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術伝流一本鍼no.52 (術伝流・養生の一本鍼・応用編(4))

目、晴れやかに

1.基本的に

 目の病は、ツボの出方に非常に特徴があります。そして、その特徴
を理解すると、色々な病のツボ探しに役立ちます。言い換えると、目
のツボの出方を参考にすると、色々な器官や臓器の症状に対するツボ
を予測することが可能です。

 目のツボで出方を経絡的に見ていくと、麦粒腫(モノモライ)や赤
目など、目の表面の病には、手陽明経が使われます。同じ目の病でも、
近視や網膜剥離など、目の奥の病には、足厥陰経が使われます。

 目の表面は、顔の前面にあり、前の病なので陽明、肩甲骨・鎖骨か
ら上なので、経絡的には手陽明経が関係します。また、目の高さで頭
蓋を水平に切断した面を考えれば、目の奥は、その切断面のほぼ中央
付近に位置します。そのことから、経絡的には足厥陰経に関係するこ
とを理解してください。

 経絡的な出方以外では、まず、横輪切り相関です。目の周りや目の
高さの後頭部などにも、ツボが出ます。

 また、肩甲骨・鎖骨より上の病、特に首から上の病には、首肩背の
シコリが関係します。血行や動きの関係からでしょう。

 目のある顔や頭は、血行から見れば末梢で、心臓から目に行く血管
は、必ず首を通ります。また、目を使うときには、一緒に手や首を動
かすことが多いので、手や首を動かすときに一緒に動く首肩背が関係
してくるのだろうと思います。特に、近視や乱視などには、関係が深
いです。

 この3つのツボの出方をまとめると以下になります。

①その器官の位置と経絡の関係
②その器官の位置と横輪切りの関係
③その器官との連動や、そこへの血行の関係

 この3つの自然則は、ある器官の症状に対するツボの出方を予測す
る場合に使えます。身に付けるようにしてください。また、達人の先
生方の症例などを読むときには、この視点で使われているツボを分類
してみてください。大部分が、この3つに分類できることが多いです。

 子供の仮性近視は、精神的負担、近距離適応、この2つが原因のこ
とが多いです。精神的負担は、学校でのイジメなど。近距離適応は、
本やゲームなどを近くで見続けた結果。

 この2つの影響を除かずに眼鏡で補正すると、度は進みやすくなり
ます。精神的負担を解決すること、目に関係するシコリの改善を習慣
にすること、この2つをしていくと効果的です。後者は、目の運動法、
目の周りや下翳風の指圧、首肩や手指のシコリをほぐすことなどです。

2.ツボの出やすいところとねらい目

2.1. 経絡:手陽明と足厥陰

 目の表面の病には手陽明経ですが、目尻あたりの症状の場合には、
手少陽経よりに出やすくなります。

 急性症状なら、母指から中指までの手首より先を使います。鍼なら
手甲で、合谷、2~3間、3~4間、それらの先の八邪。灸なら指まわり
の窪み、つまり、母指、示指、中指の骨空、節紋、井穴、指端など。

 慢性症状なら、上腕の臂臑、手五里、曲池など。

 目の奥の病には、足厥陰経。足では、陰包、中都、蠡溝、中封など
にツボが出ます。頭の正営も経絡的には足厥陰経に属する場所で、目
の奥の病に使われます。正営は目を通り正中線に平行な線と耳を通り
正中線と直行する線の交点あたりです。

 足少陽経の光明にツボが出ることもあります。

2.2. 横輪切り:目の周り、耳の周り、目の後ろの頭部

 目の周りは、指圧に向きます。眼窩では、晴明、眼窩上部中央、承
泣、瞳子髎など。目の周りの窪みでは、陽白、四白、太陽など。押し
て圧痛や快感があるところを使います。

 耳の周りでは、下翳風(近視)、耳殻頂(逆睫)、角孫などが使わ
れます。特に、耳たぶの近くで顎の付け根と首の境目の下翳風には、
大きめのシコリができていることが多いです。下翳風への指圧は、視
力検査の直前でも効果があります。

 目の後ろにあたる後頭部では、承霊と脳空のあいだにツボが出ます。
あお向けに寝て天井を見た姿勢で、目や目の奥の部分の体重がかかる
ところです。網膜剥離などの慢性病変では、表面が径3cmほどベコベ
コした状態になっていることもあります。

2.3. 血行や連動の関係:首や背中上部

 「心を鎮める」(術伝流一本鍼no.51)でも使った後頭骨下縁の
天柱、風池、完骨などにもよくツボが出ます。脳や目への血行の関係、
目を動かすときに一緒に動かす筋肉の関係からでしょう。

 首の中央部の頚椎3~4間~横頚中央は、乱視のときにツボがよく出
ます。ここにツボが出ると頭が傾きやすいことと関係している可能性
があります。

 背中では、頚椎7番〜胸椎11番の1,2行線、華佗経が使われます。
胸椎1~3、10番は近視で、胸椎5、10番は乱視で、胸椎9、10番は
老眼でツボが出ることが多いという話も聞きました。

