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術伝流一本鍼no.45 (術伝流・養生の一本鍼・病証編(4))

少陽の病

1.基本的に

 少陽の病は、体の横・側面に主な症状が出る病で、ツボが深
く、変わりにくく、再発が多いことが特徴です。また、軽くて
も治りにくい病は、少陽位にツボが出ていることが多いです。

 代表例は、先ず、体の横側面に関係のある病、つまり、脇痛、
偏頭痛、耳鳴り、眩暈などです。耳鳴りや目眩は、内耳に関係
し、内耳は、体側面に有る器官ですね。また、古典にも書かれ
ています。

「少陽之為病、口苦、咽乾、目眩也」(『傷寒論』)

 次に、経過が長く、軽くても治りにくい傾向の病です。喘息、
アトピー、花粉症などのアレルギー疾患でも、少陽経にツボが
出ます。また、経過が長くなると、肩凝り、腰痛、瘀血証など
でも、少陽よりにツボが出ることが多くなります。カゼでも、
経過が長くなると、少陽病とされることが多いですね。

 片麻痺になることが多い脳血管障害の原因になることもあり
ます。そういう人は左右どちらかの横腹の筋張りが酷く、脈の
左右差も大きいです。特に上腹部の中焦に水毒が多い場合には
可能性が高くなります。邪気が上衝する時に、体側面片側に上
衝し易いためのようです。

 なかなか変わらず、良くなっても再発することが多いです。
また、良くなっていく過程で、昔の症状が復活することも多い
です。特に、薬などで症状のみ消した場合には、症状の復活が
多くなります。

 この典型例は、アトピー性皮膚炎と喘息の複合症状です。治
療の過程で、喘息症状と皮膚炎が繰り返し出現しながら軽くなっ
ていくことが多いです。患者さんにそういう点をよく話し、時
間が掛かることも伝えます。

 また、ツボの出ている側面が、体の上下で、左右入れ替わる
ことも、よくあります。歯科医で、体全体ほぼ右が凝っていて、
左耳の直下だけ左が凝り、左耳の耳鳴りのある人がいました。
仕事中の特有の姿勢に由来すると思われます。

追記:2017,01.10ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 また、耳鳴り、目眩、アトピーなどは、上腹部の水毒も関係
していることが多いです。心下痞、胸脇苦満があれば、そちら
の対処も必要です。

 詳しくは、「病証(6)中焦の病」→術伝流一本鍼no.47  
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2.ツボが出やすい所、狙い目

 先ずは、手足の少陽経。手では、手甲の2~3間、3~4間、
4~5間(中渚)と、外関など。灸では、中指と薬指の拳先、骨
空、指端も使えます。足では、足徹腹(外承扶)、風市、外丘〜
飛揚、足甲3~4間、足臨泣〜地五会など。

 次は、体の横側面。首では、横頚中央。背側では、肩貞、痞
根、腰徹腹、環跳。腹側では、横腹、章門、五枢〜維道、居髎。

 また、少陽経と表裏の手足厥陰に出ることもあります。内関、
上曲沢、陰包、蠡溝など。

 経過が長いので、古い病でツボが出る体の境目にも多くなり
ます。左右境界では、背の肩甲間部の華佗経、胸の膻中、腹の
臍の周り。上下境界の横隔膜の辺りでは、背の膈兪〜督兪、腹
の心下部や章門。体と手足の境目では、肩貞、居髎、足徹腹。

 この辺りは、「古いツボ、古い病」というテーマで、病証編
の後の応用編で解説する予定です。
術伝流一本鍼no.50 応用(2)古い病、古いツボ)

 その他、症状に応じてツボは出ます。 

 耳関連では、耳の近くの翳風、完骨、風池。耳関連で、内耳
の水毒が関係するときは、足太陰にもツボが出ていることがあ
ります。また、耳鳴りの場合は、患側の耳の直ぐ下の首の部分
に、ツボが出ていることが多いです。

 中風の予防には、横腹の筋張りなど。

 花粉症は、上衝もあるので、合谷に引きます。鼻水には、印
堂や上星、鼻の後ろの玉沈など。

 喘息では、肩甲間部の胸椎3辺りの華佗経、膻中など。

追記:2017,01.10ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 また、耳鳴り、目眩、アトピーなどで、上腹部の水毒も関係
する心下痞、胸脇苦満があれば、胸椎7〜11の華佗経にツボが
出ていると思います。

 詳しくは、「病証(6)中焦の病」→術伝流一本鍼no.47
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3.手順

