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術伝流一本鍼no.56 (術伝流・養生の一本鍼・応用編(8))

片麻痺

1.基本的に

 片麻痺は、脳梗塞など中枢神経性疾患による症状ですから、急性期は
もちろん救急医療の範囲です。

 が、症状が落ち着いてからのリハビリには、鍼灸はとても効果的です。
そして、指先への刺激だけでも、早めに開始したほうが良いことが多い
ようです。

 ただし、改善には時間が掛かります。また、脳内細胞の破損量が多い
と、途中で改善が停止することもあります。

2.ツボが出やすいところ、使い方

2.1.指先

 指端、井穴、骨空、節紋、指裏横紋中央など。患者さんの姿勢に合わ
せて、指先近くで、灸がしやすいツボを選びます。そのツボに、熱い透
熱灸をして、逃げる動作を誘導します。指端は、爪と指の間にモグサを
挟むと、やりやすいです。

 足の場合には、足裏の着地曲、失眠なども使います。着地曲とは、仮
称で、着地する時いちばん曲がる足裏の関節部中央あたりです。

 患側を中心にすることが多いようですが、脳の損傷部位は患側と逆側
だし、巨刺的な意味もあるせいか、健側にも灸したほうが変化が早いよ
うに思います。

 足がまるで動かないときには、先ずは、患側を上にした横向き寝で、
灸をして逃げてもらいます。まるで動かない状態では、できるだけ重力
の影響を受けない状態で施灸したほうが良いからです。

 ある程度動くようになったら、仰向けで、灸をし、逃げてもらいます。
ある程度の重力に逆らって動くようにしてみるということです。

 よく動くようになったら、座位で施灸し、逃げるようにしてもらいま
す。歩くときに近い状態で、重力に逆らって動く練習です。

 手の場合もほぼ同じです。全く動かないときには、あまり重力の影響
の受けない姿勢でします。少し動くようになったら、だんだん重力が掛
かる姿勢で、灸の熱さから逃げてもらうようにします。

2.2.指先の熱さから逃げて痛みの出たところ

 指先の灸で熱さから逃げる動作が出ると、今まで動かなかった所を動
かすせいか、その動きによって痛む所が自覚できるようになることが多
いです。痛みが出たあたりを調べ、ツボを見付けて刺鍼します。

 足の場合には、腰〜大腿〜下腿など、足の動きに関係する筋に出ます。
手の場合には、肩〜上腕〜前腕など、手の動きに関連する筋にツボが出
ます。

 これらのツボは、深く、骨のすぐ上にあることが多いです。また、ツ
ボの底のシコリは、硬いゴムのような感じを受けます。鍼はシコリの表
面に少し刺さりますが、下や横に逃げやすく、弛みにくいです。撚鍼な
どの刺法を使い、シコリに鍼をある程度の深さに刺入してから、灸頭鍼
をします。そうすると、比較的に弛みやすいように思います。

 ツボが弛むと、指先の灸で逃げる動作が少し大きくなります。そして、
別の所に痛みを感じますから、その痛みの原因となるツボを探して、弛
めます。弛んだら、また、少し動きが大きくなり、別の所に痛みが出ま
す。その原因となるツボを探して…、この繰り返しをしていきます。

 患者さんが痛みを自覚しないときには、逃げて止まった姿勢をよく観
察し、動作鍼の要領で、その時の動作制限の原因となっているツボを探
して、刺鍼します。

2.3.脳への血流の改善

 首やその周りなど、脳への動静脈の近くにシコリがあると、脳への血
行、脳からの血行が傷害されるようです。脳の血行が障害されている状
態では、損傷部位の改善が遅れるようです。

 首やその周りを調べ、ツボが出ているようなら、その奥のシコリを弛
めます。

2.4.皮膚の温度差や感覚差の少し中枢より

 動かない部位やその周りの皮膚に触れ、皮膚表面温度が違う境目を見
付けます。同じように、鍼柄の頭などで皮膚に触れ、触られている感じ
が分かる所と分からない所の境目を見付けます。

