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術伝流一本鍼no.48 (術伝流・養生の一本鍼・病証編(7))

下焦の病

1.基本的に

 下焦の病は、胴体の内側の臍より下に主な症状が出る病です。
泌尿生殖器系とも言えます。瘀血によることが多く、女性の生
理痛、子宮内膜症、子宮筋腫、不妊、流産、難産、乳腺炎など
と関係が深いです。

 女性の場合には、治療後の生理のときに、普段よりも、臭い
や粘りが強く、色濃いものが多量に排出されると良くなってい
きます。これは、体に溜まっていた瘀血です。

ーーー 追記:2020.01.06 ーーー
 私が診てきた重い生理痛の患者さんは、「運動部の部活をし
ていた間」、「定期試験のたびに」、「浪人している間」など
に、生理が止まっていたという患者さんが多かったです。その
時に出るはずだった血液が体内に溜まってしまったように思い
ます。
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 足の陰経(特に厥陰経)や、横輪切りの背中や腰・殿部(特
に腰椎2番~仙骨)にツボが出ます。症状の近くの小腹にもツ
ボが出ます。比較すると左が多いです。下半身の冷えも関係す
るので、冷え関係のツボも使ったほうが効果が上がりやすくな
ります。

 短命のスポーツマンには、打撲による瘀血証が原因のことも
多いです。また、手術後に瘀血証になる人も多いです。打撲や
手術による瘀血証が、脳梗塞の原因になることもあります。

 下焦には食毒も溜まり、それが毒性を増大させることもあり
ます。また、下半身の浮腫は、小腹(下焦)や足厥陰経、少陰
経との関連が深いです(泌尿系)。

2.ツボが出やすい所や狙い目

2.1.足の陰経

 先ずは、足厥陰経で、蠡溝、中封、太衝など。慢性期には、
足五里~陰包で凹んで冷たい所が狙い目です。足少陰では、足
首の周りの照海~大鐘。足太陰の血海。下半身の浮腫、泌尿系
では、足少陰の復溜などに出ることもあります。

 灸なら足の第1指の指端や、足の第1指裏の関節部横紋の第2
指よりの端(足第1~2節紋)や、足の第1指そばの足裏中足骨
遠位関節部(足第1指着地曲)。また、足の第4指の周りは、
下半身の浮腫に効果的です。

2.2.足の陽経

 腹表面の痼りは、足陽明~少陽に引きます。慢性期には、大
腿部の伏兎や風市の近くにも出ます。灸で冷えに対処するは、
足甲3~4間。灸で施術する場合には、浮腫には、失眠や足の第
4指指端が使えることが多いです。

2.3.陽位(背)

 先ず、腰椎2番~仙骨の督脈、華佗経、足太陽経に出やすい
です。腎兪、志室、大腸兪、徹腹、環跳、胞膏、上仙、次髎な
ど。また、瘀血のあるときには、肩井よりも首の付け根にツボ
が出ている人が多いです。

 浮腫や泌尿系のときは、大椎~至陽の近くにツボを探し、刺
鍼して発汗を促します。また、八髎穴に灸を据えると良いです。

2.4.腹部、腹部に近い大腿

 関元~曲骨や水道~帰来の近くと、五枢維道~衝門~横骨の
ライン、居髎など。古くなるほど外よりに出やすくなります。
現在では、経過が長いことが多く、五枢維道~衝門、居髎、臍
の左右の下肓兪に出ていることが多いです。

追記:20170201ーーー 瘀血の腹診ポイント ーーー
 此処に書いた瘀血の古いツボの出やすい所は、私が沢山
の瘀血の患者さんを診た結果を帰納したものです。が、漢
方医の寺澤捷年先生の『和漢診療学』を読んだら、ほぼ同
じ所が出ていて、ビックリすると同時に、嬉しかったです。