 経過が長いので、慢性期や応急的予防処置が多いです。急性
期は慎重に。脳血管障害など重度の病変が疑われるときは、救
急医療と連携します。

3.1.応急的予防処置

 先ず、仰向けかうつ伏せで横側面のツボの出方を調べます。
その後、横向きに寝てもらい、施術します。

 左右入れ替わりのあるときは、途中で寝方を変えてもらいま
す。

 手甲〜内関の順で引き鍼した後に、頭から足に上から下の順
で、出ているツボを刺鍼するのが基本手順です。体の上下境目
の辺りは、痞根→章門→腰徹腹の順になります。「陽→陰→陽」
の基本手順ですね。足の陰経にツボが出ていれば刺鍼し、頭を
散鍼し手甲に引いて仕上げます。

 手足陰経や腹への刺鍼は、状況を見ながら慎重にします。刺
鍼しないことも多いです。腹の章門に刺鍼しないときは、内関
と足の陰経以降の刺鍼は、省略も可能です。ただし、上衝しそ
うなら省略はできません。

 症状に応じて、症状ごとのツボを、そのツボが出ている辺り
を刺鍼するときに加えます。耳鳴り、難聴のときは、耳の周り
に熱のあることが多く、そのときは散鍼します。

3.2.慢性期

 ツボを考慮して、慢性期の型の順で刺鍼します。必要に応じ
て、灸・灸頭鍼をし、手の指端の灸で仕上げます。

 喘息で肩甲間部の華佗経に細い溝状の窪みがあるときには、
その中で一番深い所に出ているツボへの灸頭鍼が効果的です。

 灸や灸頭鍼と置鍼を中心とするときは、手の中指か薬指の骨
空に灸した後、横向き、または、うつ伏せで、頭から足に、次
に、仰向けで上から下に施術し、手指端の灸で仕上げます。

 花粉症では、鼻関連の頭のツボに置鍼すると、鼻水対策にな
ります。

3.3.眩暈発作、突発性難聴

 これらは、少陽病でも発作的な病ですので、手早い刺鍼が大
切になります。体の横側を邪気が突き上げる病態、つまり、上
衝の一種と考えます。

 手甲、内関の順に引き鍼した後、完骨、翳風、風池など耳の
周りに出ているツボに刺鍼し、体の横側に出ているツボを首か
ら足に向かって刺鍼していきます。横頚中央、肩貞、大包、痞
根、風市、外丘、地五会など。

 途中でツボの出方が左右逆になる場合もあります。ツボが出
ていないときには省略しますし、発作が軽減したらその時点で
止めます。頭に散鍼した後、手甲に引き鍼して仕上げます。

 眩暈が酷い場合などは、内関に鍼しないで施術した方が良い
こともあります。患者さんの状態を良く確かめながら施術する
ことが大切になります。

 表位の急性症状でもあるので、以前に書いた「先急の一本鍼」
の「表位・少陽経の急性期」(術伝流一本鍼no.23)も参
照してください。

3.4.子供の喘息

 子供の喘息には、肩甲間部や命門〜横腹の小児鍼、背骨揺す
り、くすぐりが効きます。応用編の「子供にコロコロ」で、詳
しく書く予定です。
術伝流一本鍼no.54 応用(6)子供にコロコロ)

4.写真付き症例

 酷いアトピーだったのが良くなったけれど、その影響が残っ
ていると言う人。

 時間の関係もあり、応急的予防処置で、体の横側、体側面の
左右差の調整をしてみました。

 うつ伏せになってもらい(写真1)、左右差のツボの出やす
い所を順に調べていきました。

写真1

 上半身は左側にツボが出ていました。横頚部中央(写真2)、
肩甲骨外上側の肩貞(写真3)。

写真2

写真3

 脇腹あたりから下は、右側にツボが出ていました。痞根(写
真4)、腰徹腹(写真5)、足徹腹(写真6)、風市(写真7)。

写真4

写真5

写真6

写真7

 この人にこの手順で刺鍼するのは初めてのこともあり、陽経
陽位のみ刺鍼することにしました。先ずは、左を上にした横向
き寝になってもらい、左手甲3~4間に出ていたツボ(写真8)
に刺鍼しました(写真9)。

写真8

写真9

 次は、左横頚部中央(写真10)と左肩貞(写真11)。鍼を
刺す向きが分かりやすいように、鍼管で方向を示しています。

写真10

写真11

 それから、右を上にした横向き寝になってもらい、右痞根と
右腰徹腹に順に刺鍼しました(写真12)。この2つのツボは、
前にも書きましたが、脊柱起立筋の一番外側で、肋骨よりと骨
盤よりです。

写真12

 それから、足少陽に出ていたツボに、上から順に刺鍼してい
きました。風市(写真13)、飛揚~外丘(写真14)、丘墟
(写真15)。

写真13

写真14

写真15

 座位になってもらい、頭に散鍼し(写真16)、左手甲3~4
八邪(写真17)に刺鍼し、仕上げました。八邪も、鍼管で刺
鍼方向を示しています。

写真16

写真17


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最終更新:2017年02月25日 13:12