 その境目の少し中枢よりにツボが出ていることが多いです。ツボを見
付け、奥のシコリを弛めると、境目が少し移動します。また、ツボを探
して弛めると、境目がすこし移動…これを繰り返して改善していきます。

 大きなツボが出ていると、そこから先の血流や神経伝達が傷害される
ことから来ている現象のようです。

2.5.脳損傷部位の頭の表面

 脳損傷部位に近い部分の頭の表面から邪気が出ていることが多いです。
そこに刺鍼して邪気を散らし、関連する手甲などに引き鍼をします。な
お、頭頂部は、足厥陰経が関連経絡です。

 邪気が感じられない場合には、CTやMRIの画像から損傷部位に近
い頭の表面を推定します。また、髪の毛が、その部分だけベタついた感
じになっているので、それでも判断できることが多いです。散鍼刺鍼を
した後に、同じ場所を触ると、サラサラした感じになっています。

2.6.手指を動かす筋の筋腹

 改善が進んで、手指の動きの悪さが残ったときには、手指を動かす筋
の筋腹にツボが出ます。指を少し他動的に動かしながら、ツボを探し、
刺鍼します。

 前腕の太い部分に多いです。親指の場合には、それ以外にも手の平の
母指球にも出ます。

 これは、腱鞘炎など指の動作制限の時と同じです。
術伝流一本鍼no.14 指まわりの痛みに糸状の直接灸」
術伝流一本鍼no.15 指の使い過ぎで動かしづらい」
などを参考にしてください。

3.手順

 重いときは、指先の灸で逃げる動作を誘導することが中心になります。
直ぐに逃げる動作が出なくても、根気よく続けます。

 動きが出たら、痛みの出ている所など障害になっている辺りに出てい
るツボを、鍼や灸頭鍼で改善します。動きが出なくても、皮膚の温度差
や感覚差がわかったら、ツボを探して刺鍼します。仕上げに、手の指先
に灸をします。

 仰向けになれるなど、姿勢の変更がラクにできるようになったら、慢
性期の型で養生をしていきます。腹のシコリも改善します。脳への血流
を考え、座位などで首まわりにも刺鍼します。頭の散鍼刺鍼では、頭の
損傷部位の近くにも刺鍼します。仕上げに、手甲へ引き鍼をします。

 長い治療となるので、根気よく取り組みます。指先の灸だけでも、本
人やご家族が毎日できると、改善が早くなることが多いです。

4.おわりに

 出張で、沢山の片麻痺の患者さんに鍼灸をしてきました。手の指の動
きが悪かった人で、行くたびに指が1本ずつ動くようになった人もいまし
た。はじめ横向き寝で灸しても足がピクリとも動かなかった人が、半年
で座位で足裏をくすぐっただけで膝が跳ね上がるようになったこともあ
りました。このケースでは、家の改装をしなくても大丈夫になったこと
でも喜ばれました。

 また、私自身も数年前に脳梗塞で10日間入院しました。入院中から、
壁など利用して指を反らしたりして、指を刺激しました。退院してから
は、自分で鍼灸をしていました。現在は、幸いなことに、後遺症は、ほ
とんど残っていません。鍼灸の御蔭と思っています。

 そして、私の次男は超未熟児で生まれた脳性麻痺児でした。手は握る
ことしかできず、塗り絵をさせると境界線から2,3cmはみ出すほどの巧
緻性障害でした。そのため、小学1年生の一学期には、字を一文字も書
けませんでした。

 字は、夏休みに、そのころ大好きだったポケモンの名前と、そのポケ
モンが覚える技の名前を書かせたら、書けるようになりました。大人で
も、好きなことをリハビリに取り入れたほうが改善が早いような気がし
ます。

 次男は、今では、箸を使い、ブラインドタッチでワープロ検定を取る
ようになりました。この過程でも、麻痺を改善する鍼灸や操体は役に立
ちました。

 そういう体験から効果のあったものをまとめてみました。

 これも、まだ、写真がとれていません。片麻痺の患者さんで治療の写
真を取らせてくださる人をご存知の人は、紹介してください。よろしく
おねがいします。


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最終更新:2014年04月12日 10:40