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2.5.そのほか

 手の陰経では、慢性期は上曲沢、急性期は内関が多いです。

 また、乳房の裾野にツボが出ていることも多く、その場合に
は、授乳時の乳腺炎の原因になります。

3.手順

3.1.慢性期

ⅰ)鍼中心の場合

 ツボを考慮して慢性期の型の順で刺鍼します。その後に必要
に応じて、冷たく虚した所や古いツボに灸・灸頭鍼をし、手の
指端の灸で後始末します。

ⅱ)灸や灸頭鍼が中心の場合

 灸・灸頭鍼中心のときは、うつ伏せ、仰向けの順でツボを選
び施術し、手指端や骨空の灸で始末し、必要に応じて刺鍼に移
り、手甲の刺鍼で後始末します。

 必要なら、首の付け根や乳房の裾野の出ているツボに鍼をし
ます。

 初めはⅰ)、だんだんⅱ)が標準的です。また、ⅰ)の手順で、
必要な所で、灸や灸頭鍼を組み合わせることもします。

 灸・灸頭鍼の狙い目は、腰殿部(上仙、次髎、腰徹腹)、下
腹部(気海~曲骨、下肓兪、五枢~衝門)、大腿内側(足五里~
陰包)の3か所です。

3.2. 自己養生

 女性の瘀血証の自己養生としては、蠡溝、内踝の周り、足親
指の周りに灸をしてもらいます。また、生理期間中には、蠡溝
に円皮鍼を貼ってもらいます。

 足親指の爪の上で温灸(貼付タイプ炭艾:例「千年灸の奇跡」)
をするのが簡単と思います。
腹痛や生理痛の慢性期の養生に爪上の温灸

3.3. 応急処置

 体を曲げて耐えているときは、背中側の一番出っ張った辺り
に引くのがコツです。

 詳しくは、「術伝流先急の一本鍼」の「内科系急性期」を参
照してください。

4.写真付き症例

 生理痛のあるという人。脈診、舌診、腹診の順で診察してい
きました(写真1、2、3)。舌診は、特に、舌の裏の左右の血
管を見ます。瘀血のある人は、黒々として太めのことが多いで
す。

写真1

写真2

写真3

 現在では、瘀血のときには、下腹では、五枢~維道の辺りと、
下肓兪の辺りに出ていることが多いです(写真4、5)。五枢~
維道の辺りは、骨盤の腹側に指を滑らせてツボを探し、骨盤に
押し付けるようにして圧痛の強い所を取ります(写真5)。

写真4

写真5

 足では、合蹠(足の裏を合わせる)したり、踵(かかと)が
反対側の足膝位に来るように曲げ倒したりしたときの姿勢で上
を向くラインに、ツボが並びます。厥陰経の陰包、中都、蠡溝、
少陰経の照海など(写真6、7、8、9)。

写真6

写真7

写真8

写真9

 自己養生で灸をしてもらうときも、こういう姿勢を勧めます。

 仰向けのときに出やすいツボを一通り確認してから、刺鍼に
移りました。

 先ずは、手を陰経~陽経の順で刺鍼しました(写真10、11)。
手の陰経は、上曲沢が多いです。

写真10

写真11

 次に、腹を横腹(写真12)、小腹、大腹の順に刺鍼しました。

写真12

 五枢~維道の辺りは、初めてで肌を出すのを気にされる人の
場合には、打鍼でした方が良いこともあります。押して痛かっ
た方向に、打鍼を斜めに、骨盤に押し付けるように当ててから、
打っていきます(写真13)。

写真13

 気にされない人の場合には直接刺鍼しますが、この場合にも、
鍼の向きは、打鍼のときと同じ方向にします(写真14)。

写真14

 次は、左下肓兪に刺鍼しました(写真15)。ここは臍近くで
痛がる人もいるので、丁寧にそっと刺します。

写真15

 足に行き、陰包を刺鍼しました(写真16)。これで、仰向け
での刺鍼を終えました。

写真16

 うつ伏せになってもらい、先ずは、ツボが出やすい所を調べ
てみました。腰徹腹、上仙、次髎に多いのですが、この人の場
合は、左腰徹腹と左次髎に出ていました(写真17)。腰徹腹は、
腰部脊柱起立筋の一番外側で、一番骨盤よりを探すと見付けや
すいです。

写真17

 腰徹腹は、鍼を横から布団に水平に置いて、横から脊柱起立
筋を貫くように刺鍼します(写真18)。

写真18

 次髎は、仙骨孔に入れていくようにします(写真19)。

写真19

 次髎の反応に古さを感じたので、灸頭鍼をしてみました(写
真20)。

写真20

 その間に殿部や大腿などに出ていたツボに鍉鍼で施術しまし
た(写真21)。

写真21

 すると、灸頭鍼の鍼の動きが変化して、ブルブルよく震える
ようになって、興味深かったです(写真22)。

写真22

 瘀血のある女性の場合、肩井よりも同じラインの首の付根の
方を痛がる人が多いのです(写真23)が、この人もそうでした。
そちらを刺鍼しました(写真24)。

写真23

写真24

 肩凝りもあるということで、大椎の周り(写真25)、肩甲骨
の周り(写真26)、横頚部中央(写真27)、上少海(写真28)
の辺りに出ていたツボに順に刺鍼しました。

写真25

写真26

写真27

写真28

 頭に散鍼し、手の甲に引き鍼して仕上げました(写真29,30)。

写真29

写真30

5.おわりに

 瘀血証も含みますが、女性特有の症状に付いては、以下に詳
しく書きました。

術伝流一本鍼no.55  応用(7)生理痛から安産・産後まで


   つぎへ>>>術伝流一本鍼no.49



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最終更新:2020年01月06日 11:52