を調べたら、
痼りと圧痛がありました。

 左上曲沢の刺鍼(写真3)で、腕と胸の間の筋肉内の痼りが
柔らかくなりました。変化の速さにびっくりしました。

写真3

 腹部の刺鍼中(写真4)に、大量の汗が出てきました。腹筋
内に溜まっていた水毒かなと思いました。

写真4

 背中を刺鍼しようとしたら、汗が沢山出ているの状態でした。
拭いて、胸椎7~11番の左華佗経と左痞根に出ていたツボに刺
鍼したら、また大量の汗が出てきました。しかも、ヌルヌルベ
タベタした感じした。筋肉内に溜まっていた水毒だろうなと思
いました。

 普段は、余り汗をかかないとのことで、それで水毒が出にく
く発症に繋がったのかなと思いました。

 左大椎回り、背と腕の間に張る筋肉内の痼りにも刺鍼しまし
た(写真5)。

写真5

 今回も、邪気の動きなど刺鍼中の体の中の動きを沢山言って
もらえたので、それも参考に刺鍼しました。あと、体の変化の
大きさにもビックリしました。鍼が向く体質なのかなとも思い
ましたし、鍼灸師になったら、名人になりそうな感じもしまし
た。

 やはり、病態、ツボの出方、変化の仕方が、
術伝流一本鍼No.17」の症例に良く似ていました。


  • 3回目

 汗をかきにくいということだったが、急いで来たせいか、診
察の時点で全身汗ばんでいました。先回も同じように急いで来
たということだが、診察時点では発汗は見られず、鍼灸してか
ら汗をかいたので、体が変わっていっている感じがしました。


 また、左前腕外側に引っ掻き傷がありました(写真6)。痒
いので掻いたということでした。これも、痒みとして出てきた
ので良い傾向かなと思いました。

写真6

 治療は、2回目とほぼ同じにしましたが、仰向けで腹に刺鍼
した後、左脇の下から左上腕陰経に出ていたツボに刺鍼するの
を加えました(写真7)。案の定、ここにも邪気がいっぱい溜
まっていました。

写真7

 鍼灸したら大量の汗というのも、前回と同じでした。また、
腹に刺鍼後、上腹部と肋骨下部の高さが、若干だが肋骨の方が
高い感じになったので、左上腹の水毒をかなり減らせたかなと
思いました。

 今回も、刺鍼中の邪気の動きを言ってもらいながら刺鍼しま
した。「爪の根元から出ている」という言葉に、「井穴!」と
周りで見ていた一同唖然としました。しかもどっち側かも言え
ました。

 筋痛症系の患者さんは、邪気の動きが分かる人が多いが、こ
こまで細かく特定できた方は初めてでした。鍼灸師になったら
名人になりそうだなと、あらためて思いました。

 今は、こういう感じの筋痛症系の症状の人が多いので、3回
の治療を講座参加者の皆さんに見てもらうことができて良かっ
たなと思いました。

 夕方帰宅したらメールがきていました。

「今回の施術後は体がとても楽というか軽快になりました。そ
れから、思わぬ、というかやはりというべきか、別の部分に効
果が出ました。2日ほど前から痛みがあった扁桃炎が、ほとん
ど治っていました。今朝は痛みと腫れがあったのですが、施術
終了直後から治まったことに気付きました。普通は、治まるの
にもっと時間がかかるのですが、今回も鍼の即効性に、驚かさ
れた次第です」

 とのことでした。

5.おわりに

 私自身も、外傷性瘀血証に因る筋痛症系の症状に長期間悩み
ました。その辺りは以下に書いています。
私の筋痛症系の病歴


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