3.手順

3.1. 目の表面の病の応急

 麦粒腫、赤目、目にゴミなどの目の表面の病には、手首から先のツ
ボをよく選んで使えば、1か所でよく効きます。灸なら指関節中央の
骨空(母指、示指、中指)、鍼なら手甲の指間穴(合谷、2~3間)や
八邪を使います。

 麦粒腫(モノモライ)は、「表位陽明経の急性期」
術伝流一本鍼no.21)に書きましたので、参考にしてください。

 また、養生日記の以下の症例も参考にしてください。
目が痛い

3.2. 目の奥の病

 近視、乱視、網膜剥離、老眼、白内障、緑内障などは、慢性の病で
す。ですから、慢性期の型でツボを考慮して一通り刺鍼したあと、頭
のツボ、足厥陰・手指関節の灸も併用します。

 子供の仮性近視には、耳たぶ近くの顎の付け根と首の間(下翳風)
の指圧、手指や首肩の指圧按摩が向きます。

3.3. 慢性期には、置鍼+灸も良い

 座位で手末端に灸したあと、頭のツボに灸か置鍼、首背のツボへ灸
します。仰向けか座位で、足の裏を合わせてもらうと厥陰経が上を向
くので、その状態で足のツボに灸。置鍼した鍼を抜いてから、仕上げ
に、手首から先に鍼灸。

 初めの手末端への灸は、上衝が少ない場合は、省略しても構いませ
ん。

4.目の運動法や目のまわりや下翳風の自己指圧、操体

4.1. カメレオン体操

 部屋の四隅の上下を順に目だけ動かして見ます。

 近くで様子を見ていた子が「カメレオンだ」と叫んだことから、
「カメレオン体操」という名前になりました。

4.2. 遠近行ったり来たり体操

 母指の爪に張り付けた文字を見つめながらゆっくり近づけたり遠ざ
けたりして、遠近凝視をします。

 ペットボトルのフタに、丁度よい大きさのランドルト環の図を貼り
つけたものを使うのも良いと思います。

4.3. 自己指圧

 眼窩まわりや目ちかくの窪みの指圧を習慣にすると良いです。特に、
耳たぶの首側の顎の付け根と首の間(下翳風)のシコリへの母指での
下からの指圧は、視力検査直前でも効果があります。

4.4. 首肩をほぐす操体を習慣にするのも良いです。術伝流操体シ

リーズを参考にしてください。

5.写真付き症例

 老眼で疲れ目、特に目の奥に疲れを感じるという人。灸中心での治
療を希望とのこと。うつ伏せ、座位の順で、灸や灸頭鍼を中心に鍼を
組み合わせて治療しました。

 先ずは、うつ伏せで頭のツボを調べていきました(写真1)。そし
て、出ていたツボに横刺で置鍼しました(写真2)。頭への横刺は、
弾入後に鍼をたおし、1本の指と頭蓋骨で押手を作る感じにすると、
簡単です(写真3)。

写真1

写真2

写真3

 灸でも良いのですが、髪の毛を十数本焼き切ることになることもあ
り、置鍼を選択しました。

 次に、首まわりを調べ、後頭骨下縁に出ていたツボに灸頭鍼しまし
た(写真4)。術伝流の灸頭鍼の手順は、「術伝流一本鍼no.33
などを参考にしてください。

写真4

 それから、背中上部を調べていきました。胸椎の華佗経にフニャフ
ニャペコペコ虚したツボを見つけたので、そこにも灸頭鍼をしました
(写真5)。

写真5

 灸頭鍼したあと抜いてくるときに、行きは豆腐を刺していくように
スーッと入ったのが、筋肉が鍼を噛んで抜けにくい状態になっていま
した。弾鍼などをしていたら弛んで抜けました。抜けたあと、ツボの
出ていたところを触ってみたら、フニャフニャペコペコした感じがな
くなっていました。

 それから、足厥陰経を調べるため、足を投げ出した座位になっても
らいました。あお向けでも良いのですが、まだ、頭に置鍼したままだっ
たこともあって。

 先ずは、下腿から。右足の蠡溝に出ていたツボ(写真6)に灸をし
ました(写真7)。

写真6

写真7

 次は、大腿部。右足の陰包に出ていたツボに深刺ししました(写真8)。
ここのツボは深いので、灸よりも深刺しの刺鍼か灸頭鍼がむきます。

 深いツボに刺していくときは、初めは豆腐を刺すように鍼がスーッ
と入っていきます。途中で粘った感じを受けた、その先にツボの芯が
ありますので、そこでスピードを緩め、ゆっくり慎重に刺していきま
す。

 ここも、帰りには、鍼が噛まれて抜けにくくなったので、弾鍼など
をしながら抜きました。

写真8

 その後に頭に置鍼した鍼を抜き、手の八邪に出ていたツボに引き鍼
して仕上げました(写真9)。

写真9


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最終更新:2019年07月27日 18:04